上位ドスギアノスの狩猟から帰り、俺とルナの間には何とも言えない微妙な間が流れた。
確かに最後はわかってくれたみたいだけど、ルナだけが悪いって訳じゃない。俺だって、ルナが動くことを予想していなかった。
「まったく……保護者として失格だな」
今ルナは眠っているんだろうか……彼女の部屋からは明かりが漏れていないし、気配も感じられない。寝ているかもしれないし、ただじっとしているだけかもしれない。
あの謎の卵の運搬クエストから一ヶ月、俺は信じられないような狩りを経験した。
あのティガレックスだってそうだ、自然界にあんなに知恵のあるティガレックスがいるって話は聞いたことが無い。
「ギルドなら何か知っているのかもな……普段なら有無を言わさず取り上げるような存在だろう、ルナは」
リオレイアの希少種なんてのは、ごくたまに見かけるかもしれないが……ヒトの姿をして、ヒトの言葉を話すなんて聴いたことも無い。
正直、今回のクエストで思い知った。俺はルナが傷つくのが怖い、だから力が欲しい。
アロマさん程無くても良い、自分が大切だと思うものを守れる力を。自分が大切だと思う人に無様な姿を見せない力を。
だけど、今は慣れない酒に酔ってしまおうか…明日からの狩りに備えて少しだけ。
俺はルナの眠っている部屋の扉を開いて中を伺うが、特に反応は無かった。それでも、言わずには居られなかった。
「今日はごめんな……それと、ありがとうな。……おやすみ」
僅かに金糸のような髪が揺れたように見えた。それが気のせいなのか、ルナが動いたのかはわからなかったけど、明日からはまたいつものように話せる……そう思いたい気分だ。
今日はおとーさんの言いつけを護れずに、動いてしまった。最近、彼をただの保護者と見ているだけじゃない自分が居ることも確かだった。
でも、私はモンスター。ギルドのお情けで此処に住んでいるだけのおとーさんの重荷になる存在。
そんな自分が許せなくて、何か役に立ちたくて……動いてしまった。
「まったく……保護者として失格だな」
おとーさんが自分を責める声。そんな声は私は聞きたくない。
「そんなこと、無いよ……」
聞こえていないと思う、自分でも聞き取れるかどうかの小さな呟きだった。
彼は私のおとーさん……でも、それで本当に良いのだろうか。
「そんなの……いやだ」
私はおとーさんと……ううん、ソウヤと対等になりたい。護られているだけじゃなく、肩を並べて戦いたい。
例えそれが、同族であるモンスターの命を奪う行為であるとしても。私はヒトの世界を知ってしまった、ヒトとモンスターがどう在るべきか考えてしまった。
それに……ヒトを好きになってしまった。
だから、明日ソウヤに言ってみよう……自分もハンターになりたいと。
「今日はごめんな……それと、ありがとうな。……おやすみ」
扉が開き、そんな声が聞こえた。私は軽く頷いただけで答えたけれど、彼に通じただろうか。
自分は生まれて一ヶ月しか生きていない……でも、その一ヶ月が何にも変えられない、大事な物だって感じてる。
アロマさんにポチ、それにソウヤ……私の周りにはこんなに優しい人たちがいる。
だから、私は動き始める……皆と対等になりたいから、本当の意味で仲間になりたいから。
「おやすみなさい、おとーさん」
明日目が覚めたら、私は言えるだろうか……自分の決意を。
わからない。それにきっと、彼は反対するだろう……誰よりも優しいから。
ヒトとモンスターのバランスを崩さないためにモンスターを狩るんだと言ったおとーさん。
自分は保護者失格だと自分を責めつけるソウヤ。
私は、明日……。
「おやすみなさい、おとーさん」
そんな声が聞こえた気がして振り返るけど、そこに誰か居るわけもない。安い酒でも、一人で飲むと良く酔いが回るものなのか。
「幻聴が聞こえるとはな……俺もいよいよもって過保護かな」
呟いて家の外に出る。星空を眺め、目を閉じると今日の出来事が思い出される。
明日から、また大変な日が始まるだろう。だから今は……。
―つづく
うーん……擦れ違っていても繋がっている二人と言うのを書きたいんですが……微妙です;
描写もへったくれも無いですし(滝汗
でも、私としては何とかして二人は『強い信頼関係がある』というのを表したかったんですorz
精進します……更に