ガンダムSEED⇔(ターン)外伝 アストレイ リ:カズイ   作:sibaワークス

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Reverse phase 3 「戦士、再び……」

人類の大半が宇宙に住むようになってから半世紀を越えた時代。

 しかし、人類は新たな時代に固執するあまり、禁忌とされた遺伝子の分野にまで、その手を伸ばした。

 

 与えられた人間、コーディネイターは与えられた事により呪われて生き、

 与えられなかった人間、ナチュラルは与えられなかった事を呪わざるを得なかった。

 

 

 誰もが満たされず、誰もが模索し、争う時代の到来であった。

 

 それは、原初の祈りにも似た願いとは程遠い悲劇だった。

 

 時に、宇宙紀元(コズミック・イラ)71年。

 

 これはそんな時代に翻弄され続ける、二人の迷い子(アストレイ)の物語である……。

 

 

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 「ラクス・クラインめ……」

 オーブ国防省本部。

 

 その最深部にある一室で、二つの陰が、相似を映して、佇んでいた。

 

 「アカツキ計画か……フッやるではないか」

 そう呟いた陰が、紙媒体の――恐らくは何重ものセキュリティをパスして渡されてきた資料を見ている。

 「……我らもプロトゼロワンを回収できた。 そう焦る事もないだろう」

 それを、もう一つの陰が受け取りながら言った。

 

 「だが、あんなものを用意していたのだ……あの女、単にシーゲルの娘というだけで動いているのではあるまい」

 陰が、指を鳴らすと、照明がパッと点いた。

 

 そのだだっ広い一室に、突如として巨人が現れる。

 

 その巨人は白いボディに――黄金の輝きを秘めた骨格をしていた。

 「このゴールド・フレームだけでは足らないかもしれない」

 「では……”アマツ計画”をどうするというのだ?」

 「フフッ……私に任せておけ」

 一つの陰が、もう一つの陰の頬を撫でた。

 「我らに相応しい器――二つの力が一つとなった究極の機体を作るのだ」

 うっとりとして、陰の目が、相似を映す瞳を見つめる。

 「赤と青――二つの力を備えた新たな機体――”究極の紫(マスターフレーム)”か!?」

 もう一つの陰も、恍惚とした瞳を浮かべて、頬に手を這わす動作を返した。

 

 「そう、我らサハクに相応しい器を――」

 「おおっ……!」

 二人は、まるで輪舞(ロンド)を踊るように同じ動作で身を震わせた。

 

 「ならば、丁度いい、この地球に今、赤と青――プロトゼロツーとゼロスリーが降りてきている――」

 「ザフトや連合の俗物たちに恩を売っておくのも悪くは無いか――」

 

 二つの陰は、一つになって、今、野望に動き出さんとしていた。

 

 

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 ――ギガ・フロート。

 超大型浮体式構造物を差すメガ・フロートを、ギガの文字通り幾つも繋げた超巨大人工島である。

 

 ジャンク屋たちの所属する、国際法人が、医療船やデブリ回収船の打ち上げのみに使用すると言う国際条約に基づき建築された。

 しかし、十年以上に渡るプラント、地球間の抗争や、昨年とうとう開戦してしまった戦端は、この施設の軍事利用を強いる状況を生み出していた。

 

 それゆえ、全長数50kmに及ぶこの施設は、今海上を移動しながら、その施設の拡張を続けていた。

 

 

 「ほえー」

 「ほえー!」

 

 エルとカズイは、サーペントテイル商会のシャトルに乗って大気圏を抜けて、地球に降下していた。

 

 そして二人は、ギガフロートに着陸するなり、眼前に広がる海に絶句した。

 二人とも純粋な宇宙育ちであり、地球に降りること自体初めてであった。

 「でもなんか変な感じだな……何か怖いなぁ。深いとこは凄く深いんだよねぇ?」

 「かいじゅうとかいるかもよ~?」

 「うぇっ……」

 自分よりずっと小さなエルに小ばかにされてしまったが、カズイは海を覗き込んだ感覚があるものに似ていると感じていた。

 自然の底知れなさ――あの宇宙空間の得体の知れなさと、よく似た不気味さを感じて、カズイは海から目を離した。

 

 

 ギガフロートは海の真ん中に突然”港”が現れたような姿をしていた。

 施設自体はまだまだ未完成の状態であり、無骨な鉄板が海上に浮いている様にしか見えない。

 しかし、その長大な鉄板の上にはアスファルトとレールが敷かれ、あちこちで作業用重機が動いていた。

 クレーンはひっきりなしに上下し、物資が島内にトラックで運ばれていく。

 

 そして50kmの島の真ん中を突っ切るように、一際大きいレールが敷かれていた。

 マス・ドライバーである。

 

