巨神伝説タイタン   作:風雲再起

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精霊界「嵐の海」。絶えず暴風が吹き荒れ、30mを越える巨大波がうねる。そういった環境ゆえ、棲息する幻獣
たちも数百m単位の巨獣ばかりというまさに荒ぶる海である。もちろんここに近づく者はほとんどいない・・
ビュオオオーッ!ザパーン!「ふむ・・今日も風と波が心地よいわい。荒れれば荒れるほどワシの心は安らぐ。
平穏はワシには苦痛以外の何物でもない。それでこの「嵐の海」に居をかまえたのじゃ・・のう、綺羅どの。」
「お気持ちはよくわかりますわ。私もこの海は大好き・・けど波ひとつ立たない「忘却の海」もね。」ぴく。
「・・リヴィのことか。」「ご存知のとおり・・」「いきさつは知っておる。海は天界にもあるからの。それに・・
ヴォーダンのこともな。」「ならば話は早いですね。・・いかがされます?ボスタング。」「ふふふ・・平穏を好まぬ
ワシには魅力的な提案ではある。デウスに一泡ふかすも面白かろう。・・エデンには愛弟子もおるしの。」
「承知してくださって感謝いたしますわ。」「・・のう綺羅どの。それだけではあるまい?」「なんのことです?」
「ふふ・・まあいい。綺羅どのの腹黒さは魔王サタンも顔負けじゃったしの。」「ご教授いただいたのはたしか
大海神ボスタングという方だと記憶してますけど?」「うわはははは!ちがいない。」「さて、そろそろおいとま
いたしますわ。」すっ。「うむ。玄関まで送ろう。」すっ。カツカツ・・ギギィィィ・・ビュオオオオーッ!
大海神ボスタングの宮殿は「嵐の海」の真っ只中にあり、玄関を開けば目の前は荒れ狂う大海である。
「クラーケンに気をつけなされ。」「それはクラーケンに言ってあげてくださいね。では・・」ぱっ・・ザポン。
ゴポゴポ・・綺羅は海中をまるで宙を飛ぶように進む。普通なら竜車などの乗り物で行幸におよぶが、この海を
渡れるものが存在しないため、徒歩で来たのである。(・・あら、500m級のクラーケンですわ。)ゴオオオ!
(いくらお腹が空いているからといって、私を食べようというのは不敬ですわよ・・)ゴゴゴゴ・・ビクウッ!
(これで退けば命だけは・・あら?)・・グワアッ!(空腹が恐怖に勝りましたのね・・よろしい。)ギン!
ドドオオオオーン!「ぬうっ?!・・綺羅め、余裕で逃げられただろうに遊びおって。宮殿潜航!」ヴン!
ザザザザザ!・・「・・そろそろ来るな。」グラッ。ドドドドド!「1万メガトン級か・・節度は知っておるな。」

第十夜「紅い月」 - 吸血魔獣ノスフェラトウ登場 -

ルーマニア。『せーの。コマネチ!』すぱすぱぁぁーん!「このアホンダラーズどもが!」「・・信じられない。
リヴィがあんな使い古されたギャグかますなんて・・アラクネさんはともかく。」「まあリヴィ殿もたまには
ストレス発散が必要でしょう。アラクネどのはともかく。」「うんうん。アラクネはともかくな。」『うんうん。』
「ムキー!あんたたち、わたしキライなんでしょ!」『うん。』ドンガラガッシャーン!「あいたたた・・素直すぎ!」
「それはともかく、ベル、現状説明しろや。」「マイク入ってます?・・あ、はい。え~、現在私たちはカルパチア
山麓の小さな町にいます。なんとこの町の住民が一夜のうちに消えてしまったのです!」どーん!(効果音)
「集団神隠しと言えばそれまでだが、この町の人口は2000人。ハメルンの笛吹きでもホネがおれる数だな。」
「で、魔獣の仕業ではないか・・と。エリスさん、いかがでしょうか?」「うん・・みんな昼は眠ってる。でも
日が落ちれば目覚める・・血を求めて。」「すなわち吸血鬼ですね。」「舞台はバッチリやな~。これで山に城が
あって、そこにドラキュラ伯爵がおれば完璧やで。」「たしかに城はあるが、住んでるのは俺の教え子だ。」ぎょっ!
『なっ?!・・雅焔先生!』「ひさしぶりだな、みんな。」「おひさしぶりです、みなさん。」「ヒルダちゃんも。」
「早かったな。」「ちょうど近所で非常勤講師をしていたところだ。」「今回は何人だったの?」「ざっと20人。
口ばっかりで何もできん連中だった。ヒルダのように骨のあるのはなかなかにおらんものだ。」「どうも。」
「だが・・以前にここを訪れたときには一人いた。あいつは手ごわかったぞ。」「先生がてこずる生徒ですか・・」

「雅焔、今回は吸血鬼軍団が相手になりそうだ。」「状況は聞いている。助っ人を呼ぼう。」♪ピッピッピ。
「・・俺だ。ふもとの町にいる。・・見えるか?ではよろしく。」♪ピッ。「すぐに来る。あの城からな。」ぴっ。
オォォォ・・「なんかブキミな城やね。」「この町がやられたのに、あそこはだいじょうぶなの?」「心配いらん。
あの一族は町の者には恐れられていたそうだからな。」『??』「・・きたぜ。」「えっ?・・あっ!」バサササ・・
「コウモリ?」「いや、人間のようだ。」「にしては樹上から樹上へ飛んでくるんですけど・・」バササッ!
スタッ。「先生、おひさしぶりです。」すくっ。「・・女の子?」「紹介しよう。アリシア・シルバームーン。
かつての俺の教え子だ。」「はじめまして。」すっ。「へえ、身のこなしは上流階級のお嬢様ね。」「当たり前だ。
シルバームーン家は東欧でも五指に入る由緒ある大貴族の家系。アリシアは正真正銘のお姫さまだ。」

「はじめまして。ヒルダ・ハスラーです。」ぴく。「・・先生から聞いたことがあるわ。ドイツにてごわくて
骨のあるのがいたって・・」キラッ。「あなたもかなりの方だと・・」キラッ。ゴゴゴゴゴ・・『おいおいおい。』
「な、なんか盛り上がってますけど~。」「ふふん♪これは楽しい状況ね。」「センセもスミにおけんな~。」
「アリシア、ヒルダ。」ぬっ。「あ、止めちゃうの?」「友好をあたためるがいい。思う存分やれ。」『はい!』
どんがらがっしゃ~ん!『あんた止めんのかい!』「こういうのは好きなだけやらせたほうが後くされがない。
互いの呼吸を知れるからあとの戦いにも役立つ。」「はら~、すごい教師ね。」「というより教官ですな。」

ザザッ。ヒュゥゥゥ・・すっ。「三日月刀ですか。・・シルバームーン家のことは聞いたことがあります。」
「どんな話?」「西のボルジア、東のシルバームーン・・ともに暗殺業を旨としたヨーロッパ裏の社交界の立役者。」
「心外ね。ボルジアなんて毒使いの腐れ外道といっしょにしないで。うちは正統派の暗殺者の家柄。華麗に優雅に
ヨーロッパの闇を駆ける、誇り高き夜の貴族よ。それより・・ハスラー家も有名ね。ゲルマン民族最古の家系。
いえ、失われつつある純粋アーリア民族の血を受け継ぐ名家よね・・そして古流「ヴェグダ」を継承している。」
「そちらも18世紀に日本から流れてきた忍者を雇い入れて技術導入。近代になって根来本家とも交流を持ち、
正統な根来分家となった・・それが根来月光流暗殺術。」「よく知ってるわね・・口封じしなくちゃ。」ぺろっ。
ゴゴゴゴ・・「闘気と・・殺気か。」「これ腕試しなんてなまやさしいものじゃないわ・・殺し合いよ。」ごくっ・・
フッ・・『消えた?!』「・・!」ガキイッ!『おおっ!』「止めたヤツは初めてよ。」「間一髪でした。」キラッ・・
「移動した気配を・・まったく感じませんでした!」「常人離れした瞬発力と跳躍力、それに隠形術やな・・
これがニンジャとゆーやつか。」「冗談じゃないわよ・・今のは必殺の一撃。止め損ねてたらヒルダの首は・・」
「雅焔、まだやらせる気か。」「あの程度はじゃれ合ってるに等しい。・・本番はこれからだ。」シャッ!フッ・・
「また隠形・・読めない・・」・・シャシャシャッ!「!」すっ、スカッ!『よけてもダメよ。三日月刀は
どこまでも追っていくわ。』シャシャシャッ!「戻ってきた?!」「まるでブーメランだ!」「よっと!」シャッ!
「だんだん精度が上がってます!」「ホーミング魚雷のようですな。」「次は直撃だな・・ヒルダ、どうする。」
シャシャシャッ!『これでヒットよ!』ふっ。「それはどうですかね?・・はいっ!」パシッ!ピタアッ!
『なっ?!』『おおっ!』「指二本ではさんで止めた!」「これぞヴェグダ奥義「リピッシュ」。」ひょい、カラーン。
「さて、得物はなくなりましたけど?」『・・あまいわ!』・・シャシャシャシャッ!「こんどは四つ?!」
『同時に襲撃よ!回避不能!』「・・やってみるか。はぁぁぁ・・」ユラ・・「なんだ?」「ヒルダの姿が・・
ゆらぐ?」シャシャシャッ!・・スカスカスカッ!『バカな?!ぜんぶ外れるなんて!でも次が・・えっ?!』
スカスカスカッ・・「なぜです?なぜ当たらないんです?!」「開眼したか・・ヴェグダ奥義「ブロッケン」。」
「お返しします。はっ!」ビュッ!キキキキィィン!シャシャシャッ!『なっ?!戻ってくる!』バサアッ!
「出た!」「迷彩布で隠れとったんか!」「はいっ!」パシパシパシッ。・・シュタッ。「ふう・・なんとか
受け止めれたわ。」カシン。「その三日月刀は合わせ刃でしたか。」「妖刀「十六夜」。十六枚合わせよ。」
ザッ。「さすが欧州最強の拳、ヴェグダね。」「月光流もすばらしかったです。」「ふっ・・」すっ。「・・ニンジャは
手をあずけないのでは?」「信頼できる仲間だけに。」「光栄です。」がしっ。『はぁ~・・』「これでいい。」

日没。「なぜ消防署を待機場所に?」「ここなら武器がそろってるからさ。」「武器?」「いずれわかるさ。さて・・
問題は魔獣がどこにいるかだが。」「それは魔獣がどこから甦ったかによるだろうな。」「ふむ・・アリシア、
この地方に何か伝承はないか?」「そういえば・・北の洞窟には昔から誰も入ってはいけないと言われてます。
そこには・・「吸血鬼」がいるって。」「そこだ。そこにその魔獣が潜伏してる可能性が高い。」「そういえば
なぜアリシアの城はだいじょうぶやったんや?」「ああ・・うちに伝わるこれのおかげでしょう。」ごそごそ。
ピカッ!『おおっ!』「黄色いダイヤモンド?」「「ラーの涙」。古代エジプトから伝わってきたものだそうです。」
「ふむ・・これは。失礼。」ちゃっ。じーっ・・「イエティさんは鑑定士ですか?」「まあそんなもんだ。」
「いい仕事してますね~!」『だあああ~っ!』ぐわらがらどっしゃーん!「失礼。一度言ってみたかったのです。」
「あいたたた・・で?」「これは面白い石です。結晶方位が実に精緻に計算されており、入った光が100%収束され、
こちらの面から放出されます。そのときの周波数は太陽光線と同じ。いわば天然のレーザー発振器ですな。」
『へえ~。』「なるほど。吸血鬼よけにはもってこいか。」「・・これは意外と使えそうですね。」「どういうこと?」

