巨神伝説タイタン   作:風雲再起

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精霊界・レンの氷原。ヒュゥゥゥ・・「さぶ~!冬着でも突き刺さるような寒さじゃない。」「うちは自家発熱
しとるからええけど、リヴィはちいときついか?」「すみません、フェイ・・オンブしてもらって。」ガチガチ・・
「ええてええて。誰でも得手不得手はあるもんや。それに・・背中に当たるもんが気持ちええしな~。」
「え?・・」コツン。「・・あっ!すみません、つい!」「あははっ、若い証拠や。ほれほれ。」ゆさゆさ。
「そ、そんなに揺らさないでください!」「あ、ちょうど熱いの一献欲しかったとこよ♪」すぱーん!x2
「いきなり下ネタで始めるんかお前らは!」「いや~、リヴィは可愛くて純情やきに、遊びがいあってな~。」
「たまには初物もいいかなーって。」「たくもう・・そろそろ「あいつ」が出現する地点だぞ。」『む・・』きりっ。
ヒュゥゥゥ・・「アラクネ、ダウジング探査。」「はい。」すっ・・「指先から子グモを降ろしたやて?」
「はい。アラクネはあのクモと糸で探し物を見つけるんです。それがダウジングです。」ピリピリ・・ピクッ。
「いた・・30度方向。こちらへ向かってくるわ。」「・・なんも見えんで。」・・はっ!「氷原の下です!」
ズズズズ・・ゴバアッ!「おっと!」ひょい、ガチッ!バリィィィーン!・・「そないなアホな・・魚やて!」
「この氷の下は地面のはずなのに!」「氷の中を水中と同じように自在に泳ぐ幻獣「ポリュペイモス」よ。」
「なるほど・・いまの調子でこの氷原を旅する者を襲ってたのか。綺羅の依頼の意味がやっとわかった。」
「まさか氷原の下にあんな魚がいるなんて、実際に見ないと信用されないでしょうしね。」「よし。依頼どおり
生け捕りにしよう。珍しい幻獣なので殺さず保護するようにとのことだしな。」「・・また来るわ。九時方向!」
「アラクネ、網を!」「ウェブネット!」バサッ!「上がってきたら一網打尽ね。」・・ゴバアッ!バサッ!
「おっし大漁!・・えっ?」カチカチ・・パリィィーン!「しまった!糸が凍って使いものにならないんだ!」
グワッ!「アラクネあぶない!」「火炎放射や!」ボオオオーッ!『うわっ!』ヒュッ!バリィィーン!・・
「ふう・・さんきゅ、フェイ。」「間一髪やったな。」「網が役に立たんとなると、別の手を考えないとな。」
「マスター、追い込み漁はどうでしょう。」「追い込みだって?」「はい。僕とフェイで網を張ります。」

「また来たわ!こんどは12時!」「読みどおりですね。」「ほなやろか。それっ!」バサバサッ!テケレリリリ!
「はああああーっ!」グイイイーン!ドドーン!キュアアアーッ!『まずは三時から九時にかけてやるで!』
『いきます、ストリームカッター!』ブシャアアアーッ!『プラズマ火炎放射や!』ブオオオオーッ!
ジャリジャリジャリッ!「あと3、2、1!」ゴバアッ!グワッ!「どっせーい!」ガキイッ!「うりゃあっ!」
ブン!・・バリィィィーン!「よし、いった!」「いまよ!」『輪を閉じるで!』ジャリジャリジャリッ!
『・・完全閉鎖!』「成功だ!」バシャバシャ!「氷のないところは泳げない。さて、どうやって運ぶか・・」

「それは私めにお任せください。」『えっ?」ヒュゥゥゥ・・「・・白いタキシードのおじさん?」「誰だ?」
「わたくしはこの氷原に住むイエティと申します。綺羅様からお話はあったはずかと。」「・・ああ、そういえば
地元の者に連絡しておくと言ってたな。それがあんたか。」「はい。運送役を仰せつかりました。」「どうやって?
こんな元気なヤツを運ぶのはちょっと難しいわよ。」「レンの凍てつく風にございます。」すっ・・ビュオオオーッ!
『うわっ!』「これは・・絶対零度の冷気!」ゴオオオオーッ!・・ピキッ。「瞬間冷凍ですので仮死状態です。
精霊宮まではじゅうぶんにもちます。」「氷の中を自在に泳ぐやつやしな。」「もしやあなたも神獣なのですか?」
「はい。「白い隠者」という二つ名を頂戴しております。」『・・ああ!』「それって・・精霊軍の先の副将軍!」
「古代の魔獣戦争で猛将と謳われた!」「今は隠居の身でございますが。」「なるほど・・綺羅が推薦しただけある。」
「では参りましょうか。あちらでございますね。」ちょん。シューッ!「ほい。」ターン!すたっ。「おお!凍った
ポリュペイモスを滑らせてその上に!」「これならラクチンでございます。ではお先に。」シューッ・・
「さすがは「白い隠者」ですね。」「置いてけぼりをくらわんよう急ぐぞ。フェイ!」「まかさんかい。」バサッ!

精霊宮。「皆さんご苦労さまでした。おかげで貴重な幻獣を保護することができました。イエティもすみません。
静かに暮らしておられたところを。」「もったいないお言葉でございます。綺羅様にご奉公できる機会があったのは
嬉しき限りにございます。」「・・おお、そうですわ。タイタン、イエティを雇ってはいただけませんか?」
「えっ?」「引退したとはいえ、彼の霊力はいまだ健在です。このままレンの氷原で朽ち果てさせるのは惜しい。
でもタイタンの元ならば数多くの冒険があります。そこで彼の力もじゅうぶんに発揮できるかと。イエティ、
この案はどうです?」「綺羅様の仰せのままに。わたくしは老後の嗜みとして執事免許も取得しております。」
「俺としてはイエティに来てもらうことにやぶさかではないが・・みんな、どうだ?」「いいんじゃない。
ずぼらなご主人さまに執事は必要よ。」「アラクネはてきとーやから細かい管理は向いとらんしな~。」
「フェイだってけっこうおおざっぱじゃない。」「僕だけでは目が行き届かないところもあるので助かります。」
「ではみなさん、よろしくお願い申し上げます。」「これでタイタン組もさらに強くなりましたわね。お泊りに
行くときが楽しみですわ。」「次こそはハコテンにしてやろう。」「また九連宝燈で掃討いたしますわ。」にこっ。

第六夜「凍てつく心」 - 冷凍魔獣ウェンティゴ登場 -

埼玉県・採石場。「はい本番いくよ!」カチン。「オメガレッド!」ドドーン!「オメガブルー!」ドカーン!
「オメガイエロー!」チュドーン!「オメガピンク!」ボーン!「オメガブラック!」ズズーン!ザン!
『究極戦隊、オメガファイブ!』ドドドドーン!「はいおっけい!」ガヤガヤ・・「さすが「ファイアワークス」。
見事な爆発だな、ショウ。」「しごく当然。わが社の技術は世界いちぃぃぃっ!できん爆発は何もないぃぃぃっ!
消防法の制約さえ無ければ、至高の爆発芸術を披露できるのだが。」「せんでいいせんでいい。こちらの要求する
イメージの爆発をやってもらえればそれでいい。」「お客の要望に最大限に応じるもの、それが本当のプロである。」
「社長、後片付け終わりました。」「マイライトハンド叡智、ご苦労だった。撤収する。我輩が教えたとおりに
やらなかったのは大目にみよう。」「げ・・気づいてましたか?」「オメガブルーの爆薬にナトリウムを混ぜたな。
理由を聞こう。」「ブルーは気取り屋です。ならば爆発もきらびやかにするべきです。」「うむ、正解だマイナイス
アシスタント。自分で良いと思ったことはどんどんやるべし。たとえそれで失敗しても、それが勉強となる。
たくさん失敗するがよい。それは確実にユーのレベルアップにつながる!」「はい!」「では帰ってメシにしよう。」

有明の外れ。ここにあるプレハブ事務所こそ、特殊効果専門会社「ファイアワークス(有)」の本社である。
ガラガラ。「ただいまー!」「帰還である。」『おかえりなさーい。』事務所の中には事務机が整然と並び、
女子社員が事務仕事をしている。「社長、ニトロセルロースの在庫が怪しいので2トン発注しました。」
「よろしい。マイブレイン渚くんはよく気がつくので助かる。」「ショウ、今日の五色爆発はどうだった?」
「叡智のおかげで予想以上にうまくいったぞ、マイステディ千夏。」「エーちゃんが?!また独創したんですか!」
「いやそのナトリウムちこっと足しただけだから、独創というほどのもんじゃ・・」「ダメじゃないエーちゃん!
社長の指示どおりにやらなきゃ!」「まーまー。かがり姉はんの言い分ももっともやけど、社長が怒っとらん
つーこた、ええ方にいったんやろ。」「うむ、マイ同志愛美のいうとおり、我輩は嬉しいのだよマイレフトハンド
かがり。いつまでも我輩の背を追うより、叡智が自ら道を作ることこそ喜びだ。」「だからといって爆発は
危険な仕事です。自分はもちろん、もしお客さんにケガでもさせたら!」「その懸念は正しい。「表の稼業」では
そのようなことの無きよう細心の注意を払う。叡智もその基本はわかっているさ。もし危ない間違いがあれば、
点火前に我輩が止めている。」「それは信頼してますが・・」「それはいいからメシにしよーよ。エッチが戻って
こないとメシも食えねえしさ。」「そやそや、ハラへったわ~。」「あ、すみません!すぐ作ります!」パタパタ。
「うちの実家から送ってきた鮮魚を台所に置いておきました。」『これですね・・うわっ、すっげー新鮮なイワシ!』
「玄界灘で揉まれたものです。」「さすがは壱岐水軍の家系だな。渚くんのおかげでうまい魚にありつける。」

「はいお待たせ!」ドサッ!『おおっ!』「お刺し身・焼き・揚げにハンバーグ!とどめにイワシの味噌汁!」
『いただきまーす!』カチャカチャ・・「うむ!素材の新鮮さに料理人の腕が加味された至高の味!」「さすがは
エーちゃんね。あたしがお嫁にもらいたいくらい。」「ああ・・故郷の味がしますわ。」「んー、みそ汁がおいしー。
よくイワシの頭のダシが出てるわ。」ばりばり。「この焼きイワシ頭から食えるで。骨が強くなってええな~。」
「刺し身で余った中落ちをみそ汁に使うとは、なかなかやるなアイアンシェフ叡智!」「魚料理の基本ですよ~。」
♪プルルル。「はいファイアワークスです。・・はいおります。社長。」「うむ。もしもし。・・まいどあり。」カチャ。
「諸君、さっそくで悪いが特注だ。」はっ!「千夏、爆破作業船「ダンテ」発進準備!モスクワだ。」「あいよ。」
「渚は搭載爆薬の在庫チェック。」「はい。」「愛美は爆破解析システムの点検。」「はいな。」「叡智とかがりは
装備の点検!」「おっし!」「はい!」「20分で発進する・・むっ、待て!」『えっ?』「各自メシも持っていけ。」

モスクワ。「・・え?やっと出番?」「今回は前フリが異常に長かったな~。」「まあ新キャラは最初はきちんと
紹介しておきませぬと。」「というわけで、ただいま僕たちはモスクワに来てます。」「誰にゆっとんや?」
「状況を説明しよう。エリスの予言歌により、次はロシアだということが判明した。」「・・ウェンティゴ。それが
次に甦る魔獣の名前・・」「・・あっ、いたいた!」「おっ、ベルさんだ。」「はろー。また連絡よ。第三部隊が
応援に来てくれるわ。」「ほう、あいつらか。」「たしか爆破部隊とか聞きましたけど。」「そうよ。直接戦闘力は
ないけど、それを補ってあまりある爆破技術を持つ部隊よ。」「まるでマダムが総司令のような言い方ですな。」
どきっ!「な、ななな・・」「・・もしかして、マジか?」「そ、そんなことあるわけないじゃない!ほらアンタも
何とか言ってよ!」「かーちゃんが総司令なのさ。」『ええっ!』がしっ!ギリギリ!(スリーパーホールド)
「あいたた!いてーって、かーちゃん!」「何をたわけたこと言っとるかこのバカ亭主!」「ほんのジョーダンだ!
それよりもうひとつ連絡があるはずだろ!」「あ、そうそう。」ぱっ。「なかなかボディーコミュニケーションが
豊かな夫婦ですね。(^^;;」「夫婦ゲンカはケルベロスも食わんで。」「魔獣関連かどうかわからないけど、
先日シベリア奥地で凍結死体が発掘されたわ。」「なによ、別に珍しいこっちゃ」「数十万年前の地層からよ。」
『・・えっ?』「魔獣戦争の時期か・・」「さらにもう一つ。その死体は身長4mの人型。そんな巨大原始人が
存在したのかしら?」『なっ!』「それって・・まさか魔獣そのものじゃないの!」「その可能性は大やな。」
「そ、その死体はどこに?」「モスクワ科学アカデミーの冷凍庫。」「冗談じゃないぞ・・覚醒する前に倒す!」

その夜、科学アカデミー。コツコツ・・「夜の科学施設は不気味だな・・」オォォォ・・「・・ん?」ピタッ。
「何の音だ?・・冷凍庫からか?」ガチャッ。ヒュゥゥゥ・・「う~さむ。さてどこから音が・・」カツカツ・・
「これは?・・ああ、昼に搬入された巨大冷凍死体か。でかいな~。奥のほうを・・」カツカツ・・ぴくっ。

「・・異常なしか。さっさとこんな寒いところは・・なにっ?!」ぱっ。「・・死体が消えた?!ほんの数十秒の
間にどこへ!」ズシン!「?!まさか・・」ガクガク・・くるっ。「うわあああああ!・・」ピキピキ・・

♪ピンポーン。「こんな夜更けに誰だ?」「あたしよ。入れてくれる?」じーっ・・「・・どうぞお入りください。」
中央監視室。「おい、ありゃなんだ?」♪ピッ。「イワン、そいつらは誰だ?」ひょい。『あたしよあたし。』
じーっ・・「・・わかりました。全施設異常なし。」『お勤めご苦労さんです。』ふっ。「・・監視を続行する。」
「冷凍庫はこっちよ。」「簡単に入れてもらえたもんだな。」「かみさんも俺に負けず劣らず顔が広いからな。」
「そうかな?ベルさん小細工しなかった?」「なんのこと?・・あっ!」ザッ。ヒュゥゥゥ・・「冷凍庫の扉が
開いてるよ・・」「・・まさか!」ドカドカッ!『これは!』「壁にでっかい穴が!」パキッ。「ん?・・うわっ!」
「これは・・凍結した人体ですぞ!」「ガードマンのようだな・・この恐怖の相貌は?」「こ、これを見い!」
「胸部を砕かれて・・心臓がなくなってる!」「これは・・ありえません!体内まで完全に凍結してるなんて!」
「ウェンティゴは凍った心臓が好物・・」はっ!「凍結巨人がいないわ!」「・・遅かった!ヤツはすでに街へ!」
♪ピッポッパ。「・・将軍か?凍結巨人が蘇生して逃走した。陸軍をあげて捜索してくれ。市内には警報を。
外にいると危険なので戒厳令を発動しろ・・よし、たのむ。」♪ピッ。「これで軍が捜索してくれるぜ。」
「いつもながら感心するぞ。携帯一本で軍を自在に動かすとは。」「うちの亭主は顔の広さだけは世界一ですから。」
「急いでウェンティゴのあとを追いましょう。放っておけば被害が広がります!」「よし、行くぞ!」『おう!』

アカデミー前道路。・・キュラキュラキュラ。「あっ、戦車。」「ロシア軍が出動したな。」「おかしい・・早すぎる。」
キュィィーン・・『・・えっ?』ドオンッ!ボガーン!『うわっ!』『きゃあっ!』ズダダーン!「いったあ~。
どこ狙ってんやどアホ!」「冗談にも限度があるわよ!死ぬかと思ったじゃない!」「ふつう戦車砲の直撃うけたら
死んでると思うが。(きっちり逃げてる)」「やっぱ人間じゃないね、みなさんは。(同じく)」「そうだね・・
(二人に守られてた)」キュィィーン・・「また?!」ドオンッ!ボカーン!『うわわわわっ!』「こりゃ本気だぞ。」
「まさか・・また「魔獣教団」の!」「ロシア軍の中にもシンパがおるっちゅーことやな。ほな遠慮は無用!」
タン!シャッ!「フェイ?」ズガガガガッ!「アホウ!そんなとろくさい弾でウチをとらえられるかい!」シャッ!
チュンチュンチュン!「なんて速さなの!」「チーターも真っ青だな。」ターン!・・スタッ。トン。「砲塔に指を
置いた?」「もろたで。ぶあああーくねつっ!」ボン!「HEATフィンガアアアーッ!」ドオオオーン!ボゴアッ!
ボガアアアーン!『おおっ!』・・くるくるっ、ザシャアッ!「往生せいや!」「すごい!指を立てたのはモンロー・
ノイマン効果をねらって!」「ああ。まさしくHEAT(成形炸薬弾頭)だな・・さすが紅蓮の淑女。」「すごいね・・」

