巨神伝説タイタン   作:風雲再起

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無限に広がる大宇宙・・その片隅の銀河系に、いまごくわずかな変化が起きていた。
「デウス様。ギャラクティック・ストリームの流れが変わりました。」「なに・・むう、これは・・」
「実に十万年ぶりです。そしてこの潮流パターンは・・」「うむ・・封印が解ける、な。」「はい、エデンを
席捲した魔獣たちが再び。」「だがこのエネルギー量では十万年前のように我らに匹敵する力は出せまい。」
「それでも人類にとってはじゅうぶんに脅威となります。しかし・・」「そうだ・・我らはいにしえの掟を
破ることはできぬ。エデンは人間にまかせ、干渉しないという掟を。」「まさかこれほど早く復活するとは
誰も予測できませんでした・・いかがします?」「・・ここは小細工が必要だな。さっそく手配しよう。」

♪ドン!「これより神意裁判をおこなう。被告タイタンは天界に対し謀反を企てた。これは重罪である。」
「デウス様!なぜ私にこのような冤罪を!」「控えい!そなたが宮殿に数多くの神獣を擁しておるのは
いかなる所存か!」「みんな私の大事な家族、ただそれだけです!それに神獣は四体だけです!」
「言い訳だな。神獣には我らに匹敵する力を持つものもある。謀反のための軍備であろう。」「そんな・・」
「判決を言い渡す。タイタンは神の力を封じ、エデンへ追放刑とする。むん!」ガチーン!「うおっ!」
ズズズズズ・・「力が・・出ない・・」「その封印の腕輪はよほどのことがないかぎり外れぬ。エデンに墜ち、
人としての限られた生をまっとうするがよい。追放!」スッ・・『うわあああああーっ!・・』・・フッ。

「巨神伝説タイタン」第一夜「失楽園」 - 地震魔獣マグナ登場 -

タイタンの宮殿。主人を失った宮殿は暗く沈んでいた・・「うっうっうっ・・ご主人さまぁぁーっ!」「アラクネ・・」
「ほっといてアーレス!軍神でもあり親友のアナタがなぜご主人さまを弁護してくれなかったの!ご主人さまが
謀反なんか起こすわけないじゃない!それを一番よく知っているのはアナタでしょ!!」「・・すまぬ。私にも
どうすることもできなかった。デウス様の決定は絶対だ。」「うっうっ・・」「そやアラクネ・・泣いとっても
どうもならんて。」燃えるような赤い髪を結い上げた美女が関西弁で慰める。(ちなみに声は可愛い)
「フェニックス!あなたご主人さまがいなくなって平気なの!」キッ!「平気なわけないやろ!やがうちは
誓ったんや。お館様に・・」よく見れば大胆にカットされたローブからのぞく美の女神に祝福されたかのような
肢体は、怒りと悲しみに震えていた。「でも・・僕たちはこれからどうすればいいんでしょう・・」ぐす・・
フェニックスの横で体育座りで泣いている少年が眼に涙をいっぱいに溜め彼女を見上げている。「レビヤタン、
それを考えるんや・・」その美しさに一瞬怒りも忘れクラッとしながらも冷たく言い放つ。「御主人様の冤罪が
晴れるまでこのお屋敷をお守りする、訳にもまいりませんな・・。我々がいるために・・。」背筋を伸ばした
白髪の執事風の老人が豊かに蓄えた白髭を撫で、その細くて開いているかどうか分からない眼がキラリと光る。
「イエティの言う通りや、うちらがおるからお館様は。となれば・・」「そうです、僕たちの命と引き換えに
デウス様に無実を訴えましょう!」「そうね!ご主人さまの為ならわたしの命なんて安いもんよ!」「少し待て。
君達の命を差し出しタイタンが許されたとして彼がそれを喜ぶと思うのか?・・頭を冷やせ。」「でも!でも・・
もうご主人さまには会えないのならいっそ・・うわああああーん!」「・・うちらもアラクネと同じ気持ちや。」
「なにか手があるはずです、なにか・・」「できうれば共に墜としていただければまだ・・」はっ!「それだ!」
『アーレス様?』「君達だけなら私の神力でもエデンに送りこめるぞ!」『・・それだ!』「その手があったで!」
「しかし堕天には相当の力の消費を伴う。封珠形態か人間形態ならまだしも、巨神獣形態にはしばらくなれぬぞ。」
「どのみちマスターの許可が無ければ僕たちは巨神獣形態はとらない誓いをたててます。天界に叛意があれば、
すでに巨神獣になって・・」「わかっている・・君たちが本気になれば、十二神衆総出でも制圧は難しい。
もうひとつ。エデンに降りれば、二度と天界の門は開かぬが・・」「わたしたちだけこんなとこにいても
何の意味もないわ。ご主人様といっしょなら、たとえ地獄だって私たちには楽園よ。」「そやな、天界も
ディーヴァ戦争からこっち、な~んもあらへんし。未練はあらへんわ。」「僕もマスターの側がいいです!」
「愚問でございます、アーレス様。」「わかった。では支度をしたまえ。」「うん!みんな夜逃げ支度よ!」『おう!』
ドタバタ!「えっと、ご愛用の「イージス」と「ヒドラベルト」と・・よし!」「うちらの「巣」であるこの
ブレスレットを忘れたらあかんで。」「これはマスターの右腕たるアラクネが付けててください。」「わたくしたち
より力が強いアラクネ殿は常にご主人様をサポートできるよう、「巣」では休まない取り決めですからな。」
「わかった。じゃ、エネルギー消費を抑えるため、みんな「巣」に入って。」カチャ。『ハイバネーション!』
シュッ・・パシパシパシッ。「アーレス、準備いいわ。」「ではいくぞ。タイタンの姿を強く念じよ・・時空転送、
開けヘブンズドア!!」キィィィ・・「ご主人さま・・アラクネがいますぐ参ります・・浮気しないで待ってて
くださいね・・」フッ・・「・・転送成功・・これでよいのですね、デウス様。」スッ・・「うむ・・タイタンにも
神獣達にも悪いことをした。罪人でなければエデンの掟を破ることはできぬ。アーレス、そなたにも辛い思いを
させたのう・・」「いえ・・デウス様のご心中を察すれば、わたくしなぞ・・」「代償は大きい・・天界は最強の
勇者を失った。」「はい・・ですがエデンに最強の勇者が誕生しました。」「・・そうだな。彼らに幸いあれ・・」

ザザーン・・(う・・)パシャ。(海岸・・どこの国だ?)フラッ・・(う・・堕天でエネルギーを消費したか。
しばらく休まないと、動くこともできない・・)『おにいちゃん、どうしたの?』(・・ん?)ひょい。
「おじいちゃーん!土左衛門が流れついたよー!」「なに?・・ミナモ、まだ生きとるぞい。どうなされた
お若いの?」「(・・日本語。ここは日本か。)波にのまれ・・なんとか・・」「よっこいしょ。うちへ来なされ。」

「はい、お茶です。」「ありがとう・・」スス・・「ようやく元気が出たようじゃのう。」「見ず知らずの私になぜ
こんなに・・」「これだけ年をとれば人が見えてくるものじゃ。あんたは悪いお人じゃない、それだけじゃ。」
「でも私のようなものが上がりこんでいたら・・」「うちにはワシと孫しかおらんよ。」「お父さんとお母さんは
海で死んだの。だからおじいちゃんと私だけ。」「そうでしたか・・ならばお礼をしたいのですが、お手伝い
できることがあれば。」「かまわんかまわん。あんたも家族があるのじゃろ?」「・・私も天涯孤独です。」
「そうか・・わかった、こんなところでよければ。」「おにいちゃん、いっしょにいてくれるの?」「ああ。」
「そうじゃ、お名を聞いておらなんだの。・・適当な名前でええぞ。」「ふっ・・神・・一郎と呼んでください。」

それから一郎は老爺と孫娘を助け、漁をすることになった。ポンポンポンポン・・「網を上げてくれ。」「はい。」
ザザザーッ!「たいした力じゃの。しかもスジも悪くない。もう少し経験を積めばええ漁師になれるぞ。」
「はは・・ん?」「おや?・・誰か浜で手を振っとるの。」「あれは・・まさか?」「ちょうどええ、戻るぞ。」

ザザーン・・「アラクネ・・」「・・ご主人さま~!」ガバッ!「やっと会えたよー!うえええーん!」めそめそ。
「なぜ降りてきた?天界にいれば永遠の生命を保てるのに・・」「ご主人さまのいない人生なんて考えられません!
おそばに置かせてください!ほら、フェニックスもレビヤタンもイエティもついてきてくれました。」キィィィ・・
「堕天で相当のパワーを消費したようだな・・しかしアラクネは元気だな。」「これでも「もと」神ですし。」
「ああ・・そういえば古代メソポタミアの魔神だったんだな。」「数千年ほど君臨してましたけどね。」
「おにいちゃんの彼女?」ひょい。「この子だれ?」「かくかくしかじか。」「ふ~ん。私はご主人さまの秘書兼
メイドのアラクネ。ミナモちゃんってゆーのかー。」「お知り合いがこられたようじゃの。手伝いはもうええから、
お戻りなされ。」「いえ、わたしもお手伝いします。」「なんと?」「ご恩はちゃんとお返ししろとご主人さまに
しつけられましたので。料理はうまいんですよ♪いいですよねご主人さま?」「では腕をふるってもらおうか。」

はぐはぐ・・「お姉ちゃんの料理、とってもおいしいね。」「腕はなかなかのもんじゃのう。よう素材の味を
生かしておる。ええ嫁になるぞ。」「ま!ねえねえ、いい奥さんになるって♪」「そうか。ならいいダンナを
見つけてやらないとな。」むっ。「もう!少しは朴念仁が治ると思ったら、前とちっとも変わらないんだから。」
「性分でな。」『あはははは!』カタカタ・・「・・ん?」ズズズズ・・「・・地震か。」「最近多いね・・」

ザザーン・・「ご主人さま、床の準備ができました。」「・・ああ。アラクネ、これからはご主人さまと呼ぶのは
やめてくれないか。」「え?」「もう俺はタイタンではない。ただの人間、神一郎だ。」「でも・・」
「一郎でいい。主従関係は解約だ。」「解約?クビですか!わたしに何か落ち度でも?!」「そうじゃない。
アラクネと対等の立場になっただけだ。一緒にいてもいい。」「ホッ・・でもどういう立場で接すれば・・」
「アラクネの好きな立場でいい。」「では・・一郎さんの彼女というのは・・ダメですよね。」「・・それでいい。」
「え・・」「共に天から墜ちた者同士、肩を寄せ合って限られた生を過ごそう。」きゅん・・「・・はい。」

ザザーン・・「ご主人さま、いえ、一郎さん・・わたしっていつまで生きられるのかな?」「・・わからない。」
「天界にいたときは永遠の生命だったから、死ってよくわからないの・・」「俺もだ・・だが、ひとつだけ
はっきりしたことがある。」「え?」「人は限られた生命だからこそ、精いっぱい生きている。じいさんとミナモを
見ろ。楽な生活とはいえないが、あんなに輝いてる。」「・・そうだね。わたしたちもあんなふうに輝いて
生きていけたらいいね。」「そして最期に笑って死ねる人生・・それが最高なのかもしれないな。」「・・ひとつだけ
約束して。ぜったいにわたしより先に死なないで。あなたがいないこの世なんて耐えられないから・・」
「・・わかった。」ス・・(ついに念願のキスが・・)ズズズズ・・「ん?」「あら~!・・いいとこだったのに~!」
「・・」「・・どうしたの?」「アラクネ・・感じないか?この魔気を。」「・・ええ。」キュッ。「はるか沖合から・・
ずっと深いところに。」「ひさびさに絡新婦の目になったな。俺はその目が好きだ。」「200年ぶりに血が騒ぐ・・」
「おそらくは日本海溝。」「まさかいまの地震も?」「まず間違いない・・地脈をあやつる魔の仕業だ。」
「レビヤタンを物見に潜らせましょうか?彼なら一万mでも。」「いや、危険すぎる。しばらく様子をみよう。」

日本海溝。「母船応答せよ。こちら海底探査艇「しんかい」。ただいま深度10000m。」『11時の方向に海溝崖がある。
注意せよ。』「了解。まもなく深度11000。海溝底に・・」グラッ、ドオオオーン!「うわっ!」『どうした?!』
「いまものすごい海底流に当たった!まるで・・」「あれ、あれ!」「なんだ?・・あれは!」ゴォォォォ・・
「・・乱泥流だ!」「照明弾!」シュボッ・・パッ・・「まるで深海の砂嵐だ・・探査音波!」ピーン・・コーン。
「約200mの厚みか・・」「これを見ろ!海底地形図が変だ!」シャカシャカ・・「・・海底が動いてるだと?!」
ゴォォォ・・「泥流の中に何かいる!・・しかもでかい!」シュバババッ、ビュルルルッ!「なんだ?!」
「なにか巻きついたぞ!」グン!「うわっ!引っぱられる!」『うわああああーっ!・・』・・バキバキバキ!

次の日、商店街。「あ、これもキレイ。」「アラクネ、いいかげんにしろって。お使いを頼まれて道草食ってちゃ
いけないだろ。」「だってお洋服もそろえないと」ピン!はっ!「なに?!」「この魔気は!」・・ゴゴゴゴゴ!
「地震!」「でかいぞ!伏せろ!」ドドドドド!ガシャアアーン!キャアアアーッ!「きゃあっ!」「これは・・
震度7はある!」ズダダダダーッ!ミリミリ・・「店が崩れるぞ!アラクネ!」「わかった!糸玉!」シュバババッ!
ドグッシャーン!『ふう、間一髪。』『揺れは収まったようだ。出よう。』『はい。開け!』キュン。「うわ~・・
糸玉で緩衝しなかったらペチャンコだったわ。」「街は壊滅状態か・・じいさんとミナモが心配だ。」「ええ!」

タタタタ・・「・・あれは!」「なんてこった・・家がつぶれてる!」ダダッ!「じいさん!ミナモ!」「ここだよ!」
「ミナモちゃん!」「おじいちゃんが家の下敷きに!はやく助けて!」「わかった!・・じいさん聞えるか?!」
『なんとか生きとるよ・・さいわい梁の間じゃったので、ほとんど無傷じゃ。』「よかった。すぐに助けます!」
ガシッ。「元の力は奪われたとはいえ、このくらいの瓦礫なら!」ググッ・・はっ!「ご主人さま!・・あれ!」
「なにっ?」ザァァァ・・「海が・・海が凄い勢いで引いていくよ。」ガクガク・・『これは・・津波が来るぞい!
一郎!ミナモを連れて早く高台に逃げるんじゃ!』「アラクネ!ミナモを連れて先に!」「でもおじいちゃんが!」
「ここは俺がなんとかする!」『だめじゃ!あんたも早く逃げるんじゃ!時間がない!』・・ゴゴゴゴゴ!はっ!
「・・きた!」『いいんじゃ、ワシはもう十分に生きた。一郎、ミナモを頼みましたぞ。』「・・はい!」ダッ!
「おじいちゃぁぁーん!」「ごめん、ごめんね!・・」『・・ミナモ、さらばじゃ。』ゴゴゴゴゴ・・ドパアアーン!

少し離れた高台。「うっうっうっ・・おじいちゃん。」「じいさん・・。むっ?!」「この魔気は・・近いわ!」
ゴゴゴゴゴ・・ドパアアアーン!ウオオオーン!「ナマズの怪獣だ!」「あれは地震魔獣マグナ!」「どうして?!
超太古に日本海溝深く封印されたマグナが!」ピクピクッ。「ヒゲが・・また地震を起こす気だ!」ゴゴゴゴッ!
ガラガラガラッ!「いかん!高台が崩れる!」「きゃああああーっ!」ガラガラガラーッ!「ミナモちゃん!」
「しまった!・・いま助けにいくぞ!アラクネ!」「ストリング!」ビュッ!ベチャ!ビン!「強度はじゅうぶん!」
「よし!とおっ!」ターン!キュルルルッ、スタッ。「ミナモ、だいじょうぶか?!」「うん・・あっ!」
ズズズズズ!「マグナ!」「いけない!・・みんな出れる?!」『ちとまだしんどいが、そうもいっとられんな!』
『いま戦わなければ意味がありません!』『どれ、老骨にムチうってきばってみますかな!』「ウェイク!」カッ!
ドドーン!ゴオオオーッ!テケレリリリ!「火の鳥?!」「フェニックスか!」ヒュン!ドオオオーン!グオオッ!
ザパアアーン!「体当たりで海へ突き落とした!」・・ザバアッ!ウオオオーン!「またくるよ!」『あかん!
本来のリキがまだ出えへん!』『まかせてください!』・・ザバアアアーッ!キュオオーン!「海からでっかい
カメさんが!」「おおっ!レビヤタン!」ガブウッ!グアアーッ!ズルズル・・『くっ!・・ひき止められない!』
『引いてダメなら押してみましょう!』ダッ!・・ドカアアアーン!オオオオーッ!「真っ白なでっかいゴリラ?」
「イエティ!・・」『冷気が使えれば一瞬でルイベにしてやれるとこですが!どすこーい!』ザザザザーッ!
「ご主人さま、今のうちに!」「わかった!ミナモ、放すなよ!」「うん!」グッ!グイグイグイ!「・・あっ!」
ウオオオーン!ビリビリビリッ!『うわああああーっ!』「マグナの高電圧!・・今の彼らじゃ耐えられないわ!」
『せからしか!』テケレリリリ!ゴオッ!ビュルッ!パシィィーン!『きゃあっ!』「ヒゲの対空攻撃!」
ドパーン!ザザザザッ!「また来るわ!ストリング巻き戻し!」キュルルルッ!ザザザザーッ!「間に合わない!」
「・・たあっ!」パッ。「ミナモ?!」スタッ。「こっちよこっち!」タタタタッ!ウオッ?・・ウオオオオーン!
「いかん!マグナこっちだ!」「やめてミナモちゃん!」ビュルルルッ!ビシィッ!「きゃっ!」「ミナモちゃんが
マグナのヒゲに!」ギュウウウーン!「きゃあああーっ!・・」バクッ!『ああっ!』ヒュルルル・・ジャポン!
ザザーン・・ゴロン。「首が・・いやあああああーっ!」「なにも・・何もできなかった!」すっ・・ザバッ。
「ただ見てただけなんて・・」(・・そんなことないよ。おにいちゃんたちは神さまなんでしょ?)「だ、だが今の
俺には何の力もない・・」(だってあの鳥さんや亀さん、お猿さんもおにいちゃんの仲間なんでしょ?それに・・
私、おにいちゃんもいなくなったら・・一人ぼっちになるの・・嫌だったから・・)「だからって!!」
(・・いいの。おじいちゃんには私がごめんなさいって・・言って・・おく、から・・ね・・)「う・・」