はっ!「きたよ!」はっ!「エリス?」「・・いっぱい来るよ。夜の住人たちが・・」オオオオオ!・・
「どこから?」「・・あそこ!」・・ボコッ!ズズズズ・・「庭から?!」「こっちは墓場からや!」ボコボコッ!
「なるほど見つからんわけだ。灯台もと暗しというやつだな。」「感心してる状況か。敵は二千人の大軍団だ。
今日ばかりは秘密部隊だけでは手が足りないぞ。」「そのとおりだ。みんなも少しは運動してもらおう。出るぞ。」

ザザッ。オオオオ!「うわ~、吸血鬼というよりゾンビですね。」「ナンバー6、質問だ。」「答えは決まってる。
神の御許へ安らかに・・それだけだ。」「わかった。ということだ、ヒルダ、アリシア。」「わかりました。」
「お許しが出たからには、美しく送ってあげましょうね・・」ペロッ。「だから刃をなめるなと言っておる。
ちびっ子たちがマネしたらどうする。」「良い子はマネしないでね♪」「悪い子もだ。うまいものじゃないぞ。」
「来るぞ!・・なにっ?!」ズル・・ズル・・『アウ・・アウ・・』「なんてこと!・・」「子供の・・ひどい!」
「月光!」シャン!・・ズル・・ドサドサッ。「アリシア?」「こういうのは本職にまかせてください・・どうせ
私の血は汚れきってますから。」ふっ・・「あんた・・」「次がきますよ!」はっ!「アラクネ・・わかってるな。」
「ええ。この場合は速攻で葬るのが最大の慈悲。心を鬼にして!」シュルルル・・ピン。「妖斬糸陣!」キュイッ!
ズパズパズパーン!「せいっ!」ドン!ボゴオオオーン!「こんなイヤな戦いはないで・・プラズマ火炎!」
ゴオオオーッ!メラメラメラ!「ハデス様、よろしくお願いします・・激流剣!」ピィィィーッ!スカカカカッ!
「やれやれ、こういうのは二度としたくないですな。レンの風にございます。」ビュオオオオーッ!カチカチ・・
「俺もじきに行く。詫びはあっちで入れよう・・あまてらす!」ボオッ!「極楽往生!」ドオオオーン!
ボロボロボロ!「ほう、あれは神闘術奥義「アポロン」ですな。」「俺でも修得できていない太陽の掌か・・」
「とおっ!」ターン!・・ザシャアッ!オオオオ!「ヴェグダ奥義!」タン。「マジャール!」ヒュヒュヒュッ!
ドガガガガガーン!「すごい!地に手をついてあん馬の開脚大回転のように!」ヒュヒュヒュッ、ターン!
「跳んだ?!」「連続技!」ギュルルルッ!「シュトゥーカ!」ズドドドオオオオーン!・・ザシャアッ!
「高速回転飛び蹴り・・まさに急降下爆撃!」オオオオ!「うっさい。水月!」シュパッ!ズル・・コロコロ。
「エリス、たのむ。」「うん・・」(水の星霊アクエリアスよ、この水を清めたまえ。エロイムエッサイム・・)
サァァァ・・「よっしゃ。ベル、いくぜ。」「バルブ開けるわよ!」キュイッ!ズンズンズン・・ブシャアアアーッ!
「ほれほれほれ!聖水放射だ!」シャアアアーッ!オオオオ!ジュゥゥゥ~ッ!「・・どんどん溶けてくよ。」
「まるで亭主の降らす」(シーッ!・・)(あ・・ごめん。)きょろきょろ。「・・よかった、みんな忙しくて。」

『はあっ、はあっ・・』『ぜいぜい・・』「ナンバー6・・いま何時だ?」「ようやく0時をまわったところだ。」
「日没から6時間・・殺しも殺したり二千人か。」がくっ。「正確には「滅ぼす」ですけど・・同じことですね。」
「肉体的より精神的に疲れたわ、こら・・」「さよう・・神々の戦いでもこれほど疲れるのはございませんでした。」
「ふう、ふう・・」「エリス、よくがんばったな。」「聖水の呪文かけっぱなしだったものね・・慣れない術だし。」
「なんとか終わったな。」「はい・・いえ。」ぴくっ。「まだいますね・・そこ!」シュパッ!・・ザキィッ!
『ぐわっ!』ドサッ!「忍者だと?!」「ということは!」『そのとおりでござる。』ザザッ!「やはり砂風!」
「諸君、ご苦労でござった。お疲れのところたいへん恐縮だが、拙者たちがお相手いたす。」「よかろう。」
「むっ?・・何者?」「ぬしが魔獣兵団が忍将・無形の砂風か。俺は第一部隊長、土御門雅焔。」「なんと?あの
古神道の土御門家の長男でござるか。」「よく知ってるな・・アリシア?」ザッ。「あなた根来流ね。」ぎくっ!
「聞いたことがあるわ。砂の術を得意とする忍びがいたって。」「貴殿はいったい・・?」「根来月光流十八代目
継承者、アリシア・シルバームーン。またの名を「ブラッディ・ムーン」。」「なにっ!まさか・・伝説の暗殺者
「血塗られた月」か!」「ご存知なら話が早いわ。・・いっちょやる?」すっ。ビクウッ!「なんという殺気・・」
「退いても恥じゃないわ。忍者は勝てない戦いはやらないものね。」「これだけの人数差で勝てるというのか。」
「だからこうやって挑発してるのよ・・さ、どうするの?」「・・篭目。」ザザザザッ!「うれしいわ。お誘いに
のってくれて。たっぷりサービスし・て・あ・げ・る♪」「おい雅焔、だいじょうぶなのか?」「まあ見ていろ。」
「殺。」シャッ!キキィィン!・・『消えた?!』「こっちよ。」はっ!「・・宙に?!」「十六夜!」シャシャッ!
ズババババッ!『ぐわっ!』シュピィン。トン。「おっ?頭を踏み台に!」「まるで体操だな。」「そういえば
ルーマニアは体操王国だったわね。」「手裏剣を打て!」シャシャシャッ!ドスドスドスッ!『やられた?!』
どさっ!「むっ?!」ごろん。「変わり身か!ぬかった!」「そのとおり!」ババアッ!「奥義・十六夜朧月夜!」
シュババババッ!「無数の三日月?!」「月の星霊。それは死の象徴・・」ズババババババッ!『うぎゃああっ!』
「なんと・・一瞬でわが忍群が。」シュルルル・・パシパシパシン!「いかが?残るはあなただけよ砂風さん。」
「さすがは月光流といっておこう。だが拙者の術もひけをとらぬでござる。」ザザザザ・・「砂弾!」ザアッ!
「おっと!」シュタン!チュンチュンチュン!「砂粒が弾丸のように!」「散弾銃やな。」「昇月!」シュパッ!
ザン!「三日月刀が地中に?」・・ズボワッ!ドスッ!「当たった!」「・・ふふふ。拙者には効かぬ。」ズズ・・
カツッ。「なるほど・・肉体そのものを砂とできるわけね。」「左様。これで勝ちはござらぬな。」「そうかしら?
では試させてもらおっと!」シャッ!「「真砂」!」ザザザ・・ビシィッ!シャシャッ!ピキィィーン!
ザザーッ!・・「一瞬の勝負・・どっちが。」・・ブシュウウウーッ!「くっ!」がくっ。「アリシアが!」
「・・見事だ。「血塗られた月」の技、たしかに・・」ズ・・ボトッ。「砂風の・・首が!」ザザザザ・・
「砂風の身体が・・風にくずれていきます。」「一時的なダメージよ・・じきに復活するわ。」『アリシア!』
タタタ・・「だいじょうぶです、ちょっと切れただけ。」「エリス、サイキック治癒を。」「うん・・」サァァァ・・
「アリシア、見事だ。」「月光流の神髄、見せていただき勉強になりました。」「先生、ヒルダ。・・うん。」

「さてと、もう丑三つ時だな。」「魔獣の巣さがしは夜が明けてからがいいだろう。もう邪魔者はいないし。」
キイイイーッ!『はっ?!』「今のは・・まさか!」「北の空を!」バサバサバサ・・「巨大なコウモリ・・
あれが魔獣ノスフェラトゥか!」「操ってた吸血鬼を失い、直接攻撃に!」「空中戦ならまかし!」ターン!・・
ボオッ!バサアッ!テケレリリリ!「うわ~!フェイさんが火の鳥に!」キィィィーッ!『いくでノスフェラトゥ!
プラズマ火球や!』カアッ!ボンボンボオオーン!キィィィ・・シュバアアアーッ!「超音波メスよ!」
ズバアアアーン!『ちっ!当たるかい!』バサアッ!スカッ!「フェニックス、いま行くぞ!・・変神!」
ピキィィィーン!グオオオオーッ!・・ドドオオオーン!「なっ?!今度は一郎さんが・・巨人に!」
『飛天!』シュワッ!ゴオオオーッ!『それいっ!』ガシッ!キィィィーッ!『イカルス・フォール!』
「空中で魔獣をつかんで飯綱落としに!」・・ドドドオオオオーン!グラグラグラッ!『どうだ!・・はっ?』
シュバアアアアーッ!『うわっ!』「魔獣が血を吐いた!」「目つぶしや!」『しまった!』キイイイイーッ!
ガブウッ!『ぐわあああーっ!』「いけません!あのままではノスフェラトゥに血を!」「ぬう・・よし。」すっ。
「兵護、たのむ。」【へえへえ。やっと出番がまわってきたぜ。アリシアにわたしな。】「アリシア。」ひょい。
「えっ?」パシッ。「兵護さん?」【よっ、ひさしぶり・・て挨拶はあと。「ラーの涙」を出しな。】「これ?」
【そうそう。オレたちの攻撃で魔獣を引き離したあとでそれをタイタンに渡すんだ。そいつが勝利のカギになる。】
「わかった。」『そいじゃいこうか!ガエン、たのむぜ!』「おおっ!」がしっ。『・・えっ?』「雅焔先生、また?!」
「そのとおり。いくぞアリシア!」「はい!」ダダダダダ!「せーの!どりゃあああーっ!」ザン!ドギューン!
「またほうり投げた!」「兵護さん!」キン!【いったれや!】「奥義!月下の一閃!」ズパアアアアーン!
キイイイイーッ!「やった!」「ノスフェラトウの右目を斬った!」『いまだ!肘打ち!』ドンッ!バサアッ!
「タイタン、これを!」ヒュッ!・・『なに?』パシッ。『宝石・・いったい?』【それにプロメテウスを!】はっ!
『このテレパシーは・・前にも!』【ノスフェラトゥを倒すにはそれしかありません!】『・・やってみる!』
すっ。『光あれ!』ボオッ!キィィィ・・『これは?!・・そうか!そういうことか!いくぞノスフェラトゥ!』
グッ。『必殺!プロメテウス・ソーラークロッサアアアアアーッ!』ゴオッ!シュバアアアアーッ!『ああっ!』
「プロメテウスの光が!」「「ラーの涙」でレーザー光線に!」ズバアアアアーン!「十字型に貫きましたぞ!」
キヤァァァーッ!・・ドカアアアアーン!バラバラバラッ!『やった!』「粉みじんです!」ザザザザァァァ・・
「これは・・血の雨!」「二千人ぶんのね・・」「こんなの浴びちゃったら吸血鬼になるんじゃないですか?」
「だいじょうぶ・・さっきので浄化されてるから・・」「そうなの?・・!」ペチャ・・「エリスが・・血を?」
「アリシア、フロを貸してくれ。」「いいですよ。・・うわ~、乾いたらゴワゴワになりそ。」「気持ち悪いですね~。」
サァァァ・・『夜明けか。』ボロボロ・・サラサラ・・『魔獣も吸血鬼も・・灰になっていく・・』ヒュォォォ・・

