「ふむぅ……ルナがハンターとな」
ここは酒場。朝の話し合いからそう時間は経っておらず、マスターにルナの決意を伝え終えたところだ。まあ、困るのも仕方ないだろう。
「マスターさん、お願いします。私にハンターとして活動させてください」
俺の隣にいるルナは、先程から何回この言葉を繰り返しただろう。その真摯な翡翠色の瞳で、じっとギルドマスターを見つめて訴えている。
「ギルドとしても、一般人を狩り場に連れて行くよりは良いと思うんだが……ハンターなら、万が一の死亡保障もいらないだろう?
「……よかろう。ただし、狩りは必ずソウヤを含めた二人以上で行うこと、これが条件じゃ」
暫くは渋っていたギルドマスターも、ルナの熱意には負けたのかしぶしぶ了承した。まあ、俺が進言した金の事もあるとは思うが。
「本当ですか!?ありがとうございますっ」
ルナが嬉しそうだ……なら、マスターの思惑が何処にあろうと構わない。俺も礼を言って、ルナを連れて酒場を出る。ルナのための武器を選ばなきゃ行けなしな。
本当は訓練所に通わせた方がいいんだろうけど、訓練所の飯は高い。四週間も通わせていたら俺が破産しちまう。
「お嬢ちゃんが新しくハンターになるのかにゃ? うちは良いものしか扱ってないから、好きなだけ見ていくのにゃ」
武具屋のカウンターで何時も寝ているアイルーに話しかけて武器を見せてもらう。ゆくゆくは自分で素材を集めて武器を作るだろうが、今はお金で買うことの出来るもので我慢してもらおう。
「うーん……これじゃ軽いかな」
「片手剣は駄目か……大剣や太刀は?」
片手剣に余り良い感想を持たなかったみたいで、俺は次に初心者でも扱いやすい大剣と太刀を渡してみる。
「大剣は……だめ、力の溜め方がわからない。太刀も、気って言うのは私には向いてないみたい」
販売屋の説明を聞き、溜め斬りや気刃斬りの練習をしてみるも自分の内側の力を使うのは苦手みたいだ。ためしに、俺が双剣を渡そうとすると、涙目で『ソウヤの意地悪』と叫ばれてしまった。
……鼓膜が破れるかと思った。あまり意地悪はしないでおこう。
「あ、ボウガンが楽しいかも」
「お客さんはボウガンが気に入ったにゃ? そっちのハンターさんは太刀使いみたいだし、バランスは良いと思うにゃ」
アイルーの勧めもあり、ルナの得物はボウガンになりそうだ。まあ最初は資金不足で困るだろうが……弾丸なら調合素材もあるし、暫くはLV1通常弾でもやっていけるだろ。
防具は……暫くはマフモフで我慢してもらおう。俺も流石にこれ以上金は出せない……ボーンシューターのフルチューンとパワーバレルの取り付け、すぐにでも何かクエストに行かないと危ないくらいだ。
入門用ヘビィボウガンではあるが、ボーンシューターの性能は頼れるものだ。通常弾・貫通弾・散弾を各LV2まで装填でき、更に徹甲榴弾と拡散段LV1も撃てる攻撃型だからな。
「じゃあルナ、ボウガンの練習がてら軽いクエストにでもいってみようか?」
初めて手にしたヘビィボウガンを嬉しそうに眺めている影に声をかけ、俺は一旦家に促す。護身用のLV2通常弾がまだ余っていたはずだ。
一度家に帰り、ルナにマフモフを着せたあとで切り札としてLV2通常弾を20発渡して酒場に向かう。
「こんにちは。あの、新人なんですけど私が受けられる依頼ってありますか?」
そこに居るのはいつもの眠そうな女性。暫くルナを見て固まっていたがそこはそれ、すぐに新人用のクエストを紹介してくれた。
15分ほど二人で話し合って決めたクエストは『雪山草摘み』だ。雪山での採取……ドスファンゴが出る場合もあるが、その時はルナを逃がせば良いと考えたしな。
俺がルナに100zを渡し、クエストを受注するように言うと嬉しそうにカウンターへ行……かずに戻ってきた。
「ソウヤ、私の名前の書き方教えて」
思わずずっこけそうになったのは言うまでもない。話せて読めるのに字はかけないと言う事らしい……俺は仕方なく代筆として受注者欄にルナの名を、メンバーに自分の名前を書き込んで提出する。
ルナは少し不満そうだったが、帰ってきたら字を教えてやると言うとすぐに表情は明るくなった。うん、扱いやすいな。
「じゃあ、制限時間は50時間。それまでに規定数の雪山草を集めてきてね~」
受付嬢のそんな声を聞いて、俺たちは場所乗り場へ向かう。
今、ここからルナの狩猟生活が始まったんだ。
――つづく
いよいよ、ルナの初陣です。
採取クエスト。フラグがあるし、採取だけで終わる分けないよね!?