「一夏頼む!この通りだ!」
「お前の自業自得だろ?」
「確かにそうだ。だけど俺一人じゃ、対処しきれないんだ!」
夏休みが始まって三日経ったある日、俺は弾にメールで呼ばれファミレスで話をしてるんだが・・・
「弾。お前が二股してる話を聞かされても、俺はどうしようもないぞ」
「そこを何とか!」
俺の親友、五反田弾。
二股が原因で窮地に立たされている男。
「二股をしてる事は、二人にばれてる?」
「ああ・・・」
「これはいくらなんでも、お手上げだよ。大体、お前がどちらかを選んで選ばれなかった方の裁きを喰らえばいい話だろ?」
弾は近い時期に二人と出会い、メアドを交換して二股してる事を内緒に会ってたんだが・・・
ある日、レゾナンスで弾と二人の彼女がバッタリ会ってしまい二股が発覚。夏休みに答えを出すよう二人の彼女に言われた。しかも答えを出す日が明日の朝、レゾナンスで二人の彼女とデートをした後に言うという。弾の寿命が確実に縮むな。弾は今日まで答えを出そうと考えてたが・・・
「無理なんだよ!片方の女性は怒ると怖いけど、いつも女神の様に微笑んでしっかりしている女性なんだ。もう片方は一見クールに見えるけど、実は可愛らしい所があるクーデレの女性なんだよ」
「どんだけ女に飢えてるんだよ・・・」
「黙れ!いつも真耶さんとイチャコラしてるお前には分かるまい!彼女が出来たくても出来ない者の苦しみを!」
「人、それを妬みと言う」
「がはっ!これが彼女持ちの余裕と言うものか!」
弾、お前が気持ちをキッチリしなかったのがいけないんだぞ。
「とにかく、俺を助けてくれよ!」
「じゃあ、俺と真耶に奢ってくれるなら助けるよ」
「いや!ある物をあげるから、奢るのは勘弁してくれ!」
「ある物?」
「ああ」
弾は袋からある本を取り出した。
「これをあげるから、協力してくれないか?」
「お前・・・これは・・・」
弾が俺に差し出した本。それは・・・
「山田先生の写真集・・・」
俺は表紙のISスーツを纏った真耶に目を奪われていた。今と変わらない顔つきと体つき。そして笑顔・・・これは堪らない。
「代表候補生時代の写真集なんだけど、出荷数が少なくて今ではプレミアがついてるんだ」
「お前、これをどこで?」
「実は店が休みの時、都心をぶらり遊び歩いていて適当に寄った本屋さんにこれが売ってあったんだ。しかも、新品の定価で!」
「うそ・・・だろ・・・」
「しかもその店主、近い内に引っ越すから定価の半分でくれたんだ」
「マジかよ!?」
俺は思わず声を荒げてしまった。
「静かにしろよ。それで一応中身を確認したらさ、真耶さんの色んな姿を拝見できたぜ」
「どんなのだ?」
「それを知りたかったら、俺に協力してくれ」
俺は真耶の写真集に心を奪われ、弾に協力することを約束した。
「弾、その写真集を」
「OK。一夏、やっぱりお前は最高の友達だぜ!」
「ああ。お前は最高の友達だ!」
取引が成立し、俺は弾から真耶の写真集を・・・
「だ、ダメです!」
「ま、真耶!?」
受け取れなかった。真耶が慌てて、奪い取ったのだ。
・・・・・・
あの後、俺は真耶に事情を説明して真耶も協力することで事なきを得たが・・・
「一夏君。弾君に協力をするのは良いけど、私の写真集を貰うのはダメ!」
「いや・・・ごめん」
俺は真耶に怒られながら帰宅している最中である。代表候補生時代の写真集が相当恥ずかしいみたいだ。
「ところで真耶。代表候補生の頃の話をあまりしないのも、その本が原因なのか?」
「そうです!私の体しか興味を示さなくて、実力を見てくれませんでした!」
かなり不機嫌な真耶は声を荒げながらも俺の手を離さなかった。
「一夏君はそんなことないと思ってたのに・・・」
「ごめん!代表候補生時代の真耶の姿を見た事なくて、興味本位でつい・・・」
「もう。そんなに見たかったら・・・一緒に見る?」
「え?」
「周りは私の体しか興味を示してくれなかったけど、一夏君なら特別に・・・」
真耶、本当は現役時代の姿を見せたいのかな?
