走り始めて、そんなに時間がかからずにドスギアノスは見つかったよ。一際大きな体に長い爪、更にギアノスたちを引き連れている存在感……間違いなくドスギアノスだろう。
――ギャア、ギャア!!
あちらも俺に気づいて叫ぶと、一瞬体中の筋肉が固まる。これは当然の現象なので仕方ない、どうやっても力じゃ叶わない相手なんだ。
「居たな……ドスギアノス。お前が居ると周りに迷惑がかかるから、悪いが狩らせて貰うぞ」
俺が鬼斬破を抜いて正面に立つと、取り巻きのギアノスが飛び掛ってきた。体を捻ってそれをかわすと、後ろから一体を袈裟に切り裂いてすぐに構えなおす。
「まずは下っ端からかい……舐められたもんだ」
ギアノスを切り捨てて振り返ると、そこには飛び掛ってくるドスギアノスが目の前一杯に迫っていた。当然、避けきれるわけもない。
「ぐぁっ……まさか……」
無様に吹っ飛んだ俺は自分の左腕を見て目を疑ったね。レイアアームの表面が切り裂かれていたんだから。
これが上位か……下位とは攻撃力が桁違いだな。まったく、これより強いG級のクエストに行くハンターには敬意を持つよ。そんな考えをよそに鬼斬破を持ち上げて立ち上がり、ドスギアノスを睨みつける。
このままじゃ情けないしな。まったく、今度新しい防具買わなきゃいけないじゃないか。
「とりあえず……ギアノスSシリーズかな」
そんな風に軽口を叩いてみるけど、正直余裕が無かったのも確かだな。さっきの攻撃で当たり所が悪かったのか、左腕に力が入らなかったんだ。せいぜい、添えて鬼斬破がすっぽ抜けないようにするのが関の山。振り上げるなんて真似はできそうになかった。
「困ったな……ちょっと時間がかかりそうだ」
こうなりゃ振り回すぐらいしかできそうにない。すぐにその場から移動して側面に回ると体を捻って遠心力に任せてドスギアノスを斬りつけた。
――ギャァッ!
小さく悲鳴を上げてドスギアノスが仰け反った。よし、このままもう一撃喰らわせてやろうと思った矢先、急にドスギアノスが噛み付いてきたんだ。
「ぐうっ!?しまった……」
左腕の傷を狙ったように噛みつかれ、非常にまずい。こりゃあ、いよいよ力が入らなくなってきた。
「おとーさん……!?」
耳を疑ったね、ついでに自分の目も疑った。ルナが全速力で駆け寄ってくるんだ……こんな姿を見せたくないからつれて来たくなかったんだけどな。
「ばか。来るんじゃない!」
咄嗟に怒鳴るも、ルナの足は止まらない。それどころか、ルナに気づいてドスギアノスが標的を変えたみたいだ。
「おとーさんを……食べるなぁ!!」
ルナはドスギアノスが飛び掛ってくるのを予測していたように数歩下がり、綺麗にサマーソルトを叩き込んでいた。いや、食べるなって……確かに食われてはいたけど。
「やれやれ、ルナに助けられたままじゃ格好がつかないよな」
ゆっくり立ち上がり右腕だけで鬼斬破を引きずって駆け寄り、右腕だけでふりきる。
――ギャア!?
腕がちぎれるかと思うほどの遠心力と、雷の閃光が走りドスギアノスが吹き飛んだ。そのまま間髪を容れずに駆け出し、ドスギアノスの首筋に鬼斬破の刃を突き立てた。ああ、しんどかった。
さてと、倒せたは良いけど……ルナにもきちんと言っておかなきゃな。剥ぎ取りを済ませる間俺をじっと見てるし。
「ルナ」
「え、うん」
ちょっと怯えているのかな?それはモンスターを目の前で見たことがか、それとも俺に怒られると思っているからかはわからないけど。
「助けてくれたのはお礼を言うよ。でもね、狩りは危ないんだ。だから、俺が危なくても飛び出してきちゃ駄目だよ……俺一人なら何とかなるけど、狩場じゃお前を護ってやる自信はないんだ」
ルナは少し落ち込んでいたみたいだけど、了承してくれた。今回はドスギアノスだったから良かったけれど、もっと強力なモンスターだったらと思ったらぞっとする。
俺は強くならなくちゃいけない……ルナに心配をかけないように、ルナを護れるように。
「帰ろうか……お腹空いただろ」
レイアヘルムを外して頭を撫でてやる。もうお説教は終わりだという合図が通じたらしい、見る見る表情が明るくなった。
今度はアロマさんやポチにもついてきてもらうしかないな……俺一人じゃこのままじゃ持ちそうにない。
まあ、身体的により精神的にきついかも知れない……子育てって大変なんだなとか勝手に納得して、打ち上げられた狼煙を見上げこの狩りは終わった。
―つづく
上位ドスギアノス戦、当時のトラウマパート2でございます。
子育ての大変さを身にしみたソウヤ君、明日はどっちだ。