キュラキュラキュラ!「またきます!」「今度は団体か。」「かなりの数が入り込んでいるようですな。」
「まあいいわ。みんな、暴れどきよ!」『ここはおまかせあれ。』「なに?」・・ドドドドン!「なんだ?!」
「戦車の下の地面が爆発?!」ボゴアッ!ドシャアアーン!ガラガラガラ!「戦車が頭を突っ込んで逆立ちです!」
「こうなれば自力脱出は不可能である。」すっ。「・・何者なの?」「お初にお目にかかる。我輩は国連秘密部隊
第三部隊「ファイアワークス」隊長、ショウ・アースライザー。以後お見知りおきを。これが名刺である。」すっ。
「あ、どうも。・・この(有)は?」「うちは有限会社である。よって(有)が付いているのだ。」「はあ・・」
「では我が社の優秀な社員・・もとい、隊員を紹介しよう。」パチン!・・ズズズズ!「あれは?!」「なんと、
これだけ近くにいて爆音が聞こえなかったとは。」「いかにも。我が社が誇る隠密爆破作業母艦「ダンテ」!」
ぱらっ。「ロープが?」シャシャーッ!「ロープで降下?エアボーンか。よく訓練されてるわね。」スタスタッ。
『ファイアワークス、ここに集結!』「右から副長兼メインセッター・大空叡智、サブセッター・風見かがり。」
「はじめまして。」(あっ、可愛い子~♪<アラクネ)「よろしく。」ぴく。(わたしより胸でかい・・敵!)
「キャリアー・火神千夏、オペレーター・水野渚、アナライザー・大地愛美。」「ちーす。」「こんばんは。」
「ウワサのゼロ部隊に会えてうれしいわ~。」ぴくうっ!「あんた!辺境の出身か?」「えっ?ウチは大阪やけど・・」
「ウチとなまりがそっくりや!いや~、こんなとこで同郷のモンに会えるとは思わんかったわ。」ぽんぽん。
「もしもーし。フェイ、勘違いしてない?」「なんやアラクネ?」「フェイのなまりはエデンの大阪という地方の
方言にそっくりなんですよ。」「ほうか?そんなんどうでもええ!とにかくウチだけやなかったのがうれしいんや!
仲良うしような。」「は、はあ・・ウチはええですけど。」「フェイに気に入られたか。」「貴重な人材ですね。」

「へぇ~、キミ叡智くんってゆーんだ。」「は、はい。」「で、こっちのかがりちゃんは彼女?」どきっ!
「た、ただの仲間です。」「あらそう。ならわたしがもらってもお咎めなしね♪」「えっ?」「叡智くんて、わたしの
好みなんだ。」ぎゅっ!「むぎゅ!(・・で、でっかい。)」「ち、ちょっと!なにするんですか!」「いいじゃない。
彼女じゃないなら。」「う・・」「魔獣を倒したら筆下ろししたげよっか。」「ふ、フデ・・(鼻血)」かっ!「ダメー!」
ぎゅっ!「むぎゅっ!(・・かがりのほうがでかい!)」「あらなんで?」「なんでもダメったらダメです!」「ふふっ・・
あなたの胸見て、ちょっとからかいたくなっただけよ。基本的にわたしより胸でかいヤツは敵視する性分だから。」
「そ、そんな・・」「まあわたしにとられないよう、しっかりつかまえておきなさいよ♪」「お、大きなお世話です!」

「ナンバー6、連烙員ベル、久しいな。」「その口調は相変わらずだな。」「えらそうなのかユカイなのかわからん
人ね~、ショウも。」「よく知ってるのか?」「うんざりするくらい。こいつ事務総長相手でもこの調子なのよ。」
「我輩には地位や肩書きなど問題ではない。そう、たとえ神でもな。」「ほほう・・面白いやつだ。だが彼に限らず
秘密部隊は多かれ少なかれそんな面があるように思うが。」「・・それはみんなが命を賭けているから。だからこそ
皮相的な目を持たず、真実のみを見る・・そうでないと生き残れないから・・」「見事な解説である、少女よ。」

「この服は変わってますね?」「耐爆・耐熱・耐寒・防弾効果のある特殊素材で出来た「ヴァルカンスーツ」です。」
「私たちのユニフォームね。フードをかぶるとウェットスーツや宇宙服にもなんのよ。さすがにまだ宇宙までは
行ったこたないけどね。」「まさか爆破作業を素手でおやりになるので?」「基本はそうですが、必要に応じて
いろんなツールを使います。」「名づけて「ヘビーメタル」。「ダンテ」にいろいろ積んでるわ。」「さっきの戦車
トラップですが、いったいどうやって?」「けっこう複雑ですよ。」「まずかがりの読みね。彼女はエスパーかと
思うくらい読みに長けてて、戦車の未来移動コースをほぼ精確に読み、それをこっちのサリーちゃんが概算して
愛美ちゃんがコンピューターで検算。あとは社長とエッチが仕掛けてできあがり。質問は?」『はあ~・・』
「すごい・・まさに爆破プロフェッショナルですね。」「けど一つだけタブーがあるの。直接爆破および爆殺は禁止。
それをやったら単なる爆弾魔ですから。だから戦車も直接ふっ飛ばさず、縦穴へ落とすようにしたんです。」
「職人カタギですな。」「目的が何かをちゃんと認識してれば、スマートなやり方を選ぶのが本当の職人なのさ。」

「諸君、懇親はこれくらいにして、あの冷凍魔獣を追わねば。」「おっとそうだ。しかし・・この街はでかい。
どこへ行ったものやら。」「それならうちの「ダンテ」で上空から探したほうが早いかもね。」「ナイスだ千夏。
「ダンテ」へ指令!搭乗リフト降下!」・・カラカラカラ。「乗りたまえ。」ドカドカッ!グィィィーン・・

ゴーリキー通り。「あら?いきなり寒くなったわね・・」「何だこの急激な冷えこみは?」ズシン・・ズシン。
「・・なんの音だ?」ぬっ!「きゃああああーっ!」「きょ、巨人だ!」オオオオオーッ!ズシン!ピキピキ・・
『うわっ!さむ・・』カチン。「・・人間が一瞬で凍った?!」わしっ!パリッ。ひょい、ぱくっ。パリパリ。
「ひいいっ!凍った心臓を取り出して食ったわ!」「逃げろおおおーっ!」キャアアアアーッ!ドドドドド!

「ダンテ」ブリッジ。「いました。ゴーリキー通りを南下し、赤の広場へ進行中です。」「あれがウェンティゴか。」
「あら、蘇生前より大きくなってるわ。」「・・人の凍った心臓を食べて、ウェンティゴは成長するの。」
「今はざっと15mというところか。・・おっ、また大きくなったぜ。」「あかんな、どんどん力をつけよる。」
「温度分布走査によると、魔獣の周囲100mは零下200度の超低温域で、近づくだけでコチンコチンですねん。」
「それであの被害者も完全凍結してたのですな。」「ふむ・・あの凍気の壁を破らないかぎり勝利はないな。」
「イエティ、止められるか?」「わたくしならば阻止くらいはできましょう。」「うちも出よか?低温はなんぼ
下げても零下273度、やが高温は天井知らずや。」「あの、作戦があります。」「エーちゃん?」「うむ、聞こう。」
「こういう作戦はどうでしょう?」・・「いい手だ。」「となると、決戦の地はここですね。」トン。「赤の広場。」

オオオオ!ズシーン、ズシーン!『そこまででございます。』オオッ?・・ズーン!『同じ冷気をあやつるもの、
親近感があります。しばらく遊んでいただきましょう。』オオオオ!『まいります。かつてディーヴァ戦争で
アスラ神軍を震撼せしめた神闘技奥義、ヘカトンケイル!おわたたたたたた!』ズドドドドドッ!ボコボコッ!
『おうわったあああーっ!』ドゴオオオオーン!ドガシャアアアーン!オオオオ・・『101連コンボでございます。』

赤の広場上空。「かがりから予測データきたよ。」「計算尺っと。地面状況・・地下構造・・強度・・波及効果・・」
カチャカチャ・・「よし。愛美ちゃん、数式よ。」サラサラッ。ぱさっ。「おおきに渚ねぇ。プログラミング開始。」
カタカタカタ。「できたで。爆薬調合システムにデータ転送よし。かがりねぇ、ヘビーメタルはどれや?」
『エグゼクトカッターとバズソーをちょうだい。』「調合完了よ。カートリッジは25番、プラグは8番を。」
「セッティングプラン完了。セッターへデータ送るで。」『受け取った。プランどおりにセットしよう。』
「千夏ねぇ、装備と爆薬の発送よろしゅうに。」「あいよ。ヘビーメタル射出準備よし。まいどありー。」シュバッ!

赤の広場。・・ズザザザザーッ!「乱暴な届け方ですね。」「うわ~、でっかいコンテナ。」シュパ。カチッ。
「はい社長、エグゼクトカッター。」「よし。」「エーちゃんはバズソー。」「おっし。」「カートリッジとプラグは
私がセットします。」「では作業にかかる。エグゼクトカッター!」ウィィィーン!シュババババッ!「すっご~。
アスファルトがトウフのように切れてくで。」「超震動ブレードだ。どんなものもぶった切っちまうさ。」
「バズソー!」キュィィィーン!「こっちもすごい速さで切ってます。」「おー、速いはやい。あっという間に
カッティングを終了したぞ。」「ではかがり、たのむ。」「はい。」すっ・・「切断面に手を置いた?」「・・はっ!」
ババババーン!『おおっ!』「すごい・・切断されたアスファルト板がすべて立ち上がった!」「これぞかがりの
特殊能力・気合でポン!だ。」「だからそのダサダサな名称はやめてくださいって!せめて畳返しとかなんとか」
「時間がないぞ。急いでセットだ。」「ぐ・・いっつもそうはぐらかすんだから。」「急いで慎重・確実にと。」

『冷気に頼っていては、わたくしめには勝てませんぞ。』オオオオ!バキバキ!『ほう、手に氷の爪を成長させて
武器としますか。よろしい、かかってきなさい。』ゴオッ!『スキだらけですな。』ぱしっ。グン!オオッ?!
『一本背負いにございます。』ブン!ドゴオオオーン!オオオオ・・『さすがに魔獣、物理攻撃には強いですな。』
【イエティ、こっちは準備ができたぞ。】『では決戦場にお連れしましょう。プッシュプッシュ!』ドドドドッ!

「ダンテ」ブリッジ。「来たわ。イエティとウェンティゴよ。」「そのまま広場の中央へ。」【かしこまりました。】
ドゴオッ!ズダダダーン!「いまだ!」「点火!」ボンボンボン!ゴオオオオーッ!『おおっ!巨大な炎の柱が!』
「これぞ爆破奥義「エイブラハム」!」「・・アララト山にてモーセの前に現れた神は、炎の御柱の姿だった・・」
「十戒を渡す重要な場面だな。」「それ映画で観たわ。」「ベルさん聖書読んでないんですか?」「宗旨ちがいよ。」
「これで一時的に超低温層は消える。さあ出番だぞ。」「わかってるさ。ハッチ開けろ!」シュッ。ターン!
「・・変神!」グッ!パキィィーン!ギュイイイイーン!『ああっ!』「あれが・・巨神タイタン!」ドドーン!
『イエティご苦労。あとはまかせろ!』『ご武運を。』オオオオ!『炎が残ってるうちに決着する!ガントレット!』
ジャキン!『光あれ!』キィィィ・・『必殺!プロメテウウウースッ!』ドン!ボゴオッ!オオオオ!「勝った!」
『・・なにっ?!』ピキピキ・・「えっ?!・・タイタンの腕が凍っていく!」・・はっ!「まさか?!計算尺を!」
カチャカチャ・・「しまった!炎の結界が有効なのは周囲だけで、ウェンティゴ自身は超低温のままです!」
『なにっ!』「こらあかん!ウチも出るで!」ターン!・・バサアッ!テケレリリリ!「叡智、いくぞ!」「えっ?」
「タイタンを援護する!」「・・はい!」「ヘビーメタル「メガフレイム」にナパーム弾を装填して発送しろ!」
『ええっ?!』「ナパーム程度じゃウェンティゴは倒せません!」「忘れたか?我らは間接的に戦うのだよ。」

『くうっ!・・このままでは全身が凍る!』テケレリリリ!『お館さま、いま暖めるで!火力全開!』カアアーッ!
『・・だめだ!身体の芯まで熱が届かない!』「ならば直接火をつければいい。」『・・なにっ?』「メガフレイム!」
ドン!ボオオオーン!『これは!・・俺の腕に炎が!』『あんたら何さらすねん!』【ちょっと待ってフェイ!】
『アラクネ?』【これはいい手よ。】『そのとおりだ。もっと炎を!』「いわれるまでもない。叡智、どんどん撃て!」
「照準よし、全弾発射!」ドドドドン!ボボボオオオオーン!『・・よし!凍った腕が解凍した!』ズボッ!
【タイタン。】『?!・・この声は?』【ウェンティゴの弱点は左胸部にある凍った心臓。それを叩けば一撃で
倒せるわ。】『誰だ?』【はやく!炎の柱が消えれば超低温領域が再構成されるわ。そうなったらもう近づけない!】
『わかった!このナパームの炎があれば・・豪熱!バーニング・プロメテウゥゥースッ!』ドオオオオーン!
『狙いは左胸部!でやあああああーっ!』ドゴオッ!・・ボゴオオオーン!「貫通した!」「あ・・あれは?!」
ドクンドクン・・「氷の結晶?・・いえ、あれがウェンティゴの心臓!」『勝った・・うりゃあっ!』グシャアッ!
オオオオオーッ!・・ピキピキッ、ガラガラガラ!・・「ウェンティゴが・・氷塊になって崩壊しちゃいました。」
『フェイ、蒸発させてくれ。』『プラズマ熱線や!』ゴオオオオーッ!シュゥゥゥ~ッ!・・『終わりましたな。』
『ああ。しかし・・』『なにか?』(・・あの声、いったい誰だ?かなり強力なテレパシーだったが・・)

カリーニン大通り、レストラン「コルホーズ」。「ではウェンティゴ撃滅を祝して。」『かんぱーい!』カチンカチン!
「この店の自慢はボルシチと自家製ピロシキだ。」「というより、作者それしか知らないのよね~。」ほっとけ。
「しっかし、爆破といってもいろいろあるのね。」「はい、爆発はいわばエネルギーの瞬間的開放です。それを
上手に使えば、無限の応用がききます。」「そのカギとなるのが、みなさんのチームワークですね、かがりさん。」
びくっ!「そ、そそそうですね・・」「かがり、なにおびえてるんだ?」「だ、だって、この人たちって・・」
「説明しよう。かがりくんは基本的に超常現象は苦手なのだよ。」「そか?さっきはそんなふうに見えなんだで。」
「仕事中はまあだいじょうぶなんですけど、一息ついたらこれなんですよ。」「ふ~ん・・(にや。)かがりちゃん。」
「は、はい。」「これ見て。」ぱかっ。ウジャウジャ・・「げ・・口の中にクモがいっぱい!」「きゃあああーっ!
エーちゃ~ん!」がしっ!「ぶほっ!(またムネが~!)」「こらこらアラクネ。こわがらせてどーすんだ。」
「ああするの。」「こわいよ~!」ぎゅうぎゅう!「フグフグ!(窒息寸前)」「・・なるほど、ならばいいだろう。」

「フェイ姉はん、これお近づきのしるし。」「・・なんやこれ?書のようやが。」パラパラ。「へぇ~、絵物語かいな。
それにしては文が少ないな。」「漫画っちゅーもんです。文で書くところを絵とセリフで読ませるんですわ。」
「ふむふむ・・これはバベルの図書館でも読んだこたないな。おおきに、ヒマなとき読ませてもらうわ。」
「・・何のマンガ?」ひょい。「・・「ワOリ」?けっこー古いね・・」「エリスちゃん知っとるんか?たしか
アメリカ人やったのに。」「NYでは大流行だよ・・「子Oれ狼」はよく読んだよ。」がしっ!「・・えっ?」
「仲間。」「え?」「これ読み。」どさっ!「「ケOディ騎士団」全巻。きっと気に入るはずや。」「・・ど、どうも。」
「なんですか?」「あ、リヴィ・・」「あんたも読みたいか?リヴィは熱血モンがええやろ。」ごそごそ・・どさっ!
「「紅のO戦者」や。これは燃えるで。」ぱらぱら・・「・・これは!お借りしていいですか?」「次に会ったときに
返してくれたらええで。これこそ貸本や。」「・・聞いたことある。貸本時代マニア・・愛美さん、そうなんですね。」
「正解や。ウチは貸本時代のマンガが大好きなんや。あのころのマンガには夢が、希望が、そして未来があった・・
だが今はどうや?残虐とエロ描写と現実問題にばっか走って、マンガから夢は失われとる。これではいかん!
荒唐無稽・御都合主義・非現実的ええやないか!それが本来のマンガの姿や!」『は、はあ・・(圧倒されてる)』

「あ~あ、また愛美の貸本世界が始まってら。」「まあ私もけっこう好きですけど。「ハOンチ学園」とか。
千夏さんは?」「あたしゃ「おO松くん」好きだったな~。」「あと「サOボーグ009」も外しちゃいけませんね。」
「それをいうなら「天才バOボン」もだな。」「ちょっと待てい!」「ショウ?」「「秘O探偵JA」を忘れては困る。
まさに基礎の基礎!」『なるほど!』・・すっかり染まってますね、みなさん。(^^;;

♪砂漠の油田のその底に 誰も知らない寺院が眠る
♪閉ざされた扉が開くとき エキムはふたたび現れる
♪すべてを食らう大竜巻 あとには何も残らない
♪「沈める寺」から鳴り響く 夢幻の鐘の音 聖なる歌声・・



第六夜~第九夜

「それではこれより、第1864324回・公会議を開催する。まずは出席だ。十二神衆筆頭・ヴォーダン。」「これに。」

「冥王ハデス。」「おう。」「精霊界女王・綺羅どの。」「はい。」「魔王サタン名代・魔王妃ヴェールどの。」「はーい。」

「そして我、デウス。四界の代表はそろっているな。では本題に移ろう。」「デウス様、緊急議題を提示したい。」

ザッ。「ヴォーダンか。よろしい、提示したまえ。」「近頃エデンを騒がす魔獣と、罪人タイタンについて。」オオッ!

