常識人はつらいよ
みたいな話です。
「どうして私が織斑君の部屋にいるのかと言うと・・・」
「妹の寝取り方を聞きに来んだろ?」
「そんなのを聞きに来たわけじゃないのよ!」
「いい加減、妹の付き合いを認めろ。だから貴様は駄目無なんだ」
「お姉さんに喧嘩売ってるの?」
「そう思ってる時点で駄目無と呼ばれるんだ」
俺は部屋の中で、制服姿の妹と裸エプロン姿の生徒会長の口論を聞き流しながらナポリタンを作っている。
どうして生徒会長が部屋に侵入したのかは気になるけど、マドカはお腹が空いててイライラしていると思う。だから早くナポリタンを食べさせて、落ち着かせないと。
「本当に愛を知らないから、二人の言動が破廉恥に見えるんだ」
「知ってても破廉恥でしょ!寮の部屋で猫パーカーを着て『にゃんにゃん』しようとしたり、保健室を独占したり、食堂で淫らな遊戯をしたり、一線を越えようとしたりして夜も寝れないわよ!お陰で学園にラウラちゃんと簪ちゃんを応援する変な組織が誕生して、教員と生徒会は頭を悩ましてるのよ!」
確かに妹を持つ身としては心配するよな。
「悩む必要などない。ただ、そのまま受け入れれば良い」
「受け入れられないわよ!」
このままヒートアップするといけないから、そろそろ止めに入らないと。
「マドカ。ナポリタンができたぞ」
「そういう事だ。貴様の悩みなど井の中の蛙程度のものだ」
マドカは話を切り上げ、楯無さんを部屋から追い出そうとしたが・・・
「織斑君。一緒にナポリタン食べよ!」
突然、上目遣いで俺に寄り添ってきて一緒に食べようと誘ってきた。しかも裸エプロンのため、触感がかなり伝わって来る。
「楯無さん、どうしたんですか!?」
「マドカちゃんと口論してたら、お腹が空いちゃった。それに二人分しかないから、私と一緒に食べましょう。それに・・・」
「もし一緒に食べさせてくれたら、山田先生より楽しい事をしてあ・げ・る」
パシャツ
マドカは何のためらいもなくスマートフォンのカメラで俺と楯無さんのツーショットを取り・・・
「これは虚と簪に送らなければな。彼女持ちの男を寝取った瞬間として」
「ちょっと待って!?」
楯無さんを脅し始めた。マドカ、何やってるの・・・
「安心しろ。既に姉さんと山田先生には送信してある」
「安心できないわよ!」
「姉さんのハイクが聞けるんだ。嬉しくないのか?」
「嬉しくない!」
マドカの容赦ない攻撃(?)に楯無さんは慌てふためいてるけど、何しに来たんだ?
「織斑君。お姉さんを助けてぇ」
そんなことを考えてたら、楯無さんが俺の背中に回り抱きついてきた。
「いや!さすがに無理です!とういうより、離れてくれませんか!?」
「離れたら、お姉さんを守ってくれないもん」
「いやいや!この状態だと周りに誤解を生みますよ!」
「その時はお姉さんが責任を持って・・・」
「責任を持って、私が三途の川に運ぼう」
「・・・え?」
楯無さん・・・ご臨終です。
「楯無。貴様に与えられた選択肢は2つだ。私に殺されるか、切腹し自害するかだ」
楯無さんの背後に何故かいる千冬姉の警告に俺は戦慄する。後ろはただの壁なのにどうやって潜り込んだんだ?