その夜、シルバームーン城。「それでは晩餐会をはじめます。みなさんどうぞ。」ぞろぞろ。「うわ~。こんな
豪華なドレス、精霊宮の園遊会以来だわ。」「タキシードってきゅうくつなんだな。」「はい。なんかこう・・」
「二人ともよう似合っとるやないか。馬子にも衣装や。」「でも・・!うわ、真っ赤なドレス・・」「ええやろ?」
「わたくしは普段と変わりませんが。」「イエティは一張羅でしょ。」「先生は変わったカッコウですね?」
「これが母国の礼服だ。」「なんか関取みたいだな。」「よくそう言われる。」「まあ本職ですし。」「やれやれ、
こういうカッコウも珍しいな。」「だからあんた、タキシードにテンガロンハットはやめなさいって。」
「・・リヴィ、王子様みたいだね。」「そ、そう?エリスのドレスもステキだよ。」ぽっ・・「・・ありがと。」
「よっとっと。歩きにくいったら・・」ふみっ。びたーん!「あ、すまんアラクネ。」「あいたたた・・もう~!」
ガタゴト・・「さあどうぞ。うちのシェフが腕をふるったディナーです。」『いただきまーす!』カチャカチャ・・
「ところでアリシア、ご家族は?」「使用人はいくらもいましたけど、お目にかかってませんですね?」ぴく。
「・・両親と弟は旅行に出かけてます。その間はあたしがこの城の主です。」「ふ~ん・・ん?」プルプル・・

食後、ベランダ。「・・」「・・アリシア。」「先生?・・」「泣いていたのか。」「・・なぜ。」「わかっている。・・
ご両親と弟さんはあそこにいたのだな。」「・・はい。昨夜はたまたま町へ用事があって。弟もいっしょでした。
そしたら翌朝には・・」「城の外だったのか・・では。」「・・いの一番にあたしが首を刎ねたのは・・弟です。」
「!・・楽にしてあげたのだな。」「でも・・あたしは両親と弟をこの手で・・!」「お前ではない。あのときは
三人はもう亡くなっておられた。」「これは呪い・・数百年にわたって人を殺めてきた血族への・・あたしの血は
呪われている!もうイヤ・・こんな血統はあたしで終わらせる。」「アリシア・・」「それはちがうぜ。」はっ。
「・・ナンバー6。」「いけねえなあ、勘違いしちゃ。死んだらそれこそ無意味になるぜ。」「どういうことだ。」
「わからねえか?アリシアの血族は必要とされてるのさ、この世界に。」「世界が・・あたしを?」「正確に言おう。
アリシアの血族はヨーロッパの歴史を影から作ってきた。いや、世界の歴史といってもいい。たとえば1945年。
あのベルリン地下総統府に侵入し、逃亡寸前の「やつ」を葬った・・先々代当主の仕事だ。あのまま「やつ」を
逃がしていれば、歴史は大きく変わっただろう。」「そこまで知っているあなたは・・?」「ナンバー6、いや・・」
「おっと。というわけで混沌たる歴史を正しい方向へ進めるには、闇の力も必要ってことだ。それがアリシアの
血族だ。誇りを持て。胸を張れ。ご両親と弟さんの死をムダにしないよう、世界の夜を戦いぬけ。」「・・」
「いや、ちっと柄にもなく高説がすぎたな。雅焔、あとたのむわ。」「・・あいかわらずだな。だがナンバー6の
意見には俺も賛成だ。しかしこうなると・・よし。」ごそごそ、すっ。♪ピッピッピ。「・・雅焔だ。久しいな。
実は・・」・・「・・そうだ。オヤジは俺が説得する。・・たのむ、雅。」♪ピッ。「今のは?」「日本の実家だ。
俺の姪が五日後にここに来る。」「え?なぜ?」「お前を一人にしておけんからだ。ヒルダ。」「およびで?」スッ。
「状況は聞いてのとおりだ。しばらくアリシアを支えてやってくれ。俺の姪とともに。」「ああ・・雅さんですね。
わかりました。で、先生は?」くるっ。「・・俺を待ってる生徒たちがまだいる。心の救いを求めてな・・」

♪雨がふるふる 雨がふる 遊びにゆきたし 傘はなし
♪傘があっても同じだよ 紫怨の雨で溶けちゃうの
♪溶けて流れて食われるの しとしとしとしと雨の中
♪お日様見たしや 「雨の朝」・・


第十夜~第十四夜

天界・神都闘技場。天界では闘神のぶつかる武闘大会「G-1」が最高の娯楽である。ワアアアアーッ!

『勝者、機神ミカヅチ!』「さすがはミカヅチ!圧倒的に強い!ついに200勝を達成しました!」

『放送席、それでは勝者インタビューです。200勝おめでとうございます!』『・・ああ。』『これで天界には

もはや敵はいないのでは?』『・・いや、それはちがう。』『それではぜひ闘ってみたい相手とかいますか?』

『いる。・・タイタンだ。』ザワッ!シーン・・『そ、それは・・』『冗談だ・・それでは。』くるっ、カツカツ・・

 

カツカツ・・ぴたっ。「・・ヴォーダンか。」ぬっ。「ミカヅチ・・タイタンと闘いたいか?」「・・キサマには

関係ないことだ。」・・カツカツ。「闘える・・としたら?」「それは不可能だ・・エデンに降りないかぎり。」

「そのとおりだ。ならば降りればいい。」「デウス様が許すまい。」「その必要はない。」ぴた。「なんだと?」

「話を聞け。返事はそのあとでいい。」「・・控室に来い。否でも聞いたことは忘れよう。」「感謝する。」

 

「ただいま。」「おかえりなさい、あなた。200勝おめでとう。」「ああ・・フェルメール、今日ヴォーダンに会った。」

ぴく。「・・で?」「承知した。「アウターヘブン」のことも聞いた。」「・・お客の秘密は夫にも明かしては

いけないの。」「わかっている、それが職人の掟だ。俺に話さなかったことを気にする必要はない。それは正しい。」

「あなた・・」「そしてそんな律義なフェルメールを俺は愛しているのさ・・おいで。」「・・うん。」ぽすっ。

「・・まだ日は高いわよ。」「かまわん。俺はいまとても嬉しい・・強いやつと闘えることが。」「・・ほんと。

こんなになって・・む・・」「エデンへ行く・・そこでタイタンと闘う・・それが俺の夢だ・・っ!」「・・ふぅ。

試合後はいつも・・んっ!」「フェルメールも・・大きくなったほうがいいのでは?」「これが・・いちばん・・

しっくりくるし・・いいの・・っ!」「だが・・ここだけは・・大人だしな・・」「もう・・バカ・・ぁあっ!」

 

第十一夜「雨の朝」 - 豪雨魔獣「紫怨」 登場 -

 

中国・上海。早朝。ザァァァ・・パパパパー!『うわ~・・』「中国ってこんなに近代化しちゃったんだ・・」

「高層ビルに車の洪水。そして行き交ういろんな国の人たち・・雨も降っとって、こないだDVDで観た映画の

ようなとこやな。」「ホントにレプリカントがいそうですね。」「改革・開放路線が変なほうにいった悪い例ですな。」

「こんな大都会に魔獣が現れたら大惨事だぞ・・」「・・「シオン」はよみがえるよ、必ず・・」ザァァァ・・

「さて、ここに突っ立っててもしょうがねえ。第二部隊との合流場所に向かおう。」「・・あれ?ベルさんは?」

「ああ、用事ができてニューヨークへ戻った。」「いつの間にや?あいかわらず神出鬼没なねえちゃんやな~。」

 

南京通・華新大飯店。チーン。「ついたぜ。最上階・ロイヤルスィートだ。」『おお~・・』「なんて豪華な部屋だ。」

「これってフロアまるごとなの?一泊どれだけすることやら。」『通年無料ですわ。』ギギィィ・・「櫻華!」

「ようこそ第二部隊・上海支部へ。」『支部?』「ワシらは中国各地にこういうアジトを持っとるんじゃよ。」

「ウラ!どうぞ入るのだ。」「外は寒かったでしょう。飲茶を用意してありますので。」『・・失礼しま~す。』

 

コポコポ・・「あんた、どういう手使ってこんなゼイタクな暮らししてんの?」「あら簡単よ。そこらの華僑と

一晩つきあってやれば。」「なるほど・・帝に比べりゃ楽勝よね、たしかに。」「ダテに年期は入っとらんわい。」

「で、本題に入ろう。」・・「紫怨・・懐かしい名前ね。」「そうじゃの・・あやつのおかげで数十万の臣民が

消えてしもうたもんじゃ。」「消えた・・とは?」「あいつはね、決まった形を持たないヤツなの・・いわば

液体生物ね。」「アメーバみたいなもんか?」「もっと悪い。水とほとんど区別がつかん。いや水そのものじゃ。」

「それゆえに雲になり、雨となって降り注ぎ、紫怨の雨に打たれた生物は・・消化されるの。」『・・・・』

「なんて恐ろしい魔獣ですか・・」「しかし倒せた・・のよね?」「なんとか封じたというのが正確ね。代償が

街ひとつだけで僥倖よ。」「街を囮にして紫怨をおびきよせ、街ごと封じて地底に封じたのじゃ。それでやっとな。」

「・・その街には何人いたの?」「ざっと三千人・・兵馬俑はその鎮魂のために造られたのじゃ。」『ああ・・』

「二度と甦らないはずだったのに・・これじゃうかばれないじゃない・・なんのために・・」キラッ・・

「・・櫻華の涙、はじめて見たわ。」「その三千人の中にな・・櫻華の愛した人がいたのじゃ。彼は自ら進んで

この大役を引き受けたのじゃ・・自分の軍団を率いての・・」「止められなかった・・『自分たちが犠牲になれば

多くの臣民が助かる。これこそ武人の本懐だ・・』・・私に今ほどの力があったら・・うう・・」ポトポト・・

「・・櫻華、倒そう。紫怨を。」「・・一郎さん。」「それこそが本当の供養だ。今回は俺たちもいるじゃないか。」

「そうです!私もナデラだっています!」「ウララララ!女神インファを泣かせる魔獣、許さないのだ!」

「ほい櫻華、ハンカチ。」「・・ありがとアラクネ。」ぐしぐし。「それちょーだい。」「・・?」・・ぱくっ。『なっ?』

もぐもぐ・・ごくん。「これでいいわ・・櫻華、あんたの純粋な涙、たしかにこの身の一部とした。親友として

あんたの無念、はらしてみせる!」ゴオッ!『おおっ!』「この魔力は!」「ついにアラクネが・・本気に!」

 

ザアアアア!「?・・雨の勢いが。」はっ!「きた!・・紫怨が!」『なにっ!』『ぎゃあああああーっ!』

「あの悲鳴は!」「下からですぞ!」ダダッ!「・・はっ!待ってください!窓を開けたら!」『あっ!』ぴたっ。

「ベランダの鳩を見て!」シュゥゥゥ・・「・・溶けていく!これが・・紫怨の雨か!」「テレビを!」ピッ。

『臨時ニュースです!市民のみなさん、ただちに建物内へ避難してください!現在の豪雨は溶解性で、濡れると

命の保証はありません!ただちに避難してください!』「み・・見て!」「雨にうたれた人が・・溶けていく!」

「ぬう!傘や合羽でも防げておりませんぞ!」「ひどい・・これが紫怨!」「同じだわ・・あのときと!」

「エリス、紫怨が特定できるか?」「・・だめ。上海中に広がってる。どうしようもない・・」「くそうっ!」

「上海の地図はありますか?」「これですけど。」バサバサ・・「市内を流れる黄浦川の下流・・ここです!」バン!