ズズズズ!「・・許さないマグナ!こうなったらわたしの魔神のパワーで!・・」ピキ・・「?!・・なに?」
ピキ・・「欲しい・・力が!あいつを倒せるだけの力が!」ピキピキピキッ!パキィィィーン!「なにっ?!」
「デウス様の封印の腕輪が!」「砕け散った・・うおおおおおおーっ!」カッ!・・ドオオオオーン!
ザパアアアーン!「タイタン・・!」ウオオーン!『マグナ・・許さん!』ザババババッ!『ガントレット!』
ジャキン!『おおおおおおーっ!』ボコオオーン!グギャアッ!ビュルルルッ!ビシイッ!『くっ!ヒゲか!』
ズババババッ!『今の俺にこんな電撃が効くか!イージス展開!』ジャキン!『イージスカッター!』
ズバアアアーン!ギャアアッ!「うまい!マグナの武器であるヒゲは最大の弱点でもあるわ!やっちゃえ!」

『う・・あれは!』『マスターが・・巨神に!』『封印が解けたのですな!』『お館さまがおられるなら・・うちは
まだ戦える!』バシャッ!『そうです・・堕天で一時的に弱ってるとはいえ、恥ずかしいとこは見せられません!』
ザバアアアーッ!『天界最強と呼ばれた我らがチーム、復活であります!』オオオオオーッ!ドンドンドンドン!
『みんな休んでろ・・コイツは俺の手で倒さなければ気がすまん!』『・・はい!』『お返しだ!ヒドラベルト!』
シュルルルッ!『捕縛!』ビシィッ!「いまよ!」『光あれ!』キィィィィ・・!「出た!ご主人さまの必殺技!」
『プロメテウゥゥゥースッ!』ドゴオオオオーン!ウオオオオオーン!『爆砕!』カッ!ドガアアアアーン!
「やった!」ザパンザパンザパン!『はぁぁぁ・・』シュゥゥゥ・・「・・一郎さんの姿に戻っていく。」ヒュッ、
パシーン!「封印の腕輪が・・戻った?」「・・ミナモ、じいさん・・仇はとったぞ。」ググッ・・ツツ・・

ザザーン・・『・・・・』「ここからなら海がよく見える・・じいさんとミナモが愛した海が。」「そうだね・・
これからどうするの?」「・・何をすべきかはわかったような気がする。それになぜあのような罪で天界を
追われる事になったのかもな。」「魔獣狩りやな。」「そうだ。フェニックスも気づいたと思うが、封印の腕輪は
俺の怒りに呼応してはじけ、そして怒りが去るとまた戻った・・」「それって、つまり必要な時には力が開放
できるってことですよね。なんか出来すぎてます・・」「ああ、レビヤタンの言うとおり出来すぎだ。デウス様は
すべてをご承知の上らしい。十万年前には強大な力ゆえに封印するしかなかった魔獣を倒す事が出来た。
これはチャンスなのかもしれない。罪人たる俺に「エデンの掟」は関係ないしな。だからこそ・・」
「・・気に入らないわ。」「アラクネ?」「だったら最初からそう言えばいいじゃない。それをわざわざこんな
回りくどい小細工をして。もしそうとわかってたら、おじいさんもミナモちゃんも救えたかもしれない。・・
どんな理由があろうと、わたしはあのクソジジイは許さないんだから!」「・・ふふっ、ははははは!デウス様を
クソジジイよばわりしたのは、おそらく創世紀以来お前が最初かもしれないな。雷の鳴る日は気を付けろよ。」
「シィー、シィー!ここだけの秘密だからね!」『わははははっ!』「まあそれはともかく、うちらにとっても
魔獣はうっとうしい存在や。魔獣狩りはやらなあかんな。」「・・ああ。二人の死を弔うためにも。」「行きましょう・・
やつらは世界中に封印されてるわ。」キラッ。『おお・・』「アラクネの本来の目の光・・アーリマンの魔眼か。」
「魔獣と戦うのは十万年ぶり・・戦いも二百年ぶりだし血も騒ぐよ。」「さすがにもと魔神だっただけあんな・・
ごっつい迫力や。」「アラクネが怒れば、マスターでも手を焼きますからね。」「たまのケンカのたびに宮殿は
壊滅的なまでの損害を被っておりましたな。」「そうだな。・・じいさん、ミナモまた来るよ・・冥界で御両親と
仲良く・・さようなら。」「じゃあ・・縁があったら煉獄で会いましょう。」「ほな・・」ぺこ・・「失礼いたします。」

天界・至高神殿。「まず一匹・・か。」「デウスよ。キサマの小細工、図に当たったようだな。」「まあな・・
代償はでかかったが。」「ふふ・・キサマをクソジジイとは、アラクネもなかなか言うのう。うわはははは!」
「ハデスよ、此度の訪問は冷やかしだけではあるまい。」「うむ。実は・・」・・「そうか・・感謝する。」
「冥界も困っておる。魔獣に殺された魂がどっと押し寄せるからな。」「あの老人と娘は?」「・・デウスよ。
今回の地震で何人死んだと思っておるのだ。いちいち気にしておられん。その罪に従って裁くだけだ・・
あの2人は煉獄で両親に会っておる頃だろう。天界へ上がれるまでそう長くはない。」「そうか・・魔獣どもが
甦るごとに、これからも死者は増える。」「ふむ・・リーンカーネーションにも限界がある。冥界が魂であふれだす
という事態は勘弁してほしいな。」「・・できうればタイタンがそれを最小限にしてくれるのを祈るだけだ。」

成田空港。「さて・・困ったわね。資金はなんとか確保したけど、パスポートがないと乗れないわ。」
「アラクネ、どうやって資金を?」「ひ・み・つ。偽造って手もあるけど・・」「これでどうだい?」すっ。
『えっ?』「見てみな。お二人さんのだぜ。」「・・だれだ?」「知らない。」「あ、これ名刺。」「・・国連諜報部員?」
「登録NO.666・・うそくさ~。」「信じる信じないはお好きに。まずはパスポートを見て決めてくれ。」パラ・・
「・・わたしアラクネ=ナクアってトルコ人なの?」「フェニックス、レビヤタン、イエティの分まで・・
一分のスキもない。」「・・あんた何者?ここまでパーペキなニセモノ造れるのは、相当なバックが要るはずよ。」
「ニセモノ?なにいってんの当国発行の本物だぜそれ。」「うそっ!?」「よく出来てる訳だ・・。」「それから
コレも渡しておこう。」スッ・・「これは?」「国連発行の特別大使任命書だ。それを持つ者はどこの国でも
治外法権となる。ビザは必要に応じて無審査で押してやるさ。どうだい?」「その前に、なぜ俺たちを?」
「説明しよう。・・国連秘密部隊は知ってるか?」「・・ウワサだけは。」「人類史上最強の部隊と聞くが。」
「そこの第二部隊の魔導士が恐るべき予言、いや神託をした・・全世界で太古の魔獣が甦り、恐怖が地球を
席捲する。だが恐れる事勿れ、その恐怖を切り裂く光の神が降臨するとな。」はっ!「もうひとつ。・・神一郎と
いう男を捜し、全面的に協力しろともな。念写の姿だけで探し出すのはちょいと骨が折れたが、俺がその
エスコート役をおおせつかったというわけさ。」「・・その魔導士に会えないか?」「プラハに住んでるが、
留守がちで滅多に会えないだろうね。」「・・信じてみようか。」「うん、拒む理由もないし。NO.666さん、
あんたを信じてみるわ。」「なによりだ。ナンバー6でいいぜ。ときにペットたちは?」「そこまで知ってるのか・・」
「まだ回復が不充分なので、わたしのブレスレットで休んでるわ。」「なるほど。で、その魔導士の占いによると
ニューヨークで何かが起こるらしい。行ってみるか?」「・・わたしのマップダウジングと同じところを。」
「・・いこう。」「よっしゃ。チケットを買ってくるから待っててくれ。」カツカツ・・「・・タダモノじゃないわね。」
「ああ・・全て承知の上で動いているようだ。」「ともあれ、彼がいないと動けないのは事実。ここは悪魔に魂を
売った覚悟でまかせます?」「そうだな。とりあえず悪意はないようだ。」・・カツカツ「一時間後のがとれたぜ。
ファーストクラスだ。」「じゃ、お酒は飲みほうだいね。」「ネクタルより弱いからってバカスカ飲むんじゃないぞ。」

マンハッタンを覆う白い影。
浮遊魔獣ドルトロンがニューヨークを地獄に変える。
打ち砕かれた自由の女神の叫びを聞け。
そして巨神を見つめる謎の少女は滅びの唄を聞くのか。
第二夜「摩天楼地獄 - 浮遊魔獣ドルトロン登場 -」
神よ、その御業をもて魔を祓いたまえ。


第一夜~第五夜

タイタン・・天界に並び無き勇者である。幾多の戦を勝ちぬき、平時も辺境の彼方まで冒険に向かった。

その中で仲間も増えていった。冥界においては冥王ハデスを悩ませていた黒蜘蛛の魔神アラクネを改心させ、

辺境の「紅蓮山」に棲む炎の霊鳥フェニックスが、「忘却の海」を漂う龍亀レビヤタンが、「レンの平原」の

大隠者と呼ばれる白猿神イエティが次々と加わった。天界最強と噂される四神獣はここに結成された。

タイタンと四神獣はラグナロク戦役・ディーヴァ戦争においてめざましい戦果をあげ、その名声は辺境の

隅々にまで響きわたった。天界の守護神として栄光に包まれた時代は数百年続いた。しかし・・

 

「あの・・アラクネ様ですか?」「そうよ。時間どおりね。」「あなたが?・・ブラック・ウイドウ。」ふっ・・

「合言葉ね・・タラントゥーラ。」はっ!「失礼いたしました!ほんの少しでも疑念を抱くなどという不遜な

行い、罰をお与えください!」「いいのよ・・持ってきてくれた?」「はい!」すっ。「十万ドルございます。

お改めくださいませ。」「あなたを信じるわ。では報酬を与えましょう・・いらっしゃい。」キュッ。ぽ~っ・・

(なんてステキな瞳・・)「はい・・」フラ・・「ゆっくり味わうといいわ・・至上の快楽を。」チュッ・・

「ん・・」ガクガク・・すっ。「よかったでしょ・・」「はい・・」フラフラ・・「これで十年は若いままよ。

青春をもう少し楽しみなさい。」「ありがとうございました・・またメールをください・・」「たびたびは悪いわ。」

「いえ・・このくらいお父様にねだればいつでも・・」「お金持ちね・・また機会があったら。じゃあね。」

 

第二夜 「摩天楼地獄 - 浮遊魔獣ドルトロン登場 -」

 

ニューヨーク五番街。「おおっ!ベネトン・ダービー・セリーヌにフェラガモ!ヴァレンチノにカルティエ!

アシュレイにラロッシュにジョルジオ!あるわあるわ!」「フェニックスはブランド好きでしたね。」

「しかし高いですな。」「問題なし。とりあえず2万ドルもあればひととおり買えるよね?」バサッ。『おおっ!』

「いったいどうやって?」「エデンにはけっこうコネあったりするわけ。」「ああ・・アラクネの信徒か。」

「天界からネットで指示しておいたから、電話一本すれば届けてくれるのよ。」「それで秋葉原でiOードを

買ったんか。」「メールもやりとりできるし、便利なものよ。」「ネットで信徒をあやつる・・アラクネらしいな。」

「祝福を与えたんですか?」「そう・・わたしの毒液をね。」「アラクネの魅惑毒は後遺症も習慣性も無いし、

不老効果もあるから禁止はしてないが、あまり使うのは考えものだぞ。」「信徒の奉仕に対する正当な報酬ですよ。

やらずぼったくりの神さまよりは良心的でしょ?」「またそういうバチ当たりなことを。」「アラクネの信徒は

政財界のお嬢さまがほとんどだと聞きました。」「そういうとこからの浄財は心があまり痛まないからね。」

 

「おっ、ナンバー6が来たようだ。」「待たせたぜ。・・ほう、ウワサのお三人さんか。」「ふ~ん、お館さまがゆった

とおりの、うさんくさい兄ちゃんやな。」「そうですか?けっこういい人に見えますけど。」「ふむ・・」キラッ。

「・・じいさん、すげえ眼光だな。」「イエティの「外道照身眼」か・・」「・・わかりました。御主人様、

こちらの方はとりあえず信じてよろしいかと。」「とりあえずってのはどういう意味なの?」「そのままです。

悪意はございませんが、善意もありません。ウラはいろいろあるようですが、あとで対処しても間に合います。」

「いかにもイエティらしい表現やな。」「さて、メシどきだしどこかで食いながら話そうや。」『さんせー。』

 

ステーキ店。ジュージュー!「あ、うちはよっく焼いてな。」「僕はミディアムで。」「凍ったままがよろしいかと。」

「んなもん食うのはイエティだけよ。わたしはバーボンもね。」「さて、聞かせてもらおうか。ここで復活する

魔獣とは?」「名前までは知らん、ただここだというだけさ。」「アラクネ、おぼえてないか?」「う~ん・・

マンハッタンが一枚岩で、それは魔獣を封じるためだって聞いた記憶はたしかにあるんだけどな~。名前まで

おぼえてないわ。」ポン。ゴクゴク。「そうか・・バーボンをラッパ飲みするなって。」「良い子はマネしちゃダメよ。」

・・ドルトロン。『・・えっ?』♪ル・・ルル・・「・・歌?」「これは脳に直接響いてきますぞ!」「テレパシー・・」

 

♪掘ってはいけない この岩を 開けてはいけない その蓋を 開けたらみんな喰われるよ ドルトロンに喰われるよ

♪みんなみんな溶かされる 炎も刀も通じない ドルトロンには通じない 喰われて溶けてさようなら

♪止められるものはひとつだけ それは北から吹いてくる・・

 

・・ガヤガヤ。『・・・・』「・・消えた。」「どうしたんだ?みんな立ち上がって真っ青な顔して。」

「ナンバー6、今のを聞いたか?」「なんのことだ?何も聞えなかったが。」「テレパシーやしな・・無理ないか。」

「かくかくしかじか。」「ほう、テレパシーの唄か。どんな声だった?」「透き通るような少女の声だったな。」

「数百年前に聞いたローレライの歌声のようだったわ・・」「たしかに美しゅうございました・・しかしまた

ガラスの脆さも感じましたな。」「声だけでどんな子かイメージできるほどでしたね。」「いったい誰が・・?」

「・・まだ遠くには行ってないはすね。子どもたち、お願い。」ヒュッ。パラパラ・・「なんだ今のは?」

「ミクロスパイダー。アラクネの使役する微小なクモや。」「あまりにも小さいので空気の流れに乗って高速で

飛散し、周辺走査や他人の脳に入って操ったりできるんです。」「昔はこれのゾンビ軍団で苦労させられたぞ。」

「そんな大昔のことはいいでしょ。・・感あり!」「そのまま張りつけ。先回りして顔を見よう。」ガタッ。

 

セントラルパーク。「・・あの子よ。」「間違いないか?」「クモが触れたとき、ものすごい力を感じたから。」

「よし。」ザッ。はっ。「俺たちに唄を送ったのは君か?」「・・」「なんや、こないに細っこいお嬢さんやったか。」

「銀色の長い髪に透き通るような白い肌の少女・・イメージどおりの子ですね。」「これは・・なかなかの力ですぞ。」

「あなたが・・神さま?」はっ!「やっぱり・・」「君は誰だ?」「・・エリス。」「さっきの唄はなんだったの?」

「・・ドルトロンが復活する・・みんな死ぬ。だから・・止めて。」「どこにおんのかわかったら、犠牲は出さずに

済むかもしれん。わからんか?」「・・わからない。この街のどこか。」「なぜ僕たちに?」「歌のおかげ・・

思いついた歌でわかった・・」「歌・・どんな歌ですか?」「それは・・」スゥ・・

 

♪闇の時代が来る 魔獣の時代がふたたび 抗う術はありはしない みんな魔獣の餌食になる

♪けど光はきたる 天の強い光の力 闇と炎と水と氷 四つの力をともなって

♪*の*の日***で 歌えばきっと聞きとめる それが神さま エデンを救う・・

 

『ほう・・』「歌の形での予知能力か・・面白いわ。」「エリス、家族は?」「お母さんと二人暮らし・・バーで

歌って稼いでるの。」「その歌唱力ならどこへ行っても通じるでしょうな。」「よし、今夜行ってみよう。」

「あ、さんせー。」「それまでは皆で手分けして魔獣の封印場所を探索しよう。」「待ち合わせがそのバーやね。」

「エリスちゃんはどうする?」「・・私で何かお役にたてるなら。」「レビヤタン、いいか?」「は、はい!」

「ほなうちとイエティ、お館さまとアラクネやな。」「おいおい俺を忘れちゃ困るぜ。」「俺たちと行こう。」

 

