とあるハンターの受難な日々   作:蒼の涼風

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感じる恐怖

 

 

「ドスファンゴ……!?」

 

 ソウヤがそう声を上げた時、私は一瞬何が起こっているのかわからなかった。でも、確実に言えるのは、目の前に居るモンスターは友好的じゃないということ。

 

 巨大な牙を持った猪、ドスファンゴ。その目は自分の縄張りに入ってきた侵入者を排除しようと、異常なほど興奮しているように見えた。

 

「ルナ、俺がひきつけるから隙を見てLV2通常弾を撃て!」

 

 ソウヤの言葉は聞こえたが、動けない。怖い、怖い、怖い怖い怖い。自分に向けられる殺気がこれほど怖いものだと感じたことは今まで無かったから……今までは彼が護ってくれたから。

 

「ルナ!」

 

 彼の声が聞こえて私は思考を断ち切る。片手剣の小さな盾で突進を受け流しながら、じっとこっちを見てる。

 

 レイアヘルムのせいで表情は見えなかったけど、言いたいことは感じ取れた。厳しい口調だけど私を気にかけるその声は『怖くて当たり前なんだ』と言っているように聞こえたよ。

 

「うん……ごめんね、狩らせてもらうから」

 

 大猪が彼に意識を集中している内にボーンシューターを展開する。ヘビィボウガンは折り畳んで持ち運ぶ機構上、あまりジョイント部分は丈夫じゃない。砂がかんだだけで弾詰まりも起きるらしいし。

 

 展開しきったボーンシューターにLV2の通常弾を装填してスコープを覗くけど、速くて捕らえられない。

 

 一発、二発と弾丸が逸れて五回撃った中で当たったのはたったの二回。これじゃあガンナーとしてサポートは出来ない。だからと言って、片手剣だと私の体重じゃ軽すぎて弾かれそうだったし……。

 

「ぐうぅっ」

 

 何度目かの突進を受け流したソウヤから苦悶の声が漏れた。多分、この間ドスギアノスに噛みつかれた傷が、何度も突進を受け流す間に衝撃で開いたんだと思う。

 

 さっきから剣を振らないのも、上手く握れないからだろう……私に狩らせると言う考えも多少は含まれているだろうけれど。

 

「ソウヤ!?」

 

 

 

 

「ソウヤ!?」

 

 やれやれ、情けないな。そんな辛そうな声を上げるんじゃない、大丈夫だから。

 

「ルナ、相手の動きを無闇に追うんじゃない。突進が止まれば方向転換のために隙ができるから、その隙を突いて丁寧に弾丸を撃ち込むんだ」

 

 余り大きな声で伝えると雪崩が起きるかもしれないから、ぎりぎり聞こえるか聞こえないかの声で伝える。

 

 ……良かった、伝わったらしい。さっきとは格段に命中精度が違っている。

 

 俺も負けていられないな……ちょいと無茶してみるか。

 

「さて……逃げるなら見逃してやるが、どうする?」

 

 そんな風に言っても、理解するとは思えなかったが……盾を構えている手に剣を持つ。多少振りが遅くなるが、盾を腕に括りつけておけば持てないわけじゃない。

 

――ぐるるるるる……

 

 大猪の突進をかわし、弾丸が打ち込まれる反対側から飛び掛って斬る。更に斬る斬る斬る……回転斬りを入れた後に、すぐさま体を転がして飛びのく。次の瞬間、弾丸のような速度で巨体が通過して言ったのを感じたよ。

 

「そろそろ……カタをつけなきゃいけないな」

 

 左腕に無理はさせられない……となれば、ルナの貫通弾によって頭から打ち抜くのが上策だと思う。

 

「ルナ、貫通弾準備だ!」

 

 今までは控えていた声を張り上げて叫ぶ。わかったと言う返事は無かったが、LV1貫通弾を10発持たせていたし、先程弾丸を切り替える音も聞こえた。

 

 なら俺は……最も打ち貫ける状態を作り上げるまで。アイテムポーチからシビレ罠を取り出して地面に展開した後、思い切りその尻を蹴り飛ばしてやったよ。

 

「こっちだドスファンゴ!」

 

 

 

 

「こっちだドスファンゴ!」

 

 そう言ってソウヤは思い切り駆け出し始めた。ちょっと、その走り方はスタミナすぐ切れるんじゃない?

 

 その後を追いかけて大猪が迫る……あと少しで牙が触れるというところまで追いつかれたとき、ソウヤがこけた。いや、こけたように見えた。

 

 実際はシビレ罠に誘っていたみたいで、ドスファンゴが急に動かなくなった。

 

「今だ……っ」

 

 スコープを覗き込み、立て続けに貫通弾を3発打ち込むと脳を破壊されたのかその大猪は動かなくなった。

 

 それは、この雪山の厳しい環境を生き抜いた偉大な生命の最期だった。

 

 

――つづく

 

 

――――

 

 




主人公って、誰だっけってお話。
語り手=主人公って訳でもないんですね!(笑)
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