ザワザワ・・「タイタンは全ての神力を封じられ堕とされたはず。だが、いかにしてか封印を解き、魔獣を屠って

いるというではないか。これはエデンの掟に反するのではないか?」「そうですかね?」ぴく。「ヴェールどの、

ご意見が?」「エデンの掟は罪人には適用範囲外ではなくて?そもそも堕天の刑は失楽園エデンに堕とすことで

我らの不滅性を奪うことにあります。限りある命は我らにとって最高の刑罰・・少々神力がよみがえろうとも、

もはや天界の門は開くことはない。そうでしたねデウス様?」「そのとおり。ゆえにエデンで朽ち果てる者が

何をしようと、それはエデンにとって取るに足らぬこと。」「わが魔界の民にもエデンに住まう者は多いですわ。

平和裏に暮らすよう指導はしてますが、それでもまれに不心得者が跳梁することもあります。それとてエデンに

たいした影響は与えておりませんわ。ヴォーダン、あなたタイタンを過大評価してませんこと?」「ふふ・・

ヴォーダンはタイタンに含むところがありましたものね。自由奔放な彼が固辞しなければ、十二神衆筆頭は

まちがいなく」きっ!「綺羅!」「ひとりごとですわ。」ぺろっ。「冥王ハデス、意見はあるか?」「特に。

しいていうなら、タイタンたちが臨終して冥界に来るのが楽しみだな。魔獣とケンカしておるなら、意外と早く

来るかもしれん。今から歓迎会の準備でもしておくかのう。うはははは!」「そのときはご招待くださいね、

叔父さま。」「あ、わたくしも。」「綺羅どの?!・・いや、そのまあ・・」「前の宴会で酔った勢いで冥王宮を

半壊させたこと、まだ怒ってますの?」「いや、勧めた自分も悪かったし、酒のうえでのことでもあるし。」

「綺羅は酒乱のケあるからね。一石樽は飲みすぎよ。」「食中に一升はいくんですけど、水が合わないのかしら?」

わいわいがやがや。(・・この連中は。)ぴくぴく。<シカトされてるヴォーダン 「ときに魔王サタンどのは?

名代をよこすのはいつものことだが。」「うちの宿六は、あいかわらずフラフラうろつきまわってますわ。魔界は

統治がしっかりしてますから、亭主元気で留守がいいというのがホンネですけどね。」「あやつも不憫よのう・・」

 

第七夜「沈める寺」 - 竜巻魔獣エキム登場 -

 

イラク・バグダット。インシアラァァァ~・・(いつもこれやね)「う~ん。ひさしぶりだな~。」『え?』

「アラクネ、来たことあるのか?」「だってここはわたしの故郷みたいなものだもの。今みたいな殺風景な

ビルなんか無くて、黄金の大寺院や空中庭園、それに天まで届く壮麗な塔があったわ。もっとも、その塔は

落雷で倒壊しちゃったけどね。あのころは避雷針なんて無かった時代だし。」「それって・・あれですか?」

「ここで第四部隊と合流する予定だ。」ぴっ。ヴオォォォ・・ン・・「ここは・・レース場?」「えーと・・

「F-1・バグダット」?」「表稼業がレーシングチームだから、レースが始まる前に打ち合わせとかんとな。」

 

レース場。ヴオオオオーン!「これがウワサに聞くF-1というものか。」「なんつーやかましいエンジン音や!」

「なんかアツくなる雰囲気ですね。」イィィィー・・ヴオオオン!「あんな速度で走っては交通違反ですぞ。」

「こっちだこっち。」「すみません、ここから先はサポート関係者以外は立ち入り禁止・・」「俺だぜ。」くい。

「・・失礼しました!どうぞ!」ザッ。「おつとめご苦労さん。」『は~。』「あいかわらず顔パスなのね・・」

ガヤガヤ。「ここはピットの裏側ね。」「ここだここだ。おーい!」「・・あっ、ナンバー6だ。ひさしぶり~!」

タタタ・・『うわ~・・』「わたしでも恥ずかしい格好してるわ・・」「むう・・なかなかのプロポーションだ。

そう思わないか、リヴィ?」「はい・・さしものアラクネもこれじゃズンドウに見えますね・・」すぱーん!

「んなこと比較せんでもよろしい!」『あいたた・・は~い。』「よう。幽はあいかわらず、すげえカッコしてるな。」

「レースクィーンだもん。目立つのが商売よ♪それよりそっちのみなさんがウワサの?」「第ゼロ部隊さ。

紹介する。第四部隊のくノ一「幽」だ。」『くノ一?』「そう。うちは忍者部隊だから。」「忍者って、闇に生き、

闇に死す影の存在のはずでは?」「やーね。今どきの忍者は白Oマンガとは違うわよ。有名株を最大限使い、

各国の高官なんかからおおっぴらに情報を取るのよ。」「まるで007ですな。」「コソコソするのは仕事の一部に

すぎないわ。おっと、メンバーを呼びましょう。街、蘭!」「・・呼びましたか?」くるっ。「いまスタビライザー

のデバッグで忙しいのに~。」とてとて。「こっちが蘭。表の稼業はシステムプログラマー。」「ああ、ウワサの

第ゼロ部隊のみなさんですね。はじめまして、「電脳の蘭」です。」ぺこ。「蘭は見てのとおりのサイバーくノ一。

コンピュータを駆使して情報を集めるの。」「・・むっ?」ぴくっ。「イエティ、どうした?」「失礼ですが、

あなたはもしや。」「・・一目でわかった方ははじめてです。さすがです。」「どういうことなの?」「この方は・・

いえ、やめておきましょう。」「・・いえ、知っておいたほうがいいでしょう。」チカチカッ。「なんや?・・あっ!」

「これは!・・左の眼に!」「まさか・・電脳って!」「そのとおりです。私の頭の左半分は超電子脳になってて、

左眼が出入力デバイスになってます。」「・・外見からはわからないぞ。」「・・左眼にデータが走らなかったら、

信じなかったかもね。」「蘭はこれで世界中の電子情報にアクセスできるの。現代の忍者にふさわしいわ。」

 

「・・おや?もうお一人いたような気がしますが。」『えっ?』きょろきょろ。「・・いたっけ、一郎さん?」

「う~ん・・いたような、いなかったような・・」くすっ。「まあ無理ないかもね。街、ごあいさつしたら?」

「そうですね。」ぎょっ!『・・なっ!』「い、いつからそこにいたんですか?!」「はじめからいましたよ。」

「そういえば・・すっかり忘れてたわ。」「こうやって面と向かってても、なにか片端から忘れていくような・・」

「それが街の能力だもの。彼は「意識されない人」なの。かくいう私たちも、よく居るのを忘れるわ。」

「自分から話しかけないかぎり、意識してもらえないようです。よっぽど地味なんですね。」「とゆーより・・

話しかけてもらわんと、無意識にシカトしてしまいそうやな・・」「忍者としては最高の才能かもしれませんな。」

 

「ところで彩は?」「今はプラクティスに行ってるわ・・ほら。」・・ゥゥゥゥウウ!ヴオオオォォォーン!・・

『ただいまベストラップが出ました!1分16秒3!』ワアアアアーッ!「これでポールポジションは確実ね。」

「まさか・・F-1レーサー?」「そのとおりです。うちの隊長「月影の彩」は、世界的F-1レーサーが表稼業です。」

ヴロロロロ・・しゅっ、すたっ。「三番キャブのサイクルを当たり直してくれ。」キュッ、かぽっ。『おおっ!』

「ちょお美形~!(☆o☆)」「な、なかなかのもんやな・・(ちょっとヨダレ)」「・・・・(エリスは無反応)」

カツカツ。「よっ、彩。いつもながら見事な走りだな。」「これはナンバー6、おひさしぶりです。で、こちらが例の?」

「そうだ。」「へぇ・・美女が三人もいるとまでは、聞いてませんでしたね。」「一人は未成年だから手ぇ出すなよ。」

「はじめまして。僕が第四部隊長、「月影の彩」です。」「よろしく。見事な走りだったな。」「僕の腕よりマシンの

性能のおかげですよ。」「いえ、いくらマシンが良くても、それを最大限引き出す腕がなければできません。」

「あ、アラクネです!今晩どう?」すぱあああーん!「いきなりナンパかい、この色ボケ女郎グモは!」

「いーじゃない、たまには外食してもさ。」「お館さま、こないなことゆーとりますで。」「うん、定食ばかりだと

飽きるかもしれんな。」すぱあああーん!「話にならん!リヴィは見習ったらいかんで。」「は、はい、さすがに・・」

「・・昨夜はリヴィ、とても激しかったのに。」『なっ!』「え、エリス?!いきなり何を!」「揉んでさすって、

ずんずん押してくるんだもの・・力抜けちゃった。」『ほ~・・』「い、いえ、あの、別にそれは!(真っ赤)」

「気持ちよかったよ・・リヴィのマッサージ。」どんがらがっしゃーん!「あいたた・・やっぱそーいうオチかい!」

「ふふふっ、楽しいみなさんですね。神さまのイメージとはだいぶちがうようですが。」「昔からこんなもんだろ。」

「御主人様の唯一の欠点がこのスケベですな。まあアラクネどの以降は、鳴りをひそめてますが。」「とうぜん!

わたしを知れば、他の女なんて。」「綺羅さまでも?マスターにだいぶ気があられるみたいですけど。」「どきっ!」

はっ!「いま何と言われましたか?!」『彩?』「え?・・綺羅さまって。」「・・聞いたことがある、どこかで。」

「彩は綺羅を知っているのか?」「変ね・・綺羅さまの存在は地上人にはほとんど知られてないはずだけど。」

「こないだの櫻華はんあたりから聞いたんちゃうか?」「いえ、そういう話はしてません・・まあ、たぶん僕の

気のせいでしょう。ではプラクティスも終わったことですし、懇親を兼ねて夕食会議としませんか。」『はーい。』

 

バグダット市内・超高級レストラン「千夜一夜」。「で、今回の魔獣は?」「蘭、データを。」「はい。」チカチカ・・

「魔獣データベース#031・竜巻魔獣エキム。イスラムの伝説には竜巻を起こす魔神として記述。古代にアラビア

半島を席捲し、数多くの都市を滅ぼしたが、アラーの手により封印されたと伝承される。エキムは寺院を模した

巨大な櫃に封じられ、燃える沼の底へと沈められた・・ここで「燃える沼」とは油田を指すと思われる。ゆえに

封印の寺院は油田の底に沈んでいる可能性が高い・・以上。」『すごい・・』「よくもそこまで調べたもんだな。」

「けど・・ひとつだけ間違いがあるわ。」「アラクネ?」「エキムを封じたのはアラーじゃなくて、わたしよ。」

『なにいっ!』「わたしのナワバリだったアラビア半島で勝手なマネしてくれるんで、激戦の末に封印・・ま、

ちょっと櫻華とご隠居と綺羅さまに助っ人もらったけどね。」「綺羅さまがエデンに降臨してたんですか?!」

「珍しいことではございません。綺羅さまは冥界・魔界にさえ、ちょくちょく遊びに行かれております。」

「魔界もか・・さしもの俺も魔界は不可侵条約を遵守して、行ったことがないぞ。」「綺羅さまくらいでしょうな、

顔パスで魔界を出入りできるのは。魔王サタン様・妃殿下・そしてプリンセスとも親密でありますし。」ぴくっ。

「お?プリンセスがいたってのは初耳ね。」「ご存知ありませんでしたか?そうですな・・聞いた話ではちょうど

エリスさまと外見年齢は同じくらいとか。」「ということは、まだ生まれて数百年くらいか。」「あの~みなさん、

話がどんどん横道に逸れてるんですけど。」『・・あ。』「すまんすまん。内輪の話題に走ってしまったな。」

 

「それはともかく、どうする?エキムの封印が油田の底じゃ、手がねえな。」「ちょっと地図みせて。」「はい。」

バサバサ。「え~と・・ここね、封じたのは。」トン。「アラビア半島ど真ん中か。」「蘭、その地域の油田データが

あれば出してください。」「はい。」チカチカ・・「検索完了。3Dモデルで出します。」ヴン。『おおっ!』

「左眼から立体像が!」「プロジェクターにもなるんか・・」「見てのとおり、半島の地下には無数の油田がまだ

存在します。そのポイント直下にも大油田がありますね。けど長年の採掘により、この油田はもはや残り20%

くらいの埋蔵量に減少してます。」「これはまずいわね・・油量が減ると、封印を押さえこんでた油圧が下がり、

封印をこじ開けられる可能性が大よ。」「・・もう油圧は落ちてる。あとひと押しすれば封印は砕ける・・」

 

アラビア半島中央部・地底3000m。そこは原油の大海であり、空隙部には引火性ガスが充満する暗黒の地獄である。

シュッ。「ほう・・これがエキムを封じた沈める寺院でござるか。すでに油面は扉より下がっておるな。」

この地獄に立つ人影・・誰なのか?「・・感じる、邪悪な気を。エキムは健在・・さて、仕上げでござる。」すっ。

「一陣。」シュバッ!ジャリジャリジャリーッ!人影の手から噴出したのは一陣の砂。その砂の刃が頑丈な鋼鉄の

扉をトウフのように切り裂いていく。ジャジャジャーッ!「・・きた!」すっ。バシャッ!人影は一瞬にして

崩れ落ち、原油の中に溶けこんだ。そして・・ギギィィィィ・・扉が開く。その中にいたものは・・

 

地上の油井。ガコンガコン・・「見回りよし、油井に異常なし・・」ガコンッ!「なんだ?ポンプが止まったぞ。

くそポンコツが。」カツカツ。ゴゴゴゴ・・「・・なんだ?」ズゴゴゴッ!ズドオオオオーン!「うわっ!」

ブオオオオオーッ!「な・・なんだ?!油井からタツマキが!」ふわっ。「うわああああーっ!・・」ゴゴゴゴ!

 

同時刻、バグダッドのホテル。例によってエリスとリヴィは同じ部屋である。「・・はっ!」ばっ!「・・ん?

エリス、どうしたの・・まだ午前三時だよ・・」「エキムが!」はっ。ばっ!「まさか・・目覚めた?!」

プルルルル♪「・・ん?」カチャ。「ふぁ~い、なによこんな夜中に・・なんですって!一郎さん起きて!」

げしっ!「いてっ!」「リヴィ、フェイとイエティにも報せて!わたしは他の連中をたたき起こすから!」

 

20分後、彩のサポートトレーラー。ブロロロ・・「へえ、移動指令室になってるんだ。」「というより情報センター

ですね。ここで世界中の最新情報が見れます。」「隊長、アラビア半島のリアルタイム気象衛星画像、出ます。」

ぱっ。『これは!』「竜巻ですね・・しかし、この画像が正しければ、とてつもない巨大さです。」「エキムの仕業に

間違いないわね。蘭ちゃん、データは?」「F5スケールの数十倍、風速は最大300km。これが通ったあとには

草一本残りませんね。」「だろうね。昔に暴れたときに、今のアラビアの砂漠ができたんだから。」「進路は?」

「時速80kmでこちらへ一直線。」「地図によると、ここまで人口密集地は無いみたいやな。」「エリス。エキムの

本体がわかるか?」「・・渦の中心。そこで風をあやつってる・・」「う~ん・・時速300kmの風の壁をどうやって

突破するかが問題ですね。」「アラクネさん、そのときはどうやったんですか?」「櫻華とご隠居と綺羅さまが

三人がかりで風を制御してくれて、本体が出たときに綺羅さまに借りた霊剣「愛染」で倒したの。」『愛染?!』

『えっ?』「それって・・隊長?」「ええ・・驚きましたね。」すっ・・シュバッ!『なっ?!』「虚空から剣が!」

「・・あっ!それは!」「アラクネ・・まさか?」「ええ・・霊剣「愛染」。」『なにいっ!』「な、なんで綺羅はんの

剣を彩はんが持っとるんや?!」「・・わかりません。この「愛染」は僕が生まれたときからありました・・いえ、

同化してたというべきでしょう。小さいときに夢で見たとおりに呼んだら、本当に現れたのです。」「先天性の

霊剣憑き・・どうやら彩どのは前世で綺羅様と何らかのつながりがあったようですな。」「イエティ、それは・・」

「さよう。リーンカーネションのうち「天星人」と呼ばれる方です。すなわち、前世が地上人ではなく、天界・

精霊界・魔界のいずれかに属した者。彩さまが神天星・霊天星・魔天星のどれかはわかりませんが。」『へえ・・』

「隊長って、昔は神様だったのかもしれないのね。」「いえ、悪魔ってのも捨てがたいですよ。」「どっちにせよ、

今の僕は「月影の彩」です。でも・・その綺羅という方には一度会ってみたいですね・・何かがわかるかも。」

 

ガクン!キキィィィーッ!『おっと!』「街、どうしました?」『敵の襲撃ですね。タイヤバリアで行く手を

ふさがれました。』「魔獣教団ね。」「第四部隊、出撃します。」『了解!』「俺たちも戦えるが。」「あぶなくなったら

お願いします。では。」ぐっ、バサッ!『おお!』「一瞬で柿色の忍び装束に!」「幽さんは漆黒、街さんは灰色・・

あれ?蘭さんだけは紺のマントですか。」「このマントが私の武器ですから。」「では、いってきます。」フッ・・

 

「お頭、包囲陣完成。」「うむ。爆裂火矢を。」さっ。ジャッ。『困りますね、うちのトレーラを壊してもらっては。』

ズバシャアッ!『ぐわっ!』ドサドサッ。「なにっ?!」「ふふ・・出てきたか第四部隊。そうでなくては。殺!」

 

「敵はどこだ?」「見えんぞ。」【あらあら、どこを見てるのかしら?】「なにっ?!」「どこだ?!」【ここよここ。】

ズバアッ!「ぐわっ!・・なぜ?!・・」ドサッ。「な、なぜだ?!なぜ俺は仲間を・・」「キサマ、変装か!」

「ちがう!俺は・・なっ!」グン!ズバアッ!「ぐはっ!」「斬れえっ!」ドスドスッ!「俺じゃ・・ない・・」

【ふふふ・・同士討ちとはおだやかじゃないわね。】ズバババッ!『うわあっ!』「な?!キサマまで!」

「ち、ちがう!身体が勝手に!」「・・あっ!きゃつの影が!」「・・女の影?」【ようやく気づいた?これぞ

忍法・影傀儡。影が本体に準じるなら、その逆もまた真。】「影をやれ!」ドスドスッ!【ばっかね~。影を切れる

わけがないでしょ。それに・・自分の影をよく見なさい。】『なにっ?・・あっ!』「影が・・女の影に!」

【舞踏会の始まりよ。この「幻影の幽」と一緒に踊りましょう。】ズバドシュッ!『ぎゃあああーっ!・・』

 

「近くにいるはずだ。さがせ!」ズバアッ!「ぐはっ!」「なにっ?!目の前で!」「バカな、誰もいないのに!」

「・・」ザキドスッ!『ぎゃあっ!』「なぜだ・・」「いないのに・・」「いますよ。・・気づいてくれないだけで。」

はっ!「いたぞ!」「こんな近くに!」「おっと・・」「・・消えた?」「一瞬で見えなくなるなんて!」

ズバズバッ!『ぎゃあっ!』「まったく。この「透明の街」をちゃんと認識してくれる人は少ないねえ・・」

 

ザザッ。「見つけたぞ。」「つっ立ってるとは。」じり・・「電脳マント「ファサーデ」七つの力・その一!」バサッ!

