巨神伝説タイタン   作:風雲再起

11 / 12
太平洋上。ゴォォォ・・「航路確認、異常無し。・・自動操縦なのに、やんなくちゃならないんですかね、機長。」「そういう規則だ、
あきらめろ。ちゃんとやっときゃ、何の問題もない。・・おっ、今夜は月がきれいだな。」「ホントですねー。きれいな三日月。」
「なに言ってる、満月だろうが。」「え?・・だって、ほらあれ。」「ん~?・・ええっ?!」「あれ?!・・月が・・ふたつ?」
クワッ!『なっ!』ガクン!♪ビーッビーッ!「操縦・・不能!」「メイデイ、メイデイ!月に・・眼が!」ゴオオオオーッ!・・

アガルタ。「というわけで、消息を絶った旅客機は数十機にのぼる。」「八卦獣のしわざか。」「推測でしかないけど、ほぼ確定ね。」
「月の眼・・『キュクロープスの眼』ですね。」【月の八卦獣。見たことはないが、名前だけは知っておる。】「おかげで世界の空路は
マヒ状態よ。早く事態を収拾しないと。」「敵の位置はつかめないんですか?」「レーダーには映らないらしい。厄介なこった。」
「このアガルタを囮にする手も通じないでしょうな。」「にしても、敵の狙いは?空路を使えなくするだけなら動機が弱いな・・」
「単なるいやがらせ・・いえ、あの綺羅が、そんな陳腐な作戦するわけないわ。」「でも狙いが読めませんね。」「どういうつもりだ?」

飛燕丸。ヒュンヒュンヒュン・・「八卦獣の続報は?」「いや、奇妙にも沈黙を守っておる。」「さすがに獲物がいなくなったかな?」
「ステルスでは捜しようもないですね。」「各国の偵察機も、いまだ発見には至ってないようだしな。」「さて、いかにすべきか・・」
ガクン!『なにっ?』ドオンッ!「うわっ!」ゴオオオオーッ!「・・この揺れは?」カチャ。「操縦櫓、いかがした!」【操縦不能!
何か巨大な力によって引き寄せられています!】「障子を開けろ!」バタン!「・・あれは!」「月?・・いや!」クワッ!「・・目!」
ゴオオオオーッ!「緊急事態!総員、衝撃に備えよ!」「ユーディーは脱出してタイタンたちに報せろ!」「了解しました。」ババッ!
ババババッ!・・「・・飛燕丸が。」ゴオオオオーッ!・・ぴたり。「・・任務、遂行します。ユーディ・ジェット。」グニュ、シャキン。
「ビーコン投入。」シュパッ!・・ドスッ。ゴオオオオーッ!「敵追撃、急速離脱。」キィィーン!・・「・・振り切れず。ならば。」
グン、キィィーン・・ゴオオオーッ!カアッ!グラッ。「太陽による目くらまし成功。飛行要塞アガルタへ急行します。」キィィーン・・

フロリダ。「三牙将、予定どおり確保したわ。」「だがユーディットを逃がしましたね。すぐにタイタン達が駆けつけてくるでしょう。」
「想定内よ。逆に待ち伏せして、アガルタも確保しましょう。」「なるほど。ときに吸収されたものはどうなります?」「閉鎖空間から
逃げることは不可能だが、それだけでは面白くなかろう。内部には抗体が存在する。」『抗体・・』「三牙将、退屈しなくて済みそうね。」

第四十五夜「月光奇譚」 - 八卦獣【月】キュクロープスの眼 登場 -

飛行要塞アガルタ。『警報。未確認飛翔体接近。』「目視画像を。」ぱっ。「あれは・・ユーディット?通信を。」カチャ。「応答せよ
ユーディット。周波数を合わせろ。」【こちらユーディット。緊急事態。着艦を要請します。】「パーミッション・グランテッドよ。」
『着艦デッキ開放。』ズズズズ・・『着艦誘導。ロール-3、ピッチ+2・・そのまま、そのまま。』ゴォォォ・・すたっ。「着艦成功です。」
タタタタ・・「ユーディット、何があった。」「飛燕丸が敵に鹵獲された、と思われます。」『なにっ!』「詳しくは記録映像を。」

『これは・・』「つまり飛燕丸は、あの『眼を持つ月』に吸い込まれた・・のね?」「事実を客観的に綴ればそういうことです。」
「いままでの航空機も、あれにやられたか。」「証言と一致しますね。」「となると・・乗客はあの中に捕らわれてるのでしょうか?」
【だとしたら、迂闊に攻撃できんのう。】「・・人質状態。」「内部の様子を確認できる方法があれば。」「・・エルちゃん達なら?」
はっ!「虚空画聖!その手があったわ!」「空間を支配するエル=ランジェロならば、何か手があるかもしれませぬな。」「わかったぜ。
ならこの足で大阪へ行こう。ユーディット、『眼』の位置はわかるな?」「逃げ際にビーコンを打ち込んでますので可能です。」

大阪・九条南。サラサラ・・ズズズズ。「なに?」「地震かなー?」「このクソ忙しいときに・・空気を読まない地震ね。」「いえ・・
そうじゃない。」ガラッ。ゴゴゴゴゴ!「あれは・・飛行要塞アガルタ?」「わざわざ乗り付けてくるとは、よほどの緊急事態ね。」
ドカドカ。「来たきた。」『ごめんください。』「どうぞ。」バタン。「・・むわっ!」ぷ~ん!『な、なによこの異臭は?!』
「ちょっと修羅場ってて、一週間ほどフロ抜き。」『野郎はともかく、女性でこれは問題ですぞ。』「ファブリーズしましょう。」

「・・というわけで、力を貸してほしい。」「だってさ。・・どーする?」ぼりぼり。「この修羅場で持ち込んでもらってもね~。」
「ぶっちゃけ、かまってるヒマは無いわね。・・けど。」『マキョウ?』「三牙将がいないと、マンガどころじゃなくなるのも事実。
蟻の一穴からでも堤防は崩壊する・・それが皇相手ならなおさら。」「だね。カナタ、タブレット。」「ほいほい。」♪ピッピッ。
「まずはアテナの似顔絵。」サラサラ・・『おお・・』「すごい・・なんて写実力よ。」「これを太陽系画像に置くと・・」さっ。
ススス・・ぴた。「地球・・まだ生きてるんですね!」「まだまだ。今度はグーグルアース。」ススス・・ぴた。「太平洋上か。」
「そこはビーコンの座標と一致します。」「ということは、八卦獣の中、ですか。」「実視野で見てみようか。」くりっ、ぴっ。
『ああっ!』「月・・いや、眼球が!」「さらに拡大・・」グググッ・・くりっ、「魔獣の内部まで?!」「まだまだ入るよー。」
ググググッ・・「いた!」「飛燕丸は健在。他の飛行機は?」「うーん・・見えないわ。」「もし無事にしても、燃料切れのはずです。」
「八卦獣は眼の中に亜空間を内蔵し、そこへ獲物を吸い込むわけか。」「・・中は出口の無い閉じた空間、脱出はまず不可能だね。」
「対象物を吸収するとき亜空間を開ける一瞬があるでしょ、そこが突破口とならない?」「なら吸い込まれるフリをし、その隙を。」
「それほど簡単じゃないわよ。」「もし吸い込まれたらご破算、よしんば何らかの手段で引き出すほど開放時間は長くないだろねー。」
「固定するか、あるいは・・内と外の接点を印して突破口を造るか。」「いずれにせよ、空間を操る技術が必要だな・・」「はあ・・
そうなると予想してたんだ。」「マンガ描ける場所ありますかー?」「リビングを使えばいいぜ。」「ついでにフロも借りましょう・・」

そのころ、閉鎖空間内。ヒュンヒュン・・「どこまで飛んでも出口なし、か。」「それに通信不能だ。」「完全に閉じ込められたわね。」
「下は無限の平地・・いや、ひょっとするとループしているかもしれん。」「これ以上飛んでも無意味、いったん着地しよう。」
ヒュゥゥゥ・・ズズン。「物見を放て。命糸を忘れるな。」【ははっ。】シャシャッ。「私たちも降りてみるか。」「そうね。」
ザッ。「・・まったく起伏が無い。」「風も無し、か。」「でも・・先に吸い込まれた飛行機はどこへいったの?」「・・ここだ。」
『え?』すいっ、ザッ。「よく見てみろ。」「金属?・・ジュラルミン?!」「これは・・指輪でござる!」「じゃあ、ここって!」
「そうだ・・この一面の砂漠が、航空機の残骸だ。」シーン・・「なんと・・では乗客も。」「地獄だわ・・でもなんでこんなことに?」
「わからん。ただ・・」じーっ・・「この空間には、何かがいる。巨大な飛行機をも粉砕する恐るべき何かが・・」『・・・・』

アガルタ内、女湯(あるんかい!)。ザザーッ・・カコーン。「ふぃ~、極楽ゴクラク。」「アパートのユニットバスなんかより断然に
快適だね~。」「・・ちなみに湯気バリアは無し。どのみち小説だし。」ガラガラ。『失礼します。』ぴちゃ。「ん?・・おおっ!」
「リューズさん?」「・・これはこれは。」ザァァァーッ。(かけ湯)チャポ・・「うわ~・・はじめて見た。」「何がですか?」
「なんでここにスケブが無いんだろ~!」「・・まずい。ネタを思いついたのに書けない・・」「えーと・・あれだ!」ザザーッ。
「鏡の曇り?」『それだ!』ザザーッ!キュキュキュッ。「うわ・・すごい精密さ。」「おし!あとは・・」ぐっ、ベリリリッ!
「ええっ?!・・鏡の曇りを!」「虚空画聖をなめんなよと。ところでゴーガは?」「お湯に入るとエスカルゴになってしまうので。」
『失礼・・』カラカラ。ピチャ。『え?・・!』「あらエリスちゃん。・・ん?」『・・・・!』どばぶーっ!(鼻血x3)「え?」
「す、すご・・」「なんてエロおーら・・」「「同性でも鼻血が出るほどの・・」だくだく。「・・ふっ、あまいね。」『?!』
「これでも抑えてるんだよ。本当の姿は・・」すーっ・・『あ・・お・・』「まあ・・」「こんなものだね。」「・・ぶっ!」ドバッ!
「リューズさん、ハルカさんに水シャワーを。」「あ、はい。」シャーッ。「だ、だめ・・これは誰も描けないよ・・」へたっ・・
「文章じゃ表現できないエロ・・いえ、そうじゃない。語彙があれば。」「やめたほうがいいと思うよ。読んだら腎虚になるから。」
「なるほど、こりゃリヴィくんじゃないと無理だわ。」「・・やっぱ亀だけあって強精?」「抜かずの十発くらい定番だよ。」

飛燕丸。「さて、如何にせん。」「事態が動くまで待とう。」「さんせー。むやみにうろちょろするより、果報は寝て待てよ。」
「果報とは限らぬが、まずは賛成でござ・・?」ぴく。『なに?』「しっ・・物見へ伝えよ、総員ただちに撤収。」【ははっ。】
「何事だ、砂風。」「・・音だ。」「音?・・っ!」はっ。ムゥゥゥ・・「・・聞いたこともない音だ。」「風も無いのに・・?」
【こちら物見櫓、一時半の方位より接近するものあり。】「一時半・・あっちか。」「・・雲?」ムゥゥゥ・・「無風で流れる雲があるか。
あれは・・妖かしの類。」「離脱せよ!」ゴバアッ!ヒュンヒュンヒュン・・【未確認物体、さらに接近。】「忍具・双つ眼鏡。」チャッ。
「ただの双眼鏡じゃない。どこが忍具よ。」「胴体は竹製、レンズは水晶磨き出し。加えて測距儀とデジカメも搭載しておる。」キリキリ。
「そんな機能まで手造りで入れたのか。」「そのスジに詳しい若い忍びが、市販のデジカメをバラして仕込んだそうだ。」「今どきの忍者は
ハイテクも必要なのね。」♪ピッ。「静止画像だ。」ぱっ。「カラー液晶か。」「これは・・綿アメ?」「この大きさなら、ジャンボ機すら
呑み込むのは可能だな。」「こやつの仕業か・・」「いわば白血球のようなものかもしれん。侵入した異物を捕らえ、酵素で溶かす。」
「空飛ぶ人喰いアメーバね。とりあえず撒き餌でもやってみる?」「よいのか?」「相手の能力を見定めるためなら、やむをえないわ。
妖獣カプセル。」ぴっ、ぽい。「いでよ、ジャイアント・クロー!」グワアアッ!キャアアアーッ!「な、なんだあの巨鳥は?!」
「むちゃくちゃでかいが、えらく醜悪な化け鳥でござるな。」「アメリカのビデオ屋ならワゴンセールで2ドルよ♪とりあえず攻撃!」
バサバサッ!ドブオッ!「あら、ま。」ギャアアアーッ!シュゥゥゥ・・「ものの十数秒で骨も残らんか。ほぼ予想どおりだな。」
「けっこう強力ね。ここは三十六計?」「その前に、いくつか試してみよう。火龍星矢を射よ。」シュパパパッ!ボオオオーン!
「あ、ちょっと燃えて縮んだかも。」ズォォォ・・「・・ダメだな、すぐに復元する。」「次の手を思いつくまで、時間を稼ごうか。」
『賛成。』「全速前進。全員、交代で休んでおけ。監視のみでよい。」「今のうちにメシも済ましちゃいなさい。いつでも動けるように。」

下忍用大部屋。ガヤガヤ。『・・うちの大将たち、とことん図太いな。』『客観的に絶望的状況なのにな・・』『まあ、あの図太さが
常勝不敗の秘訣なんだろうな。どんな状況でも諦めることを知らず、持てる技量と叡智の限りを尽くして突破口を見出す。これだろう。』
『けど今回ばかりは・・』『外にはユーディット殿もおる。それを信じて、我らは人知を尽くせばよい、御大将たちのように。』
『そうだな、あきらめたらそこでおしまい。だが我ら忍びの辞書に『諦める』という文字は無い。』『メシができたぞー。』オオッ。
ドン。『すぐにかっこめるように、おじやだ。』『これはよい。即座にエネルギーにもなる。』『いただきまーす!』じゅるる~っ!

フロリダ。「あがくわね~。」「あの往生際の悪さが強さの秘訣ですね。」「うむ、実に面白い連中だ。興味深い。」「では逃がします?」
「いや、どこまでやるか見てみたい。」「ということは・・」「抗体を増強する。」さっ。「さて、どう切り抜けるかしら連中は。」

そのころ、アガルタ。『まもなくビーコン元に追いつく。』「実映像を。」ぱっ。「なるほど、ぱっと見は月にしか見えんな。」
「よく見りゃわからなくもないわ。ところでもう一個の目があってもおかしくないんだけど。」「前もその手で苦戦しましたね。」
「案外、そこらで待ち伏せしてるかもしれませんな。」「かといって人質がいるかもしれんから、むやみに攻撃もできないか・・」
『確かめてみようか。』「キャプテン、手があるのか?」『思いついた手がある。エリスくんの手助けが必要だが。』「え?・・」

『艦載機「ナハトムジーク」偵察部隊、発艦。』シュゴオオオーッ!『さて、情報によると月に見えるそうだが・・』ゴォォォ・・
『月齢から本物の月は地平線より下。となると、いま見えればニセモノだな。全機、雲の上に。』キュィィーン・・ズボッ。
『さて、月はどこだ?』・・ゴバアアアッ!『なにいっ?雲の下から!』カアッ!シュゴオオオオーッ!『吸い込まれる!・・だが!』
カシャッ。『ビーコンミサイル!』シュゴオオオーッ!・・ドスッ!『エリス、あとは頼む。』【・・わかった。】ゴォォォーッ・・
「・・三番機、魔獣の内部空間に入ったよ。」「エリスの幽体が乗ってるとは思うまい。」「霊体には空間は関係ありません。ゆえに
閉鎖空間でもモニターは可能です。」「何か見える?」「いいえ・・無限の空、下にどこまでも続く平地だけ・・何も、ない。」
「生命反応は?」「・・無い。ここは死の空間・・ん?」ぴく。「どうした。」「・・巨大な雲、いえ、あれは・・雲じゃない。」
「・・なに?」「わからん。」「雲が襲ってくる・・飛行機が・・溶ける・・」ぱちっ。「幽体が戻りました。」「・・あれは生命体。
呑み込まれたとき、無数の人の叫びが・・あの雲に溶かされ、同化されて・・」ぶるぶる・・「はい、ホットブランデー。」ズズ~。
「吸い込まれた飛行機はその雲にやられたんですね。」「人食い雲か・・」「少なくとも、人質の心配はしなくてよさそうね。」
「なら遠慮なし。キャプテン、とっておきのアレを使え。」『了解。三番VLS発射。』ゴオオオオーッ!・・「ミサイルか。」
「なんか無駄弾っぽいけど。」「それはどうかな?」『目標まであと3、2・・起爆。』カッ!・・ドオオオオーンッ!『あれは?!』
『衝撃波、あと3秒。』・・グラグラッ!「もしや・・核か!」「新兵器・窒素爆弾だ。威力は戦略核、放射能ゼロというスグレモン。」
「ちなみに主要国にも秘密で、口外厳禁の兵器よ♪」ゴォォォ・・『まもなく情報回復・・確認。映像を出す。』ぱっ。「いたいた。」
「さすがに効いたようね。」「とどめてこようか。」「あれならこちらで間に合うぜ。キャプテン。」『ブラスターミサイル発射。』
シュドドドッ!・・ズドズドッ!「刺さった?」「弾頭が鋭い槍状になってて、目標を貫くんだ。そして・・」『起爆。』ボボボッ、
ドガアアアーン!『おおっ!』「弾頭じゃなく胴体部でやや斜め前に偏差爆発し、命中部をごっそりえぐり抜く。」ゴォォォ・・

「むうっ!・・」「睨下?」「・・やりおったな、我が左目を。」「さすがに読まれたわね。」「残るは右目だけ。しかし同じ手は
使えませんね。」「飛燕丸を人質にしてるものね。まあ、これも時間の問題かも。」「いなくなっても、人質の価値は変わりません。」

飛燕丸。【お頭、前方に新たな人喰い雲が現出。】「増援か。」「囲まれたら逃げきれないわね。」「・・砂風、地中潜行できるか?」
「可能だが・・そうか!」「地面に潜っちゃえば食われない!」「ただちに潜行!」【了解。】ドザザザザーッ!「操縦櫓へ行こう。」
ズズズズ・・『潜望鏡深度です。』ガチャッ。「・・ふむ、上空で地団駄踏んでおるわ。」「とりあえず時間は稼げそうだ。空気は?」
「そう長くはもたぬ。ゆえにこれより反撃に移る。」「反撃って、どうすんの?」「武器は周りにいくらでもある。」「なるほど、砂か。」
「忍法、砂嵐!」ヒュンヒュンヒュン!ゴオオオオーッ!ブオオオオーッ!「砂をたんと喰らえ。さすれば・・」ググッ・・ズズーン。
「重くなって浮力が無くなったか。」「でもいずれ砂は排出されるわ。」「ならばこそ。忍法、砂地獄!」ザザザーッ!バリバリバリ!
「砂が・・ヤスリのように!」「無数の弾丸のように高速で当てるか。」「戦車すら数分で欠片も残らぬ、ましてや綿アメごとき。」
ゴォォォ・・「きれいさっぱり砂に還元されたわね。」「まあ一段落か。」「警戒レベルを下げる。見張りは絶やさぬように。」

「あら・・やるわね。」「さすが歴戦の雄、的確な対処です。」「ふふふ・・こうでなくては。さて、タイタンたちはどう動く。」

アガルタ、ラウンジ。カリカリ・・【ターゲット反転、こちらに接近。】「おっ、来たわね。」「静かな環境でだいぶ筆も進んだねー。」
「ちょっと息抜きといきましょうか・・」『虚空画聖、オペルームへ来てくれ。』「了解。・・よっしゃ、行きますか。」すっ。
ドカドカ。「ようやくお座敷?」「あれが皇の眼だねー。」「・・近づく前に始めましょう。」「まずはデッサン。」サラサラ・・
「よし。で、次はベタ塗り。」トン、ボオッ。グラッ。「あ、ゆらいだわ。」「目に黒いものが?」「これで一時的に何も見えないよ。」
「いまのうちに接近よ。」『了解。作戦開始。』『こちらタイタン、ロケットアンカーに取り付く。』がしっ。『いつでもいいぞ。』
「お待ちを。」タタタタ・・『ユーディット?』「同行します。主たちのもとへ。」『よし、俺の下に入れ。』「失礼いたします。」
ゴォォォ・・「もうちょっと・・ここ!」キュイッ、ぽかっ。『開口部照準よし。発射。』シュドッ!ヒュルルル・・『突入角度微調整。』
ググッ・・『やや右上・・ここだ!』ヒュルルル・・ズボッ!「うまい!」「突入成功よ!」「さて、うまく見つけられるといいですが。」