「リヴィ?」「紫怨が水なら、集結地点はここしかありません!長江との合流点!」「そこで決戦じゃな!」

 

はっ!「エリス?」「・・敵!」ガシャアアアーン!ズシャズシャッ!「こいつぁ機動歩兵!」「魔獣教団か!」

チャッ、ズガガガガガッ!「防御網!」シャアッ!ビチビチビチッ!「アラクネ?!」「こいつらはわたしが

引き受ける。みんなは紫怨を!」「わかった、待ってるぞアラクネ!」ダダッ!「・・さて、魔獣教団の皆さん。」

くるっ。ギン!びくうっ!「わたしはいつになく機嫌が悪いの・・楽に死ねると思わないでよ!」ガッ!

『な・・なんだ!』バリバリバリッ!『背中から・・巨大な脚が!』ズズーン!キシャアアアアーッ!

『大グモのバケモノ!撃て!』ズガガガガッ!シュバアアアアーッ!『うわっ!糸だ!』メキメキメキ!

『この力は!・・機動装甲服が・・ゆがむぁあああ~っ!』グシャアッ!ブシャアアアアッ!『ひいっ!離脱!』

バコン!ガラガラーン!シュババババッ!ビタビタッ!「ぎゃあっ!」ミリミリ・・ブシュゥゥゥーッ!

「糸が・・食いこむぎゃぁあああ~っ!」ブシャブシャアッ!ビチャビチャッ!『身体がコマギレに!』

キシャアアアーッ!『火炎放射器だ!焼き払え!』ゴオオオーッ!シュバアアアアッ!ビチャ。ボオオオーン!

『ぎゃあああっ!』『ノズルの先に糸玉をぶつけて暴発させた!』くるっ。キシャアアアーッ!『うぎゃあああ!』

 

ザアアアア!「まだ雨が降ってます!」「私にまかせてください。」「由比?」チャッ。「水を司る水江龍よ、

邪悪な雨から我らを護りたまえ!」ばばばばばっ!「水龍霊幕!」サァァァ・・「・・全身に透明な膜が?」

「水龍の結界です。これで魔の雨にはやられません。」「それじゃいこうか。」『そうはさせん。』ズシャッ!

ザザザザッ!「機動歩兵!」『紫怨はやらせん。』ガチャッ。「・・機将ゴールドか!」『左様。第一小隊は君たちを

引っ張り出す役目を果たしてくれた。ここからは我が機動歩兵団が相手をしよう。』「なるほど。その装甲服なら

紫怨の雨の影響はうけないわけですな。」『雨はあと三分で上がる。それまでもつかな?かかれ!』ザザッ!

「ここはまかせてください。」すっ。「貴殿らは一刻も早く紫怨のところへ。」「こんな連中に神さまの力を使うの

もったいないのだ、ウラ!」「ここはくいとめます。行ってください!」「・・わかった!たのむぞ!」ダッ!

『追え!』「ウッデュデュウの森なのだ!」♪トンタタトンタタ!ズゴゴゴゴゴーッ!『なんと!巨大な樹が

行く手を!』「あなたたちの相手はこちらよ。」「さてもウワサの機将ゴールド。会うのが楽しみじゃったぞ。」

「ウララララ!悪いやつらはサバンナの神に捧げてから食うのだ!」「怒りの風水、お見せしましょう!」

『よかろう。総員、第二部隊を殲滅せよ!』ザッザッザッ!「みなさん、思いっきり暴れましょうね。」『おう!』

 

「今の私をジャマするとは、よほど命がいらないようね。」すっ。『・・笛?』「鬼も酔う妙なる調べの名笛「鬼酔」。

あなたたちに聞かせるのはもったいないわ。一丈青!」ヴォン!『笛の両端から光が?!』「はっ!」ヴオン!

『・・?』ズ・・ズルルルッ、ドシャッ!『な・・なんでオレわ?』「斬られたことにも気づかない切れ味よ。」

『撃て!』ズガガガッ!「鉄扇子!」シャン!ぱしぱしぱしっ!「いきなさい白花蛇!」シャッ!『蛇?』

ズボオッ!『ぐはあっ!・・バカな、蛇が装甲服を貫くとは・・』「没羽箭!」シュパッ!ドボボボボッ!

『ぐわっ!』『い・・いまのは!』『見えない・・何かが・・?!』ぽとっ。『これは・・ツマ楊枝!』ドサドサッ。

「崑崙の霊木から削り出した楊枝よ。ダイヤモンドでもトウフと同じ。いくわよ!」ヴォン!ズバズバッ!

 

「ワシも今日はいささか虫の居所が悪い。よって容赦はせぬぞ!」『バズーカ砲、ていっ!』「お祝いかの?」

ぽーん!ひらひら・・『ななっ?!』「その鎧も紙製じゃろ。」ザアアアア・・『ぎゃあああーっ!身体が溶ける!』

ドロドロ・・「紙ならしょうがないの~。ほっほっほっ!」『言葉を現実に?な・・なんという魔法だ!』

「そこの連中、ワシを前に鎧姿とは無礼であろう。この呪紋が目に入らぬか!ひかえおろう!」バーン!

『は・・ははーっ!これは失礼を!』バシュバシュ。『キサマら血迷ったか!まだ紫怨の雨は!』ザアアアアア!

『あぎゃああああーっ!・・』ドロドロ・・「ほっほっほっほっ!水に流してやろう!」『お・・恐ろしいヤツ!』

 

「ウラララ!マナミちゃんに借りたマンガに出てくる連中なのだ。」『撃てうて!』ドガガガガッ!「ほいほい!」

チュンチュンチュン!「森の精霊にはこんな雨でもだいじょうぶなのがいるのだ。出てこいアンアンガラ!」

♪トンタタトンタタ。ゴゴゴゴ・・ザキザキザキィッ!『ぐわあっ!』『ぎゃあっ!』『地面から生えた木が

装甲服を貫いた?!』「アンアンガラの木は硬いから何でもぶちぬくのだ。つぎはゲクバキンなのだ!」

♪トンタタトンタタ。ゴバアアアーッ!『高い木が?』ポトッ。ヒュルルル・・ドガアアアアーン!『うわっ!』

『爆発する実だと!』「ゲクバキンはすごいのだ。デカドゲクバキンなら街なんかふっとぶのだ、ウララララ!」

 

『こっちは弱そうだぞ。』『こっちだこっち!』ザザザッ!『一斉射撃!』ジャキジャキジャキッ!「・・ばか。」

すっ・・キン!『撃て!』かちっ。ドガアアアアーン!『ぐぎゃあああーっ!』『ぼ・・暴発だと?!』

「あたりまえです。みなさんが狙ってたのは私じゃなく自分自身です。これぞ八門がひとつ、反門。それでは

こちらからいきますよ!」ちゃっ、ヒュヒュッ!ドカカカカッ!『なんだ?』『見当はずれの方角に?』

「願わくば大極をもって悪を虚空に封じん!」ボボボボッ!「虚牢!」すっ・・『?うわああああーっ!・・』

『なにいっ!一個中隊が・・消滅した!』オォォォ・・ぴたっ。「みなさんそちらにおられますよ。」

『なに?・・おおっ!』【・・!】【・・!】「二次元空間牢獄です。お持ち帰りできますよ。」ふっ。

 

「さて、残るはゴールド、あなただけですよ。」『さすがは菖櫻華。いや「仙術兵器の櫻華」だ。「王将」!』

ヴォン!「徹底抗戦・・それでこそ。」『雨も上がったようだ・・心おきなくやれる。』サァァァ・・『・・はっ!』

ダッ!ヴオン!ガキィィーン!「はいっ!」シャッ!『なんの!』キィン!『旋風剣!』ビュビュビュッ!

「はいはいはいっ!」キキキキィン!『はあっ!』キィン!・・『・・少林寺とはな。意外だぞ。』「ダテに年齢は

くってませんわ。達磨大師とはよくお手合わせ願ったものです。」『ほう、ならば相手にとって不足なし!』

ヴォン!キィン!「あ、忘れてましたけど、会得したの少林寺棍術だけじゃありませんの。」『・・なに?』

すっ・・ぴた。「暗殺拳も少々♪」カッ!ドゴオオオオーン!『ぬおおおおーっ!』ドグワシャアアーン!

「いかが?流派東方奥義・石破天驚拳。600年ぶりに使いましたけど、威力ありますでしょ。」シュゥゥゥ・・

「は~、ゴールドの鎧に櫻華さんのでっかい手形がくっきりと。」「あの程度で助かるとは、きゃつもタダ者では

ないのう。」「ウラ!インファはやはり強い女神さまなのだ!」『ぐうう・・ウワサには聞いたが、これほどとは。』

ググ・・「悪党にしてはたいした根性ですわ・・いえ、そろそろ素顔を見せてくださいね。」ヴオン!ぱかっ!

ばさっ!『おおっ!』「女の方とは聞いてましたけど・・」「これは・・櫻華にも負けぬ美貌じゃのう。」

「ん?あれも女神なのか?」「・・負けたわ。殺せ。」「そうしましょう。」すっ。ヴォン!「!」ぱさっ。

「・・?」ふわっ・・「この髪の一束だけいただいておきます。記念にね・・みんな、急ぎましょう。」タッ。

『あ?はい・・』タタタ・・「待て!・・なぜ殺さない?」『あなたにはもう一度会いたいから・・アテナ。』

「・・櫻華か。さすがにかつて魔神と呼ばれただけのことはある。だが・・生かしておいたこと、後悔するぞ。」

 

「櫻華さん、いいんですか?」「ふっ、あっさり殺すより生かしていぢめるほうが楽しいでしょ。」「やっぱり・・」

「ほっほっほ!櫻華に気に入られるとは気の毒なことじゃの~。」「そのエグい性格もインファらしいのだ!」

「ふふっ・・(・・でもね、彼女がもし「あの」アテナだとしたら・・これから先が楽しみだわ)」にっ。

 

黄浦川と長江の合流点。ザアアアア!「ここです。市内に降った紫怨の雨は必ずここに集結するはずです。」

「イエティ。」「ははっ、外道照身眼。」キラッ。「・・おります。通常の水とは異なる妖気が集結しつつあります。」

「リヴィ、作戦は?」「・・マスター、今回は策がありません。紫怨を固める術があればいいんですが・・」

「そやな・・普通の水と分別するのも不可能に近いで。」「凍らせるにしてもかなり難しいですな・・」

「手はあるわ!」たっ。『・・アラクネ!』「やっとおいついた。みんな勉強不足よ。水を制するものはあるわ。」

「そらなんや?」「これ。」さっ。「・・ナプキン?」「途中でコンビニで買ってきたの。女性の必需品だしね♪」

「わかりませんな。それが紫怨退治に役立つというのですか?」「そのとおり。正確にはこれ。」バリッ!サラサラ。

「・・なんです?」「カタクリ粉みたいやな。」「まあ知らないのも無理ないかもね。これは吸水性高分子よ。」

『吸水性高分子?』パチン!「なるほど、その手があったか。」「・・いいとこに気づいたね。」「イエティ、紫怨が

集結しきるまでどのくらい?」「ざっと3分ですかな。」「それじゃ集結一分前と正確な場所を教えて。わたしが

紫怨を固定するから。」「場所はあのへんでございます。・・あと3,2,1。」「いくわよ!吸水糸!」ピュゥゥゥーッ!

バシャバシャ!「・・これは?!紫怨の水があの糸にぐんぐん吸収されておりますぞ!」「質量の3000倍の水を

吸着できるスグレモノよ。」ゴボゴボ・・ザザアアアアーッ!『おおっ!』ジュルジュルジュル!「でかい!

これが紫怨か!」「集合体はアメフラシのバケモンか!」「もう紫怨は自力では液体に戻れない。イエティ!」

「かしこまりました。むん!」ググウウウーン!オオオオーッ!ドンドンドンドン!「今回ばかりは俺では

手の出しようがない。たのむぞ!」『おまかせください御主人様。では今回は主役をはらせていただきます。』

 

タタタタ・・「もう始まっとるぞい!」「あれが・・紫怨!」「吸水性高分子とは考えましたね。」「ウラララ!