「大丈夫だよ。どんな写真が載ってても俺は真耶の見る目を変えることはないよ。それに真耶はどんな姿をしても似合うから」
「じゃ、じゃあ、帰ったら二人きりで見よう」
「ああ」
・・・・・・
「へえ、これが真耶の専用機か」
「昔はあんまりISの事を理解してなかったから、性能に頼った戦いをしてたなぁ」
夜、マドカが熟睡してるのを確認し、俺と真耶は一階のソファーで弾からもらった真耶の代表候補生時代の写真集を見ていた。
専用機で空を駆ける真耶、ISスーツで色んなポーズをとる真耶、色んなコスチュームを着てる真耶。色んな姿の真耶が写真集に収められている。
「確か二つ名が、
「ど、どうして知ってるの!?」
「千冬姉が酔ってた時に言ってたよ。でも、どうして専用機の話を断ったんだ?俺がいるから強くなれるからって言うけど」
「今の私は代表候補生じゃなくて一組の副担任。生徒を誤った道に歩ませないようにするのが私のやるべきことだと思ってるの」
「誤った道?」
「専用機を持てば誰にも負けない。そういう考えを持ってる生徒達が後を絶たないの。確かに専用機は量産機より性能が高い。専用機を手に入れることは強大な力を得たと言っても過言ではない。だけど、打鉄やラファールなどの量産機だって頑張れば専用機を倒すことができる。専用機の力が全てじゃない事をみんなに示したいの」
「だから、かつての専用機はいらないと」
「うん。かつての専用機と言ってもラファールの改造機だから、今使ってるラファールとそんなに変わらないし、それに私の努力も少しずつだけど成果を見せてるから」
「そうなの?」
「うん。数日前に二組の生徒から、先生のお陰で同じ二組の専用機と互角に戦えたって笑顔で言ってくれたの」
うわぁ・・・鈴、大丈夫かな?二学期になって、俺に対する行動が激しくなりそう。
「だから、私はこれからもラファール・リヴァイブで頑張るって決めたの」
「真耶が専用機に乗って戦う姿を見たかったけど、俺が言える立場じゃないな」
この強い意志が真耶を強くさせてるんだな。
「そうだよ。私は一夏君がいるから強くなってるの。だから白騎士になっても慢心しちゃ、ダメだからね」
「分かってるよ、山田真耶専任コーチ」
学園公認の「織斑一夏専任コーチ」だからな。
「もう!突然、他人行儀になって!」
「で、今日の特訓メニューは何ですか?コーチ?」
俺は気にせず真耶をからかった。
「じゃあ・・・えい!」
「おわっ!」
真耶は俺を床に押し倒した。
「今日は私を困らせた罰として、私の好きなようにさせていただきます!」
「分かったよ真耶」
夏休みで夜中になってるから、少しぐらい羽目を外しても問題は無い。
「じゃあ、最初は・・・」
「早く寝ろ・・・」
このパターンは・・・
「ま、マドカさん!?」
黒のタンクトップに黒の短パン姿で重い瞼を擦りながらマドカは現れた。
「二人とも・・・今、何時だと思ってる?」
「今は、夜の十二時を迎えようと・・・」
「寝ろ」
真耶の答えを遮り、寝ることを勧める姿は眠くて不機嫌な千冬姉そっくりだ。
「私は明日・・・朝早く出かけなければ・・・ならないんだ。お前たちが・・・睡眠の妨げになるのなら・・・・・・殺すぞ」
「「ごめんなさい」」
羽目を外すのは本当に二人きりの時にしよう。
・・・・・・
翌日、俺と真耶は約束通りに弾のデートをサポートするためレゾナンスにいる。
レゾナンスの広場に弾は彼女が来るのを待っていて、俺と真耶はそこから少し離れた喫茶店で見守っている。
「もうそろそろ、弾の彼女達が来る時間だ」
「弾くんの彼女って、一体どんな人なんでしょうね?」
「そうだな。マドカも来ればよかったけど、一体どんな用事なんだろう・・・っと?」
弾が動いた。どうやら彼女達の・・・
「真耶・・・あれって・・・」
「うん・・・あの人は・・・」
弾の前に現れた一人の女性。黒のスカートに白のノースリーブニット姿の女性・・・それは紛れもなくマドカだ。
「真耶。夢・・・だよな?」
「夢・・・じゃないみたいです」
想いを寄せてた女性の片割れが俺の妹なのかよ!
「一夏君、落ち着いて!弾くんは一夏君に妹がいる事を知ってないから」
「あ、ああ。そうだな・・・」
俺は手が震えながらも、何とかアイスコーヒーを飲んで落ち着こうとした。
「も、もう一人の女性は誰なんだろう?」
考える間もなくもう一人の女性が弾に寄って来た。
眼鏡にヘアバンド、三つ編みで白のワンピース姿の女性。確かに弾の言う通り、しっかりしている雰囲気はある。
「あの人は・・・虚さん?」
「真耶、知ってるのか?」
「はい。生徒会の会計で本音さんの姉・・・」
「ごふっ!」
その時、俺は飲んでたアイスコーヒーを噴き出しそうになった。
「い、一夏君!?」
「だ、大丈夫・・・」
弾は二人の彼女に引っ張られながら、どこかへ行かされた。
「どこかへ行ったみたいですね。行ってみましょう」
「あ、ああ・・・」
弾・・・お前の骨は拾うから。
・・・・・・
「まさか、マドカの想い人が本音のお姉ちゃんと同じだったなんて・・・」
「本音、どうするの?」
「見守るしかないよ~」
一夏と真耶がいた喫茶店の真上の通路で、
今回の話で山田先生の専用機の話が出ましたが、この作品における山田先生は・・・
「機体性能の違いが戦力の決定的差でないことを示す人物」
という立ち位置なので、山田先生の専用機は「ラファール=リヴァイヴ・スペシャル『
作者自身、原作で山田先生の専用機が出た時は、
「また専用機か・・・」
と、げんなりしました。
実際は原作の山田先生との差異を示したかっただけです。
作者のワガママです、すみません・・・
次回は弾の修羅場 後編です。
ご意見、ご感想、お待ちしております。