飛燕丸。「・・ん?」ぴく。「どうしたアテナ。」「いま・・わずかに空気がゆらいだ。」「ということは・・」「狼煙を上げろ!」
もくもく・・『ん?・・あそこか!』ゴオオオオーッ。「あれは・・タイタン!」「気づいてくれたわね。」「やはり、来てくれたか。」
ズズーン。『生きてたか!』「ご無事でなによりです。」「ユーディット、大義であった。」「それはあとで。今は急いでこのワイヤーを。」
「うむ、取り付けよ。」ワイワイ。ガチャガチャ。『固定よーし!』「離陸し、待機せよ。」『いいな?合図を送るぞ。』くいくい。

アガルタ。『二度引きの合図あり。』「発見できたのね。」「よし、巻き戻せ。急ぐな、ゆっくりだ。」「穴の維持時間は?」「ざっくり
あと三分くらいかな。」「だいじょうぶ、間に合うよ。」「・・けど、また吸い込まれるかもしれない。」「そこはタイタンにまかせて。」

グングン。「見えたぞ、開口部だ。」「やれやれ、一安心ね。」「助かったぞ、礼を言う。」『もうだいじょうぶだな。じゃ、俺は仕上げを
してくる。』「仕上げだと?」『こいつは外から攻めにくい。ならば』「なるほど、プロメテウスで内側から。」くるっ、ゴオオオーッ・・
『飛燕丸、確認。』「よっしゃ!」「開口部、閉じるわ。」ズズズズ・・「マスターは残りましたね。」「閉鎖空間、破れますかな?」

ゴォォォ・・『さて、やるか。アポロシールド。』ヒュン!ギュラララッ!・・ザクッ!『ルシファー起動。』ヴン。『はぁぁぁ・・』
グォォォォ!『プロメテウス!』ドオオオーン!ばしいいいーん!『シールド裏面で収束させれば!』カッ!・・ピィィィーッ!
『歪んだ空間すら貫く無限の刃となる。さらに!』ググッ・・シュバアアアアーッ!『光圧で角度が変わり、空間をズタズタにする!』

「見て!」・・ズバシャアアアーッ!『おおっ!』「眼の内部から・・閃光が!」「・・プロメテウス。」「動いて切り裂いていきますぞ。」
ザザザザーッ!ピリッ、ばかっ。「真っ二つですね。」『タイタンを確認。』「やった、かな?」『いーや、これでとどめだ!』ビュン!
ビュビュビュン!『燃えろアポロ、太陽のごとく。プロメテウスチャージ!』カッ!ブオオオオオーッ!『おおっ!』「アポロカッターが
炎に包まれた!」『ソーラー・ストライクっ!』ゴオッ!ズバアアアアーン!『もう片割れも!』ビュン!ザシャアッ!『・・爆発っ!』
ドンドンドン!ドガガガガーン!ゴォォォォ・・『戻れ、シールド。』・・ヒュルルルッ、ぱしっ。『キュクロープスの眼、焼滅完了。』

「またしても・・」「八卦獣、よもや半分まで倒されるとは。」「いえ・・想定内ともいえますわ。」『なに?』「勝利条件の定義は?」
「定義?・・タイタン達の殲滅、ですか?」「いいえ。・・ターゲットは一人だけ。」「・・なるほど、そういうことか。さすが綺羅、
そこまで考えておったとは。」「・・もしや。」「そのとおり。タイタンだけ倒せば、あとは烏合の衆。」「・・そうか、プロメテウス。」
「『ルシファー』でのプロメテウスは、タイタン自身にも相当な負荷がかかってるはず。あと四回も戦えば、それは致命的になるわ。」
「八卦獣すら捨て石とは・・改めて、恐ろしい方ですね。」「ならばこそ面白い。よかろう、その方針で進めよう。」「感謝のきわみ。」

「今回は助かった。改めて礼をいう。」「いつも助けられてるんだ、たまにはいいだろう。」「それに最大の功はユーディットよ。彼女が
あらかじめ情報をくれたおかげで、的確な作戦が立てられたし。」「うむ、褒美をやろう。」「何か欲しいものとかある?」「ならば、
OャープのブルーレイとOナソニックのデジタルTV、さらにOマハのデジタル・サウンド・プロジェクターを。」「SONYじゃないのか?」
「保証期限過ぎたら壊れるような、クソOーなんかいりません。」「辛辣ね~。」「わかった、これからアキバへ買いに行こう。」
「虚空画聖もごくろーさん。報酬は現金がいいかい?」「いえ、こちらも現物で欲しいわね。」「ということは?」「描画仕様PCと、
電子タブレットの予備を3台づつ。」「要求ハードスペックは、これに書いておきましたー。」「・・音声入力ソフトもよろしく。」
「ふむふむ・・こりゃ市販じゃ性能不足だな。」「知り合いの日本橋のカスタム屋に組ませるわ。」「日本橋なら近くていいね♪」

♪天を裂き地を割る無数の落雷 人など影すら残らない
♪ベレニケスの髪が揺れるとき いかなるものも打ち砕かれる
♪数億ボルトの地獄の中で 雷鳴を圧する巨神の咆哮
♪『最後の神鳴』が鳴り響く 巨神の宿命を予期するごとく・・


*****************

マンハッタン、アレクサンドラグループビル。ゴロゴロゴロ・・「遠雷か・・荒れそうだな。」「雲が広がってきたわね。雷雨になるかも。」
「今は停電とかあまりしないんだろ?クレオ。」「そうでもないけど、万が一のために、地下に専用の原発があるからだいじょうぶよ。」
「おいおい・・ん?」ぴく。「なに?・・っ!」ガタッ!「感じる・・魔獣だ!」「ナディア、第一級警戒体制。不可視バリア展開!」
『ただちに展開します。』ヴン。「・・くる!」・・シュルルル。「雷雲の中に・・黒い触手?」「いや・・あれは髪だ!」ぎょっ!
「・・八卦獣『雷』、ベレニケスの髪!」ピシャアアアーン!ズババババッ!ドカアアアーン!「雷撃で・・ビルが!」バリバリバリ!
「くっ!・・集中落雷か!」ドカドカーン!「・・まるで戦略爆撃!」『こちらナディア、ものすごい電圧です。バリア限界点まで20秒!』
「原子炉出力アップ!ダメなら予備の核融合炉も投入して。」『けどあれはまだテスト段階で本格稼動経験が』「今使わずにいつ使うの!」
『了解!』バリバリバリ!「・・終わるぞ。」ゴォォォ・・「ひどい・・マンハッタンがズタズタに。」「やってくれたな・・ヤハウェ。」

フロリダ。「・・これほどとはね。」「十数秒で、おしまいでしたね。」「今回の作戦は都市破壊。ならば我がイカズチの髪こそ適任だ。」
「予想よりちょっとすごかったけど、これなら手早く済ませられそうね。」「では続けよう。次の都市は?」「そうね・・ダラスかな。」
「南部最大の都市。人口集中も経済効果も申し分ないですね。」「南部ハブ都市だから、ヒューストンより効果は大きいわ。」「うむ。」

飛行要塞アガルタ。【・・謎の集中落雷でマンハッタンの20%のビルが倒壊しました。死者行方不明者は三万人、重軽傷者は十二万人に・・】
「・・ニューヨークは壊滅状態か。」「高層ビルがあらかた倒壊したため、被害が拡大したのね。」「記録された落雷は数百にのぼる。
キングギドラでもこうはいかんぜ。」「『雷』の八卦獣・・恐るべき破壊力ですね。」「ベレニケスの髪・・見たことはありませんが、
八卦獣の中でも、一二を争う強力な魔獣と聞いたことがあります。」【髪の毛一本一本が、雷の発生器になるそうじゃ。短時間でこれだけの
雷撃を集中して放てるのもうなづけるのう。】「・・その無数の髪を束ねる本体がいるはずだね。」「雲に隠れてるのか、あるいは・・
本体など存在しないか。」「髪の群体魔獣・・可能性はあるわね。」「とにかく現地へ行こう。何か手がかりがつかめるかもしれん。」

第四十六夜「最後の神鳴」 - 八卦獣【雷】ベレニケスの髪 登場 -

アレクサンドラグループビル。「無事だったか、クレオパトラもザ・カートカも。」「うちは、ね・・他は惨憺たるものよ。」ゴォォォ・・
「・・下で見てのとおり、ここは救命センターとなっている。それでも負傷者よりホトケの方が多い。」「ああ・・街路に人影が焼き尽いてた。
誘導雷であっても一瞬で灰になったんだな。」「問題は、次はどこが襲われるかね。」「・・テキサス州ダラス。ほぼ確実ね。」はっ。
「クレオ、どうして?」「ワシントンDC・シカゴ・デトロイトは以前に魔獣の襲撃を受けて大ダメージを被ったわ。となると、近場では
ニューオリンズかダラス。人口規模からいって、私ならダラスを選ぶわね。」「けどニューヨークも、以前に魔獣の攻撃がありましたが。」
「時期の問題よ。あれからだいぶ経ってるし。他の都市はまだ再建中よ。そこでやっても効率は悪いわ。」「なるほど・・ダラスか。」
「僕も同行させてもらおう。・・好きになってきた街をここまでされたんだ、お返しはしなきゃね。」「・・わかった。よろしく頼む。」
「ところで秘密部隊ですけど、さすがに今回も出番なさそうですね。」「いーや、空戦になりそうだから『スペクトラム』を呼んだぜ。
もうアガルタに入って、新装備の準備をしてる。」「新兵器・・ですか?」「精確には兵器じゃないけど、使いではあるはずよ。」

飛燕丸。「というわけで、ダラス上空が決戦場になるようだ。」「ベレニケスの髪・・ギネビア、何か情報は?」「えーとね、いま実家の
電子ライブラリで検索してるんだけど・・あった。」「例によって読めぬが。」「ユーディット、ここ翻訳して。」「わかりました。
『巨大な電力は雷雲と髪の摩擦静電によるものと推測される。すなわち、雷雲が小さければそれに比例し雷撃も弱くなると思われる。』」
「つまり雷雲を無くせば八卦獣の攻撃力は弱る・・か。」「でも雷雲を消すってどうやって?とても人力じゃ」「待て。・・手はある。
ユーディット、『人工降雨』で検索を。」「かしこまりました。」カタカタ・・タン。「ヨウ化銀?だがすぐに大量に準備できるか?」
「その必要はござらぬ。操縦櫓、手近な都市の大きい酒屋へ向かえ。」『了解。』「酒屋?・・何を買う気だ?」「お酒の補給かしら?」

飛行要塞アガルタ。「戻りましたね。」「こちらは準備完了ですよ♪」「新装備と聞いたが、何を?」「・・これだ。」くい。オオッ!
ズォォォ・・「でっかいパラボラ?」【テキサス州立大学で開発した落雷収集システムや。】【あの猛烈な雷を避けるんは不可能。
ならむしろ集めてやろっちゅーアイデアや。】「でも相手は数十億ボルトですよ。パンクするんじゃ?」【むろん溜めたりしないよ。
受けたそばから電磁エネルギーに変換収束して発射するんだよ。】「簡単にいうとマーカライト・ファープです!敵の攻撃が強いほど
電磁ビームの威力は強くなる、あとはどちらが先に倒れるかの勝負です!」「・・テキサスの大学に特撮マニアでもいるのか?」
「『MISTERIEN』というタイトルでビデオ屋にもありますから有名ですよ。」『・・結希?』ぴく。「ひょっとして・・そのスジ?」
「エリス、腕試し。」タッ。「そもさん。」「せっぱ。」「『怪獣王ゴジラ』主演は?」「レイモンド・バー。」「『冷凍凶獣の惨殺』、
原題は?」「『REPTILICUS』。」「『NIGHT OF REPUS』、主役モンスターは?」「巨大ウサギの大群。」「『Orgy of the Dead』、邦題は?」
「『死霊の盆踊り』。」「ジョン・トラボルタのデビュー作は?」「『魔鬼雨』。」「『スクワーム』に関わってた、後の有名監督は?」
「ジェームス・キャメロン。」「『La Noche del terror ciego』、邦題を。」「エルゾンビ。」「・・お見事。」『何で知ってんだ。』

「へえ・・面白いものを作ったね。」はっ!『・・ザ・カートカ!』ザッ!「待てまて、今回はいちおうこっち側だぜ。遺恨があるのは
よく知ってるが。」「・・そういえば、一度力を失ったと聞きました。」「リハビリして、前と同じまでには回復したけどね。」
「大人ですから遺恨とかはさておき、ちょっとリベンジくらいしたいのが正直なとこですね。」「僕はいいが、こっちは困るんじゃ?」
「ならば別の形で勝負しましょう。」【なんかええアイデアあるんか?】「・・あ、いーこと思いつきましたわ。」『シーラさん?』
「ちょっと個室借りれるかしら?ベッド付きの。」「あるにはあるが・・まさか。」「そう、お相撲をちょっと♪」【やっぱり・・】
「?・・よくわからないが。」「ルールはお部屋で説明しますから。ささ、こちらへ♪」カツカツ・・「・・あれでよかったのか?」
「まあ・・穏便な勝負ではありますね。」くすっ。「?・・変わったわね、結希。」「以前にあった陰が、すっかり取れましたね。」
「そういえば先ほどのマニアックな問答も、以前には考えられないことでしたな。」「・・ワゴンセール映画マニアは、高尚な趣味だよ。」
「ところでお二人は何をしに行かれたのでしょうか?お相撲なら土俵ですよね。」「リューズさん、まさか観てたりするんですか?」
「そうなのよ、しかも序二段から全取組。」「そんな前から?」「専用のテレビを買ってやったら、ヒマなときはずっと見てるな。」
「面白いですよ。幕下で上がっていきそうな力士を見立てるとか。」【上のほうより必死さがあって、そこがええんじゃよ。】
「それはともかく、これで雷魔獣との戦いの準備はできたぜ。」「そういや、三牙将は今回は?」「相手が相手だし、お休みじゃない?」

リカーショップ。「いらっしゃいま・・ニンジャ?!」ドカドカ。「これこれこういうものはあるか?」「は、はい、業務用のが。」
「あるだけくれ。下忍、飛燕丸へ運べ。」『ははっ!』「では裏の倉庫へ。」ドカドカ。「ほほう、ここは日本酒もあるのか。」
「オーナーが日本人でして。」「おっ、どぶろくとは珍しい。これをもらおう。」「20ドルです。」「これだけお会計~♪」ガチャガチャ。
「ギネビア、そんなに買うのか?」「ウイスキーにラムにウォッカ。アクアビットにアブサンもあるのか。」「なかなかの品揃えだもん。」
「むう・・者ども、運び終えたら好きな酒を買え。」『コロナビール!』『チンタオビール!』「バドやクワーズじゃなく、そっちか。」
「私も買います。・・スピリタスで。」『なに?』「それはまた・・」「度数96、世界最強のお酒よ。」「まんまアルコールでござるな。」
「やめとけ。一口で酔うぞ。」「試してみます。ショットグラスを。」カリッ、トロ・・「・・なんかトロっとしてるんですけど。」
「少しなので皆さんも。」「ホントにちょっとだな・・」「一口どころか一舐めだな。」「このくらいならだいじょうぶでしょ。では。」
くい。『・・ぶはああああーっ!』「ゲホゲホ!・・ノドが焼ける!」「これほど強烈とは・・水!」「ゲホゲホ!こ、こっちにもお水!」
「?・・皆さんいかがしました?」『ユーディット?』「・・だいじょうぶ、なのか?」「特には。喉ごしのいい、おいしいお酒です。」
ババン!『ホールドアップ!・・ニンジャ?』「ん?・・なんだ強盗か。」「アメリカじゃ日常風景よね~。」「砂風、適当に。」
「うむ。砂牢。」ザザザーッ!『ホワット?!』ギシイッ!『!・・!・・』「削岩機でないと壊せん。ポリスに助けてもらえ。」
「オヤジ、チェックプリーズよ。」「あ、はい。3220ドルです。」ポン。「四千ドルある。釣りはとっとけ。」「お、多すぎます。」
「ならツマミももらっておこうかしら。これとこれと・・」「ギネビア様、燻製オイスター缶も。」どさどさ。「さすがにイカ割きと
柿ピーは無いか。」「アンチョビも入れておいてくれ。」「こんなもんかな?」どっさり。「会計はけっこうです。またのお越しを。」

ダラス上空。「キャプテン、不審な雷雲は?」『まだ見当たらない。』「追い越したか、それとも・・」「待ち伏せしてるかもね。」
「エリス、感知できない?」「やってみる。・・?!」ぴく。「あそこ。」『え?』「・・市街地だと?」「潜んでる・・ビルの中に。」
「映像ズーム・・どのビルかわかるか?」「ん~・・これ。」ぴっ。「・・旧教科書倉庫博物館?」「あのケネディ暗殺事件で有名な?」
「さて・・どうする?」「その一、ビルごとミサイルで吹き飛ばす。」「それで魔獣がくたばる保証は無いですな。むしろ喜んで市街地を
破壊にかかるでしょう。」「その二、今のうちに周辺住民を避難させる。」「八卦獣は知能が高いので、避難命令が出ればそれと気づいて
暴れ出します。」「その三、どうにかしてビル内で倒す。」「魔獣との屋内戦ですか・・」「よしんばそれでダメでも住民避難の時間稼ぎ
にはなるかもしれんな。」【その手しか無さそうじゃのう。】「よし、それでいこう。俺たちが降りるから避難の手配を頼む。」

「その任務、ぜひ私たちに。」ザッ。「スペクトラム?」「そういう仕事こそ私たちの担当です。」【アガルタのお手伝いだけやと
不満やったしな。】【やっぱ地に足ついた仕事がええわな~。】「・・魔獣を倒せないまでも、時間稼ぎくらいなら何とかなる。」
【対電撃用バリアが無いと、一瞬で灰になっちゃうしね。】「歴史ある舞台での陽動戦・・まさに燃えるシチュエーションです!」
「わかった。俺たちは外で魔獣を迎え撃つ。」「無理はしちゃダメよ。みんな生きて戻ることだけが唯一の勝利条件だと思って。」

「・・あ、シーラさん忘れてた。」【どうなったんかいな?】【二人とも使いもんにならんかったり。】「そうでもないですよ。」
ツカツカ。「元気・・そうだな。」「もちろん♪充填バッチリです。」「で、ザ・カートカは?」カツカツ・・「・・ふぅ、負けた。」
【負けたって?】「四勝三敗で勝ち越しです。」「えーと・・ご苦労さん。」「で、敵地に乗り込むなら、僕も同行しよう。」
「ダーリンがいれば生還率はグンと上がりますわ。」【ダーリン?!】「戻ったら、次は別の決まり手を試しましょ♪」「あ、ああ。」
「たく、悲壮感ぶちこわしじゃないですか。」「・・まあ、このほうが運も向くかもね。」ぎょっ。「・・やっぱり、変わってる。」

フロリダ。「・・あら、期待どおり来てくれるみたい。」「超能力戦隊の皆さんですね。適任かと。」「さて、いかにする?適当に
遊ぶか、それとも。」「全力で殺りましょう。手加減はお客様に失礼にあたります。」「いかにも。相手も覚悟のうえで来るはずです。」
「なるほど・・人間も捨てたものではないな。」「そう、神をも凌駕する潜在力があります。」「ならばこそ、人間は面白い。」

ダウンタウン、旧教科書倉庫博物館。ゴォォォ・・「・・人がいない。」「有数の観光地のはずですけど・・やはり。」「気配は?」
「・・無い。うまく潜んでるみたい。」【入ってみなきゃわからんちゅーこっちゃな。】【電気イスに座るようでイヤやけどな。】
「罠なら噛み破るまでです!」【いざとなったら、団体さん三途の川へご案内かな?】「縁起でもないね・・とにかく入ろう。」ザッ。
ギィィ・・カツッ。シーン・・「・・どう読む?」「・・六階の東南の角の窓へ行こう。仕掛けるならそこだろう。」「そのココロは?」
【狙撃者がおったといわれるところやな。】【まあオズワルドやないのは確かやが。】「もし敵が演出に凝るなら、間違いなくそこですね。」
【もし綺羅とやらが一枚噛んでるなら、確定だね。】「急ぐ必要はないさ、ゆっくり行こう。」「賛成。焦ってどうなるものでもないし。」
『?!』(・・結希はん、ホンマに変わったな。)(人は成長するもんやな~。)「・・ファム、ニーコ、まる聞こえよ♪」ぎくうっ!

