アロマさんにルナを任せ、俺とポチはイャンガルルガと相対したわけだが……思った以上に苦戦を強いられていた。
「くそっ……ここも弾くのかっ」
ポチの声が聞こえる……そう、この黒狼鳥は非常に硬かった。柔らかい部分といえば尻尾の裏側か頭……それ以外はレイトウ本マグロ、鬼斬破どちらも刃が入らない。
「この……属性ダメージは通っているはずだ」
氷の属性は奴には有効だ。それに比べ俺の鬼斬破の雷は、有効だとは言いがたいだろう。
水か氷……黒狼鳥をかるならどちらかの武器が必要になる。こんなことならフロストエッジ改を持ってくれば良かったと思っても後の祭りか。
「ポチ、シビレ罠を仕掛けるぞ」
「わかった。トラップかかった事を確認した後、大タル爆弾Gを二つ使用するっ」
ほんとに、誰だあいつ。まあ、こっちが地なのかもしれないけどな……。
俺はとにかく急いでシビレ罠を展開すると、落ちていた石ころを力の限り投げつけてやる。そうすることでこっちに標的を変えたイャンガルルガが、シビレ罠を……踏まずに飛び上がった。
「くそっ……罠が見えているとでも言うのか」
確かに、見えていると言っても過言じゃないくらい見事に避けられた。でもな、空中に逃げたのは失敗だったな……俺は奴の向いている方向に向かって閃光玉を投げてやる。
爆発的な光が膨らんで、黒狼鳥の叫び声が響き渡った。鼓膜が破れたらどうしてくれる。
どれくらい経っただろう、ソウヤとポチがイャンガルルガとの戦いに行って。
さっきから聞こえるブレスの音……炎が弾ける音が聞こえるたびに肩が震える。二人が怪我でもするんじゃないだろうか、それもハンター生命どころか本当に命に関わるような大怪我を。
そんな考えがさっきから頭を何度もよぎる。自然、涙が溢れてくるのを止められなくなってしまった。
「大丈夫よ」
このまま泣いてしまおうかと思ったとき、アロマさんが声を掛けてきた。誰がとも、何がとも言わなかったけれど……この人の『大丈夫』は何か力があるのかもしれない。
不安に駆り立てられそうな心を鎮めてくれるような……ソウヤがこの人は暴君だ何だと言いながらも弟子であったことを否定しないのは、この魅力のせいかも。
ちぇ……ちょっと妬けちゃう。……妬ける? 一体なにに……?
「アロマさんがそういうのなら、信じます。ソウヤの師匠ですし」
「そうそう、私のシゴキを耐え抜いたソウヤが簡単にくたばるわけ無いわ」
ふたりでそんな話をしていると、エリア5から合図用の打ち上げタル爆弾が打ち上げられ私たちも移動する。
そこで見たのは、折れた鬼斬破の刀身が突き立てられたイャンガルルガの死体だった。あ、レイトウ本マグロも半ばから解けて噛み砕かれたみたいになってる。
酷いものだった。俺たちとイャンガルルガの戦いは。
ポチのレイトウ本マグロはブレスで周りのコーティングが溶けてむしゃむしゃ食われちまうし、俺の鬼斬破は全く刃が通らないし。
ありったけの爆弾を使い、甲殻を吹き飛ばしたところに鬼斬破を突き立てたものの折れちまったし。
ただ、貫いた場所が良かったっていうだけだ。偶然心臓を貫いたため、孤高の戦士はその生涯を終えた……たった二人のハンターの手で。
「終わったな……ポチ、連絡用の打ち上げタル爆弾を」
「ああ、わかった」
俺の武器もポチの大剣も、こんなになってしまっちゃ修理は難しいかな。苦労したのにな……素材集めるの。
「ソウヤーっ」
打ち上げられた爆弾を合図にルナが走ってくる。おいちょっと待て、その勢いで突っ込んできたら間違いなく大ダメージだろ。
「ぶおっふぅぅぅぅ!?」
――ポチは力尽きました――
ルナの突進を思わず体を捻ってかわすと、勢いは止まらずポチに激突。回収しに来たアイルーたちにクエストが終わったことを告げると報酬の五分の一で運んでくれることになった。
まあ、来てくれたのにタダで追い返すのも悪いだろう。ついでにイャンガルルガの死体もベースキャンプに運んでもらう。
「孤高にして気高き戦士、イャンガルルガに……そして怪鳥イャンクックに哀悼の意を表して黙祷」
ベースキャンプでアロマさんの掛け声の下、死力を尽くして闘った戦士の冥福を祈る。
これは強制されなかったけど、アロマさんの流儀の一つらしい。謝罪の念を送るのではなく、良い闘いができたことへの感謝のために。
その後、俺たちは素材を剥ぎ取って街に戻ることになった。
ポチはレイトウ本マグロが折れたことがショックで落ち込んでるし、ルナも何か思うところがあるらしい。
今回の狩りは、彼女にとって得たものは思ったより多いのかもしれないな。
――つづく
はい、ガルルガ戦終了でございます。
え、省略した?
そ、そんな事無いですよ!