IS 一夏の彼女は副担任   作:陸のトリントン

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今回は動物園デート・・・のハズです。


第50話

真耶が教壇に戻って数日が過ぎた。

 

昼休みでの質疑応答以降、周りの生徒と先生達は俺が真耶と会う度に身構えるんだ。先生たちの質問に答えただけなのに、どうして身構えるんだ?俺と真耶は質問に答えただけなのに。

 

それをマドカに聞いても、呆れるだけで答えは返って来ない。俺と真耶が何をしたと言うんだ。

 

そんな事もあったが俺は一人、公園のベンチに座っている。

 

今日は真耶との動物園デートの日である。今日行く動物園は動物達とふれあえることで有名なデートスポットだ。動物園を事前に調査、デートプランを練って準備万端。

 

服は無地のグレーパーカーに深い青のジーンズ・・・何か凝れば良かったかな?

 

「けど、変な服を着て恥をかくよりかはマシか」

 

後は真耶が来るのを待つばかり・・・なんだけど、妙な胸騒ぎを感じる。

 

「これは・・・久々のデートだから緊張してるに違いない」

 

きっとそうさ。久々の二人きりのデートで緊張してるんだ。1ヶ月も経ってないけど久々のデートなんだ・・・きっと・・・多分恐らくは。

 

「落ち着け、俺・・・そんなに緊張する必要はないんだ」

 

「そうだ。私がいるんだ。緊張する必要は無いだろ」

 

後ろにいる箒の言う通りだ。別に緊張する・・・え?

 

「箒!?」

 

「そこまで驚く必要は無いだろ!」

 

背後にいたのは、白のワンピースと黒のカーディガンに何か大きな手提げ袋を持った箒と赤と黒のチェックのフリルスカートとグレーのパーカーを着た真耶がいた。

 

「何で箒が真耶と一緒にいるんだ!?」

 

「山田先生に一緒に行っていいかと頼んだんだ。そしたら、笑顔で許しをくれたんだ」

 

真耶がそれを了承する訳ないだろ。真耶に脅しの類でもしたんじゃないのか?

 

「篠ノ之さんが一人寂しく公園のベンチに・・・」

 

「一夏。今日は私がエスコートするから、楽しみにしてくれ」

 

「箒。真耶が何か・・・」

 

「さあ行くぞ!時間がもったいない!」

 

「おい!真耶を置いてくな!」

 

「あ、あの!置いてかないでー!」

 

俺の話を聞く耳を持たず、箒は俺の腕を引っ張り真耶を置いて行こうと動物園へ向かった。

 

「さあ、一夏!まずは・・・」

 

「箒。俺の話を聞いてくれないか?」

 

「どうした?」

 

一人で舞い上がってる箒に俺はうんざりしている。突然現れては、勝手に真耶を置いてけぼりにして無茶苦茶にしようとしてる。これ以上、俺のデートプランを無茶苦茶にされるのは何としても阻止しないと。

 

「真耶が一緒に動物園へ行こうって言ったのか?」

 

「ああ」

 

「でも、真耶を見てるとそう思えないんだ。どう見ても落ち込んでるようにしか見えないが」

 

「それは山田先生が疲れてるだけだ。少しは山田先生に休息を与えたらどうなんだ?」

 

その休息を無茶苦茶にされてるんだが。

 

「それにお前は山田先生以外と一緒に休日を楽しんでいない。なら、私がその第一陣を行かなければならない」

 

「誰も、箒に第一陣へ行って欲しいとは言ってないぞ」

 

「幼馴染として心配してると言いたいんだ!」

 

俺は幼馴染のお前が色々と心配だ。

 

「はぁ、はぁ、一夏君、篠ノ之さん。すみません、道に迷ってしまいまして」

 

息を切らしながら真耶が走って来たけど、箒がいるせいで丁寧語で喋ってるよ。

 

「じゃあ一夏。まずはパンダを見に行くぞ!」

 

「おい!真耶を置いて行くな!」

 

箒は俺の話を聞く気は無いみたいだ。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「可愛いパンダだな」

 

「あ、ああ・・・」

 

俺は箒とパンダを見てるんだが、箒が強引にくっついているためあまり良い気分ではない。しかも、真耶は何故か空気を読んで少し離れた所でパンダを一人寂しく見てる。俺は真耶と一緒にパンダを見たかったのに。

 

「どうした一夏。具合でも悪いのか?」

 

