ガンダムSEED⇔(ターン)外伝 アストレイ リ:カズイ   作:sibaワークス

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Reverse phase 1 「脱出」

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 「全てのドラマにおいて、主人公という役所はない」

それは、ともすれば、この世界、歴史上の全ての出来事に於いてもそうと言えるだろう。

 

 歴史とは、世界とは一個人が動かせるものではない。

 多く人間の意志が、様々な要因とその総意を持って形作って居るのだ。

 

 

   そこに、時代の顔たる"主役"はあれど――世界の中心たる主人公は居ない。

 

 しかし、それでも人の世界の物語が、主人公を求めるのであれば、

 この世界に生きる、一人一人が主人公といえるのかもしれない。

 その一人一人の思いが、世界を作っているとすれば、だ。

 そうも言えるのではないだろうか?

 

 それならば、名も無き、人々――。

 道を外れた迷い子こそ――世界はアストレイこそが形作っているのだ。

 そう、誰もが道ありき主人公ではないのだから。

 

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 ここ……どこ……どうしよう、お母さんとはなれちゃったよ…

 

 あれ……人なの?

 だれか、たおれてる。

 

 「畜生……俺は……」

 

 緑色の服……ザフトのぐんじんさんだ…

 どうしよう……ココをおそったのはザフトだってお母さん言ってたけど…

 

「ウウウゥ……」

 

 けがしてるみたい……。

 うん、こう言うときは人助けだよね

 ザフトにはマリュー・ラミアスさんていういい人がいるって、ニュースでも言ってたし。

 きっとこの人もこわい人じゃない。

 

 「だいじょうぶ…?どこかいたいの?」

 

 「ウゥ…水…」

 

 よかった、だいじょうぶそうだ。

 

 「わかった、お水ね、今もってくるから。 おにいちゃん、おなまえは?」

 

 「カ……ズイ」

 

 

 

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機動戦士 ガンダムSEED ⇔外伝「ASTRAY Re:Kuzzey」

 

アストレイ リ・カズイ

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 どのような国家にも暗部は存在する。

如何なる大義名分を抱えようとも、生理的に他者を害することでしか生存を図れない人類が、

それでも共存しようとするには――公にはできない、陰部の発生が余儀なくされるのである。

 

 それが、人間の歴史に深い闇を作ることもあれば、逆に、その闇が人類の歴史を支える道標となることも多々あった。

 どこに生きようと、人は光を求め、逞しく生きるほか無いのである。

 

――それはこの男も同じだった。

 

 

「……ウチにそんな仕事頼みたいと? どこで、その話を?」

「ウチは単なるジャンク屋なんですがねー?」

 

 

 男が居る。

 

 少々散らかった応接間に、向かい合うように置かれたソファ。

 その一方に、高級そうなスーツを着た男が座っている。

 その向かい側には、若い男が二人。

 一人は、やや小太りな体型をした、少年とも言える若さで、

 もう一人は――色眼鏡を架けた精悍な青年であった。

 

 そして、その脇にある、 社長席、と書かれた席には、

 それよりも一回り年上そうな、グラマラスな女性が座っていた。

 

 「誰に聞いたか――それは言えません。 ですが、どうしても穏便にすませたいのです」

 「ウチに頼む前に、こんな仕事は多国籍のPMCにでも頼まれたらどうですか?」

 「PMCは、傭兵はダメです。 連合国に軒並みマークされています。 だからこそ、あなた方に頼みたいのです。

 ジャンク屋でありながら、傭兵たちをも凌駕するという、あなた方に」

 

 「いいんじゃないの? でも、キナくさい話よね」

社長席の女性が言った。

 

 「こんな事を……ザフトに気づかれたんでは、コロニーがタダで済むとは思えません、外交努力なりで何とかされたほうが……」

少年のほうが言った。

 

