「あーっと……まあ穏便に、な?」
殴り飛ばしてから気がついたが、俺余計なことした? 休みぐらい厄介な事に巻き込まれずに過ごしたいんですけど。
「っざけんなこらぁ!?」
「っころっぞ、おぉ!?」
殴り飛ばしたものの、幾分加減してたもんだから気絶はしてないみたいだ。むしろ元気いっぱいで臨戦態勢……めんどくせー。
喧嘩はハンターの世界じゃ日常茶飯事、むしろ挨拶代わりに喧嘩するやつらもいるから……店のやつらも、どつき合い程度じゃ口も出してこない。流石に武器を抜いたら止めに入るだろうけど。
「そんな物騒なこといわないでさ、喧嘩なんてめんどくせーでしょ?」
昔は随分やったけどな……人間、二十歳を超えたらどつき合いの喧嘩なんて馬鹿らしくなるもんさ。
「へ、どうしてもって言うんなら……そうだな、そこのねーちゃん一晩貸してくれるだけで良いぜ」
そこのねーちゃんってのはルナの事か? どーぞどーぞ、一晩であんた等の財政は赤字になる事請け合いだぞ。
「見たところ人間でも竜人でも無さそうだからな……どう扱ったって罪には問えねえだろ」
ふむ。確かに亜人間ってところだから、ルナを守るための法律なんて無いな……なるほどなるほど。
「断る」
「なっ……!?」
「あんた等の言い分で言うなら、こいつは俺のモノだ。俺が嫌だって言ったからこの話は終わり」
二人組みの足元に1000z札を投げ落として背を向ける。さて、メシだメシ。
「っとまてこらぁ!」
ん~……いい加減言葉の最初をきちんと発音してくれんかな。聞き取りにくいったらありゃしない。
「……まだ何か?」
ルナが何か言いたそうだったが、押し留めて振り向くとハンターカリンガの刃の部分が降って来た。
咄嗟に首をそらしたものの、左腕は切られて肩から肘辺りまでに傷がついたみたいだ。
「……痛いんだけど?」
「ワシらにそんな風な態度とって良いと思ってんのか? この街で最強の二人組みだと評判のワシらをよ!?」
最強、ねえ。……確かに悪くは無いけど、この程度で最強だとか言ってたらアロマさんは悪魔か何かか。
もう一度振りかぶったハンターカリンガが俺に迫ってくる。もう一発急所を外して切り付けられときゃ満足するかな。
「いい気になるなよ若造……狩人魂も無いくせに」
そんな風に考えていたら、背後から太い腕がチンピラの手首を掴んで止めてくれていた。
この店のオーナーのアベルさん……元々ハンターで、ハンマー使いってことだから腕力はあるんだろう。
隆々と言っていい体に、顔に大きな傷。笑顔を見せても何か一物隠しているんじゃなかろうかと思える表情。
かつて【ハンターソウル】と名乗った四人組のリーダーで、更に付け加えるとアロマさんのお師匠さんでもある。
つまり、俺から見ると化け物級に強いハンターの一人のお師匠様……うう、アロマさんに何か吹き込みそう。
「っんだこのオヤジ……っちますぞこらぁ!!」
チンピラの一人がアベルさんに切りかかるも、当たるどころかカウンターに拳を喰らって昏倒した。うわ、痛そうだ。
「よっちゃぁぁん!?この野郎がぁ!!」
よっちゃんて。まあ、そんな風に切りかかったもう一人も敢え無くKO……鮮やかな手並みでチンピラを追い払っちまった。
「やれやれ……来てるなら声を掛けてくれても良いだろう、ソウヤくん」
一昨日きやがれなんて中指を立ててチンピラを追い出した後、俺に声を掛けてきたのはもちろんアベルさん。はっはー、この人苦手なんだよな。
「お久しぶりです、アベさん。いや……わざわざ声を掛けて手間を取らせる必要も無いかなと思いまして。」
「ソウヤ、この人誰?」
ルナの最もな疑問。うん、説明しなきゃな。
「この人はアベルさんって言って、この店のオーナーで……アロマさんのお師匠さんだよ」
説明を聞き終えた途端、ルナは深々と頭を下げた。なんだろう、俺の周りにアロマさんの言葉で萎縮しない人はそう居ないような気がしてきた。
「おじょーちゃん、さっきの啖呵は気持ちよかったぜ。ただな、あんな風に考えるやつも居るから気にすんな。おじょーちゃんが命に敬意を払っているなら、それだけで幾らかのモンスターは浮かばれるってもんだ」
相も変らぬアベさん節。懐かしいな……結局、アロマさんのルーツもここから来ているんだし。
「あ、はい。わかりました」
ルナは……アベさんの相手してくれるなら暫くほうっておこう。疲れたし、誰も俺の怪我の事気にしてくれないし。
「ところでおじょーちゃん。あんたもハンターならどうだい、一度俺とヤらないか?」
ヤる……アレのことか。ま、好きにしてくれれば良いだろ……俺はもうこりごりだ。
――つづく
ふと、自分で読み返していて。
こんなキャラいたっけ。