カツカツ・・「しかし旧教科書倉庫博物館とはよく考えたね。ここはアメリカの歴史遺産に等しい、ぶっ壊せば国際問題になるよ。」
「魔獣が壊すぶんにはともかく、こっちが壊せば、ね。」「ならば、そうしましょ♪その方がラクチンです。」【コワいことサラッとまあ。】
【やけど、そうでもせなこっちが不利やね。」「・・魔獣はビルと同化していると思ったほうがいいな。」【見ためはわからないけど、
壁の裏とかにウジャウジャいそうだね。】「ヤブヘビになりそうだから、壁壊したりはまだやめときます。」「・・六階だ。」カツッ。
シーン・・「東南の角・・あそこね。」カツカツ・・ぴたっ。はっ。「・・動いた。」バリバリバリ!「やはり電気処刑室ですね。」
【想定内やな。ウチらは念動フィールドで絶縁しとる。】【それでもかなりの電圧やな~。一瞬で灰になるわ。】「こんなもので済むはずが
ないとは思うけどね。」ボコボコッ!シュルルル!「・・髪で直接攻撃に移ったか。」ばしいいいーん!【物理攻撃も防いじゃうけどね。】
「結希、そろそろやる?」「魔獣を確認した以上、このビルは『魔獣のせいで』壊れる。・・みんな、耐ショック体勢へ。」キィィィ・・
「ザ・カートカ、これこれこういうことできる?」ひそひそ。「・・ほう、その手があったか。やってみよう。」キン。「レプリション
フィールド展開・・ビルだけを空間隔離成功。」「これで周辺被害は出ません。はぁぁぁ・・」ズズズズ・・「・・この巨大なパワーは?
しかも完全にコントロールしてる。」「結希の制御レベルは今や究極にまで上がってます。」・・ギン!くい。「サイコ・バースト。」

フロリダ。どおおおおおーん!『おおっ!』「ビルだけを粉砕?まさかこんな手を!」「これは・・ここまで制御できるとは。」
「ほう・・さしもの綺羅も、見立てを誤ることがあるか。これは面白い。」「髪の損傷は?」「半分はやられたが、残りはどうにか
脱出に成功したようだ。じゅうぶん戦える。」「・・こ、これからが本番ですよ。」ちらっ。(・・綺羅の動揺は初めて見ました。)

飛行要塞アガルタ。・・シュン。『おっ?!』「テレポートで戻ったのね。」「魔獣のいぶり出し成功です。」「見てました。あわてて
上空に逃げたのも。」ゴロゴロ・・「さっそく雷雲を発生させてるな。」『これは・・スーパーセルなんてレベルじゃないぞ。』
「さすが八卦獣というとこですね。」【では、ワシらも出ようかの。】「俺・リヴィ・リューズ・魅霊で行こう。」「はい!」ダッ!
【戦闘機部隊も忘れないよーに。】キュッ。「主砲座に行きます。」タッ。「レナ、私たちは対抗策の準備をしましょ。」「うん。」
【ウチらは無摩擦ミサイル管制や。】【当てる相手がおったらな。】トトッ。「・・私はレーダーと通信だね。」「カミナリはマーカライト・
ファープが引き受けるぜ。」「その管制、僕がやろう。オーバーロードのときは何とかする。」「わかった。頼むぞ、ザ・カートカ。」

『出撃!』ゴオオオーッ!『タイタン、雲内へ突入しますか?』『いや待て、アガルタの援護を待とう・・来た。』ズズズズ・・ガコン。
【電荷上昇・・来るよ。】ピシャアアアーン!バリバリバリ!「すごい・・あれだけの落雷が全てパラボラに吸収されてます!」
【帯電量2.4億ボルト。収束反転開始。掃射角3度。】ピィィィ・・シュバアアアーッ!『おおっ!』ズバシャアアアーッ!ブツブツッ!
【よっしゃ!髪の毛がぶち切られてるよ!】『いまのうちだ、雷雲に突っ込むぞ!』【露払いをするよ。全機、ナパーム空雷一斉射!】
シュドドドドッ!・・カッ!ドドドドーン!『すごい・・火の海に!』『行くぞ!』『はい!』【いよいよ決戦じゃ!】ゴオオオーッ!

アガルタ。バリバリバリ!「これは・・まずいな。マーカライト・ファープ、電極許容限界まで20秒。」『もうか?なんて雷撃パワーだ。』
「こちらで援護しますわ。レナ。」「うん。スピリット・コーティング。」「ベクトル制御。浮遊防壁バキュラ、放出。」ヒュヒュッ。
バリバリバリ!パリパリィィーン!「砕けるそばから補給です♪」ヒュヒュッ。「これで少しは電極への負担が減らせるだろう。」
「サイコバスターカノン、掃射!」ズドオオオーン!ボシュボシュッ!「こちらでも髪を減らして牽制します。」「感謝するよ。むろん
僕も見てるだけはしない・・」キィィィ・・キン。「パラボラ面をサイコ・コーティングで強化した。」「・・それも使えるのか。」

雷雲内。ゴォォォ・・『魔獣はどこだ?』『雲が大きすぎて見つかりません。』『こう視界が悪くては困りますね。』【こちらレナ隊長。
いま雷雲を包囲して、各機のレーダー情報をアガルタで総合してるからちょっと待ってて。】【なるほど、三次元探査じゃな。】
【結果が出たぜ。レナ、ポイント頼むぜ。】【ラジャー。全機、目標方位へ最大絞り・距離重視で荷電粒子砲を照射。】ピィィィーッ。
『複数の光線が見えます。』『荷電粒子砲をレーザーポインターにしたか。』『敵中枢は、あの光線が収束するところですね。』
シュルルル・・【いかん、髪じゃ!】『攻撃目標を俺たちに変えたか。』ピシャアアアーン!『アポロシールド!』ズババババッ!
『重鱗粉防御!』バサバサッ!キラキラ・・バリバリバリ!『電圧が強大すぎて、長くは保ちません!』【なんという底知れぬパワーじゃ!】

【援護するよ。全機、アタック!】キィィーン!『雲内は地獄だぞ。』【んなこたわーってる。空中分解なんのその!】ガクガクッ!
【んなろ!このくらいの乱気流で・・はっ?!】シュルルル・・【タリホー、ブレイク!】ギュィィーン!ズババババッ!ドカドカーン!
【ちっ、スリーダウンか!ぶちコロす!】グン!【荷電粒子砲!】シュバアアアーッ!ズバアッ!【キル!・・ん?】シュルルル・・
【アホ、二度も不意をつかれるか。三番機!】シュバアアアーッ!バシイッ!【編隊はこう使うんだよ。全機、スパイラルフォーメション。】
キュィィーン!【目標ポイントに一斉射!】シュババババッ!ズバシャアアアーッ!『おおっ!巨大なビーム束が!』『髪を切り払って
いきます!』「さすがレナ、見事な収束砲撃です!」『これで敵中枢へ行けます。』【しかし、あいかわらず雲がジャマじゃのう。】

ヒラヒラ・・『ん?・・雪?』『積乱雲の中です、珍しくはないかと。』・・ドオンッ!『きゃっ!』【な、なんじゃ今のショックは?!】
ゴオオオオーッ!「・・強い下降気流?これは雷雲が崩れる兆候です!」『どういうことだ?』「こういうことだ。」『なに?』くい。
ヒュンヒュンヒュン・・『飛燕丸?』シュゥゥ・・『何かを撒いてる?』「液化二酸化炭素でござる。」ザッ。「雲の上層を冷却すれば、
凝結した水分は落下する。すなわち、積乱雲は維持できなくなる。」「エネルギー源である雷雲を失えば、あとはただの毛羽毛現よ。」
ゴォォォ・・『雲が・・晴れます。』【・・おったぞ!】シュルルル・・「まさに毛むくじゃらのカタマリですね。」バリバリバリ!
『まだ電荷は残っているが、さほどではない。仕留めるぞ!』ゴオオオオーッ!「切り払います。晶結せよ、氷盤!」パリパリパリ・・
「ジャイアント・カッター!」シュバッ!ズバシャアアアアーッ!『走れアポロカッター!』ギャリリリッ!ズババババッ!
『ドリルは毛が絡むと厄介なので』【アレでいくかのう。】キィィ・・『スパイラル・バスター!』キュドオオオーン!バシャシャシャッ!
「こちらも散髪に行くか。ユーディット!」ババッ!「紙飛行機モード変型します。」グニュ、シャキーン!すたっ。ヒュオオオオーッ。
「自在剣『龍馬』、刃龍天舞!」ギュラララッ!ズババババーッ!「飛燕丸、突撃。烈風旋刃!」キュィィィーン!ザバザバザバッ!
「召喚、ヴァーミスラックス・ペジョラティヴ!」キン!・・ズオオオオッ!キュオオオーッ!バサアッ!「おお、ワイバーンか!」
「ただのレッサーじゃないわよ。エルダードラゴンに次ぐ第四階位に属するハイドラゴン。放て、滅びの火球!」グワアッ!・・カッ!
ボオオオオーンッ!「ぬおっ!」ゴオオオーッ・・・ズドオオオオーン!メラメラメラ!「なんと・・広大な空域を火の海に!」

飛行要塞アガルタ。『作戦は順調だ。』「そのうちパーマになっちまうか?」「せめて三分刈りにはしたいとこね。」「・・いえ、まだ。
魔獣の力はほとんど衰えてないよ。」「なに?」「・・あっ!」シュルルル・・「髪が・・伸びる?!」「これじゃキリがねえぜ。」
『どうやら中枢自体を破壊せぬかぎり髪は無限のようだな。』『それについては案があります。』「結希?」「ザ・カートカ、そちらの
マーカライト・ファープに、あなたのサイコトルネードのパワーを上乗せできる?」「たぶん可能だ。・・なるほど、その手があるか。」
「そう、私のサイコバスターキャノンと同時攻撃すれば。」「二人のサイキックパワーを収束させるんだな。キャプテン、機体を二人が
狙いやすい位置へ。」『了解だ。』「この配線から注入すれば・・準備いいよ。」「戦闘空域の全機へ。これから最大出力攻撃をかけるので
ただちに退避してください。ヘタすると核爆発級の影響が出ます。」【了解だ。リヴィ、リューズ、魅霊。アガルタの影へ下がるぞ。】
【飛燕丸、上昇せよ。アテナも戻ってこい。】『私とレナで、バキュラでアガルタを保護しますわ。』【アガルタ表面摩擦消去や。】
【これで爆風食ろうてもダメージ減らせまっせ。】「作戦準備完了。カウント3、マーク。」「マーク。3!」「2!」『1!』
ズドオオオオーン!シュバアアアアアーッ!「射線を・・ひとつに!」ググッ!「ものすごい反撥力だ・・だがこれならば!」ググ・・
ギュオオオオーッ!『おおっ!』『二つの射線が・・らせん状に!』ギュララララッ!・・ズボオオオーン!「貫通!」「いえ、まだ!」
「穴を開けたくらいじゃ滅びない・・ねじれた射線が戻る反作用で!」「位相逆転!はああああーっ!」ギギギ・・バチィッ!ビュルルルッ!
「これは・・二本の射線が回りながら魔獣を内側から灼き尽くしていく!」「空域自体を素粒子分解するようなものね・・なんて光景。」
ギュオオオオーッ!・・ゴォォォ・・『・・終わりました。』【・・魔獣反応消滅。完全に滅んだよ。】「まさに跡形も無いでござるな。」

フロリダ。「完敗、ですね。」「く・・」「ああまで袋叩きにされれば、いかに我が髪とて、たまるものではない。にしても、だ・・」
「何か?」「・・少し人間を見直した。タイタン達を考慮しても、ここまで戦えるとは予想外だった。そして・・綺羅。」ぎろっ。
「?!・・」「俺を利用するのはかまわんが、そろそろ自分でも動いてもらおうか。どうだ、ジークハイル?」「よき案かと。」
「・・どうしろと?」「我が『耳』を有効に使ってほしい。方法は任せる。」「成果を期待しますよ、名軍師どの。」「・・・・」


第四十五夜~第四十九夜

「はぁっ、はぁっ、勝った・・っ?!」グッ・・バシャアッ!『結希?!』「あ・・あ・・」ブシャアアアーッ!『全身から出血だと!』

「いけません!パワー出力が肉体限界を超えてたのね!」ズダダァッ!「急げ!」ドカドカ!「結希!」ピクッ、ピクッ・・【危篤状態や!】

【あかん、全身の筋肉がズタズタになっとる!ヒーリングくらいじゃどうにもならん!】「心音が・・落ちてる。今にも止まりそうです!」

【死んじゃう、結希が死んじゃうよ!】「心臓マッサージだ!AEDとカンフル持ってこい!」バタバタ!「ああ・・止まらないで!」

「・・ボクに任せろ。」すっ。『ザ・カートカ?』ぴた。「最大出力。」ギュオオオオーッ!「・・大量のサイコエネルギーを?」

「そうか!枯渇した結希の体内炉に再び息吹を!」カアッ!『おおっ!』「結希の身体から光が?」【体内炉が再動したんや!】

すっ。「これでいい・・あとは自己修復される。」フラッ・・「おっと。」はしっ。「ふう・・七鎧聖でもきつい手術だったよ。」

「ご苦労さます。ベッドでゆっくりお休みくださいませ。」「え?・・まさか。」「むろん、誠心こめてお伽いたしますわ♪」ズルズル・・

「・・ん。」ぱちっ。『結希!』「ふう・・三途の川のほとりまで行ってたわ。」「無理しすぎよ!」「いや、いけると思ったんだけど、

ちょっと身体造りが足りなかったみたい。魅霊、自主トレにつきあわせて。」「・・ホント、変わったね。いつの間にこんな大バカに!」

【やれやれ、心配してちょっと損したよーな。】【まあ、これはこれでえーんちゃうか?】【ホンマやねー。笑う門には福来たるや。】

 

その夜、ダラス市内のステーキハウス。ドン!『おおっ!』「結希はスタミナつけなきゃな。1ポンドのサーロインだ。おごるぜ。」

「うわ~・・こんなでっかいの初めて見た。」「付け合わせのベークドポテトが、またでかい・・」【サラダはボールで一人前?!】

「・・ソースは?」「アメリカにあるのは、このくそまずい二種のソースだけよ。」「あっ、そうだ。砂風さんに分けてもらった

忍び醤油がここにあります。」「あ、それがいい。」トクトク・・「では・・いただきます。」ゴリゴリ!「かったぁ~っ、切りにくい!」

「それはコツがあって、肉の筋と平行にすれば・・そう、そうです。」ばく。「・・かひゃくて、くぁみひれな~ひ!」「ちょっとづつ

食べないとアゴがもたないわよ。」「うむ、このハワイアンステーキはうまいな。」「パイナップルソースでマリネにしてあるのね。」

「このシーザースサラダ、おいしいです。」『ホウレン草にワインビネガーと粉チーズとアンチョビだけとは、素朴じゃがうまいわい。】

「・・追加注文。1ポンドのブルズアイ、レアで。」『エリス?』「もう1ポンドのリブステーキ食っちまったのか?」「・・半分骨だし。」

 

そのころ飛燕丸。ワイワイ!「二酸化炭素が余ったのでビアホールにしました。」シュバーッ。「うむ、よい泡立ちである。」ぐいっ。

「さすが生ビール、うまい。」「つまみもいっぱいあるわよ。」『ほう、燻製オイスターとはうまいものだな。』『いやいや、ビーフ

ジャーキーもスルメイカみたいでなかなか。』『なんの、アンチョビの臭さに勝るものなし!』『お館さま、柿ピーをどうぞ。』

「おお、持ってきておったか!」『滞在組のリク多かったんで、いっぱい買ってきてます。』ボリボリ。「うむ、これでなくては。」

「プレッツェルじゃダメなの?」「何というか・・この辛さが足りぬ。」「わからんでもないが・・ちょっとくれ。」ボリボリ。

 

数日後、ニューヨーク。「・・で、たっぷり可愛がられてきたわけね。」「面目ない。あの押しには勝てなかった。」「ま、シーラだしね。

少なくとも浮気の対象とは認識しないけど・・」「・・なんだ?」「いっぱい教育されたんでしょ?ならその成果を見せてもらおっかな~♪」

「成果って・・」「ナディア、緊急以外は取り次がないでね。」【了解しました。ごゆっくり♪】「さってと・・まずはどうしよっかな?」

「待てまて、これ以上は十八禁だよ!」「ん?・・あ、そーか。カメラ回ってた。ここから大人のじ・か・ん♪」ゴソゴソ・・ブツッ。・・

 

♪王様の耳はロバの耳 誰にもそれは聞こえない

♪音がどんどん消えてゆく マイダスの耳の静かな侵略

♪歌も声も聞こえない 静寂ゆえに滅びゆく街

♪「沈黙の地獄」に綺羅の笑いも・・聞こぇ・・

 

**************

 

マラッカ海峡。大型船が行き交う大動脈路だが、航路がきわめて狭く、特にシンガポール付近では幅数km・水深20mほどしかない難所である・・

♪ボォォォ~ッ。「今日は霧が濃いな・・」「船長、まもなくフィリップス水路です。」「ソナーを発信。シンガポール海峡管制センターとの

連絡を絶やすな。少しでも航路を外れたら、座礁か衝突だぞ。」「いまどきはGPSで数m単位でわかりますよ。」「これだけの大型船だと、少しの

ずれでもあっという間に数kmだ。」『こちら管制センター。船番2366、航路+0.3修正されたし。』「了解。面舵当て。」「よーそろ。面舵当て。」

ザザザザ・・「対向船、いまだ目視できず。」「レーダーは?」「見えてます。針路300・距離2000。」「水深。」「33m。」「まだ余裕あるか。」

「・・えっ?!」「どうした?」「レーダーロスト!」「なにいっ?故障か!」「いえ、発信はしてますが、反射波が!」「・・ソナーロスト!」

「ソナーまでも?!」「ありえん、同時に壊れるなど!とにかく停止だ、警告汽笛を鳴らせ!」「海峡管制センター、応答せよ!」ジジジジ・・

「?・・通信途絶!」「こんなことが?・・警告汽笛は!」「鳴らしてます!・・えっ?」シーン・・「汽笛まで・・いったい何が?!」

「信号弾をあるだけ打ち上げろ!クルーは発光信号を持って全周を照らせ!」ドカドカ!ぱぱっ。「・・何も見えない。」「耳をすませ。

航行音でも聴こえれ・・?!」ぬうっ!ドガアアアアーン!バリバリバリ!『うわあああっ!』「ば・・バカな?何も聞こえなかったのに!」

「総員退避!警報を!」カチッ。「?!・・鳴らない!」「そんな?!伝令だ!急いで・・』『総員退避・・】【逃げ・・】シーン・・

 

近くの海岸。「うまくいったようね。さて、次の仕掛けをしましょうか。」・・ゴオオオーッ!「ご苦労さま『マイダスの耳』。お戻り。」

シュゥゥゥ・・ぽとっ。「ちょっとお休みしたら、また働いてもらうから。今回こそ仕留めなきゃ、こっちの身が危ないものね・・よし。」

♪ピッ。「こちら綺羅、オベロン応答せよ。」『こちらオベロン、受信良好。』「例の部隊を派遣して。」『ただちに出動準備にかかります。』

「これでよしと。八卦獣だけじゃ心配だものね・・でしょ?アルベリッヒ。」【・・気づいておられたか。」ボオッ。「お目付け役くらいは

覚悟してたから。そちらも秘密部隊や三牙将とやりあいたいんでしょ。」「忍びは主の命に従うのみ。いくさも然り、主の命なればこそ。」

「・・ねえ、こっちにつかない?向こうより契約条件上げるから。」「現雇い主が契約条件を守るかぎり、我らも背かぬ。それが忍びの掟。」

「ゆってみただけよ。・・ところで聞いた話だけど、妹の櫻華と寝たって?」「う・・うむ。」「そっか~。・・姉も味わってみない?」ふっ。

「・・篭絡する気か。」「このくらいでオチるタマでもないでしょ。ま、軽くタイマン勝負ってことで・・」すいっ・・「・・わかった。」

 

フロリダ。【・・マラッカ海峡で続発した衝突事故は十数件におよび、数百人の死傷者が出ました。原因は濃霧によるものと思われ・・】

「綺羅め、面白いところに目をつける。」「レーダーもソナーも基本は波、音波と同じ運命ですね。さすが綺羅、見事な作戦です。」

「だが大神官、単なる事故ではタイタン達は食いつかぬのでは?」「そこはぬかりはないようです。」【・・生存者の証言によると、突然

あらゆる計器が異常を起こしたそうです。対象はレーダー・ソナー・通信、さらに汽笛まで。GPSすら受信不能になったとの証言も・・】

「なるほど。目付からの報告は?」「第二次作戦の準備中とのことです。あと綺羅がアルベリッヒの懐柔工作にかかったと隠し目付から。」

「隠し目付まで準備しておったか。」「アルベリッヒも承知です。むろん誰かは知りません。」「ということは・・」「どう転んでも、です。」

「さすが大神官、そこまで読んでおるか。」「有能な奸臣は排除するより、こちらの意に沿うよう踊らせる。むろん、そうと気づかせずに。」

 