水のカタマリのバケモノなのだ!この世にあってはいけないものなのだ。」「そう・・あいつは滅すべし!」

 

『レンの凍てつく風にございます。』ビュオオオーッ!ザザザーッ!『ほう、ナマイキにもよけますか。では

もそっと近寄りましょう。』ザザーン。「・・いけないイエティ!水から上がって!」『むっ?・・これは!』

ジュウウウウ~ッ!『ぐおおおおーっ!足が!』「固定しきれなかった紫怨の水がまだあったのか!しまった!」

ズズーン!『ぐううっ!なんとか足は抜きましたが・・!』「ひどい・・骨が見えとる!」「イエティ、戻れ!

エリス、治療をたのむ!」「わかった・・」「俺も手伝うぜ。」タタッ。「リヴィ、水流を制御して紫怨がこれ以上

拡散しないようにしてくれ。」「わかりました。水よ渦巻け!」ザザアア・・「これで一時的に押さえられますが・・」

「これじゃ凍結してどこかに捨てる作戦がオシャカよ・・」「どうする・・あいつを倒すには!」「厄介やで!」

 

「まかせてもらうわ。」はっ!「・・櫻華?!」「アラクネ、ありがとう。あとは私たちが。」「手があるの?」

「ここまでやってもらえればね。由比。」「はい!水竜壁!」ボボボボボッ!・・ザザザザアアアーッ!

「紫怨の周囲の水が?!」「すごい・・長江が割れていきます!僕でもこれほどの力は!」ドドドドド!

「これで紫怨は隔離しました。」「今こそ慶信の仇、討たせてもらうわ。はぁぁぁぁ・・」キィィィ・・

「こ・・この波動は!」「なんちゅう異様な気や・・」「これは・・どんな神の力とも異なります!」

「大仙術・混世魔王!」ゴッ!・・ボオッ!『あれは!』「・・そないなアホな!」「う・・宇宙空間?!」

オォォォ・・「そして・・あれは太陽!」「消え去れ紫怨!太陽に落ちて燃え尽きよ!」・・ゴオオオオオーッ!

『うわっ!』「宇宙への門が・・開いた!」ゴオオオオーッ!ジュルジュルジュル・・「紫怨が・・落ちる・・」

ゴオオォォォォ・・「門が閉じます・・」ォォォ・・フッ・・「紫怨はもう二度と甦らないわ・・慶信・・」

 

その夜、第二部隊支部。「イエティさん、もうだいじょうぶなんですか?」「は。もう肉は再生しました。」

「さすがは神獣じゃの。」「それはこっちのセリフよ御隠居。グチャグチャになったこの部屋、まさに「一言で」

直しちゃうんだから。」「いやいや、「なかったこと」にしただけじゃよ。」「それがすごいっちゅーねん。」

「それにしてもだ。櫻華、あの仙術はすごすぎるぞ。」「そうです。空間を宇宙へ直結するなんて、天界の神々でも

できる方おりませんよ。」「たしかにね。でもね・・魔界にはいるのよ。」『・・魔界?!』「そう。たとえば・・」

ちらっ。「・・魔王サタンとか。」「サタン・・会ったことはないが、その恐るべき魔力は語り草になってたな。」

「そうそう。デウス様より強いとか、星ひとつを破壊したとか。」「四界のサミットである公会議にも出席された

ことはないそうですね。」「そや。魔王妃ヴェールがいつも代理で出席してるそうや。」「おかげでこういうウワサも

あるくらいよ。・・サタンは実在しないって。」「それは間違いね。だって私、会ったことあるもの。」『なにっ!』

「いつ!どこで?!」「数世紀前に日本で。たしか「果心居士」とか名のってたわね。「混世魔王」はそのとき

習ったものよ。」「へえ~、あの伝説は本当だったんだな。」「・・ライオン丸さんのお師匠さまだよね。」

「あ、それで思い出した。フェイ、魔界大使になんか聞いてないの?」「おお、レオパルドン大公爵か。」

「いんや。そういう話題は乗ってこんかったから、うちもいつしか聞かんようなったわ。」「口堅いですからね。」

「レオはんか・・うちがおらんなってさびしがっとるんやろか。」「あら?フェイもけっこうその気だったの?」

「ま・・まあな。」ぽっ。「アゴラでは有名なツーショットでしたよ。真紅と黄金ですから目立つんですよね。」

 

『失礼いたします。ディナーをお持ちしました。』「どうぞ。」ガチャ。ゾロゾロ。「満漢全席でございます。」

コトコトン。『おお~。』「それではごゆっくり。」すっ。パタン。「さ、今夜はお礼もこめてごちそうしますわ。」

『ゴチになりや~す!』「櫻華さんといっしょだと、三度の食事がこの調子だから太っちゃいますね。」

「といいつつ一番食ってるのが由比なのだ。ウラ!」「ほっほっほ。うまいものを食っとれば長生きするわい。」

「・・これなに?」「エリス、そりゃ牛の金玉だ。」「ふ~ん・・」ぱく。もぐもぐ・・「・・コリコリしてるね。」

「中華はバランスええから美容にも効くそうや。」「一郎さん、はい一杯。」「お、すまんな櫻華。」とくとく。

「ほう・・この酒は。」「伝説の老酒「黄河」です。酒精の強さは天下一ですわ。」「どれ・・うん、これはうまい。」

くんくん・・「?!・・櫻華、それ精力酒でしょ。」「さすがアラクネ、匂いだけで当てたわね。」「ということは・・」

「今夜もおつきあい願いますわ♪」「・・ということだが、いいのかアラクネ?」「ダメって言うだけムダでしょ。」

 

♪鳥を見た 巨大な鳥を

♪世界を駆ける大いなる翼

♪ゆく先にあるもの全て食らいつつ

♪死をもたらす巨鳥ナスカ

♪海の彼方から飛んでくる

♪「鳥を見た」 巨大な爪が私を・・

 

***********************

 

神都郊外、魔界大使館。天界と魔界は公式に国交はしていないが、四界協定により大使は常駐している。

ゴォォォ・・「魔界大使レオパルドン大公爵どの。ご機嫌うるわしゅう。」「ヴォーダン、社交辞令はよい。

私の機嫌もうるわしくはないしな。」「では本題に入らせていただく。・・貴殿は今回のタイタンの堕天の件、

いかが思われるか?」「デウス殿の決めたこと。内政干渉をするつもりはない。」「いや、友人として聞きたい。

同じ十二神衆の仲間としてな。」「・・ならば私人として話そう。私は怒っておる。あれは明らかにやりすぎだ。

いかにエデンの魔獣退治のためとはいえ、もっとスマートなやり方はいくらでもあったろうに!」ゴルルル!

「左様、俺も同意見だ・・天界政庁は腐敗しきっている。今回のこともデウス殿をはじめとする政庁の高官が

タイタンたちの実力を恐れて追放したとの市井のウワサも高い。いずれ自分たちがとって替わられるやもとな。」

「埒も無きこと。タイタンたちが権力を欲しがるなぞ天地がひっくり返っても有り得ぬわ!」「あやつらはそうは

思わなかったということ・・そこで本題に入る。」「・・聞こう。」・・「・・いかがかな?」「なかなかに興味深い

提案だ。政庁のクソ連中どもに一発食らわすのも一興。それに・・フェイを迎えにいくというのが、な。」

「承知してくださるか?」「問題は私の公人としての立場だが、なに、私は特派員のようなもので、天界が

どうなろうと知ったことではない。その事実を魔王宮に報告するだけのこと・・何も問題はないだろう。」

 

「では、その時に。」「うむ。」カツカツ・・バタン。・・「・・ヴェール様、やはり来ましたぞ。」すっ・・

「上デキよ大公爵。叛乱軍の中にうちの目があったほうがいいわ・・精霊界は綺羅自身がいるし、ね?」すっ。

「そのとおりよ。まあヴォーダンにはせいぜいがんばってもらいましょう。」「ふふ・・ヤツは自分が叛乱を起こし

新たな秩序を打ち立てようとしているつもりだが、所詮は一人芝居、いや道化ということがわかっていない。」

「アルのいうとおり大根役者は前座の余興がお似合い。真打ちは後にひかえておくのが基本・・いつでも役者が

交替できるようにね。」「ふはははは!気の毒なヤツだ。もっとも同情はしないがな。」「そういう公爵だって彼女を

迎えに行くのはホンネでしょ?」「そ、それは・・綺羅にはかなわんな。」「あら、フェイとレオの仲って本当なの?」

「ヴェール、実はそうなのよ。 レオったら政庁の役人どもはこの黄金獅子の迫力でビビらせてるけど、フェイと

一緒のときは小猫ちゃんみたいなの♪」「あら~♪それは見てみたいわね!」「ぷっ。(思い出し笑いのアル)」

『あははははっ!』「ヴェール様~。からかわないでくださいよ。」「あははは、ごめんごめん。さて、さっそく

亭主に報告してくるわ。」「忙しいのね。ダンナによろしく。」「またフェイの近況を聞かせてくだされ。」

「姉上、ミヤゲをまたよろしく。」「おっけい、アル。今度も恋愛モノだっけ?」「うむ、葉っぱか加水にかぎる。」

 

第十二夜「鳥を 見た」 - 超音速魔獣ナスカ登場 -

 

日本海上、飛行空母「エル・ドラド」。ゴォォォ・・「日本列島か・・」「ずいぶんとひさしぶりね・・」

「ナンバー6、次は日本ですか?」「いや。日本へは第三部隊を拾いに立寄るだけだ。そこからペルーへ行く。」

「そうか・・」「残念やが・・」「しかたありませんな・・」「・・けどまあ、魔獣はまだ復活してないんだろ?

エリス。」「・・うん。まだ眠ってる。」「というわけで、多少の時間の余裕はある・・半日はだいじょうぶだろう。」

「・・行ってきて。お墓参りに。」「・・すまん。」「いいさ。その間にいろいろ準備もあるしな。」『そうそう。

アキバにも寄らないとね。』シュッ。「ベルはん?いつの間に!」「ついさっきVTOLで。」「・・飛んでましたか?」

「そうじゃないと来れないじゃない。あんた、連絡文。」ぱさっ。「・・わかった。予定どおりだな。」クシャッ。

「第三部隊に連絡がついた。あと一時間で東京上空だ。九十九里浜に寄ってから俺たちは東京へ飛ぶ。合流は

有明で17:00。いいな?」「充分だ。・・感謝する。」「故人を偲ぶのは人として怠っちゃいけねえことさ。」

 

ザザーン・・『・・・・』「じいさん、ミナモ・・また来たよ。」「これ、あちこち行ってきたおみやげよ。」ガサッ。

「いろんな国を見てきたわ。暑いとこ、寒いとこ・・いろんな人がいて、そしていろんな魔獣もいたわ・・

みんな倒してきたから安心して。もうあなたのような子は・・これ以上・・うう・・」ポトポト・・

「アラクネ・・ミナモちゃんは勇敢に戦って散ったんです。涙は・・ふさわしくないです・・」ツツ・・

「忘れへんで。あんたの勇気、そして最期を・・じいさんも見といてや。うちらは戦う、エデンのために。」

「煉獄の山におられるであろうお二人に、わたくしたちの祈りが届いて早くに天国の門へ至らんことを・・」

ザザーン・・「・・行こう、みんな。そして・・いつの日か再びみんなでここに来よう。」こく。・・ザッ!

