「やった……!?」
ルナが呆けて呟いている。まあ、初めて自分の手で大型のモンスターを仕留めたらそうなるものだし、いいと思う。
「良くやったな、ルナ。良い狩りだった」
立ち上がって腕の痛みを無視すると、俺はルナに歩み寄ってくしゃくしゃと頭をなでてやる。そうすることで自分が命を奪ったという実感がわいてきたのか、ドスファンゴが怖かったのか……その場で泣き始めてしまった。
うーん、困ったね。
「ほらほら、泣くなよ。まだ雪山草は納品していないんだから、急ごう?」
何とか宥めすかして泣き止むのを待つ……目の前にたくさん生えている雪山草を採りに行こうにも、ルナが泣いてちゃ動けない。結局、30分ほど泣き続けたな。
「あ、帰ってきた。おーい」
狩りから帰ってきて真っ先に声を掛けてきたのはアロマさん。既に随分お酒を飲んでいるのか、顔は真っ赤だが。
「ルナがハンター登録したってマスターから聞いてね、まあソウヤが居るから心配要らないだろうし……ここで酔いつぶれてるやつと一緒に待ってたわけよ」
聞いても居ないのに良く喋る。俺は酔いつぶれたゲネポス……いや、ゲネポスーツのハンター、ポチに視線を移す。
「う~……ルナひゃん、はんちゃーれびゅーおめれほ~」
うん、無視で良いだろう。呂律が回らなくなるほど飲むものじゃないぞ、見苦しいから。
「え? あ、えっと……ありがとうございます」
ルナはルナで、急に祝われたもんだからどうしたら良いのかわからないみたいだ。いつも通りサマーソルトでもいれてやれば良いのに。
「阿呆は潰れちゃって私だけだけど……お祝いしても良いでしょう?」
そんな風に言うアロマさんはやっぱり綺麗に見えて、ミスギルドにノミネートされるのも良くわかる。まあ、あの性格だから結果はわかってたけど。
「じゃあ、座って座って」
嬉しそうに笑みを浮かべ俺たち二人に席を勧めると、アロマさんは何を思ったのかポチを床に転がしてしまった。
「ポチ……不憫な奴。同情しないが……」
そんな呟きがあちこちから聞こえてくる。同情しないのか……俺もしないけど。
「ほらほら、お酒も私のおごりだからたくさん注文して」
俺は取りあえずビールとアプトノスのステーキを頼んでみる。たまにアプトノスの肉の触感が懐かしくなるのは仕方ない、慣れ親しんだ味だしな。ルナは黄金魚の餡かけを注文していた……高いぞ、それ。
「じゃあ、お酒もあるし……ルナのハンターデビューとクエスト成功、ついでに私のG級キリン討伐成功も祝して、かんぱーい!」
「かんぱ……ええええぇぇぇ!? き、キリン討伐!?」
思わず素っ頓狂な声を上げちまった。だってキリンだぞ、キリン……しかもG級の。
「キリン……?」
ルナは不思議顔。うん、キリンなんてハンターランク3にならなきゃお目にかかれないからな、普通なら。
「そ。ちょっと苦戦したけど……鬼哭斬破刀・真打を作るための素材にね。後はラージャンだけよ」
くつくつと笑うアロマさんは……何だか遠い存在になったみたいだ、いろんな意味で。
「アロマひゃんは、おひろりれ狩りにいっらんれふか?」
何か不吉な言葉を聞いた気がする。内容じゃなくて発音がだぞ。見ると、黙々と飲んでいたのかルナの周りには既にビールのジョッキが三つ転がっていて、今四杯目ってところだ。
「お、おいルナ? ちょっと飲みすぎじゃないのか?」
「おとーひゃんはらまってて。今はあろまひゃんと、おはなししてるんにゃから」
や、やばい。完全に酔っ払っている……呼び方が戻ってるし。そう言えば飲ませたこと無かったしな……肝心のアロマさんはと言うと……。
「そうねー。ハンマー使いの人と、アーチャーの人がついて来てくれたわね」
いや、普通に会話を進めないでください。しかも、何杯目ですかあなたも。
「はんみゃーちゅかいですか……しゅごいでしゅよね、はんみゃーがちゅかえるひと」
「ハンマーは簡単よ。思いっきり頭を殴ってやればいいんだし」
うんうんと頷いて次々飲んでいくルナと、見た目酔って無さそうだけど実はもう眼の焦点が合っていないアロマさん。
この調子がいつまで続くのか不安だ。誰か、ここにきてこの二人を止めてくれないだろうかと願うのも無駄と感じた俺は……取りあえず飲むことにした。
酒の勢いで眠ってしまえば、暫くは頭を使わないで済むしな。
まあ、明日の事は明日考えれば言いさ……。
――つづく
――
ポチ空気!
ポチに愛の手を!
合いの手じゃなく愛の手を……!