IS 一夏の彼女は副担任   作:陸のトリントン

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千冬が不機嫌になるのも納得・・・しますよね?


第54話

一夏と真耶が遊園地に向かっている中、IS学園の職員室で恐るべき計画が実行されようとしていた。

 

「みんな揃ったみたいわね」

 

「ええ。まさか、予定より早く実行できるのは嬉しい誤算だわ」

 

「ここからが正念場」

 

「勝者には天国が待っており・・・」

 

「敗者には地獄か待っている」

 

「ここまで協力して来たとはいえ、ここからは全員ライバルよ!」

 

「DEAD・・・or・・・ALIVE」

 

それぞれの想いを口に出し、メイクやアクセサリ等の準備を進めていた。

 

「そろそろ時間よ」

 

「行きましょう。私達の戦場へ・・・」

 

午前8時30分。乙女達(?)は、戦場へ・・・

 

 

 

「待てい!」

 

 

 

行けるはずがなかった。

 

「この声は!?」

 

「どうして!?この計画は口外禁止のハズよ!」

 

「何故、あなたがそこにいるのよ!?」

 

職員室のドアに立ちそびえる人影。背後からのスポットライトで姿が良く見えないが、正体は察しがついている。

 

「戦いの虚しさを知らぬ愚かな者たちよ・・・戦いは愛する者たちを助けるためにのみ許される」

 

その人影に乙女達(?)は子羊の如く怯え始めた。戦場に赴く前に散ってゆくことを予感して。

 

「その勝利のために、我が身を捨てる勇気を持つ者・・・人、それを英雄と言う!」

 

「私達の戦いを邪魔するあなたは誰!?」

 

「貴様らに名乗る名前はないっ!」

 

「あるでしょっ!織斑千冬と言う名前が!」

 

名乗りについて突っ込まれても、千冬が動じることは無かった。

 

「織斑先生。どうして私達の邪魔をするのですか?」

 

「急いて出会いを求めても、虚しい結果が残るだけだ」

 

「やってみなければ分からないでしょ!理屈だけで物事が進むわけじゃないから!」

 

「理屈で言ってるわけではない」

 

「織斑先生だって、恋人が欲しい気持ちぐらい分かるでしょ!」

 

「分かるが、そういう事を言いたい訳ではない」

 

「じゃあ、何なんですか!?」

 

乙女達(?)は怒りを露わにしているが、千冬はその姿にため息をするしかなかった。

 

「お前達がいなくなったら、この学園にいる教師は私を含めて5人になるんだぞ?」

 

「5人もいれば十分です!」

 

既婚者とSHINOBIだけで運営できると豪語する乙女達(?)に千冬は頭を抱えざる得なかった。

 

「お前達・・・休日だから好き勝手にやって良い訳ないだろ」

 

「分からないの織斑先生!私達から溢れ出る恋のエナジーを!」

 

「ジェラシーの間違いではないのか?」

 

「私達だって、山田先生みたいな恋愛がしたいのよ!」

 

「山田君の恋愛は参考にしなくていい」

 

「織斑君みたいな人に、いろいろと責められたいの!」

 

「愚弟は私が始末する」

 

乙女達(?)の叫びに千冬は呆れながら返答している。それでも乙女達(?)の想いは、とどまる事を知らない。

 

「織斑先生も一緒に行けば分かります!この想い!この気持ち!恋に賭ける覚悟を!」

 

「織斑先生だって、恋人が欲しいと思ったことがあるでしょ!?」

 

「合コンの一つや二つぐらい経験しないといけませんよ!」

 

「織斑先生だって、本当は山田先生の事が羨ましいでしょ!」

 

乙女達(?)の言葉に耳を傾けた千冬だが、これ以上聞いても埒が明かないと判断し・・・

 

「ハイクを詠め」

 

乙女達(?)を成敗し、事を終息させた。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「あいつらに教員としての自覚があるのか?」

 

成敗し終えた千冬は、端が若干赤くなっている出席簿を片手に整備室付近をパトロールしている。広大なIS学園は、パトロールのタイムスケジュールが組まれており教員達はそれに沿って、パトロールを行っている。ちなみに整備室付近のパトロールは真耶が担当であるが、デートが入ってたために急遽千冬がパトロールをしている。