 「……最悪コロニーを失うところまで計画のウチです」

 「なんですって?」

  話は、思いのほか大きいようである。

 「もちろん、そんなことはあってはなりません。 ですからこそ、あなた方にお願いしたいのです」

 「報酬は?」

青年のほうが言った。

 「この額と、その秘密の機体――そのウチの一機を、お渡し致しましょう」

 「――へぇ? 国が傾きかけないモノを、一介のジャンク屋風情に?」

 「ザフトと、連合に、それがバレなければ――アレがあそこに――ヘリオポリスにさえなければ良いのです」

 「オーブも大変だな」

 「――どうする? キャッシュだけでも、良い額くれてるけど?」

 

若い男のうち、一人が考えこむ、すると。

 

 「こんにちはー! ……アレ? 今日はお仕事だった?」

その部屋に、少女が一人入ってきた。

 「こ、この子は!?」

スーツの男が慌てふためく。

 

 「その子は大丈夫だよ、僕らの仲間だ」

 「な、仲間!?」

 

 

 「悪いな、急な仕事でな……」

 「えー? ムーン・ボールの試合見に行く約束でしょう! 今日はブルグレンとベイブルで準決勝よ!」

 「ああ、試合には間に合わせるさ、リードに今までの負け分払わせないとだしな……」

 「え、あの……」

 大事な話の最中に腰を折られた男はどうしてよいかわからなくなっていた。

 

 だが、

 「受けるさ」

 青年が、そう返答した。

 

 「え……」

 「そのマシン、面白そうだ……ロレッタ!」

 男は、社長席の女性に声をかけた。

 「はいはい、契約成立ね――あとは、サーペント・テイル商会にお任せアレ!」

 「え、ええ……たのみます」

 

 「そうと決まればムーン・ボールだ! コーディネイターが出なくなって、ちょっと退屈だがな」

 「えー、ゴステロが居ればいいでしょ?」

 「イライジャも行くだろ?」

 「……賭けなくていいならね」

 「お前、賭けは弱いもんな」

 

 と、言うと、オフィスから三人は出て行った。

 

 「あ……」

絶句して置いてけぼりを食らうスーツの男。

 「どうしました? お客さん?」

 「いえ……もっとシリアスな人を想像していたのですが」

 「劾のこと? 叢雲劾はいつだって、あんな調子よ」

 

 

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 早い! 安い! そして確実。

 冷蔵庫からロケットまで。

 自家用車から宇宙戦艦まで。

 解体撤去から修復まで

 デブリとジャンクの事なら、サーペントテイル商会に任せれば安心です。

 

 「大丈夫、大丈夫!」(叢雲劾の笑顔)

 

 ――――サーペント・テイルに任せとけ!

 お電話番号は――……

 

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――叢雲劾は、その筋では有名なジャンク屋であった。

 

 恐ろしいほど仕事が早く、どんな部品でも調達してくる。

また、抜群のモビルスーツ・操縦技術を持ち、ザフトと連合の戦争で加速的に増えたスペース・デブリを、見事に回収し、宇宙と地球の分断や、民間コロニーの事故を防いでいた。

 

 が、それは表の顔に過ぎない。

 

 彼の正体は、どんな仕事もこなす、――非合法かつ、完璧な――闇の商人(ブラック・バイヤー)

 サーペント・テイルに頼めば核ミサイルも手に入るとされる。

 

 彼の所属するサーペント・テイル自体は月面都市に居を構え、

ノンキに月のケーブル・テレビのローカル・チャンネルにCMを流すような零細企業の体をなしていた。

 しかし、その正体については、都市伝説で語られる秘密結社ロゴスがバックボーンについているだとか、

 ブルーコスモスから資金が流入しているだとか、ザフトのパトリック・ディノが創設に関わっているだとか、

非常に胡散臭い噂の種となっているのであった。

 

 そのどこまでが本当かは、当人たちしか知らない。

 

 しかし、誰もが、当人たちを見ても、そのような噂が真実かは、一向に検討がつかないだろう。

 

 「レイ――今年のムーン・ボールはどこが勝つと思う?」

 劾は、車を運転しながら、助手席にあるトランクに話しかけた――。

 トランク、といったが、それは見た目の事であり、その中身はノートPCのようなコンピュータ端末が詰め込まれていた。

 