国連本部。「ナンバー6、なぜここに?」「ちょいと面会したいという人がいるもんでな。」「そういえばナンバー6は

ここの諜報部員だったわね・・だれ?」「会えばわかるさ。」カツカツ。ガーッ。「よっ。ババアはいるかい?」

「あ、これは!お部屋におられます。」「さんきゅ。・・行こうか。」カツカツ・・ザッ。「ここから先は許可なく

立ち入ることは・・」「俺だ。」くい。はっ!「失礼いたしました!どうぞ!」ザッ!「お役目ご苦労。」ぴっ。

「すごい・・顔パスだ。」「ここの職員だから当然さ。」「でも・・なんかおかしいわね。変な感じだった・・」

「アラクネ、何か?」「・・いえ、まだ確証が無いのであとにします。」ふっ。「いいカンしてるぜ。」「・・?」

「・・ここだ。」ピタ。「・・事務総長室?」「まさか?!」ガチャ。「ババア、つれてきたぜ。」「あなたはまた

ノックをしませんでしたね。何回言えばわかるのです。」「中にはババアひとり、他には誰もいない。それに俺の

気配くらい10m先から読んでるでしょうに。」「マナーというものです。・・あなたが神一郎さん、そして相棒の

ミス・アラクネですね。」「あなたが・・?」「ナンバー6の上司、国連事務総長です。よろしく。」「うわ~・・」

「どうぞおかけ下さい。・・ほら、コーヒーくらい出しなさい。」「だから秘書を置けってゆーの。」ぶつぶつ。

「ちょうどいい、聞きたいことがある。・・なぜ俺たちを?」「神託を受けたと説明したはずですが。」「いいえ、

そんな曖昧な理由だけで国連ほどの組織が動くとは思えないわ。もっと確たる事実がなければ。」「そのとおり。

これを見てください。」ぱっ。「・・この世界地図は?」「魔獣が封印されていると推測される場所です。」『なっ!』

「国連のもうひとつの顔、秘密部隊は世界の平和を守るために結成されました。軍事政権やテロリスト、それに

国際犯罪組織などを闇から闇に葬るために。」「・・いわば影の平和維持軍か。」「国際問題はきれいごとだけで

解決できるとは限りません。毒には毒を。いかなる国際ルールにも縛られない力がぜったいに必要なのです。」

「能書きはいいわ。要点は?」「最近になって新しい対象が増えました・・それが魔獣です。知ってのとおり、

世相は乱れきっています。人という種が進化の限界に到達したためとの説もありますが、本能的に滅亡を予感し、

無意識の恐怖が精神の不安定を呼び起こしているためと思っています。このことは過去の大魔導書や予言書に

共通して書かれています。それらの文献をもとに世界各地を調査し、おとぎ話は事実へと変わりました。

今まさに世界各地に眠る魔獣たちが甦ろうとしているのです。」「国連ほどの組織が神秘学まで網羅してたとは

驚きだな・・」「別に不思議でもなんでもないわよ。どこの国家も表ざたにしてないだけで、祭祀や卜占は

常に国家を陰から支えてきてるのよ。」「さすがにもと現役ですね・・人間界の裏までよくご存知です。」

「そこまで知ってるなら、わたしたちが何者なのかもわかってるみたいね。」「あえて言及しませんが、まずは

外れていないと確信してるわ。・・ここからが本題です。復活した魔獣の始末、あなたたちに全面的に委ねます。

必要とあらば秘密部隊の戦力も応援に出します。」「その部隊は紹介してもらえないのか?」「それはいずれ

各部隊と接触した際に。あなたたちには秘密部隊相当の待遇を与えます・・いえ、暫定的ですが秘密部隊の

一員となっていただければ話はもっと簡単になります。この提案はどうです?」「アラクネどうする?」

「しつもん。それによる制約は?」「逆です。全ての制約から解放されます。ただし、死して屍拾う者なし。」

「それはいいけど・・悪い話ではなさそうね。」「ナンバー6の立場は?」「みなさんのエスコート役です。

彼自身に魔獣と戦う能力はありませんが、それ以外のことでは実に役に立つ男です。」「たしかにね・・」

「よし、その提案をのもう。いいな?」「デメリットはなさそうだし、いいんじゃない。」「決まりですね。

これ以降、「第ゼロ部隊」と呼称します。ナンバー6、よろしく頼みますよ。」「ジャーマネ役はまかせてくれ。

では市街の探索に戻ろうか。」「ああ。・・失礼する。」「では。・・あちらの皆さんにもよろしくね♪」パタン。

 

「・・気づいてましたか。出てきなさい。」ガチャ。「なかなか面白そうな連中じゃないか。」「そうね・・あれが

神託にあった勇者タイタン。」「アラクネとかいう方も、美人ながら相当のパワーを持ってるようですね。」

『わてらのサイキックなんか、あん人たちの前じゃ児戯に等しいわな。』『ほんまに。ごっつうえらいわ。』

「神獣か・・気の質も量もあたしらとは段違いね。」「というわけで、彼らは魔獣専門にやってもらいます。

各部隊は必要に応じて支援するように。」『了解。』「第三・第五部隊には私が連絡しておきます。」

 

「・・ねえ、気づいてた?」「ああ。人間にしてはすごいパワーを持つ連中ばかりだったな。あれが秘密部隊の

メンバーか。」「でもいくら強くても人では魔獣は倒せないわ・・やはりわたしたちでないと。」「いや、そうとも

限らん。明らかに十二神衆に匹敵するパワーを有する者もいたようだ。」「・・マジ?」「三人ほどな・・」

 

バー「ロストメモリー」。「どうだった?」「だめです、見つかりません。気配も感じられませんでした。」

「こっちも収穫ゼロや。」「おそらくはまだ封印が解けていないのかもしれませんな。」「そうか・・復活する前に

押さえられればよかったんだが。」「わたしのダウジングでも詳しい場所までは突き止められなかったわ・・

エリスちゃん、何かわからない?」「・・ずっと地下。今はまだ眠ってる・・」「出てくるまで待つしかねえか。」

「ドルトロン・・思い出したわ。ネイティブ・アメリカンの伝説にある魔獣。一夜でバッファロー数千頭を

食ってしまったので、野牛の神によって聖なる岩に封じられたって。」「てことはだ・・マンハッタン自体が?」

「巨大な封印の石だったと考えるべきだろうな。」「ビッグアップルはそんなところにあるんかい・・こわいねえ。」

 

地下200m、マンハッタン岩盤最下層。ガガガガガ!「なんでこんな深いところに地下鉄なんか通すんだろうな。」

「こっから上はもう使っちまってるからな。マンハッタンの地下は地上以上に過密だっつーわけ。」「上と下ねえ。

埋蔵金でも出てきてくれれば・・」ボコッ!「おっ?・・おい、こんなところに空洞があるぜ。」「どれどれ・・

暗くてよく見えねえ。ライトくれ。」「あいよ。」ボッ・・「・・こりゃ何だ?」ゴトッ。「よいしょ・・石の壷だ。」

ゴトン。「これが石だって?・・なんかいっぱい書いてあるぞ。」「読めねえよ。蓋もギッチリ封されてんな。」

「監督を呼ぶか?」「バカいえ、横取りされるのがオチさ。とりあえず開けてみようぜ。」「削岩機を使えばいいな。」

グッ。ガガガガッ!ボコッ!「ほら開いた。」「どれ、何が・・」そっ・・ピクピク。「・・なんか動いてるぜ。」

「お宝じゃねえのか?・・」ピクピク・・ビュッ!ベチャ!『・・!』「なにっ!」グン!ゴキボキゴギュッ!『!!!』

「ひえええっ!・・壷の中にひきずりこまれてる!」ゴキゴキゴキ!・・ズボッ!・・シーン・・ガクガク・・

「消えた・・うわあっ!」ダッ!ビュルッ!ビチャッ!「ひいっ!」グン!『ぐぎゃああああーっ!・・』

「なんだ?!」「悲鳴だぞ!」「落盤か!」・・ズゴゴゴ!「奥から・・なにかやってくる!」ブワアアアーッ!

「白いガス?・・ちがう!あれは・・」「・・人が溶けこんでる!」グボオオオーッ!『ぐわああああーっ!』

 

♪暗い夜の向こうには 明るい夜明けが待っている 手さぐりでもかまわない 光のほうへ歩こうよ・・

「いい声だ・・」「歌はみんな自作だそうです。」「レビ、昼間はどこへ行ったんや?」「ど、どこって・・魔獣の

探索に決ってるじゃないですか。」「ふ~ん。ほな三時ごろに自由の女神んとこにいた可愛いアベックはいったい

誰やったんやろ?な、イェティ。」「どうやら他人の空似かと。」「う・・」「ふふっ、まあいいじゃないの。」

ピン!『はっ!』「なんだ?」『・・ドルトロン!』「なにっ!」ガタッ!・・ゴゴゴゴゴッ!「・・下よ!」

 

ゴゴゴゴゴッ、ドバアアアアーン!ワアワア!「あれは何だ!」「巨大なクラゲが空に!」キュンキュンキュン・・

シュルルル・・クルッ。メキメキメキッ、ドガアアアーン!「触手がエンパイアステートビルをへし折った!」

シュルルル!「触手がこっちへ来るぞ!」ビチャッ!『ぎゃあっ!』ドロドロ・・「ひっ!一瞬で溶けた!」

「逃げろおおおーっ!」キャアアアーッ!ヒュンヒュン!ビチャビチャッ!『ぎゃあああーっ!』ドロドロ・・

 

キィィーン!『第三戦闘機群へ。ボギー(目標)を撃墜せよ。』「ラジャー。全機ロックオン。」キューン。

「イーグル3、フォックス2!」シュバッ!「イーグル7、フォックス3!」シュバッ!・・ボシュッ。

「爆発しないぞ?!」「ゼリーみたいなヤツだ!」シュルルルッ!ビチャッ!「なんだ?!・・機体が溶ける!」

ドロドロ!「脱出!」カキッ!シュバーッ!シュルルル・・ビチャッ!「うわあああーっ!」ドロドロ・・

 

カラ・・「よっこいしょ!」ガラガラガラ!「ぷは~、ひどいめにあった。」「ゲホゲホ!ま下とは思わんかったな。」

「エリス、だいじょうぶ?」「うん・・レビがかばってくれたから・・」「タキシードがホコリだらけですな。」

キュンキュン・・「あれがドルトロンか・・」「でけ~。さしわたし200mはあるわ。」「空となればうちの出番やな。」

「だめ・・ドルトロンに炎は効かない・・」「んなもんやってみてからや。いくで!」ターン!「あっ、おい!」

ボオッ!「おお!身体が炎に!」・・バサアッ!テケレリリリ!「これが霊鳥フェニックスか・・すごいぜ!」

「まったく、あいかわらず鉄砲玉なんだから。」「まかせておけんな。俺もいくぞ!うおおおおーっ!」ピキ・・

「でやあっ!」パキィィィーン!ギュイイイーン!『とおっ!』・・ドドオオオーン!「これが・・タイタン!」

 

バサアッ!『いくでフーセンクラゲ!プラズマ火炎!』カッ!ボオオオーン!・・ズドオオオーン!『往生せいや!』

キュンキュンキュン・・『アホな?効いとらん!』シュルルル・・ボオッ!『うちには指一本触れられんで。』

シュババババッ!ボオッ!キュルキュルッ!『なにっ?!燃えるそばから再生しとる!くっ!』ギリギリッ!

キュンキュン・・『来る・・身体ごと覆って喰うつもりか!』『イージス・ブゥゥーメランッ!』シュバッ!

ズバババッ!『おっと!』ヒュヒュヒュッ・・パシッ!『お館さま!』『下がれフェニックス。あとはまかせろ!』

『ほなたのんます!』『直接攻撃は効きそうにもないな。ヒドラベルト・ブレードッ!』シュババッ、ピシッ!

シュルルル。『触手か。それっ!』ズバッ!パラパラ・・シュルルル。『きりがない・・本体をやるしか!』

ゴオッ!『でえええーいっ!』ズボオッ!『なにっ?!まるでゼリー!』ブワッ!ボフッ!『しまった!』

「ご主人さまが!」「ドルトロンにとりこまれました!」「あかん、消化されてまう!」「いえ、御主人様の鎧は

神鉄ですから、しばらくは。」「だが時間の問題だな・・」「物理攻撃も炎もダメなら、どうすれば・・」

「・・そうだ!エリスちゃん、あの唄をもう一度!」「唄?・・そういえば。」「わかったわ・・」すぅ・・

 

♪みんなみんな溶かされる 炎も刀も通じない ドルトロンには通じない 喰われて溶けてさようなら

♪止められるものはひとつだけ それは北から吹いてくる・・

 

「これです!」「なんや?」「北から吹くものだけがドルトロンに効く・・つまり北風!」「・・あっ、そうか!

冷気よ!ドルトロンは冷気に弱いんだわ!」「わたくしの出番というわけですな。」ぴしっ。「むん!」ダッ!

タタタタ・・ズンズンズン!「ほう、走りながら巨大な白ゴリラに!」オオオオーッ!♪ドンドンドンドン!

『魂も凍るレンの冷風でございます。』スーッ・・ビュオオオオオーッ!キュンキュン・・パラパラ・・

「いけるわ!触手が凍った!」『御主人様、いまお助けしますぞ。』ビュオオオーッ!ピキピキピキ・・

『粘性が落ちた!一刀両断!』キン!・・パカッ。シュバッ!『脱出成功!あと一分でやられるとこだったぞ。』

ガラガラガラ・・「ドルトロンが氷のカケラになって落ちてくで。」「一時的なものです。解凍すれば再生します。」

「よし。ご主人さま!ドルトロンの破片を集めて二度と再生しないとこへ!」『わかった。ヒドラベルト、広がれ!』

バサッ!『イエティ、手伝ってくれ。』『かしこまりました。』カランカラン。『こんなもんだな。』キュキュッ。

『どっこいしょ。』バサッ。「なんかドロボーさんみたいね♪」「あんなでかいドロボーはいませんよ~。」

『ちょっと金星まで行って捨ててくる。あそこなら解凍しても濃硫酸の大気ですぐ溶けるだろう。』「ナイスね。」

 

「くすんくすん・・」「・・エリスのお母さんには気の毒なことしたわ。」「倒壊したビルの下敷きとは・・」

「すまない・・守れなかった。」「・・みんなのせいじゃない。悪いのは魔獣・・お願い、私も連れていって。」

『えっ?』「もう私はひとり・・でも、この力がある。きっと役にたってみせるから・・」「・・一郎さん。」

「・・わかった、いっしょに戦おう。みんなは?」「賛成や。」「それがよき道かも。」「反対だ。」「ナンバー6?」

「確かにエリスの予知・透視能力は絶大だ。だが危険とわかっている旅に同行させるわけにはいかん。」

「エリスは僕が守ります!」『レビ?』「ほう・・」「この命にかえて!」「・・そこまで言われちゃな。」

「案外あっさり折れたもんやな?」「こういうことさ。最強の楯、それは愛と優しさなり。」「カッコつけんな。」

「ありがとう・・はっ!」ピィィィ・・「エリス?・・まさか?」「また予言歌か!」「・・わかった。」すぅ・・

 

♪砂漠のいにしえの都 今夜も砂嵐が吹く 血に染まりし「紅い砂」 スピンクスの呪いの砂

♪逃げて隠れなきゃ 紅い砂に血を吸われ あなたも呪いの砂になる

♪乾いた砂を制するのは ナイルの尊き流れだけ・・

 

******

 

数千年前。「ここがアラクネの洞窟か・・すごい妖気だ。なるほどハデス様が手に負えないのもわかるな・・」

カンカン・・「・・これは!」オォォォ・・「蜘蛛の糸にからめとられた死骸・・冥府の鬼神兵か。」ユラユラ・・

「体液を全て吸い取られて枯れ木のようだ・・」『訂正させてもらうわ。彼らは自ら注ぎ尽くしたのよ。』はっ!