シュバババッ!『なにいっ!』ブシャアアーッ!「裾が鋭利な刃になってます。」「スキあり!」ビュッ!ガキッ!

「・・なにっ?!刃が通らん!」「私のマントは金属繊維製で、ちょっとやそっとでは貫けませんよ。それに・・」

ズババババッ!「ぎゃあっ!」「七つの力・その二。高圧電流。この「電脳の蘭」は科学の忍法で戦います。」

 

シャシャシャッ!「素手で我らに挑もうとは!」シャッ!「誰が素手といいました?」カィーン!「なにっ!

いきなり剣が!」「御免。」シュッ、ズバッ!「・・刃ごと斬る剣とは・・」ぼとっ。「戦車でも斬れますよ。」

「あの剣筋は・・お頭。」「うむ、まさしく柳生新陰流。甲賀の者ならば、けだし当然か。・・拙者の出番だな。」

シャッ!「一陣!」ジャジャーッ!「?!はっ!」キキィィーン!「拙者の砂刃を受けて刃こぼれひとつしないか。」

シュタッ。「どうやら頭領のようですね。自分は甲賀若頭・月影。」「お初にお目にかかる。拙者は魔獣教団忍将、

無形の砂風でござる。以後よしなに。」「ついに幹部自ら動きましたか。」「いつまでも人任せはよくないでござる。」

「では・・お手合わせ願いましょう。」ちゃっ。『お頭、ここは我らが。』すっ。「下がっておれ。ぬしらのかなう

相手ではござらぬ。」ヒュゥゥゥ・・『・・はっ!』シャッ!カキーン!ギギギギ!「我が愛刀「真砂」でも

やはり砕けぬでござるか。」「砂の刀とはすごいですね。」キィン!くるっ、すたっ。すっ。「地面に手を?」

「忍法・砂錐!」シュバッ!「おっと!地面から砂の刃を出すとは。」「忍法・砂影!」ザザザザーッ!

「砂で分身を作りましたか。」『気配では読めぬぞ。真砂。』ジャキッ!「たしかに。さすがですね・・でも。」

すっ・・『目を閉じたか。では試してみよう。』シャッ!「・・」ぴく。ドスドスドスッ!『どれが本体かは

問題ではござらぬ。なぜなら、この分身すべてが本体でござるゆえ・・はっ?!』どさっ!『変わり身!』

「ならば全部斬ればいいんですね。」はっ!『上か!』「堰月。」シャルルッ!ズバババババッ!『ぐはあっ!』

クルクルッ、ザシャッ!・・サラ・・ザザザーッ!「・・やはりすべて幻影でしたか。」『ご明察でござる。

さて、態勢を整え直すべきでござる・・また会おう。』サラサラサラ・・「引き際が良いのは強敵ですね。」

『隊長!』シュタシュタッ。「ご無事で?」「なんとか。・・忍将「無形の砂風」、おもしろい相手ですね・・」

 

「見事なものだ。」「さすがに手出しできんかったわ。」「うわ~、愛美さんに貸してもらった本のとおりです。」

「影狩人、意識の透明人間、電脳、そして霊剣憑きですか。まるで魔界の戦士たちのようですな。」はっ!

「イエティ、まさか・・彩だけじゃなく。」「可能性の問題ですが。」「まさか・・秘密部隊って、天星人の・・?」

「ナンバー6、どうなんだ?」「さて、どうかな。まあ特殊な連中ばっか集まってるのは事実だけどな。」ふっ。

「エリス、そのへんはあなたの能力でわからない?」「・・ごめんなさい。」「そう・・まあいいけど。」「・・・・」

 

バグダッド南方200km地点。ドドドド・・「あれか・・エキムの竜巻。」「力は弱まってるっていうけど、あれじゃ

昔と変わらないわね。」「あれは?」キィィィーン・・「湾岸に駐屯してる多国籍軍の戦闘機部隊だぜ。さっき連絡

しといたとおり、動いてくれたな。」「あんなチンケな飛行体で魔獣を倒そうっちゅーんか?」「いちおう哨戒だけ

頼んだんだが、どうやらケンカを売るつもりらしいな。」「止めなくていいんですか?」「そんな義理はねえな。

忠告はしといたから、あとは司令官の責任だ。知ったこっちゃねえ。」「意外と冷淡ですな。」「軍人相手はな。」

 

キィィィーン・・『ボギー目視。上方から渦の中心を狙う。全機上昇反転。』キュィィーン!・・『目標ロックオン。

フォックス2!』シュバババッ!・・パパパパッ。『タリホー!・・竜巻が弱まらない?!』ビュオオオーッ!

『渦の中心からいくつもの小竜巻が!回避!』『よけきれない!うわあっ!』バキバキバキッ!ドガガガーン!

 

ゴォォォ・・「あ、やっぱし。全滅みたいよ。」「やりますね。小旋風をいくつも発して対空武器にするとは。」

『ムダでござる。エキムに通常兵器は通用しないでござる。』『なにっ!』ザザザーッ!「また現れましたね。」

「包囲したでござる。ぬしらにエキムはやらせはせん。」ザザッ。「みなさん、ここは僕らが引き受けます。」

すっ、シャン!「まだ遊び足りなかったのよね。」ズズズズ・・「忙しいことで・・」ふっ・・「まず突破口を

開きます。「ファサーデ」第三の力!」バサッ!くるくるっ、ビシッ!「加速電子砲!」シュバッ!ズバババーッ!

「なんと!あのような近代装備まで!」「いまです!」「すまん、たのむぞ!」シャッ!「逃がしはせん!」

「おっと。」ビュッ!「ぬっ!」キィン!「あなたの相手は僕のはずです。」「・・よかろう。いくぞ若者!」

 

「リヴィ、作戦は?」「まずあの竜巻を突破することです。そのために!」ダン!「はあああーっ!」カッ!

ドドーン!「リヴァイアサン!」『僕の甲羅の隙間に入ってください。そこなら安全です。』「よし!」どかどかっ。

「ナンバー6、エリスを。」「まかせな。絶対に守るさ。」『いきますよ。突撃形態!』ズズッ。・・シュババババッ!

ゴオオオーッ!「リヴィが・・飛ぶ?!」「空飛ぶ亀か。どっかでみたようだな。」『渦に突入します!』

ビュオオオオーッ!『くっ!これは・・予想以上に風圧がすごいです!進めません!』「がんばれリヴィ!」

 

「・・苦戦してるね。」「エリス、やはり手助けが必要だな。」こく。すっ・・「・・風の星霊アルデバランよ。

古の盟約に従い、その力を示せ。」シュバッ!「星霊魔法陣か。」「邪なる風を制し、エデンに平穏なる循環を

もたらせ。エロイムエッサイム我は求め訴えたり!」カッ!・・ビュオオオオーッ!「おお、竜巻の外周に

逆回転の竜巻が!」「これでエキムの邪風は相殺される・・」ぐらっ、「おっと。」がしっ。「ひさびさの大技

だものな、まあ無理もないか・・今夜はリヴィにがんばってもらうとして、応急処置をしておこう。」すっ。

「魔力転送。」キィィィ・・「う・・」「これで意識は戻る・・だいたい魔力の制御が未熟なんだよな、エリス。」

 

ゴォォォ・・『・・おや?竜巻が弱まりました!』「いまだリヴィ!」『はい!』ドン!ゴオオオーッ!・・ズボッ!

「抜けた!・・あれがエキムの本体か!」「そうよ。一つ目の黒球体。全身の無数のトゲで気圧をあやつるの。」

ドルルルン・・ワサワサ。ビュオオオーッ!『おっと!』ヒラッ。「あぶな~。あの小竜巻は真空の爆弾よ。」

「はてさて、どう料理しましょうか。」「もちろん丸焼きや!いくで!」ターン!ボン!ゴオオオーッ!バサアッ!

テケレリリリ!『いくで一つ目巨大ウニ!プラズマ火炎!』カッ!ボオオーン!ワサワサ。ビュオオオーッ!

ドカアーン!『ちっ!旋風がジャマで当たらへん!』「フェニックス、かまわんから連続で攻撃を。そのスキに!」

『なら三連発や!』ボンボンボオオーン!ワサワサ・・ビュオオオーッ!ドカドカドカーン!「いまだ!」ピキッ。

「・・変神!」パキィィーン!ギュイイイーン!『タイタン!』スタッ。『リヴァイアサン、いけっ!』

『はいマスター!』ゴオオオーッ!『ヒドラソオオオードッ!』シュバッ!シャキーン!『狙うはあの一つ目!』

ワサワサ・・ビュオオオーッ!『イージス・リフレクション!』シャリン!バシィィィーン!『収束して返すぜ!』

キュルルルッ、シュバッ!ドゴオッ!「ナイス!目に風のドリルが突き刺さったわ!」グワアアアーッ!

『突っ込め!』『ストリーム・カッター!』シャアアーッ!シュバッ!・・ブシャアアッ!『とどめだ!光あれ!』

ギン!『シャイニング・チャージ!』キィィィィ・・キン!『必殺!プロメテウス・シュゥゥートッ!』ゴオッ!

ドンッ!・・ドバアアアーン!「大穴が開きましたな。」『仕上げだ、フェニックス!』『いくでうちの必殺技!』

バサアッ!カアッ!『グレート・プロミネンス!』ゴオオオーッ!ドゴオオオーン!『全速離脱だ!』『はい!』

 

カッ!・・ズドオオオオーン!「きゃっ!」「これは!・・まるで核爆発!」ズズズズズ・・「・・すごい。」

「キノコ雲か・・あとで各国に説明するのがたいへんだな。」「・・戻ってきたよ。」ゴオオオオーッ!・・すたっ。

「終わったのか?」「まあね。フェイの全力突撃を食らったんだもの、細胞ひとつまで灰も残らないわよ、ね?」

「ふぅ・・まあな。この技使うんも500年ぶりくらいやから、疲れてもーたわ。」「ところで第四部隊の皆さんは?」

「見させていただいてました。」シュタッ。「あら、生きてたのね。」「忍者軍団は皆さんが突破したあと、早々に

引き上げてしまったわ。」「目的の無い戦いはしないとのことでした。」「なかなか手強い連中ですね。戦闘中に

あれだけ冷静に状況を見切れるなんて。」「忍将・無形の砂風・・またいずれ現れるでしょう。」「魔獣教団か・・」

「あ、夜明けです。」サァァァ・・「おっと、急いで戻らないとレースに遅れてしまいます。それではまた。」

「ああ、レースは見させてもらおう。」「寝不足で運転すると事故るわよ。」「トレーラー内で寝ますよ。」

 

天界。「失礼する。」「あら、ようこそヴォーダン。」「フェルメール、例のものは?」「予定どおりに建造中だよ。

見てみる?」「うむ。」「こっちよ。」カツカツ・・「天界政庁に気取られてはいないだろうな?」「もちろん。

空間工房にあるかぎり、デウス様だって見つけられない。そして出たときは・・もはや手遅れよ。」にっ。

ゴオォォォ・・「これが・・」「気にいった?飛空大神殿「アウターヘヴン」。」「さすがは工神フェルメールだ。」

「まだ30%くらいだけど、これが完成すれば、天界軍だろうが止められやしない・・「楽園奪還」作戦には

不可欠の拠点よ。ところで他の十二神の賛同は?」「戦女神と福の神は了承してくれた。他の連中も説得中だ。

問題は綺羅とアーレスだな。」「綺羅は敵にまわすと厄介だけど、味方にしても、何をしでかすか読めないもんね。

アーレスはタイタンたちの親友だから、まず彼らに敵対する立場は拒むでしょうね・・理由が必要ね。」キラッ。

 

ブロロロロ!『いよいよバグダッドステージも残りわずかの周回ラップになりました!ただいまの一位は

ベネトン、それを猛追するのが二位のフェラーリ!その差0.02秒!』「あらあら、追いつくのかしら?」

「ふむ、彩どのは抜くチャンスを伺ってるようですな。」「最終ラップまでスリップストリームで引っ張ってもらい、

第三コーナーあたりで勝負をかける作戦ですね。」「次が最終ラップやで。」「さてどう動く、彩?」ビュオオーン!

『いよいよ最終ラップ!激しいバトルに決着がつくときがきました!』「ベネトンもうまくブロックしてるぜ。」

「・・第三コーナーの作戦はもう読まれてるはず。だからそのウラを・・」『第三コーナーにかかりました!』

ブロロロロ!「抜きにかかった!」「ダメよ、ベネトンに読まれてる!ブロックされたわ!」「・・いま。」キラッ。

ギュオオオーン!『あっ!』「うまい!ブロックにシフトしたスキを狙って、最終コーナーでインに入りました!」

『なんと最終コーナーでフェラーリが抜きました!アウトに大きくふくらんだベネトン、おくれた!』ブロロロ!

バサバサッ!ワアアアアーッ!『逆転です!フェラーリ土壇場の大逆転!チェッカーフラッグを受けました!』

「一瞬のスキを見逃さない神経反応速度はさすがだな。」「忍者という裏稼業がドライビングテクニックにも

ちゃんと反映されてるわね・・今晩あたり夜這ってみようかな?」「なら俺は幽を誘うか。」「なっ?!わたしと

いうものがありながら~!」「言えた義理じゃないだろ。」『そうそう。』「ダメ!これはわたしのものだもん!」

ぎゅっ!「こ、こら!こんなとこで!」「他の女に渡すくらいなら、わたしがとっておく!」『とれるかっ!』

 

魔獣教団本部。「砂風、失敗だったか。」「は。国連秘密部隊の連中、なかなかに手強いでござる。」「まあよい・・

まだまだ眠っている魔獣はいる。機将・ゴールド!」『これに、魔獣大神官どの。』ガチャッ。「次は貴殿だ。」

「ははっ、我が配下の機甲師団とともに。で、次なる覚醒の地は?」「オーストラリア、エアーズロック。」

 

♪砂漠の果ての聖なる岩 それは魔獣の封じ岩

♪その縛めが解けるとき ゴールは砂漠を支配する

♪さらさらさらさら砂地獄 車も人も沈んでく

♪落ちたらそこは闇の中 だんだん身体が溶けてくの

♪逃げるところはどこにもない ゆっくりゆっくり溶けていく

♪聖なる岩は見てるだけ 「沈黙の岩」は見てるだけ・・

 

******************

 

天界・アゴラ(繁華街)にあるバー「イオ」。「・・ヴォーダン、何の用だ?一席もうけるとは。」「綺羅がバーに

一度行ってみたいとねだるものでな。」「だからなぜ俺まで呼んだのかだ。」「だってアルカディアは私のおともだち

ですもの。そうでしょ?」にこっ。「・・そうだ。」「もうひとつ、ヴォーダンが用があるのは事実ね。」「うむ。

アルカディア、話がある。実は・・」・・「・・ふっ、「楽園奪還」か。いかにもキサマの考えそうなことだ。」

「賛同してくれるか?」「すると思うか?キサマのタイタンへの嫉妬がきっかけの計画などに。」ぴく。「・・」

「ふふっ、さすがアルカディア。慧眼よ。」「いらっしゃいませ。何にいたしましょう?」「私は二千年ものの

シャンバリア産・蜜酒を。」「俺はヴーアミタドレス産・黒酒を。」「かしこまりました。こちらの方は?」「・・」

「ン・カイ産ブランデーをボトルであげてくださいな。どうやら酔いたいようですから。」「かしこまりました。」

「さすが綺羅、ヴォーダンの好みを知ってるか。」「つきあい短くないですもの、いろんな意味でね。」くすっ。

「ヴォーダン、キサマがタイタンを憎もうが妬もうが好きにするがいい。だがタイタンはもう天界にはいない。

冤罪とはいえ最高ランクの堕天刑だ。デウスとて、もはや撤回することもできない。それで十分ではないか?」

「・・だが奴は神力を保ったままだ。それが問題だ。」「タイタンがエデンの神になることが、でしょ?」ふっ。

「なるほど、そういうことか・・有り得んな。他はともかく、タイタンは。」「そう断言できるのか?」「できる。

俺はキサマよりタイタンとのつきあいは長い・・あいつは根っからの風来坊だ。天界政庁に入閣していかなる

財も権力も思いのままにできるほどの功績を上げながら、すべてを拒否し、政庁からのわずかな年金と冒険で

得た報酬や財宝だけで暮らしている・・そんなマネがキサマにできるか?」「・・だから信用できんのだ。」

「ヴォーダンとは正反対ですものね。理解できるとは思えないわ。」「そういう綺羅は理解できるのか?」

「お忘れ?私はタイタン組の最大のタニマチだったのよ。」「ふふっ、それを言うならお得意様だろ。」

「いいえ。だって神都へ来たときは必ずお忍びでお泊りしてたもの。」ぎょっ!「綺羅が?!」「知らなかったか?

十二神でも親しい何人かは徹マンに誘われたことがある。もちろん俺もな。」「ガンパイうまいのよ、アルは。」

「そのアルは人前ではやめろって。」「だって子供のころからアルでしょ。」「・・アルカディア、貴殿は?」

「年齢の話はやめよう。綺羅がキれる。」すっ・・ぽん。ぎくうっ!「ヴォーダン・・いま思ったんじゃない?