 ボディの隅に 型式番号のようなものが刻まれている。

が、大分擦り切れていて、何が書いてあるかは、誰の目にもまるで読み取れない。

 無論、劾にもそうであった。

 

 劾にはR*-*8 Am*r*-ray spと、だけは読み取れた。

 だから、劾は、このコンピュータに、読める箇所の名前をとって”レイ”と名づけた。

 

 『優勝はチーム・ザカールだと思います』

 レイから女性の声がした。

 

 この正体不明のAIは、驚くべき事に人間と対話できるようであった。

ガイは、このコンピューターに、音声合成ソフトと認識デバイスをインストールし、会話を行えるようにした。

 「あのチームは強いからな――風花は?」

 「あたしもザカールかなー? リードはブルグレンって言ってたよ? また賭けるの? 今年はどこ?」

 

 月のホール・ウェイ(密閉道路)を疾走しながら、劾は月面を眺めた。

 

 ここも、今のムーン・ボールの大会が終われば、軍に接収されてしまうだろう。

 また、事務所を移さねばならないと劾は思った。

 

 その為にも資金は必要だった。

 

 「……ブルグレンもザカールも良いが、今年はチーム・レイズナーだな。 俺の全財産賭けてしまおう」

 「いいの?」

 『いいんですか?』

 「俺の悪運は宇宙一だ」

 『非、論理的です』

 「ナチュラルだからな」

 「あー、コーディネイター差別」

 「良い男は、運も良いんだ」

 「……劾って格好いいね」

 「イライジャはもうちょっとやせないと」

 「うう……」

 『イライジャさんの体重は適正範囲内です』

 「ありがとう、レイ。 レイは可愛いんだな」

 『私は機械です。 お断り申し上げます』

 「うう……」

 「レイ、ジョークまで言えるんだ……」

 

 

 「さ、ついたぞ」

 

 三人と、機械1台を乗せた車が、スタジアムについた。

 今はムーンボールを楽しもうと、劾はつとめた。

 

 仕事以外のプライベートも楽しむから、劾は強いのだ。

 

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 ジンがやられる寸前

 

 ――あの赤いモビルスーツに切り裂かれる瞬間、咄嗟に脱出レバーを引いた。

 

 

 体を強く打ちつけたけど、なんとか命は助かったようだった。

 そして、目が覚めると、そこには5、6歳くらいの女の子が居た。

 

 「君……は?」

 「エル」

 エルちゃん……?

 

 ヘリオポリスの子かな…。

 それにしても攻撃してきた軍の兵士を助けるなんて……?

 子供だからかな?

 まあ、ザフトでもマリュー・ラミアス隊長なら敵味方区別なく助けちゃうんだけどさ。

 

 「お兄ちゃん、だいじょうぶ?」

 「う、うん、ありがとう、大丈夫だよ。」

 「よかった」

 エルちゃんは可愛らしくにんまりと微笑んだ。

 

 でも、さっきまで自分が攻撃しておいてなんだけど……この子、避難民かな……。

 

 こういう子がいるところを……俺は攻撃してたんだ。

 

 「ところで、君、お父さんとかお母さんは?」

 罪悪感を紛らわせるため、話しかける。

 「わかんない、はぐれちゃった…」

 「どこからきたかわかる?」

 「うん、なんとか」

 

 こういうコロニーは大抵、

 シェルターは居住ブロックに一つ付いている。

 

 プラントといっしょのはずだ。この子の住んでいた地区に行けば、この子の両親がいるシェルターも見つかるだろう。

 

 って、俺、この子を助けようって……?

 さっきまで、敵軍の兵器を隠していたコロニー、犠牲も止むなしって言ってたのに……? なんだか変なことになちゃったなあ……。

 

 

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 ――月でムーンボールの艦船を終えてから数日。

 劾は、連合とザフトの戦闘の間を縫って、ヘリオポリスのモルゲンレーテへと侵入していた。

 

 いのほか、侵入自体は簡単だった。

 「情報どおりだな」

 ――クライアントから渡された裏道を抜ければ、誰にも見つからず、

 簡単に工場区の最奥までいけた。

 

 ――劾は、目の前に着座する、青いモビルスーツを見上げる。

 オーブが連合からデータを奪って完成させた、例のモビルスーツだった。

 

 

 「待ちな」

 そこへ――予期せぬ侵入者が、ザフトか?