 「――これで本当に平和利用されるというのならば、良いのだがな」

 ブルーフレームをシャトルから運び出し、早速火をつけ始めた劾が呟いた。

 「でも出資者はマルキオ導師が主導になって作った基金だろ? 宗教家達が今更連合に手を貸すようなことは……」

 イライジャも劾と動揺に自身のジンを動かしながら言った。

 「地上に落としたデブリを再利用か――”誰もが得をする”計画だ。 そう”誰も”が――」

 

 

 単に、悪と正義の戦いではないのが人の戦いであるのは誰もが自明とすることであった。

 互いに正義を騙っていても、それは相対性による善悪であって、戦争とはその結果に破壊と悲劇しかないのを人間は自覚しながらやっている。

 だが――その上、敵と味方だけで済まないのが、この戦争と言うものをより悲劇的に、そして長期化させ泥沼にしている原因であった。

 

 「一先ず、会社(サーペントテイル)にも”得”だろ? 仕事をしよう、劾?」

 「ああ……カズイ! 早くワークス・ジンに乗れ! 仕事だ!」

 劾は一先ず口を閉じると、職人の顔に変わった。

 後はプロフェッショナルとして、手を動かすだけである。

 

 「ええっ!? 今降りてきたばっかり……!」

 「仕事だ!」

 劾は怒鳴った。

 「は、はい……」

 カズイはしぶしぶ与えられた作業用のジンに乗り込んだ。

 武器が外され、民間に払い下げられた機体だった。

 

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 ギガフロートの上で、カズイとエルは丁度南北に分かれていた。

 エルは最北部にあるマスドライバーや基地建築管制室のある箇所で見学。

 カズイはジンに乗って最南部のマスドライバー発射口で作業をしていた。

 

 「じゅうりょくって不思議」    

 「そう?」

 「ざわざわする……」

 エルと風花は、ギガフロート内をリードと共に見学していた。

 ”社会科見学”ということだった。

 「コロニーの重力は、構造上の問題だったり、いつ宇宙に出たりしてもいいように、少しだけ弱く設定されているからかもしれないね」

 「そうなのか?」

 「リード知らないの? 厳密には1Gじゃないんだよ」

 「ほえー」

 年不相応の知識を有する風花に感動するエルだったが、やはり、心の中にあるざわめきは取れなかった。

 

 

 「おやおや……随分とかわいらしい客人だな」

 と、そこに、一人の壮年の男性が現れた。

 頭にはヘルメットをつけて、作業服を着ている。

 「あんたは……」

 「いやはや、サーペントテイル商会の皆さん、良くこの仕事を引き受けてくださった」

 男性はリードに握手を求めてきた。

 「――風花さんだね? 君もネゴシエイターとして、既に働いているとか、大したものだ」

 そして、風花――エルにも。

 「よく見ておいき? 不思議な目をしたお嬢さん」

 「おじさんだあれ?」

 「私は――ここで作業監督している隠居親父だ。 シゲ爺と呼ばれているよ、よろしくな、お嬢さん」

 シゲ爺は優しげな目をして微笑んだ。

 そして、シゲ爺は「マリーンはいるかね?」と、誰かを呼ぶそぶりをした。 

 すると、ギガフロートの一角から、髪を結わえて額にゴーグルをつけた、女性――少女と言える年齢かもしれない――がやってきた。

 「はぁ~い……えーと、シゲ爺様」

 「シゲ爺でよいと言っておるだろう。 もう直ぐ別の客人が来るだろう、この子達を奥に案内してあげなさい」

 「え……は、はい!」

マリーンは、風花とエルとリードを、ギガ・フロートの奥へと案内した。 

 しかし、

 「お姉さん……」

 とエルは立ち止まって海のほうを見詰めた。

 「何か来るよ?」

 

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 ブルーフレームと二体のジンは、ギガフロートの建造に休む間もなく稼動した。

 勿論、中のパイロットもだ。

 

 「――戦闘しないと、こんなに稼働時間長くても平気なんだなぁ……」

 カズイは早くバッテリーが切れないかと残量をチラチラと眺めた。

 「手を動かせ」

 「ハッはいぃ!」

 少し集中を解くと劾から無線が飛んでくる。

 アレでナチュラルというのだから、自分はなんなのかと思えてくるのだ。

 

 カズイは、大量の資材をジンに運ばせながら、脇を見た。

 

 ――妙な、陰が見えた気がした。

 

 「おい、カズイ! またサボ――伏せろ!!」

 突然、劾が叫んだ。

 

 「うわっ!」

 

 海中から、ミサイルが飛んできたのは、その直ぐ後だった。

 

 ズドオオオオ!!