飛行要塞アガルタ。「電波妨害・・かしら?」「そんなことできる八卦獣がいるとは思えませんが。」「そもそも電子戦なぞ太古にあろうはずも

ございません。」「リューズ、心当たりは?」「残る八卦獣は『風』『水』『天』ですが、そんな能力は聞いたことがありませんね・・」

【『雷』なら空電障害くらい起こせるじゃろうが、こないだ倒したばかりじゃしのう。】「敵の能力を事前に把握してないと苦戦するぜ。」

「試しに、残りの魔獣の情報を聞かせてくれないか?何かヒントがあるかもしれん。」「わかりました。まず『風』ですが、部位でいうと耳に

当たります。」「耳って・・この耳?」「はい。『マイダスの耳』は、文字通り音を司る魔獣です。破壊音波を発したり、広範囲の音を全て

食べたり」「ちょっと待って。・・音を食べる?」「どういう原理かは知りませんが、その範囲内では、あらゆる音が聞こえなくなります。」

「細かい質問だが、それは隣で会話してもか?」【知ってるかぎりでは、くっついてやっと聞こえるようじゃ。】「・・接触通信は可能、か。」

「ん~・・こーゆーとき、専門家がいればいいんですが。」「音・・あ、ガイアライブの朋ちゃんなら、音響の専門家じゃないかしら。」

『それだ!』「さっそく連絡するぜ。」♪ピピッ。【・・はい、もしもし。】「フォーレス、朋に代わってくれ。聞きたいことがある。」

【はい、代わりましたです。】「かくかくしかじかだが、何かわかるか?」【『風』の八卦獣の仕業ですねー。音を食べるというのは、

すなわち音の伝播を止めてしまうと解釈できますです。】「音の伝播・・空気や水ですね。」「でも音波と電波は本質的に違うはずですが。」

【ここからは推測ですが、音の伝播を止められた空域自体が電波障害物となるのではないでしょうか。例えば空気の壁があるように。】

「けど古代には電波なんかありませんでしたから、そんな副作用がわかるとは・・あ。」【綺羅じゃな。その作用に気づいたか。】

「・・質問。念波は通じるの?」【わかりませんです。念波が電波の一種ならダメですが、それを超えるものなら通じるかも、としか。】

「テレパシー通信は今回はアテにできないかもね。」「かといって通信機は論外だぜ。」「シンガポールで『無幻』と合流するわ。忍者なら

何かいい手もあるんじゃない。」「だな。・・助かったぜ、ありがとさん。」【お役に立てればよかったですー。では。】プツッ。

『まもなくシンガポールに到着。』・・チリッ。ぴく。(・・あんた、なに?)(感じた・・今回は綺羅自身が出張ってきてる。)

(あらあら、ケツに火でもついたのかしら。)(そんなとこだろ。・・クレオに連絡を。)(わかったわ。・・もちろん「彼女」もね。)

 

第四十七夜「沈黙の地獄」 - 八卦獣【風】マイダスの耳 登場 -

 

その頃アメリカ・ニューヨーク。「・・状況了解したわ。では。」♪ピッ。「いよいよ綺羅狩りね・・」「だが綺羅は強力だ。対抗策は?」

「ナディア。」『御側に。』はっ。・・ボオッ。「見るのは初めてだっけ。彼女が私の懐刀、ナディア。」「今まで声だけでしたね。」

「・・ニンジャか?」「そう思ってもらっていいです。」「聞いてのとおり、引導を渡してきて。」「ただちにシンガポールへ飛びます。」

「だが今からでは間に合わないのでは?」「ナディアに距離も時間も無意味よ。」「では・・】フッ・・「消えた・・気配も残さずに。」

「もう行ったわ、シンガポールへ。」「??・・だが今までそこに。」「いた・・のかな?」うっ・・「この目で・・」「見えるものが

存在するとは限らない。『いたように見えた』のかも。」「・・どういう意味だ?」「見えるけどいない・・それが『白昼夢』よ。」

 

忍空挺・飛燕丸。「根来流ブロックサインは以上でござる。」「あーでこーで・・たぶんおぼえた。」「コミュニケーションができないと

命にかかわるからな。」「ではテストでござる。」ぱん!に。まる。さっ。「パンツ丸見え、ですね。」すぱあああーん!「遊ぶな!」

「『マイダスの耳』の能力は無音・電波障害地帯を作るだけじゃないわ。全てを砕く破壊音こそ強力な武器よ。」「かつての音波魔獣以上か。」

「市街地でやられると大惨事だな。発生を阻止する方法が必要だ。」「単純に考えると耳栓、ですね。」「そりゃ単純すぎるわよ。」

「いや待て。・・それは案外いい手かもしれん。」『アテナ?』「ユーディ、こういうものを作ってくれ。しかも大量に。」サラサラ。

「材料と作り方・・了解しました。」「砂風、こういうものはできるか?」ヒソヒソ・・「ふむふむ・・簡単でござる。すぐにかかろう。」

「アテナ、何する気?」「使い古された手だが、むしろ却って効果的かもしれん。まさしく耳栓をしてやるのさ。」「耳栓・・ねえ?」

 

シンガポール市街地。「音の伝わらない状況での通信なら、いい手がありますよ。」「あるのか、蘭。」「ベルさん、標準のインカムを。」

「これ?」カチャカチャ。・・「受信回路のここに・・街さん、紫雲を。」「これかい?」ピーッ。「・・糸?」「伊賀忍具・紫雲。

サブミクロンの単分子糸です。」「そんなものまで作れるの?」「時代の最先端技術を常に導入しないと、忍者なんてやってられません。」

ぴっ。「これで糸を伝わった震動が音声に変換されます。」「じゃあ試してみるわ。」カツカツ・・ザザッ。『聞こえます?どーぞ。』

「きわめてクリアー。どうぞ。」「実験成功。これを皆のインカムに繋げば通信の問題はクリアです。」「さすが科学忍者だな・・」

「紫雲は何kmでも伸びるし、少々のことでは切れたり絡んだりしません。」「このインカムは骨振動式なので、声にせずとも声帯の振動で

骨を介して送受信ができるぜ。」「これで通信の心配は消えたな。さて、次は・・敵がどう動くかだが。」「音と無線を遮断したところで、

たいした被害は起こせないわよね?」「交通信号は対象外ですしね。困るのは飛行機くらいですか。」「それだって口実つけて空港閉鎖すれば

問題にならんぜ。実際そうしたし。」「海峡も昨日の大事故で閉鎖中ですな。」「あとは音波攻撃による破壊くらいですけど、綺羅がそんな

単純な手を使うとは思えません。」【そういった美学には拘る方じゃからの。】「・・本当に、たいした被害にならないのでしょうか?」

「彩、どういう意味だ?」「現在は無線通信を中心に回ってます。もしそれが突然断たれたら・・?!」はっ!「・・あれは?!」

モクモク・・「・・爆発?」「行ってみましょう。」タタタタ・・ザッ。『これは!』メラメラ・・「交通事故?しかも多重衝突!」

「これだけの大事故でどうして衝撃音が・・そうか!」「動き出しましたな、魔獣・・】はっ!カチャカチャ、ピッ♪【もう始まってるわ。】

【ここはもう無音地帯か。】【これでは消防も救急車も呼べません。】【リヴィ、消火だ。】【消防栓・・これ!】バン!バシュウウウーッ!

【ストリーム!】びっ。ジャジャジャーッ!【負傷者を救出するぞ。】バリバリ!【生存者二名!】【こっちにも!】【エリス、救護を。】

【・・この事故の原因は?】【接触会話で聞いてみるぜ。】ぴたり。【なんでこうなった?】【・・携帯が切れて、それに気を取られて・・】

【こういうことです。使えて当たり前のものがいきなり絶たれれば、一時的なパニックに。】【現代社会の盲点か・・綺羅め、味な戦術を。】

【まいったな、市民に冷静になるよう呼びかける手段すら無いぜ。】【いえ、あるわ。電話ボックスは?】【あ、あそこに。】タタッ。

カチャカチャカチャ・・【これでいいわ。TV局に情報を送ったから・・ほら。】ぱぱっ。【あ、全てのケーブルTVに緊急情報のテロップが。】

【幽、いったいどうやって?】【一般に知られてない特殊な掛け方で、ボタンに書かれてるアルファベットと押す回数で文章が送れるの。】

【そんな機能があったんですか。】【関係機関にも送ったから、すぐに対応が始まるわ。】【これで少しはなんとかなるだろうぜ。】

 

飛燕丸。『・・現在シンガポール市街地内は、一切の音が聞こえない異常な状態です。このメッセージを見た方は、筆談で近隣の方々へ・・』

「大騒ぎでござるな。」「沈黙のパニック・・想像もつかん。」「余計に混乱するわね。早く魔獣を発見しないと。」「操縦櫓、高度を保て。

無音域に入ると何が起こるかわからぬ。」『よーそろ。』「・・あっ、あそこで暴動が。」「あっちでもだ。」「むう・・無音は人間の理性を

狂わせるか。」「音を絶つだけでいい、それで街は自ら滅ぶ・・綺羅め、人間の心理を知り尽くしている。」「直接攻撃よりも効果的ね・・」

 

高層ビル屋上。「踊れおどれ人間たち。勝手に滅んでくれるとは、楽な仕事よ。」「ぬう・・なんと狡猾な。」「これが兵法よ。戦争とは

少ない手数で楽に勝つこと。戦闘することなく勝つのが究極ね。」「我ら忍びも諜報と謀略を旨とするゆえ、わからぬではないが・・」ぴく。

シャッ。『頭、連中を発見しました。三番街で暴徒鎮圧中です。』「鎮圧とな?」『はっ。・・おもいっきりぶん殴っております。』

「あはははは!さすがタイタン、心得てるわね。こういう状況で最も有効な鎮圧法を。どれ、見物に行きましょうか。」「御意。」シュン・・

 

三番街。【いいか、間違っても殺すなよ。】バゴオッ!【なら骨折くらいまでならオッケーね♪】ばきいいーん!【暴徒に言葉は無意味、

鉄拳制裁あるのみです!】ドゴッ!【まずぶちのめしてから、ですな。】バゴバゴッ!【あの、けっこう痛いですけど死にませんから。】

どばぎーん!【なんか楽しそうじゃのう。】【・・そこ。】ピピッ。ぴたり。【経絡秘孔・定神。しばらく動けないよ・・はい次。】シャッ。

【たく、面倒だぜ。】ひょい、ばしーん!【殺すだけなら三倍のペースで済むものね。】ひょいひょい、バタバタン!【二人のは合気道か?】

【柔術や骨法も混ぜた国連諜報員必修の護身術だ。】【相手の勢いをそのまま返すのが基本、打撃技は無いわ。いわば自滅を誘うの。】

ばしばしっ!【峰打ちです。】【あー、めんどくさ。影こすり。】ぴた。びたびたーん!【影のごく浅い穴。足をとられて顔面強打よ♪】

【相手がカタギでは、隠行の甲斐もありませんね。】ばしばしっ!(当て身)【電撃舞。】バササッ!バリバリバリ!【一時間はしびれます。】

 

近くのビル屋上。「おー、やってるやってる。」「ここはもう無音地帯では?」「結界くらい張れるわよ。・・あ。」ぴく。「む?・・

あれはチーム『無幻』!」「そっか・・アルベリッヒ、作戦どおりに。」「かしこまってござる。閃光玉。」ヒュッ、ピカアアアーッ!

『なっ?!・・あれは!』【綺羅と・・ゲルマン忍者、アルベリッヒ!】「ほら気づいた。逃げるわよ。」「うむ。」シャシャッ。

【逃げる?・・おかしい。】【誘いですね・・どうします?】【限りなく罠っぽいわね。】【罠なら噛み破るだけでございます。】

【よし、追うぞ!】シャシャッ!【・・港のほうに向かってますね。】【どういうつもりじゃ?】【この先はマーライオンパークだぜ。】

【観光名所?なんで?】【・・彩。】【承知です。】ぴっ。『了解。』シャシャッ・・【無幻が離れた?】【いざというときの保険だ。】

 

マーライオン公園。タタッ。くるっ。「追い詰めたぞ、綺羅。」「おとなしくお縄について、八卦獣の居場所を教えてくれれば、お上にも

慈悲があるかもね。」「お上って誰?まあ、罠だとわかってて追ってきたでしょうし。」「でしょうね。」「いかなる罠ですかな?」

「こういうの。」♪パチン。シュバッ!「これは?!」【結界じゃ!】「この中で神霊力は使えないわ。」「それはあんたも同じだろ。」

「こちとら素手でも強いわよ。」「もちろん戦うのは私じゃないわ。」さっ。ゴバアアアーッ!『なっ!』「・・精霊大戦艦オベロン!」

ガコン。ザッザッザッ!「精霊軍機甲師団!」「ついに最強戦力を投入してきたのね。」ギュラギュラギュラ!「戦車まで!」ザザッ!

「この圧倒的火力の前に、神霊力抜きで勝てるかしら?」「やれやれ、これは大ピンチだな。」「変身も獣化も不能。しかも相手は

物理兵力使いほうだい。けっこー難易度高そうね。」「おとなしくミンチになります?」「その前に、神隠しになったようですな。」キラッ。

「ん?・・えっ?!」ばっ!ヒュォォ・・「・・兵が一瞬にして消えた?」【正しくは、影の落とし穴に落ちたんだけどね。」ズズズ・・

「影女・・しまった!」『もう遅いです。紫雲。』ヒュルルル・・ザッ。♪ピィン。・・ボトボトボトッ。「これは効率いいね。」

「私も使わせてもらいます。はっ!」バササッ!シュパパパッ!「天輪舞!」ギュルッ!ズバババッ!・・バサッ!「半径100m、殲滅。」

ギュラギュラ!「戦車が!」「霊剣『愛染』。」シュピィィーン!・・ザッ。ズルッ、ゴシャアアアーン!「内蔵霊力なら使えます。」

『そして私たちもいる。自在刀「龍馬」!』ギュラララッ!ズババババッ!「まさか?!」ギャルルッ、カシーン。「・・アテナ!」

「力押しの相手なら負けぬ。忍群!」ザン!シャシャシャッ!「砂風!」「ひさびさに魔法抜きでやってみようかな。」プチッ、バサアッ!

「ユーディ。」「殖甲します。」ズズズズ・・ギシイッ!『強化外骨格「地獄」。はっ!』ダッ!『超振動拳「等活!」』ドンッ!バゴオオーン!

『ネックブリーカー「黒縄」!』ガシイッ!ボギュアッ!『ネリチャギ「衆合」!』ブン!ボグシャアッ!『とどめよ。地錐拳「叫喚」!』

ドゴオッ!・・ズボオオオーッ!グサグサッ!『地獄の針の山。ユーディ、今夜はヤキトリにしましょ。』【比内地鶏を仕入れてあります。】

 

ゴォォォ・・「・・まさか精鋭部隊がこんなに簡単に。」「だから前から言ってる、秘密部隊を甘くみるなと。」「今までの戦いをおさらい

してないの?ほとんどの組織的戦力に、私たち自身はほとんどノータッチよ。」「人間をよくご存知かと思えば、いささか過大評価でしたか。」

「残るは綺羅、あなただけです。」「結界内では精霊核も使えませんよ。」【進退窮まったのう。】ザッザッ。「く・・?!」シャッ。

「お前は・・」「ゲルマン忍軍棟梁、アルベリッヒ。主命により綺羅殿をお守りいたす。忍軍!」『おう!』ザザッ!「参る!」シャシャッ!

「ならば我らも助太刀せねばな。」『ニンジャさん相手は楽しそうね。』「ゲルマン忍者、決着をつけん。かかれ!」ザザザザッ!

ガキイイーン!「始まった!」「私たちは綺羅を!」「そうはさせぬ。第三隊!」シャシャッ!「ちいっ!」ガキイイン!「混戦か!」

 

ワーワー!キィン、カキィィーン!・・シャシャッ!「よしっ、隊長が抜けた!」はっ。「・・彩!」「綺羅、決着をつけましょう。」チャッ。

「・・切れるの?私が。」「僕もじきに。先に逝っててください。」シャッ!ヒュッ、「むっ?!」ガキイイイーン!「・・アルベリッヒ!」

「主命により、綺羅殿に傷はつけさせん。綺羅殿!今のうちに撤退を!結界を抜けたれば、我らごと精霊核で!」ぎょっ!「・・だが!」

「任務に死すは忍びの誉れ。ましてや敵と刺し違えるならば本懐でござる。さあ!」「・・わかったわ。」シュン・・「これでよい・・皆の者!

死すともこの場から一歩も進めさせるな!」『ははっ!』「・・見事な覚悟です。これぞ忍びの鑑。」「我ら忍びにあるは誇りのみ。誇り無き

生を過ごすなら、むしろ誇り高き死を。」「それは自己満足の誇りに終わるかもしれませんよ。」「ふっ・・誇りとはそういうものだろうが。

人に誉めてもらいたい誇りなぞ醜悪。ただ己が美学を貫くことこそ誇り。」「お見事。・・では僕も、誇りをもって。」「来い、若者!」

 

結界外。タッ。くるっ。「・・どうする?たしかに精霊核を使えば・・でも、彩まで・・」・・きっ。すっ。「この時代で添い遂げられない

ならば、次の転生を待つわ。精霊核!」カッ!『なにいっ!・・』ズドオオオオーン!ゴォォォ・・「吹き飛んだ・・タイタン達も。」

『それはどうかしら?』「・・えっ?」モクモク・・ザッ。「たいした威力ね。戦術核並み?」「・・クレーターの中から・・だれ?!」

「『白昼夢』のナディア。お見知りおきを。」「精霊散弾。」シュパッ!すかすかっ。「?!・・この距離で当たらない!」「当然。

『無いもの』は撃てないわ。」「??」「目に映るものが存在するとは限らない。いやしくも精霊ならわかるでしょ?」「・・幻術?」

「ちょっと違うわ。」・・はっ。「まさか・・夢?」「そのとおり。あなたが見ている、と思い込んでいるのは夢。すなわち、あなたの

頭の中にしか存在しない世界よ。」「・・夢流し!」「ここは覚めることなき夢の世界。そして、あなた自身が管理人でもあるわ。」

「・・ということは。」キラッ。ボオオオーン!「きゃあああーっ!」「私の精神力をあまくみたわね。この程度の精神世界ならじゅうぶん

制御できるわ。」ボォォォ・・バサバサッ。「灰まで焼き尽くし・・あれ?夢術は解けたはずなのに、なぜ目覚めないの?」ばっ!「誰!」

カツカツ・・すっ。「!・・ナルシス?」「・・綺羅。」「あ・・ありえない!燃え尽きろ!」ボオオオーン!メラメラメラ・・バサッ!

「はぁっ、はぁっ!・・はっ?!」ザッザッ・・「・・そうか、ここは私の夢の中。つまり!」ばっ!「・・綺羅。」「・・私が彼のことを

想い続けているかぎり、不滅・・」・・ギリッ!「化けて出なさい夢使い!こんな卑劣な罠を・・許さない!」・・ユラァ。【私は何もしてない。

それはあなたの願いが形を成したもの。消せるとすれば・・】「・・私自身が未練を断ち切るしかない、のね。」【それができれば覚醒も可能。

あなたをここに留めてる要因は、それが大きいみたい・・】「・・わかってる、いえ、わかってた。・・ひとつお願いがあるんだけど。」

 

「ん?・・アルベリッヒ、ちょっと待て。」「何をいまさら!」「あれだ。」「・・綺羅殿?」ボーッ・・「あら?どうしちゃったのかしら。」

「みんなちょっと休戦だ。綺羅の様子がおかしい。」「なんというか・・放心状態?」「目は開いてますので、お休みではなさそうですが。」

「綺羅殿、お気をたしかに!」ゆさゆさ。「気付けでもやってみる?」「なら拙者の気付け薬を使うがよい。」ささっ。「・・反応なし。」

「どういうことです?綺羅ほどの者が。」【はてさて面妖な。】『どうやら何者かに精神封鎖されたようですね。」はっ!「・・ジークハイル!」

「御館様!」「緊急事態なので駆けつけました。前線指揮官がこれでは困ります。」「いちおう連れて帰るか?」「原因がわからない以上、

治療もままなりません。そこでその筋の権威に声をかけました。」・・ヒュオオオオーッ。「VTOL?」ガチャ、すたっ。「・・あんたは!」

「陰陽庁長官・土御門雅!」「おひさしぶりです。綺羅が喪心したと聞いて。」「これなんだが。」「拝見。・・なるほど、夢地獄ですね。」

『夢地獄?』「ある者が使う技です。精神を夢界へ封印し、魂と魄を乖離させる。要するに『カンタン刑』です。」『おお、あれか。』

「砂風、知っているのか?」『死刑よりも残虐な刑。夢の中で永遠の地獄の責め苦を味わうが、現実時間ではほんの数分。その僅かな間に

現実の肉体も夢のとおりにみるみる朽ちてゆく・・らしい。』「ああ、なるほど・・『邯鄲の夢』ね。」「綺羅の場合は完全に遊離しており、

ここにあるのは抜け殻だけです。」「いわば夢世界への島流しか。」「たしかに、綺羅様を封じるには有効な手段かもしれませんね。」

 

【それについて補足があります。」ボオッ。はっ。『何者?!』すっ。「私は知っております。たしかクレオパトラの秘書の方ですね。」

「ナディアと申します。・・綺羅からの伝言です。彩さん、『愛染』で綺羅を貫いてください。」『えっ?!』「理由を聞きましょう。」

「その剣は精霊騎士ナルシスの魂を有しており、綺羅は夢の中でその騎士と会っています。けどそれは綺羅の夢見た幻影に過ぎません。」

「・・わかった、その幻影に魂を入れれば。」「実体、いえ、実像になりますね。」「けどそれしたら、綺羅の肉体は滅ぶんじゃない?」

「器に未練は無いそうです。」「精霊には、かりそめの器・・ですね。」「では・・」キィン・・ズドッ!シュバアアーッ!『うをっ?』

 

オォォォ・・シュバアアーッ!「来た!・・」・・スウッ。「・・綺羅。」「・・ナルシス。本当のナルシスなのね。」じーっ・・

「・・ちょっと丸くなったか?」ばごおおーん!(昇り蹴り)「おぶわっ!」「二千年も会わなきゃこうなるわよ、バカ!」「あいたた・・

相変わらず口より先に手が出るんだな。それだけは昔から変わらん。」「唐変木の誰かさんのせいでね。・・」ググッ・・ババッ!