 

 「――そいつは、破壊する」

 傭兵――? 

 

 「はめられたか?」

 劾は思った。しかし、あの依頼主の様子を見るにそうは思えない。

 と、すれば、どこか別の勢力が、目の前の男を雇ったと思うべきだろう。

 

 「――イライジャッ!」

 「ン――!?」

 

 劾は相棒の名を呼んだ。

 妨害を予想して隠れていた小太りの男が、その体型と温厚そうな表情からは想像できないすばやさで、傭兵らしき男の体を羽交い絞めにした。

 だが――。

 「甘い!」

 「!?」

 

 傭兵らしき男は、イライジャを、片手でいなすように投げ飛ばす。

 

 (イライジャをああも簡単に――並のコーディネイターを寄せ付けない、人間離れした動きをするイライジャを――!)

 唯の敵ではない。

 

 一か八か、劾は跳んだ。

 

 そして、軽やかな足取りで、モビルスーツのコクピットに上った。

 

 「チ、ならば仕方ないか」

 「劾!」

 

 イライジャは劾の狙いを理解し、傭兵らしき男を警戒しつつ、その場を離れた。

 

 傭兵らしき男は、青い機体の傍らに置かれていたもう一方の――赤い機体に乗り込んだ。

 

 劾の機体に、オープン・チャンネルで通信が入る。

 

 「その機体、破壊する、直ぐに出ろ。 大方オーブの政治屋に依頼されたんだろ?

  目撃者の始末までは依頼内容に無い」

 「ほう? お前、名前は――」

 「降りないのか――降りないなら、これからアンタは死ぬ。 名前を聞いても意味がないぜ?」

 「それなら、余計に聞いておきたいな」

 

 「なら、ロウ・ギュール――とでも名乗っておく」

 

 「法の口穴(Law gueule)? でたらめだが、ルール無用ってところか――ただならぬご職業についてるご様子だな、おい、レイ! モビルスーツを動かすぞ、機体制御頼む」

 『了解――解析完了、MBF-P02アストレイ――起動。 操作説明を行いますか?」

 「やりながらで頼む」

 「――? ふざけているのか? 俺は――?」

 「フフ、これが俺のスタイルでね――行くぞ!」

 

 青と、赤、2体のモビルスーツが、向かい合う――。

 

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 「娘が、娘がそこにいるんですか!?」

 シェルターのドアの開閉装置に取り付けてあるマイクとスピーカー

 ―――内部と会話する為に取り付けられているものから、

 エルちゃんのお母さんらしき人の声が聞こえる。

 

 彼女住んでいた地区のシェルターは見つかった。

 だが、警報レベルが9に移行している為 ドアが開かない、

 エルちゃんは必死にドアにしがみついていた。

 そのとき、

 

 ウウウウウウウウウウウウウウン

 

 一際大きい警報が鳴り響いた、そして轟音と巨大な地響き。

 

 「警報レベルが10に移行しました、このシェルターは救命艇として、パージされる可能性があります。」

 

 なんだって!?

 ……あれはルークさんとゲイルさんのジン――それに地球軍の戦艦!?

 戦闘が始まったのか……コロニーの機関部が流れ弾に当たり爆発している。

 

 「ママ!パパ!!」

 エルちゃんは必死に開かないドアに叫んでいた。

 「だめだ!もうドアが開かない!!」

 「そんな!! ああ……!」

 中から母親らしき人の声が聞こえる。

 

 

 やばい、さっきよりコロニーに被害が拡大しているみたいだ……!

 やばい!やばいよ!

 「エルちゃん!もうヤバイよ!ココを離れないと!」

 「いや!ママたちといっしょにいる!!」

 

 エルちゃんはそう言って聞かない…そのとき、ドアのスピーカーから声がした。

 

 「そこにいる人…お願いです、娘をつれて逃げて…」

 「え……!?」

 「早く……!お願いします!!」

 

 そんなこといわれても…エルちゃんは泣きじゃくっているし…

 

 「……そこにいる人の言うことをよく聞いてね? さあ早く逃げて……娘をどうか、どうかお願い!」

 ……もうこうなったらしょうがない!