 

 「魚雷にミサイル!? ――誰が――ッ!?」

 

 と、そこに現れたのは――見慣れた赤い機体。

  

 

 「法の口穴(Law gueule)か――」

 

 レッドフレームに、全身武装を施し、長大なモビルスーツ用の実体剣らしきものを背負った、ロウ・ギュールであった。

 「よう、また会ったなジャンク屋」

 「よくよく縁があるな傭兵――なんだその武器は?」

 「おう!?これか? アンタとの戦闘データを解析して作った”カラドホルグ”だよ」

 

 ガンッ!

 とロウはその大剣を地面に突き刺した。

 

 「傷をつけるな……」

 と、その様子に劾が怒気を孕んだ声を上げた。

 「フッ……そうもいかねぇ。 俺はこいつをバラバラに解体しなきゃならないんでね」

 「どうしてもか……?」

 「――こいつを作ってるスポンサーの中に連合のお偉いさんが混じってんのさ。 しかもタチのめっぽう悪い連中がさ、あんたもこんな仕事やめなよ?」

 「そういうことか……」

 劾はロウのその言葉で全てを理解した。

 大方、ロウを雇ったのは事態を察知したザフトであろう。

 そして、ザフトはこのギガフロートがいずれ連合の軍事拠点となる”予定”で建造されていることを察知したのだ。

 「な? 悪いことは言わないからよ――」

 「その答えは――『NO』だ」

 「なあっ!?」

 

 劾のブルーフレームは、ロウのレッドフレームを指差した。

 

 「俺たちの仕事はこのギガフロートを完成させることだ――それをどう使うかは、使うもの達次第だ」

 「結果、悪事に使われてもかよ?」

 「――なら、これを受け取る者たちが、悪事に使わせなければいいだけだ」

 「そういうことね……」

 

 やはり、これ以上の会話は無意味、ということであった。

 

 

 「――なんだコイツら!」

 「このギガフロートを壊すつもりか――!」

 と、そこへ他の重機やモビルスーツに乗ったジャンク屋や技術者たちも集まってきた。

 

 「随分と余裕のようだが、例え、作業用でもこれだけの数のモビルスーツ――俺も含めて相手にするのは面倒だと思うぞ」 

 「ヘッ……悪いが、今回は流石の俺様も一人じゃなくてね」

 「なにっ……!?」

 

 

 と、そこへ――。

 

 ズバババババ!!

 

 

 上空から、砲弾らしきものが放たれた。

 

 「フッ……このジン・ザ・ブラックナイト――そして、ナチュラル最強の傭兵――リーアム・ガーフィルドがお相手する!」

 

 飛行支援機(サブ・フライトシスム)であるグゥルに乗った黒いジンが、上空からバズーカを放つ。

 砲弾は真っ直ぐ、浮き島(フロート)同士が連結しているジョイント部分を狙って放たれた。

 

 ドォオオン!! 

 猛烈な爆発を起こし――フロートとフロートが分裂していく。

 

 「マズいぞ劾!?」

 「クッ!」

 

 ギガ・フロートは、50kmという長大さを誇ってはいたが、所詮一つの堅牢な巨大建造物ではなく、幾つモノパーツを継ぎ接ぎしたモノにすぎない。

 つまりは、ほんの少し、繋ぎ目を破壊しただけで――分裂と瓦解が始まるのだ。

 

 

 「フフッ……決まったカッコイイ……」

 ジン・ザ・ブラックナイトと名づけた自身のジンの中、リーアム・ガーフィールドは悦に入っていた。

 「天のシニスト兄さん、ご照覧あれ! 私はナチュラルですが、誰よりも気高く生きるのです!」

 

 グゥルに乗ったジンは、次々とジョイント部をピンポイントに破壊していった。

 ――そうしてしまえば、後はギガフロートはただ海に浮いている鉄塊となってる。結果自重を支えきれず――勝手に分解し、沈んでいく。

 

 

 「イライジャ! あのジンを落とせ」

 「分かった! だが……くそっ! グゥルまで用意してるとは! 先手を取られるなんて――」

 ギガ・フロートの崩壊に伴って、劾達の足場まで揺らぎ始めていた。

 

 そして、さらに――。

 

 「リーアムったら、ほぼオートのクセに格好つけちゃってぇ――」

 水中から、更なるモビルスーツが現れる。

 「ジン・フェムウス!?」

 YF-3Aジン・フェムス――水中用にカスタマイズされたジンである。

 対水圧と機体強度にやや難があった為、本格的な水陸両用機としてはグーンにその座を譲ったものの、海上への強襲などには十分に利用できる機体であった。

 そして、そのコクピットには、髪を両端に結わえた、いわゆるツインテールにした――豊満な胸をした少女が座っていた。

 「ふふ、ロウの為に、やらせてもらうわよ! そしたら作戦後は……うふふふふ♪」

 ジン・フェムウスは海中から魚雷を発射し、底部からギガ・フロートを攻撃し始めた。

 

 