すっ。「ようこそ、わたしの家に・・歓迎するわ。」ぱち。「お前が魔神アラクネか。ほう・・」「・・なに?」

「いや、意外ときれいな女性なのでビックリしただけだ。」「ふふっ、ありがと。・・あなたは今までのやつらとは

違うみたいね。お名前どうぞ。」「俺はタイタン。冥王ハデスの要請によりお前を退治しに来た。」「ご苦労さま。

ではちょっと腕試しといきましょうか・・頼むわね♪」・・グワッ!「なにっ?死骸が!」「操り人形よ。わたしは

エコロジー信奉者で、リサイクルを心がけてるの。」ズル・・ズル・・「動きは遅いけど、そのぶん数で勝負よ。

わたしを退治するなら、これくらいは突破してちょうだいね。」「よかろう。イージス・ブゥゥーメランッ!」

シュバッ!ズバババッ!グラ・・オオオオ!「ダメダメ。手足切ったくらいじゃ止められないわよ。」「ならば!」

シュッ!スカスカスカッ!シュルルル・・パシッ。「あらま。」・・ドサドサッ!「脳の中の子グモを切った。

それが死体を操っていたんだな。」「おみごと・・でもね。」シュパパパッ!「ヒドラソード!」ビュン!ぺたっ。

「なにっ?切れない!」「わたしの糸はドラゴンさえ絡めとり、逃がさないのよ。」「イージスカッター!・・

くっ、回らない!」ググッ!「力じゃちぎれないって。もがくほど糸は絡まり、動けなくなるわ。」「くうっ!・・」

「期待外れか・・もうちょっと楽しませてくれるかと思ったんだけど。いえ・・」じゅるっ。「あっちのほうは

たっぷり楽しめるか・・その逞しい身体、魂まで蕩かして注がせたげるからね・・うふふふふ・・」すっ・・

 

「はあっ、はあっ・・はぁぁ・・んっ!」ぶるぶるっ・・ガクッ。「はぁはぁ・・なんて男・・これじゃわたしの

ほうがまいっちゃう・・」「もうギブアップか?けっこう弱いんだな。」むか。「動けないくせにえらそうに・・」

「これか?よいしょ。」グッ、ブチブチッ!「なっ?!・・なぜ?」「ちょっと面白そうだから様子を見てたのさ。

さて、次はこっちがいくぞ。」ぐっ。「はぁん!・・」「しばらく好きにさせたぶん、お返しさせてもらうぞ。」

 

冥府。「タイタン、首尾はどうか?」「アラクネは成敗しました。もう悪さは金輪際しないでしょう。」「む?・・

退治したのではなかったのか?」「いやそれが・・」「は~い♪ハデスおっさん、おひさ。」ひょい。「ア!アラクネ!」

「とゆーわけで、わたしはタイタン様の家来になりました。」「?・・ではなぜおぶってもらってるのだ?」

「腰が抜けちゃったから。」「こ、こら!」「は?・・うわははははっ!なるほどそういうことか。まあこれで

冥界の貴族の姫どもも寂しがることだろう、うわはははは!」「?!・・被害ってそういうことだったのか。」

「わたし両刀使いだし~。遊ぶならカワイイ子がいいしね♪」ぺろっ。「・・こりゃ更正がタイヘンだ。」

「プライベート・レッスンなら時間無制限デスマッチおっけいよ。」「よかろう、全敗させてやるさ。」ふっ。

 

第三夜「紅い砂」 - 砂嵐魔獣スピンクス登場 -

 

エジプト・カイロ市街。「あっちー!しかも乾燥してるし・・」「アラクネはかつてはお隣に住んでたんですよね。」

「あのときはこんなに暑くなかったわよ。四千年も経てば気候も変わるってか。」「ほな地元に合った格好しよか。」

「・・ヴェール?」「そういうこっちゃ。男連中はそっちのターバン屋な。」「郷に入らば郷に従えですな。」

♪カラーン。「いらっしゃい。」「てごろなのを頼みたいんだが。」ぽん。「?・・ナンバー6?」ちっちっち。

「ここじゃそういうのは足元みられるぜ。まあここは任せな。」「?・・ああ。」「ご主人、こっちの服はいくらだ?」

「これだけ。」「ダメだな・・これだけだ。」「んな殺生な。」「ご主人様、どうやらこの店は高いようです。

他をあたってみましょう。」「待った!・・これでどうだ!」「いやいや。これだけ。」「う~・・これなら!」

「それでいこう。」「商談成立だ。」パチン!「あんた、てごわい客だよ。」「マスター、これは勉強になりますね。」

「でも女性陣はぼられてないでしょうか?」「あ、それならだいじょうぶだ。ほら・・」『おっちゃんそら殺生やわ。

どう踏んでもこれくらいやがな。観光客にふっかけるこたかまへん、けど相手みて臨機応変にやらなあかんな~。』

「・・やりますな。さすがフェイ殿。」「関西あきんどが一枚上手というこったな。」「あきんどってなんですか?」

 

「おまた。」「それほどでもないが・・ほう。」「これは・・フェイ殿の真紅のヴェールはすごいですな。」

「うちは赤が好きやから。」「エリスちゃんのピンクのヴェール、かわいいですよ。」ぽっ。「そう?・・リヴィの

白いターバンも清潔でいいね・・」「アラクネはまぶしいまでの純白か。」「オールシルクよ。めちゃ高いんだから。」

「イエティもこういう服はすっごい似合うね。」「やはり年の功かと。」「ナンバー6はんは着替えても黒づくめ

なんやな。」「これが俺のマイカラーだからな。さ、今日はもうさっさとホテルに入って休もうぜ。」『さんせー。』

 

その夜、ホテル内レストラン。ガヤガヤ・・「作戦会議といこうか。」「エリス、あの歌で「スピンクス」って

言ってたよな。」「うん・・」「あう~、あいつか~。」「ミス・アラクネ、知ってるのか?」「けっこう有名なヤツ。

生物からあらゆる水分を吸い取り砂にする「人食い砂」を吐く魔獣・・ほっといたらアフリカ「地方」は一面の

砂漠になってたでしょうね。神々が苦労してギーザのスフィンクス像に封じ、エジプト文明を見張り役として

発祥させたの。」「なるほど・・会ったことあるのか?」「うちらはそれほど年食っとらん。イエティはちょうど

そのへんの時代やなかったか?」「左様でございます。デウス様もハデス様もお若うございましたな。」「えっ?

一緒に戦ったんですか?」「親戚のハヌマンと斉天大聖のお手伝いをしました。まだわたくしも駆け出しでした。」

「うちは魔獣大戦後の生まれやさかい、よう知らんわ。」「僕も生まれたてでしたから。」「俺もまだ子供だったな・・

アラクネは?」「え?・・えっと、その・・よくおぼえてないな~♪」「たしかメソポタミアでブイブイいわして

らしたと記憶してますが。そのころの名がたしか・・」ビシッ!『ムグムグ!』「オンナの年はヤボってもんよ。」

「まさか・・ツァラトゥストラか?」ぎくうっ!「け・・けっこー学あるじゃない。」「ニーチェくらい基本さ。」

「それよりイエティにかけた糸を解いてやれって。」「あ、しっつれ~。」ぴりぴり。「げほげほ!自慢のヒゲが

台無しになるところでしたぞ。」「・・楽しい仲間。」にこ。「ええ。このメンツで数千年もやってきましたから。」

「では明日はギーザへ行ってみよう。うまくすれば復活を阻止できるかもしれないしな。」「・・もうムリ。」

はっ。「・・エリス?」「スピンクスは待ってる・・目覚めの時を・・再び眠らせることはできない・・」すっ。

「・・カラオケステージへ?」コンコン。『私が歌います・・アカペラで。』おお~、パチパチパチ。

「始まる・・エリスの予知歌が。」「よく聞いとこうや。とても大事な情報が秘められてるはずやから。」こく。

 

♪夕日を覆う砂嵐 真っ赤なのは夕日じゃない 血を吸った赤い砂 あなたもすぐに砂となる

♪尊き流れに身をゆだね 砂の呪いを清めましょう 聖なるナイルのふところで

 

おお~!パチパチパチ!「すごい・・完璧なエジプト語で唄ってるぜ。」「うちらはどんな言語でもいけるが・・」

「これも超能力のひとつね。」カツカツ・・すっ。「エリス、だいじょうぶ?」「うん・・でもちょっと疲れた。」

「それじゃ今夜はお開きにしようか。明日は八時半にギーザに出かけるぜ。」「ああ。それじゃおやすみ。」

 

ここで部屋割り。一郎とアラクネ、フェイとエリス、リヴィとイエティ。NO.6のみシングルである。

コンコン。「はい?・・フェイ?」ガチャ。「リヴィ、部屋替わり。」「えっ?」「ええからあんたの荷物もち。」

「これでございます。」「さっすがイエティ、気ぃきくな~。ほれ交代や!」げしっ!「押し強いんだから・・」

カチャ。「・・リヴィ。」「エリス・・」「こっち・・」「・・うん。」ぽすっ。「お風呂・・入ったんだね。」

「うん・・リヴィは?」「済んでる・・この部屋ってダブル?」「他に空きがなかったって・・寝よ。」ばさっ。

「う、うん・・」ばさっ。「・・もっとこっちに来ないと落ちちゃうよ。」「で、でも・・あっ。」ぐっ、・・くいっ。

「これでいい・・」どきどき。(セッケンの匂いが・・)「・・おやすみ。」「お、おやすみ・・」パチッ・・

「スー・・スー・・」(・・耐えなくちゃ。マスター唯一の欠点であるスケベだけは見習っちゃいけない。)

 

「へっくし!」「エジプト風邪?しつこいわよ~。」「スペインよりましさ。・・堕天すると病気にもなるんだな。」

「カゼは万病のもと。養生しなくちゃね。」「このホテル、クーラー効きすぎじゃないか?」「これ自然の冷え方よ。

砂漠性気候は昼めちゃ暑くて夜は冷え込むの。慣れないとイッパツでカゼひくわ。」「よく知ってるな~。」

「天界でヒマなときはバベルの図書館に通って手あたりしだい読んでたから。数千年も続けてればイヤでも

物知りになるって。」「そうだったな。・・アラクネとのつきあいも、もうそんなになるか。」「心配しなくても

残りはわずか数十年・・いえ、それ以下かも・・」「・・死が恐いのか?」「・・いままで考えたこともなかった。

永遠が当然だと思ってたから・・」「肉体は朽ちるが魂は永遠さ・・」「でも・・」「そのことはそのとき考えれば

いいことだ。今悩んでもどうしようもない・・さ。」「・・うん。」ばさっ。「今を悔い無きようせいいっぱい

生きれば、明日はどうにかなる・・それでいいんじゃないか。」「・・そうだね。もう寝ましょ。」「ああ・・」

 

「・・あ、俺だ。明日カイロに・・間に合うか?・・よろしく、キャプテン。」チン。「まずは気休めかな・・」

 

真夜中・・ギーザ・スフィンクス像。シーン・・風ひとつなく静まりかえったサハラ砂漠。サラ・・サラサラ・・

どこからともなく聞えてくる砂の流れる音・・それはスフィンクス像からしていた。・・バサッ!バサササッ!

像の正面下部の砂がいきなり崩れ、そこから黒光りする金属板が現れた。表面には何かヒエログリフに似た文字が

刻まれている。ギ・・ギギギ・・ゴトン!かなりの厚みのあった板(金属塊というべきか)が落ちる。まるで

何かに押し出されたように・・チキ・・チキチキチキ・・その穴の奥から聞えてくる異様な音は・・?

 

翌日、ギーザ。カッポカッポ・・「見えてきたぞ。あれがクフ王のピラミッドだ。」『おお~。』「そしてあれが・・

問題のスフィンクス像か。」「でか~。古代の人間はヒマやったんやな。」「そういう問題ではないと思いますが。」

「アラクネ、どうだ?」「・・よくわかんないけど、気配はあるわ。」「これからどうします、マスター?」

「そうだな・・ヘタに起こしてもつまらんし。」「あ・・観光客が。」ガヤガヤ。「目立たないようにしようぜ。」

『みなさん、このスフンクス像はピラミッドと同時期に建造されたものと思われていましたが、最近の研究で

実は既に存在していた巨大な一枚岩に細工をほどこしたものだということがわかりました。しかしそんな岩は

このサハラには』『こりゃなんだ?』ザワザワ・・『・・黒いでっかい金属のカタマリ?』『おや?ここから

落ちたんじゃないか。スフィンクスの下に穴が開いてるぞ。』ぴく。「・・なに?」『のぞいてみようか・・

真っ暗でなにも見えない・・』チキチキチキ・・『・・何の音だ?』はっ!「いけない!その穴から離れて!」

ブオオオオーッ!『ぶわっ!砂?・・ぎゃあっ!』チキチキチキ!『おいどうした!』『ぎゃああああーっ!』

ミキミキミキ・・『うわっ!どんどん細くなっていく!』ズボッ!「穴に引き込まれた!」オォォォ!・・

シーン・・『あわわわ・・』「みんな逃げて!すぐに」・・ブオオオオオーッ!『ぶはっ!』「穴から砂嵐が!」

チキチキチキ!『ぎゃあああーっ!』「砂が・・赤く染まっていく!」「血を吸ってるんだわ!」オォォォ!・・

「助けないと!」ガシイッ!「?!・・ナンバー6、なぜ止める!」「ムダよ一郎さん!ああなったらもう!」

ドサドサッ!チキチキチキ・・「ぐっ!あっという間にミイラになって・・」サラサラ・・「・・風化されたで。」

ゴオオオオーッ!「赤い砂が穴に吸いもどされる!」ザザザザーッ!・・シーン・・「消えちゃいました・・」

「スピンクスの養分になるのですな・・」「くそっ!もう復活してたとは!」「・・いいえ。まだ時間はある・・」

「エリス?」「スピンクスは日の高いうちは動かない・・夕方を待ってる。今のは目覚めるための栄養づけ・・」

「俺はカイロ警察とエジプト政府に連絡して、ピラミッド周辺を立ち入り禁止にする。夕方までに周辺の人間を

避難させよう。」「たのむ、ナンバー6。」「長居は無用や・・ぐずぐずしとったらうちらも砂にされるで。」

 

エジプト軍・スフィンクス対策本部。「周辺住民の避難、完了しました。」「スフィンクスに動きなし。」

「もうすぐ夕刻です。」「なんとか間に合ったな。司令、くれぐれも人を近づけないように。」「了解です。

そのためにこのナイル河畔で偵察機と無人カメラで遠隔監視しておるのです。」「グッドだな。あとは待つだけか。」

『うわ~・・』「ナンバー6、あんた何者?軍をこうも自由自在に動員できるなんて、首相でも難しいことを。」

「そんなこたどうでもいいさ。それよりミス・アラクネ・・あの砂こそスピンクスの本体、そうじゃないのか?」

「そうよ・・正確にはあれは砂じゃない。さっき子グモで一粒捕まえておいたのをカイロ大学から借りた顕微鏡で

見た写真がこれ。」すっ。『・・これは?!』「全長数mmのダニよ。それが数十万、いえ数百万集まったのが

紅い砂の正体。」「あの妙な音はダニの鳴き声だったのか・・」「そしてスピンクスはこのダニの集合体と考えた

ほうがいいでしょうね。」「となると物理攻撃は無意味だな。」「うちの火炎で焼却したろか。」「いえ、わたくしの

冷気で活動不能にしてからダニアースで。」「どっちもダメよ。」『なんで。』「まずフェイの炎では必ず取りこぼしが

生じるわ。ダニの繁殖力を考えると、一匹が数日で数百にもなる・・エジプト全体を焦土にする気じゃないと。」

「う・・」「そしてイエティの冷気はこの砂漠ではあっという間に暖められ、無効化するわ。」「むう・・」

「ほなどうすんや、アラクネ参謀長。」「軍団長、いかが?」「誰が軍団長だ、だれが。・・エリス、あの唄で

ナイルがどうこうって。」「うん・・」・・はっ!「そうか!水です!」『リヴィ?』「『乾いた砂を制するのは

ナイルの尊き流れだけ』。そして『尊き流れに身をゆだね 砂の呪いを清めましょう 聖なるナイルのふところで』。

これの意味するところは・・」「わかった!スピンクスの弱点は豊富な水か!」「ありえるわ。あんな速度で人間の

体液を吸収するには、浸透圧作用が働いているはず。もし吸収しきれない量の水分を与えられたら!」「そか!

パンクや!」「納得いたしました。しかしどうやって?まさかナイルに叩き込むわけにもいかぬでしょう。」

「それは僕の仕事です。まかせてください。」「リヴィは水を武器にするんやったな。」「よし、頼むぞ!」「はい!」

「・・私も手伝う。」『・・エリス?』「こういうことができるの・・」・・『・・なにいっ!』「エリス・・ほんと?」

「うん、できるよ・・」「それならこういう作戦でいこう。」ぼそぼそ・・「・・ええ手や。」「これならば。」

「スフィンクスに動きあり!」はっ!「ついに動きやがった!」「ではみんな、位置につけ!」『おお!』ダッ!

 

サラ・・ズズズズズ!ゴバアアアーッ!『偵察ヘリより緊急連絡!スフィンクス像の下から巨大怪獣出現!』

『あれは・・まさにスフィンクスそのものじゃないか!』オオオオーッ!「偵察ヘリ、逃げろ!」ブオオオオーッ!

『うわっ、砂が!』チキチキチキ!『ヘリが・・食われていく!』「金属だろうがおかまいなしか!」「ナイルへ

向かえ!かまわんから不時着水・・」ヒュルルル・・ドドーン!・・「・・ダメか。」「無人観測カメラによると、

目標はカイロ市街へ向かって前進を開始しました!・・あっ!」ゴオオオオーッ!「なんて量の紅い砂だ!」

ビュオオオオーッ!「紅い砂嵐は時速100kmでこちらへ来ます!」「ナンバー6!」「足止めをするぜ。」♪ピッ。

「キャプテン、出番だ。」【了解した。】・・ヒィィィーン!「うわっ!・・黒い戦闘機群?」「たのむぜ。」

【ナパーム空雷、投射。】カチャ。ヒュルルル・・ドガガガガーン!『おおっ!』「ものすごい火炎壁だ!これなら!」

「いや、気休めだ。」・・チキチキチキ!「砂嵐の速度、若干は落ちましたが前進は止まらず!第一次防衛線へ!」

「無人火炎放射戦車、一斉放射!」ゴオオオーッ!チキチキチキ!バリバリバリ!「戦車隊、全滅!第一次防衛線、

突破されます!まもなく視界内!」・・ビュオオオオーッ!「総員退避!砂に覆われたらおしまいだぞ!」

ワアアアアーッ!バタバタ!「ナンバー6も退避を!」「いや、俺は仲間を信じてる。いいからはやく避難しろ。」

 

ナイル河畔。「とおっ!」ザパーン!ゴボゴボ・・(いきます!)・・ズゴゴゴゴゴッ!ゴバアアアアーッ!

「おおっ!ナイルから巨大な亀が!あれが水の覇王・リヴァイアサンか!」キュアアアーン!カッ!

シュバアアアアアーッ!「口からものすごい激流を吹いた!」「よし。エリス、たのむ!」「わかった・・」すっ。

キィィィ・・「水と大気よ・・集まって。」「フェイ、たのむわ!」『よっしゃあ!』バサアッ!「フェニックス!」

『湿気を含んだ空気を暖め、上昇気流にするで!』ゴオオオオーッ!「次はわたしね。糸流し!」シュバババッ!

ゴォォォーッ!・・「上昇気流に乗って上がり、水分子結合のタネになってね♪」「イエティ!」『おまかせを。』

ドドーン!オオオーッ!♪ドンドンドン!「そしてイエティか!」『上がった大気を一気に冷却いたします。』

ビュオオオーッ!ゴロゴロゴロ・・「水分子結合・・今こそ不毛の砂漠に恵みの雨を!」カッ!ピシャアアアーン!