 

「山田君も山田君だ。休日ならまだしも、平日でも愚弟を甘やかし過ぎている。私が二人に喝を入れるべきだな」

 

独り言を呟きながら整備室の前を通り過ぎようとした時、整備室内部から不穏な声が扉越しに千冬の耳に入り込んだ。

 

『うふっ・・・ん・・・はぁ・・・』

 

「はぁ。いつになったら、あいつに常識が身につくんだ?」

 

溜息を漏らしつつ千冬は整備室のドアを開けず、壁にのめり込まれる様に整備室に入った。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

整備室の隅で、ラウラ・ボーデヴィッヒが更識簪の体を葬っている。

 

「はぁ・・・あぁ・・・んっ!」

 

「ほう。わき腹からうなじに沿って逆撫でされると反応するのか」

 

「んん・・・くっ!・・・あ、あぁ・・・」

 

息は乱れ、頬を赤く染め、服はラウラに上着を脱がされたまま葬られている。だが、羞恥と愉悦の二つのせめぎあいを心から楽しんでいるのか、簪は抵抗する様子もなくラウラに体を葬られている。

 

「大丈夫か?無理をして立ってる必要は無い。座ってでも、これぐらいの事はできるぞ」

 

「う、ううん・・・立ってた方が・・・気持ち良い・・・の・・・」

 

「そうか。だが、これ以上は無理だと判断したら力づくで寝かせるけどいいか?」

 

「うん・・・ねえ、ラウラ?」

 

「どうした?」

 

「私って・・・変?」

 

突然の質問に、思わずラウラの目が丸くなってしまった。

 

「ラウラに体をいじられて・・・それを誰かに見られたいの。それって、オカシイの?」

 

「変だとは思わないが、その事で不安に感じる簪はおかしいと考える」

 

「え?」

 

不安な表情で問いかける簪に、ラウラは少しキツメの口調で答えた。

 

「私は嫁を悦ばせたり、気持ちのいい顔を見るのを最高の至福だと言っても過言ではない。それに不安や疑問を持たされると、嫁とどのように接すればいいのか分からなくなる。最悪、嫁と接するのが嫌になるのかもしれない」

 

「ごめん。私、ラウラの気遣いに気付かなくて・・・」

 

「嫌だったら嫌と、気持ち良いと思ったら気持ち良いと素直に言ってくれ。それに、他人の目を気にする必要は無い。お前と私が恋仲なのは周知の事実だ。他人が何を言おうと、お前はおかしくない」

 

「ラウラ・・・」

 

簪の安堵した表情を見続けた後、ラウラの右手が簪の腹部から下へと差し伸べた。

 

「簪、準備はいいか?」

 

「うん・・・ラウラは?」

 

「私をその気にさせる事が出来るなら、話は別だ」

 

ラウラと簪の戯れは常にラウラが主導権を握っている。簪に主導権を譲る事もあるが、上手く主導権を扱う事が出来ずにラウラに戻ってしまう。簪自身もラウラを悦ばせようと努力をしているが、喜ばせようと頑張っている簪の姿にラウラが悦びを感じていることに気づいていない。

 

「じゃあ、私が先に・・・」

 

 

 

「先に成敗されたいという事か・・・」

 

 

 

「「!?」」

 

低く、冷たく、慈悲もない声が二人の背後から響き渡る。

 

「きょ、教官!?」

 

「ボーデヴィッヒ・・・まさか、それも副官の入れ知恵か?」

 

「いえ!日本では、恋人との触れ合いはこのようにしていると雑誌で書かれてありました」

 

ラウラの堂々とした返答に呆れつつ、上半身下着姿の簪に視線を移す。

 

「更識。私から見たら、お前はオカシイと思う」

 

「え・・・」

 

「誰かを悦ばせようとするのはおかしくない。だが、そのために行っている事はオカシイという事だ」

 

「そ、そんな・・・」

 

千冬の発言に、簪は驚きの顔を隠せずにいた。

 

「だが、その前に一つすべきことがある」

 

千冬は出席簿をどこからともなく取り出し・・・

 

 

 

「ハイクを詠め」

 

 

 

二人を成敗するのであった。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「はぁ。ボーデヴィッヒと更識の二人にはいつも頭を悩ませる。二人共、変に馬鹿正直な所があって下手な初言はできない」

