とあるハンターの受難な日々   作:蒼の涼風

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第30話になります。


砂漠に舞う氷の天使

第三十話「砂漠に舞う氷の天使」

 

 

 【サイン】が発信された場所に到着してまず驚いたのは、巨大な氷があったことだ。それから目に付いたのがダイミョウザザミ。

 何やら随分興奮しているみたいで、幾度と無く体当たりや圧縮した水をぶつけていた。

 

「ルナ、あれ何だと思う?」

「え……氷?」

「氷はわかってる……この暑い中、なんであんな巨大な氷があるんだと思う?」

「わかんないよ、そんなこと。もしかしたらあそこに商隊の人達が居るんじゃない?」

 

 かもしれないな。俺はルナを急かしてダイミョウザザミの下へと走り始める。途中、ルナは足を止めてLV1通常弾を5発発射した。

 ライトボウガンの特殊機構『速射』だな。撃ったのがLV1通常弾だと言うことで大したダメージは期待できないがこっちに注意を向けさせることが出来た。こうなればこっちのものだ。

 

「この……だらああああぁぁぁぁ!」

 

 人間の脚とは比べ物にならない速さで走り寄ってくる盾蟹にタイミングを合わせ、オンスロートを腰から振りぬき様に打ち上げる。

 『ゴキッ』という音と共に甲殻の一部にヒビが入る。なかなかの手応えだったが、怯ませるまでにはいかなかったんだろう、大きくハサミを振り上げて落としてきた。

 

「はいよ、お待たせっ」

 

 そんな声と共に俺と盾蟹の間に入って、そのハサミを受け止めたのはポチだ。アロマさんとポチもさっきのサインに気づいて駆けつけてきたらしい。

 

「ソウヤ、あんたは商隊の方を。ルナ、ポチ、商隊の安全が確認できるまで時間を稼ぐわよ」

「わかりました、任せます」

「ういっす、今日の晩メシは蟹鍋に決まりっすね」

「出来るだけ頑張ります。ソウヤ……急いでね?」

 

 上からアロマさん、俺、ポチ、ルナだ。なに、言わないでもわかる? ……悪かったな。

 俺はエリア6……洞窟付近へと走るが何分盾蟹のプレッシャーを受けているんだ、焦る焦る。

 

「ああ……くそ。おい、誰か居るんだろう?」

 

 最初に見た氷の塊の所へ辿り着いた頃には、砂漠の暑さと相まって息は上がってしまっていたな。

 どうも殆どの音も遮断しているようなこの氷の壁。仕方なくハンマーを抜き放つと腰だめに力を込め大きく振り上げた後に全力で振り下ろす。

 

 

 

 ――砕けた壁の向こうに居たのは、防具も着けず見た事も無い片手剣を持つ少女。しかしそれ以上に印象に残ったのは、白金の髪と鮮血よりも赤い……いや、紅い瞳だった――

 

 

 

 

「あなた……は?」

 

 どうにも酷く衰弱しているみたいだ、この少女。ギルドから依頼を受けてここに来るまで約一日かかったからな……よく持っている方か。

 ともかく俺は少女の警戒心を解くために、レイアヘルムを外して顔を見せると極力笑顔を作ってみる。

 

「自分達はギルドからの依頼を受けてあなた達の救助に来ました。商隊の方と、護衛のハンターが居ると聞いたのですが……ハンターはやられてしまったのですか?」

「いえ……私が護衛のハンターです」

「……は?」

 

 思わず素っ頓狂な返事を返してしまったじゃないか。待て待て待て待て! 目の前の少女がハンターだと? 冗談は止めてくれ、防具も着けずに狩り場にくるハンターが居るか?

 

「私の名前はリア=ラフェス、HRは5……ポッケ村に所属しているハンターです」

「じゃあ、あんたが護衛のハンターで間違いないんだな?」

「はい」

 

 そうそう、俺たちが使っているハンターランクは『ポッケ式』と呼ばれるもので、最高ランクは9だと思ってくれればいい。

 話を戻すぞ。俺の目の前に居る少女がその護衛のハンターなら、この場を任せても言いかと問いかけたんだが返事が怪しい。何故だ……?

 

「そ、その……この先にゲネポスとランゴスタがいるんです。ゲネポスは平気なんですが、ランゴスタは苦手で……」

「……マジで?」

 

 言いにくそうな様子からして、冗談の類を言っている様子じゃなかった。と言うことは、この少女――リアと言ったか――は本気でランゴスタが苦手らしい。

 ……よく上位にランクを上げれたな……密林なんか特に駄目だろうに。

 この時、俺の中には三つプランが持ち上がった。

 プランその1、我慢させてその場に待機させる……泣きそうだ、止めておこう。後でアロマさんやルナに怒られそうだし。

 プランその2、商隊を連れてエリア8まで移動してもらう……ダイミョウザザミの横を突っ切ってか? 無茶だ。

 プランその3、俺がランゴスタを掃除する……ハンマーじゃ難しいが、彼女が持っている片手剣が借りられるのなら可能か。

 

「なあ、その片手剣貸してくれるなら俺がランゴスタを掃除しておくぞ?」

「すみません、この子は使い手を選ぶみたいで……少し危険なんです」

 

 使い手を選ぶ片手剣? そんな御伽噺みたいな……いや、御伽噺みたいな話の実例なら直ぐ側にいるから一概にそうも言えないか。それに、ヒーローブレイドだったか……あれと似たような物だと考えておこう。

 

「わかった。じゃあ、他のプランで行こう……二つほどあるけど聞いてくれるか?」

「はい……済みません」

 

 頭を下げられても困る……今はどうにかしてこの状況を乗り越える事が先決なんだからな。

 とにかく、別のプランを立てなきゃいけなくなった。

 商隊の人たちは思ったより元気なものが多く、馬車もまだ走れるという事でエリア8……猫の巣に行ってもらうことになった。

 ……少し面倒な事になりそうだな。

 

 

――つづく

 

 




今回登場したリアという少女。
以前活動していた場所でお借りしたキャラです。

この場を借りて改めて御礼を。
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