ザアアアアーッ!「うまくいったぞ!エリスの超能力で蒸気が凝集され、豪雨を呼んだ!」「作戦成功ね!」

チキチキチキ・・「砂嵐が弱まっていくぞ。」・・ザアアアアア・・「・・赤い液体になって流れていく。」

「『ナイルは血に染まり』・・ってとこかしら。」「これで人食い砂は滅んだ。あとは俺の仕事だ!」ググッ・・

ピキィィーン!「封印解除!おおおおおーっ!」グワアアアアーッ!・・ドドオオオオーン!「タイタン!」

 

ザァァァ・・オォォォ・・ズシーン、ズシーン!・・『やはり雨は毒に等しいようだな。もうとどめをさす必要も

ないだろう。』くるっ。キラッ。・・オオオオオーッ!ダッ!ガブウッ!『・・やはりな。そうくると思った。』

?!・・ガキガキ!『全身にアラクネの粘糸を貼っておいた。触れたが最後、牙もからめとられて動けんぞ。

さて、いいところに行こう。天舞法!』ダン!シュバーッ!『中身はほとんどないはずなのに、けっこう重いぞ。』

 

ナイル河。「あ、マスターが来ました。」・・シュバアアアーッ!「でっかいゴキブリが引っかかったわね~。」

『さあ着いた。水遊びといこうか!』ドパアアアーン!オオオオオーッ!バシャバシャ!「スピンクスの身体が

溶ける・・?」「あいつはいわばダニのカタマリや。明日はあの辺で魚がよう釣れるやろね、うちはゴメンやが。」

バシャバシャ!・・オオオオオ!・・ドロドロ・・『ちょっと栄養ありすぎか?赤潮にならなきゃいいけど。』

 

その夜、ホテルラウンジ。『カンパーイ!』カチンカチン!「みんなご苦労さん。」「あんたは何もしとらんわ。」

「しかしエリスの超能力にはビックリしたな。まさか雨乞いができるとは。」「・・NYで雲を見て、雨になれって

思ったら必ず雨になったの・・」「ふむ・・失礼いたします。」キン。「イエティの「外道照身眼」ね。」

「・・ほう、これは・・」「何が見えたんや?」「エリスどのは潜在的にものすごいサイキック能力を持って

おられます。ご本人はまだ自覚しておりませぬが、修行しだいでは我らに匹敵するものとなりましょう。」

「・・私にそんな力が。」「知らないままのほうがよかったってこともあるわ。」「・・アラクネさん、ちがう・・

私はみんなのお手伝いをしたいの・・それが出来る力があるんなら・・使いたい。」「う~む・・どうする?」

「わたしは反対。エリスは普通の子でいてほしい・・戦うのはわたしたちだけでじゅうぶん。巻き込みたくない。」

「アラクネの意見ももっともだが・・俺としてはエリスの生きていく力となるなら、それもいいと思う。」

「僕は反対です。エリスは戦っちゃいけない。そのぶん僕が戦います。」「うちは・・判断できん。意見保留や。」

「これで2対2か・・」「折衷案があるぜ。」「ナンバー6?」「エリスの超能力は開発する。ただし、今回のように

戦闘補助の役割に限定し、決して前線には出さない。これでどうだ?」「・・うん、それなら許せるかな。」

「そういうことなら僕も。」「決まりだな。サイキックトレーナーはリヴィがやってくれ。」「え・・はい!」

 

「話は変わるけど・・ナンバー6、あの戦闘機はなに?既存のどの国のものとも違うけど。」「ほう、わかるか?」

「わたしは軍事関係も好きだから。どこの世界に無尾翼複葉戦闘機があるってのよ。・・秘密部隊の戦力ね。」

「正解だ。航空部隊である第五部隊の戦闘機さ。」「いい機会だ。秘密部隊のことを聞かせてくれ。」「秘密だな。」

キュイッ!「ぐっ!」「次は首が落ちると思ってね。」「・・あんた神さまじゃないのか。」「上に「魔」がつくの。」

「アラクネを怒らせると俺でも止められんぞ。」「わかった・・では第一部隊から。超人的な戦闘力を持つ武闘家で

構成されている。一人で一個師団に匹敵する最強部隊だ。」『ほう・・』「第二部隊、魔導士で構成された部隊。

西洋の黒魔術、東洋の仙術などを使いこなすメンバーがそろってる。」「仙術・・もう絶滅したと思ってたわ。」

「第三部隊、爆破専門部隊。腕のいい発破屋だ。」「工兵隊ですか?」「いや、まさに爆破だけの専門家だ。

戦闘力は皆無だが、大規模作戦に無くてはならない部隊だ。」「ハマれば千万の軍勢に匹敵するということですな。」

「第四部隊、諜報専門の忍者部隊だ。だが戦えばかなり強い。余談だが美形ぞろいだ。」「あら♪会ってみたいな。」

「いずれな。第五部隊はさっき説明したな。第六部隊はサイキッカー部隊。」「え・・」「強大な戦闘サイキック

能力を持つ者たちで構成されてる隠密作戦専門部隊だ。ただし、人間とは限らんがな。」「・・なんやそれ?」

「そのうちわかるさ。最後は第七部隊、獣人部隊だ。」「獣人ですと?」「いわゆる獣憑きというやつだ。

あんたらとは格がちがうよ。」「ね、どんな獣憑きがいるの?」「オオカミ、クマ、フクロウ、クモ、そして・・」

「クモ!うわ~、会ってみたい!」「会ってどうするんだ?」「そりゃ大先輩としていばるのよ。」『はいはい・・』

 

「しかしや、ようそれだけ超人あつめたな~。世界も広いやろし。」「そこはそれ、いろいろコネがあるのさ。」

「それで思い出した。ナンバー6、あんたと秘密部隊の関係は?」「お友達・・と言ったら、また首をクモ糸で

絞められるか。」「あたりまえでしょ。さあキリキリ吐きなさい。」キリキリ。「わかったわかった!・・ふう。

俺は秘密部隊付きの諜報員だ。世界中に俺のような奴がいて、戦乱や革命、国際犯罪の情報を集めて部隊に上げる。

それを基に各部隊が動くって寸法だ。」「・・単なる下っ端にしては、あんた発言力ありそうだけど。」「そうか?」

「まあこれで大体は把握できたな・・お、もうこんな時間か。明日は出発だ、早く寝よう。」「お館さま、どこへや?」

『あ・・』「・・まだ決めてなかったな。」くるっ。・・こく。「うん・・次の唄はできてるよ・・」スゥ・・

 

♪黒い森の夜は 外を見てはいけない あなたをじっとみつめてる 森の奥のアルゴスの目

♪見てはだめ あの目を「見るな」 森より深く暗いところへ あなたを連れ去るから

♪恐怖の目に打ち勝つには 目には見えないところから・・

 

*****

 

精霊界「忘却の海」。ザァァァ・・「ん~、潮風が気持ちいい・・」「やはり海はいいな。それにこの陽光帆船

「アポロ」の快適さはどうだ。」「そうですね、ご主人さま。新しい水着を用意してきた甲斐がありました。」

「それなんだが・・布が少なすぎやしないか?胸や尻がはみ出してるぞ。」「これがいいんですよ。それに・・」

すすっ、ぴた。「・・これならしたくなったらすぐにできるでしょ?」「出せばいいってもんじゃない。やはり

恥じらいというものがないと・・おい。」ぐっ。「ここは正直ね~・・ん?!」ぴくっ!「この巨大な霊気は!」

「・・正面です!」ザパアアアーン!「巨大亀だと!」「まさか・・「忘却の海」の支配者、レビヤタン!」

キュアアアーッ!「襲ってくるわ!」「おもかーじ!」ガラガラガラッ!「・・だめ!相手が速すぎるわ!」

「ならば手はひとつ。アラクネ!」「ライフライン!」シュパッ!ビシッ!「これで海には落ちません。」

「よしっ!」タッ。ザザザザ!「どすこーい!」ドシィィーン!ザパアアアーン!・・ザァァァ・・

「ふう~、なんとか止められたぞ。」『・・僕の突撃を止めるとは。どうやら海賊ではないようですね。』

「亀がしゃべった?」「驚くことでもないわ。霊格の高い幻獣、すなわち神獣は高い知性を持っているわ。」

『あなたもかなり高位の霊力を有しているようですね。』「どっちかというと魔力かな・・わたしはアラクネ。

そしてそちらのバカ力がタイタン。」「バカ力は余計だ。」『僕はレビヤタン。「忘却の海」を漂うものです。

海賊と間違えて襲ってしまって失礼しました。』「いいさ。で、海賊がいるのか?」『はい。最新鋭の武器で

海の仲間を次々と狩っている武装海賊です。この先の島に本拠地があるのですが、防衛設備がてごわく、

僕だけではなんとも。』「わかった。アラクネ、バカンスは海賊退治に変更だ。」「お宝の楽しみができたわね。」

 

第四夜「見るな」 - 巨眼魔獣アルゴス登場 -

 

フランクフルト空港。「♪ドイツ!ドイツ!ドイツドイツ!」「ジャーマン!」すぱあああーん!「何の歌やそら!」

『あいた~。』「アラクネどのもリヴィどのも、読者も知らないような歌をよくおぼえてますな。」「知ってるヒトは

知っているのよん♪」「けっこうやり込みましたからね。」「・・超O貴?」「なんでエリスが知っとんや!」

「ナンバー6、それでここからどこに?」「そこに車を手配しておいた。乗ってくれ。」『えっ?・・ななっ?!』

どん!「これ・・ベンツの最高級リムジンやないか!」「うわ~、すっごい豪華な車ですね~。」「あんた・・

いったい何者なのよ。こんな車を簡単に用意できるなんて。」「言ったろ。俺は顔が広いんだ。」「限度があるわよ!」

ガチャ。「うわ~、内装も豪華や~。」「・・プOステ2まであるよ。」「DVDソフトもずらりそろっておりますな。」

「あっ、冷蔵庫にハイネケンみっけ♪・・おおっ!つまみにキャビアまであるじゃないの!」「運転は俺がする。

みんなはラウンジでくつろいでくれ。ここから三時間はかかるからな。」「どこへ行くんだ?」「観光名所さ。」

 

ブロロロ・・「これがアウトバーンか~。ウワサどおりど真っ直ぐの道ね。」「南には名所は一つしかないで・・

すなわち「黒い森」シュバルツバルトや。」「ご明察。この先でアウトバーンを降り、シュツットガルトに行く。」

「そこに・・魔獣が。」「エリスの予言歌によればな。それに・・奇妙な事件が発生してる。」「事件・・ですか?」

「神隠しだ。昨夜、郊外の小村から住民が消えた。しかも奇怪な状況でだ。」「なにがあったんだ?」「それが・・

マリー・セレストは知ってるか?」『あ・・まさか!』「消えたんか、生活のまんまで!」「そのとおり。夕食は

食べかけのまま、フロ場には服がかかったまま、テレビはつけっぱなし。言うまでもないが争った形跡はない。」

「まさに神隠しね・・」「ただひとつだけ、奇怪な事実がある・・残存者がいた。」『えっ?!』「なんや。それなら

何が起こったのかその人に聞けばええやないか。」「目が不自由なおじいさんなんだな、これが。」『あう・・』

「けどそんな異変があったなら、何か聞いたはずだろう?」「証言はこうだ・・『深夜に家族にたたき起こされ、

「窓の外を見ろ」と言われた。見えないのは知ってるはずなのにおかしいと思った。でも見ているフリをしていた。

そのうち家族が出ていき、他にも数多くの村人が歩いていく気配を感じた。そして人々の向かう先には「何か」が

いた。そして・・全ての気配は絶えた。』」『う~む・・』「その「何か」が魔獣みたいね・・」「証言から察するに、

敵は催眠能力のようなものを使い、村人を支配下に置き、次々とその数を増やしていったと推測されますな。」

「まるでハメルンの笛吹きですね・・」「いや、どうやら音ではなく、何か視覚に作用するものだな。」

「となると・・やはり強力な催眠術ですね。」「・・アルゴスの目を見てはいけない。」はっ!「エリス?!」

「見てしまったらおしまい・・だから見ないか、見えないところからしか倒せない・・」「・・見えないところ?」

「アルゴス・・目・・そいつはわたしも知らないわ。」「目撃した者は皆そのアルゴスの目にやられたせいかもな。」

「そして「見えない」誰かが封じたんだろうな・・」「もうすぐ到着だ。腹ごしらえしてから現地に入る。」

 

シュツットガルト・ビアホール。「んぐんぐ・・ぷはあああ~っ!やっぱ本場のドイツビールはうまいねえ~!」

「アラクネはええ飲みっぷりやね。さすが天界一の酒豪や。」「酒神バッカスに飲み勝ったこともありましたね。」

「あのときはバッカス様からご褒美として大量のお酒を頂戴いたしましたが、ものの一週間でアラクネどのが

飲み干してしまわれましたな。」グイッ。「なによ~、フェイもイエティも連日酒盛りつきあってたじゃない。」

「そういやアーレスも誘ったんだが、三日三晩でダウンしたんだったな。」「そうそう。軍神もたいしたこと

なかったわね~。もう一杯!」「・・すごいね。」「どこかで切り上げさせないと、一夜で街を飲み干しそうだな・・」

ぱりっ。「・・ソーセージがコクがあっておいしい。」「うん、ザワークラウトも酸味がほどよくていいね。

もう一皿くださーい!」「ついでにこっち大ジョッキあと10個ね!銘柄みんな変えてね!」『まいどありー!』

 

「さすがに見事な飲みっぷりだ。」「ん?」くるっ。ブーッ!『なっ?!』「ゲホゲホ!・・い、いつの間に!」

「さっきから。」「気配も感じませんでした・・」「うちらの感覚を欺ける人間やて・・」「まあ当然かな。」

「・・知り合いか、ナンバー6?」「紹介しよう。国連秘密部隊・第一部隊長、土御門雅焔だ。」「お初にお目に

かかる。以後よろしく。」「これが・・秘密部隊の隊長か。」「びっくりした~。まったく気づかなかったわ。」

「それじゃこちらを紹介して」「それは省略していい。資料は読ませてもらった・・ミスター神。」「なんだ?」

「挨拶代わりに一手所望する。」「ほう・・」「俺は言葉よりも拳で語る主義。この拳は百万言を費やすよりも

雄弁だ。」「そうだな・・外でやろう。」「ちょ、ちょっと!いきなりケンカふっかけるなん・・イエティ?」すっ。

「アラクネどの、ここは成り行きにまかせましょう。」「食後の腹ごなしですね。」「男どもはこれやから。」

 

郊外。ザッ・・「ここなら周囲に迷惑はかからないだろう。」「では始めよう。」ガラガラン!「あれは!」

「どしたんやイエティ?」「・・あの方の履いていたのは、鉄ゲタですぞ。」「すまないが、どかしておいてくれ。」

「いいけど・・なっ?!」ミリ・・「・・なにこれビクとも動かない!ちょっとみんな手貸して!」『せーの!』

ミリ・・「な・・なんて重さのゲタ!」「こら100kgじゃきかんで!」「ざっと200kgはありますな、片方だけで。」

「無理か。やはり俺自身でどかそう。」ぷち。「・・なめないでよ!でりゃあああーっ!」ググ・・『おおっ!』

「アラクネが一人で持ち上げた!」「ほう・・さすがは四神獣リーダー。」「どっせーい!」ブン!ガラガラーン!

