どれくらい飲んだんだろう……よく覚えていない。ぼんやりとする意識を覚醒させるために、伸びを行う。
「あ……たま痛え」
寝起き第一声がそんなもので良いのかと思うかもしれないが、ハンターの生活なんて得てして不規則なもんさ。
「くきゅぅ~」
不意にそんな音が響き渡る。俺の腹の音じゃないぞ?横でまだ寝てる子レイアの寝息だ。
「そうか……こいつを育てることになったんだよな」
ぼんやりする頭を覚まそうと風呂に向かおうとするんだけど、どうやら此処は昨日ギルドマスターが言っていた土地らしい。何処に何があるのかわからないものだから、あっちこっち扉を開いて周っていたんだ。
「……水の音?誰かいるのか……?」
ギルドマスターは面倒を見ないなんていってたけど、誰か手伝いを寄越してくれたのかもしれない。そんな風に考えてノックもせずに扉を開いたのがいけなかった。
「なっ……あ、アロマさん、何故此処に……!?」
しかして、そこに居たのは我が師匠アロマその人だったのだ。しかもよりによって風呂場。勿論一糸纏わぬ姿となっているアロマさんが居るわけで。……あ、もしかして俺命の危機?死亡フラグ確定?
「こ、の……いつまで見てんだドアホーっ!!」
強烈なスイングにより投擲された風呂桶が額にぶつかったらしい。やけに時間がゆっくり流れてる……俺の感覚が変になったのか?
「ぶへあ!?」
ゴスッなんて音がして床に仰向けに倒れ、後頭部をしたたかに打ち付けて声が漏れると時間の流れが正常に戻ったみたいだ。おかえり俺、そしてさようなら。
「人の入浴を堂々と見に来るとは、いい度胸じゃない。ねえソウヤ、ハンターが何故人に武器を向けないか……教えてあげようか?」
いやいやいや、不可抗力だと抗議をする余裕も無さそうだな、こりゃ。とにかく後ずさってみる、何故か風呂場に鬼神斬破刀を持って入ってる狂気そのものから。
「ま、待ってください。アロマさんが居るなんて思ってもみなかった……」
いや、刀を大上段に振り上げないで。じょ、冗談ではないっ。
「し、失礼しましたーっ」
無言で太刀を振り上げたままのアロマさんから逃げるように駆け出す。途中何か蹴飛ばした気がするが、気にしない。何か踏んだ気もするが気にしな……。
「クキャアァアァ!?」
踏んだのは子レイアの尻尾だったみたいで、盛大な叫び声を上げる。こんな子どもでもバインドボイスか使えるのか、思わず両手で耳をふさいでしまった。
「良くやったルナ!あとでこんがり肉Gを食わしてやる……こいつの」
まて、いつ名前が『ルナ』に決まったんだ。いや、俺の肉って……本気で命の危機!?
「ルナ?ルナってこいつの名前ですか?」
取りあえず話題を変えてみようと最後の抵抗……あ、上手くいったみたい。何か講釈モードになってる。と言うか、服を着てください。
「ええ、稀少種のリオレイアからとれる素材で作る防具は、ゴールドルナシリーズと呼ばれるの……だから、ルナ。いい名前でしょ?」
ルナ……月って意味かな。うん……悪くない。
「いい名前ですね……ルナ」
そんな言葉だけ答えて撫でてやろうと手を伸ば……そう言おうとしたら噛まれた、ルナに。
「いたぁ!?おま、こら、人の手を食べるんじゃない」
甘噛みなんてレベルじゃなかったよ。思い切り噛みつかれて、歯型が残る……いや、肉がこそげ落ちるかと思った。
「いたたたた!?わかった、飯の用意するから話してくれー!」
共同生活一日目の朝はこんな風に始まったよ。そして俺はこの時、重要なことを失念していた。それはこれからの生活に大きく影響すると言うのに……。
まあ、それは次の機会に話すとするさ。
―つづく
リオレイアって、やっぱり可愛いですよね!
モンハン新作、リオレイアには乗れるんだろうか。