「年増」って・・」メリメリ・・「い・・いや、決してそのようなことは。」「そう・・ならいいのよ。」すっ。

「見せてみろ・・手形のアザになってるぞ。」「・・すさまじい力だった。」「ヴォーダン・・忠告しておく。

綺羅の前で三つの話題はタブーだ。かつてそれで大陸が一つ消滅した。」「・・三つとは?」ちらっ。・・ふっ。

「ちょっと失礼してお手洗に行ってくるわ。」すっ。「すまん。・・で、その三つだが・・」「ふむふむ・・」

 

第八夜「沈黙の岩」 - 砂地獄魔獣ゴール登場 -

 

オーストラリア。ブロロロ・・『みなさま、まもなく前方に世界で最も有名な岩、エアーズロックが見えてまいり

ます。アポリジニはこの岩を「ウルル」、すなわち「集会の場所」と呼んでいたことからもわかるとおり、

古代から聖地とされてきたところであります。この荘厳な岩を見れば、うなずけるところであります。』

キキィッ!「・・おい、変だぞ。」「えっ?」「消えてる・・ビジターセンターもバスも観光客も!」『ええっ!』

ばばっ!「ほんとだ!」「いったいどういうこと?!」「ひょっとして道を間違えて反対側から来ちゃったとか?」

「ここへ来る道はこの一本だけ、間違えようがありません!」「となると・・ここで何があったんだ・・?」

ブロロロ!「戻ります。なにかとてつもなくイヤな予感がします。」『・・うん。』グラッ、ドドーン!『うわっ!』

ズダダダッ!「なにごと?!」「穴に脱輪か?!」「これは・・バスが沈んでいく!」ズズズズ・・「みなさん!

非常口から脱出してください!」キャアアアーッ!パシュ!ザザザザーッ!「砂が!・・逃げられない!」

ズズズズ・・『きゃああああーっ!』『だれか!誰か助けてくれええぇぇぇぇーっ!・・』・・シーン・・

 

エアーズロック上。ガチャ。『ふふふ・・ゴールが目覚めたか。砂漠に踏み入るもの、全てゴールの餌となる。

わが「鉄の軍団」滑走機甲師団を除いてはな。』・・ゴゴゴゴゴ!『待っているぞ・・第ゼロ部隊。』キラッ。

 

シドニー国際空港。「やっと来た!あんた一大事よ!」「どうしたベル、やぶからぼうに。」「今回の魔獣はもう

覚醒してるわ。オーストラリア中央部の全てのものがなくなっちゃったの!」『なにっ!』「全てって?!」

「全部よぜんぶ!人間も動物も街も都市も、まるで蜃気楼みたいに消えちゃったの!」「ただごとじゃないな・・」

「でも悪いニュースばかりじゃない。わずかな生存者がヘリで救出されたわ。」「ほな証言はとれたんか?」

「もちろん。大小無数の蟻地獄のせいらしいわ。」『蟻地獄?』「・・ゴールは地底に棲む。自分は動けないから

砂の手足で獲物を捕らえる・・」「自分で動けない?・・動かないんじゃなくて?」「・・なぜなら、ゴールは

「大きすぎる」から・・」「大きすぎる・・?」「それは間違いないわね。短時間で数千、いえ数百万にものぼる

ターゲットを地底に引き込んでるし。都市なんかまるごとよ。」「生存者はどうやって助かったのでありますか?」

「岩の上にいた人がほとんど。ビルや乗り物はそれ自体が呑み込まれたようね。」「・・音、ですね。」『音?』

「正確には振動というべきでしょう。ゴールは地上から伝わるあらゆる振動を襲っていると推測されます。」

「なるほど・・ビルは施設の管理システムなどが、乗り物もそれ自体が発生源だわ。安全なようでいて、かえって

存在を知らしめていることになるわね。」「まず動かずにいれば襲われんやろうが、実際は無理な相談やろうしな。」

「で、被害地域の中心点は?」「エアーズロックよ。」「なるほど・・応援がいるな。」「そう思って第六部隊を

呼び寄せたわ。」♪ポンポンポーン。『トロント発221便、ただいま到着しました。』「おっ、ちょうど到着ね。」

「さすが手回しがいい。では到着ロビーへ迎えに行こうか。」「第六部隊・・サイキッカー部隊だったな。」

 

ガヤガヤ・・「あっ、あれよ。おーい!こっちこっち!」「・・あ、ベルさん。」「さすがに目が良いですね。」

「・・そうか。あれがウワサの第ゼロ部隊か。」「へぇ~、なんか人間くさい神さまだよね。」キュウキュウ。

『おっ?・・』「ナンバー6・・あれがホントにサイキッカー部隊か?」「なんかフツーの観光客みたいやな。」

「ペットのウサギまで連れてますけど・・」「戦闘サイキッカー部隊とはとうてい見えないわね。」チチチッ。

「そこがミソなのさ。ふつうが一番恐ろしいってこった。」「・・そう。みんなすごい精神パワーを持ってる・・」

「エリスにはわかるの?」こく。「ふむ・・」キラッ。「いかにも。皆様すばらしい力をお持ちのようです。」

 

ザッ。「よく来てくれたな、みんな。紹介しよう。こちらが」「・・巨神タイタン。人間名・神一郎。天界きっての

勇者だったが、無実の罪で堕天の刑を受け、天界から堕とされた。」『なっ!』「そちらが右腕でラマンでもある

絡新婦・アラクネさんですね。古代メソポタミアでは魔神として、バビロニア帝国では女王として君臨し、

古代史に多大な影響を与えましたね。」「あら。」「・・そちらが火の鳥・フェニックス。永劫の地殻変動を起こす

辺境の大火山地帯の出身。なぜか世事に長け、生活力は高い。」「まあな。」「そして龍亀・レビヤタン。精霊界

最大の「忘却の海」出身。その鋭敏な頭脳はいくたびも勝利を呼んできた。人は見かけによらないですね。」

「正確には人ではありませんが。」【最後に猿神・イエティどのや。】【経歴をツラツラ並べられるの性に合わん

やろうから、以下略しますわ。】「ご配慮、かたじけのう存じます。」「なんだ?!」「いまの二つの声・・いえ、

テレパシーは?!」・・はっ!「まさか・・ウサギか!」「左様ですな。」【おどろいたか?】【ペットやないで。】

「では改めて紹介しよう。第六部隊長、超能力ウサギのファムとニーコだ。」『部隊長?!』【よろしゅうに。】

「部隊長となると、すごい力持ってんやろな~。」「当たりだ。こいつらはちょっと変わった能力がある。」

「どういうものですか?」【摩擦ですねん。】「摩擦・・?」【まあそのうち見せたるさかい、楽しみにな。】

 

「こっちが副長の和沙結希。表向きは彼女が隊長だ。」「・・よろしく。」「どうみても普通の女の子だが・・」

「いえ・・この子、相当に心が病んでるわね。」「アラクネ?」「目の光が異常ね。内に秘めた恐ろしいまでの

トラウマが見えるようだわ。」「さすがに女性の心を読むのに長けておりますな。」「あなた、ちょっといい?」

「・・?」くい。「・・笑顔でも見せれば可愛いのに。それじゃ一生笑えないわね。」「・・」キラッ。ぽん。

「?!・・シーラさん。」「だめですよ結希さん。いちおうはお仲間なんですから。」「・・そうね。」スゥ・・

「・・アラクネ、感じたか?」「ええ・・爆発的なパワーを開放しようとしてたわ。一瞬だけど感じた・・」

 

「こっちが表向きの副長、シーラ・ラルトネー。見た目お嬢様だが、だまされるなよ。」「まあナンバー6さんたら。」

「ここだけの話、秘密部隊でいちばんのワルなのよ。虫も殺さない顔して、殺した人数は第一位。」『へぇ・・』

「ベルさん、それは人聞きが悪いですわ。あれは完全な事故、または不可抗力ですわ。」「本気で言ってるの?」

「もちろん。どこをたたかれても私が手を下したという証拠はありませんわ。」にこっ。「・・こういうやつ。」

 

「で、こっちの陰気なボーヤがレナ・クールフェイス。」ぽんぽん。むっ。「・・陰気は余計だ、ベル。」

「事実じゃない。・・あれ?」ずん!よろっ。「どうしたベル?」「なんか・・急に・・重くなって・・」

「失礼。・・これは霊障ですな。ほい。」ぐい。すうっ・・「あれれ?軽くなったわ。」「これが憑依しておりました。」

「・・って、見えないけど。」「・・返してください。」「どうぞ。」すっ。「今のは?」「・・僕に憑いてる霊だ。」

「霊魂憑きかいな・・」「ナナ、あいさつしておけ。」【それもそうね。】ユラ・・『おおっ!』「・・女性か?」

【あたしはレナの守護霊、ナナ・ルーン・レイアードです。】「・・守護霊じゃない。憑依霊だろ。」【ふふっ、

そうとも言うかもね。】「そんな強力な霊を背負って、よく衰弱もせず生きてられるわね。」「ふむ・・どうやら

霊的属性が非常に近い、もしくは同質のためだと思われます。」「どういうこっちゃ?」「つまり・・レナとナナは

兄妹ということか?」【まずは正解かな。】「なるほど。肉親の霊ならば霊障を起こさないわけですな。」

 

「そして最後が麻雲魅霊。彼女にはすごい異名があるのよ。」「ベルさん、それは言わないでよ。恥ずかしいから。」

「どんな異名だ?」「それはね・・「空中戦艦・魅霊」。」「かっこええ~!」「派手すぎるんでイヤなんですけど・・」

【んなこたあらへんで。魅霊の超能力はまさに戦艦クラスや。】【その気になれば一人で第七艦隊壊滅できるわ。】

 

「以上で紹介が終わったが・・おや?」じーっ・・「・・結希、どうした?」「・・ナンバー6、この子、だれ?」

「紹介してなかったか?超能力少女のエリスだ。」【超能力やて?】【うちらのほかにおったんかいな?】

「・・はじめまして。」「・・あなた、ただ者じゃないわね。」「あらあら、結希さんが珍しく感情表現を。

そんなにこの子が恐ろしいんですの?」きっ!「シーラさん!」「いいですよ、その憎悪の表情は。怒りでも

なんでもいいから感情表現は大切ですわ。」「忘れてた。結希はパッシブ型テレパスでもある。妙なこと考えると

みんな読まれちまうぞ。」「聞き耳頭巾ですね。」「それで俺たちのことも「読んだ」わけか。」「へえ・・ふふっ。

結希ちゃん、わたしの考えてることわかる?」「?・・なっ!」かーっ!(赤面)「望めばいつでもこのとおりに

してあげるけど?」「け、けっこうです!」「・・ほう、結希さんがひさしぶりに感情的に。」【珍しいね~。】

「アラクネ、なに考えたんだ?」「いやね、ちょっとあれこれ。・・傷心の娘もけっこう美味そう・・」じゅる。

 

「さて懇親はこのくらいだ。ベル、呼べや。」「はいはい。」♪ピッ。「キャプテン、お迎えよろしく。」『わかった。』

「ナンバー6、いまのは?」「タクシーを呼んだのさ。」「けど今回は車はあかんで。」にっ。「まあ待ってな・・きた。」

『えっ?』ゴォォォ・・ドドドドド!「あれは?!」「見てのとおり、VTOLさ。」ヒュゥゥゥーン・・パシュ。

「さ、乗ったのった。」ドヤドヤ。パシッ。ヒュィィィーン、ドドドドド!「うわー、飛びあがった!」

「無人操縦とは驚きですな。」「正確には無人じゃないんだな。」『え?』「高度3000m。・・そろそろ見えてくるわ。」

ゴォォォ・・「・・雲の中になにか巨大なものがいます!」「魔獣か?!」チッチッ。「ちがうぜ。」『あれは?!』

ゴオオオオ!「な、なんて巨大な飛行機だ!」「まるで空母なみのでかさやないか!」「全長200m、翼幅500mは

あります!」「こんな巨大な飛行物体がエデンにあったの?!」「ほう、これはなかなか。」「あれこそ第五部隊の

母艦、飛行空母「エル・ドラド」だ。」「第五部隊・・ギーザに現れたあの?」「たしか航空部隊だったわね。」

ゴォォォ・・「ガイディングレーザー捕捉。後部着艦デッキへ。」ゴォォォ・・キキイッ。「着いたぜ。」

 

カンカン・・「ガランとしてるな・・」「乗組員にぜんぜん出会わないわね?」「・・おかしいです。人の気配が

まったくありません。」「・・ここにはだれもいないよ。」「エリス?」「でも・・いる。」「・・よくわかったわね。」

「結希さん?」「・・わかるよ。結希さんのことも・・」「・・どう?」「・・甘えちゃだめだよ。」「!」カッ!

『あっ!』がくっ!「?!・・ナナ!」【図星をつかれて逆上したね。それこそ甘えだってわかる?】

「さすがナナちゃん、いいタイミングで憑依して止めましたわね。」「・・ここで爆発されちゃかなわん。」

「魅霊ちゃん、爆発って?」「結希さんは感情が高ぶるととんでもない力を発揮するんです。それが起これば

私たちでも止められません。」「どうなるんだ?」「・・まあ、知らないほうがいいでしょう。」『??』

「なかなか大変ですな。」【ほんまに。力を制御するっちゅーのは難しいわ。】【結希はんは特にな。】

「ふふっ。エリスと結希は仲良くやってけそうだな。」「・・そうだね。」「エリスって・・けっこうきついんだ。」

 

シュッ。「ここは?」「エアーズロック上空まで1時間。それまでこのリビングで休んでくれ。飲み物も軽食もある。」

「普通はブリッジとか管制室へつれていくんじゃないの。」「そんなもの「エル・ドラド」にはないわよ。」

『ええっ?!』「じゃ・・この巨人機、だれが動かしとるんや?!」『私だ。』はっ!「お出ましだな、キャプテン。」

「いつの間に?気配もなにもしなかったのに・・」「これは・・立体映像?」『直接会えない無礼はお詫びしよう。

私が「エル・ドラド」の艦長だ。とりあえず「キャプテン」という名だ。』「・・わかった!あなた電子頭脳ね!」

「古い言葉を知ってるな~。いかにもキャプテンはコンピューターだ。これはイメージ映像というわけさ。」

「ほう、人間の科学はここまで進んでいたのか。」「メカ好きのフェルメールが見たら喜びそうですね。」

『ナンバー6、先行させた偵察機によれば、エアーズロック近辺には所属不明の武装勢力がいるようだ。』「ほう?」

ぱっ。「ホバー戦車・・どの国も保有していない型だな。」「じゃ、やっぱり?」『うむ、魔獣教団の手先だろう。』

「手ぐすねひいて待っとるわけやな。」【うちらもおるきに、なんとかなるやろ。】「待って。・・なんでわざわざ

ホバー戦車なんか引っぱり出したのかしら?」「たしかにあれでは反動の強い大口径砲は使えませんし、小回りも

戦車ほどは・・あっ!そうか!」「リヴィ、なにか?」「足が地につかないことが大事なんです!」『・・あっ!』

「魔獣か!」「今回の魔獣は地上の振動源を無差別に蟻地獄へ引き込みます。けどホバー戦車なら沈むことは!」

「やりますな。魔獣の性質を熟知したうえでの措置ですか。」「すべて承知の上か・・前回の砂風といい、教団も

実力者を繰り出すようになってきたな。」「魔獣教団・・かなり巨大な組織らしいな。そうでなくちゃ。」キラッ。

 

「ゴールド様。東から未確認飛行物体が接近します。」『来たか。』「アンブッシュをかけますか?」『無用だ。

このまま堂々と迎えてやろう。』「はっ。」・・ゴオオオオ!『ふふふふ・・待ってたぞ、秘密部隊。』チャリッ。

「撃ってこないわね?」「隠れもせずに堂々とか。」「敵ながらアッパレというべきですな。」・・ズズン。パシュ。

「エアーズロックの上なら足元を気にしなくていいだろう。リングアウトは魔獣のエサだぜ。」「降りよう。」

 

ヒュゥゥゥ・・『ようこそ秘密部隊。第ゼロ部隊はいるか?』「俺たちだ。」ザッ。『私は魔獣教団の機将ゴールド。

以後よろしく。』「以後?・・以後があるのか?」『ふっ・・社交辞令だ。ではさっそく本題に入ろう。』さっ。

ゴゴゴゴゴ!「ホバー戦車が動きだします!」「第六部隊は下がってろ。俺たちが戦う・・?」ぐっ。

「下がってて。」【ここはわてらの出番や。】【みなはんは応援しとってや。】「みなさんの戦うべきは魔獣ですよ。」

「・・こんな連中に体力を浪費することはない。」【人の強さ、見せてあげるね。】「ではやりましょうか!」

「しかし!・・ナンバー6?」ぽん。「そのための秘密部隊だぜ。まあここはまかせておけや。」「・・わかった。」

 

『全軍、攻撃開始。』ゴオオオオーッ!【いくでニーコ!】【空気摩擦消去や!】キン!ゴオオオオーッ!

「戦車が・・通り過ぎちゃった?」「あの二匹が空気の摩擦を消したせいで、慣性がもろにかかったのさ。」

「と、止まりません?!」「ファンを逆転させろ!」「間に合いません!」「岩から飛び出すぞ!うわあああーっ!」

ゴオオオーッ!・・ヒュルルル・・グシャアッ!・・ザザザザーッ!ズズズズ・・「あ・・あっという間に!」

「砂の中へ引き込まれたで!」「こんなに反応が早いとは。」「ゴール・・恐ろしい魔獣です。」

 

ズガガガガッ!「・・機関銃なんか効かない。」キラッ。ググ・・ピタッ。「銃弾が・・止まった?!」

「・・サイコ・バースト。」カッ!グシャッ!『ぐわっ!』グシャグシャッ!「戦車が一瞬で粉々に!」

「結希のあの能力は?!」「破滅の光、サイコ・バースト。核の衝撃波にも匹敵するすさまじいパワーさ。」

 

「それでは舞をご堪能いただきましょうね♪」すっ。「はじきとばせ!」ゴゴゴゴゴッ!「こちらへ。」

スゥゥゥ・・くるっ。「なっ?!」「あちらへ。」グン!ビュオッ!「三号車が!」「うわあっ!」グシャアッ!