 

有明、ファイアワークス(有)事務所。「ここか・・」「プレハブの事務所?まさに中小企業ね。」「VTOLは

そこにありますから、エリスたちも来てるはずです。」「時間もピッタシ17:00や。」「では入りましょうか。」

ガラッ。「よっ、来たな。」「・・おかえりなさい。」『・・あれ?』「ベルさんと第三部隊の方たちは?」「奥だ。」

ひょこっ。「おっ、時間どおりね。いま夕食作ってるから待ってて。」「あら、来られましたわね。」「渚さん?」

「実家から新鮮なカツオが届いたので、タタキとおみそ汁とカツオ飯を総出で作ってます。もうすぐできますよ。」

「うむ、予定どおり来られたな。」「いらっさーい。」「ショウと千夏さん。」『うーっす。』「荒捌きはさすがに男手が

必要なので、叡智を手伝っていたのだ。」「中落ちこそぐのけっこう楽しいもんだね。」『エーちゃん、そろそろ

おミソ入れる?』『合わせミソを入れて。沸かすと味が落ちるから火加減は絞りめで。』「あの声は叡智くんと

かがりちゃんね。」「ほれほれ、どきや!」とことこ、ドン!「ふぅ、大皿は重うてかなわんわ。お、フェイの

あねさん、おひさ。」「元気しとったか愛美。」「・・あ、そーだ。ナンバー6さん、VTOLのカギを。」「ほれ。」

ぽい、チャリッ。「本を持ってきます。」「そのへん置いといてや。手ぇ洗ろうてから愛美文庫にしまうさかい。」

 

ガヤガヤ・・「それではエブリバディ、再び会えたことを祝ってカンパイしようではないか。」『カンパーイ!』

「まずはタタキからいってみよか。」ぱく。もぐもぐ・・「ん~!ポン酢とニンニクが効いてておいしい!」

「このカツオ飯もなかなかのものですぞ。かつてボスタング殿に馳走していただいた味を思い出します。」

「カツオづくしか。ウワサには聞いてたが叡智くんの腕はたいしたものだ。」「料理はけっこう好きなんすよ。

実家が近くにコンビニも無いど田舎の漁村だったんで、自炊が身についちゃって。」「そうそう。エーちゃんは

コンビニ弁当はもちろんスーパーのお葱菜やホカ弁さえ買わず、ぜんぶ自分で料理しちゃうんだから。」

「叡智くんはそういうとこものすごくマメですからね。」「朝メシちゃんと食べるんは健康生活の基本やでー。」

「かがりくんも見習って、叡智の作った朝飯を一緒に食べるのではなく、たまには作ってやりたまえ。」ぎょっ!

「なっ?!なんで知ってるんですか社長!」「プレジデントたるもの社員の行動くらい予想できる。かがりくんの

性格だと、まず朝食は抜くだろう。そこを叡智に諭された、朝食とらないとかえって太るとな。」「どきっ!」

「そっから先はあたしでもわかるわ。二人が別々に作るのは効率が悪い、とゆーよりかがりちゃんけっこー

めんどくさがりだから、エッチが作って四畳半に食べに来ると。マンションだと出社とは逆方向だものね。」

「う・・お見通しですか、千夏さん。」「このくらいみんな読んでるよ。」「いっそのこと社長と千夏さんみたく

同棲しちゃえば?かがりちゃん。」『え"。』「ショウと千夏って・・同棲してるのか?!」「言わなかったか?

千夏と吾輩は婚約者である。」「そゆこと。こんなの面倒みられるのは、あたしくらいな物好きだけってこと。」

「またまた~。しゃちょーと千夏はんは幼なじみやねん。小さいころ一緒にフロ入っとった仲なんやて。」

「コイツのことはまだちんちんにケが生えてないころからよく知ってるわ。」「うむ、学校もずっと一緒だった。」

「こーゆーのを腐れ縁ってゆーんだろうね。」「うらやましいですね。幼なじみは一番おいしいアイテムですわ。」

「へえ~。まあ俺もアラクネとはつきあい長いがな。」「そうそう。ちんちんのでかさまで知ってるわ。」すぱーん!

「あほ!そら全然ほほえましゅうないわ!」「・・リヴィの私まだ知らないの・・」「え"・・(^^;;」

 

ナスカ高原。まったく風が吹かない沈黙の地・・「ふふっ。あとひと押しすればナスカはめざめる。世紀の巨鳥、

ぜひ見てみたいわ。土の魔法陣!」シュパッ!ザババババーッ!・・「超大型魔法陣できあがり。さてと・・」

キィィィ・・「サリグ・ゼル・アスト・デルク。眠れる大魔鳥よ、いまこそ封印を破り再びはばたけ。エデンの

空はそなたのもの、地の果てまで飛翔せよ!オルドス!」カッ!シュババババーッ!・・ゴゴゴゴゴゴ!

ドパアアアーン!ガラガラガラッ!・・キュオオオーン!・・バサアッ!「これが・・魔獣ナスカ!巨きい、

そして美しいわ!」バサアッ!ドバアアアアーッ!「そうよ飛ぶのよ!あなたはいまこそ自由なのよ!」

キィィィーン!「これでよし。さて、急いで日本へ行って秘密部隊と遊びましょ。転送魔法陣!」キュン!

 

「・・はっ!」『エリス?』「・・しまった!よみがえらせた人がいる!」『なにいっ!』「エリス、ナスカは?!」

「・・高原から太平洋を北西・・」「世界地図は!」「そこの壁に貼ってある。」「・・ハワイ経由で日本よ!」

♪ピッ。「NORAD、俺だ。ペルーを飛びたったUFOのデータを。・・そうだ・・よし、ありがとよ。」♪ピッ。

「ナスカの飛行速度はマッハ3。まるで超音速機だぜ。」「となると・・6時間ほどでハワイに到達しますね。」

「よし、「ダンテ」出動。上空待機中の「エル・ドラド」と合体しハワイで迎撃する。」『了解!』ザッ!

ぴくうっ!「ちょっと待て!・・どうやらお客さんのようだ。」「この巨大な魔気は・・あいつね。」「・・うん。」

ガラアッ!「・・魔将ギネビア、きてるな?」『さすがに気づかれちゃったか。』スゥ、フワフワ。「こんばんは。

いい匂いしてるけど、ご相伴させてくれない?ペルーから瞬間移動してきたんで、お腹すいちゃった。」

「相変わらず飄々としたやっちゃな。」「鋼鉄の心臓でもありますな。」「はるばるペルーからご苦労さまね。」

「だってあなたたちと遊ぶのはとても楽しいもの・・?」パシャパシャ!「うむ、これが本物の魔女っ子か。

記念写真を撮っておこう。」「ショウはなにやってんだか。」「こらこらカメコくん、写真撮るときはちゃんと了解を

得てからじゃないとマナーに反するわよ♪」パチン!ボン!「カメラが?!」「おお、これは失礼した。叡智、

予備のカメラを。」「はい社長。」さっ。「というわけで仕切り直しといこう。撮ってよろしいか?」「・・どうぞ。

(あきれてる)」パシャパシャ!「ふむふむ、さすがに本物は絵になるな。そこらのコスプレにはない風格がある。」

「・・なにをやってるんだショウは?」「ここビッOサイト近いですから。」「ああいうのは珍しゅうないんよ。」

「あう~、社長の萌え病がまたはじまったわ。」「魔女っ子は基本だね、たしかに。」「・・理解に苦しみますな。」

 

パシャパシャ!「・・ねえ、そろそろバトりたいんだけど。」「こんなものだろう。撮影協力に感謝する。叡智、

明日写真館へ持っていけ。」「りょーかい。」「これでよい。さて・・」くるっ。「・・始めようか。」『・・?!』

ぞくうっ!(な、なによこの雰囲気?!)「・・マスター、これは?」「・・ショウがこれほどの気を発するとは。」

「召喚!」・・ザザザーッ!オォォォ!「海から半魚人の群れ?!」シュルルル!「それに大ダコですぞ。」

「いかが?今回は海のモンスターでいってみるわ。爆弾でラゴンとスダールに勝てるかしら。」「その必要はない。」

「・・えっ?」「わが社員諸君、言うまでもないが爆殺は御法度だ、いいな?」「わかってます。僕はギルマンを。」

「それじゃ私も。」「海の住人たちを殺さないでくださいね。ちょっと痛めつけて帰っていただくので十分です。」

「ほないっちょいきまひょか。」「おいナンバー6、だいじょうぶなのか?」「まあ見てな。」「けっこう面白いわよ。」

 

シュルシュル。「明日は愛美くんにタコ焼きでも作ってもらおうか。」ビュン!バシーン!『やられた!・・え?』

ズル・・ドサッ!「大ダコの脚が・・真っ二つに?!」「これだけあれば充分だろう。こいつはミヤゲとして

もらっておくゆえ、お引き取り願おうか。クルド流暗殺拳・大砲蹴!」ドン!ドゴオオオーン!・・ザパーン!

「なっ?!スダールの巨体を海まで蹴り飛ばすなんて!」「マイエルダーブラザー直伝の技である。さらばだ。」

 

「いくぞ、かがり!」「ええ、エーちゃん!」ダッ!オオオオ!すっ、ブン!バキィィーン!グワアッ!

「あれはトンファー!」ゴッ!「おっと!」ガキッ!くいっ、スルッ。「うまい!受け流しました!」

「せいっ!」ブン!ドゴン!・・どさっ。オオオ!「よっと。」するっ、ガキッ!「うりゃあっ!」ゴキィッ!

「トンファーを梃子にしての腕ひしぎや!」「それそれそれっ!」ビュンビュンビュン!ドバババアアーン!

 

オオオオ!ゴオッ!「はいっ!」キィン!「爪を受けた?!・・なんか手に持っとる!」キラッ。「・・あれは

手の内です!」ギギギ・・キィン!「鳩尾!」ズドンッ!グオッ!・・どさっ。グオオオ!「天導!」すっ、

ドゴン!ゴオオオーッ!「水月!」ブン!ドゴッ!・・どさっ。「あっという間に二匹も!」「あの小さな棒で!」

「ミゾオチに足指間にテンプル。的確に急所を突いておりますな。」「人間形態だから急所も共通してるのね。」

 

オオオ!「あ、ちょっと待って。」シュルッ。チャパッ。「手拭いをバケツの水に?」ザバーッ。パン!「おっし。」

グワッ!「ほれ。」ブン!バシィィーン!グハッ!「そっちも。」ブン!ビシィッ!ズダダーン!「濡れ手拭いで

あれだけの威力があるんか?!」「吸った水の質量がそのまま攻撃力になり、ヘタな棒より強力なはずです。」

「ほい。」ギュビシィッ!「せーの。」ブン!ズダダダッ!「水の粘着力を利用しての投げとはお見事です。」

 

「あの、できればおとなしく海へ帰っていただいたほうが・・」オオオ!「・・しょうがないですね。では・・」

すっ・・ビクッ!「・・ちょっとだけ痛いですよ。」ザザザザ・・「なんだ?・・海がざわめく。」「きたれ水竜!」

ザザアアアーッ!『海が?!』シュルルル・・「海水が蛇のように!」「渚さんの身体に巻きつきました!」

グワッ!ビシビシイッ!グオオオオ!「爪がはじかれてますぞ!」「この激流の水圧は深度一万m相当、けっして

破れはしません。壱岐水軍流水術・竜吐水!」ドオッ!ザパアアアアーン!オオオオーッ!「海へ強制送還です。」

シュルシュル。きっ!「スダール、あなたの生きるところはここではありません!」ビクウッ!・・シュルシュル。

「そうです、海へお帰りなさい。人の手のとどかぬ深海へ・・」「あらら~、一喝されて戻っちゃうなんて・・

あなた何者?」「壱岐水軍宗家、水野渚。」ぎょっ!「水野家?!ま、まさかあの「ワダツミの巫女」ですか!」

『なにっ!』「ワダツミて・・あの水江龍ワダツミ様かいな!」「はい。精霊界の重鎮にして水を司られる大龍神、

ワダツミ様。大海神である師匠さえ礼を尽くす高貴なお方です。」「なるほど・・ワダツミ様の加護があるなら。」

 

「ほないくで、半魚人はん。」オオオオ!「まずは「紅のO戦者」より、シャム湾の潜水艦!」ザザーッ!オオッ?

