さて、クエストを引き受けたは良いものの、すぐに出発するなんて命知らずなことはしない。
リオレイアの卵を取りに行くわけだから、当然母親のリオレイア……運が悪ければリオレウスとも遭遇する危険性がある。そんなところに何の準備もせずに向かいたいか?
……少なくとも、俺は行きたくないね。ならどうする?そう、準備すれば良い。閃光玉に落とし穴、シビレ罠に捕獲用麻酔玉……なに?親は討伐しないのかって?
……わざわざ殺す必要も無いだろ?俺の受けた依頼は卵の運搬だ。それが終わるまで眠っててくれれば良い。無駄な狩りは好きじゃない……捕獲の方が怪我をする割合も少なくなるしな。
「こんなところかな……あ、強走薬も一応持っておくか。何かあったときにもずっと逃げていられるし……」
卵運搬は兎に角逃げ切ることが必要だ。その点、暫くの間疲れることを忘れさせてくれるこの薬は必須ってことになるだろう。……薬漬けというのも体によくない気はするが、この際贅沢は言っていられないしな。
そんなこんなで森丘へ向かう馬車の中、俺は一種の予感めいたものを感じていたんだ。このクエストが自分の人生を大きく変えていくんじゃないかって。そして、その予感は当たったよ、それが良かったのか、悪かったのかは別にして……まあ、続きを聞いてくれないか?
「リオレイアの巣と言えばここだよな……しかし妙に静かだ……」
見張りのためにリオレイアに遭遇してもおかしくないというのに、俺は特にでかい相手と遭うこともなく巣に辿り着いた。普段ならラッキーと言うところだが、俺は何か得体の知れない嫌な感じになったね。巣を守るためにリオレイアが飛び回ってる様子すらなかったんだから。
俺は巣の中で信じられないものを見たよ。レイアヘルムの奥から見たのは、ランポス共に貪られている雌火竜の姿だった。
「まさか……俺のほかにハンターが来ているのか?しかし、ギルドは俺に指名と言っていたんじゃ……がはっ!?」
俺は余りの光景に一瞬自分が何処に居るのかを見失い、背後から飛び掛ってくるランポスに気づけなかった。けど、今日は一人出来ているから誰もフォローしてくれないしな……すぐさま頭を狩りへと切り替えるさ。
「この野郎……っ」
近くに居た一匹のランポスに走りより、武器を抜く勢いのまま振り下ろすと一瞬閃光が走りランポスは吹き飛んだ。鬼斬破の威力なら一太刀で十分だろう。すぐさまその場から飛びのき、ついさっきまで居た場所に飛び込んできたもう一匹の胴体に深々と刀身を突き刺す。
「人が呆然としてる時に攻撃してくるなよ、ビックリするだろうが」
一先ず周囲に居たランポスが片付いたため、俺は卵があるか見に行ったよ。三つあったはずの卵は、先程のランポスに食い荒らされて一つしかなかった。
「一つだけ……これは神経使うぞ」
誰も居ないのに寂しいやつだと?
うるさい、自分に喝を入れないとどうにもならんのだよ。だけど、ここでまた予想外のことが起きたんだ。なんと……持ち上げた卵が割れて、中からリオレイアの雛が顔を覗かせたんだ。
「ふ、孵化した……!?マジでか……」
そう、これが以降俺のハンター人生を大きく変える一つ目の出会いだった。そのリオレイアの体は緑色じゃない……黄金色、俗に稀少種と呼ばれる種類だった。
「おいおい……稀少種のリオレイアなんて、図鑑でしか見たこと無いぞ」
正直どうしたものか困ったね。親のリオレイアは何者かによって葬られているし、かと言ってこのまま置き去りも薄情だろ。刷り込みとか言う効果で、すっかり俺に懐いている幼竜を無碍に出来るほどロクデナシではないと思いたい。
「仕方ない……連れ帰ってギルドマスターに判断を仰ぐか」
どうしようもない……自分で判断できないなら上の判断を仰ぐしかないだろ。ベースキャンプに戻り狼煙を上げると、持ってきた生肉を食わせてやりながらとてつもない面倒ごとに巻き込まれそうな予感だけはひしひしと感じてたよ。
……まあ、それはまたの機会に話すとするさ。
そんなこんなで第2話です。
はい、自分で読み返してて、ヒロインが登場するまでの主人公……何か可愛そうな子みたいに思えてきています。
それでは、また次回。