「おっと。」「会いたかった!ずっと、二千年の間!」「・・綺羅。」なでなで。「・・ここは夢の世界か。そしてあの光が・・」

キィィ・・「あなたの愛剣『愛染』。あなたの魂を守っててくれた・・」「・・行こう、綺羅。二人だけの世界へ。」『ええ・・』スゥゥ・・

 

シュゴオオオッ!『なっ!』「綺羅の身体が・・剣に吸収された?」「ど、どういうことだ?」「・・これは?」ボォォォ・・ピシピシッ。

「・・愛染の刀身に。」「絡み合う男女の姿が・・」「・・二人はこれで永遠に結ばれたのね。」「・・ちょっと、嫉けちゃうかな。」

「考えてみれば、綺羅の凶行は寂しさに起因したのかもな。」「愛する人のいない世界なんか、どうなってもいいか。」「迷惑な話だ。

なまじ不老不死や転生などが当たり前になってることで、生命と死に対する尊厳が無いのだ。」「おっしゃるとおり、四界の連中には

そこがわからんのです。ゆえに皇は乱を起こした・・蟷螂の斧の恐ろしさを知らしめるために。」「そして、それは確かに一矢報いた。

神々は魔獣軍団を滅ぼすことすらできず、封印するのがやっとだったわ。そしてデウスの掟が生まれた・・エデンに干渉すべからず。

たとえ誤った道を歩もうとも、全ては人間たち自身の決定と責任に委ねよ。」「とはいえ、どうも道を間違っちまったかもしれんな。」

「どれが正しい道かは、歩いてみなきゃわからないわよ。間違えたと思ったなら、そこから別の道に飛び移ればいいだけのこと。」

 

ニューヨーク。・・ボオッ。「おっ?」「任務いちおう完了です。」「いちおう、の意味を聞こうかしら。」「かくかくしかじか。」

「駆け落ち・・か。ナディア、そう仕組んだの?」「想定外でした。一度殺されたのに、情けをかける理由は無いです。」「けど配慮した。」

「はい。・・彼女の内面世界には孤独・寂寥・嗚咽が詰まってました。常人ならとうの昔に発狂か自殺しているほどの。」「・・なるほど。」

「深すぎる愛は、ときに人を凶行に走らせる。何事もほどほどが一番だ。」「時と場合によるわ。綺羅は・・待ちくたびれたのね。」ふう。

 

「・・さて、現場責任者が倒れた以上、私が代理を務めるしかないですか。」はっ!「ご心配なく、起こすだけで帰りますから。」すっ。

『・・耳!』ぽい。・・グオオオッ!「でっかくなっちゃった!」はっ。「ジークハイルがいない?」【ではこれで。ご健闘を祈ります。】

バサバサアッ!「耳二つが合わさった蝶のようだな。」♪キィィィーン!『うわあっ!』「破壊音波です!」「エリス、いっしょに!」こく。

『遮音結界!』ピキィーン!『・・ふう、助かった。』ザザザザーッ!『うわ・・何もかも砂に。』『想定内の事態だ。砂風、出番だ!』

ヒュンヒュンヒュン!『飛燕丸?』「ふふふ・・このときを待っておった。抱え筒、構え!」ジャキジャキッ!「放て!」ドンドンッ!

ヒュルルル・・ベチャベチャッ。『くっついた?』『強力粉を水に練ったもの、すなわちトリモチだ。』『またレトロなものを考えたわね。』

モゴモゴ!『あら、意外と効いてるわ。』『・・もう結界を解けるね。』シュン。「倒すなら今が好機。タイタン!」「おう!変神!」

シュバアアアアーッ!『リヴィ!』『ただいま!』ゴオオオーッ!すたっ。『リューズ、もう片方の耳を同時に!』『心得ました!』

バサバサアッ!『ルシファー起動!』ギン!『ターゲット、ロックオンします。』ジャキッ!キィィィ・・「むっ?・・いかん、トリモチが!」

メリメリ・・「はがれていく・・そうか!ウェブ!」シュバアアアアーッ!ペタペタッ。「そう長くはもたないわよ!」『じゅうぶんだ。

光あれ!』カッ!『プロメテウウウースッ!』『スパイラルバスター!』ズドオオオーン!ズガガガガーン!「決まった!」ゴォォォ・・

『・・いや、まだだ!』バサバサッ!『片方がまだ残ってるわ!』キィィィーン!『しまった、アポロシールド!』『甲羅防御!』

『ゴーガシールド!』バシイイーン!『くうっ!・・』『片耳だけでこのパワーですか!・・』『これほどとは・・長くはもちません!』

 

「この距離じゃ間に合わないわ!」「・・やってみましょう。愛染!」シュピィィーン!「頼みます、僕の前世の騎士よ。はっ!」シュパッ!

『おおっ!』「剣が!・・」「あんなに飛ぶなんて!」ヒュィィーン・・ズボオオオーン!『なにっ?!』『片耳が!』『な、何が?』

「やった!」・・ヒュオオーッ!ぱしっ。「今です!」『今度こそ!リヴィ、回転ジェットだ!』『ええっ?!』『その回転力を使う!』

『よくわからないけど、わかりました!』シュコシュコッ、シャルルルーン!『ぐうっ!・・これならば。いけえっ!』『突撃!』

ビュゴオオオーッ!『アポロカッター!』ジャララッ!ビュンビュンビュン!「そうか!回転エネルギーをディスカーマに上乗せすれば!」

『合体技・エゼキエル!でやああああーっ!』ズババババーン!『おおっ!』「耳が・・コマギレに!」『リューズ、とどめだ!』

『はい。ゴーガ!』【発火じゃい!】ボンッ!ギュララッ!『灼き尽くせ!スパイラルファイアーストーム!』ズゴオオオオーッ!

ボシュボシュッ!ゴオオオオーッ!パラパラ・・『ふうっ・・完全焼滅です。』【この技は疲れるんじゃよ。】「状況終了である。」

 

フロリダ。「そうか・・綺羅が消えたか。」「厄介払い、はさすがに失礼ですね。」「まあよい。・・残るは『水』と『天』のみか。」

「では次はやはり。」「大神官、使いでのある目標は?」「エルサレムなどいかがでしょうか。」ぱっ。「砂漠の聖地か。」「ならばこそ

面白くなります。つまり・・」・・「・・なるほど。さすが大神官、巧妙な策を。」「くだらぬ宗教対立に水を入れてやりましょう。」

 

クアラルンプール。「愛染・・綺羅とナルシスの魂を宿した剣か。」キィィ・・「隊長の守護霊になってくれるのかしら。」「以前よりも

強力な加護がありそうですな。」「いわば剣自体がメモリー・・なのかな。」「USB端子はどこにもありませんけどね。」くい、シュン・・

「八卦獣も、残るは二体か。」「『水』と『天』。どっちも知らないわ。リューズは?」「私も見たことはありません。」「敵の能力が

未知数だと苦戦しそうだな。」「水・・津波でも起こすのかしら。」「そんな単純なものではないとは思いますが。」「・・水を呼ぶ。」

『エリス?』「水が出そうもないところで、もし大水が出たら・・」「津波による広範囲攻撃か、あるいは浸水による静かな破滅か。

悩みどこですな。」「・・皇の好みでいうなら、後者ですか。」【戦いにも美しさを求めるお方じゃしの。】「そうか・・浸水か。」

 

♪砂漠の街に水が来る 都市も聖地も沈みゆく 

♪ダイダラボッチの胃袋が あらゆるものを呑み込んで

♪敵は底無し沼深く 近づくことすらままならない

♪『水底の歌』が聞こえる 溶かされゆく街の叫びが・・

 

**********************************************************

 

中東・エルサレム。今更説明するまでもなく、ユダヤ・キリスト・イスラムの聖地が一同に在する、宗教対立問題の最前線である。

ゴゴゴゴ・・「何だ?」「地震か?いままで起こったことないぞ。」ジワジワ・・ズブッ。「うわっ!・・水?」「ここは砂漠だぞ!」

ジワジワ・・「大量の水が・・染み出してくる。」・・ズズッ!「家が!・・傾いた!」ズブズブ!「大変だ・・街が、沈む!」

旧市街。ゴゴゴゴ!「何事だ?!」ズズズズ・・ドドオオオーン!「『嘆きの壁』が倒れた!」ズブズブ・・「『岩のドーム』が沈む!」

ガランガラン!「『聖墳墓教会』が・・崩れる!」「世界の終わりだ!」「神の怒りだ!」「アッラーアクバル!」ゴゴゴゴ!・・

 

フロリダ。『ただいまエルサレム市街地は大パニックになっています。聖地沈降の衝撃は大きく、宗教勢力間の抗争も勃発しています。』

「予想以上の大騒ぎになったな。」「宗教間抗争などあそこじゃ珍しくもありません。しかし、状況はますます悪くなります。」

『政府による必死の復旧作業が進んでますが、急激な沈下スピードに追いつけず、また地盤の液状化により工事も難航しています。』

「予想を。」「三日でエルサレムは地上から消滅します。そうなれば聖地を失った三大宗教勢力は意気消沈し、特にユダヤ人は新たな

安息の地を模索することになるでしょう。国境問題もうやむやになり、パレスチナも大義を失います。」「宗教対立は沈静化すると?」

「逆です。聖地を失ったイスラエルはアラブ諸国の猛反撃を受け、中東から追い出されるでしょう。支援していたアメリカも、聖地が

無くなってはこれ以上中東に無理強いはできません。せいぜいイスラエルに代替土地を斡旋するくらいでしょう。北アフリカのどこかか、

ヘタするとアラスカや北方四島とか。」「ロシアが承知するか?」「地政学的にあそこにユダヤ国家を置くのは、極東におけるアメリカの

影響力を強め、半島と中国に牽制をかけられます。またロシアも手が届く範囲に中立的巨大資本と市場が生まれることは利点です。今は

軍事力よりも経済優先ですから。」「なるほど。ロシアとユダヤ資本が結びつくこともありうるか。」「もちろんいいことばかりでは

ありません。中国と半島は猛烈に反発するでしょう。となると・・」「新たな火種になるか。安息の地になりそうもないな。アラスカも

イスラエル自体が難色を示すだろうし、エスキモーも黙ってはいまい。」「カムチャツカの端っこの真空地帯でも行ってもらいますか。」

 

第四十八夜「水底の歌」 - 八卦獣【水】ダイダラボッチの胃袋 登場 -

 

飛行要塞アガルタ。「沈みゆく聖地か。」「あの乾燥地帯で地下水上昇なんて論外。八卦獣の仕業ね。」「おそらくは『水』の八卦獣かと。」

「はて、どのような魔獣か存じませんな。」「私も名前だけで見たことはありません。」【「ダイダラボッチの胃袋」。それだけじゃ。】

『ダイダラボッチ?』「ここで日本の巨人が出てきたか。」「・・考えてみれば、妙な話ね。アトラス・ヒューペリオン・ヘカトンケイル・

キュクロープス。ベレニケスとマイダスは例外として、今度はダイダラボッチ。いずれも滅びし巨人族の名前よ。なんでそんな名前を?」

「たしかに。魔獣にそんな名を付けるのは奇妙ですね。」「そういえばヤハウェ自身も魔獣形態ではない。七凱聖のように転生したという

話も聞いてない。すなわち・・元からあの姿だったと?」「はい。皇は昔からあの姿のままです。他の形態は見たことありません。」

【七凱聖はそれぞれの姿をしておったが、考えてみれば不思議な話じゃのう。なぜに皇のみ人間形態なのか・・】「・・もしや。」

「イエティ、何か気づいたか?」「・・い、いえ、勘違いでございます。」「そうか・・?」「ちなみに『天』の八卦獣の名前は?」

「それが・・知らないんです。」『え?』【そうなんじゃ。その八卦獣だけ姿はもちろん、名称すらも知らされておらんのじゃ。】

「どういうことだ?」「七凱聖すら知らない八卦獣・・つまり、それにこそ魔獣皇ヤハウェの真実があるということですね。」

「今までの例から、巨人名だろうとは思うが。」「ガルガンチュアとかパンタグリュエルとか?」「それは時代が若すぎますぞ。」

 

「さしあたってはダイダラ坊に集中してくれや。」「水没面積はエルサレム市街地のみならず、南西部ガザ地区へも拡大中よ。沈降速度は

速くないので住民の避難は間に合ったけど・・」「・・信仰心の強い人は避難しない、むしろ・・」「沈みゆく聖地と共に殉教・・か。」

「気持ちはわからないわけではないけどね。」「高僧たちが説得してはいるが、まず難しいだろうな。当の本人たちもそのつもりだし。」

「魔獣本体はどこにいるんだ?」「ぱっと考えて、市街地の真下でしょうね。以前の地底大魔獣みたく引き込んでくれればいいけど・・」

「そうもいかないでしょう。液状化した地面を潜るのは、流砂より難しいです。また今回の大規模沈降は喰っているわけでもありません。」

「打つ手無し・・どうしたもんかね。」「・・湧水の成分は?」「モサドの分析によると、濃塩水ね。」「ということは・・死海から?」

「それです!もしその胃袋がポンプのように湖水を取り込んで地下に放出してるとすれば!」「・・取水口が死海沿岸のどこかにある?」

「だが一口に沿岸といっても広いですぞ。どう当たりをつけたものか。」「・・ひとつ手があるわ。ガイアライブの陽くんなら、ドラゴンの

能力を使って水の流れを感知できるかも。」「それだ。さっそく現地へ向かってもらうよう連絡するぜ。」「俺たちも急いで合流しよう。」

 

死海沿岸。ザザァ・・「・・・・」「陽くん、わかるでやんすか?」『シーッ!』(わかったでやんす・・)「・・見えた。」ぴく。

すっ。「ずっとあちらの方に、異常な流れを感じる。」「まず方向は決まりましたね。」「これを繰り返していけば、必ず見つかるです。」

「では適当に移動するでやん」ばっ!『凛ちゃん?・・!』ザザッ!ズガガガガッ!「散って!」シャシャッ!チュンチュンチュン!

「魔獣勢力でやんすか?」「いえ、会話から察するに現地の武装テロリストのようです。」「問答無用で攻撃するなんて、ひどいね。」

「国中が大混乱です、確認の余裕すら無いのでしょう。どうします?」「・・」すっ。「無力化、やむをえない場合は・・でやんすね。」

「このクソ忙しいときに手加減できる余裕なんか無いです。」「・・遅れるだけ事態は悪くなる。事情を説明しても無駄だろうね。」

「降りかかる火の粉は払うしかないですね。」こく。シャッ!ズガガガッ!チュンチュン!「・・愛牙!」シャキーン!ズバズバッ!

「グリズリー・シャドウ。」ズズズズ・・バゴオオオーン!「あやとり魔糸・裏切りの銃弾でやんす。」くいくい。グン、ズガガガガッ!

「仲間の銃弾をくらう気分はどうでやんす?」「濡れた岩塩の浜・・使えるです。マーカライト・ファープ!」ピィィィーッ!ズボオオオーン!

「水蒸気爆発は強いのです。」「アース・ドラゴン!」バン!ズズズズ・・ドバアアアーン!「岩塩の散弾。逃げ場はありません。」

 

少し離れた場所。「むう・・さすが秘密部隊。」『棟梁、今回は仕掛けないので?』「主命は監視のみ。今回の魔獣はおいそれと倒せぬ。

ゆえに妨害の要を認めずと。」『ははっ。』「徒に戦うは忍びにあらず、こういう地味な仕事が本義である。」『きわめて同感でござる。』

はっ?ザザザザーッ。『根来の砂風!』ババッ!「待てい。・・今回は闘争の気ではない。」『いかにも。そちらもその気でないならば。』

「ならばこちらより秘密部隊を援護するべきでは?」『無用。もう終わりそうだ・・むっ?』ギュラギュラギュラ!「メルカバとな?」

『イスラエル軍が騒ぎを聞きつけたか。』「いかん、今の混乱状態では無差別攻撃もありえる。」『・・参る。』ザザザーッ!・・

 

「今度はイスラエル軍ですか。」「正規軍は後のタタリが怖いでやんすね。」「テロリストのせいにしとけばオッケイです。」『こらこら。』

ズボッ!ドドーン!「え?・・戦車が地面に埋まった?」「でっかい落とし穴にハマったらしいでやんす。」『そのとおり。』ザザザーッ!

「あ、三牙将の砂風さんです。」『これなら不幸な事故で済む。今のうちに離れよ。』こく。「感謝します。」くい。シャシャッ・・

『・・凛の声、初めて聞いたが、ただの一言でこれほど心ゆさぶるとは・・一目ぼれならぬ、一声ぼれしてしまうではないか。』フッ。

「ほう、砂風にしては珍しいセリフだ。」ザッ。「いやいや、こうみえて砂風けっこーヲタクよ。」ザッザッ。『アテナ、ギネビア。』

【私もお忘れなく。】ズズズズ・・シュン。『ユーディット、大義であった。』「穴掘りくらいならば、お安い御用でございます。」

「今回はどう動いたものかな。」「魔獣の性格上、こちらで出来ることはなさそうね。」『それは逆だな。むしろ我らしかできぬ。』

「飛燕丸では深くは潜れないはずですが。」『いかにも。ゆえにこういうものを用意した。忍び狼煙。』さっ、シュパッ!ピィィィーッ。

「何の合図?」・・ズズズズ。「地震?・・いや。」「地下に何かいる?」メキメキッ、ゴバアアアアーッ!「これは?!」「な、なに?」

 

死海沿岸・クムラン。「ここまでは沈下は及んでないんだな。」「紛争地狙い撃ちね。」「ここでガイアライブの連絡を待つぜ。いまごろ

沿岸部を調査」♪ピピッ。「おっと、ゆってるそばから。・・もしもし。・・うむ、わかった。」♪ピッ。「マサダで見つけたとのことだ。」

「マサダ?・・あの有名な。」「・・ローマ帝国との激戦地。1000人が自決した、ユダヤの聖地のひとつ。」「因縁を感じますね・・」

「ここから80kmくらいだ、ヘリで行くぜ。」「ヘリって、すぐには・・ん?」・・ババババ。「あ、なんか来た。」「・・あれヘリ、ですか?」

ババババ!「マットジャイロ?」【ちゃうちゃう、V-22オスプレイじゃ。】「なんでゴーガが知ってるの?」【軍事系は好きなんじゃよ。】

「それ以前に、なぜリューズが帰りマンを知ってるかのほうが問題だが。」「こないだ愛美さんに特撮・アニメ動画サ」「はい、そこまでー!」

 

マサダ遺跡。ババババ!・・スタスタッ。「おっ、いたいた。」タタタタ・・ぴょん。「おっと。」ぽすっ。「凛、元気だったか?」クルル・・

「取水口は遺跡のふもとにありました。」「湖底にあるのでわかりにくかったでやんす。」「見つけたはいいですが、これからどうします?」

「時限爆弾でも放り込む?」「まずは中がどうなってるか調べるぜ。ベル、例のものを。」「これね。」ひょい。「・・マブチモーター?」

「超小型ロボット潜水艇。いま流行のUAVの潜水艇版よ。」「なるほど、無人偵察機か。」「何をおいても、まず敵を知るのは基本ね。」

チャポン・・ルルルル。「お~、見えるみえる。」「無線なのに意外と鮮明ね。」「塩分濃度が濃いせいもあるかもしれませんね。」

ルルルル・・「速度30ノット・・速いな。」「流速が上乗せされてるしな。予想外に速いぜ。」「あっ、なんか景色が変わってきたわ。」

ゴォォォ・・「内壁が・・有機的に。」「・・動いてる。」「これが・・ダイダラボッチの胃袋。」【まんま内臓器官じゃのう・・】

「・・なんか、水が黄色くなってませぬか?」「あ、たしかに・・胃液か!」「水以外の固形物が入ったので分泌されたのでしょう。」

ザザッ・・「やべえ、船体が溶けだしたな。」「耐腐食処理したステンレス製でもこんなに速く?」ブブッ・・「・・やられた、な。」

「ふう、不用意に潜らなくてよかったです。」「ヘタに潜ると消化されちまうとは、厄介でやんすね。」「・・どうすればいいかな。」

 

【こうすればいいでござる。】『え?』「・・今の声は、砂風?」「どこから?」・・ズズズズ。「震動?」「・・足元ですぞ!」ドォンッ!