「はあっ!はあっ!・・女の子に力仕事させんじゃないわよ、まったく!」『だれが女の子だっつーの。』

「御主人様、あの方はあのようなゲタを履いて普通にふるまわれておりました・・お気をつけて。」「わかってる。

まったく足音もさせず、殺気どころか気配すら無くしてしまう・・タダモノじゃないぞ、あの男は。」

「では仕切り直しといこう。」すっ・・はっ!「その構えは・・まさか?!」「いくぞ。」ヒュッ!「速い!」

「はっ!」ドォン!「掌打か!流し!」パン。ビュゴオッ!ドガガガーッ!『ああっ!』「流した掌打の

余波が地面を!」「なんちゅう威力や!」「反撃!」ドン!バシィィーン!「おっし、直撃!・・えっ?!」

シュゥゥゥ・・「掌で受け止めてる!」ぱたぱた。「おーいて。直撃なら一発だったな。」ゴッ!ドゴオッ!「ぐっ!」

『あっ!』「・・普通ならこれでおしまいだが。さすがにいい反射神経だ。」シュゥゥゥ・・「こっちも格闘は

トウシロじゃないんでね。」「・・十字受けで止めてる!」「どうやら遠慮は失礼なようだな・・全力でいくぞ!」

ゴオッ!バゴオッ!「むっ!・・いいパンチだ。むん!」ゴオッ!パシッ!「当て身?!」「ムサイ!」

ギュン!「マスター得意の投げ技です!」「おっと。」ダダン!「ブリッジの要領で受け身をとった?!」

「返すぞ。」ダン!グン!「なにっ?!逆回転!」「むん!」ブオッ!「おわっ!」「返し投げですぞ!」

クルクルッ、ザシャアッ!「ふう・・なんて身軽なヤツだ。」「あんたも反射神経と体さばきは野獣なみだな。」

「では全力攻撃といこう!」ダッ!「受けて立とう。」ゴッ!「はいそこまで。」ガシガシッ!『なにっ?!』

「挨拶ならこのくらいで充分だろう。」ググッ・・「ナンバー6・・」「そうだな。」スッ。「ミスター神、失礼した。」

「一郎でいい。」「あんたの本質はよくわかった。これからよろしく。」すっ。「ああ、よろしく。」ガシッ。

「マスター、だいじょうぶですか?」「ああ・・イエティ、見たか?」「はい。・・ナンバー6どのは御主人様と

雅焔どのの全力攻撃をたやすく止めました。・・なかなかの腕かと。」「そうだ、下っ端諜報員にしてはな・・」

「雅焔どの、失礼ですがあなた様の流派はもしや。」「古代角力だが。」「やはり・・我らの神闘術に酷似して

おりましたゆえ。」「うむ。本来、角力は神の格闘技だ。それを人が学び、祭祀として神前で闘ったものだ。」

「・・いわば神の戦士ですね。」「世界の格闘技はそこに源を発する。俺は古代そのままの技を再現し、それを

完全なものにするため修行を続けている・・まだ見ぬ世界の強豪たちと相まみえることで。」「武者修行やね。」

「さて、今夜は次のターゲットと目される村でアルゴスとやらの出現を待つ。みんなついてきてくれ。」ザッ。

 

「雅焔・・ちょっと聞きたいんだが、ナンバー6はホントにただの諜報員か?」「悪いが俺には答える権利はない。

知りたければ、いましばらくつきあってみることだ。」「・・そういうことか。」「好きにとるがいい・・おっと、

それで思い出した。」ごそごそ、さっ。「・・携帯?」♪ピッピッピ。「・・俺だ。助っ人を頼む。場所は・・

そうだ。一時間後に。」♪ピッ。「雅焔、教え子を呼んだのか?」「ああ。今でも使えるはずだ。」「教え子って?」

「雅焔はA級国際教員免許を持っていて、世界各地の学校に呼ばれては荒廃した学級を再建している。そのときに

更正させた不良生徒で見どころのあるのが、卒業後も助っ人で来てくれるというわけだ。すっかり言い忘れてたが、

第一部隊の正式隊員は雅焔だけ。あとの隊員は現地調達となっているのさ。」「へぇ~、人は見かけによらんが、

まさか先生やとはな。」「専攻はなんなの?」「国際教員は各国語でどんな科目もこなせる技能が要求される。

個人的には実用的な数学や科学が好みだが。」「実用的数学って?」「三角測量・天文航法・税率算定などだな。」

「なるほど、たしかに実用的ですね。」「だが役に立とうが立つまいが、人として最低は知っておかなければ

ならないものが学問だ。・・見れば君と君はまだ学生のようだが。」「あ、いえ、僕は・・」「・・社会人です。」

「生涯学習ともいう。わからないことがあれば、いつでも聞くがいい。」「はい、いずれ。」「・・はい、先生。」

 

村。「おや?・・人の気配がまったく無いが。」「村人は昼間のうちに避難させた。いるのは俺たちだけだ。」

シーン・・「無人の村か・・不気味なもんやな。」「家をひとつ借りてある。その中から交代で見張ろう。」

ぴくっ。「マスター、何者かが来ます。・・足音から、かなりの手練かと。」「聞えてる・・シロウトじゃないな。」

「来たか。」・・シャアッ!『あっ!』「はあっ!」ゴッ!「受け。」ガシイッ!ドゴアッ!「おおっ!受けた雅焔の

足元の地面がえぐれるとは!」「破壊の気を避雷針のように地に流したのですな。」クルクルッ、ザシャアッ!

「・・女の子?」「ヒルダ、腕を上げたな。」「いきなり失礼をいたしました、先生。」すっ。「いや、見事な挨拶だ。

もう三年にもなるか・・」「私ももう二十歳です。・・この方々は?」「俺の江湖だ。」「・・江湖って、なに?」

「簡単にいうと親友のことでございます。拳のライバルという意味もありますが。」「紹介する。ヒルダ・ハスラー。

ドイツ在住の俺の教え子だ。」「よろしく。」ぺこ。「彼女はアーリア古代武術「ヴェグダ」の伝承者だ。」はっ!

「なんですって!ヴェグダを使える者がまだいたの?!」「アラクネ、知ってるのか?」「はい・・古代バビロニア

帝国がゲルマン民族と戦ったとき、たった一人で帝国の大軍勢を打ち破った戦士・・その技こそヴェグダ。」

「よくご存知ですね。それはわが流派の言い伝えと同じです。」「史実よ。なにせこの目で見たんだから。」「は?」

 

「ヒルダ、子細は後で話そう・・すぐに忙しくなる。」「どういうこと?」「俺たちが呼ばれた目的だ。」・・ぴくっ。

『これは?!』「・・大勢の人。しかもこの音は・・武装してる?!」「六番、どういうことなんや。」「刺客さ。」

『刺客?!』「誰が僕たちを殺そうというのです?」「正体はまだわからん。だが確実に言えることは、魔獣を

退治してまわってる俺たちが気に入らん連中がいるということだ。」「・・魔獣を崇拝する者たち。」はっ。

『エリス?』「魔獣を神とあおぎ、その復活を願う・・それを邪魔するものは実力をもって阻止する。」「邪教か・・」

「組織の名前はわからないか?」「・・まだそこまで見えない。」「そうか・・リヴィ、エリスを守れ。」「はい!」

「ナンバー6、いつ気づいた?」「空港からさ。監視してる奴がずっとついてきてた。」「そんな前から・・」

「足音からしてこの家を包囲する気やな・・六番。確認しとくけど、火の粉は払ってええんやな?」「もちろん。

秘密部隊諸法度・第二条。殺人・破壊等の過激行為は、任務上やむなきことならば、罪に問われることはない。」

「それ聞いて安心したわ・・神にたてつく異教徒には神罰を下さなきゃね。」きゅっ。「その目は怖いって・・」

 

ザザザザッ。ジャキジャキッ。さっ。ズガガガガガッ!ドキュドキュドキュッ!「撃ち方やめ。」ゴォォォォ・・

「手榴弾を。」ピン。ヒュッ!・・ヒュッ!「なにっ?!」ドガアアアーン!『ぐわっ!』「投げ返された?!」

「たく。あぶないもの投げるんじゃないわよ。」つかつか。「撃て!」ズガガガガガッ!ピタピタピタッ。

「銃弾が・・止まった?」「ビタミン足りないんじゃない?よーく見なさい。」キラッ。「・・クモの巣?!」

「ケブラー繊維より強いわよ。みんな、やっちゃえ。」『おおっ!』シャシャッ!「神闘技・アトラス!」ドンッ!

ズドドドドッ、ドガアアアーン!『どわあああっ!』「ほう、大地に気を打ち込み地面ごと敵集団を吹き飛ばすか。

俺の「たけみなかた」と同じ技だ。では「すさのを」!」ドンッ!「ぐはっ!」ゴオッ!ブシャアッ!「ぎゃっ!」

「張り飛ばした相手を弾丸にしてもう一人を倒す。神闘技「ナルキッソス」ですな。では「エコー」でございます。」

ぱんっ!ズガガガガガーッ!「手を打って衝撃波を生み出すとは、じいさんもやるな。」「おはずかしい次第で。」

「とおっ!」ターン!ギュルルルッ!「おおっ!身体を高速スピン!」「とりゃあっ!」ゴオッ!ズドォン!

「ぶぎゃっ!」「ナタのようなネリチャギ!」「まちがいない・・まさしくヴェグダの技。なつかしいわ・・」

「さて、うちも暴れさせてもらおか。」ターン・・スタッ。ザザッ!「まとめてきいや!」「撃て!」ズガガガガッ!

「ふん。」シュッ!「・・当たってない?!」「これかいな?」ジャラッ。ぎょっ!「銃弾を?!」「こないな

とろくさいナマリ弾じゃ、うちには止まってるも同然や・・ほな返すで。」ぐっ・・ボオッ!ドロドロ・・

「弾丸が・・融ける?」「ほれっ!」ビュッ!シュババババッ!ドスドスドスッ!『ぐはあっ!』ドサドサドサッ!

「なんだ!・・鉛の針?!」「いっぺん融かして飛沫にしたんや。そっち届くまでに冷えて針になったな~。」

「すげえすげえ。・・おっと。」ひょい、スカッ!「俺もケンカは苦手じゃないぜ。」ガシッ。「よいしょ!」ゴキッ!

「ぐわっ!」「右腕脱臼だな。」「この!」ヒュッ!「よっと。」ガシッ。グン!ドスッ!「ハラキリか?痛いぞ。」

「・・みんなすごいね。」「僕も負けてないけど、今はエリスを守るから。」「むっ?・・あっちの子供を狙え!」

ズガガガガッ!「水圧壁!」シュバッ!パシパシパシッ!「鉄砲水!」ピュゥゥゥーッ!スパパパパッ!

『ぎゃっ!』「すごい・・リヴィ、うしろ!」はっ!「もらった!」ビュッ!「しまった!」キン!「なっ?!」

ビタッ!「・・止まった?」「う・・動けん!」ググッ!「・・まさか、エリス?」キィィィ・・「いまのうち・・」

「ほいさ。」キュルルルッ、ビシッ。「捕縛したわ。」すぅ・・ぐらっ。「エリス!」ガシッ!「ふぅ・・疲れた。」

 

「エリスは?」「いきなり「力」を使ったんで、中で休ませてるわ。リヴィがみてる。」「そうか。生け捕りの奴に

話を聞こう。」「さて何から歌わしたろか?」「まずはどこの手の者かだな。」「・・ふん。」「あ、そー。そーゆー

態度に出るんだ。なら積極的に話してもらおっと♪」ぴん。ポトッ。カサカサ・・「・・クモ?!」「この子に

噛まれると、と~っても気持ちよくなって、何でもおしゃべりしちゃうの。痛いのはほんのチクッとだから。」

カサカサ・・チッ。「ぐっ!・・」ダラン・・「即効性よ。さ、お話しなさい。」「・・金で頼まれただけ・・

電話と振り込みで・・顔は知らない・・」「だって。」「役に立たんな。」「さて、あとはわたしが処分しとくから。」

「・・たのむ。みんな、30分ほど中へ入っててくれ。」「どういうことですか?」「見たらあかんちゅーことや。」

「・・まさか。」「それでございます。食事が出来なくなってもよろしければご勝手に。」「・・入りましょう。」

バタン。「さて・・ざっと15人か。大人は固くて美味しくないけど、ゼイタクは言えないわね・・」じゅる・・

 

「・・リヴィ。」「エリス、だいじょうぶ?」「少し疲れただけ・・」「でも顔が青白いよ。」「・・リヴィ、お願いが

あるの・・」「なに?僕でできることなら。」「・・こっちへ。」「うん。」すっ・・ぐっ。「エリス?!む・・」

「・・ふぅ。」「はふぅ・・エリス、今のは・・」「ちょっとだけだから・・」「血色が戻ってる・・僕の生気を?」

「ごめんなさい・・あっ。」ぎゅっ。「・・僕のでよかったら、いつでも、いくらでも。」「・・ありがとう。」

じゅるじゅるちゅるちゅる・・「・・あのブキミな音は?」「あ~・・知らないほうがいいと思う。」「・・?」

 

じゅるじゅる・・「あの音は・・」「知らんしらん。」「聞こえんフリしとくのが一番や。」「聞かざるですな。」

「・・見てみたいな。」「ヒルダ・・後悔しても知らんぞ。」「でも・・好奇心が。」そっ・・じゅるじゅる・・

(・・アラクネさん・・食べてる?)ぴくっ。・・「・・ちょうどいいわ。ソース持ってきてくんない?」

くるっ・・「!・・きゃあああああーっ!」ダダダダッ!・・「ふん・・やっぱ小娘ね。度胸のないこと。」

「はあっ!はあっ!」「だから言ったろ。無意味な好奇心は後悔のもとだ。」「一生夢に見そう・・」ガクガク・・

 

ギイッ。「アラクネ、ご苦労さん。」「ゲプ。むこう三日は酒だけでいいわ。」「食後酒でもご用意しましょうか?」

「いいわ。・・それよりも、バージンなジュースが欲しいところねえ・・」キラッ・・「う・・」ぞくうっ!・・

「一騒動あったせいで、今夜はアルゴスは出ないかもしれんな。」「・・来るよ。」『エリス?』「血の匂いを

嗅ぎつけて、アルゴスは必ず現れるよ・・」「そうか・・夜明けまでどのくらいだ。」「あと四時間てとこか。」

オォォォ・・はっ!『これは!』「なんて凶悪な気なの・・アルゴスね。」「俺でもわかるほどの猛悪な気配とは。」

「あっちです!」ダダッ!・・はっ!「いけない!みんな見てはダメ!」『あっ!』「うっ!・・」「しまっ!・・」

ガク・・「雅焔、ヒルダ!」「見てしまったのね・・」「・・お前らも見ろ。」「・・美しいわ。さあみんな見て・・」

ゆらゆら・・「アルゴスに魅入られたんや・・」「気配がどんどん近づいてくる・・このままでは!」オォォォ・・

「・・見ろ!」ダッ!「見せてあげるわ!」ゴオッ!「イエティ!」「心得ております。御主人様はヒルダ殿を。」

「おお~っ!」「ほい。」パシッ!「ゼピュロスでございます。」ブン!ダダーン!「ぐうっ!」ガシッ!ギリッ!

「決め技、クラーケンでございます。」ギリギリ・・「これだから人間は。眠りグモ。」ぴん。ぴたっ。チキッ。

「ぐ・・」クタ・・「こっちは落ち着いたわ。」「はいはいはいっ!」ビュビュビュッ!「おっとっと!」

「一郎さん、なに遊んでんのこの忙しいときに!」「いや、傷つけずにおとなしくさせるのがちょっとな。」

「あーっ、もう!うっとーしい!」げしっ!「きゃっ!」こてん。ぐいっ。「いい夢でも見てなさい!」グッ!

「む!・・」とろん・・くたっ。「アラクネの闇の口づけか・・」「・・こら、いつまでやっとんのや!」すぱーん!

「あいて!・・いや~、意外と美味でさ。ちょっとフケっちゃったわ。」「あんまり過ぎると精神汚染しますよ。」

「ふふっ・・魂までわたしのものにするも一興ね。」「その悪いクセはやめろとゆーに。本業が忙しくなるぞ。」

「この状況でマンザイかますとは、さすがにいい度胸だぜ。だがアルゴスさんがそこまで来てるみたいだぞ。」

「見えないところ・・これだ!」「リヴィ、ひらめいたんか?」「フェイ、裏口から出て、朝にしてください!」

「え?・・あっ、そか!わかったで!」ダダッ!「みんなはフェイが動くと同時に攻撃を!」『わかった!』

 

オォォォ・・バサアッ!『見んようにして・・いくで!』ピカッ!オォォォ!『今や、みんな!』ダダッ!

ぎょっ!「こ・・こいつがアルゴスか!」「巨大な眼だけの魔獣・・なんてヤツなの!」「アルゴスは光に弱い!

見えないところとは逆光、すなわち光源のこと。今ならフェイの放つ燭光で力を失っているはず。倒せます!」

「よし!」すっ・・ググググッ!「・・変神!」ピキピキピキッ・・パキィィーン!「おおおおおーっ!」

ギュゥゥゥーン!・・ドドオオーン!『巨神タイタン、降臨!』「よーやっと決めゼリフが出るようになったわね。」

『イージス・ブウゥーメランッ!』シュバッ!オォォォ!キン!ピキィィーン!『なにっ?!はじかれた!』

「眼から障壁を発したんです!」「まだそんな力があるのですか。」オォォォ・・シュバッ!『レーザー?!』

スカッ!『ぎゃあっ!』はっ!『フェニックス?!・・しまった!奴は最初から!』バサバサッ!『無念や!・・』

スゥ・・どさっ。「フェイ!」タタタタ・・さっ。「・・大丈夫です。もう自然治癒が始まってます。」「けど!」

オォォォ・・『くっ・・フェニックスの光が無くなり、力を取り戻したか。』「催眠光に気をつけてください!」

 

【・・やれやれ、しょうがねえな~。ガエンもまだまだ未熟っつーこったな。ま、力を貸してやるかね。浄化!】

キィィィ・・「う・・俺は?」むくっ。【こらガエン!寝てる場合じゃねえだろ。とっとと起きて闘え!】

「兵護か・・そうか、しまった!」【魔獣相手だから強くは言わねえが、もちっと慎重になれや。】「すまん。・・

ヒルダも起こしてやってくれ。」【ヒルダちゃんは俺のお気にだから、言われずともやってやらあ。浄化!】

キィィィ・・「う・・私はいったい?」むくっ。【魔獣の幻惑に加えて、タチの悪い毒も食らってたから浄化したぞ。】

「兵護さん、すみません。」「この屈辱、晴らさずにおけんな。いくぞヒルダ!」「はい!」【俺も手伝ってやらあ。】

 

ダダッ!『・・おおっ?!』ドドーン!「き・・巨人!」「これが巨神タイタンか・・なんという勇姿だ!」

オォォォ!ピカッ!『イージス・リフレクター!』シャッ!パシィィーン!シュバババッ!オォォォォ!

「うまい!円盾をパラボラ状にして催眠光線をレーザーで返して眼を焼いた!」「これで催眠光線は使えんな。」

オォォォ!シュバババッ!ズガガガガーン!『くうっ!メーザー掃射か!』「俺たちにまかせろ!」『なにっ?!』

ターン!「あれは雅焔さん?!」「わたしの呪毒からどうやって?!」「兵護、出番だ!」キン!【おっしゃあっ!】

シュババッ!「どりゃあああーっ!」ズパアアアーン!『すごい!光を斬った!』クルクルッ、ザシャアッ!

「タイタン、ここはまかせろ。」「ちょっとちょっと!人間じゃ魔獣にかなわないって!」「それはどうですかね。

先生、兵護を!」「よし。」ひょい、ぱしっ。「V-1フォーメーションだ!」「はい!」がしっ!「ヒルダをつかんで

持ち上げた?」「いくぞ合体奥義!」『フリッツ・イェーガー!』ダダダダッ!ザンッ!「どりゃあああーっ!」

ドキュゥゥーン!『なんと!』「ヒルダを投げ飛ばした!」「トリュープ・フリューゲル!」ギュルルルルッ!

