「マジか、この食べっぷり……」
ルナに朝食を用意したものはいいものの、ストックしていた生肉10個全部たいらげやがった。何かもう気持ち良いくらいの勢いで出来上がる骨の山、こんがり肉も20個食べられてるよ。
「これは……何か対策を立てなきゃな」精神的には
アロマさんは朝の一件が終わった後、満足そうに帰っていった。別に四肢を切断されることもなく無事だぞ……身体的には。
……目の前であんなでかい肉を計30個も食べる様子を見てれば疲れもするってもんさ。まあ、養うって言うのはこういう事なんじゃないかって考えなかった俺も悪いんだけどな。
「しゃーない。行商ばあちゃんのとこに行ってみるか」
行商ばあちゃんは、この街じゃ手に入らないもの……モドリ玉や爆雷針なんかを売ってくれるんだけど、交渉次第で生肉なんかも売ってくれるようになるらしい。いつも酒場の近くで店を開いてるから、今日も居るはずだ。
「おや、ソウヤじゃなないかえ。今日はこの街では手に入らないもの仕入れてきたよ」
声を掛ける前に気づかれたよ。うちのくそじじ……いや、ギルドマスターと違って安心できるような笑顔を浮かべ、俺に話しかけてきた。
「相変わらずだな、ばあちゃん。今日はちょっと頼みがあるんだけど良いかな?」
ばあちゃんはきょとんとした様子で俺を見上げる。そりゃそうだろう……千里眼の薬とアオキノコしか買わなかった奴が、急に頼みごとなんて言うんだから。
「めずらいいじゃないか、ワシに頼みごとなんて。なんだい?」
「実は……俺に生肉を売ってほしい。出来れば三日に一回くらいのペースで100個ほど」
ああ……ますます目を丸くしちゃったよ。
「100個買ってくれるなら売らないこともないけどね……自分で狩ったほうが新鮮だろう?」
うん、もっともだ。でもね、自分で狩ったらどう頑張っても10個しかもって帰れない。それじゃあ足りないんだよな。
「ちょっと事情があってね、頼むよ」
曖昧に笑みを浮かべると、納得はしてくれてないみたいだけど了承はしてくれた。さて、そうなれば先立つものが必要なわけで、俺は酒場にむかう。もちろん、報酬の良いクエストを探すために。
「ち~っす。何か良いクエスト無いかな?」
受付テーブルの向かって一番左側の女性に声を掛ける。彼女は下位クエストの受付担当で、もうすっかり顔馴染みだ。何か眠そうだったけど、そこはそこ。すぐにクエストを紹介してくれたよ。
「はぁい?ああ、ソウヤ君……そうね、今あるのはティガレックスか、リオ夫婦か……キリンくらいね」
流石に俺の力じゃ、リオ夫婦やキリンは無茶だ。消去法でティガレックスに行くことにした、レイア装備は龍耐性は高いとは言えないけど……鬼斬破ならティガレックスにも有効打を与えられる。
「これにするよ、【轟竜ティガレックス】これなら何とかなるかもしれない」
「わかったわ。場所は砂漠だから雪山ほど手強くは無いけど、十分気をつけてね?あの子を一人ぼっちにするのは忍びないでしょ。」
まあね……産まれてみれば本当の親も、兄弟になるはずだった卵たちも皆死んでたんだ。俺ぐらい面倒を見てやる奴が居てもいいだろう?その為だったら苦労ぐらいしてやるさ。
「砂漠か……クーラードリンクが要るな、ちょっと買ってくるよ。あ、それとあいつの名前……【ルナ】になったから、これからはそう呼んでやってくれよ」
心配そうに見つめてくる受付嬢におどけて肩を竦めた後、ハンターショップでクーラードリンクを買って馬車乗り場へ行くだけだ。ルナはギルドマネージャーに世話を頼んだから大丈夫だろう。
今回の持ち込みアイテムは回復薬×10、調合書2冊、回復薬グレート×10、シビレ罠、トラップツール・ゲネポスの麻痺牙を各2つずつにハチミツ10個。後は閃光玉を五つにクーラードリンク一つだな。
「まあ、支給品も合わせればかなりの量になるし、こんなもんか」
一人で馬車の中で呟くのは癖だな、これから狩りに行くという意識を自分の中に持たせるための。一人で狩れると言っても相手は轟竜、油断すれば俺が負ける羽目になる。
待ってろ、絶対に狩ってきて見せる……今後の生活費のために!
そんな風に胸の中で呟くのと、馬車が砂漠のベースキャンプに到着するのは同時だった。馬車を降りアイルーに礼を言うと、支給品ボックスから応急薬、携帯食料、携帯研石クーラードリンクと地図をポーチに押し込んでレイアヘルムをかぶる。
「行くか……狩りの時間だ」
美味くもない携帯食料を嚥下し、水で口の中の渇きを癒すと顔の覆いをはめて呟く。狙うは轟竜ティガレックス!
―つづく
第五話、お送りしました。
今回の標的はティガレックス。
正直、初見で初期装備で挑んでトラウマになったのは私だけではないはず。
それでは、また次回。