 

成敗し終えた千冬は、全体が赤くなっている出席簿を片手に武道場付近をパトロールしている。

 

「山田君があんな風に愚弟と接していないか、不安になってくるな。マドカもあんな風にならなければ・・・」

 

姉としての愚痴を止め、武道場に視線を移した。

 

「・・・やれやれ」

 

ため息をつきつつ、戸を開けて正面から武道場に入った。

 

「ふんっ!ふっ!はっ!やあっ!」

 

武道場の中央で一人の少女が一心不乱に竹刀の素振りを行っている。素振りをしてる姿は武人としての・・・

 

「一夏・・・何故、私から離れようとする。昔はそんな奴では無かったハズなのに・・・」

 

威厳も姿も無かった。

 

「山田先生が原因で。一夏は私を見向きもしなくなったのか。体つきは私より断然良いが、心で負けてるつもりはない。それを一夏に教えてやらないとな」

 

武人ではなく、ストーカーの類になっても一夏への想いは変わる事はなかった。

 

「一夏、待ってろ。必ず、私がお前を・・・」

 

「それは無理な話だ」

 

箒の背後から静かに歩み寄って来たのは、幾多の激戦を駆け抜けたSHINOBIではなく・・・

 

「お、織斑先生!?」

 

ブラコンの織斑千冬であった。

 

「箒・・・お前はいつまで夢物語を見ているつもりだ?お前の知っている一夏はもういない。いい加減、一夏と山田君が付き合ってるのを認めろ」

 

もはや呆れるのも馬鹿らしいと思いつつ、箒に再度警告を行った。

 

「認めるもなにも、不純異性交遊をしてる二人を放っておくのはオカシイです。なので、私が・・・」

 

警告を聞かずに持論を展開する箒の頭上に、黒い一閃が音もなくぶつけられた。

 

「警告をしたはずだ・・・一夏と山田君の交際を認めろ。さもなくば、ハイクを詠め」

 

織斑千冬が『普通』の姉としていられる時間は3分もなかった。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

身勝手な連中に我慢の限界が近づいている千冬は、真紅の水が垂れている出席簿を片手に校門付近をパトロールしている。

 

「身勝手な連中が多過ぎる。これでは学園が崩壊するのも時間の問題だ。何とかしなければ・・・」

 

一人で考え込む千冬の耳に聞き慣れた声が入ってきた。

 

「学園に着いたけど、まだお昼頃だね」

 

「そうね。ねえ、一夏君。一緒にお昼ご飯でも・・・」

 

「はーい!ストップ!」

 

校門前で会話(?)をしている一夏と真耶と鈴である。

 

(鈴も鈴だ。いつになったら、一夏と山田君との付き合いを・・・)

 

千冬が呆れつつ、ふと200m先にいる一夏の右手を見てみると・・・

 

「指輪?」

 

右手の薬指から輝く銀色の光。真耶の右手の薬指に視線を移すと、銀色の光を放っている。

 

「あの、バカ二人・・・温泉旅行の時に言った事を忘れてるな。プロポーズは卒業してからだと・・・!」

 

堪忍袋の緒が切れ始めた千冬は出席簿を片手に疾風の速さで三人を成敗し始めた。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

一夏の部屋で正座している一夏と真耶に、千冬は二人の指輪の没収を命じた。

 

「二人共、罰として指輪を没収する」

 

「「ええっ!?」」

 

「当たり前だ。お前達が指輪をしてみろ。周りの連中が暴徒となって学園を荒廃させるぞ」

 

千冬の警告に真耶は慌て始めるが、実感が湧かない一夏は首を傾げて考え込んでしまう。

 

「そんな大袈裟な事はないだろ。恋人が指輪するぐらい・・・」

 

「それが大きな問題だ。この学園には恋に焦がれる奴も少なからずいる。指輪を見たら、嫉妬と焦燥に駆られて何をしでかすか分からん。今朝、それが起きそうになったからな」

 

「大丈夫だよ千冬姉。俺が真耶を・・・」

 

「山田君以外の人を心配しろぉ!」

 

一夏による愛の主張は千冬姉の前で揉み消された。




次回は、学園祭に向けての準備を含めた日常回の予定です。

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