「あの・・・私は織斑君の護衛で・・・」
「ほう。そんな破廉恥な姿で護衛する奴など見た事も聞いた事も無い」
「これは親交を深めようと・・・」
「マドカのメールだと、欲求解消の為に弟を食べようとしてると聞いたが?」
あれ?さっきマドカが言ったのと一致してないが。
「マドカちゃん!?言ってる内容と違ってるじゃない!」
「すまんな。貴様に言った内容はラウラと簪に送ったものだった」
「え!?」
ワザとらしい演技で謝罪してるがやりすぎだろ。
「そういう事だ楯無。後でたっぷり事情を聞こうではないか」
楯無さんを力づくで引き離した千冬姉は笑顔のまま窓を開けた。
「先生!?どこから出ようとしてるんですか!?」
「窓からだ」
「普通にドアから出てください!」
「弟と普通に接しなかった罰だ。さあ、逝くぞ!」
そのまま頭を下にして、錐もみ回転しながら落ちて行った。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」
楯無さんの叫び声と同時に轟音と揺れが起こった。楯無さん・・・また会えますよね?
「ふっ。所詮楯無はその・・・イタッ」
俺は迷わずマドカの頭にゲンコツをした。
「マドカ。いくら何でもやりすぎだ」
「何をだ?」
「写真を撮って脅迫するなんて、やって良い訳ない」
楯無さんの行動にも問題はあるけど、マドカの行為はいくら何でも許されるものではない。
「少なくとも脅迫ではなくなった」
「だとしても、やって良いことと悪い事ぐらい分かるだろ?」
「兄さんは奴の行いを認めるのか?」
「そうじゃない。楯無さんが何をしたかったのかは分からないけど、妹を持つ身として注意してるだけ」
「妹が誰なのか分かって言ってるのか?」
「誰なんだ?」
「簪だ」
あぁ・・・妹さんに彼女が出来てご乱心と言う訳か。
「兄さん。奴は
「言いたいことは分かった。だけど・・・」
「そこまでにしておけ」
「千冬姉!?」
今度は天井から現れたけど、普通に入って来てくれないかな。
「織斑先生だ。マドカの件については私が後で話をする」
「じゃ、じゃあ頼む」
「お前は山田先生と話をしろ。少しばかし私がキツク言いすぎたせいでちょっと傷心状態だ。フォローしてくれ」
千冬姉、だからISの特訓は真耶と一緒にって言ったのに・・・
「マドカ、私の部屋に来い。話がある」
珍しくマドカは言う事を聞いて、千冬姉の部屋に向かった。
「織斑、一つ言っておくべきことがある」
「何?」
「マドカが所属していた組織は私が壊滅させた。それだけだ」
ああ・・・うん。それを聞いて驚いていない自分に驚く。
「山田先生のフォローを任せた。では!」
千冬姉はその場から疾風の如く消えたけど・・・
「真耶、大丈夫かな」
恐らくマドカのメールでかなり傷心してるから、早く部屋に行かないと・・・
コンコンコン
「真耶!?」
真耶が来てくれたのか!俺は急いでドアを開けて・・・
「一夏。お前に・・・」
急いで閉めた。何で真耶じゃなくて箒が来るんだ!
「一夏、開けろ!お前に言いたいことがある!」
「箒!今俺の部屋は立て込んで・・・」
「嘘を言うな!マドカと織斑先生が部屋を出て行く所をこの目で見たぞ!」
最悪のタイミングで見てしまったのかよ。
「なら一夏。ドアは開けなくてもいい。そのまま聞け」
「な、何だ?」
「山田先生と付き合っているのか?」
今更、その質問?
「ああ、そうだが」
「本当にか?」
「ああ」
「本当に付き合っているのか?それはお前の思い違いじゃないのか?」
「いや!クリスマスの時に告白したから!」
「それは山田先生の妄想ではないのか?」
「いや、お前の言ってる事が妄想に近いぞ!」
「違う!私の想いは本物だ!」
俺に弾みたいな事をしろって言うのか!?