ドカーン!「なんだ?!戦車がシーラを避けるように急転回した!」「しかも・・戦車を軽く放り投げた?!」

「いや。あれは戦車が勝手にぶっとんだだけだ。シーラの天鈿流古式神楽はあらゆるベクトルを制御できるのさ。」

「摩擦の次はベクトルかいな・・」「別の戦車が狙ってます!」ズガガガガッ!「当たりませんわ♪」くるくるっ。

チュンチュンチュン!「なんて動きなの・・銃弾より速いなんて!」「そうじゃないのよ。銃弾のくるところが

わかってるから、そこからよけてるだけ。」「どういうことですかベルさん?」「シーラの超能力、近未来予知。

ほんの数秒先の未来が見えるの。」「近未来・・予知?」シュバッ!「今度はミサイルよ!」「おバカさんですね♪」

すっ・・ぽん。くいっ。「はいどうぞ。」ゴオッ!「なにいっ?!ミサイルがこちらに!」ドカアアーン!

「ミサイルの軌道まで変えられるか!」「しかも速度が増しとる!」「動くものすべて私のなすがままですわ。」

 

「・・ナナ、いくぞ。」【うん。融合!】ズズズズ・・「ナナちゃんがレナに入っていく?」「戦闘モードさ。」

ターン!『おおっ!』「なんて跳躍力や!」「筋力強化能力。通常の数百倍にブーストできる。」「・・クェーサー。」

ちゃっ。「カード?」「ソード。」シャッ!キィン!ズズ・・ガラーン!「砲身が落ちた?!」「ロッド。」シャッ!

カツッ!・・ボオオオーン!「ほう、爆発しましたな。」「カバラ流カード闘術のバトルカード「準星」だ。」

「カバラ流?!」ぎょっ!「知ってるのか雷電!」すぱあああーん!「だれのことよ!」「いや~、第三部隊の

愛美に借りたマンガになんでも知ってるヤツがいたもんでな。」きゅぽん。「・・フェイ、そのマジックなんなの。」

「額に「大往生」って書いたろ思て。」すぱあああーん!「だれが書かせるか!冗談はともかく、カバラ流・・

まだ残ってたのね。でもレナのは基本の小アルカナ。高位の大アルカナはさすがに・・」にやっ。「いるぞ。その

大アルカナ使いがレナの先生なのさ。」「なんですって!ま、まさか「エンプレス・オブ・ギャラクシー」が!」

ガクガク・・「イエティ、昔に何かあったのか?」「はい。知っております限りでは、バビロニア帝国を倒した

某大騎士団の指揮官がたしか」「イエティ!余計なことよ!」「失礼しました。」「・・決着つけなきゃ。」ギリッ。

「よく狙え・・撃てい!」ドンッ!「砲弾が!あぶない!」【天唾だよ。】ズガガガガーン!「・・なにがあったの?」

「レナを砲撃した戦車が逆に爆散したやて?!」「ナナの能力「天唾」。遠距離攻撃を次元障壁で撃ったところに

瞬時に返す。」「なんという力ですか・・」くるくるっ、ザシャアッ!「・・ナナ、ご苦労。」【朝飯前ってとこね。】

 

「あいつを撃て!」ズガガガガッ!「・・はあああーっ!」ドンッ!「魅霊が飛んだ?!」「風に乗ったのさ。」

「回れトリスタン・リング!」ヒュオオオオーッ!キラキラ・・「・・氷の輪?」「空中の水分が超音速風で

凝結したのさ。」「超高速で回ってます・・まさか!」バリバリバリッ!「高電圧・・まるで粒子加速器ですな。」

「パルサアアアアーッ、カノンッ!うおおおおおーっ!」カッ!ズドオオオオーン!ズドドドドオオオーン!

「す・・すごい!」「戦車一個大隊が一撃で消滅やて!」「空中戦艦「魅霊」・・その名にたがわぬ力ね。」

「魅霊の能力は風。たかが風だと思ったら大間違い。魅霊の応用力は俺でも震えがくるほどすごいぞ。」

ゴオオオーッ!「切り裂け、ドラゴンカッタアアアーッ!」ズババババーッ!ザキザキザキィッ!ドドドカーン!

『す・・すごい!』「大地をも裂く巨大カマイタチで真っ二つか!」「何より熱血シャウトが一番すごいです!」

 

ヒュゥゥゥ・・『・・全滅か。秘密部隊、これほどとは。』「機将ゴールド、残るはあなた一人です!」びしっ!

「・・魅霊さん、隊長わたし。」「あらあら、戦闘になると魅霊さんが隊長ですわね♪」「・・燃えてるからな。」

『敵ながらあっぱれと誉めておこう。だが私だけでも闘う。』シャリン!【二刀流か!】【腕におぼえありそやね。】

「黄金と白銀色の剣か。」「どハデね~。」『わが愛刀「金将・銀将」。さてまず刀のサビになりたいのは誰だ?』

「手入れ悪いわよ。もちろんこの・・」すっ。「おっ?・・レナ?」「・・ここは「僕たち」に任せてもらいます。」

『子供だと?』「そう侮って生きてた奴はいない・・」ビュン!『剣か・・むっ?オモチャではないか!』

「いかにもセラミック製の模造刀さ。」『笑止。それで勝とうというのか!』「やってみなくちゃわからないよ。」

『よかろう!では死ね!』ビュン!「ナナ。」【スピリット・コーティング!】キン!ドン!『なにいっ?!』

ガキィィーン!『どおっ!』ズザザザーッ!「オモチャの刀で真剣を!」「それになんて豪剣!あんな小さい体で

あれほどのパワーが!」「・・よく受けきったね。」チャッ。『・・超能力による武器・筋力増加か。なるほど、

これはおもしろい!いくぞ少年!』ダッ!キンキンキン!「あの鎧であれほどのスピードが出るのか!」

「あいつもタダモノではないということね。」『やるな少年!よい腕だ。』「あなたも見事な剣筋ですね。」

キィン!ザザッ!『ふふふ・・こんなに燃える相手は初めてだ。』「・・なぜです?」『む?』「あなたの剣には

一片の曇りもありません。そんな方がなぜ教団に?」『・・人にはそれぞれ語りたくない過去があるものだ。』

「そうですか・・では何も聞きません。敵として闘うのみ。」チャッ。『うむ。言葉ではなく、剣で語ろう。』

ぐっ、ガキン!「?!・・剣をつなげた?」『これこそ真の姿「王将」!君への最大の敬意だ。いくぞ!』

ブォン!ガキィィーン!「くっ!・・前より剣筋が速い!」『闘いはパワーだけではない。技術も大事だ!』

「たしかに技術はあなたが上。しかし!」ブォン!ターン!『なんというバネ!』「パワーも使い方次第です!」

ゴオッ!ガキィィーン!「やった!」「ゴールドの頭部に直撃です!」「いえ、兜で致命傷ではありません。」

『くうっ!』よろよろっ。ピキ・・ガラン。バサアッ!「兜が!」「・・長い金髪?」「・・見事よ、坊や。」

くいっ。『ああっ!』「・・女性?!」「ゴールドは女性だったのか!」「・・名前をまだ聞いてなかったわね。」

「・・レナ・クールフェイス。あなたの本名も聞かせていただきたいですね。」ふっ。「いいでしょう・・アテナ。」

『なにいっ!』「ま・・まさか!」ちらっ。ふっ・・「今日は退かせてもらうわ。」カシン!ゴオオオーッ!

「鎧にロケットが内蔵されてたのか!」「また会いましょう秘密部隊!」ゴオォォ・・「・・いい引き際です。」

「一郎さん・・彼女もしかして!」「ああ・・行方不明のデウス様の娘かも。」「同名の別人やとええけどな・・」

 

「さて、あとは魔獣をどうするかだが・・」「ここに立ってても事態は好転しないわ。」「リヴィ、案はあるか?」

「・・かなり危険ですが、ひとつしかありません。虎穴に入らずんば虎児を得ず。」「ちゅーこた・・やっぱ?」

「ゴールにわざと食われることしかないでしょうな。」「リヴィの泡沫殻はどこまでもつ?」「海底1万mの

圧力くらいなら余裕です。」「それでいこう。第六部隊のみんなは待っててくれ。」【そら殺生やで、あんさん。】

【ここまできて水くさいわ。】「・・いっしょに行きます。」「人手は多いほうがよろしいですわ。」「・・同感。」

「数多くの人々を呑み込んだ魔獣。どんなやつが見もしないで帰るわけにはいきません。」「ナンバー6?」

「たのむ。俺とベルとエリスはここで待つ。」「わかった。リヴィ。」「バブル・シールド!」プワッ。ふわっ。

『では行ってくる。』「・・気をつけて。」「吉報を待ってるぜ。」「全員生きて戻ってきてね。」『では。』

ふわっ・・すとっ。ズズズズ・・「・・行ったか。」「・・一度は見ておかないと。魔獣の恐ろしさを。」

「そうね・・でも倒せるの?」こく。「結希さんがいるから・・」「さ、とばっちりくわないよう上空で待機だ。」

 

ザザザザ・・「流砂か・・」「砂の動きをここまで精密にあやつるとはね。」【・・むっ?もうすぐ出るで。】

スボッ!・・「洞窟?」「でかいわね・・ゴールの棲息地かしら?」「着地します。衝撃にそなえてください。」

ブニュ。「ぶにゅ?」「あ、観光バスがあるで。」「生存者がいるかもしれません。泡沫殻を解除して調べましょう。」

「・・待って!」「アラクネ?」「バスをよく見て!」「・・あっ!溶けてる!」「それにこの洞窟!」『・・なっ!』

ドクンドクン・・「い、生きてる!」「ここはもしやゴールの腹の中ですか!」「とすっと・・ゴールってどないな

でかさやねん!」「・・エリスは「大きすぎて動けない」と言ってたな。」「被害地域の広さを考えると・・うっ!

ゴールは・・数百kmクラスの大きさ・・!」「な・・なんて魔獣なの・・」ガクガク・・「倒せる・・のか?」

「・・?!」ぴくっ!【・・て・・】「生存者がいるわ!」「結希さん、聞こえたのか?」「あっち!」「移動します。」

ころころ・・『・・ぐうっ!』「・・して・・」「ひどい・・」「・・下半身が・・溶けてなくなってる・・」

「顔も・・半分白骨化してる・・うぶっ!」「・・苦しい・・溶ける・・おねがい・・楽にして・・」「・・!!」

はっ!【結希はん、あかん!】【ナナ、止めてや!】【わかった!憑依!】「・・うおおおおおーっ!」バシーン!

【きゃっ!・・憑依できない!】「おおおおーっ!」スボッ!「あっ!泡から出たら!」スゥゥゥ・・「浮遊?」

「おねがい・・」「・・わかった。サイコ・バースト!」カッ!シュバババーッ!「・・ありがとう・・」

「やっちゃいましたわね・・」「・・魔獣!ぜったい許さない!」ゴゴゴゴゴッ!【くるで、ニーコ!】【うん!

絶対防御シールド!】キン!「泡の外に障壁が?」「みんな伏せて!見たら塩の柱になっちゃうわよ!」ばばっ!

「・・ソドムとゴモラか!」「はやく!」ばばっ!ドドドドドド!「こ・・このすさまじいパワーはまさか!」

「ディーヴァ戦役で一度だけ経験がございます!」「サイコ・バアアアアーストッ!うおおおおおおーっ!」

 

地上。カッ!「きた!」ドドオオオオーン!ドドドドドドッ!「す・・すごい!地平線の彼方まで火柱が!」

「これが・・結希さんの力・・」「そうだ。・・今回はタイタンも出番がなかったな。こういうこともあるさ。」

 

衛星軌道上。『オーストラリア中央部に異変確認。エアーズロックから東西500kmに巨大連鎖爆発。』

『核攻撃か?』『いずれの国からもミサイル発射確認されず。その可能性はなし。放射能反応なし。』

『ペンタゴンから通達がきてる。現在の現象は記録より抹消せよ。』『・・大統領命令?了解した。抹消する。』

 

ゴォォォ・・モコモコッ、ズボッ!「終わったようです。」「ふう・・生きてたのが奇蹟だな。」「結希さんは?」

【センシングしてみる。・・おったで。】【あっちや。】スゥゥゥ・・「・・いた!」「気絶しとんな・・」

「無理もない。・・核爆発を凌駕するエネルギーを使ったんだから。」「とりあえず地上へ・・空が見えてるか。」

ヒュィィィーン。「VTOLです。」『みんな生きててなによりだ。これから回収する。』「・・終わったか。」

 

飛行空母「エル・ドラド」。ゴォォォ・・『・・・・』「ゴールがこれほど大きかったなんて・・」「それ以上に

そのバケモノを一人で消滅させちゃった結希が恐ろしいわ・・」「ファムとニーコ、結希は・・危険だな。」

【だからこそ第六部隊におるんや。】【あないな力、野放しにしとったらロクなことにならんし。】「そうやな・・

人間核兵器。各国が手段を選ばず欲しがるやろな。」「問題は結希のその力がトラウマに由来するものということ

ですわ。己の力を嫌って情緒がとても不安定になると、逆にそのパワーは強まる・・悪循環ですわね。」

「だからこそそれを制御もしくは緩衝する存在が必要・・それが僕たち。」【不安定な核兵器の安全装置ですね。】

「う・・」はっ。「結希さん?!」「・・みんな、生きてるのね・・でも・・私も・・まだ生きてるのね・・」

 

「キャプテン。第六部隊をカナダまでたのむ。」『わかった。』「俺たちはシカゴで降ろしてくれ。」「ちょっと!

結希をほっとくの!」「死ぬのは自由。だが結希はすぐ自殺する度胸もない。そういうのを甘えという。」

『あ・・』「そうですわ。結希さんはダダをこねてるだけ。」【だからあたしたちは結希を甘やかさないんです。】

「とことん救いようのないヤツね・・いっぺんシメてやろかしら。」「「冒してやろかしら」が正確やろ。」

「まあね。でも・・」きゅっ・・(・・レナをダシにすればヤツは出てくるわね。いっちょやってみようかしら。)

「・・アラクネ、また何か悪いこと考えてるな。」ぎくうっ!「な、なんで?」「目が魔神モードになってるぞ。」

 

ぴくっ。【レナ・・気をつけて。】「どうしたナナ?」【とても邪悪な気配がするの。それは・・レナを狙ってる。】

「・・だいじょうぶ。」ぴっ。「・・この「金貨」のカードがあるかぎり、先生の力が魔を退けてくれる。」

 

マンハッタン。・・ぴく。「・・アラクネ、お元気でやってるようね。でも私の愛弟子に手は出させないわよ・・」

「会長、アミューズメント事業部の中期決算報告書です。」「ありがと。・・ふん、さすがに改竄がうまいけど

私の目はごまかせないわよ・・局長。」「呼び出しますか?」「グループに損害かけてるわけでなし。様子見ね。」

 

♪踊るよおどる 笛の音

♪狂うよ狂う 狂って踊ろ

♪サイコの笛で狂って踊ろ

♪踊れば・・うふ、うふふふふふ・・

♪狂気の笛でおほりくふほ・・あひゃっ、ふきゃははひゃははははっ!

 




天界。「お嬢様、アーレス様がお見えです。」「お通しして。」カツカツ・・「ヴァジュラ、いきなり何の呼び出しだ?」
「ええ・・実は相談したいことが・・」「ねえ、最近ヴォーダンが影でコソコソ動いてるの知ってる?」
「ああ・・十二神衆と頻繁に接触してるという情報は得ている。」「そこなのよ、そこ。実はあたしも誘われたの。」
「誘われた・・どういう用件だ?」「それが・・「楽園奪還」なの。」「なにっ?・・まさか!」「そのまさか。
エデンに侵攻して再び神々による統治を企てようってわけ。」「ヴォーダンめ!そのようなことをデウス様が許す
はずがない!」「許すも許さないもあったもんじゃないわ。ヴォーダンは叛乱を起こす気ね。」「叛乱だと?!
できるわけがない!」「いえ・・そこが問題なのです。」「なんでできないって断言できるの?それに・・
ヴォーダンはタイタンたちも抹殺する気よ。」「タイタンまでも?!」「さてここで問題。・・アーレス、
止められる?」「止めてみせる!」「・・無理ですわ。ヴォーダンは強い。さしもの軍神のあなたでも・・」
「それにもしヴォーダンが暴走したら神都のひとつやふたつ、一瞬のうちに消滅するわ。」「グングニルの威力は
アーレスもよく知ってるよね・・そうなったらまさしくアーマゲドンだよ。」「!!・・アーマゲドン!」
「知ってのとおり、四界は微妙な均衡を保っています・・もし天界で内乱が起きれば・・」「精霊界も魔界も
覇権をずっと狙ってる・・治安維持を名目の軍事介入に喜んで踏み切るでしょうねえ。」「加えて旧神派ゲリラも
動き出すね。アスラ神族はもちろん、アスガルド神族も。もともとヴォーダンはアスガルド神族だったから
なおさら。」「・・そういうヴァジュラもアスラ神族だったな。」「だからわかるのです・・旧神派がどれだけその
無念を溜めてきたのかが。」「うむ・・オリュンポス神族に反感を抱くものも確かに多いだろう。となると、
ヴォーダンの乱は一気に均衡状態を瓦解させるにじゅうぶん・・か。」「さてここからが本題よ。そういう最悪の
事態を回避する手はひとつ。」「・・各神族を代表する十二神衆が同時に動く、ということか。」「そのとおり。
もともと十二神衆は神族間の和解の場の意味合いが濃いよね。ゆえに少数派であるヤマト神族や精霊界の代表も
入ってる。派閥バランスとまでは言わないけど、けっこういい構成ではあるわ。」「そうすれば混乱は最小限で
収拾するか・・あとはタイタンのほうか。」「あの・・いかなヴォーダンといえども、タイタンと四神獣を倒すのは
それほど容易ではないと思いますが・・」「あの連中、非常識に強いからね~。十二神衆でもかなりてこずるわ。」
「まあそっちの心配はあまりしなくていいんじゃない?アーレスの役割は・・もうわかるよね?」「わかった。
そのセンでいこう。」「けど・・ひとつ問題が残ります。あなたの地位は確実に失う・・それでもよいのですか?」
「天界の平和を守るため・・などとカッコつけは言うまい。俺が悪役になって戦乱が起きなければそれでいい。
なに、神都にいられなくなったら放浪もよし・・ヴァジュラとは別れるかもしれんが。」「ふっ・・なにいってんの。
私だって追放は必至。そうなったら頼るあてはあなたしかないんだから。」「・・ありがとう、シャクティ。」
「パールヴァティはともかく、あたしがいれば鬼に金棒!」「ラクシュミー、わたくしはともかくですか・・
これでも戦女神ですもの、「妹たち」には負けませんわ。」「ふっ・・ヴァジュラ「三姉妹」は前向きだな。」
「ひとつ身体で同居してるんだもの。ひとつぶで三度おいしいでしょ?ふふっ。」「スタンダードに熟女にOリと
三つセットでおトクだもんね。」「・・ま、まあな。」「もう・・ラクシュミーもすっかりませちゃって・・」
(注:ヴァジュラ三姉妹は発言ごとに容姿も瞬時に変わってます)