ギギギギ!「な、なんですか?・・地面が回ってる!」【外へ出るんじゃ!】ババッ!・・ボコッ!キュイイーン!「・・鉄柱が?」シャコッ。

「あ、砂風さんです。」『ふはははは。足元から失礼つかまつる。』「これはいったいなんだ?」『すぐにわかるでござる。上昇!』

ゴバアアアーッ!『ええっ?!』ギュィィィーン!「・・巨大ゴマ?」『根来からくり兵器「護法童子」。陸海地を駆ける万能戦車でござる。』

ギュィィィ・・パシュ。「さあ、乗ったのった。」「中は回らないからだいじょうぶよ。」「見た目より広いですし。」『おお。』ドカドカ。

「・・回転止めて、こけないの?」「内部の大型ジャイロは作動中だ。」「地球ゴマと同じよ。外殻とのクラッチ入れれば・・」ガキン。

ギュィィィーン!「回ってるぽいですね。」シャーッ、スタッ。『いかがかな?広いでござろう。』「壁は二重になってるわけか。」

「へえ~、内部も多層構造になってるのね。」「ここはエントランスおよび倉庫で、床下が動力室だ。」「では上へご案内するわ。」

カンカン。『お~。』「ここが操縦室か。」「・・あら?パソコン二台だけ?」「これの操縦に大仰な操縦システムは不要らしい。」

「外部の様子は中央シャフト頂部センサーアレイから得られる反射映像を処理してモニターしてるの。」「地底でもだいじょうぶですね。」

『では行くぞ。潜行せよ。』『よーそろ。』カチカチッ。ズゴゴゴゴゴッ!・・「マウスでクリックのみでは、いささか燃えないでやんす。」

 

ゴゴゴゴ・・『深度60・速度1パーセコを維持。』『エコーに変化あり。流体液層まで30m。』「そろそろか。胃液対策は?」『ぬかりなし。』

「高速回転によるキャビテーションの泡が守ってくれるわ。」「加えて外板は裏高野で法儀式を施してあり、魔の属性など受け付けぬ。」

『液層まで3,2・・』ボコッ!シュシュシュ・・「掘削音が消えた・・」『降下やめ。針路を確認。』『北西に伸びてます。』『針路十時半。』

シュシュシュ・・「さすが胃袋、なんも無いわね。」「さて、どうやって攻めるか。」「胃なら穴を開けるのがいいかもしれません。」

「ならこのコマで突き破ってしまえば。」『あいにくだが、さきほどの穴はもう塞がっている。針で突いたほどにも効いておらぬだろう。』

「・・質問です。砂風さん、先ほど窓から見てらっしゃいましたよね。」『中央シャフト上部のキューポラでござるが。』「それってここでも

使えますです?」「このくらいの水圧ならだいじょうぶなはずだ。」「・・あ、ひょっとしてアレを?」「そのひょっとしてですー。」

 

『前方に胃壁を視認。距離約30m。』「減衰を少なくするため、できるだけ近づいてくださいです。」シュシュシュ・・『あと15m。』

「ここでちょうどいいですー。」シュゥゥ・・「では始めますです。」チャリッ・・ギン!「・・高周波メス!」ピィィィーッ!

シュバババッ!「おお、壁が切られていく。」「超音波で水分子が震動し、それ自体が対象物を切断するのね。」「これはいけそうですね。」

ドォンッ!「魔獣が暴れだしました。」【あれだけの傷じゃもの、さぞかし痛かろう。】ゴオッ!『高速水流が!』「排除にかかったな。」

『全速前進。傷口へ突っ込め!』ゴオオオオーッ!ギュボボボッ!「ギネビア、置き土産だ。」「おっけい。ユーディ!」「投射します。」

ガコガコン。「なんだ?」「すぐにわかります。」『胃壁を突破します。』・・ズボオッ!『全速緊急離脱だ。総員何かにつかまれ!』

ゴゴゴゴ・・ドォンッ!『うわっ!』グラグラグラッ!「・・爆発?」「霊子爆雷。威力は核爆弾なみだけど放射能は出ないわ。」

『胃内を満たした水が媒体となり、胃袋をズタズタに引き裂くな。』「これで給水などしている余裕は無くなる。沈降も止まるだろう。」

 

ゴゴゴゴ・・バコォッ!ギュイイイーン!『地上です。』『回転停止。上甲板に出る。』ガコン。どかどか。「魔獣はどうなった?」

「あれでくたばるとは思えませんが。」「・・あ、あれ!」ゴゴゴゴ・・ゴバアアアアーッ!「あれが水の八卦獣でございますか。」

ジュルジュル・・「うへぇ、胃袋というよりデブのミミズでやんす。」「なんておぞましい・・」「おえ・・気持ち悪いヤローです。」

ゴボゴボッ、ジュバアアアーッ!バシャバシャッ!ジュウウウ~ッ!「苦し紛れに胃液を撒き散らしてますね。」「・・近所迷惑だね。」

「よし、とどめは俺たちがさす。リヴィ・イエティ、いくぞ!」『ははっ!』ババッ!『変神!』シュパアアアーッ!・・ズズーン!

『リヴィ、被害抑制だ。』『ギガ・ストリーム!』ブシャアアアアーッ!『これで溶解液は薄まります。イエティ、次をよろしく!』

『レンの凍てつく風にございます。』ビュオオオオーッ!カチカチ・・『とどめだ。光あれ!』ギン!『プロメテウス!』ドゴオオーン!

『震動波放射!』ヴン。ビィィィ・・ピキピキッ。『・・砕け散れ!』バゴオオオーン!ガシャガシャ!シュゥゥゥ・・『殲滅完了。』

『・・変ですね。八卦獣にしては、いとも簡単に倒せたというのは。』『はてさて、この違和感は何でしょう?』『ああ。・・?』

 

独楽戦車『護法童子』。「ん~・・なんか、妙なカンジね。」ぽりぽり。「たしかに。八卦獣にしては弱すぎますね・・」【かといって

エルサレム水没の犯人が彼奴なのは間違いない。・・はずじゃがのう。】「エリス、魔獣反応は?」「消えてる、間違いなく。でも・・」

「でも?」「何かおかしい。どこか根本的に間違ってるような気が・・ん?」ばっ!「地面に?」「・・聞こえる。」『え?』ばっ。

・・ゴォォォ。「・・なんだ?」「何か・・流れるような音が。」・・ゴゴゴゴゴ!『なっ?!』「じ・・地震?!」「あ・・あれを!」

ブシャアアアーッ!「巨大な水柱が!」ズドオンッ!『うわっ!』『な・・なんという揺れでござるか!』「VTOLを回せ!脱出だ!」

「飛燕丸を呼べ!コイツを収納して脱出する!」「みんな、撤収よー!」ズゴゴゴゴ!『い、いったい何が?!』『わ、わかりませんが、

何かとんでもない事態が起きたとしか!』『とにかく、ここを離れましょうぞ!この激震ではどうにもなりませぬ!』『急ごう!』

 

キュィィーン!・・ズズン。「シャトルが来たぞ。急いで乗り込め!」ドカドカ!『オーライ、オーライ。・・護法童子、収納完了!』

『よろしい。・・むっ?』・・ゴゴゴゴ。「なんだ・・あれは?!」「な、なに?地平線の彼方から砂塵の壁が!」「巨大な砂嵐ですか?」

『・・いや、違う!飛燕丸、急上昇だ!』ヒュンヒュンヒュン!「急げ!ものすごい速度で迫ってくる!」ゴゴゴゴゴ!「・・あれは!」

「あ・・あれは何なの?」「砂嵐じゃありません・・大地が陥没していってるんです!」「あれが地震の原因ですな。でもなぜ?」

「なんて規模・・見渡すかぎりの大地が何十mも!」【おお・・恐ろしい光景じゃ・・】「なんてこった・・」「なぜこんなことに?」

「・・ここだけじゃない。ものすごく広い範囲でこれは起こってる・・無数の人の恐怖と断末魔の叫びが・・」ガクガク・・

「・・あれは、なんだ?」ザァァァ・・「水?・・穴に水が!」「地中海です!地中海の水が・・」「イスラエルが・・消えた。」

 

飛行要塞アガルタ。『現状を確認。イスラエル全土の80%が陥没・水没した。』「いったいなぜこんなことに?」『順を追って説明しよう。

まずこれを見てくれ。』ぱっ。「・・あの青色のエリアは?」『地下水脈だ。ほぼ全土の地下に存在した。』「した?・・ということは。」

『死海で巨大な水柱を見たはず。あれはこの膨大な地下水が流出したためだ。』「・・そうか、地下水が流出したことで陥没が!」

「これが敵の真の狙いでしたか。」「八卦獣は大量の死海の水を送り込むことで、広大な砂岩の地盤を侵食していたんですね・・」

【エルサレムの地盤沈下は付随的な現象でしかなかったんじゃ。水枕の上に乗っただけの大地・・その栓を抜けばどうなるかは明白じゃ。】

『地中海は、静かに流れ込んだことで周辺国へ高波被害が及ばなかった・・不幸中の幸いといえば語弊があるが。』「じゅうぶん大惨事よ。」

「死者500万人。この中には多数のパレスチナ人も含まれてるわ。」「EUとアラブ各国が合同で救援活動中だ。こうなっては宗教うんぬんの

問題じゃねえしな。」「・・負けた。完全に俺たちの負けだ。」「相手の真意がでかすぎた・・それを読みきれなかったのが敗因よ。」

「そうではなく、僕たちが対処する以前に、勝負はついていたんです。・・言い訳にもなりませんけどね。」「やりきれませんな・・」

「あんたらの責任じゃねえ。・・と言っても、気休めにもならんか。」「ともかく、八卦獣の七体まで倒したことは事実よ。残るは・・」

「・・『天』の八卦獣。」【その実体も能力もさっぱり不明じゃ。皇はどう動いてくるのか・・】「・・最終決戦、かな?」ニイッ・・

 

フロリダ。「ほぼ当初の目標は達成できましたね。」「宗教そのものよりも、それを悪用する連中が気にくわん。少しは薬になったろう。」

「何事もほどほどが一番です。・・さて、『天』はいかに使われます?」「もう始めておる。少々時間がかかるのでな。」「たしかに。

第一のターゲットは?」「ここだ。」すっ。「なるほど、まずは肩ならしに軽くいきますか。」「海では被害がでかすぎるのでな。」

 

その頃、NORAD・宇宙監視ネットワーク。「おい、交替だ。」「やっとか。」「引継ぎ事項は?」「特になし。衛星軌道のゴミ置き場は

平穏なり。」「数千万個のスペースデブリ・・よくもこれだけ汚したもんだ。」「大きさはピンからキリまで。数mm程度のものが

人工衛星にぶち当たるなんてしょっちゅうさ。」「自業自得だよな・・ん?」チカッ。「なんだ?」カタカタ・・「・・ああ、いくつか

落下軌道に入ったんだ。」「大きさは・・うん、これなら大気圏で燃え尽きるな。」パパパッ。「なにっ?・・またか。」「なんだ?・・

どんどん増えてる!」「おかしい!こんなペースで落下が発生するわけが・・」パパパパッ。「そ・・そんな?!」「・・警報だ!」

ヒュイヒュイ!『こちら中央管制、どうした?』「軌道上で異変が!デブリが次々と落ちてゆく!毎分200個!」『なんだと?!

いま実映像で確認する。』ぱぱっ。オオッ!「・・流星雨?」「しし座流星群でも、これだけの数の流星は見たことがありません!」

 

アガルタ。「なんだ・・あれは?」ヒュンヒュンヒュン・・「こんなに流星が走るなんて・・」「・・何かが、始まったようです。」

グルルル・・「凛が・・何かを感じてます。」「・・もしやあの流星が?」「『天』、でやしたね・・」「あっ、大きいヤツです。」

カアアアーッ・・「燃え尽きた・・ね。」「・・始まったね。」「ああ・・これからが本当の戦いだ。」「アルマゲドン・・開始ね。」

 

♪夜空に走る流れ星 祈るヒマもない速さ

♪でも今夜は流星雨 願い事もかなうかも

♪天の頭脳は空見上げ 近くの星々呼び集め

♪【星に願いを】かけてみよう だんだん大きく・・え?




インド・カルカッタ。「おい、あれを。」ヒューン・・「流れ星?きれい・・」ヒュンヒュン・・「どんどん増えてる。流星雨だ。」
「あっ、大きい!」カーッ!・・「消えた・・」「あっちにも。」ボォォ・・「・・ねえ、だんだん大きくなってない?」
「近くに落ちるのかな?」ヒュォォ・・ビュオオオオーッ!「うわっ!・・いきなり風が!」「な、なに?」ゴオオオオーッ!
「そんな?!・・まさかここに!」ヒュン・・ズドオオオーン!『うわあああーっ!』ドドドドッ、ドバアアアアーン!

『・・カルカッタに落ちたのは隕石ではなく、廃棄された人工衛星であったとの公式発表がありました。推定最終重量は2トン、
その運動エネルギーはメガトン級核弾頭に匹敵し、5km四方の市街地は壊滅。死者行方不明50万、負傷者120万以上の大惨事に・・』
『・・シベリア、カナダ、アフリカでも落下が確認されました。人口密集地でないため、人的被害はいまだ確認されておらず・・』
『臨時ニュースです。NASAおよびESAの共同発表によると、続発するスペースデブリの墜落に続き、稼動中の人工衛星でも軌道の偏移が
確認されました。軌道修正作業が続けられていますが、一部の衛星は推進剤を使い果たし、修正不能となったとのことです・・』

飛行要塞アガルタ。「八卦獣の仕業か。」「しかし効率悪そうね。たしかにカルカッタ直撃はひどかったけど、今のところ地表にまで
到達したのは十数個、しかも僻地ばかり。」「数撃ちゃ当たる。それが一個でも大惨事ですよ。」「はて、どうも合点がゆきませぬな。
このような非効率的作戦を進めるは、らしくありませぬ。」「はい。・・皇にはまだお考えがあるとしか。」【まるで練習をしとる
ようにしか見えぬのがのう。】「練習?・・」はっ。「・・もしや!」「エリス、なんだ?」「・・NEO、地球近傍天体。」ぎょっ!
「なるほど。ベル、イタリアのスペースガード財団に、NEO軌道に異常な変化は無いかを問い合わせろ。」「すぐに確認するわ。」
「こちらでもネット検索してみます。」カタカタ・・「こんなにあるのか・・」「これでも1km以上の大きいものだけです。それ以下なら
それこそ星の数ほどあります。」「たとえ100mでも衝突すれば核爆弾と同じよ。」「これが『天』の八卦獣の能力ですか・・」
【念動力じゃの。しかし、衛星や星を引き寄せるとは恐ろしいパワーじゃ。】「問題は、その魔獣がどこにいるかだぜ。」「世界各地に
諜報員を派遣してるけど、まだ特定できないわ。」「・・私もまだ感知できない。」「・・ねえ、衛星の落下軌道から算出できない?」
『難しいがやってみよう。演算開始・・だめだ、散らばり過ぎてる。』「散らばる?・・モニターに落下軌道を出してくれ。」ぱっ。
「たしかにバラバラですね。」「・・いえ、何か見えそうな気がする。」「ロシアの南国境を沿うような・・あっ!」『シベリア鉄道!』
「そうか、八卦獣は鉄道で移動しながら!」「道理で場所が特定できないはずだわ。」「どの便か特定できるか?」『観測日時と方向から
算出は可能だ。・・特定。903列車だ。』「ウラジオストクからモスクワを結ぶ鈍行ね。」「なるほど、ゆっくり移動してるわけか。
現在位置は?」『ノボシビルスクまで半日の距離。今から飛べばじゅうぶん間に合う。』「よし、ノボシビルスクで乗り込もう。」

第四十九夜「星に願いを」 - 八卦獣【天】??の脳髄 登場 -

忍空挺「飛燕丸」。「シベリア鉄道とは良いところに目をつける。」『世界最長の路線、しかも各駅停車の鈍行ならば時間も稼げる。
これを考えたのは、かなりの策士だな。』「便まで特定できたんなら、止めて調べちゃえばいいんじゃ?」「そうもいきません。
ロシア政府を通せば、手続きだけで何週間もかかるでしょう。」「ならば直接乗り込むほうが早いな。」『列車ごと破壊するとか。』
「それこそ無理だ。鈍行には乗客もおおぜいいる。人質とは言わんが、それに近い状態だ。」「かといってどっかで降ろせば敵にも
すぐばれる。難しいとこね。」「せめて車輌が特定できれば、それだけ分離することも可能ですが。」「私なら客車に隠すな。案外、
網棚の上にでも無造作に置かれてるかもしれん。」『木を隠すには森、でござるな。』「乗客の荷物いちいち調べなきゃなんないか。」
「エリス様が感知できる保障もありません。敵はそこまで手を打ってるはずです。」「だな。件の列車を追って乗り移ろう。」

フロリダ。「タイタン達が特定したようです。」「予想より早かったな。いかに?」「ゲルマン忍群を迎撃に配しております。」
「無理はさせるな、最終目的を達成するまででよい。」「見つかるギリギリまで動かないよう指示しております。どのみち、簡単には
見つからないような隠し方をしておりますので、かなり稼げるかと。」「秘密部隊の足止めは?」「ぬかりなく手配しております。」
「ならばよし。だいぶ制御にも慣れてきた。そろそろ本命に手を伸ばそう。」「前座は終了・・いよいよ真打ちの登場ですな。」

ノボシビルスク・グラーヴニ駅。「秘密部隊が来れないだと?」「同時多発で魔獣が出現しやがった。みんなそちらに対応してる。」
「敵も考えてますね。」「それだけ重要な作戦だってことよ。」「むろん、列車内にもなんらかの策を配置してあるでしょうな。」
「早く対処しないと、どこにどんなものが墜ちてくるか。」【大きいものや遠いものの制御に慣れてくる前に、カタをつけんとな。】
『まもなく903便が到着します。』・・♪ピィィィーッ!「お、来たな。」「男女別で二部屋を確保してある。そこに落ち着くぜ。」

列車内。ガタコンガタコン・・「さて、捜索にかかるか。」「この列車は機関車抜きで18輌。最後尾に貨物車、ほぼ真ん中に食堂車。」
「先頭からと最後尾からの二手に分かれて、食堂車で落ち合いましょう。」「貨物車には男性陣、女性陣は前から攻めてくれや。
何かあったらケータイで。」「・・わかった。」「罠があれば噛み破るだけでございます。」「さて、鬼が出るか蛇が出るか・・」

貨物車。ガタゴト。「う~ん、特に怪しいものは無さそうですね。」「考えてみれば、いつでも切り離せる最後尾に置くのはあまりにも
危険すぎるな。」「まず真っ先に捜されるとこですしな。」「だな。客車の捜索に移るか・・ん?」ガシャン!ガクン!「なんだ?!」
「もしや!」ダダッ!・・「・・やっぱり!車輌が切り離されました!」「さっそくの妨害工作かよ。」「・・お静かに。」はっ。
チクタク・・「時限爆弾?」「お約束ですね。」「飛び降りて追いましょうぞ。」カキッ、ズポッ。「ドアノブが?」「まあご丁寧に。」
「閉じ込めたつもりか。このくらいの壁が破れないとでも!」ブン!バシイイーン!「なんだ?!」オォォ・・「これは・・呪紋です。
神力を無効化されてます。」「この車輌全体に施されてるようですな。」「ここまで手の込んだ罠とはな。」「さすがにピンチかな?」
キィン!『・・え?』ピピッ・・ドガシャアアアーン!「天井が?」「まったく、余計な手間をかけさせる。」ひょい。「アテナ!」
「どうせこんなことだろうと思ったわ。」「ギネビアさん!」「上がってこい。飛燕丸で列車まで送ろう。」「おお。」タタッ。

飛燕丸。「また助けられたな。」『いつものことでござる。ときにあの貨物車は、あのまま置いておくと世間の迷惑でござるな。』
「線路を壊されちゃロシア政府も怒るぜ。」「引き上げて放り出そう。アンカー砲、ていっ!」ドシュッ!ヒュルルル・・ドスッ!
『最大出力で上昇。ラペリングだ。』ヒュンヒュンヒュン!ふわっ・・「安全なとこまで持ってって・・投下!」バチン!・・
ズドオオオーン!『おおっと!』グラグラッ!「思ったよりでかい爆弾だったんだな。」「うわ、直径1kmが吹っ飛びましたよ。」
「急いで追いつこうぜ。この調子なら別班も忙しそうだ。」「まあ、心配される程度のメンツじゃないけどね~。」『確かに。』