 「樹里のやつ――なんか危なかっしいんだよな――」

 信頼はしているものの、ハイテンション、とでも言うべき樹里――仲間の戦い方を、呆れたようにロウは言った。

 「じゃ、ジャンク屋――始めようか? 俺たちも――」

 ロウは、カラドホルグを振り上げた。

 

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 「どわあわあああ!?」

 カズイは崩れ行くギガ・フロートの上で、バランスを取るのが精一杯になっていた。

 一方、劾は腰に備えた斬機刀、”アマノムラクモ”を抜刀し、ロウの”カラドホルグ”と鍔迫り合いをしていた。

 イライジャも、空に舞う、黒いジンを狙っている。

 「――カズイ! 何をしている!」

 足場を崩して、のた打ち回るカズイを劾は叱責した。

 「だ、だって!」

 なれない地球――というよりは、初めて重力下でモビルスーツに乗ったのだ。

 訓練こそしているものの――こんな状況ではまともに動けるはずが無かった。

 「ひぃ!」

 足元の崩れた鉄骨の下には――真っ青な深海があった。

 こんな所にモビルスーツで落ちてしまったらどうなるのだろうか――。

 

 だが、こんなときにも、劾はカズイに説教をしてきた。

 「こういうとき、お前にはやる”仕事”があるだろ!」

 「あっ……」

 カズイはハッとした。

 

 「え、エルちゃん……!!」

 カズイは、エルの事を思い出し、彼女たちが向かった先の安全を確認すべく、機体を動かし始めた。

 カズイとて、精神面が弱いところがあるが、ロアノーク隊というエリート部隊にいた優秀な兵士なのである。

 

 「そうだ! 男の一番の仕事は、女子供を守ることだ!!」

 劾もまた、ブルーフレームの機体を奮起させ、アマノムラクモをレッドフレームに向けて振りかざした。

 『劾、敵機に不審な点があります、遠距離戦を提案』

 劾がコクピットに備え付けた、トランクに詰まれた謎のAI――”レイ”が女性のような機会音声で言ってきた。

 「だめだ! ビームライフルや火器を使えばギガ・フロートを傷つける恐れがある!」

 しかし劾はその分析を聞きながらも一蹴した。

 もしもギガフロートを傷つけるような事があれば本末転倒である。

 

 グゴオオオ!

 

 とうとうギガ・フロートが本格的な瓦解を始めた。

 劾は崩れる浮島に必死にしがみつき、レッドフレームを睨む。

 

 と、当のレッドフレームは、崩れ行くギガフロートを、まるで飛び石の上を跳ねるように跳んで渡った。

 「フッ!」

 敵のその軽快な動きに、劾は不適な笑みを浮かべた。

 

 ガガッ!!

 不安定な足場ながら、何とか劾はロウの剣を再度受け止めた。

 

 「どうよジャンク屋? 俺のカラドホルグは?」

 「フッ……確かに、武器は最高、機体も最高、お前の腕も良い。 だが傭兵、お前は肝心な事を忘れている」

 「何!?」

 「ただ”良いだけの武器”では出来そこないだ、俺は倒せないよ。 お前に本当の武器というものを見せてやる」

 「――!?」

 劾は、アマノムラクモを捨てた――。

 

 ガッ!!

 

 「――真剣白刃取りィッ!?」

 劾はカラドホルグを無刀取りした。 刃を両手で押さえて、無力化する、ニホンのケンジツの奥義であると、ロウも知っていた。

 「フゥウン!!」

 一瞬の隙を突いて、劾はロウのレッドフレームからカラドホルグを取り外す――。

 「本当の武器とは――己自身だ!!」

 「なぁあるう!!」

 

 ――二機は互いの実剣を失い、ビームサーベルを抜刀する。

 「貰った!」

 攻勢を奪った、劾の方が当然早かった。

 「武器は己自身か――なら――!」

 

 

 ズバアアアアン!!

 

 「なっ!?」

 

 ――しかし、次の瞬間、劾は目を疑った。

 

 

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 「ふっふ~ん! 樹里(きさと)ちゃんの相手しようなんて十年早いのよん!」

 樹里は海中からジンフェムウスを用いて、ミサイルで次々に作業用モビルスーツたちを無力化していった。

 コクピットは極力避けて、足や腕だけを吹き飛ばしていく。

 相手が動きの遅い民生用の機体であるからではあったが、かなりの腕前である。

 

 「フフッ! さあ、何も知らぬ哀れな子羊たちよ――命までは奪わんしかし――この母なる海でその頭を冷やすが良い!」

 そして、リーアムの乗るジンもまた、ギガ・フロートを破壊していった。

 

 

 そんな中――。

 

 「ムッ!?」

 リーアムが、必死にギガフロート奥部へ向かう、黄色い民生用のジン――カズイの機体を見つけた。

 

 「フフン! 裁きの前に屈するがいい!(決まった……)」

 

 バシュウ!

