『ガギィッ』
ティガレックスの頭に突き刺さった剥ぎ取りナイフはそんな風に音を立てて、根元から折れちまった。やはり実戦に使うには強度不足なんだな……。
けど、致命傷にはならなくても有効打にはなったみたいだ。シビレ罠の束縛が解けて振り落とされたものの、さっきまでの勢いは無くなってきた。
「ぐぅっ……これは、鬼斬破……?」
振り落とされた先には幸運にも鬼斬破のすぐ側だったんだ。でも俺はすぐにはそれを取らずに、ポーチをまさぐった。
「こんのおぉっ!」
突進の準備に入っていたティガレックスの眼前に閃光玉を投げつけたんだ。圧倒的な量の光が爆発するのが、閉じた瞼の上からでも分かったよ。
――ギャアアァアァ!
そんな雄叫びが聞こえた瞬間、俺は鬼斬破の柄を握って走り寄って体の中で最も柔らかく繊細な部分……眼球へとその刃を突き立てたよ。
「いくら頑丈だろうと、でかかろうと……内側から焼かれちゃひとたまりも無いだろう、こらぁ!」
ズチュ、ズチュ、っと言う嫌な音と共に刃が進み、その度に閃光が走り遂にティガレックスが断末魔の悲鳴を上げた。
――グギュギャアァァァァァァァァァァァア……!!
ティガレックスは口から泡を噴き絶命したよ。俺はその場に座り込み、体から大量の汗が出ているのに気づいてクーラードリンクを飲み込んだ。
ミントを齧ったような味がして、すっと汗が退いていくのを待ってから立ち上がる。まだ、厄介なやつが残っているからな。
「誰だ……あいつ」
鬼斬破を引き抜き、ドロリとした赤い液体を持っていた水で洗い落として鞘にしまってから先程のランポスーツのハンターのところに急いだんだ。気絶してるのか、仰向けに倒れたままだったよ。
「生きてるよな……しかし、轟竜相手にランポスーツは無茶だろ……」
仕方ないから応急薬を飲ませてやるか……ランポスの口に。そう考えて薬瓶の蓋を開けると、徐にランポスの口の中に流し込んだんだ。
「ぶふぅ!?な、何だこれ!?」
知ってるかな?ランポスーツの口の部分は人間の顔がある……必然鼻や目にも入るだろう。
「おま、やめ、やめてぇ!ぎゃぁぁぁぁ!!」
ディアブロスの咆哮と間違わんばかりの叫び声を上げてそのハンターは起き上がった。おお……向こうでガレオスが飛び跳ねてら、声高いなー。
「助けてくれたことは礼を言うけどな、あんた何者だ?流れのハンターか?」
流れのハンターって言うのは嫌われるもんで、ギルドの管理外の狩りをするものだからギルドナイツに常に狙われている。まあ、人間とモンスターは運命共同体みたいなものだからな。
「違う。俺は流れのハンターじゃなく、この先の街にあるギルドに登録したくて村から出てきたんだ……その結果、迷っちまった」
えーっと……どこから突っ込めば良いのやら。一つずつ教えていってやるか。
「あのな、どんな村でもハンターが居るなら街と行き来する馬車があるんだぞ?しかも、100zで利用できるんだが……知らなかったのか?」
「そうだったのかああぁぁぁ!?」
おう、高周波再び。思わず耳を塞いだままけり倒しちゃったよ、うるさすぎて……しかし、知らなかったみたいだな。
「まあ、もうすぐギルドの馬車が来るからついて来な……うちのマスターに紹介してやるから」
そう言い終るのと同時にアイルーが御者をしている馬車が到着したから、説明してそいつも乗らせてもらったよ。この男、自分の事は『ポチ』で良いとか言って本名を名乗りたがらない……まあ、ハンターなんてのは多かれ少なかれ事情を抱えているもんだから気にしないけど。
暫くの会話の後、街についたようで馬車を降りてギルドマネージャーに狩猟完了の報告をしようと思ったんだ。だけどそれは叶わなかった、血相を変えてギルドマネージャーが酒場から飛び出してきたかんだよ。
「ソウヤくん、大変なの!ルナちゃんが、ルナちゃんが……!!」
その様子にはいつもの、のほほんとした様子は無く真剣そのものだったんだ。だから、俺はポチがその場に居るのも忘れて家へと駆け出した。
「ルナちゃんが誤って大量の毒テングダケを食べちゃったのよ!」
その言葉が俺の脳裏に嫌な予想ばかりを浮かべ、俺はその想像を振り切るように全力で走り続けた。
―つづく
では、またお会いいたお読み頂きありがとう御座います、蒼の涼風です。
……あれ?あれ?
私はのほほんとした日常コメディのような物が書きたかったのですが……(滝汗
今しばらくシリアスな展開にお付き合いくださいませ、もう少ししましたらコメディに戻ると思いますから……多分、きっと、恐らく……(殴
しましょう。