 「エルちゃん! ……わ、わかりました!」

 「やだ!やだよ!!」

 

 俺はエルちゃんを抱えて走り出した…俺の乗ってきたジンは大破して使えない。

シェルターは恐らく、どこもあんな状況だろう…。

 なら、そうだ……工場区なら……救命ポッドやノーマルスーツぐらいあるかもしれない。

 

 

 俺は工場区へと向かった。

 

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 コロニーの奥部、工場区の中、

 武器の無い、2体のモビルスーツは最も原始的な戦闘、格闘戦を繰り広げていた。

 

 2体とも武器を使わず――殴り合い!

 

 が、しかし、お互いの拳は空を切る。

 互いが互いの間合いを理解し、拳の軌跡を読みあう。

 これは二人が卓越したモビルスーツの操縦技術を持っていることと――生身での格闘にも長けていることの証明でもあった。 

 

 「ビーム・サーベルを抜かないとは、すごいな……わかってるんだなアンタ」

 「こちとらジャンク屋でね、こんなエネルギー食いを使って、帰れなくなったら困る」

 「ジャンク……ザフトじゃないのか? ……プラントのジャンク屋?」

 「月で、先輩の奥さんに金を借りて店を開いてる。 それに俺はナチュラルだ」

 「あっきれたー……マヂかよ、ナチュラルが俺と互角ねえ……ってことは、噂に聞く、白ヘビ商会……」

 「サーペント・テイルと呼べ、折角格好良い名前なんだ」

 「……」

 

 ロウ・ギュールが苦笑する声が聞こえた。

 

 ――その時、一際大きい震動がした。

 

 「そろそろ時間が無いようだな。 決着を付けよう」

 「そうだな――レイ!」

 『ビーム・サーベルの使用を提案』

 「いや……サーベルはいい、それよりファイト・カウントをしてくれ」

 『え……』

 「ハァ?」

 ロウにも聞こえていたので、思わず聞き返してしまった。

 

 「男の戦いには必要だ――」

 『理解不能』

 「ロマンに理解はいらない、共感だけが必要だ」

 『機械の私にそのような能力を求めないでください』

 

 「……面白いヤツだな、アンタ」

 ロウ・ギュールが通信機の向こうで笑っているのが聞こえる。

 

 「勝負、しないのか? ――俺はムラクモ・ガイ!」

 

 張りのある良い声で、劾は言った。

 

 「ロウ・ギュールに勝負を申し込む!」

 

 「ふふふ……あっはっはっは!! 傭兵家業長いけど、あんたみたいのは初めてだ……いいぜ?」

 

 ロウ・ギュールも、笑いながら、モビル・スーツにファイティング・ポーズを取らせた。

 『理解不能』

 

 「いいじゃないか、これが男というものだ」

 『違うと思います』

 

 レイは言った。 しかし、その後、彼女(?)も機械なりに思うところがあったのか

 『仕方ありません、いきます』

 と、述べた。

 

 『レディ――』

 レイが、言った。

 

 

 

 「「ゴオオオオオオオオオオオオオ!」」

 

 

 

 

     二人の漢が叫んだ。

 

 

 

 

 

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 よかった!あった!

 救命ポッドが見つかった、古臭い感じがするが、

 これならなんとかなるだろう、エルちゃんを抱え込んで、飛び乗った。

 

 とたん、コロニーに大穴が開いて、空気が漏れ始めたようだった。

 ……やばかった後一歩…遅かったら…

 

 「お兄ちゃん……」

 エルちゃんは泣き止んだが心配そうにしている。

 「ああ、もうだいじょうぶだよ、多分」

 僕は救命ポッドの操作をはじめた……。

 あれ……? これどうやるんだっけ?ザフトのと形が違うし…旧型だし…。

 ヤバイ……とうとうコロニーが崩壊した…くそお…このままじゃ瓦礫に飲まれて、なんにもなりゃしないじゃないか……。

 

 「お兄ちゃん……だいじょうぶだよね……お兄ちゃんコーディネイターだもんね…だいじょうぶだよね。」

 

 ごめんエルちゃん……お兄ちゃん……コーディネイターだけど……このポッド……動かせないよ。

 

 コロニーが裂け、宇宙に空気が吸い込まれていく……このポッドも空気の渦に飲み込まれた。

 ……うわああ!もうだめなのか!?もう…なんとか、なんとかならないのか!?