 脚部に搭載したミサイル・ランチャーでカズイのジンの足を狙う。

 

 バアアン!!

 

 被弾し、ジンの左足が木っ端微塵に破裂した。

 

 「うわぅ!! なんなんだよ! こいつら、傭兵って、滅茶苦茶だよ!」

 しかし、カズイは片足だけを一度ついて――

 「ええい!」

 推進剤を全部使って、思いっきり跳んだ。

 元々作業用の為、僅かながらの量しか積んでいない――一か八か――。

 

 しかし、カズイが居るギガフロートは既に瓦解を始めており、エルの居る奥部――ギガフロートのコアユニットははるか遠く。 

 足無しで渡っていける距離ではない。

 

 「うわあああ! ままだぁあ!」

 カズイは、ブースターを全部噴かして跳んだ。

 

 ズバアアッ!

 

 しかし、僅かに、届かない。

 「くそっ! エルちゃ――」

 エルの居る向こう岸はもうすぐなのに。

 この崩壊では、エルも海の底に――海の底?

 「う、うわあああああああ」

 

 カズイは、自分がその海にまっさかさまに落ちていくのに気が付いた。

 

 (やっぱり、俺――何もできないのか――)

 

 と、カズイが思った矢先。

 

 グワッ!

 

 カズイのジンの腕を掴むものがあった。

 

 「間に合ったようだな」

 

 それは――”アストレイ”だった。

 

 (ブルーフレーム……違う、青と……赤と……金色!?)

 (レッド)フレームの足、(ブルー)フレームの腕と、同色に染められた胴体の装甲。

 そして、胸部と肩と首は――鮮やかな(ゴールド)のフレームをしていた。

 

 

 管制室からの声が、カズイには聞こえていた。

 ”シゲ爺”と自称する、このギガフロート建造を支持していた壮年の男性の声だ。

 

 「予備パーツでくみ上げたRGBフレームを持ってきた甲斐があったというものだ……よくやってくれたマリーン」

 「ギリギリ……でしたけど、大丈夫?」

 「は、はい……」

 

 アストレイ”R・G・B(レッド・ゴールド・ブルー)”。

 三色のフレームが合わさった、色鮮やかなモビルスーツである。

 プロトタイプアストレイ三種の予備パーツを繋ぎ合わせて作られた急造品であった。

 

 コクピットに座るマリーンは、慣れない手つきで、慎重にカズイのジンを海から引き上げた。

 「な、なんとかなった……」

 マリーンが、思わずほっと息をついた。

 「……じゃが、安心は出来ないようだな」

 しかし、そんな時間も束の間、カズイとマリーンの居るコクピットに、シゲ爺の緊張した声が伝わってきていた。

 

 

 

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 劾のブルーフレームは、ロウの思わぬ攻撃に、吹き飛ばされていた。

 胸部の装甲が歪んでいる。

 

 「ビームサーベルじゃ無しに、何がおきた――」

 劾は期待の状況を急いで確認する。

 『ダメージコントロール確認、胸部に強力な電気ショック――エネルギーコネクターからの直接放電と推測』

 「武器に流すはずのパワーサプライを、直接ぶつけたと言うのか!?」

 レイの分析を聞いた劾が驚愕する。

 「どうだ、ジャンク屋? 以前このカラドボルグが実剣だってのを忘れてエネルギー流しちまって、そのとき偶然この裏ワザを編み出したってワケよ」

 「フフッ……無茶苦茶な男だな」

 劾はレバーとペダルを操作してブルーフレームを立たせようとする。

 が、機体の挙動がおかしい。

 思った以上のダメージを受けてしまったようだ。

 

 

 

 

 

 コクピットのスクリーンを望遠モードにして、マリーンとカズイもまた、ロウと劾の戦いを見ていた。

 「あんな技――すごい」

 マリーンが驚嘆の声を上げた。

 二機とも、正規の軍人が乗っているのではないのに、人間離れした戦いを見せていた。

 

 「驚いている場合ではあるまい……なんとかサーペントテイル商会の方を助けねば……マリーン、いけるかね?」

 シゲ爺がマリーンに無線で聞いた。

 「そ、それは……」

 しかし、マリーンが口ごもる。

 どうやら彼女は、モビルスーツに乗ってはいるが、基本的な動作もおぼつかない様子だ。

 「それならば……確かカズイ君とか言ったかな?」

 「は、ハイ!?」

 カズイは突然名前を呼ばれたので、慌てて返事をした。

 「マリーン。 カズイ君に機体を渡してくれたまえ。 君に、このギガフロートの運命、預けよう」

 

 シゲ爺の声に、カズイは息を呑む。

 

 

 マリーンがコクピットハッチを開けた。

 

