はじめは良かった。確かに、危うい場面もいくつかあったが……アロマさんの助言のお陰でルナはイャンクックを追い詰めていたんだ。
だけど、異変は起きた。傷ついたイャンクックが逃げようとしたその時、空からもう一つの影が舞い降りたんだ。
個体数が少ないため、かつては黒いイャンクックと言われた【黒狼鳥】イャンガルルガが。
イャンガルルガは、今飛び立とうとするイャンクックに炎の塊――俗にブレスと呼ばれるもの――を吐き出して浴びせると、一撃で葬り去ってしまった。
「嘘だろ……いくら弱ってるとはいえ、イャンクックは炎に対する耐性は高いはずだぞ」
同様に見ていたポチからそんな言葉が漏れる。確かに、ありえないことじゃないが珍しい。
言うなれば……足を引きずり始めたリオレウスが番のリオレイアのブレスの流れ弾を浴びて絶命するのと、ほぼ同義のことが目の前で起こったんだから。
「ルナを助けに行かなきゃ! あの子にイャンガルルガはまだ荷が重いわよ」
アロマさんが声を掛け、クリムゾンゴートの柄を掴んで走り始める。ポチもそれに習い、駆け出す。
俺は走りながらポーチをまさぐり、球体状のアイテムを取り出して黒狼鳥の鼻先に投げつけてやる。ティガレックスの時にもお世話になったアイテム『閃光玉』を。
爆発的な光が広がり、イャンガルルガの網膜は焼かれたと思う。叫び声も聞こえたし、大丈夫だろう。
「ソウヤ、何あれ……」
アロマさんがルナの前に立ちクリムゾンゴートを盾のように構え、俺が走りよるとルナが問うた。
「あいつは【黒狼鳥】イャンガルルガって言ってな。イャンクックとリオレイアの混血種なんだ」
「別種族の……?」
ルナは意外そうに見つめてくる。そりゃそうだろう……別種族が結ばれるというのはそうそうある話じゃない。
「そう、異種間配合による突然変異がイャンガルルガ。それ故に生殖能力も持たず、イャンクックとリオレイア両方から受け入れられない。いわば孤高の存在よ」
アロマさんが補足してくれる。誰からも受け入れられない孤高の存在、イャンガルルガ……そのことをルナはどれくらい理解できるんだろうか。
「そっか……だから、あんなに傷だらけなんだ……」
そう、ルナの言うとおりイャンガルルガにはいたるところに傷がある。それは孤高の戦士として、戦い続けたその軌跡を如実に物語っているのかもしれないな。
「奴は孤高の戦士なのさ……受け入れられないなら自ら受け入れず、体を硬くして棘を生やす」
ポチが珍しく格好いいこと言う……こいつはイャンガルルガに思い入れが有るんだろうか。
「だからこそ、アイツとであった場合は……その存在に敬意を払い、戦士として戦うのが私の流儀。もちろん、ソウヤもね」
「流儀?」
「ええ、戦士には戦士の礼儀を持って答える。それが、私の弟子として最初に教えること……ソウヤの弟子として在るなら、私の教えを教えてるはずでしょう?」
アロマさんの視線がこっちを向いて『そうでなければ許さない』と言うような目で見てくる。ええ、覚えてますとも。
「もちろんです。気高き戦士には気高さを持って相対する、でしょ」
そんな話をしている内にイャンガルルガの混乱が解けたようで、怒りの咆哮をあげる。気高き戦士には気高さを持って……俺は鬼斬破を抜いてルナを庇うようにたって睨みつけてやった。
「俺も手伝うよ。イャンガルルガに惚れてるのは何もお前やアロマさんだけじゃないんだぜ」
俺の横にレイトウ本マグロを抜いてポチが立つ。どうも、本気になればそこそこの殺気は出せるみたいだ……初めてこいつが仲間になって得した気分かな。
「私の武器じゃ有効打は難しいわ。ソウヤ、あなたは尻尾を……ポチは唇を狙いなさい」
確かに、クリムゾンゴートはお世辞にも切れ味のいい武器とは言えない。だから司令塔として俺たちに指示をくれるつもりだろう。
「ルナにガルルガはまだ早いわね……私が守ってるから、思いっきりやっちゃいなさい」
『了解!』
何故かポチとハモってしまった。……アロマさんは人を統率する力もあるのか、ただ俺たちがアロマさんに逆らえないだけか。
両方かな。取りあえず、俺とポチはアロマさんの指示通りにそれぞれ尻尾と嘴を狙う。
レイトウ本マグロは、ハンマーに近い武器なので頭付近を。切れ味に特化した太刀を持つ俺が尻尾を担当する。
立ち向かうは孤高の黒鳥イャンガルルガ……俺の鬼斬破の閃光と、レイトウ本マグロから跳ね飛ぶ氷。
そしてイャンガルルガが吐き出す炎の三つの異様なコントラストが、その日の密林に輝くことになった。
――つづく
なし崩し的に始まったガルルガ戦。
ガルルガ格好良いよね!