第九夜「狂気の笛」 - 狂魔獣サイコ登場 -

アメリカ・シカゴ。「やーれやれ!やっと着いた。」「「エル・ドラド」は民間機よりゆったりしててよかったわ。」
「宿泊用の個室まであったのはビックリしましたね。」「快適だったね・・」「まさに空飛ぶホテルでしたな。」
「まずは状況を説明しよう。ベル。」「最新情報によれば、このシカゴで奇妙な発狂事件が多発してるの。」
「発狂事件?」「精神病歴のまったく無かった人がある日突然に発狂。乱射事件や通り魔連続殺人事件なんかを
引き起こしてるの。」「そういった事件はこのシカゴじゃありふれてるんじゃない?治安よくなさそうだし。」
「最初はそう。けど、毎日数件も発生してるとなると、これは異常よ。」「発狂か・・何か共通点は?」
「シカゴ警察の調査で発狂前の動向は確認されてるわ。そして重大な共通点が見つかった・・みんなここを訪れた
直後に発狂してるの。」トン。「ウォーター・タワー?あの骨董品か?」「そう。19世紀に造られた水道塔。今は
観光名所・・けど高層ビル建ち並ぶ今に、この塔に登るのは観光客くらい。発狂者はその観光客から出てるの。」
『ほう・・』「ならその塔に行けば何かわかるっちゅーことやな。」「だめ・・」『えっ?』「塔に登ってはだめ・・
狂気の笛でみんな狂うから・・」「笛・・発狂音波でしょうか。」「そうかもね。けど登ってみないことには話が
始まらないのも事実。・・わたしが行こうか。」「アラクネ?」「わたしはそういった精神音波にはある程度耐性が
あるから。」「俺も行こう。狂気を呼ぶ音波・・魔獣がらみにちがいないな。」「サイコは強い・・気をつけて。」
「いまひとつ。今回は第七部隊を呼んである。これから昼メシ兼の合流場所へ行こう。」「獣人部隊でしたね・・」

マグニフィシェント・マイル、「バーガーキングダム」。「ここはハンバーガー専門店だ。さて何にする?」
「ハンバーガーってこんなに種類があったんですね・・」「う~ん・・よくわからん。ここはフェイにまかせる。」
「まかしとき。カモン。」ペラペラ・・「これでええやろ。」「フェイって英語は流暢なのね。」「エデンの文化に
興味があって、いろいろ読み込んどったからな。」「とはいえ主にファッション・グルメにレジャーでしたな。」
「ええやんか。うちも女の子や。」「まあおかげでこうやってエデンで路頭に迷わずにすんでるんですから。」
「お待たせ。」ドン!『ななっ?!』「な・・なによこの十階建ては!」「ここの名物「シアーズ・タワー」や。
どや、すごいやろ。」「うわ~・・高さ50cmはありますね・・(^^;;」「これを一口で食べろというのですか?」
「いきなりこれかい。ベル、食えるか?」「う~ん、時間かければ・・あ?」「・・いただきます。」ぱく。『おおっ!』
「エリスが?!」「一口やて?!」「ねえいま何があったの?」「誰も見てませんでしたな。」「・・おいしいよ。」
「よし、俺もだ。」バクッ!もぐもぐ・・「うん、いけるぞ。」「そう?じゃあ・・あ~ん。」ぱくっ。「お、いける。」
「僕は上からいきますね、さすがに・・」「わたくしめもマナー良くいただきましょう。ナイフとフォークを。」

「凛、半分食ってくれ。」ぽい。バクッ!『・・えっ?』「フォーレスさん、これ多すぎるからみんなでどうぞ。」
「ああ、これはすみませんね。ガリア、朋、陽。差し入れですよ。」「こらおおきに、ベルはん。」『お?』
「陽、ベルさんにちゃんとお礼を言うのです。」「ありがとうございます。」「いえいえ。陽くんはカワイイもの。」
「えーと・・ナンバー6、そのお隣さんたちは?」「紹介しよう。第七部隊の面々だ。」『ええっ?!まさか!』
「だってどう見ても観光客ご一行さまよ?!」「第六のときもゆったでしょ。見た目はまったく普通だって。」

「まず巨大バーガー食ってるのが隊長の凛。」バクバク!「うわ~、きたない食べ方・・」「隊長って・・
どうみても12歳くらいの女の子だぞ。」「説明しよう。凛はオオカミ憑きで秘密部隊一のスピードを誇る。
そしてオオカミの統率力も持ち、それで隊長なのさ。」「でも人間世界に出てきて間もないので、マナーとかは
まだ修行中なの。」ぽん。ガブッ!「あいたたた!」「こらこら凛、噛んじゃいけないでしょ。」さわさわ。
「クルルル・・」ぱかっ。「喉の下をなでて安心させる・・まさにオオカミですね。」「いった~・・歯型ついたわ。」
「ベルさんにも凛には不用意に手を出さないよう注意はしてたはずですが。」「すっかり忘れてたわよ。」
「凛、ごあいさつは?」「・・」ぺこっ。「社交辞令はまだ苦手ですので。でも気が高まると流暢なんです。」
「こっちがフォーレス・神代。部隊一の年長者だ。」「はじめまして、みなさん。」「優しそうな方ですね。」
「あまい。彼はグリズリー憑きなのよ。」「グリズリーって・・ロッキーの獰猛な熊やんか!この兄ちゃんが・・
ちょっとイメージわかんな~。」「よくそう言われますね。」「まあ戦闘時を楽しみにしてな、すげえから。」

「そしてこっちがガリア。クモ憑きよ。」「クモ?!ちょっとあんた!」ガタッ!「へ、へい!」つかつか。
「・・あんたいくつ?」「スプーン二杯でやんすが。」すぱーん!「だれがコーヒーにいれる砂糖を聞いとるか!」
「年でやんすか?いちおう25で通ってやすが。」「25か・・ならわたしがセンパイね。」「はい?」「わたしは!・・
おっとっと。ちょっと耳貸して。」「へ?」こしょこしょ・・「・・なあっ!これはおみそれしましたでやんす!」
「はっはっはっ、苦しゅうない。」「おいおいアラクネ、何の話だ?」「乙女の秘密よ♪」「ならば年の話ですな。」
「ちゅーこた、やっぱ?」「つまりアラクネのほうがガリアさんよりず~っと!年上だということですね。」
「リヴィ!そこんとこ強調するんじゃないの!」「・・じっさい、いくつなの?」「それがさ・・」こしょこしょ。
「・・ええっ!それじゃ・・アラクネさん。」「な、なに?エリス。」「・・ティラノザウルスおいしかったですか?」
どんがらがっしゃーん!「あいたた・・なんじゃそれは!」「だって・・ランチに食べてたって・・」ぷち。
「あ、おトイレいってきます。」そそくさ。「逃げるなリヴィ!捕縛糸!」シャッ!ギュイッ!「あっ!」
「コイツは~・・ひさびさに可愛がってやろうかしら?」「やめとき。あんたハメたら死ぬまで放さんきに。」
「そうだな。普通の人間なら一晩でミイラだ。」「お盛んでやんすね。」「サキュバスじゃないわよ!」『ウソつけ。』

「最後に天乃目姉弟、朋と陽だ。」「はじめましてです。」「・・こんにちは。」ぺこっ。「あら可愛いボウヤ~!
おねえちゃんも丸メガネがとってもラブリーね。やっぱメガネとったら美少女なの?」「そうかどうかは自分では
よくわからないです。」ちゃっ、すっ・・「・・目をつぶってる?」「昼間はまぶしくて目を開けられないです。」
「説明しよう。朋はフクロウ憑きだ。」『ああ・・』「この店ちょっと薄暗いから、だいじょうぶではないですか?」
「フォーレスさまがそういうなら。」ぐ・・ぱちっ。『おおっ!』「お・・大きい目!」「顔半分目ぇやんか!」
「でも意外と不気味さは少ないな。」「これはいわゆる少女マンガ目というやつですな。」「これがアニメだったら
ぜんぜん違和感ありませんでしたね。」「?・・これって・・特撮?」「まあいちおう巨大ヒーローものだからな。」
「やっぱりちょっとまぶしいのでかけますです。」ちゃっ。「ふう・・暗くて落ち着くです。」「・・タイヘンだね。」

「そして陽くん。彼はまだ未熟だけど、あえて第七部隊にいてもらってるの。」「未熟ってどういうことや?」
「・・ドラゴン憑きなの。」『なにいっ!』「まさかこの子が?!・・一郎さん。」「ああ・・精霊界、いや四界で
最高クラスの大霊獣。問題は格だな・・イエティ。」「はっ。」じーっ・・「・・わかりました。陽どのに憑いてる
ドラゴンはヴリトラ級かと。」『なあっ!』「ドラゴンでも二番目に霊格の高い種じゃないですか!」「あの~、
その霊格とか種とか、よくわからないんだけど。」「説明しよう。ひとくちにドラゴンといってもその種類は
数百もある。大きく分けると10くらいか。」「ヴリトラはその中でも第二位の霊格に属するわ。ちなみに第一位は
東洋で龍と呼ばれるもの。気象や地脈まで自在に操る最も神に近いドラゴン。」「第二位はさすがにそこまでの力は
あらへんけど、ある程度のことはできる実力を持っとる。特に気象操作や落雷はお手のもんや。」「たしかに陽は
自在とはいかないでまでも気象や雷を使えますです。」「そして陽くんはその力をまだ使いこなせていません。
だから私たちがついていないと大災害を引き起こす可能性があるのです。」「・・ボクはそうしたくないのに、
ときどきボクの中のドラゴンが・・」すっ、ぎゅっ。「・・凛おねえちゃん。」「・・心配しなくていいよ。陽には
みんながついてるから。」『おお・・』「なんと凛々しい声だ・・」「あれ?・・どこかで聞いたわね、この声・・?」
「う~ん・・どこでしたっけ?たしかに聞き覚えが。」「えと・・思い出せんな~。」「ほほう・・なるほど。」
「こらイエティ、わかったんなら教えなさいよ。」「確証がございませんので、またいずれ。」「これだもの・・」
「さて、紹介が終わったところで現場へ行くか。ここからほんの数分だ。」「まだバーガー食べきってないわよ。」

で、ウォーター・タワー。オォォ・・『うわ・・』「こりゃすごい魔気だな・・」「よくこんな妖気あふれる建物が
摩天楼街にあるものね。」「いえ、高層建築物は意外と妖気が集まりやすいんです。人の情念が渦巻く巨大な墓標・・
そう見えません?」「たしかに・・墓地より気が濁っとるしな。」「霊感の強い方なら近寄れないでしょうな。」
「・・ここはだめ。もう先に進みたくない・・」「やはり俺とアラクネが・・ん?」♪ヒュイヒュィヒュィ!
キキィィィーッ!「パトカーがいっぱい?」バタバタン!ドカドカッ!「おや?警官隊の突入は予定になかったぞ。
ちょいと聞いてくら。」つかつか。「おい、どういうこった?」「あ、これは!」サッ。「この塔に連続発狂事件の
犯人がいるとの通報がありましたので。」「どこのどいつだ?ともかく、みんな退避させろ。」「しかし犯人逮捕の
好機を!」「お前らの手に負えるホシならそう手配してる。とっとと」『ウキャキャキャキャ!』「なんだ?!」
「ち、遅かったか。」・・ゾロゾロ。「ウケケケケ!」チャッ。「あぶねえぞ。」ぐいっ、べしっ!「うわっ!」
ドキュンドキュン!チュンチュン!「ほらいわんこっちゃない。警官隊みんな発狂したぞ。」「そんな・・!」
ズガガガガガッ!「基地外に鉄砲てやつだな。」「お~い。ナンバー6、手伝いましょうか~?」「たのもうか。」
「アラクネ、まずは拘束しよう。」「・・私がやる。」すっ。「エリスちゃん?」キィィィ・・「・・パラライズ。」
『ガウッ!・・』ばたばたばた・・「・・今のは?」「精神電波で麻痺させたの・・半日は起きられないよ。」
「そういう力もあったのか。」ふら・・「あっ!」がしっ。「ふう・・疲れた・・」「リヴィ、介抱したり。」「はい。」
「おい、いつまで寝てる。終わったぜ。」「・・え?え?」「さっさと無事な警官でみんな引き上げさせろ。」

「やれやれ、とんだ余興が入ったもんだ。」「しかしこれでこの塔が元凶だということがはっきりしたな。」
「まあな。・・しかし、いったい誰が余計なタレコミなんかしやがったんだ?」『はーい。それは私でーす!』
『なにっ?!』サァァァ・・「いきなり暗くなったでやんす!」「あ、ちょうどいいです。」「これは・・結界?」
『これでジャマは入らないわね。』はっ!「だれだ!」「ビルの上です!」「あれは・・魔女?」バサササ・・
「うふふふっ。ハーイみなさん、はじめまして。」ぴっ。「魔女にしてはやけに軽そうな方ですな。」「よく見りゃ
マントと帽子の下は高級ブランドものの服着とるしな。」「でもこの結界を張れる方なら、油断はできませんね。」
「そこのミニスカ魔女、あんた誰よ!」「魔獣教団・魔将ギネビア。以後よろしくね♪」『魔獣教団!』ザザッ!
「さっそくサイコの巣を攻撃しようとしてるみたいだけど、その前にあたしと遊ばない?」「そんなヒマはない!」
「あら、いい男なのにオンナを袖にしちゃいけないわね。ま、邪険なほどしびれるってこともあるか。とにかく、
あたしを倒すなりなんなりして、この魔空間から脱出しないと話は始まらないと思うけど?」「これだけの人数を
相手に一人で戦おうというのはみあげた根性です。」「一人じゃないわ。ちゃんと兵隊はいるわよ。」ひょい。
「・・牙?」「いきなさい、兵隊たち。」ぽい。カラカラ・・ゴバアッ!カタカタ。『骸骨兵士?!』「なんて数なの!」
「いかが?ヒドラの牙から生まれしトーテンコープフ。ちょっと強いわよ。さて次は中ボスね。」♪ピイッ!
シャシャッ!ザシャアッ!ゴルルル!「これはキマイラ!」ドーン!ムォォォ!「ゴーレムも!」「あたしの
得意な分野はモンスター使役なの。納得いった?」『納得いくか!』「あ、やっぱり?それじゃがんばってね♪。」

ガシャガシャ!ゴルルル!ムォォォ!「この程度のモンスターなら!」「ちょっと待った。」「ナンバー6?」
「いったろ。こういうために秘密部隊がいるって。凛、たのむぜ。」「・・」こく。くるっ。「みんな、いくよ!」
ビリッ!『うっ!』「な・・なに今の声は?全身にビリッときたわ。」「これは・・闘志か!」「いまの声で?!」
「隊長のご命令とあらば。」「凛ちゃんの声はいつ聞いても勇気がわくでやんす!」「凛ちゃんがいれば、私たちは
不敗です!」「・・僕もできるかぎり、いや、それ以上の力でがんばる!」「フォーレスさんとガリアさんは
ゴーレム、朋さんと陽くんはドクロ兵士を。わたしはキマイラを討つ!総員攻撃開始!」『おおっ!』ダッ!