 「俺……」

 

 カズイが、もう一度戦士になる瞬間が、訪れようとしていた。

 

 

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 「ハハッ! 赤と青の機体とは、騎士の様で美しいですが――我がブラックナイト!を止める事はできない」

 「クソッ!?」

 グゥルを得ているリーアムの黒いジンに、赤と青で塗られた機体――イライジャのジンは苦戦を強いられていた。

 空中を自在に舞うSFSに乗っている相手に、不安定になってしまった足場から攻撃を当てるのは、至難の業であった。

 その上――。

 「海中からか!?」

 「うふん?」

 海中から、樹里のジン・フェムウスのミサイルも発射される。

 

 「くそぅ!?」

 回避しきれず、イライジャのジンの肩にミサイルが命中した。

 片腕が派手に爆発し、吹き飛ぶ。

 「フフッ」

 コクピットの中、勝ち誇った笑みを浮かべるリーアム。

 

 しかし――。

 

 「リーアム! 迂闊!」

 樹里が叫んだ。

 「えっ?」

 リーアムが何のことか、と咄嗟にモニターを見ると。

 

 「あっ!?」

 

 ビームが、自分の足元のグゥルを貫いていた。

 「ビームライフル!?」

 グゥルはエンジンを直撃されて、派手に爆発。

 リーアムのジンは、足を破壊されて、そのまま海へと落下していった。

 「う、うわああああああ!?」

 「なにコレ――ロウのと同じ機体!?」

 

 海中に沈んでいくリーアムの機体を、一先ず受けとめた樹里のジン・フェムウス。

 リーアムの無事を確認しながらも、ビームが飛んで来た方向を確認した。

 

 そこには、ビームライフルを構えて、狙撃の体制をとっている機体――カズイの乗るRGBフレームの姿があった。

 

 

 

 

 「なっ!? リーアムが!? もう一体のアストレイだと!?」

 ロウが、樹里からのアラートを受信して、異変に気付く。

 「カズイか、やるじゃないか」

 その隙を、劾は見逃さなかった。

 片足を引きずりながらも、劾のブルーフレームは立ち上がり、地面を蹴って跳躍した。

 

 「ちっ、ジャンク屋! まだやるつもりかよ!」

 ロウはビームサーベルを展開し、ブルーフレームに振りかざす。

 「今度は白刃取りとは行かないぜ――!」

 「それはどうかな!!」

 ブルーフレームは、そのまま、レッドフレームに突っ込む。

 「バカが! 自滅する気か!?」

 「フッ!」

 驚愕するロウを余所に、劾は笑みを浮かべる。

 

 「レイ! 出力最大! 腕部エネルギーMAX起動!」

 「レディ――」

 

 ズガガガガガガッ!!

 

 瞬間、ブルーフレームの掌が光った。

 「お、俺様の技を、一度見ただけで――マヂかよ!?」

 「うおおおおおおお!」

 ブルーフレームは、掌に付いている武器用のエネルギーサプライから、ロウが先ほど行ったように、エネルギーを全開で強制放電していた。

 その凄まじいプラズマの奔流は、ビームに干渉し、粒子の収束を捻じ曲げる――。  

 「まさかっ!?」

 「真剣光刃取りだ!!」

 

 劾のブルーフレームは、ビームサーベルを白刃取りしていた。

 

 虚を突かれた形になったレッドフレームが、思わずサーベルを引かせた。

 劾はそのまま、エネルギーを放電させた腕をレッドフレームに突きつける。

 「なめんな! コッチが本家だっつーの!!」

 しかし、ロウもまた同じように腕を突き出す――。

 

 

 ズガガガガガガガガ!!

 

 「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

 「ぬがあああああああああああああ!!」

 

 輝く掌と掌が激突して、スパークした。

 

 

 バアアアアアアン!!

 

 

 激しい閃光が起きて、二体のアストレイは互いに吹き飛んだ。

 そして、そのまま動きを止めた。

 

 

 電源が落ちて、真っ暗になったコクピットの中で、ロウが呟く。

 「なんて奴だ……俺の”光雷掌”を……」

 そして、同様の状況になった劾もまた、

 「……フッ、面白い技だ。 嘗てニホンには、雷を切り裂いたカタナが合ったと言う――この技を”千鳥”と名づけよう」

 技の余韻に酔いしれて、一人呟いた。

 

 

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 「や、やった! 劾さんが、あの赤いフレームを止めた!」

 カズイがRGBフレームの中で、歓声をあげた。

 他の傭兵は先ほど無力化した。

 これで一先ずこのギガフロート安全は確保された事になる。

 

 あとはこの崩壊さえ止めれば――。

 

 「い、急いで離れていくフロートを固定しないと――」

 

 カズイはすぐさま、崩壊を始めるフロートを固定する作業に移ろうとした。

 

 しかし。

 

 

 「シーゲルも、余計なものを――」

 

 バアアアッ!!