「懐剣をかまえて高速スピン!」【いっけえええーっ!】オォォォ!ドゴン!・・ドバアアアーン!【よっしゃ!】

『おおっ!』「アルゴスの瞳を貫き反対側から!」「あ・・あれが人間の力だというの?!」ゴオオオーッ!

「先生!」「いくぞ!」ダダダダダッ!「よいしょ!」ガシッ!ザザザーッ!・・「キャッチ成功。」「グート!」

「投げた雅焔がキャッチもするか・・俺でもはじめて見たぜ。」「・・そう、あの懐剣も隊員なのね。」にこっ。

オォォォ・・「タイタン、とどめだ!」『おおっ!ガントレット!』ジャキン!キィィィ・・『光あれ!』ギン!

『ひーっさつ!プロメテウウウースッ!』ゴオッ!ドゴオオオオーン!オォォォ!シュバババババ!『爆砕!』

カッ!ドガアアアアーン!「やったぞ!」「やりましたね先生!」パラパラ・・『・・ありがとう、第一部隊。』

サァァァ・・「・・夜明けよ。」ボロボロボロ・・サラサラ・・「アルゴスの残骸が風化していきます・・」

 

その夜、ビアホール。『カンパーイ!』ガチンガチンガチン!グーッ・・ドン!「大ジョッキもう一杯!」

「ミス・アラクネはすごいな。」「飲みくらべなら負け知らずですから。雅焔先生は飲まないんですか?」

「それに料理も半分以上ヒルダさんに寄せておりますが。」「先生は下戸で少食なんです。」「それでどこから

あんだけのパワーが出るんや。」「量は問題ではない。要は転換効率だ。その代わりヒルダがよく飲んで食う。」

ぐーっ。がつがつ。「そのちっこい身体でよう食うこと。」「先生とは別の意味で転換効率がいいですから。」

「ところでナンバー6。」「なんだ?」「そろそろ正体を見せてくれてもいいんじゃないか?」ちっちっち。

「こういうのは最後までお楽しみにとっておくのがワビサビというものだぜ。」「ワビサビときたよ、コイツは~。」

「当ててみようか・・秘密部隊総司令。」「それは事務総長のことだろ。」「いえ・・ここからはわたしの推理に

なるけど、いい?」「酒の肴にはなるだろう。」「事務総長は本業で手いっぱいで、裏の仕事まで面倒は見きれない。

それに裏の仕事は本業以上に手間がかかるはず。さらにもし裏なんか発覚すれば、大スキャンダルになるわ。

だから裏とはなるべく接触しない・・ここまではいい?」「反論はございませんな。」「続けてください。」

「そして今回の第一部隊と会ってわかったけど、こんなすごい力を持った超人集団を束ねるのは容易じゃないわ。

少なくとも彼ら以上の力・・カリスマでもいいけど・・を持ってないと、とてもやってけないわ。」「同感だな。

俺には雅焔のような力は無い。だから違うというわけだ。」「話を聞いてないわね。「力」とは一義的ではないわ。

表に見える「力」より、見えない「力」のほうがはるかに強い・・」「・・統率力。リーダーシップのこと?」

「エリスちゃん正解。自らではなく、人をして動かさしめる「力」。それこそ最強の「力」よ。」「政治力ですな。」

「パスポートの手配、国連での邂逅、エジプト軍の動員、それに空港のリムジンに昨夜の村の総員退避。これが

どれだけの政治力が必要かは説明するまでもないよね。」こく。「反論させてもらうぜ。それはみんな俺自身が

手配したものじゃない。事務総長がやったんだ。」「では聞くけど、なんで下っぱ諜報員が国連本部やエジプト軍に

最敬礼で迎えられるの?」「知り合いだからさ。」ぐいっ。「アラクネ、それくらいにしておけ。・・ナンバー6の

正体が誰だろうと、俺たちの活動を支援してくれてることには変わりがない。つまらん詮索は無意味だ。」

「言ったでしょ、酒の肴よ。」ぐーっ・・ドン!「もう一杯!」「面白い推理だったな。」「はい。頭いいんですね。」

「連中は見た目どおりとは限らんということだ。」「それはうちも同じことですよ。」くすっ。「・・そうだな。」

 

「雅焔はこれからどうする?」「また会うこともあるだろう。その時まで。」くるっ。「私も行きます。」タッ。

「ヒルダは実家に戻れ。俺のような風来坊につきあうことはない。」「いえ、私も修行をしたいんです。先生の

足手まといにならないほどに・・いえ、先生を越えるほどに!」「・・わかった。では、来い。」「はい!」

 

「ナンバー6・・第一部隊、あと一人いるな?」ふっ。「さすがに気づいたか。まあ「一人」というのが適切か

どうかは意見が分かれるとこだが。」「・・霊刀「審判の日」、こんなところで出会うとはな・・おもしろい。」

 

♪街を覆う白い霧 みんな霧に霞んでる 霧に巻かれて消えちゃうの

♪古い塔の鳴らないピアノ 奏でるのはだれ? 揺り起こすのはだれ?

♪ミストロは待ってる 起こすものを 起こしたものを食らうため

♪「霧の死都」に 音無きピアノが鳴り響く 霧が街を 食らいつくす・・

 

 




ドドドド・・「うわ~、ここが辺境か・・」「さすがに天界のはしっこですね。時空境界のゆらぎで地脈が
揺さぶられ、絶えることのない火山活動が起きてます。」「天界が創世されてから数億年もの間、ここの数千の
火山は火を吹き続けていたんだな。名だたる観光名所だけのことはある。」「で、その観光客をおびやかす
炎の巨鳥がいるというけど・・この溶岩と噴煙の中でどうやって探すの?」「そうだな・・リヴィ、提案は?」
「辺境最大の「紅蓮山」から始めるのがいいでしょう。あそこなら目印にもなります。」「あれか・・紅蓮山。」
ゴォォォ・・「標高三万mか~。でも登るにしても溶岩流だらけね・・ん?」ズズズズ・・「・・でかいぞ!」
ドガアアアーン!「紅蓮山の大噴火です!」ゴオオオーッ!「火砕流が!ご主人さま!」「イージス展開!」
シャリン!「耐熱フィールド!」ヴン。「これでなんとかしのごう。」『そら甘いで!』「なにっ?!」バサアッ!
テケレリリリ!「炎の・・鳥?!」「お・・大きい!」『しゃーないな、ウチが助けたる。足につかまりや!』
ドドーン!「アラクネ、リヴィ、急げ!」ガシガシッ。『ほな飛ぶで!』テケレリリリ!バサアッ!「うわっ!」
ズドドドドド!・・「あぶなかった・・あと少し遅ければ。」『あんさん程度の結界やったら、熱よりもあの運動
エネルギーに吹っ飛ばされとったろうな。』「ありがとう。適当なところで降ろしてくれないか。」『ええで。』
バサアッ、ドドーン!「ふう~、危機一髪。」「俺はタイタン。あなたの名は?」『うちはフェニックスや。
噴火で巣にしとった山がぶっ飛んだんで、新しい巣を探しとったとこや。」「それを観光客が目撃したわけね。」
「う~ん・・あなたは人形態をとることができますか?」『やったことないけど、できると思うで。』「マスター、
この方は頼りになりそうです。」「なるほど。どうだ、俺のところに来ないか?助けてもらった礼がしたい。」
『つーこた、神都か?』「そうよ。三食昼寝つき、アゴラ(繁華街)まで三分。」「歓迎しますよ。」『そやな~・・
こないな田舎にいてもおもろないしな。』「よかった。では人形態をとってくれ。」『せーの!』シュゥゥ・・ストッ。
「ほう・・女性か。」「真紅のドレスの美女か~。やるものね。」「ふむ・・どや?」「とってもステキですよ。」

第五夜「霧の死都」 - 霧魔獣ミストロ登場 -

「ゆかいなロンドン!」「すてきなロンドン!」『ロンドンロンドンローンドン!』すぱあああーん!x2
「二回続けて同じような出だしすな!」「しかし今回はまた古いネタですな。」「若い読者は知らんぞ、おそらく。」
「しかし・・ネオユーロトンネルを抜けてイギリスか。変われば変わるものね。」「そうですね・・かつては犬猿の
仲だったフランスとイングランドが、まさか一本につながるとは世の中わからないものですね。」「んなこたウチは
どうでもええ。途中でパリに寄って、ぎょうさんブランド物買えたんで満足や♪」「もともとはわたしの信者が
寄進したお金でしょーが。」「貴族のご令嬢というのはビックリいたしました。ロールスロイスでホテルに乗り付け
でしたから。」「あの後、部屋にこもって一時間・・可愛がったか?アラクネ。」「まあね♪やっぱ高貴な処女の
エキスは上品な味。こちらもタップリあげたから、30年は齢とらないでしょうね。」「とんでもない神さまだな。」
「あれ、エリスは?」「助手席に行ってます。前の風景を見たいということで。」「ふふっ、まるでお子様やね。」
くるっ。「ナンバー6と何か談笑してるみたいね。」「仕切りで聞こえないですけど、なに話してるんでしょうね。」
「さあ・・あれ?」「どうしました?」「・・いえ。(エリスの笑顔・・とても・・まさかね、気のせいよね。)」

ウエストミンスターホテル。「まずチェックインしてから晩メシに行こう。打ち合せはそのときに。」『はーい。』
「・・あっ、いたいた!おーい!」『え?』タタタタ・・「おお、ベルか。」「やっと見つけましたよナンバー6。」
「どなた?」「紹介しよう。連絡員のティンカー・ベル。俺と事務総長の中継ぎをしてる。」「はじめまして。」
「連絡て・・このネットワーク全盛のご時勢に。」「セキュリティの高い情報は今でも口伝が一番安全なんです。」
「まあホンネは公費であちこち行けるからだけどな。」「それは言っちゃダメでしょ。」「やっぱそんなもんか。」
「で、連絡事項って?」「あっ、そうそう。まず一つめ。第二部隊が明日に合流します。」「ほう、櫻華たちか。」
ぴくうっ!「櫻華?!」「アラクネ、どうした?」「・・まさか。単なる同名よね・・」「・・顔色が悪いぞ。」
「二つめ。由比の卦です。ロンドン塔を捜せと。」「そうか、わかった。」「どういうことだ?」「由比は第二部隊の
風水師だ。ロンドンの気脈を調べておいてもらった。」「・・風水ってなに?」「簡単に申せば土地のエネルギーの
流れを読み取り、それを役立てる術であります。」「魔獣がいれば気脈が乱れるということか・・なるほど。」
「ベル、ドイツで俺たちを襲った連中の件だが。」「第四部隊から名前だけ上がってきてたわ・・「魔獣教団」。」
『「魔獣教団」・・』「わかったのは今のところ名前だけ。新たな情報が入ればまた連絡するわ。」「よろしくたのむ。
もう帰るのか?」「明日の便でね。今夜はここに泊まるつもり。」「なら俺の部屋のベッドが空いてるぜ。」
「ツイン?」「ダブルさ。」「ま、いいでしょ。背中でも流してあげるわ。」「その後は?」「ふふっ・・」すっ・・
ぐいっ!ズガガガガッ!「ぬおおおおーっ!」『うわ~、電気アンマ・・』「子供の前でなに言うのよこのバカ亭・・
おっと。」『え?』「・・もとい、このスケベが!」ズガガガガ!「わかった!俺が悪かったかーちゃ・・やべ。」
『んん?』「いまただならぬ単語が聞かれましたが。」「うんうん、たしかに「かーちゃん」て聞こえたで。」「ちっ・・
白状しよう。ベルは俺のかみさんだ。」「もう~、ゴクツブシが。」「既婚者だったのか・・」「でも結婚しても
仕事はそのままなんですか?」「実入りがいいし、共働きだと税金も優遇されるからな。」「それ以上にこの
スットコドッコイが旅好きなのもあるけどねっ!」ズガガガガッ!(再開)「のおおおーっ!わかったかーちゃん!
今夜サービスすっから!」「なら許しましょ♪」ぱっ。「ふぅはぁ・・あいかわらず効くな~。」「なんつー夫婦よ。」
「・・」ぷるぷる・・「ん?・・エリス、どうしたの?」「・・うぷぷっ。」くっくっくっ。「笑ってたのか・・」
じーっ・・「・・ほう。」「イエティ、どうしました?」「・・いえ、なんでもございません。」つかつか・・「・・?」

次の日、ロンドン塔。オォォォ・・「霧が濃いな・・」「この季節のロンドンはこうだぜ。」「じめじめして何とも
うっとーしいですな。」「魔都ロンドン・・よくぞ言ったものね。」「ここなんか特にそう感じますね・・」オォォォ・・
「なんちゅう怨念の巣や、ここは・・」「処刑された者たちの怨霊がまだ残留してるのね・・あそこから見てるし。」
「・・ううっ!」ガクッ。「エリス?!」「まさか憑依されたのか?!」「エリスが霊媒体質なのを忘れてたわ!」
「しっかり!」「・・聞える・・恐ろしいピアノの音が。」「ピアノやて?」シーン・・「・・なんも聞えんで。」
「鳴らないピアノが・・邪悪なメロディーを奏でる・・」スゥ・・「エリス?」「しっ。・・予知歌よ。」

♪生まれたときから鳴らないピアノ だれが造った鳴らないピアノ
♪それは魔を封じるため だから弾いてはいけないの
♪愚かなピアニストよ 呪いを受けよ 二度とピアノは弾けなくなるの
♪あなたの指も肉体も ミストロに喰われて霧になるの
♪冷たく暗い霧の中 永遠に弾けるわ 鳴らないピアノ・・

オォォォ・・『うっ!』ぞくっ!「・・怨霊どもが期待しとる・・魔獣復活を。」「バッキンガムでも破壊すれば、
成仏できる方も多いでしょうね・・」「・・その前に、生身の敵さんを相手にしなきゃいけないみたいだぞ。
そこに隠れてる集団、出てこい!」・・ザザザッ!ジャキジャキッ!「統制された動き・・ドイツのザコより
レベルは高いみたいですね。」「傭兵部隊ですな。プロの戦争屋です。」「ありゃりゃ、バズーカ砲まで用意して。」
ズドン!ヒュルルル!「よっと。」パシッ。『なにっ?!』「こんなもんじゃ倒せないぞ。」ミリ・・グシャッ!
ひゅ~♪「バズーカ砲弾を手で受けてにぎりつぶすか。さすがだな。」「どうも。ちょっとコツがいるけどな。」
ジャキジャキッ!「今度は一斉砲撃か。」「受けるのはちょいとホネかもね。」ぴく。「・・だいじょうぶだよ。」

♪ピロリロ~。ぎくっ!「・・笛?」トンタタトンタタ・・「太鼓の音も?」ズズズズ・・ゴバアッ!『なにっ!』
シュババババ!「地面から・・巨大な樹が!」「いまだ、隠れろ。」シュッ。「ターゲットをロストしました!」
「さがせ!遠くには行ってないはずだ!」「しかし、このにわかジャングルを・・ん?」ゴルルル・・「なんだ?」
ノッシ。「バカな・・猛獣だと!」「しかもあれは・・獣の胴体に・・人間の顔!」ゴルルル!ダッ!ブシャアッ!
「あれは・・開明獣?!」「な、なんで中国の幻獣がここに?」『それだけじゃないわよ。』ぎくうっ!「その声は!」
キャアキャア!バサバサッ!「なんだあのハデな鳥は?」パラパラ・・「ぐっ!・・苦しい!」バタバタッ。
「伝説の猛毒鳥「鴆」ですな。」「やっぱり・・あいつだ。」「敵はどこだ?!」ズズズズ・・「地面が?!」バガッ!
『うわああああーっ!・・』・・バシーン!「割れ目が・・これはいったい?!」「ほっほっほ。」ぎくうっ!
とことこ。「・・老人?」「これぞ崑崙の樹海。はまって生きて出られた者はおらんよ。」「妖怪!」チャッ。
「不発じゃよ。」カチ。「・・なにっ?」「年寄りを大切にせんヤツは、タライにでも当たるがよい。」ごい~ん!
「あいた!・・どこからタライが?変なじじいが!」チャッ。「オモチャのナイフか。かわゆいの~。」「なにを・・
やけに軽いな?」そっ・・ぴこぴこ。「なっ!・・いつの間に。」「ワシは「事実」しか語らんよ。言い換えれば
ワシの語ったことは全て「事実」となるのじゃ。」「ば・・バケモノ・・」「だまらっしゃい!多数の火力をもって
小数の素手の者を襲うとは不届き千万!このタリスマンの呪紋が目に入らぬか!」さっ。ババーン!「これは!」
「ええい頭が高い!ひかえい!」「ははーっ!」ババッ!「スコットランド・ヤードに自首し、沙汰を待つがよい!」
「ははっ!おみそれしました!」「あのタリスマンは・・?」「かなり強力な服従の呪紋でございますな。」

「どうやら全滅のようだな。みんな、ご苦労さん。」ザッ。「ほっほっほ。年寄りにはよい運動でしたぞ。」
ふわっ・・すとっ。「さすが「創世士」のご老公ね。私たちまで土下座しそうだったわ。」とととっ。「ウラ!
おじいちゃんは偉いのだ。だから問題ないのだ。」カツカツ。「ナデラ、ウッデュドゥの樹をひっこめて。これじゃ
地脈が読めないから。」「わかったのだ由比ねえちゃん。」トンタタトンタタ♪ザワザワザワ・・ころん。ひょい。
「ご苦労さまなのだ、ウラ!」カラカラ・・「羅針盤よし。テムズ川が水の竜脈・・裏鬼門・・なるほど。さすが
魔都ロンドン、風水にかなった都市設計してるわ。そしてロンドン塔で封じる・・毒には毒というわけね。」
ゴルルル。キャアキャア!「「錦毛虎」、「病尉遅」。ご苦労さま。もう休んでいいわ。」こく。スゥ・・