バキィィーン!「股の間にスライディングしての延髄蹴りですって?!」「お次は「空手Oカ一代」より三光!」

ターン!くるっ、ガシッ!バゴン!ドコドコン!グオオオッ!「ジャンプでめくって足を上半身にかけつつ

脊髄に頭突きと脾臓に両手突きやて?!」「なんて高度な技を・・はっ?!」グワッ!「うしろだ!」スカッ!

オオッ?!『透過?!』「そして「北Oの拳」より北斗神拳奥義・無想転生・・ほわたあっ!」ドゴオオオーン!

「す・・すごい!マンガの技を正確に再現してます!」ドサドサッ。「うちが大地愛美であるっ!」どおおおん!

 

「はりゃ~、まさか第三部隊にさえこうまでやられるとは・・でも一匹たりとも殺してないのがステキよ♪」

「我が部隊では殺傷行為を御法度にしている。要は戦意を喪失させればそれでよい。」「見かけによらずなかなか

頭は柔らかいようね・・では私の出番かな?」すっ。『むっ。』ザザッ。すっ。『・・社長?』「ここは吾輩が。

みんなは「ダンテ」発進準備を始めろ。」『・・了解。』タタッ。「俺たちもVTOLでいくぜ。」「しかしショウは?」

「心配ない。あいつなら絶対に大丈夫さ。」「ダテに秘密部隊の隊長はつとめてないってことよ。さ、いこいこ。」

「薄情なお仲間ね。あなた一人残して行っちゃったじゃない。」「それは逆だ。吾輩一人で充分ということ。」

「なら試してあげましょう!」シャッ!・・シュッ。「ほう、速い。」「ヘルライザー!」ドン!バシィィィーン!

「・・受け止めた?!」シュゥゥゥ・・「吾輩でなければお星さまになっていたところだ。」ぱっ。タタッ。

「なかなかできるようね、あなたも。ではこれはどう?」タン!「デスシックル!」ビュッ!「おっと。」すっ、

スカッ!「なっ!回避不能のタイミングを!」「飛び回し蹴りとはなかなか高度な技だ。」「まだよ!トマホーク!」

ゴオッ!ガキィッ!「十字受け?!」「もう片方の足でネリチャギとは見事だ・・ほう、白か。」「え?・・あっ!」

ぱっ。「無地・無装飾の純白。男心を最も揺さぶるものだ。」「・・なぜ攻撃してこないの?」「吾輩はこれでも

フェミニスト、ゆえに美女を殴るなど自分が許さん。」「あらお上手。そのポリシー、どこまで貫けるかしら?

フレアフィスト!」ボオンッ!「この魔炎の拳をうけてもね!」ゴオッ!「殴りはせん、が。」フウッ、スカッ!

わしっ!「えっ?!」「投げさせていただく!」ダン!・・バシィィーン!「かはあっ!・・」「引き手を強く

しておいたのでケガはないが、衝撃で子一時間は動けん。」「あぐ・・?!」ひょい、つかつか。ガラッ、どさっ。

「事務所のソファで休め。動けるようになったら料理の残りがあるから食べていけばよい。吾輩は忙しいので

友好を暖めるヒマがないのが残念だ。では失礼。」つかつか・・ぴた。「いまひとつ。後片付けをしておいてくれ。」

 

爆破作業母艦「ダンテ」格納庫。「待たせた、千夏。」「ちょうど準備が整ったとこ。あのお嬢ちゃんは?」

「ハラが減ってはいくさができぬそうだ。」「あいかわらずカワイイ子にはお優しいこって。ゲート開放。」パチン。

ウィィィーン・・「エンジン温度よし。出力20%、発進準備かんりょー。」「「ダンテ」発進せよ!」「あいよ。」

 

「・・ヒーリング!」サァァァ・・「ふう、痛みがおさまった・・ん?」ズズズズ・・がらっ。「「ダンテ」か・・」

ドドドドド!・・「・・今回は負けということにしといたげる。さて・・おっ♪タタキもカツオ飯もたっぷり

残ってるじゃない。ではゴチになりましょうか。」ぱくぱく。「ま、後片付けくらいは最低限の礼儀でしょうね。」

 

相模灘上空8000m。「「エル・ドラド」目視距離。」『こちらキャプテン。レーザーマーカーを出す。』「よろしく。」

ゴォォォ・・ピィィィーッ。「マーカーキャッチ。相対速度合わせ。車庫入れは慎重にと・・」ゴオオ・・ガキン。

『ドッキングアーム捕捉。いつもながらいい腕だ。』「どうも。」♪ピッ。「みなさん、ご搭乗ありがとござんした。」

 

「エル・ドラド」リビング。「それでは現状を説明しよう。ベル。」「NORADの最新情報によると、ナスカは

ハワイまで1000kmの距離まできてるわ。」「出遅れたか・・」「いや、どっちみち間に合わなかったさ。」

『チェイサーをしているSR-71からのリアルタイム映像が入った。』ぱっ。『おおっ!』「これが・・ナスカか!」

「フェイの数倍はあるじゃない!」『翼長200m。まさに空飛ぶ戦艦だ。』「ほう・・こら腕が鳴るで。」ぺきぺき。

「第七艦隊の迎撃がもうすぐ始まるわ。空母「カール・ビンソン」CICからのリアルタイム情報よ。」ぱっ。

 

ヒュィィィーン・・「ビッグマザー、こちらホーネット1。ボギーをレーダーで感知。速度マッハ3。」

『こちらビッグマザー、攻撃を許可する。』「ラジャー。ロックオン、フォックス2!」シュゴオオオーッ!

『ボギー追尾中・・速度上昇!スパローが追いつけない!』「ミサイルをふりきるとは・・接近してたたく!

全機アフターバーナー!」ゴオオオオーッ!『隊長、巨大な飛行機雲が3時方向に。』「あれか。雲を追え!」

キィィーン!「・・ボギー目視・・オマイガー!なんだあれは!」キョオオオーン!『ジーザス・クライスト!

ロック・バードだぜ!』「ビビるな!生き物ならサイドワインダーで倒せる!全機ロックオン!シュート!」

シュゴオオオーッ!・・バサアッ!「なにっ?!この速度で回避行動だと!」『反転してケツにつかれます!』

「亜音速まで落としてブレイク!超音速だと分解するぞ!」キュィィーン!バサバサアッ!キョオオオーン!

『ふりきれない!相手が速すぎ・・』キュオオオン!・・ドカアアーン!「ジミー!・・衝撃波で撃墜だと!」

『ホーネット3、ボギーの後ろをとったぜ!くらえ!』シュゴオオーッ!・・バサアッ!『シット!この距離で

かわすか・・はっ?!』キョオオオーン!『うわあっ!』ドカアアアーン!「マイケル!・・あの巨体で軽々と

インメルマン・ターンをきめるとは!」『こちらビッグマザー。ホーネット退却せよ!相手が悪すぎる!』

「部下をやられてこのままおめおめ引き下がれるか!接近してバルカンをぶちこんでやる!」キィィィーン!

「この鳥ヤロウ!おちろ!」ブオオオオーッ!「カミカゼはジャップの専売特許じゃねえさ。いくぜ!」ゴオッ!

 

『ホーネット1・・沈黙。』『ボギー確認中・・健在です!速度変わらず!』『まもなくハワイに到達します。』

「突破されたか。」「けっこう健闘したけどね。」「・・キャプテン、ひきかえせ。」『ナンバー6?!』「今からでは

間に合わねえ。逆にナスカとすれちがう公算が高い。」「・・そうね。ここは日本に引き返して万全の態勢で

迎え撃つようにすべきだわ。」「ほしたらハワイの住民はどないなるんや!」「着いたころには全ては終わっている。

非情なようだが、これが最善の手だ。」「吾輩も賛成だ。さっそく迎撃準備にかかるぞ。」『はい。』すっ、タタッ。

ぴた。「ナンバー6、ひとつだけ聞く・・大発破をかけてもよいか?」「ショウに任せる。」「任されよう。」タッ。

「あの、大発破って何ですか?」「そのままの意味さ・・ショウたちが本気になれば都市ひとつぶっ飛ばせる。」

「つまりは、本気になったということですな。」「しかし超音速で飛ぶヤツにどないに発破しかけるんや?」

 

オアフ島、ワイキキビーチ。ザザーン・・キィィーン・・「・・なんだ?」「ジェット機?」「な・・なによあれ!」

キョオオオーン!「バケモノ鳥だ!」ゴォォオオオォォォーッ!・・ドバアアアーン!『きゃあああーっ!』

ブワアッ!ズダダダーッ!「車が!」ゴロゴロゴロッ、ガシャアアーン!ガラガラガラッ、ドシャアアアーン!

 

『ホノルルは怪鳥通過の衝撃波で壊滅しました。巻き上げられた車やホテルの倒壊による死者は数百名に達し・・』

「くそっ!好きにさせるしかないのか!」「そうではない。」シャッ。「ショウ?」「作戦ができた。かがり、投影。」

「はい。」ヴン。「名づけて「一網打尽」作戦。決戦の地はここだ。」トン。『・・東京?!』「そう、新宿副都心だ。」

 

東京。・・ゥゥウウウウ~ッ!『都民のみなさん。緊急避難警報が発令されました。自衛隊員および警察官の

指示に従って地下へ避難してください。あわてる必要はありません。おちついて行動してください。』

 

「よし。全都の避難は始まった。」「東京上空を舞台に空中戦か。気にいったで。」「ナスカ接近。あと10分で

東京上空よ。」「よし。ではみんな作戦どおりに。」『はい!』「多少の被害は気にするな。思う存分やってくれ。」

 

キィィィーン・・ゴオオオオーッ!『待っとったで、ナスカ!』バサアッ!テケレリリリ!キョオオオーン!

『ウチをさしおいて空を支配しようたぁ、ええ度胸や。あいさつの仕方をきっちり教えたる!』キィィィーン!

『プラズマ火球三連打や!』カッ!ボボボオオーン!キョオオオーン!バサアッ!・・ドガドガアアーン!

キョオオオーン!バサアッ!キィィィーン!『チキンレースなら負けへんで!』テケレリリリ!バサアッ!

キィィィーン!グワッ!『つかまられるかい、アホウ!』バサアッ!すかっ。ゴオオオッ!ブスブス・・

『図体では負けるがウチの身体は高熱の炎や!空中でヤキトリになりとうなかったら、ついてきいや!』バサッ!

 

『無人戦闘機「フライング・ソバット」発進。』シュババババッ!・・ヒィィィーン!『お、援軍や。』

『こちらキャプテン。ヤツを追い込む。そのまま引っ張ってくれ。』『牽制はまかせたで!』『二番機、爆撃開始。』

カチャ。ヒュルルル・・ドドーン!ガガーン!『三番機、粒子ビーム。出力20%。』シュバアアーッ!ボボボッ!

 

西新宿。「きたぜ。」「よし。全員、作戦にかかる。三井ビル屋上の叡智・かがり。準備はいいか?」『ワイヤーは

しっかり固定しました。』『機雷セッティング完了。12秒で起爆します。』「住友ビル屋上の渚くん・愛美、どうか?」

『こちらも準備OKです。』『合図があればいっきに降ろせるで。』「フェイたちが誘導コースにのったわ。通過まで

あと3、2・・いまよ!」キュイイーン!「降ろせ!」ピッ。バササササッ!「つづいてナスカ、突っ込むわ!」

ゴオッ!バサッ!キョオオオーン!『成功だ!』『うまくひっかかったわ!』バサアッ!バサアッ!「カーボン

ファイバー製の網だ、めったなことではちぎれん。そして!」『ナパーム空雷、時限起爆まで・・いま!』

ドカドカドカーン!キョオオオーン!ゴォォォォ・・ドドオオオオーン!『やりましたわ!』『撃墜やで!』

「あとはまかせる。」「わかった。変神!」パキィィーン!ギュイイーン!・・ドドオオオオーン!『タイタン!』

バサアッ、バサアッ!キョオオオーン!『身体じゅうの羽毛が燃えてしまえばもう空は飛べんな。引導をわたす!』

バサアッ!ゴオッ!『なにっ?!まだ飛ぶ余力が!』ドグワシャアアアーン!『うわあっ!』ガラガラガラ!

