とあるハンターの受難な日々   作:蒼の涼風

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その理由

 

「赤いダイミョウザザミ……? そんな莫迦な」

 

 亜種の報告は聞いていたものの、赤いのはショウグンギザミのはずだろう。……だよな?

 ダイミョウザザミの亜種は紫色のはずだし、それもG級クエストでしか発注していないはずだぞ。

 

「ソウヤ、とにかくあいつ倒すよ。ルナ、ポチ、商隊の人をそこで保護しときなさい……ゲネポスやランゴスタを近づけないように。良いわね?」

「二人でやれますかね……」

「わかりました、任せてください」

「は、はひ……」

 

 俺はアロマさんの指示に従い、ハンマーを腰に構えて駆け寄る。アロマさんが居れば負ける気はしない……と言うのは言いすぎじゃないだろう。

 妙に赤いダイミョウザザミの脚を狙い、思い切り力を溜めたハンマーを振り下ろす。

 

――ぐちゅぅっ!!――

 

 メキメキと嫌な音を立ててハンマーがめり込むと、脚が砕けたんだろう……その場で崩れ落ちてもがき始めた。

 

「まだまだ、次はこっちよ!」

 

 ガシィンと言う音が響き渡ったかと思うと、俺とは正反対の位置から幾多の衝撃が訪れる。恐らくアロマさんが乱舞を叩き込んでいるんだろう。

 俺も負けてはいられない、アベさんのハンマーの威力見せてやるよ。

 

「この……っだらあああぁぁぁっ!!」

 

 一度距離を空け、力を込めてハンマーを横に振りぬくと同時に遠心力を利用して回転を始める。ぐいんぐいんぐいん……おお、目が回るぞ。

 回転運動を無理矢理自分の脚で止めると、力の限りハンマーを振り上げる。無理矢理動きを捻じ曲げるもんだから、体中の筋肉が嫌な音を立てて悲鳴を上げる。

 やっぱハンマーは向いてないなー。

 振り上げたハンマーは良い感じに盾蟹の胴体を叩き割る。そこから溢れてきたのは無数の球体……卵だった。

 

「これは……卵?」

「……の、ようね。産卵期に入ったから気が立っているのかしら」

 

 このまま見逃す事もできるが、それは出来ない。この地域は商隊の通り道だ……そこにヤオザミが大量発生したとなれば、その先困る人が出てくる。

 ギルドの商品が値上がりするのもいただけないしな……そんなわけで、ちゃっちゃと狩るに限る。

 

「せめてもの情けよ……あまり苦しまないようにしてあげる」

「って事は、一撃で決めろってことですか?」

「あら、私の指導を受けて師匠のオンスロートを使ってるんですもの……できるでしょ?」

「……わかりました、やれば良いんでしょう、やれば」

 

 なんて言っても、産卵を控えた親がそう簡単に倒せるわけも無く……ぶくぶくと泡を吐いて追っかけてくる。

 これじゃあ力が溜められない。溜めたところで、突進を受けて集中が途切れてしまう。こまったね、こりゃ。

 

「ぐぅ……まずいな、これじゃ」

「ったく、いつまでも太刀だけに頼ってるからそうなるのよ」

 

 きっついお言葉……肝に銘じておきますよ。無事に帰れたらの話ですが。

 ともかく今は距離を空けなくちゃ……一撃で倒すどころか、こっちがやられかねない。どうしたもんかね。

 

「わ、私もお手伝いしますっ」

「な……!?」

「あの子!?」

 

 そこに駆けてきたのは……リアさん? 無茶だ、さっきまでふらふらだったじゃないかっ。

 

「今はただ怒ってるだけだけど……いずれ人の迷惑をかけちゃうだろうから。ごめんね……勝手だよね」

 

 辺り一帯のかすかな水分が凝縮されていくような気がした。近くにオアシスがあるから、水分を集める事は出来るだろうけど……でもそんなことが出来るのか?

 

「レフェキディス……お願いっ!」

 

 圧倒的な量の氷が盾蟹を覆う。いや、覆うだけじゃない……幾多もの氷柱みたいになって盾蟹の体を貫いていく。

 これが……彼女の言っていた、彼女の片手剣が使い手を選ぶ理由か。確かにこれだけの力……万人が使えるようなものにすると危険すぎるし、使用者にも相当な負担が掛かるだろう。

 ……前回も言ったって? 何度言ってもいいじゃないか、そう感じたんだから。

 

「今なら……一撃で、砕け、る、はず……」

「あ、おい……っ」

「ソウヤ! 今はあいつを倒すことに集中して、彼女は私が……!」

 

 その場に倒れ伏したリアさんのもとに駆け寄ろうとした時、アロマさんの激が飛んだ。

 そうだ、今やるべき事はダイミョウザザミに引導を渡すこと……せっかくリアさんが作ってくれたチャンスを無駄にしないために。

 

「こいつで終わりだ……うおおぉぉぉりゃああぁあぁぁ!!」

 

 渾身の力を込め、気合を込め……思い切りハンマーを振り下ろす。

 

――ガシャアアァァァ……――

 

 そんな音を立てて、凍結したその体は砕け散る。

 それが子どもを守る、ただその一心で人間に牙を向いたダイミョウザザミの……『親』の最期だった。

 いくら仕事とは言え、やりきれない事はやりきれない。

 だから……俺はダイミョウザザミに祈りの念を送る。

 

 どうか安らかに……親として生きた盾蟹に尊敬の念を送るために。

 

 

第三十二話「その理由」

 

 

「赤いダイミョウザザミ……? そんな莫迦な」

 

亜種の報告は聞いていたものの、赤いのはショウグンギザミのはずだろう。……だよな?