「いや。そうではないが・・・」

 

「安心しろ。一夏は私が守るから、お前はこの時間を目一杯楽しんでくれ」

 

俺はこの時間が一時間でも早く終わって欲しいと願うばかりだ。

 

「一夏。キリンでも見に行かないか?」

 

「別にいいけど」

 

「よし。それでは行くぞ」

 

箒は俺の腕を強く掴み、キリンがいる所へ向かった。真耶はその後を追いかける形で付いて来てるけど、俺は真耶と一緒にいたいんだ。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「やはり、一夏と一緒に動物園に来て正解だったな」

 

俺は箒と一緒に動物園に来て不正解だよ。真耶が寂しげに俺を見てるよ。

 

「箒。俺は・・・」

 

「一夏。キリンに餌を与えることができるみたいだ。一緒に与えてみないか?」

 

「俺はいいよ。箒だけで・・・」

 

「そう遠慮するな。一緒に餌を与えようではないか」

 

「俺は真耶と・・・」

 

「ほらほら。餌を与えないとキリンが可愛そうじゃないか」

 

置いてけぼりの真耶が可愛そうだろ。

 

「あ、あの一夏君に篠ノ之さん」

 

「真耶?」

 

箒の一方的な会話の中、真耶が俺の所に駆けよって来た。。

 

「そろそろ、お昼ご飯の時間が・・・」

 

「よし!一夏、一緒に昼食を食べようか。丁度、ここにお弁当があるしな」

 

箒は大きな手提げ袋から弁当箱を取り出した。これって二人分しかないから真耶は食べられないとかではないだろ?

 

「あそこのベンチが空いているから、あそこで食べよう」

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「手洗いに行ってくるから待ってくれ」

 

ベンチに座った俺は走る箒を確認した後、真耶を隣に座らせた。

 

「大丈夫、真耶?」

 

「え?大丈夫だけど?どうしたの?」

 

・・・え?

 

「箒のせいでデートが滅茶苦茶になったから・・・」

 

「別に大丈夫だよ。一夏君だって幼馴染と一緒に動物園に来れて楽しくないの?」

 

「楽しくない」

 

あれで、どう楽しめばいいんだ。俺の話を聞かず、一方的に物事を進める幼馴染と楽しめるわけがない。

 

「俺は真耶と一緒に楽しもうと・・・」

 

「それだったら、夜まで待ってくれない?」

 

夜?そう言えば、夜に日曜日のデート場所を言う話のハズだけど。何かサプライズでもあるのかな?

 

「夜って、一体何を?」

 

「ひ・み・つ♪」

 

笑顔でウインクをする真耶を見て、何かをするのは分かったけど・・・可愛いな。その笑顔をずっと見たいくらいだよ。

 

「一夏、待たせたな」

 

・・・箒がいなければの話だが。

 

「さあ、私が腕に振るった昼食を堪能してくれ!」

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

真耶との昼食後の動物園はまさに苦行の二文字で済むほどのモノであった。

 

どんな時も箒はくっ付いて離れる気配がなく、真耶の話題になるとすぐに話題を変える。真耶の事で行動しようとすると、すぐに別の所へ行かせる。真耶は完全に蚊帳の外である。だけど、夜になったら何かをすると考えているのか、真耶は少し離れた所で見守ってると言う感じだ。でもね、真耶。箒と一緒にいるのは結構辛いんだよ。

 

そんな苦行を耐え凌ぎ、気付けば空はオレンジ色に染まり閉演時間が迫っていた。

 

「そろそろ閉演か・・・」

 

箒は物寂しげに空を見つめているが、俺はこの苦行が終わると思い安堵している。

 

「箒、じゃあ・・・」

 

「一夏、一緒に帰るか。お前に渡したい物があるからな」

 

「いや、俺は真耶と・・・」

 

「よし!帰るぞ!」

 

箒が俺の腕を掴もうとした時・・・

 

「あー。足元滑って鉄山靠が暴発」

 

棒読み全開の台詞と共に、箒が俺の視界から高速で消えた。まあ、こんなことをするのは一人しかいない。

 

「ふぅ。まさか兄さんもここでデートしていたなんてな」

 

制服姿のマドカがいた。というより、何で制服?