その頃、女性班。「エリスちゃん、何か感じない?」「・・よくわからない。」「あれだけの念動力、隠蔽できるとは思えませんが。」
「・・ひょっとして、微弱な念波で探知して、軌道変更のときだけ高出力・短時間で?」【ありえるの。それなら感知されにくい。】
「問題は、そのパルスがいつなのかなんだけどね。」♪ピン!はっ!『感じた!』「私たちでもわかった!・・あっち!」どかどか!
ギシッ。ズドドドッ!「アラクネさん!」「・・トラップ!」「・・あっぶね~。」「?・・刺さってない?」「ギリギリセーフ。」
キラッ。「すごい・・槍の隙間に!」「反応速度をなめんなよ、と。」グッ、ボキボキッ!「さっき通過したときは作動しなかった。
安全装置を外したってことか。」「乗客がひっかかったらどうすんだか。」「・・その心配はなさそうだよ。」『え?』ひょい。
「あら・・皆さんお休みで。」【一服盛られたようじゃの。】「この律儀さは・・ゲルマン忍群ね。」「ここから先はトラップ原か。
まずはセンシング。」フッ・・キラキラ・・「今のは?」「ひさしぶりのミクロスパイダー。隠されたトラップを見つけてくれるわ。」
「まあ、便利な・・」【さすが女郎蜘蛛じゃの。】ぴく。「・・わかった。廊下はほとんど地雷原ね。感圧式スイッチだらけよ。」
「・・安全ルートあるの?」「いいえ、ここは逆転の発想よ。・・これだ。」ひょい。「消火器?」「ほい。」ゴロゴロ。バタバタン!
「なるほど、進む前に起動させてしまえば。」「うわ~、いっぱい仕掛けてましたね。」ガラガラーン!「・・なんで金ダライまで?」

最後尾。「さて、連中どこまで来てるやら。」「ちょっとやそっとの罠じゃ通じないはずですが。」「念のため三牙将が屋根伝いに
先行してくだされてますが。」「それでも、簡単に先には進ませてくれないだろうな。」「こっちは予定どおりに中を行こう。」
ツカツカ・・「乗客は眠らされているか・・」「これなら被害を最小限にできますね。」「・・いえ、そうとも限りませんぞ。」
バッ!カキカキーン!『なっ?!』「氷晶篭手。瞬時に晶結できますぞ。」「・・ロシア人?!」「いいえ。つらら爪!」パキキッ。
グッ、ベリベリ!「変装か!」「乗客に化けて伏せる。想定された作戦ですな。」シュシュン・・「逃げ足が速い・・賢明だ。」
「まともに戦っては勝算はゼロ。忍びゆえの冷静な判断だぜ。」「アンブッシュもありか。ゲルマン忍群も今回は本気だな。」
「これまでの八卦獣戦では手を出しませんでしたが、いよいよ大詰めということですね。」「こっちも心してかかりましょうぞ。」

列車の上。ガタコンガタコン!「屋根は問題なしか?」「否。ゲルマン忍群のこと、何らかの罠は必然でござろう。」「むしろ屋根の
ほうが、放り出しやすいしね。」「ユーディット。」「了解してます。」グニュゥゥゥ~。『これで踏み罠は発動しません。』
カンカン・・シャシャッ!「来たか。」『三牙将、ご無礼!メッサーグランツ!』ビュビュッ!「卍手裏剣か。」くいっ、キリキリッ。
キキキィン!『ブリッツ・クリーク!』シャシャッ!「三人同時攻撃、いいタイミングだ。だが。」ダギュルルルッ!『剣が?!』
「龍尾一旋!」ズバシャアアーン!『ぐおおっ!』「残念ながら、こちらも同時迎撃は可能だ。」ギュラララッ、カシカシーン!
ザザッ。「ほほう、前後からか。」「いえ、側面にも貼りついてるわ。」「完全に包囲されたか。」ジリッ・・「一斉攻撃の構え・・
何人か撃墜されても誰かが直撃をとる。捨て身の戦法でござるな。」「スターリングラードに閉じ込められた気分ね。あ、逆か。」
「さすがにこれだけの数では対応しきれんな。となると・・」ジリジリ・・どすっ。『三人がかたまった。今だ!』ダダッ!
ズドズドズドッ!『獲った!・・ん?』ググッ・・『・・刀が、抜けぬ?!』「掛かったな。」ぎょっ!くるっ。『・・背後に?!』
「そのとおり。あの一瞬に真上に飛びぬけたのだ。」「上空しか逃げ道なかったしね。むろんそのままじゃ空中で串刺しにされるから、
砂で空蝉を作ったの。」「高圧砂ゆえ抜けぬ。それに。」ズバアアーン!『ぐはっ!』「榴散弾ともなる。これぞ忍法砂塵隠れ。」

中間の食堂車。「・・おっ、無事だったか。」「ちょっと手間どったけどね。そちらは?」「収穫なしだ。それに」バシャアアーン!
スタスタッ。「残念ながら上にも怪しいものは無かった。」「はて、何処へ隠したものやら。」「・・あ、まだ捜してないところが。」
「どこだ、エリス?」「・・機関車。」はっ。『そこだ!』ガクン!「なんだ今の衝撃は?」「・・減速してる?まさか!」ばっ!
「・・先頭の機関車が離れてます!」「先手を打たれたか。」「もうここには用は無い。機関車を追うぜ。」「飛燕丸、接近せよ。」

飛燕丸。ヒュンヒュン・・「全速力で逃げてるな。」「なんとかして飛び移らなきゃ。」「けどここはトンネルの多い山岳地帯。
タイミングが難しいです。」「ここで切り離したのは、ちゃんと理由があったんですね。」【敵もさるもの。てごわいのう。】
「とにかくできるだけ接近するでござる。」ドドーン!『なにっ?!』【棟梁、機関車から対空ミサイルです。損傷軽微。】
「スティンガーまで準備してやがったか。」「この状況だとこちらが不利だな。」「・・やむをえん、強行手段でいくぞ。」
ガラッ。ばばっ!「・・変神!」シィィィ・・シュバアアアーッ!『むん!』キィィィーン!・・ズシーン!『ここで終点だ。』
「なるほど、トンネルの出口で待ちぶせね。」「やれやれ、これでなんとか」・・ズズーン!『なにっ?!』ガラガラガラ!
「バカな?トンネル内で自爆だと!」「こんな手を!」「飛燕丸、ドリルモードだ!掘り起こせ!」ギュラララッ!ザザザザッ!
『・・いたぞ!』グッ、ガラガラガラ!『・・無人?』「・・フェイク?!」「じゃあ脳はどこに?」「・・あ、あれなに?」
キラッ。『これか。機関車の部品ではないようだが。』「ちょっと見せろ。・・中継システム?」はっ。「しまった!もともと
脳はここに無かったのよ!どこか別の場所から中継してたのよ。」「じゃあ本体はどこに・・?」「ちょい待った。・・この中継器、
自動追尾パラボラアンテナが付いてるぜ。しかも角度は・・」くい。『・・宇宙?』「アガルタ応答せよ。」【こちらキャプテン。】
「今から写真を送るので、送信元を解析してくれ。」♪ピッ。【受信した。最終アンテナ角度と線路方位を照合。確度65%で特定。】
「どこだ?」【国際衛星識別符号1990-037B HST。早い話が】「・・ハッブル宇宙望遠鏡!」【そのとおり。他に該当物体なし。】

フロリダ。「気づかれたようですね。」「だが時は稼げた。大物を捉えたぞ。」「予定どおりです。さて、彼らはどう対処するか。」

飛行要塞アガルタ。「完全にやられたな。」「まさか陽動とは・・」「今回はかなり手が込んだことしてくれるわね。」「それだけ
大きい作戦なのでしょう。して、いかがいたしますか?」「一番簡単なのは、そのハッブルとかを撃ち落とせば。」【どうせ無人の
衛星なんじゃろ。なら話は簡単じゃ。】「・・そうもいかないね、ことにハッブルは。」「世界の誰もが知ってる宇宙望遠鏡だ。
もし破壊すれば世界中の注目を集めるな。」「他の衛星ならごまかせるけどね。いいとこに目をつけたわ。」「NASAには緊急展開
宇宙軍があるはずだ。それを行かせて除去すれば。」「ちょっと前ならそうだが、もう間に合わねえ。」「スペースガード財団からの
最新情報では、NEO(地球近傍天体)の一つに異常な軌道変更が確認できたわ。小惑星番号(44444)1999DA。コード名『アンゴルモア』。」
「ノストラダムスで騒がれたアレね。」「大きさは?」「直径12km。直撃すれば地球氷河期だな。」「となると、手はひとつです。」
「核ミサイル集中攻撃による破砕もしくは軌道変更でございますな。」「大国好みの策ではあるが、現実問題が多すぎるぜ。」
「破片は高濃度の放射能を帯びたまま大気圏突入するわ。死の灰が世界中に撒かれる。」「軌道変更も、こっちの望みどおりの方向へ
向いてくれる可能性はきわめて低いぜ。運任せにしちゃリスクが大きすぎる。」「やはり直接行って外すしかないようですね。」
【神や魔獣は宇宙空間でも行動は可能じゃ。我らが行けば。】「よし、俺とリューズで行ってこよう。」「衛星の位置は連絡するぜ。」

衛星軌道。『・・あれか。』『形状が特殊なのですぐわかりましたね。』【外装に何かおかしいものがないか点検してみてくれ。】
『了解。あと3分・・?!』キィィィ・・『これは?!・・頭が・・痛い・・』『な、なんだこの頭痛は?』【いかん、これは毒電波じゃ!
長時間浴び続けると脳細胞が破壊されるぞい!】キイイイ!『ぐおおおおーっ!』『タイタン・・ここは・・一時・・』『・・撤収!』
ゴオオオーッ!・・『はぁっ、はぁっ。・・ここまで離れれば大丈夫か。』『さすが脳の八卦獣、精神攻撃は相当なものでしたね・・』
【これでは近づくことすらできぬのう。】【とりあえずアガルタに戻ってくれ。作戦を一から練り直そうぜ。】『ああ。・・厄介な。』

アガルタ会議室。「タイタンが撮ってきてくれた写真を照合したところ、ここの部分に設計図と一致しないパーツがあったぜ。」
「NASAに確認したところ、前回整備時には確かに存在しなかった部品とのことよ。八卦獣はあの中ね。」「近づけないなら強行手段です。
ミサイルで破壊しましょう。」「同意だ。ホワイトハウスに承認を取り付けた。イージス艦から対衛星ミサイルが発射される。」
「映像、来るわ。」シュゴォォォーッ!・・「命中まで20秒・・え?」「ミサイルが・・ぶれてる?」「誘導障害?・・まさか!」
ガクガクッ、ボオオオーン!・・「空中分解・・誘導装置が狂って軸がぶれたか。」「ECMまでやるとは、敵もさるものね。」
「米軍に伝達だ。作戦中止。これ以上やっても同じ末路だ。」「了解。ただちに伝えるわ。」「鉄壁の電子の宇宙要塞か・・どうする?」

「フハハハハ!お困りのようだな諸君。」カツッ。「ショウ・アースライザー?いつの間に。」「魔獣退治に出かけてたんじゃなかったの?」
「ああ、そちらはさっさと終わらせてきた。」「ビル間に誘い込み、落とし穴とビル崩しでつぶしました。」「公式には魔獣が自分で壊した
ビルの下敷きになって自滅ということで。」「死骸を処分する手間も省けましたので、現地政府は大喜びです。」「まあ済んだことはええ、
問題はこっちや。」「『ダンテ』は宇宙空間作業も対応してる。それにバルカンスーツには有害電波遮蔽機能もあるよ。」ぽりぽり。
「なるほど、その手があるか。」「廃棄衛星解体爆破の依頼もけっこうあるのだよ。ここは本職に任せていただこう。」「それでいこう。」

ダンテ。「出発準備よしと。キャプテンよろしく。」【アガルタ急上昇開始。最大出力。】グン。ゴオオオオーッ!・・「カウントダウン。
5、4、・・エンジン点火。」【2、1・・離脱。】「りだーつ!」ガコン、グォォォォ・・「最大出力。」ドオオオオーン!・・
【第一宇宙速度まで20秒。角度良好。】ゴォォォ・・「3、2、1・・カット。」ヒュゥゥン・・「加速フェーズ終了。みんな生きてっか?」
『おえええ~。』「内臓出るかと思った・・」「ゲロ袋、もうひとつください。」『ぶえええ~っ!』「やれやれ、大惨事だな。」
「そういうショウは平気なのか?」「三日連続で深夜バス乗ることに比べれば。」「うわー!それ絶対イヤー!」「あれは立派な拷問です。」

『そろそろハッブルが見えてくるよー。』ドカドカ。「あれか。」「妨害電波は?」「バリバリ出てますけど、ダンテ内は遮蔽されてます。」
「では撤去作業に行くか。」♪ビーッ。「なに?・・未確認物体急接近!」「なんだ?」「識別・・スペースデブリや!」「妨害工作です!
おそらくは近辺のデブリを念動力で。」「ふふふのふ。こんなこともあろうかと。叡智。」「宇宙機雷、放出。」ドシュドシュッ!
「効果範囲が重ならないよう配置完了。」・・パパパパッ!「撃発確認。デブリの軌道変更に成功しました。」「衝突軌道にあるデブリを
爆発で吹っ飛ばすんや。むろん、ダンテに影響せんだけの距離はとっとる。」「宇宙空間で物を当てるというのは、意外と難しいんですよ。
わずかでも変な力が働くと、もう制御不能になるほどです。」「近づいてしまえばデブリも来ないでしょ。今のうちに近接するよ。」
「そういえばダンテは念動力にやられないわね?」「ああ、あれのおかげですよ。」『え?』「・・お札?」「陰陽庁長官からいただいた
霊験あらたかなお札である。」「土御門雅か。なるほど効き目があるはずだ。」「親交あったの?」「見返りに既刊新刊フルセットを。」
「ついでに有名サークルのレア本も付けといたんで喜んどったで。」『おいおい。』「50部しか刷られなかったもので、中古市場に出たら
数十万の値がつきます。」ぴくくっ!「・・まさか、あの?」「虚空画聖の初期本や。」「買う!言い値で買う!」『エリス~。』

シュゥゥ・・『これがブラックボックスか。』『あ、これ両面で貼り付けてるだけですね。』『いつの間にこんなの取り付けたのかな?』
【おそらく半月前の定期点検のときにジークハイルの息がかかった宇宙飛行士のしわざと思われます。】【ヘタするとNASAやESAの上層部も
一枚噛んどるかもな。宇宙事業は物入りやさかい。】【米軍ルートの線も濃いかと。】『遮蔽してダンテに運ぶ。叡智、電磁ネットを。』
『はい。』バサッ。『取り外し・・?!』ぴくっ!『総員退去!千夏、ケーブル緊急巻取りだ!』【なんかわからんけど、わかった!】
『時間が惜しい、このまま離れろ!』ズズズズ・・カッ!『ああっ!』『・・爆発?!』『やはり。・・巧妙な罠だ。』【なぜわかった?】
『箱に手を置く寸前、感じたのだ・・カチリという回路の動く音を。』『近接センサ?でもあれは電子的で可動部が無いはずです。』
『言っただろ、感じたと。回路に電流が流れれば磁場が動く。それくらい我輩にもわかる。』『いえ、わかる社長がすごいんです。』

「まさかここまで仕掛けていたとは。」「じゃあ、本物の脳はどこなの?」「それもわかった。あの箱はいわばアンプだ。受信した
念動力を増幅・収束させ、対象物へ精確に送るための。」「ということは・・司令アンテナが?」「気づかれずに送るには・・そうか、
ヒューストンのジョンソン宇宙センター!」「ベル、「チーム・夢幻」を。」「ただちに指令を送るわ。」「どこにいるのか知らんが、
間に合うのか?」「新兵器があるから、ものの数秒で着くわ。」「・・あ、もしや雅さんが唐突にシンガポールに現れたアレですか。」
「そちらは任せるとして、こっちはどう動く?」「サリーくん、小惑星『アンゴルモア』の位置は?」「まもなく月軌道を通過します。
限界距離まで70時間。」「時間はある。恐怖の大王を門前払いするぞ。発破で軌道を変える。」「こりゃひさびさの大発破になるね。」
「ところで三牙将は?ロシアで別れたきりだが。」「こんなこともあろうかとヒューストンへ行ってもらった。向こうで合流だ。」

その頃、日本・鈴鹿。「はい、了解。・・ヒューストンで任務だ。」「いささか遠いわね。」「明日は決勝。ちょいとしんどいですな。」
「ご心配なく。そのために『虚空画聖』にこのプログラムを作ってもらったんです。」カタカタ・・「アメリカ・テキサス・ヒューストン、
ジョンソン宇宙センター・・これだ。」「内部の画像がいいな。」「ありますよ・・これ。」ぱっ。「ホントにこれで直通になるの?」
「開通ボタンをクリック。」カチカチッ。・・ボオッ。「出ましたな。」「まさに『どこでもドア』ですね。」「帰りはどうするの?」
「このラップトップを持っていって逆のことをするだけです。ここの写真を取り込んでおきました。」「では、さっさと済ませましょう。」

ジョンソン宇宙センター。シャシャ・・【目標はハッブル管制室にあるはずです。】【その脳みそを発見して回収もしくは破壊するのね。】
【むろん敵も待ち構えているでしょうな。】【・・止。】ぴたっ。【サーチアイ。】チカチカッ。【トラップ感知。伏兵もお待ちかねです。】
【蘭、トラップの無効化できるか?】【検索中・・特定。ハッキング開始。難易度レベル4、ザルですね・・センサーOFF。無力化成功。】
【幽と街、先行。】【了解。影沈み・・】ズズズ・・【掃除してきますね。】つかつか・・ドスドスッ!「オールクリア。進めます。」

ハッブル管制室。パシュ。・・シャシャッ。「誰もいない?」「いえ・・いますね。」『お待ちしておった。』ザザッ!「アルベリッヒ!」
「あーら、大歓迎だこと。」「さすがに全戦力を投入しますか。」『君たちが相手となれば、これでも不安なくらいでござる。』
「そこまでして守るべきものが、ここにあるということですね。」『いかにも。ちなみに援軍は来ぬぞ。』ぱっ。「あれは・・三牙将!」
『入り口で足止めさせてもらった。こちらが済むまで阻止できればじゅうぶん。』「さて、それはどうでしょうか?」すっ、シャィン!
「どうやらここが決戦場になりそうね。」ズズズ・・「まあ、これくらいなら私たちだけでもなんとかなるでしょう・・】スゥゥ・・
「ターゲット・マルチロックオン。戦闘モードに移行します。」バサササ・・『では始めよう。クリーク。』『ヤヴォール!』ダッ!

