前情報で砂漠の轟竜は大抵エリア5に居ると聞いていたため、キャンプにあった井戸を飛び降りたんだが……その途中で重要なことに気づいてしまった。
「ぺ、ペイントボールがない!?」
そう、ペイントボールを支給品から回収することを忘れてしまっていた。こりゃあ……時間がかかりそうだな。気負っていたのかもしれない……自分のため以外に狩りをすること自体が珍しいから。
それでも俺はエリア5に顔を覗かせ、クーラードリンクを飲み干すと標的を探したよ。橙と青のコントラスト……って程じゃないけど、奴は良く目立つ。すぐに見つかるだろうと辺りを見渡していたんだが、どうにも見つからない。
「居ない?別のエリアに行ったのか?」
背負った鬼斬破の柄を握り辺りを警戒していても埒が開かない。手を離して不用意に踏み出した瞬間、地面の砂が盛り上がってきた。そうだな、モノブロスなんかが地面からアタックしてくる感じを想像してくれれば助かる。
「ごはぁっ!?……ティガレックスが地面に潜るなんて……」
地面が弾けた勢いで俺の体は中空を吹っ飛ばされ盛大に転げまわったよ。ティガレックスは得物を待ち伏せする知恵がある、しかしこいつは知恵がつきすぎじゃないかって程だ。
「やってくれるじゃないか、このヤロウっ!?」
危ういところで突進をかわし、尻尾に武器を抜きざまに斬りつけた……筈だった。しかしそのティガレックスは異常に硬かったんだ、鬼斬破は弾かれちまった。
「なんて奴だ……これが本当に下位のクエストか?」
正直焦ったね。待ち伏せするわ、鱗は硬いわ……おまけにデカイし。これがキングサイズってやつだと知るのは帰ってからになるけどな。
だけど斬れない訳じゃない、脚や頭には少しずつだけど傷をつけられる。雷に弱いのも変わらない……斬りつける度に迸る閃光を受け、遂に奴が怯んだ。その隙に距離を開けて置けばよかったよ……でも、俺は欲張っちまった。
「もう一撃……しまっぐわあぁ!?」
奴が回転の前動作に入ったのに気づくのが遅かった。強靭な尻尾に吹っ飛ばされ、腕から鬼斬破を離してしまったみたいだ。
「がっ……はっ」
強く背中を打ち付けて息が漏れる。こいつは違う、以前闘った個体とは全く……何もかもが桁外れだった。それでも、ハンターの意地って言うのかな……朦朧とする意識の中で手に掴んだのは、剥ぎ取り用のナイフだった。
――グガアァアァ!!
ティガレックスが吼える。そんなちっぽけな物で自分が倒せるものかと言っているように思えたね。
「うるさい……俺はハンター、お前はモンスターだ。なら、俺はお前を狩ってやる」
自然と漏れた声に自分自身が驚いたよ。でも、いくら口は動いても体がボロボロだった。奴が砂玉を飛ばして来たのを避けることも難しそうだ。
「畜生……ここまでか」
迫り来る三つの巨大な砂の塊、俺はこの時ばかりは覚悟したよ……自分はここで終わるんだと。でも、終わらなかった。俺の前に何かが飛び込んできて砂玉を防いだんだ。
「何やってんだバカヤロウ!」
飛び込んできたのはランポスだった。いや……正しくはランポスーツシリーズを身に纏ったハンターだった。
「早く回復しろ、来るぞ」
そのハンターは大剣『ブレイズブレイド改』を盾の代わりに使って、再び迫ってきた砂玉を防ぐ。俺はその間に回復薬グレートを二つ飲み込むのと、ティガレックスが突進を始めるのはほぼ同時だった。
「おいあんた!やばいぞ、避けろ!」
それを見て俺は叫んだが、どうもこっちを見て笑みを浮かべただけだった。何だこいつ。
「ふ……そんなもの俺が防いでやるぶあ!?」
吹っ飛ばされた。そりゃぁ綺麗にランポスのごとく吹っ飛ばされていた、そのハンター。俺は辛うじて避けたものの、鬼斬破は遥か遠くに突き立っていた。
「なんなんだ……あいつは。ったく」
莫迦だろう……ただの。このままやるしか無い、俺は奴が振り向く前にシビレ罠を仕掛けて待つ。
――グガアァアァアァ!!
突進した先で頭をぶつけて怒ったらしいティガレックスが、猛スピードで迫ってくる。俺は少しずつ自分の位置を調整してシビレ罠を踏ませてやろうとした。
――グギャアァァアァ!?
予想通り身体が痺れて動けなくなっている奴に駆け寄る。急がなきゃ、シビレ罠の効果は数秒だからな。
「こいつ……くたばれぇっ!!」
自分でも信じられないことだったが、俺は何を思ったのか頭によじ登ると全体重をかけて剥ぎ取りナイフを振り下ろした。そして、それは深々とティガレックスの頭蓋に突き刺さったよ。
―続く
第六話、お送りしました。
本日も目を通していただき、ありがとうございます。
また明日、更新させていただきます。