 

 「う、うわあああああ!?」

 作業を開始した、カズイの目の前に、更なるモビルスーツが現れた。

 

 

 「き、金色の……アストレイ!?」

 

 目の前に現れたのは、黄金(ゴールド)のフレームをしたアストレイだった。

 

 

 「だが、まあ結果は良しだ。 プロトゼロツーとゼロスリーのデータは取れた。 あとはこのギガフロートを破壊すれば、裏で連合・ザフト共に恩を売れた事になる――」

 

 ゴールドフレームは、カズイのRGBフレームを眺めた。

 「フッ……寄せ集めの出来損ないか」

 その中のパイロットが、吐き捨てる様に行った。

 そして、ゴールドフレームにビームサーベル持たせる。

 「シーゲルのおもちゃなぞ……」

 ビームの刃が発光し、カズイに向けられた。

 

 「く、くそお……なんだよ!? こいつもあの傭兵の仲間なのか……」

 カズイもまた、ビームサーベルをRGBフレームに持たせた。

 

 「――どけ、迷い子よ」

 「!?」

 通信で、相手のパイロットが告げてきた。

 

 「お前に私は止められん、邪魔をするな、弱きものよ――」

 

 その声は、倣岸で、全く自分たちのことなど、眼中に入っていないかのような、理不尽さを帯びていた。

 「!?」

 カズイは、その声に震えた。

 

 (じょ、冗談じゃない……!)

 なんなのだ、こいつは。

 いきなり合われて、自分に刃を向けてきて、挙句の果てに人をゴミのように扱う。

 

 (ここには……エルちゃんだっているんだぞ!)

 カズイの意思を汲み取るかのように、RGBフレームが、ビームサーベルの柄を握り締めた。

 

 「うわああああああああ!!」

 そして、そのまま、RGBフレームは、ゴールドフレームに斬りかかった。

 

 

 ガンッ!

 

 「あっ!?」

 次の瞬間、カズイのビームサーベルは相手のビームサーベルに往なされ、吹き飛ばされていた。

 

 「……くだらない、ダンスもまともに踊れないか」

 敵のパイロットの、無関心そうな声だけが聞こえた。

 

 

 ブウウン!

 

 「ヒッ!」

 そして、相手のビームサーベルは、再びカズイに向けられた。

 

 今度は、近づいた分、コクピットを目前にして――。

 

 

 「フ、つまらない終幕(フィナーレ)だな」

 そして、サーベルの刃は、コクピットへと近づいてく――。

 

 

 「そこまでだ!! サハク!!」

 

 しかし、実際カズイの体がビームに焼かれることはなかった。

 

 「シゲ爺さん!?」

 「チッ……シーゲルだと? まさか、ここに自ら足を運んでいたのか……」

 

 シゲ爺の声を聞いて、ゴールドフレームは動きを止めた。

 

 「……ここに来て正解だったよ。 やはりこのギガフロートの建造に協力したのも、こういう裏取引をするためだったのだな」

 「一石二鳥の最善の策とは思いませんか? クライン”元”代表。 連合にはマスドライバーをくれてやると伝え、ザフトにはこの施設を破壊する事で恩を売る。どちらにせよ、オーブが不利益を被るならば、どちらに転んでもオーブに利がある方法を取るべきではありませんかな?」

 「……サハクよ、では、このギガフロートに込められた想いはどうなるというのだ。 平和利用を望んで作られる施設には変わらんのだぞ……」

 「どうあがいても、これが完成すれば、連合に利用されるのがオチです。 そして、ザフトはそれを破壊に来る……」

 「私は、そうはならんと思うな」

 

 シゲ爺は、ブルーフレームとレッドフレームを眺めた。

 「マシンは人が使うもの次第だ。 ならば、我々オーブもまた、使う為の知恵を絞るべきではないのかな?」

 「……このギガフロートを、オーブの物にするとでも?」

 「コトー・サハクの子よ、極端だな」

 シゲ爺は、サハクと呼ぶ、ゴールドフレームのパイロットの言葉に苦笑した。

 「平和利用すればよい。 オーブはそのための協力を惜しまなければ……戦いが終わった後、きっと我らのかけがえの無い利益となる」

 

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 戦いは終わった。

 

 謎のゴールドフレームは撤退し、ギガフロートは、崩壊をかろうじて食い止めた。

 しかし、ダメージは甚大であり、修復には時間がかかりそうであった。

 そう、時間が……。

 

 「連合に対する言い口実が出来た。 ”戦争が終わるまでは”完成しそうに無い、とな」

 「やれやれ、結局シーゲルさんよ、あんたの狙い通りって感じがするぜ。 なんだかんだ。サハクの言ったとおり、ザフト・連合両方に恩も売れてるしな」

 