 

「私はデートの下見で動物園に来ただけだ。後、制服なのは私服が洗濯中だったからだ」

 

だからって、制服で来るのは問題があると思うぞ。

 

「あの女は私が処分する。だから兄さんは問題なく帰ってくれ」

 

「あ、ああ・・・」

 

雑木林の中で箒のうめき声が聞こえてくるけど、気のせいと思い真耶を連れて動物園を後にした。

 

「真耶、ごめん。せっかくの動物園デートを無茶苦茶になって」

 

「ううん。別に私は気にしてないから。また、動物園デートをすればいいだけだから」

 

俺の謝罪に笑顔で答える真耶は俺の手を握り、ある方角へ指をさした。

 

「それに、今日は学生寮じゃなくてホテルでのお泊りだから・・・ね?」

 

顔を赤くしつつ俺の手を握る真耶を見て、俺も顔を赤くした。真耶は多分・・・うん、そうだろう。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

ホテルの部屋に着いて早々、真耶は用事があると言って部屋を出て行った。

 

白を基調としたダブルベットに46インチの薄型テレビ。40平方メートルもあるのではないかと思うほどの広さ。高級ホテルに泊まってるのではないかと思ってしまうんだが・・・

 

「そう言えば、日曜日のデートは一体どこなんだ?」

 

何かサプライズもあるみたいだけど、一体何だろう?

 

「一夏君、入って良い?」

 

サプライズの中身を考えていたら、真耶の声がドア越しから聞こえて来た。こんなことを考えても仕方がない。真耶のサプライズが悪い訳ないじゃないか。

 

「入って良いよ」

 

ドアがゆっくり開き、真耶が現れたけど・・・

 

「似合ってる・・・かな?」

 

牛の姿をしている。

 

正確に言うと、牛の耳をしたヘッドバンドとブラに鈴の付いた首輪、袖口が広いアームウェアとベルトと尻尾が付いてるミニスカートに厚底のロングブーツ。しかも全部牛柄。

 

真耶・・・自分の体型を見込んでその服を選んだのか!?

 

「似合ってるけど・・・どうして牛?」

 

「その・・・店員さんにこの服が似合ってるって押しに押されて買っちゃた」

 

顔を赤くし答える真耶の姿を見て、俺の心臓の鼓動が早くなっているのを実感する。久々に二人きりという事もあって色々と溜め込んできたものが溢れ始めてきている。

 

「そ、それでね・・・これを」

 

様々の煩悩が駆け巡ってる中、真耶は俺にラッピングされた小さな箱を差し出してきた。

 

「これは?」

 

「開けてみて」

 

俺は真耶の手から箱を取り出し、ラッピングを丁寧に剥がして箱を開けてみた。

 

箱の中には銀色の輝きを放つ指輪が一つあった・・・・・・指輪?

 

「お誕生日おめでとう一夏君」

 

「真耶。これって・・・」

 

「誕生日プレゼントで未来の結婚指輪」

 

「未来の・・・結婚指輪」

 

銀色で飾りも何もないストレートデザインの指輪。やっぱり結婚指輪だったのか。

 

「本当はプロポーズの時に渡すべきだと思ったけど、気持ちが先走りしちゃった」

 

真耶は申し訳なく謝ってるけど、謝る必要は全くないのに。

 

「大丈夫だよ。俺が真耶のプレゼントで嫌がった事なんてないだろ?それに・・・」

 

「ひゃあ!?」

 

俺は真耶をベットに押し倒して、右手の薬指を見つめる。そこには同じデザインをした指輪がはめられている。

 

「真耶とおそろいの指輪が嫌いなんてないじゃないか。最高の誕生日プレゼントをありがとう」

 

「一夏君・・・」

 

「真耶・・・」

 

「好き・・・」

 

「俺も好きだよ真耶」

 

俺と真耶は互いに顔を近づけ、互いの吐息が掛かるまでの距離まで迫った。

 

「真耶、明日の日曜日はどこでデートするの?」

 

「明日は遊園地でデートなんだけど・・・」

 

「大丈夫。夜はまだこれからだから」

 

時計の針は8時をさしているのを確認し、真耶の右手から右腕、右肩へなぞるように手を移動させた。

 

「牛さんだから・・・優しくしてね」

 

「分かったよ。高級のローは優しく丁寧に扱うよ」

 

「・・・もう、一夏君のエッチ」

 

俺と真耶のディナーはこれから始まるのであった。




気付けばこの作品、50話も執筆していました。

皆さま方の応援のお陰で何とかここまで書けています。

これからも応援のほど、よろしくお願いします。

次回は遊園地デートを執筆する予定です。
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