センター前。ザザザッ。「いきなり大当たりだな。」「敵さんもいよいよ総力戦てとこね。」『チーム夢幻も中で同様の状況でござろう。』
「やはり降りかかる火の粉は払わなければ。」『クリーク!』ダダッ!「龍馬!」ジャララッ!「旋龍壁!」ギュラララッ!ズバババッ!
『ぐおおっ!』『まず包囲陣を崩す。砂塵弾!』ザザザーッ!ビスビスッ!「いくわよ。魔導拳・虚空打!」ボボボッ!バゴバゴッ!
「最近の流行といたしましては・・」すっ、ジャラララッ。チャッ。「マジカルマスケット銃でございます。」パパパァァーン!
『やはり三牙将、お強い。アレを呼べ!』♪ピィッ!・・ゴバアアアッ!「むっ?巨人か。」『ゲルマン忍者のからくり兵器でござる。』
『いけっ、我らがアイゼン・カメラード(鋼鉄の同志)ドンナー!』ズシーン!ズシーン!「巨大ロボットとは、豪勢な出し物じゃない。」
『叩きつぶせ!』ゴオッ!ズドオオーン!『やったか?』「やってないフラグ立てちゃったのね。」ぴたり。『な・・なんだあれは?!』
「ギネビアに黒い・・鎧?」「魔造強化外骨格『羅號』。いままで使う機会が無かったのよね。」『片手でロボットの攻撃を止めるか・・』
グッ、「そろそろ離れなさいよ。せーの。」バゴオッ!ズザザザーッ!「反撃だ。砂風!」『心得た。臨兵闘者皆陣列在前!』ザザザザーッ!
ザン!『奥義・ビッグ砂風!』『なんと、砂風殿が巨大化だと?!』『こやつは拙者が抑える。アテナとギネビアでとどめを!』ガシッ!
ギギギギ・・「わかった。龍馬!」ギュラララッ!「龍尾豪打!」ビュオオッ!ばしいいいーん!ズドシャアアーッ!『信じられん・・
ドンナーが打ちとばされるとは!』「気を込めた一撃は山をも砕く。」「二番、ギネビアいっきまーす。ユーディ、第三種武装!」
「了解しました。」ギニュゥゥ・・ビシッ!【「名状しがたいバールのようなもの」です。】「どっからどう見てもバールなんだが。」
「『ようなもの』って言ったでしょ。ゆえに!」ダーン!「往生せいやぁっ!」ズババババーッ!『おおっ、ロボットが切り裂かれた!』
スタッ。・・ドドーン!「初代ガンダムのビームサーベルくらいの威力はあるわ。」「なるほど、Z以降のイライラ棒の比ではないな。」
『退け!中の部隊と合流して建て直す!』シャシャッ・・「第一ステージはクリアだな。」チン。『次はインドアでござる。』ザザザザ。
「ここからは己の腕のみで。キャスト・オフ。」バンバン!どさどさっ。「では参りましょう。ゲルマン忍群最後のいくさに。」ザッ。

管制室。「はっ!」シュパパパッ!・・ズバシャアアアーッ!「影槍!」バン!ズドドドッ!「飛燕抜刀霞切り。」ヒュヒュッ、ズババッ!
「紅の風!」バササッ!ヒュバババッ!ドカドカドカッ!『さすがだ。』スッ。「・・アルベリッヒ。」『拙者が相手いたす。バルムンド!』
シャリーン!「ほう・・ゲルマン忍群の秘宝。」『いかにも。隕石に含まれし未知の合金を鍛えし業物。やおか愛染にヒケをとらぬ!』
ビュッ!ヒュイッ、ズバアアアーン!「!・・刃風だけ大きく床が裂けた!」「こりゃかすっただけでもどっか持っていかれますな。」
「解析・・該当材質無し、硬度・靭性は測定不能?」「いいでしょう。『愛染』の相手に不足なし。」チャッ。・・ジリッ。シャッ!
『この間合い、もらった!』ビュオッ!「いいえ。」ヒュッ!ズドオッ!『ああっ!』『・・まさか、投げるとは・・』「忍びは剣士では
ありません。ゆえに刀を投げるに躊躇無し・・いかな名刀であっても。」『・・土壇場でそれを忘れ去ったのが、私の敗因だな・・』
タタタ・・「・・終わっていたか。」「三牙将、ご覧のとおりです。」「ちょうど決着ついたとこか。」『いいとこを見逃したな。』
「まだかろうじて息はあるみたいです。」「手加減する余裕などありませんでした。まさに紙一重・・」『それでよい。拙者も誇りを
もって逝ける・・勝負には負けたが、任務は完遂した・・』はっ。「まさか?」『そうだ、もはや「アンゴルモア」は止められぬ・・
「プロメテウスの脳」の役目も終わった・・』♪ピッ。ボオンッ!「八卦獣を?!」「自ら破壊するなんて!」『ヤハウェ殿の指示だ。
用が済めば不要・・』「・・任務、大儀でした。」フッ。『しからば、またいずれ・・』コトン・・「・・ゲルマン忍群、お見事でした。」

『・・というわけで、八卦獣の要素は消えました。』「了解だ。・・敵さん、なかなかやるぜ。」「結局のところ、一連の欺瞞工作は
時間稼ぎに過ぎなかったわけね。」「たしかにあれだけの小惑星を軌道に乗せるとなると、かなりの時間がかかったであろう。すべては
そのための陽動か。」「まんまと踊らされたわけだ。だが。」「『アンゴルモア』を見事にぶち壊せば逆転サヨナラホームランよ。」
『ところで、アルベリッヒの言葉に妙なものがありました。八卦獣の名前ですが・・「プロメテウスの脳」と。」ぎょっ!『なにっ!』
「『プロメテウスの脳』・・そんな?!」「なぜマスターの必殺技名がそこで?」「わからん・・リューズ、プロメテウスの名は?」
「え、はい、聞いたことがあります。最強の巨神。デウスの方針に逆らい人類に火を、すなわち文明をもたらしたゆえに反逆者とされ、
天界を追放。その後はエデンで神と崇められ、静かに暮らしてましたが・・」【天界はそれも面白くなかった。いずれ人類を率いて
天に攻めてくるやもしれぬ。いずれ脅威となる勢力は芽のうちに摘み取らねばと。】はっ。「・・まさか、第一次魔獣戦争が?!」
「そうか、真相を隠すために、魔獣戦争と偽ったんですね。」「・・実のところ、天界以外は侵攻に反対しておりました。」「イエティ?」
「しかしデウス様の猜疑心、いえ、ありていにいえばプロメテウス様への嫉妬が天軍を動かしたのです。」「だが返り討ちにあった・・と。」
「デウス様はこれを利用しました。プロメテウスの軍は強大だ、いずれ四界へも攻めてくるだろうと。」「そっから先は読めるわ。
四界は明確になった脅威ゆえに団結し、前回より大規模な軍勢を送り込んだ。・・それが第二次魔獣戦争。」「では・・魔獣とは?」
「エデンの原生生物にプロメテウス様が神力を授けたものでございます。」「神軍と戦えるようにするために?そこで疑問。なんで人間を
魔獣化させなかったの?」「客観的にみて人間は他の生物より脆弱でございます。弱肉強食を生き抜く機能も体力も持っておりません。」
「なるほどな。知恵で頂点には立ったが、その代償に多くを失ったわけだ。」「いえ、それは正確ではありません。」【本能のみの魔獣は
そのとおりじゃが、七鎧聖クラスには人間も合成されておりまする。】「・・キマイラ?」「霊子レベルでの融合です。例えば私のように。」
「ヤハウェ、いやプロメテウスは直系の部下を必要としたんだな。」「言うこときかない動物さんばっかじゃ、まとまらないものね。」
「では錬魔聖師は?」「姿はそのままで、知力と不死性のみ付与されています。」【もともと頭はよかったので、それで充分だったんじゃ。】

「以上の背景がわかったわけで、どうする?」「まだ疑問はある。・・俺とプロメテウスの関係だ。」「巨神族は四界の天敵のはずです。
ならばなぜマスターが天界で何事もなく育ったのか・・ですね。」「イエティ、そこまで知ってるんじゃないの?」「いえ、さすがに
そこまでは。もし何かありとせば、四界の首長クラスしか知らないかと。」「そこまでして隠されなければならなかったタイタンの秘密・・」
【どうやら、皇に直接お聞きするしかないかのう。】「いずれその機会もあるだろう。」「・・仮説でいいなら思い当たるのがあるぜ。」
「しごく単純な話だけど、タイタンとプロメテウスは肉親じゃないかしら。」「ならばこうも考えられる。タイタンは万が一ヤハウェと
魔獣軍団が復活したときの決戦兵器だとな。」「でもそれなら十二神とかいるから・・あ。」「そう、十二神はたしかに精鋭部隊、だが
各勢力の思惑があるので使いにくい。加えてデウスの掟があるな。」「エデンへの干渉禁止・・破れば厳罰に処せられますね。かつて
プロメテウスがそうだったように。」「そうか!デウス様はそのために無実の堕天刑を!」「堕天してしまえば掟は関係ありません。
しかもその任は、四界の重鎮である十二神を使えません。」「だんだんわかってきたぞ・・すべてはデウス様の深慮遠謀か。」
「もしかすると、あんたの記憶を奪ったのもデウスかもしれねえな。」「そうだ・・俺には幼少時の記憶が無い。両親はもちろん、
誰にどうやって育ててもらったのか、それすら覚えていない。」「記憶が確かなのは、いつ頃から?」「そうだな・・アーレスと
知り合った頃か。それはよく覚えている。」「その時点で、過去の記憶が抹消されたんですね。」「正確には封印された、かと。」
「そこまでして隠されたマスター出生の秘密とは・・?」「議論中すまないけど、そろそろ『アンゴルモア』が見えてきたよー。」

ゴォォォ・・「でかいな・・」「こんなの直撃したら、地球のどこだろうと世界的な大惨事よ。」「でもこんな巨大なもの、僕たちの力でも
破壊どころか軌道変更すらできませんよ。」「最大出力プロメテウスでも焼け石に水でしょうな。」「私のドリルでも蟻の一穴以下です。」
【相手が悪すぎるわい。】「心配ご無用。そのために我が社がある。」「作戦を説明します。小惑星の最適箇所に爆薬を仕掛け、その衝撃で
軌道を変更します。」「破壊するには核爆弾数百発でも無理、ゆえに表面で連続爆発させることで横向きベクトルを加えて逸らせます。」
「計算の結果、小惑星の重心ポイントが割り出せました。そこに仕掛ければ方向を変えることができます。」「必要な爆発エネルギーも
算出したで。手持ちの高性能爆弾で間に合うわ。」「そこで頼みがある。爆発エネルギーを無駄なく推進力にするため、そのポイントに
でっかい穴を開けてほしい。」「わかった、俺とリューズでやってみよう。」「ドリルとプロメテウスがあればできると思います。」

小惑星「アンゴルモア」表面。【あともうちょっと右。・・はい、そこです。】【直径100m、深さも同じで。】『掘削を始めるぞ。
プロメテウス・トルネード!』ジャキッ、キュィィーン!ズガガガッ!『周辺部は私が。ゴーガ・ドリル!』ギャガガガーッ!
【すごいすごい、あっという間に掘れていくわ。】【工作機械の数十倍の速さですね。】【では爆弾設置に行くぞ。】パシュパシュッ。
シュゥゥ・・【叡智はBゾーン、かがりはCゾーンを。我輩がAゾーンをやる。】ザッ。【角度・・よし。】【ちょい右・・ここね。】
【最終確認だ。レーザーマーカーを。】ピピッ。【叡智、2mm右だ。】【こっちも・・こうね。】【三つのレーザーが一点に集中しました。】
【これで同期起爆させれば、穴自体をノズルとして巨大な推進力が得られる。小惑星の軌道を逸らすだけのな。】『なるほど・・』
【無線起爆では精度が出んので、今回は有線だ。】【時限起爆装置セット。15分後です。3・2・・マーク。】♪ピッ。【作業終了。】

「起爆まで1分。安全距離まで退避したよ。」「うまくいくといいな。」「計算では成功するはずですが。」「3・2・・・起爆。」
カッ!・・グオオオオーッ!「起爆成功。出力安定。」「小惑星の軌道がずれ始めました。」「成功や。」「全放出まで・・いま。」
ボオッ・・「軌道はどうだ?」「ただいま計算中・・えっ?」「どうした。」「・・ダメです、ベクトルが足りません。」『ええっ?!』
「騒ぐな、想定内の事態だ。原因は。」「小惑星の質量です。容積および採取した岩の比重から算出した推定値より重かったんです。」
「内部に重金属でもあったんでしょうか?」「そんなとこだろうな。さらに必要な出力を再計算。」「今の結果から不足分を逆算・・
最低でも25%増量が必要です。」「それだけの量の爆薬積んでませんよ。」「・・いや、切り札がある。夏美、余裕はあるか?」
「一本くらいなら何とかしましょ。」「何の話だ?」「『ダンテ』の推進器を一つ外して使う。」「またとんでもないこと考えるわね。」
「支持架を切断するカッターが必要だな。」「予備推進剤タンクも外さなきゃ。」「運搬はまた手伝ってもらいたい。」「承知。」

バジジジ!【切断完了。ゆっくり、ゆっくり。】『外すぞ。』ググッ・・【推進剤タンク取り付け完了。】【よし、運んでくれ。】
『この穴に入れればいいんだな。』【瞬間凝固ウレタンで固定する。】シュババババッ!カチカチ・・【固定よし。導通テストだ。】
♪ピッピッ。【確認。起動タイマーセット。】♪ピッ。【いちおう出来たが・・何せ急ごしらえだ、動かせばどうなるかわからん。】
『念のために俺が残って見張ろうか。』【いや、責任者たる我輩が残ろう。】【社長?!】【あわてるな、死ぬわけではない。あとで
回収してくれ。】『ならば俺もいたほうがより安全だ!』【・・うむ、そうだな。了承した。二人は心配せず戻れ。】【・・はい。】

「タイタンに任せとけばいいのに。」「いざというとき専門家がいないとどうしようもないでしょ?」「・・千夏さん、心配じゃないの?」
「あのバカがこのくらいで死ぬタマかよ。悪運だけはネ申クラスなんだから。」「・・何か、イヤな予感がする。」「気のせいさ。」
「戻りました。」「起動まで3分です。」「『ダンテ』を安全距離まで下げるよ。」「うまくいくはずや、社長がヘマすることない・・」

【あと1分。・・タイタン。】『ん?』【以前に聞いたな、なぜ千夏と結婚しないのかと。】『・・ああ。』【それはこの稼業にある。
爆発物を扱い、なおかつそれを起爆させる仕事は危険と責任を伴う。いつ吹き飛んでもおかしくない稼業だ。保険にも入れぬしな。】
『そういう問題なのか?』【そういう問題だ。】『・・そういうのは「死亡フラグ」だ。気に入らんな。」【ふははは!・・時間だ。】
カッ!・・ドドドド!【点火確認。ベクトル順調に上昇中。】『もういいだろう、離れよう。』【いいや・・まだだ。】ピキピキッ。
『むっ?・・ウレタンに亀裂が!』【やはり強度的に足りなかったか。我輩はこれを恐れていたのだ。】『じゃあ最初から!・・』
【手持ちの材料で最善を期したが、こうなる可能性は大いにあった。ゆえに残ったのだ。】『このままでは推進器が外れてしまう。
どうすればいい?』【これだ。】すっ。『・・スイッチ?』【有線起爆スイッチ。押せば推進剤タンクは爆発する。】『なぜ有線に?』
【無線起爆では失敗したときに取り返しがつかん。我輩は引き受けた仕事は完全に成功させる。】『だがその短さでは爆発の影響を!』
【だから貴殿がいる。うまく受け止めてくれよ。】『・・わかった。俺の身体を楯にしろ。』ズン。【始めるぞ。・・爆破。】♪ピッ。

カッ!・・「なに?!」・・ドオオオオンッ!グラグラッ!『うわあっ!』「こ、この衝撃は?・・推進点で大爆発!」『ええっ!』
「社長は?」「社長、応答してください!」ザザザーッ・・「ムダだよ。この混乱状態じゃ通信回復にしばらくかかる・・待つんだ。」
「でも!」「サリー、小惑星の軌道は?」「い、いまそれどころじゃ!」「忘れるな!私たちは仕事中だ!」はっ。「は、はい。・・
軌道変更確認。衝突コースを外れました。」「それでいい。・・見事だよ、ショウ。」「このデブリの多さじゃ近づくこともでけん!」
「そのためのウドの大木だろ。・・待つんだ。」「マスターは大丈夫だと思いますが・・」ザザッ・・「あっ。・・何か聞こえます。」
【・・ちらタイタン、ダンテ聞こえるか。】「こちらダンテ、状況を。」【ショウもろとも吹き飛ばされた。いま捜索中だ。】ザワッ!
「社長のビーコンは?」「・・作動してません。」「宇宙空間で見失えば、再発見することは難しいですぞ・・」「私も出て捜します!」

『・・ダメだ、見つからん!』『あきらめてはダメです!必ずどこかにいるはずです!』『あっちの方を、もう一度捜してみる。』
【・・無情なようじゃが、発見確率はきわめてゼロに近いですぞ。】『ゼロでないかぎり希望は捨てません。ゴーガは黙ってなさい!』
『くっ・・広すぎる。』『お捜しものかの?』『・・なにっ?!』ゴォォォ・・『・・あの影は、まさか?!』ゴオオオオーッ!

「えっ?・・発見!」オオッ!「タイタンから入電!社長を発見したとのことです!」『やったーっ!』「まもなく到着しますが、
爆発でデブリに激突して負傷。手術が必要です!」「命があるなら治してやるって!」「あ・・あれ。」『え?』ゴォォォ・・
「・・UFO?」「あのシルエットは・・まさか?」ゴオオオーッ!「エイだ!巨大エイが宇宙を飛んでる!」「大海神ボスタング!」
「な、なんで師匠が?」「しばらく見なかったですな。」【こちらタイタン。ショウを運び込むぞ。】「了解。エアロック開放。」

パシュッ。『社長!』「ふはははは!我輩がそう簡単にくたばる・・っ!」「あー、肋骨やられてるね。ほれさっさと医務室へ。
すぐにオペ始めるよ。」ドカドカ!・・「礼をいいます、ボクタング殿。」「なんの。礼は陰陽庁長官に言うがよい。」「雅さん?」
「しばらく収監されておったが、今回の作戦のバックアップを条件に釈放してもろうた。まあ、あそこのメシはうまかったがな。」
「それで・・でもよく見つけられましたね?」「ワシを誰だと思っておる。広大な海で物捜しするのと同じ要領じゃ。」「超音波ね。」
「デブリと人間の違いくらい反射パターンで見分けられんで、海の神が務まるか。」「さすがボスタング様でございます。」
「状況は長官より聞いておる。ヤハウェめ・・ついに始めおったか。」「でも小惑星の軌道は逸らせました。」「たわけ。きゃつの狙いは
そんなことではないわ。」『え?』「『アンゴルモア』はただの小惑星ではない。あれこそ」「あっ!小惑星が・・崩壊します!」
『なにいっ!』ダダッ!「中から何かが・・あれは、なに?!」「そうか・・これがヤハウェの真の狙いだったか!」「やられた・・」

ガラガラガラ!・・「ふふふふ・・久しぶりだ、魔獣要塞『アンゴルモア』。」「私の大切な部下たちを犠牲にしたのは遺憾ですが。」
「大元帥には感謝しておる。」「でもこれまでです。あとはご自由に。」「うむ。・・いよいよ攻勢のとき。」「ご武運を・・」

「要塞?あんなものがあったなんて・・」【ワシも知らなんだ。】「無理もない。七鎧聖にも秘密に建造されたヤハウェの切り札じゃ。」
「それをなぜボスタング殿が知ってる?」「ワシではない、雅どのが星晨の異常と卜占による過去視から導き出した答えじゃ。」
「なるほど・・人工的に造られた星なら、星晨が合わないはずです。」「けど私たちにさえ隠してた理由は・・?」「・・ひとつだけあるよ。
家臣にも隠さなければならないほどの大目的だとすれば。」はっ。【・・天界への侵攻か!】ぎょっ!「なんだって?!」「そのとおりじゃ。
八卦獣を暴れさせたのは、全てアンゴルモアを呼び寄せるまでの陽動だったのじゃ。」「・・あっ!要塞が移動します!」「方向は?」
「ラグランジュ3と推定されます。」「ぬうっ!・・『ヘヴンズ・ゲート』か。侵攻を始めおったか!」「で、でもあれは天界からしか
開かないはずでは?」「そのための要塞じゃ。あれには門を開く力を持たせておるはず。こうしてはおれん、ワシは先回りして生き残りの
十二神と迎撃体勢を整える。」「師匠、勝算は?」「おそらく八卦獣を投入してくるじゃろう。・・正直、戦力的に厳しいかもしれぬ。」
「では俺たちも。」「ならぬ。これは我らが対処すべきいくさよ。ぬしらはエデンを守れ。では!」ボオッ・・ゴオオオオーッ!・・

「さて、俺たちはどうすっかな。」「俺たちは十二神のように鍵を持っていない。自力での天界突入は不可能だ。」【そうでもないよ。」
ハッ。ボォォォ・・「ザ・カートカ?」「僕の能力ならば空間を湾曲させて天界へ行ける。」「けど『ダンテ』じゃ戦力的に心もとないわ。」
「アガルタを使おう。空間をジャンプするなら充分だ。」「秘密部隊と三牙将も召集するわ。」「七鎧聖には僕が声をかけよう。」
「この場合、七鎧聖は戦う理由が無いのでは?」「天界が滅べば次はエデンだ。どうせなら、あっちで倒したほうがてっとり早い。」
『そのとおりです。」ボオッ。「・・ジークハイル!」「皇への義理は果たしました。ここからは私の思うとおりに動きます・・そう、
エデンを守ります。」「決まりだな。一度地球へ戻って編成するぞ。天界で総力決戦だ。」「・・フィンブルヴィンテルは終わり、いよいよ
ラグナロクが始まる。・・我らはアインヘリヤルか、はたまたティターンとなるか・・」「『エッダ』ね。どちらにしても共倒れだけど。」
「むしろアルマゲドンかな。『然り、主なる全能の神よ、汝の審判は真なるかな、義なるかな』・・まあ、どっちでも関係ねえけどな。」

♪輝ける天の都に火の雨が降る
♪魔獣王の復讐の牙が神殿を裂く
♪明かされる真実 復讐するは我にあり
♪タイタンとプロメテウス 天地を揺るがす戦い
♪けど、この戦いの先に何があるの?
♪『巨神たちの神話』は、最後のページを閉じる・・


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。