「ナンバー6、いまのは?」「凛の声は聞く者の闘志を高める力がある。それが「ソウルヴォイス」だ。」
「まるで戦女神パールヴァティのバトルソングですね。」「しかしあの声で日常やられたら相手は疲れますな。」
「それでメッタにしゃべらへんわけか。」「人呼んで「ウルフコマンダー」の凛ともいうのよ。」『なにっ!』
「狼将軍・・おもいだした!あの声、まさしく狼将フェンリルよ!」「そうだ!アスガルド神軍随一の猛将の!」
「敵味方問わんで全ての者に尊敬され慕われた「北の狼」や!」「そのカリスマゆえにヴォーダンに恐れられ、
謎の死を遂げたんでしたね。」「証拠はありませんが、暗殺のウワサもかびますしかったですな。」「そうや・・
そういう事情もあって、悲劇の名将として今なおファンは多いで。」「ああ・・生きてるうちに戦場で会えたことは
幸運だった。ということは・・」「凛ちゃんはフェンリルの転生?」「可能性は高いです。すなわち神天星。」

ゴルルル!「いくぞキマイラ!」チャッ、ガブッ。カシーン!「くわえた棒の両端から刃が?」「あれが凛の牙、
ツインダーク「愛牙」さ。」シャシャシャッ!「疾いぞ!」ビュッ!・・ズ・・ズルルッ、ブシャァァッ!
「す、すごい!一閃で三匹のキマイラを真っ二つに!」ゴルルルッ!グワッ!「後ろからもう一匹が!あぶない!」
フッ・・『消えた!』・・ザザッ。ピリ・・ブシャアアアアーッ!「見えなかった・・俺の目でも凛の動きが!」
「軽く超音速は出てますな。」「あのスピードじゃ弾丸とて捕捉できませんね・・」「なんて娘なのよ・・」

「さて、土人形相手とはいささか忸怩たるものがありますが。」ムオオオ!ゴオッ!「私はハエじゃありません。」
すっ、ボゴワッ!『なっ?!』「フォーレスさんが軽く手で受けただけでゴーレムの腕が粉砕された?!」
「そら。」ぽん。ボゴオオオーン!ガラガラガラッ!「掌で軽く打っただけで?!」「か・・影を見てみい!」
ゴゴゴゴ・・「フォーレスの影が・・巨大な熊に!」「あれぞフォーレスの本質、グリズリーシャドウ。見た目は
ヤサ男だが、秘めた力は数千トンに達する。」「まだまだおられますね。童心にかえって土いじりといきますか。」

「あっしはヒーロー。だからどんなでかい敵も恐れはしないでやんす!」ゴワッ!「よっと!」ダダーン!
「からめ糸でやんす。」シュバババッ!キリキリッ、グラッ・・ドドオオーン!ガラガラガラ!「やるわね~。
足をからめて転倒させるとは。」「あれでは自重で勝手に砕けてくれますな。」「お次はこうでやんす。」シャッ!
カサカサカサ。「ゴーレムに駆け上がった?」「つなぎ糸でやんす。」ビュッ、ぺたっ。「そっちもどうぞでやんす。」
ピューッ!ぺたっ。「二体のゴーレムを糸でつないだ?」ターン、すとっ。「必殺、クラッカー殺法でやんす!」
グイッ!ピーン!ヨロヨロッ、ゴシャアアアーン!「糸を引いて、かち合わせで同時に二体をやったで!」
「そうか・・糸を力学的に編んで、軽い力で巨体二つを動かしたのね。」「見かけより意外と強いな・・」
「弔いの音でやんす。」♪ピィィーン・・ビチッ!キュィィッ!「あっしのあやとり糸はまだまだあるでやんす。」

カラコロカラコロ。「ガイコツさん、何のうらみもありませんですけど、倒させていただきますです。」カチャ・・
「朋ちゃんがメガネをとった?」「ホーリィ・ライトです。」カッ!サァァァーッ!ガラガラガラッ!『おおっ!』
「目から発した光でガイコツが崩れた?」「浄化の光だ。あらゆる魔を浄化する力がある。ま、基本技さ。」
ガシャガシャ!「あら、まだこんなにいますです。やはり浄化光だけではおいつかないです。」すうっ・・カッ!
「マーカライト・ファープです。」ピィィィーッ!ズババババッ!『目からレーザーが!』「というよりメーサーか。
なんせ目から出てるしな。」「そのココロは目ぇさあ・・なんてオヤジギャグかますつもりなら、電気アンマよ。」
ぎくうっ!「そ、そんな寒いギャグとばすはずないだろ。(図星)」「あ、やっぱ考えてたのねこの宿六は。」

ガチャガチャ!「・・ボクの中のドラゴンよ、力を貸して。」ズズズズ・・「いける!走れ、グランドドラゴン!」
バン!ドガガガガーッ!「地についた陽くんの手から地走りが!」ズドドドオオーン!・・カラカラカラン!
「髑髏兵士が足元の大爆発で粉々に!」「吼えろ、サンダードラゴン!」ゴロゴロ・・ピシャアアアーン!
ズバババババッ!ドガガガガーン!『うわわわっ!』「集中落雷や!」「さすがヴリトラの力でございます。」
バリバリバリッ!「・・こっちにカミナリが来るよ。」『え?』「あ、いけね。陽がまた制御しくじったな。」
『ちょっと待て~!』ズガガガガッ!『うわわわわっ!』ダダダダッ!「ちょっと朋ちゃん!陽くん止めて~!」
「すみませんです。私もいま忙しいのです。」「ど、どうする?!」「どうするったって、このままじゃ黒コゲよ!」
「アラクネのキスで・・だめだめ!陽くんには刺激が強すぎます!」「ぶっとばすわけにもいかんやろしな~!」
ひゅっ、ぎゅっ。「?・・凛おねえちゃん。」「鎮まれ・・ドラゴン。陽くんが困ってるじゃないか。宿主に迷惑
かけちゃダメだよ。」ズババババ!・・シーン・・「あ・・止まった。」「だいじょうぶ?陽くん。」「あ・・はい。
ありがとうございました。」「ほう。ドラゴンパワーの暴走をあっさり止めるとは。」「四界広しといえども、
高位ドラゴンを止められる者はそんなにいないぞ・・」「やはり凛ちゃんは・・フェンリルの神天星かもね。」

「あらら~、あたしのモンスター軍団がまああっさりと・・ん?」「そこから降りてきてください。」ぽん。
ドゴオオオーン!ガラガラガラッ!「フォーレスの一撃で高層ビルが!」ドシャアアアーン!「これでは建物の
下敷きですかね。」『あービックリした。死ぬかと思ったわ。』「む?」ふわふわ。「浮遊・・レビテーションの
魔法です。」スゥゥゥ・・すとっ。「さすが魔女ですね。」「美形のおにいさんも見た目に似合わずすごい力を
お持ちのようね。いっちょやる?」すっ。「格闘戦をいどむ魔女ですか・・珍しいですね。」「今どきの魔女は
魔法だけじゃ生きていけないの。基礎体力もつけとかないと応用がきかなくて。」「おいおい、フォーレスと
サシでやる気らしいぞ。」「普通なら圧倒的なパワー差で一瞬で終わりね。」「さて、それはいかがでしょうか。」
「では遠慮なく。」すっ。「ワキがあまいわよ。」ひゅっ。「なに?」カッ!ドゴオオオオーン!『ああっ!』
「フォーレスが?!」ズダダダーン!「いかが?魔導神拳・基本技、象でも吹き飛ばすヘルライザー。」
『魔導神拳?!』「もしやそれは!」「イエティ、知っているのか。」「はい。黒魔術と格闘技を融合させた
魔界伝統の拳法でございます。」「魔界の拳法?!」「あのアルカディア様もその免許皆伝と聞きおよびます。」
「ああ・・思い出した。去年の神前武闘大会であいつは決勝までいったんだったな。」「そして決勝でミカヅチと
激闘を演じ、デウス様が勝負あずかりとして止めなかったら、どちらか・・いえ、相打ちになるとこだったわ。」

「・・ふう。意外と速いし強いですね。」むくっ。「言わなかった?武闘派の魔女がいたっていいじゃない。」
「言ってません。ではこちらも」すっ。「・・凛?」「まかせて。」「へえ・・いいでしょう。来なさい、お嬢ちゃん。」
「フォーレスさん、これを。」すっ。「「愛牙」ですか?」「あら、武器ハンデくらいかまわないわよ。こっちは
魔法使うんだし。」「いえ。たとえ魔法使いでも素手の方相手に武器を使うのは自分が許しません。」・・にこっ。
「やめた。」「・・?」「ひさびさに気持ち良いセリフを聞いて、戦意喪失したわ。サイコをもし倒せるなら、
がんばってね♪ ザッド!」サァァァ・・「結界が・・消えた?」「魔女っ子も消えるで!」スゥゥゥ・・『それじゃ
また会いましょう。次は戦いじゃなく、お茶でもしながらゆっくりお話でもしたいわね。』「それなら大歓迎です。」
『うふふふっ、ますます気に入ったわ。じゃあね・・』「・・消えた。」「魔将ギネビア・・不思議な方ですね。」
「倒壊したビルも元どおりか。」「魔空間はどうやら完全に異なる空間だったようですね。」「すごい魔力ね・・
まさか彼女も?」「可能性は十分ですな。気の質からいってもほぼ。」「魔天星・・いや、魔族そのものやな。」
(あんた、あのギネビアって・・)(ああ・・まちがいない。こんな場面で出てくるとはな。)(・・よかった。)

「少し手間は食ったが、いよいよ狂気の塔へ乗り込むか。」「あ、その前に一郎さん。耳貸して。」「こうか?」
ふっ。キラキラ・・「フィルターウェブ。これを耳に張っておけば異常な音波は通らないはず。耳ほじらないでよ。」
「アラクネは?」「もう張ってるわ。じゃ、行ってくるわ。」「お気をつけて。」「ここで待機してますから。」
「塔は今は無人にしてる。いざとなったら壊してもいいぜ。」「ちなみに周辺1kmは総員避難させておくから。」
「総員避難てどうやるんや?」・・♪ウウウウウ~ッ!『強力な爆弾が仕掛られたとの通報がありました!
爆弾処理班が解体作業を始めますので、付近の皆さんは誘導員に従って速やかに退避してください!』
ワアワア!「と、いうわけさ。」「さすがですね、ナンバー6。」「あいかわらずお見事な手並みでやんす。」

「・・」「凛、どうしたのです?」「・・顔色悪いよ。」「・・ここはあぶない。」『えっ?』はっ!「みなさん
かたまってください!防御結界を張ります!」「リヴィ、どうしたんや?」「もしサイコが現れたら狂気音波で
みんなも!」『ああっ!』「ここはリヴィに従うのがいいな。」「みんなリヴィの周りに集まって。」ドヤドヤ。
「いきますよ。アクア・シールド!」キュン!『これで狂気音波の直撃を受けてもだいじょうぶです。』
『屁こくなよガリア。』『それはないでやんす総司・・ぐむっ!』『え?』『ムグムグ!』『なんでもありませんよ。』

カチャ。キキィィィ・・「うわ~、すごい妖気・・」「いかにも何かいますだな。」カンカン・・「そんなに大きな
塔じゃないから、すぐに上までいっちゃうわね。」「ああ・・ん?」ピィィィィ・・「・・笛の音?」「どこから?」
ピィィィィ!『うわっ!』「これは・・予想よりもはるかに・・」「フィルターウェブでも・・防ぎきれない!」
「音源は・・どこだ!」ピイイイ!「・・塔の中心から聞こえてくる!」「・・そうか!この塔の中心の空洞が
鳴動して笛のような音に!つまりは・・」「この塔自体が・・巨大な狂気の笛!ううっ!」ガクッ。「アラクネ!」
「・・一郎さん・・おねがい!」「・・わかった。むん!」ドンッ!「ぐっ!・・」くた・・「これでいい・・
気絶させれば狂気に陥らないが・・早く出なければ俺も・・!」ピイイイイ!「くうっ!・・いかん、意識が
遠ざかる・・だめだ!これ以上は・・」ピキッ!「封印の腕輪が?・・この手しかない!変神!」ピキーン!

カッ!『あっ!』ドカアアアアーン!「塔の中から巨人が!」「あれが・・タイタン!」『とおっ!』・・ズズーン!
『アラクネをたのむ。』「わかりました!」くるっ。『・・来るぞ!』・・ドバアアアアーン!リリリリーン!
「あれが・・魔獣サイコ!」『昆虫型だと?』ズーン!バサァッ。「羽を広げた?」ビリリリ・・リリリーン!
『うわあっ!』『そうか!あの音源はサイコが羽を震わせて出していたのか!』「スズムシの・・バケモノや!」
「このシールドでも・・防ぐのがやっとです!」『俺のカブトは完全に防御してくれている。効かないぞ!』
シャリン!『羽を切り裂く!イージス・ブウゥゥーメランッ!』シュバッ!「これで勝ちます!・・えっ?!」
ビリリリリ!「これは?!・・周波数が上がっていますです!」「朋さん?」「気をつけて!音波が破壊領域に!」
ギィィィーン!バシィィーン!『イージスが跳ね返された?!・・うわっ!』ドンッ!『音圧波かあっ!』
ドガアアアーン!「タイタンが吹き飛ばされたでやんす!」『くっ!・・ぐわっ!』ギィィィーン!ボンボンボン!
「コンクリートが粉砕されていくよ!」「共鳴破壊です!固有振動数で揺さぶられればどんな物質でも!」
『ぐわああああーっ!』「これはいけません!わたくしめが」「ダメよイエティ・・出たとたんに発狂するわ。」
「アラクネ?あんた大丈夫か!」「なんとか・・状況はきわめて深刻ね。」「・・私がなんとかしますです!』きっ!
『朋ちゃん?!』「音の領域なら私の出番です。」はっ!「まさかあれを?!」「お姉ちゃん、危険すぎるよ!」
「出たとたんに発狂って言ったでしょ!」「皆さんより少しは長く耐えられますです。その間に仕掛けますです!」
「・・ならボクがやる。」「陽?」「お姉ちゃんはボクが守る!」ズズズズ・・「・・この気は!」「ヴリトラの気!」
「吼えろイカズチ!サンダードラゴン!」ピシャアアアーン!ガラガラガラ!『うわっ!』「すごい雷鳴!」
「そうか!・・いまです!雷鳴の間は狂気音波は干渉されます!」「ではいきますです!」ズボッ!すたっ。
「波形解析・・算出よし、位相反転よしです!Aサイクル・ヴォイス!」キィィィーン!『これは?!』
「サイコの狂気音波が・・消える?!」「狂気音波と正反対の波形を持つ音波で干渉したんです!いまです!」
「まかせて!」シャッ!『凛?!』「愛牙!」シャキーン!ビュオオオーッ!『なんてスピードだ!』タン!
スパァァーン!「ものすごいジャンプ力よ!」ズバアアアーッ!リリリィッ!「やった!サイコの羽を裂いた!」
クルクルッ、ザシャアッ!くるっ。『タイタン、いまだ!』はっ!『その声は・・フェンリル!』『急げ!すぐに
羽は再生するぞ!』『わかった!ガントレット!』ジャキン!ダッ!『光あれ!』ギーン!『ひーっさつっ!』
ドン!『プロメテウウウースッ!』ズドオオオーン!「いったああああーっ!」『ぶぁぁーく砕っ!』カッ!
ズガガガガーン!・・パラバラバラ!『さすがだ、タイタン。』『フェンリル・・』『俺は死んだが魂はこの少女に
宿っている。忘れるな、いつも俺はお前を見守っているぞ・・』『待て!フェンリル!』「・・もう戻りました。」

その夜、レストラン。「・・凛ちゃんがフェンリルの転生だったなんて。」「あいつと数星霜にわたって渡り合った
ものだ・・その間に強敵から好敵手、そして親友になったが。」「強かったですよね・・昨日のことのようです。」
「いままで会った中で一番の強敵やったが、同時に最高に尊敬できるお方やった・・生きていれば四界の歴史は
あきらかに変わっとったほどの。」「ならばこそヴォーダンをはじめとする上官に疎まれ、謀殺されたのですな。」
「・・出る杭は打たれる。神さまも同じなのね・・」「それがキッカケで俺は宮仕えを辞し、自由神となった。」
「神の国もタイヘンですね。」「凛ちゃんにはやはりヒーローの魂があったんでやんすね~。」「でも凛ちゃん自身は
どう思ってるのです?」「・・」もぐもぐ。「・・凛おねえちゃんは大事なとき以外は絶対にしゃべらないから。」
「だが沈黙はじゅうぶんに回答になってるな。凛はその魂をとても大切にしてる。それは言葉では表現できない。」
・・こく。「そうか・・アラクネ。」「わかってる。凛ちゃん、ここはわたしたちのオゴリよ。好きなだけ食べて。」
『ああ~っ!』「アラクネさん、それはまずいです!」「そんなこと言ったら!」「・・もう遅いようですよ。」
「お呼びですか?」こく。「・・・・」「・・ええっ?!ここから・・ここまでですか?!」うんっ、うんっ。
「ゲゲッ!・・凛ちゃん、そんなに食べるの?!」うんっ。「だから言ったんでやんす・・凛ちゃんは手綱放すと
底無しなんでやんす。」「・・ちょっと失礼~♪」「アラクネ、どこへ?」(シカゴ在住の信者に電話かけに!)
(・・ああ。)「やっぱお金足りないんですね。」「まあアラクネなら世界じゅうに信者おるから何とでもなるやろ。」

そのまた夜、ホテル。「・・・・」ちゅるっ・・「・・ふう。」「・・いつもごめんなさい。」「それはかまわないって
いつも言ってるでしょ。それにこれをしてくれるとよく眠れるし。」「・・あのね、リヴィ。」「ん?」「私は・・」
「それ以上は言わないで。聞いたところで何が変わるわけでもないし。」「でも・・」「そう、何も変わらない・・
ボクがエリスを好きだということは。」「!・・」きゅっ。「・・もう一回。今度は吸わないから・・」「ん・・」

「あんた・・どうするの?」「なるようになるさ。ベルは?」「蒼ざめた馬に蹴られたくないわよ。」「だろうな。」

『凛・・これからタイタンにはさらに苛酷な戦いが待っている。守ってくれ、この星の明日のために。』
『守ります、あなたと共に。この身一つでこの世界が救えるなら。』『それでこそ俺が見込んだ凛だ。さて今夜は
新たな力を伝授しよう。これを極めれば魔獣どころか神々とさえも互角にわたりあえる。』『お願いします!』

『ヴォーダン・・きさま!』『お前がいてはのちのちやりにくくなる・・英雄は死して名を残せ。』『・・忘れるな。
きさまが暴挙に出ようとするとき、俺は必ず帰ってくる。いつも見ているぞ!』『世迷言は冥界で言うがよい!
グングニル!』ドンッ!『忘れるなヴォーダン!俺は必ず帰ってくる!・・』「帰ってきたぞ!」「うおおおーっ!」
ガバッ!「はあっ!はあっ!・・またあの夢か。・・フェンリル、キサマは死してもなお俺を悩ませるか・・」

「ふふふっ・・夢見はあいかわらず良くないようね、ヴォーダン・・でもね、夢はいずれ現実となるのよ・・
ナイトメア、あなたの協力、感謝するわ。」「もったいないお言葉です、綺羅さま。魔王サタンもお喜びでしょう。」
「また忘れたころに見せてあげなさい。大儀であった。あとで褒美をとらす。」「ははっ。失礼いたします。」フッ・・
「そう・・デウスもヴォーダンも苦しむがいいわ。権力に凝り固まった天界に嵐を起こしてやりましょう・・
そして「楽園奪回」計画は「神々の黄昏」の陥穽ということを知ってるのは私とサタンだけ・・うふふふふふっ。」

♪月が出ている 真っ赤な月が 血に染まったような紅の月が
♪こんな夜は血がほしい 白い喉からほとばしる
♪ノスフェラトゥが夜を染める 夜の闇には血がにあう
♪「紅い月」と紅い血は 夜明けとともに消えてゆく・・
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