 

 「うわあああああああああああ!」

 「きゃあああああああああああ!」

 

 ……必死にコンパネを操作する……動いた! やった!何と助かりそうだ!

 

 残骸をかろうじて避けて行く……

 空気の渦の中、やがてポッドは宇宙の闇に飲み込まれていった……。

 

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 激しい、格闘戦。

 

 コロニーの崩壊を気にも留めず、ガレキからガレキに飛び移り、

 お互いの拳を防いでは打ち込み、防いでは打ち込んでいく――。

 

 そして、そこからは、腹の読みあいだ。

 

 (チッ、ラチがあかない。 カウンターで一気にケリを付ける)

 と、劾。

 (――と、ジャンク屋は考えるだろうから、俺はあえてストレートで飛び込み、裏をかく)

 と、ロウ。

 (――と、裏をかいてくるだろうから、更にそれを予想し、バックステップしてから頭部へのキック)

 (――と、裏の裏をかいてくるだろうから、それを予想して、腹部へのアッパーカット! コクピットクラッシュ!)

 (――と、傭兵は裏の裏の裏を書いてくるだろうから――ああ――)

                 ((面倒だ!))

 

 

 二人の男は、考えるのを辞めた。

 

そして、

 

 

   「レイ、次の一撃に全てを賭ける! 行くぞッ!!」

             『了解』

 

 「オーケイ! ジャンク屋! 俺様のクソヂカラ、見せてやる――ッ!!」

 

 

 

       「「でぇやあああああああああああああああああああああ!!」」

 

 

 

 赤と青、二機の機体が、男と男の魂が、崩壊していくヘリオポリスの中で、今――激突――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「救命ポッドだ……」

 

 二人の間に入る形で、旧式の救命ポッドが流れていった。

 

 思わず、二人は戦いをやめた。

 「ン……、ジャンク屋、拾っていくのか?」

 「ああ、見過ごしてはおけん」

 「――そうか、なら――」

 

 と、そのとき、二人の乗るモビルスーツのレーダーに反応があった。

 

 

 「正体不明機――このモビルスーツと同じ識別信号をしたものがこの宙域から離脱――?」

 「金色のモビルスーツ――? オーブ奴、ハナから、あの機体の回収が狙いか」

 「この二機は最初から、どうなってもいい? オーブ国内のいくつかの勢力を煽って――アンタと俺をぶつけた?」

 「だな――もしかしたら、このコロニーの崩壊も――戦闘だけが原因ではないのかもしれん」

 劾は言った。

 

 「ジャンク屋さんよ……その機体、やるよ」

 「いいのか?」

 「クライアントに嵌められたようだ。 ――なら、契約は反故だろ?」

 「ロウ・ギュールと言ったな。 覚えておく」

 「ああ、アンタも……ガイ・ムラクモか、楽しかった。 また会おうぜ?」

 

 

 赤いモビルスーツはヘリオポリスの宙域から離脱していった。

 

 『生体反応を確認、2名』

 

 レイが、ポッドの中の状態を確認した。

 

 「――そうか、レイ、リードにつないでくれ、ミハエル先生のところに連れて行く――」

 

 

 

 

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カズイの腕の中で、エルは気を失っていた。

 

カズイもまた、衝撃で気を失っていた。

 

 

 

宇宙は、そんな二人を包み込みもせず、突き放しもしなかった。

 

 

ただ、アストレイと、彼らは宇宙で出会った。

 

王道では無い――主人公ではないモノ。

 

 

これは、カズイとエルという、二人のアストレイの物語である……。

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