とあるハンターの受難な日々   作:蒼の涼風

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第31話になります。
それでは、どうぞ。


盾蟹の脅威

 

 

 

 剣撃と鮮血……いや、黒い血が舞う。アロマさんとポチのコンビネーションはタイミングもよく、お互いがお互いの隙をフォローしあっているように見えた。

 これが上位ハンターの実力なんだと思う。だから、私は私の出来ることをするだけ。

 

「この……これで大人しくしてなさいっ」

 

 チェーンブリッツに装填したLV1麻痺弾、それを幾度と無く巨大な盾蟹の体へと打ち込む。多分、アロマさんの双剣にも麻痺の効果があったはずだからそろそろ効いてくる筈。

 案の定、蟹は何かに痺れたように動きを止める。その隙を見てポチは大剣を大きく振りかぶって溜め斬りの体勢に、アロマさんは双剣を頭上で擦り合わせた後、凄い勢いで斬り始めた。

 

「これなら……いけるかも。ソウヤが来る前に倒しちゃったら、がっかりするかな」

 

 そんな事を言う余裕さえも出てきたんだけど、相手はやっぱりモンスター。簡単には勝たせてくれない。

 

「いけない……ルナ、避けて!」

 

 アロマさんから悲鳴に近い声が聞こえたとき、私は足元から感じる振動に気づかなかった。次の瞬間見えたのは、あの蟹が背負っていたヤドに生えていた……大きな角……。

 

「っ……あれ……?」

 

 完全に貫かれると思っていたのに、予想していた衝撃は来なかった。代わりに、目の前にあるのは巨大な氷の壁。

 これは……そう、このエリアに入ったときに見たアレと同じものだった。

 

「ルナ、大丈夫?」

「うん、何とか……助かったみたい」

 

 怖かった、死ぬかと思った……そんな時に頭に浮かんだのはソウヤの顔。彼は……私が死んだら怒る? それとも……悲しむのかな。

 

「ダイミョウザザミは隣のエリアに逃げたみたいね……一旦ソウヤと合流しましょう」

「あ……はい、わかりました」

「了解っす。商隊の人たちも気になりますし」

 

 ポチは大剣に研石をかけてから立ち上がり、私も弾をLV1通常弾に交換してから頷く。そう、まずは助ける人の安否を確認しないと。

 その後に出会うことになる女性は……一瞬天使かと思うほど綺麗でした。

 

 

 

 

 まったく、心臓に悪い。だが、これで一つ分かった事がある。

 このリアと言う少女がこの片手剣は自分しか使え無いと言う理由……信じがたい事だが、この片手剣は氷を自由に扱う事が出来るみたいだ。相応に体力は減っていくみたいだが。

 

「悪いな……疲れているのにうちのメンバーを助けてもらって」

「いえ、これぐらいでしたら大丈夫です。それに……あの人、大切な方なんでしょう?」

「……はい?」

 

 これには驚いた。その表情は、いかにも同年代の友人に恋人が出来たと発覚した時のからかう様子……それがぴったりと当てはまるような笑顔だったから。

 大切は大切だが……人に言われると、からかわれている気がするな。

 

「あんたが思っているような関係じゃないさ。俺は保護者と言うか、後見人と言うか……そんなものだ」

「……じゃあ、そう言うことにしておきますね」

 

 じゃあって何だ、じゃあって。取りあえず商隊の人たちをエリア9に連れて行くための時間が欲しい……そう思っていたら奴は移動したみたいだ。

 ふむ、この位置ならエリア1かな。今なら連れて行けそうだが。

 

「ソウヤ、商隊の人たちは無事?」

「ぬわぁ!?」

 

 どっちにしようかと考えていると、アロマさんたちが来たみたいで後ろから声を掛けられた。あー、びっくりした。

 

「何よ、そんなに驚いて……あんた、そこの子に見とれてたんじゃないでしょうね?」

「おまっ、こんな可愛い子を独り占めするなんて許されんぞ! 紹介しろ、しょうかたわらばぁ!?」

「ソウヤ、さっき助けてくれたのはその人?」

 

 頼む、説明が面倒だから一度に話すのは止めてもらえないだろうか。取りあえず、洞窟の壁とキスしているポチは無視する方向だが。

 ルナにいたってはリアさんを眺めてるし……見とれるって言うのはこういう感じだろ?

 

「えーっと……この人は商隊の護衛のハンター、リアさんだ。で、まずアロマさんの質問……見とれてません、これっぽっちも」

「私……魅力ないですかね?」

 

 まさかのリアさんからの横槍。そういうことを言いそうには無いと思っていただけに油断した。

 女性が増えるとこういう話が出てくるからややこしい……無視して次の話だ。

 

「ルナを助けてくれたのもリアさん。それについては俺もよく分からないから……街についてから質問してくれ」

「そうなんだ……ありがとう、おかげで助かりました」

「いえいえ、助けに着たいただいたのは私の方ですし」

 

 お互い低姿勢……意外とこの二人は波長が合うんだろうか。いや、これは天然か?

 頭を下げた姿勢が二人ともだんだん前屈と変わらない角度にまで来たんだが……これはあれか、俺が突っ込むべきななのか。

 

「お礼も挨拶も後にしろ。まだダイミョウザザミも片付けられていないんだし」

「あ……」

「ダイミョウ……ザザミ……」

 

 ルナは本気で忘れていたみたいだが……なんだ?リアさんは何か言いたそうだ。

 何かあるのかと思って問いかけようとしたものの、ペイントボールの臭いが再びエリア5に向かっているのを感じ取り、急いで商隊をエリア9へ向かわせる。

 

「さっさとダイミョウザザミを狩って街に帰るぞ……ポチ、早く起きないと寄せ餌に使うぞ」

「ひ、酷い……」

 

 今まで壁に貼り付いていたポチを叩き起こす。砂が割れ、傷の具合から先ほどと同じダイミョウザザミが出てきたんだが……違和感があった。

 

 ――それは……体の色が、茹でられたように赤く変色していた――

 

 

――つづく

 

 




5人でひと狩りいきそうです。
ダイミョウザザミ戦、そろそろクライマックス、かな。

今回もお読みいただきありがとうございます。
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