「だから、一夏。山田先生と付き合ってても良いから・・・」
「天空真剣・・・稲妻二段斬りっ!」
「ぐはっ!」
ドア越しでも分かる・・・誰が箒を斬ったのか。
「一夏・・・わ、私は・・・」
誰かが箒を引きずる音を聞いた俺はドアを開けた。
「一夏君」
目の前にいたのは、涙目の真耶だった。
「真耶、大丈夫だよ。俺は真耶以外の女性とは付き合わないから」
「えっ!?ど、ど、どうして分かったの!?」
涙目から突然顔を赤くして慌てる真耶の姿を見て、俺は思わず笑みをこぼしてしまった。
「真耶の考えてる事、顔に出てたから。部屋に入って。今、部屋には誰もいないから好きなだけ甘えてもいいよ」
「も、もう!一夏君が甘えて来てよ!」
「分かった。じゃあ、後ろから抱きしめながら話していい?」
・・・・・・
「そういう事があったの」
「ああ。真耶は何か知らない?」
「私も初めて聞いたから分からないけど、今度から気を付けないと」
俺は楯無さんと出会ってから千冬姉に連行されるまでの経緯を真耶を後ろから抱きながら話して真耶の誤解を解いていた。
「それにしても謎の組織って、一体何なんだ?」
「うーん?危害を及ぼすような組織じゃないけど、調べないといけないね」
「じゃあ頼む。真耶、あーん」
「あーん」
それにしても、後ろからナポリタンを真耶の口に運ぶのは難しいな。服を汚しかねないし、手元が見えづらいけど、俺がやり出したからにはちゃんと責任を取って行わないと。
「ところで真耶。今度の土曜日は大丈夫?」
「え?大丈夫ですけど」
「だったら、デートしない?」
「でも、一夏君は日曜日に織斑先生との所用が・・・」
「大丈夫。俺が真耶の仕事を手伝って土曜日のデートが出来る様にするから」
「一夏君・・・」
学園内での交流が減らされる分、休日にデートをして交流をもっと深めないと。
「真耶の事を色々知り尽くした気になってたけど、夏休みでまだまだ知らない事が多かった。だから、俺はもっと真耶の事を知りたい。もっともっと知って、もっともっと愛したいんだ」
決して疚しい気持ちで言ってるわけではない。純粋に真耶の事を知りたい。夏休み時に、俺は真耶の事を半分も知っていない事を思い知らされた。真耶の事を知ってより深く愛せるようにしないと、あの四人が何をしでかすか分からない。一人先陣を切って来たけど。
「一夏君。この後、時間ある?」
「ああ」
「じゃあ、書類整理手伝ってくれる?」
「書類整理以外もやるよ、真耶」
「ありがとう。それじゃあ・・・」
真耶は俺の手からフォークを取り、お皿に残った一口分のナポリタンを巻き付けた。
「はい、あーん」
そのまま、ナポリタンが巻きつかれたフォークを俺の口元に近づけた。
「あーん」
至福の夕食を堪能した俺は真耶の部屋で書類作成や整理などの手伝いをして・・・
「お前達・・・とうとう、学園生活と私生活の区別が出来なくなったのか?」
千冬姉に怒られた。
・・・・・・
職員室
「どう?予定の方は?」
「このままだと、学園祭と被るわ」
「別にいいわよ。学園祭は生徒会に任せれば問題ないから」
職員室で行われている会議。そこに居座る女性達は、全員真剣な表情で何かの計画について話していた。
「それに、生徒達の間では『次期生徒会長』に支持が集まってるから、その時は彼女に任せれば問題ないわ」
「ラウラ・ボーデヴィッヒか。彼女なら、私達がいなくても学園生活を送る事も生徒会長になっても問題はないな。彼女と簪の支援組織も誕生し、私達の計画を妨げるものは無くなった」
彼女達の間で行われている計画。それは・・・
「これより、『IS学園 秋の合コン計画』を実施する。合コンが終了次第、この計画は完了する。例え、実施日が学園祭と被っていても合コンを優先する。生徒会とその他の教員が阻止しようとしても、計画を強行するものとする。全員それを理解したものと見なし、解散」
秋の合コンについての話し合いだった。
次回
一夏✕真耶とラウラ✕簪のダブルデート!?
の、予定です。
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