 戦闘の後。

 何故かギガ・フロートの修復を手伝ったロウ・ギュールが、呟いた。

 彼らもまた、裏でシーゲルと繋がっていたのだ。

 

 「コア・ユニットさえ、サーペントテイル商会に作って貰えれば、後はどうにでもなる。 時が来ればこのギガフロートは何時でも人を救えるじゃろうて」

 簡易マスドライバーユニット建造の仕上げ作業に入ったブルー・フレームとRGBフレームの二機の姿を、管制室からシーゲルは眺めた。

 

 

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 「ロウ・ギュールさんですっけ? 凄かった、あのモビルスーツさばき! 私にも剣の使い方とか教えてくださいよ!」

 マリーンがロウに詰め寄っている。

 胸を押し付け、上目遣いでロウの顔を覗き込むも、ロウは表情を変えない。

 「マリーン、だっけか?」

 「それは偽名でぇ、わたし本名はジュリっていいます!」

 「ちょ、離れなさいよ!この!!」

 「なによ、このオッパイオバケ!」

 樹里がジュリを引き剥がそうとするが、ジュリは悪態をついて樹里に掴みかかった。

 「シベリアにラクス様を迎えに行かなきゃならないのが残念だわ……ロウともっと仲良くしたかった……」

 「さっさと帰れー! もうー!」

 

 その様子を見てロウはため息をついた。

 「樹里ももうちょっと、おしとやかっていうかなー……ポジティブすぎっていうか……。 まあいいか、リーアム、片付いたし、そろそろ帰るぞ?」

 「ぐすっ、私のブラックナイト……」

 「……やれやれ、ナチュラルの貴族様も大変な事で……」

 ボロボロになった愛機の傍らで涙目になっているリーアムを見て、ロウはもう一度ため息をついた。

 

 

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 「とんだ狸だったな、あんた」

 「すまないな、君たちを騙すつもりはなかったが……」

 「最初から、茶番だったとはいえ、寿命が縮みましたぜ? 別料金貰いたいくらいですけどな? シゲ爺さん――いや、元オーブ代表の”シーゲル・クライン”さんよ?」

 劾とリードが言った。

 「だが、お陰で、サハクの企みに釘を刺す事も出来た。 改めて礼を言わせてくれ」

 「……例のゴールドフレームのパイロット、あれがロンド・サハクか?」

 劾が、シーゲルに言った。

 「ああ、オーブ五大氏族のひとつ、サハク家の跡取りだ。 我々は互いに国益を守る為に、動いている。 しかしその結果がヘリオポリスの崩壊だった」

 シーゲルがうつむいて言った。

 「……オーブが戦場になる日も近いぞ?」 

 その悲痛な想いを感じ取ってか、劾が言った。

 「それ故に、サハクも過激な手段をとろうとしているのだろう。 だからこんな茶番が必要になったと言うわけだ」

 自嘲するように、シーゲルは言った。

 

 

 「フッ、まあ、俺たちは仕事をするだけだ……これにてお疲れ様(ミッション・コンプリート)だ。 あとそうだ……アンタがシーゲル・クラインなら頼みがある」

 「ん……?」

 

 

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 「ああ……お安い御用だ。 すぐ調べはついたよ」

 シーゲルは、劾に頼みをすぐに叶えた。

 

 「これがあの少女、エルちゃんの両親が住んでいる住所だ。 オーブまでの便もだしてあげよう」

 シーゲルは、カズイにエルの両親の情報を私、さらにオーブの入国手続きまで手配した。

 

 「君たちも、良かったらオーブに来たまえ。オーブで少し仕事も頼みたいし、今回の件の詫びもしたい。 宇宙(そら)に帰る船も用意できると思うが、どうかね?」

 「そりゃ、ありがたいね」

 「わかった、俺たちも同行しよう」

 シーゲルの提案に、イライジャと劾も頷いた。 

 

 

 「良かったね、エルちゃん、これでようやくお母さんたちに会えるよ」

 「うん!」

 

 カズイは、エルの両親の資料を見た。

 そこには、エルの戸籍などの情報も――。

 

 「あれ――エルちゃん、君の名前って――」

 

 すると、カズイがある奇妙な点に気が付いた。

 エルの名前が、別の名前で乗っているのだ。

 「エルはね! ともだちどうしのよびかたなの! わたしのほんとうのおなまえは――」

 

 今までオーブの子供としか、分かってなかったのだから、無理も無いが。

 これだけ一緒にいて本名も知らなかったのは些かショックだった。

 

 カズイは、改めて、エルの戸籍情報を眺めた。

 

 

 「リリー・ザヴァリー! 7さいです!」

 

 そして、エルの元気な自己紹介が聞こえた。

 

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