ダイミョウザザミの亜種は紫色のはずだし、それもG級クエストでしか発注していないはずだぞ。

 

「ソウヤ、とにかくあいつ倒すよ。ルナ、ポチ、商隊の人をそこで保護しときなさい……ゲネポスやランゴスタを近づけないように。良いわね?」

「二人でやれますかね……」

「わかりました、任せてください」

「は、はひ……」

 

俺はアロマさんの指示に従い、ハンマーを腰に構えて駆け寄る。アロマさんが居れば負ける気はしない……と言うのは言いすぎじゃないだろう。

妙に赤いダイミョウザザミの脚を狙い、思い切り力を溜めたハンマーを振り下ろす。

 

――ぐちゅぅっ!!――

 

メキメキと嫌な音を立ててハンマーがめり込むと、脚が砕けたんだろう……その場で崩れ落ちてもがき始めた。

 

「まだまだ、次はこっちよ!」

 

ガシィンと言う音が響き渡ったかと思うと、俺とは正反対の位置から幾多の衝撃が訪れる。恐らくアロマさんが乱舞を叩き込んでいるんだろう。

俺も負けてはいられない、アベさんのハンマーの威力見せてやるよ。

 

「この……っだらあああぁぁぁっ!!」

 

一度距離を空け、力を込めてハンマーを横に振りぬくと同時に遠心力を利用して回転を始める。ぐいんぐいんぐいん……おお、目が回るぞ。

回転運動を無理矢理自分の脚で止めると、力の限りハンマーを振り上げる。無理矢理動きを捻じ曲げるもんだから、体中の筋肉が嫌な音を立てて悲鳴を上げる。

やっぱハンマーは向いてないなー。

振り上げたハンマーは良い感じに盾蟹の胴体を叩き割る。そこから溢れてきたのは無数の球体……卵だった。

 

「これは……卵?」

「……の、ようね。産卵期に入ったから気が立っているのかしら」

 

このまま見逃す事もできるが、それは出来ない。この地域は商隊の通り道だ……そこにヤオザミが大量発生したとなれば、その先困る人が出てくる。

ギルドの商品が値上がりするのもいただけないしな……そんなわけで、ちゃっちゃと狩るに限る。

 

「せめてもの情けよ……あまり苦しまないようにしてあげる」

「って事は、一撃で決めろってことですか?」

「あら、私の指導を受けて師匠のオンスロートを使ってるんですもの……できるでしょ?」

「……わかりました、やれば良いんでしょう、やれば」

 

なんて言っても、産卵を控えた親がそう簡単に倒せるわけも無く……ぶくぶくと泡を吐いて追っかけてくる。

これじゃあ力が溜められない。溜めたところで、突進を受けて集中が途切れてしまう。こまったね、こりゃ。

 

「ぐぅ……まずいな、これじゃ」

「ったく、いつまでも太刀だけに頼ってるからそうなるのよ」

 

きっついお言葉……肝に銘じておきますよ。無事に帰れたらの話ですが。

ともかく今は距離を空けなくちゃ……一撃で倒すどころか、こっちがやられかねない。どうしたもんかね。

 

「わ、私もお手伝いしますっ」

「な……!?」

「あの子!?」

 

そこに駆けてきたのは……リアさん? 無茶だ、さっきまでふらふらだったじゃないかっ。

 

「今はただ怒ってるだけだけど……いずれ人の迷惑をかけちゃうだろうから。ごめんね……勝手だよね」

 

辺り一帯のかすかな水分が凝縮されていくような気がした。近くにオアシスがあるから、水分を集める事は出来るだろうけど……でもそんなことが出来るのか?

 

「レフェキディス……お願いっ!」

 

圧倒的な量の氷が盾蟹を覆う。いや、覆うだけじゃない……幾多もの氷柱みたいになって盾蟹の体を貫いていく。

これが……彼女の言っていた、彼女の片手剣が使い手を選ぶ理由か。確かにこれだけの力……万人が使えるようなものにすると危険すぎるし、使用者にも相当な負担が掛かるだろう。

……前回も言ったって? 何度言ってもいいじゃないか、そう感じたんだから。

 

「今なら……一撃で、砕け、る、はず……」

「あ、おい……っ」

「ソウヤ! 今はあいつを倒すことに集中して、彼女は私が……!」

 

その場に倒れ伏したリアさんのもとに駆け寄ろうとした時、アロマさんの激が飛んだ。

そうだ、今やるべき事はダイミョウザザミに引導を渡すこと……せっかくリアさんが作ってくれたチャンスを無駄にしないために。

 

「こいつで終わりだ……うおおぉぉぉりゃああぁあぁぁ!!」

 

渾身の力を込め、気合を込め……思い切りハンマーを振り下ろす。

 

――ガシャアアァァァ……――

 

そんな音を立てて、凍結したその体は砕け散る。

それが子どもを守る、ただその一心で人間に牙を向いたダイミョウザザミの……『親』の最期だった。

いくら仕事とは言え、やりきれない事はやりきれない。

だから……俺はダイミョウザザミに祈りの念を送る。

 

どうか安らかに……親として生きた盾蟹に尊敬の念を送るために。

 

 

 




――つづく

三十二話です……蒼の涼風です。
どうも、自分で書いてて凹み中です(ぇ;

命のやり取りをする相手が怒る理由……その理由を知ったとき、武器を振り下ろす事が出来るのでしょうか。
それでも武器を振り下ろせる者……それだけがハンターになれるのではと私は思うのです。

それではまた次回、ソウヤと地獄にお付き合い下さい(礼
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