「あーたーまーいーたーいぃ~!」
朝っぱらからそんな声が我が家に木霊する……ついでに言うと、自分の声でもう一回頭を抱えている。
頭を抱えているのはルナ。昨日飲みすぎたんだろう、二日酔いでずっとベッドに埋もれている。俺はと言うと、動かすと痛い左腕を庇いながらクッキング……と言うよりは、酔い覚ましかな。
ウメの身を塩に漬け込んだものをみじん切りにして湯に溶かす……二日酔いにはこれが良いらしい。東の国のものだから、俺は試したこと無いけど……そもそもそんなに飲まないしな。
「ルナ、ウメボシ湯って言うのを作ってみたんだが……飲むか?」
「の~む~」
やれやれ、作ったは良いけど味見はしていないが……酸っぱいものは苦手だからな。俺はルナにウメボシ湯を持たせてやると、何か食べられるようなものを作ろうかと農園に行った。野菜でもあればあっさりしたものが作れるだろう。
「旦那さん、おはようにゃー!」
元気良く飛び上がった白地に青ぶちのアイルー。ここの運営を任せているんだが、名前はまだ無いらしい。お東の国にでも行けば、そのうち本にでもしてくれるんじゃないか。
「ああ、おはよう。何か野菜は収穫できるかな」
「にゃにゃ、ちょいとお待ちにゃ。すぐに見繕うにゃ~」
アイルーはそんな風に言って畑を駆け回ると、あっという間にジャンボネギやシモフリトマトなどの野菜を集めてきた。
「ありがとうな、これからも畑の面倒頼むな」
チップくらい渡さなきゃ失礼だろ……いや、個人の勝手な価値観だが、俺はチップ代わりにマタタビを三つほど渡して家に戻った。家じゃまだルナが唸ってたけどな。
「ソウヤ~、これずっぱい…」
全部飲み干して空っぽになったカップを指差し、酔いはさめたものの強烈な酸味に悶えているルナがそこに居た。
おお、やっぱり酸っぱかったか……二つも入れると。
「気分は良くなっただろう……少しお遣いに行って来てくれないか?」
「お遣い? うん、別に良いけど」
酸っぱい酸っぱいと水を飲むルナを見つめ表情を緩めると、薬草を切らしていたみたいでルナに提案してみた。そろそろ一人で買い物に行ってもいいだろう……と言うか、あまり一緒に行動するとまた冷やかされるしな。
「じゃあ、薬草を10個程買ってきてくれるかな。傷に張り付けるのと、栽培して数を稼ぎたいから」
500z硬貨を渡し、ルナの頭をくしゃくしゃと撫でると嬉しそうに微笑を浮かべて駆け出してった。
「薬草ね。わかった、いってくるーっ」
なんて言葉が後から聞こえてきそうな勢いだったけど、聞こえるわけも無い。俺は爆弾採掘が出来るといっていた先程のアイルーの為に、大タル爆弾Gをせっせと調合を始めることにしたよ。
――もえないゴミができました――
――もえないゴミができました――
――もえないゴミが出来ました――
「……やってられっかぁぁぁ!!」
何を隠そう、実は俺は調合が苦手だ。薬草とアオキノコの調合も未だに失敗するしな……。
え? ティガレックス戦にはシビレ罠の調合素材を持っていっていたじゃないかって?
……もしかしたら成功するかもしれないじゃないか。
「ただいま、薬草買ってきたよ」
30分くらいしたかな……もえないゴミの山を片付けていると、ルナが帰ってきた。よかった、俺がついてなくても買い物は出来るみたいだ。
「お帰り、外は暑かっただろ……今良いもの作ってやるからな」
しっとりと額に汗を浮かべているのを見ると、俺はコップに水を注ぎ砕いた氷結晶を入れてやる。
キンと音を立てて冷えていく水……氷属性の武器を作るための素材にも使われる氷結晶は水の温度では溶ける事は無く、水を良い具合に冷やしてくれる。これもハンターをやっているうちに手に入れた知識だ。
ま、水の温度で溶けていたら武器としては使い物にならないよな……砂漠や火山にも持っていくこともあるんだし。
「うん、いただきます」
ルナが冷たい水を飲み、その冷たさに今日何度目かの呻き声を上げて頭を押さえるのを横目に見ながら薬草を揉み解す。
ハンターなんて仕事をしていると、こんな何気ない日常がいつなくなるかわからない。
だから……俺はこの瞬間を忘れないように記憶する。安らぎも、ルナの表情も、薬草を貼りつけた傷の痛みさえも。
――つづく
インターバル回でした。
はい、次回からまた狩りに出かけます!