「これが・・第二部隊か。」「紹介しよう。国連秘密部隊・第二部隊の面々だ。」「隊長の菖櫻華です。よろしく。」
「ワシはご隠居と呼ばれとる。本名はボケて忘れてしもうたわい。」「ナデラなのだ。ウラ!」「由比です。」
「櫻華は仙術を極めた仙女、ナデラはマクンバのシャーマン、ご隠居は魔導師、そして由比は風水師だ。」
ちらっ、にこっ。「はーい♪アラクネ、おひさ。」ぱたぱた。『えっ?』くるっ。「・・知り合いなのか?」
「・・あんた、まだ生きてたの・・(真っ青)」「ごあいさつね。あなたと私の仲じゃない。」「どういう関係だ?」
「昔むかしのそのむかし、親友だったの。」「・・それをいうなら悪友でしょ。」「そうともいえるかな?ふふっ。」
「ほっほっほっ!・・さて、蜘蛛の小娘。ちいとはいい女になったのう。」むっ。「ジジイもまだ現役みたいね。
いいかげんお迎え待つのやめて自分で行ったら?ハデス様に口きいとくからさ。」「なんの、棺桶に入るにはまだ
この世が楽しすぎるわい。」「一万年も生きてりゃ十分でしょ!」「あと一万年は生きるわい、ほっほっほ!」
『いちまんねん?!』「ということは・・櫻華さんも過去にアラクネに会っていたんだから・・ええっ?!」
「あ・・あんたいくつやねん!」「女の年齢は聞くもんじゃないわよ。」「若作りがうまいからの~、ほっほっほ。」
「あら、ご隠居に比べればまだまだ駆け出しですわ。」「ウラ!スポットライトを当てておくべきなのだ。」
「それじゃ河合そO子ですってば。」「こいつら・・人間か?」「そうだと言ったら信じるか?」「・・いいや。」
ピン!「はっ?!」さっ。ピリピリ・・「羅針盤が反応してます・・魔獣の気かと。」「ミストロか・・行こう。」
「エリス、だいじょうぶ?」「どうやらこの塔の怨念とシンクロしてしまったようで、中にはつれていけません。」
「エリスは俺が見てる。あとは頼むぜ。」「えっ?」「たのむ、ナンバー6。」「・・珍しいこともあるもんやな。」

カコーン・・カコーン・・「アラクネ・・何千年ぶりかしら?あなたがいなかったんでさびしかったわ。」
「よーゆーわ・・古代中国じゃハデにやったそうじゃない。三つも国を滅ぼしたって歴史に残ってるわよ。」
「空中庭園やら巨塔やらを造らせたあなたほど有名じゃないけどね。あなたホント巨大建築好きだったからね。」
「それはあんたも。始皇帝に長城を造らせたのはどなた?」「いいこともしてるわよ。皇子に牛乳粥をふるまった
のが昨日のことのよう・・ナザレの大工の息子とのディナーは楽しかったわ。一発で見抜かれてたけどね。」
「それでも平気で談笑してたんでしょ。」「当たり。逝かれた後のことを話したわ・・覚え書きは削除したけど。」
「・・なんかものすごい会話してますね。」「ご隠居、櫻華っていったい何者ですか?」「ほっほっほ。さての~。
ワシも長年つきあっとるが、いまだにわからんわい。」「・・愚問でした。」「ウラ!インファは女神なのだ。」
「女神・・ですか?」「どっちかゆーと女夜叉っちゅー感じやが。」「善悪は問題ではないのだ。荒神という
神さまだって居ると、ご隠居に教えてもらったのだ。だからインファは荒神さまなのだ、ウラ!」「荒神か・・」
「神の神たる所以はその超絶の力にあり。ゆえに魔獣とて解釈のしようでは神になるのじゃよ。」「・・それは
魔獣教団のことですね。」「そうじゃ。絶対的な力こそ神聖・・そう信じる愚かな人間はあとを絶たんのじゃよ。」
「まあそれも人間でございますな。」「む?・・ぬしはどっかで会ったかの?」「お忘れでしょうが、とりあえず
お久しぶりと言わせていただきます。」すっ。「はて・・ボケがひどくて思い出せんわい。」「ほんまかいな・・」

カツカツ・・ぴたっ。「ピアノか・・」「鳴らないピアノ・・ですか?」「論より証拠。弾いてみましょう。」すっ。
「アラクネ、それは危険・・櫻華?」すっ。「彼女なら大丈夫ですよ。」「さってと。ブルーノートでもやりますか。」
ポキポキ。すっ・・カタン。「あら?・・鳴らないわね。どーなってんの・・ありゃ、これカラッポだわ。」
カラカラカラ!「羅針盤が?・・いけない!そこから離れてください!」・・ブオオオーッ!「おっとっと!」
「ピアノの中から霧が!」「あれがミストロの人食い霧よ。」ゴオオオオーッ!「こっちに来ます!」「逃げろ!」
「その必要はないわ。由比!」「はい!」チャッ。「鏡?」「願わくば大極をもって魔を閉め出さん。八門遁甲!」
キン!パシィィーン!ゴォォォ!「これは・・結界?」「はい、空間迷宮結界です。」「これが風水の力・・」
「次は私ね。「神火将軍」!」ボン!「いきなり周囲に業火が!」ゴオオオーッ!「霧は熱に弱いわ。」・・はっ!
「それはいけません!」『えっ?』「火は上昇気流を生みます。そして霧はそれに乗って!」はっ!「しまった!」

ゴゴゴゴ・・ドバアアアーン!「なんだ?!ロンドン塔がぶっとんだ!」ブオオオオーッ!「塔から・・霧が?!」
シュゥゥゥ・・「ぐっ?・・ぐわああああーっ!」シュゥゥゥ・・「霧にまかれた人が・・消えた!」ゴオオッ!
サラサラサラ・・「タワーブリッジが・・消えていく?!」キキキィィーッ!「うわあっ!・・」シュゥゥゥ・・
ロンドン塔から発した膨大な霧は、人も車も建物をも呑み込み、霧に同化していく。そしてこの「食らう霧」は
テムズ川に沿ってロンドン中心部へと・・霧に慣れてる市民は、まだその恐怖に気づいてはいなかった。

ロンドン塔廃墟。カラ・・『「黒旋風」!』ドガアアアーン!パラパラ・・「ふう、やっと出れた・・きゃっ!」
がしっ!「あんたって人は~!被害広げてどーすんのよ!後先考えず行動するクセ、あれだけ治せとゆったのに
ぜんっぜん治ってないじゃない!」ギリギリ!(コブラツイスト)「あいたたた!ごめん、ごめんってば!」
「ごめんで済めば神罰はいらないわよ!」がしっ!ギリギリ!(DDTに移行)「まあまあそれくらいにしとけって。
霧に火ってのは誰でも思いつく手だし。」「ウチのお株取られた思うたが。ま、大失敗せんでよかったけどな。」
「そうはいかなーい!櫻華のおしおきはきっちりやんなきゃね!」「といいつつゲームでおぼえたサブミッション
みんな試してません?」ぎくうっ!ぱっ。「はぁ・・ひさびさの熱い抱擁だったわ。」「こういうヤツなのよ・・」
「さてミストロはいずこへ?」カラカラ。「まっずーい!川に沿ってロンドン中心部へ!」「急ぐぞ。このままでは
ロンドンは消滅してしまう!」「・・あっ!ナンバー6とエリスは?!」「ここだぜ。」ザッ!・・スタッ。
「無事やったか。」「うん・・」「エリスが結界を張ってくれなければ、まとめて霧にされてたぜ。」「よかった・・」

「リヴィ、作戦はあるか?」「はい。霧に対するには熱です。」「そらさっきダメゆーたで。」「あれは閉鎖空間での
話です。それともっと巨大な熱量が必要です・・霧をまるごと蒸発させるだけの。」「それほどの熱量をどこから?」
「いま何時ですか?」「えっ?・・そろそろ昼時だけど・・あっ、そうか!」「そうです。巨大な熱源・・太陽が。」
「わかったで。ほなうちの出番やな!」ターン!・・バサバサバサッ!テケレリリリ!「ウラ!火の鳥なのだ!」
『火力最大!』カアアアアーッ!サァァァ・・「おお!都市を覆ってた霧が晴れていくぞい!」「フェニックスの
灼熱で普通の霧なら一瞬で気化してしまいます。そして!」カアッ!「太陽が見えた!」「これで霧は払われます。
残るは・・あのわだかまっているミストロの霧だけです!」さっ。「テンプル前ね。」「次は霧を凝結させます。」
「わたくしの出番ですな。」すっ。「そして僕もいきます。とおっ!」ザパーン!・・ザザザザザッ、バシャーン!
キュアアアアーッ!「あのボウヤが・・巨大な亀に!」『ギガ・ストリーム!』カッ、ブシャアアアアーッ!
「ものすごい激流を吐いたのだ、ウラ!」「やるの~。あの膨大な水で霧を飽和凝結させる手じゃ。」
「ダメ押しです。ふんぬうううーっ!」モリモリッ!オオオオーッ!♪ドンドンドンドン!「白ゴリラです!」
『レンの風でございます。』ビュオオオオオーッ!「そして気温を下げて結露させれば・・」シュゥゥゥゥ・・
キィンキィン!「あれがミストロの正体か!」「なんて姿なの・・まるで生きたテトラポット。」「霧の肉体が
ゆえに自然の法則に沿わない形態・・まさしく魔獣ね。」「いくぞミストロ!」ぐっ。ブン!ガキィィィーン!
「両手のブレスレットを打ち合わせて砕いた?」パラパラ・・「・・変神!」ギュウウウウーン!・・ドドーン!
『おおっ!』「これが・・巨神タイタン!」『イージス・ブゥゥーメランッ!』シュバッ!シャァァァーッ、ズバッ!
「真っ二つ!・・だけど。」シュゥゥゥ・・『やはり物理攻撃は無効か。ならば・・手はひとつ!』ダッ!
「えっ?!」「ミストロに突っ込んでいった?」『アラクネ!』ちらっ。「わかりました。ちょっと由比ちゃん。」
「はい?」「手借りたいけど、いい? 櫻華。」「いいわよ。どう使うの?」「すぐにわかるわ。ミストロの位置に
八門遁甲の結界、張れる?」「え~と・・水の竜脈の真上ですね。かなり強力なのが張れます。」「一発おねがい。」
『ガントレット!』ジャキン!ブン!ズボッ!「あっ!ミストロの霧の肉体に呑み込まれた!」「いまよ!」
「水を司る水江竜よ、八極の則に従い魔を封じよ!水門遁甲!」ズズズ・・ザバアアアーッ!『こらすごいで!』
『テムズ川から巨大な水の壁が現れました!』『ミストロと御主人様を封じましたな。』「おっし!よくやったわ。」
「ふう・・でもこれからどうするんですか?」「まあ見てなさい。3、2、1。」『必殺!プロメテウウースッ!』
カッ!・・ドゴオオオオオーン!ブオオオオオオーッ!『おおっ!』「水の結界から上空に光の奔流が!」
ゴオオオオーッ!・・「もういいわ。結界を解いて。」「はいっ!」ぱん!ザザザザーッ!・・『ご苦労さま。』
「どうなったの?」「なるほどのう・・結界の中でミストロを光で灼き尽くし、気化させたのじゃな。光の奔流は
まさしくミストロの断末魔じゃったのじゃ。」「へぇ・・なかなか切れるわね。私好みかも・・」くすっ。

その夜、ベーカー街「マダム・ハドソン」。「ここのローストビーフはうまいんだぜ。」「お待たせ~。」ドン!
『おおっ!でっかい!』「リヴィ、切り分けてくれ。」「はい。・・はあっ!」シュパッ!・・パラパラ。
『お~!ぱちぱちぱち!』「リヴィって剣もいけたのね・・」「料理剣法ですよ。」「神殿では持ち回りで食事当番を
していたものです。」「ねえ、誰がいちばんヘタだった?」「一郎さん。単純なモノしか作れなくってさ。」
「でもマスターの焼きめしは人気メニューでしたよ。どんなに凝った料理よりもうまいって大黒天さまもたびたび
ごちそうになりに来てましたね。」「綺羅も神都を訪れるたびにお忍びで食べに来てたな。」「綺羅さまか~・・
いまごろ心配されてるんだろうな~。」「アーレスがうまく説明してくれてると思うが・・さもないとデウス様とて
つるし上げられるぞ。」「いえてますね・・綺羅さまあれで怒るとムチャする方ですから。」「綺羅って・・アラクネ、
もしかしてあの方?」「そう、精霊界女王の綺羅さま。櫻華も会ったことあるでしょ?」「ええ・・お元気なのね。」
「懐かしいのう・・あの美貌は目に焼きついておるわ。」「きれいな女神さま、会ってみたいのだ。ウラ!」
「正確には女神じゃないけどね・・でもまあ、神さまとしても反対するやつはいないか。」「どういうことです?」
「綺羅は精霊であって神じゃない。けどその高貴さと実力はそこらの上級神以上。だから名誉神族扱いなのさ。」
「天界最強の十二神衆にも数えられてるしね。」「十二神衆・・ヴォーダンのやつ、アーレスだけではとても・・」

そのころ、天界・至高神殿。「デウス様、綺羅さまが行幸の由にございます。」「なにっ?!聞いておらんぞ!」
「当然ですわ。非公式訪問ですから。」はっ!「・・綺羅どの。」「今日はおりいってお聞きしたいことがあります。」
「・・何か?」「タイタンと四神獣の堕天の刑、いきさつを教えてくださいませ。」「内政干渉ですぞ。」ぐいっ!
「ぐうっ!」「きいたふうな口は時間の無駄ですわ・・温厚な私とて堪忍袋というものがありますし。」ギリギリ。
「正直、私はいま激怒してますわ・・あの誠実なタイタンと四神獣が謀反ですって?さしものデウス様もとうとう
耄碌したようですわね・・冤罪を解いていただかなければ、私は何をするか自分でもわかりませんわよ・・」
「お待ちを。綺羅さま。」「・・アーレス?」「全てをお話しましょう・・お耳を。」「よかろう。」ブン!どさっ!
「ぶほっ!・・ふう。」・・「ほう・・そうでしたか。それならそうと事前に説明くらいいただきたかったですわね。」
「極秘事項でしたので・・申し訳ございません。」「まあいいでしょう・・デウス様、ご無礼をいたしましたわ。」
「苦しゅうない・・綺羅どのの怒りはごもっとも。責はすべてワシにある。」「では失礼いたしますわ。ご壮健で。」
スゥ・・バタン。「ふう・・綺羅どのへの根回しを忘れておった。」「あれは本気で怒ってらっしゃいましたね。」
「殺されるかと思ったぞ・・いや、綺羅どのなら神都もろとも消滅させとるな・・」「シャレになりませんぞ。」

神都大通り。竜が牽く綺羅の行幸車がゆく。カラカラ・・ヒヒーン!パカパカ・・「・・あら?」ガラッ。
「やはりヴォータンね。スレイプニールの六つの足音ですぐにわかったわ。」「綺羅・・何の用で来た?」
「そちらの考えてる理由ですわ。」「・・そうか。都の外まで送ろう。」「どうも。」パカパカ・・ガラガラ・・
「ねえ・・いずれ私たちもエデンに遊びに行ってみない?」「そうだな・・魔獣復活、千載一遇の好機かもしれん。」
「エデンを再び神の手に・・私にとってはどうでもいいこと。ただ・・エデンはとても楽しそうね。ふふっ・・」

その夜、ホテルにて。「なあアラクネ、なんで櫻華も同じ部屋に泊まるんだ?」「それがさ~、櫻華にどうしても
って押しきられちゃったのよ。」ガラッ。「ねえ、みんないっしょに入らない?背中流しっこしましょうよ。」
「あんたはお子様か!わたしはともかく一郎さんは問題大ありでしょーが!」「いや俺は別にかまわんが・・」
その夜どういう光景がくりひろげられたかは、あえて言うまでもないであろう・・以下自主規制。

次の朝。ツーッ、ツーッ。「おかしいな?マスターたちまだ寝てるんでしょうか。」「そろそろチェックアウトの
時間だというのに、まだ寝てるのか?」「・・夜更かししたのかな?」「ほっほっほ、だいたい想像つくがの。」
「ウラ!ナデラは夜明けと共に起きて、朝日に礼拝するのが習慣なのだ。」「早起きですな。」「羅針盤によると、
三人とも健在です。ただ・・」「ただ、なんや?」「一郎さん、気力がズドンと落ちてますね~。」『やっぱし・・』

それから一時間後。「♪るんるん。お待たせ。」「櫻華さん、元気ですね。」「二千年ぶんくらい充電したもん。」
「ふわ~、魔獣と闘うより疲れたぞ。」「はう~・・昨夜は櫻華に譲ったってことにしときましょ・・」むにゃ~。
「それじゃ私たちは次の任務に行くから。」「また会う日を楽しみにしてますぞ。」「お元気でなのだ、ウラ!」
「では失礼します。」『またね~。』「・・あの格好でよく入国審査をパスできるものね~。ナデラなんかまんま
サファリルックじゃない。」「ああ、そりゃ問題ないさ。ほれ。」『え?・・』「「入雲龍」!」ゴロゴロゴロ・・
キュオオオーン!・・「あれは・・龍?!」「櫻華の仙術だ・・応龍に乗って世界のどこでも飛ぶのさ。」
「なんて方でしょう・・龍まで使役するなんて。」「今回はおとなしかったほうよ。櫻華はあんなもんじゃない。」
「そうだ。人呼んで「仙術兵器の櫻華」。真の実力はこれからまた見る機会もあるだろうぜ。」「・・そうだね。」

♪とっても寒い北の街 身体も心も凍るほど
♪吹雪の中をさまよう姿 ウェンティゴが探してる
♪人を凍らせ打ち砕き 凍った心臓噛み砕く
♪「凍てつく心」を満たすため 凍てつく心臓 脈を打つ
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