わしっ!メリメリ・・『ぐうっ!・・神鉄の鎧が軋むほどの爪の力とは!』『お館さま、いま助けるで!』バサアッ!

『近づくなフェイ・・光あれ!』カッ!『なっ?!』『プロメテウス!でりゃああああーっ!』ドゴオオオオーン!

キョオオオーン!『俺の勝ちだ・・爆発っ!』シュバッ!ボガアアアーン!・・ヒラヒラ・・「ナスカの羽毛か。」

「・・任務完了だな。千夏、全員を回収後、事務所に戻るぞ。」「あいよ。」「後始末は自衛隊がやってくれるさ。」

 

ガラッ。「あれ?社長・・」「どうした?・・ほう、キレイに片づいてるな。」「残った料理もなくなってますね。」

「けっこうあったのに、よう食う魔女はんやな~。」「だがまだ甘いな。サリーくん、とっておきのあれを。」

「はい。」ごそごそ・・ひょい。ぴちぴち。「こんなこともあろうかと、マグロを一本とっておきましたの。」

「これで祝勝会の料理ができる。叡智、次はサシミにしたまえ。」「あ、テリヤキもたのむわ。」「はいはい。」

「愛美ちゃん、今回は本貸すヒマなかったね。」「ふっふっふ、あまいで千夏はん。ウチはぬかりないで。」

 

「エル・ドラド」。ゴォォォ・・「すぐに移動とはね。そんなに急ぐの?」「シリコン・バレーで魔獣が復活した

らしいわ。ついさっき情報が入ってさ。」「次々と現れよんな~。」「マスター、VTOLにこんなものが。」どさっ。

「こりゃまたマンガがいっぱい。」「愛美ちゃんのしわざね。」「愛美はこうやって秘密部隊みんなにマンガを

供給してるのさ。」「おかげでみんなすっかり古本ファンになっちゃったわ。」「政治士官みたいなものですな。」

「・・これで着くまで退屈しなくてすむね。」「俺も読もうか。どれ・・」ひょい。「ほう、「あOたのジョー」か。」

「ほなウチはこっちの「ドOベン」にしよ。」「あたしは「県O地球防衛軍」にしよっと。」「えーと・・ん?」

ひょい。「・・「地上最Oの男 竜」?どんなマンガだろ?」「ああ、それは知ってる。けっこうすごいぞ。」

 

♪あそこに見える摩天楼はなに?

♪あれはネメシスだよ 大きくなってるでしょ

♪どんなビルよりでっかくなって

♪倒れてこわれてまた生える

♪エデンを覆いつくすまで

♪「幻の街」は死の街 生まれて育ってすぐ消える・・

 

****************

 

精霊界・カムイの森。チュンチュン・・「この森はいつ来てもステキね。」「綺羅のいうとおりだ。ここには

永遠の平穏がある・・そしてシカンナも温和な女神だ。それを今回のような騒動に巻き込んでいいのだろうか。」

「大黒天、それについてはじゅうぶんに話しあったはずよ。」「ああ。だがやはり気が進まんのが正直なところだ。」

「それはわかるけど・・とにかくシカンナに会って話すだけ話してみましょう。あなたに同行してもらったのも、

同じヤマト神族ならば話しやすいかと思ったからなの。」「厳密にはちがうのだが・・さて、どこにいるやら。」

「あら、綺羅さまではありませんか。」『ん?』キラキラ・・「おお、シカンナだ。」「大黒さまもごいっしょですか。

おひさしぶりでございます。」「しばらくぶりね、シカンナ。こちらの手にどうぞ。」「失礼いたします。」すとっ。

「このような辺境にわざわざお越しくださるとは。お呼びいただければこちらが精霊宮まで出向きましたのに。」

「ひさびさにこの美しい森も見たかったしね。精霊宮へいつ遊びに来てもいいって言ってるのに、さっぱり来て

くれないんですもの。」「もうしわけございません。私のことで綺羅さまを煩わせるのが心苦しくてついつい。」

「十二神なのに神都には年一の総会でしか来ないしな。」「はあ、どうも都会の空気は苦手でして・・」

「今回の用件だけど・・タイタンたちのことは知ってる?」「はい・・冤罪で堕天の刑にされたと。」さっ・・

「シカンナは神都ではタイタンの神殿に滞在してたしな・・拙者も悪友のアラクネとはよく遊んだものだ。」

「ふふっ、朝までぶっとおしでカラオケやってたよね。」「あのときの綺羅さまの美しい歌声は一生の思い出です。」

「四界一の歌姫といわれるあなたにそういってもらえると嬉しいわ。まあ大黒天の歌を聞いて自信ついたし。」

「そうだろう。拙者の祝福の歌は天下一品!みな感動にうち震えておるぞ!」ひそひそ。(そう思ってるんだから

幸せよね~。)(あれは感動じゃなく悪寒にうち震えてたんですけど・・「視肉が腐る」というのを実感しました。)

「だが・・もはやあの日々は二度と戻らん。拙者はそれが無念だ。」『・・うん。』「ここからが本題よ。実は・・」

「・・まあ、ヴォーダンがそんなことを。」「シカンナ、これは強制ではない。イヤならば無理強いはしない。」

「いえ・・同行します。」「なにっ?!」「意外ね・・てっきり断られると思ってたわ。」「包み隠さずおっしゃって

くださったことがひとつ、そして・・私もいささか思うところがありますので。」「・・あなた、まさか・・」

「はい・・この機会、じゅうぶんに使わさせていただきます。いつか誰かがやっておくべきことですから・・」

「シカンナが・・本気になった。」ぞっ・・「これは十二神で最も恐ろしい神の怒りになりそうね・・」タラ・・

 

第13夜「幻の街」 - 結晶魔獣ネメシス登場 -

 

魔獣教団本部。「三将がそろいもそろってこのザマか!」「面目次第もござらぬ。」『・・(無言)』「大神官さま。

そうはいうけど、あいつらメッチャ強いのよ。いちばん見込みがあるゴールドの機械化軍団でも歯が立たないし。」

「左様。ギネビア殿のモンスター軍団もあっさり一蹴されてしまったでござる。」「もうよい!ならばきゃつらが

どれほどのものか、自らの目で見てみよう。」『大神官さまが?』「ギネビア、次はシリコン・バレーだったな。」

「そうですけど。」「ゴールド、供をせい。」『承知。』ガチャン、ガチャン・・「・・行ってしまったか。」

「ジジイもいっぺん痛い目みれば、あたしらの苦労が少しはわかるかもね。」「まあな。・・ギネビア、そろそろ

見切りのつけどきではござらぬか?」「その意見には賛成だけど、石頭のゴールドがどう動くかよね・・」

 

「エル・ドラド」。『西海岸が視界に入った。』ゴォォォォ・・「あの都市がサンフランシスコか。」「となると、

シリコンバレーは右のほうね・・ん?」キラキラ・・「あそこにえらく光ってるものがあるわね。あれかな?」

「あの辺だが・・何が光ってるんだ?」「ふむ・・どうやら高層ビルのようですぞ。」「高層ビル?・・変ね。

あの街にそんなに目立つビルあったっけ?」『望遠映像だ。』ぱっ。「うわ~・・きれいな高層ビル群ですね。」

「キラキラ輝いてて、まるで水晶のようや。」「・・あんた。」「ああ・・なんてこった。」「どうしたの?」

「・・あそこにあんなビルはないよ。」『えっ?』「エリスのいうとおりだ・・あれは高層ビル群なんかじゃねえ。」

「あれこそ・・魔獣よ。」『なにっ?!』「場所は・・市街地からは少し離れてるか。」「・・あっ!ビルが!」

「なんだ?!・・倒れていく!」「倒壊やて?・・あっ!破片を見い!」「なんと・・成長しておりますぞ!」

「・・あれがネメシス。」『ネメシス?』「成長しては自重で倒れ、その散らばった破片がまた成長する・・」

「それって・・まるで結晶成長じゃないの。」「結晶生命体、いや、結晶そのものだな・・なんて魔獣だ。」

「とにかくVTOLで地上に降りるぞ。第四部隊も来ているはずだ。」「合流予定ポイントはサンノゼ空港よ。」

 

サンノゼ空港。『みなさん!謎の結晶は着実に市街地へ接近しつつあります!落ち着いて避難してください!』

ワアワア!「すごいことになってるな・・」「おっ、あそこにいたぜ。」「みなさん、お待ちしてました。」

「彩、あいさつは省略だ。現状は?」「巨大結晶体は成長と崩壊を繰り返しながら市街地へ前進してます。」

「やけど相手は文字どおり手も足も出ん結晶やろ?そんなら逃げるのは容易やないか。」「いえ・・幽。」

「調査の結果、あの結晶体には恐るべき性質があることがわかりました。蘭。」「はい・・これです。」さっ。

「・・ネズミのオモチャ?」「よくできてますね~。ホンモノみたいです。」コツコツ。「ホンモノです・・

石化してるんです。」『・・なにっ!』「あの結晶の破片に触れたことで、体内のシリコンを奪われたんです。」

「シリコン?・・人間にシリコンがあるの?」「そうか・・シリコンを奪われたことで、皮膚や筋肉の柔らかさと

滑らかさが失われてしまったのね。」「なるほど、角質化というのが正確でしょうな。」「人的被害はどうですか?」

「すでに数十人がやられました・・蘇生は不可能です。」「結晶には素手で絶対に触わらないよう住民にはTVや

ラジオで警告したので、それからは増えてませんが。」「触わると石化してしまうか・・なかなか厄介だな。」

「とにかく前線へ行きましょう。実際にモノを見れば何か案でも浮かぶでしょうね。」「車はこっちです。」

『・・えっ!』ぎくっ!「・・ああ、街さんでしたか。」「いるのすっかり忘れとったわ。」「いつものことです。」

 

ゴゴゴゴゴ・・「これは・・」「すっご~い・・」「まさに結晶の摩天楼街ですね・・」「100mを越えるものが

いくつもありますぞ。」「しかも・・なお成長しとる。」グラ・・「あの大物が倒れます。」ゴオオオオーッ!

ズガッシャアアアーン!グラグラッ!『うわっ!』「この衝撃は・・ものすごい質量だ。」「あ・・あれを!」

ピキピキ・・ズズズズズ。「破片がまた結晶成長してるわ・・」「見てのとおり、ネズミ算式に結晶は増殖します。」

「私の計算によると、現在の成長速度では結晶がシリコンバレーを埋め尽くすまで・・あと一日です。」

「そうなったらもう誰も手がつけられない・・ネメシスは無限に増殖し、北米大陸のみならず全世界を・・」

「なんて恐ろしい魔獣なの・・」「止める術はあらへんのか、リヴィ!」「う~ん・・ネメシスが結晶ならば、

その成長を止めるものがきっとあるはずです。それさえわかれば・・」「結晶のサンプルを採取し、研究室へ

送って分析してもらえば?」「とても間に合いません。答えが見つかるころには、サンフランシスコまで

結晶の街になっているでしょう。」「・・待って。わたし、バベルの図書館で読んだおぼえがあるわ。」『えっ?』

「生物と同じで結晶成長にも何らかの媒質が必要よ。いったいあの巨大な質量はどこから供給されてるの?」

「質量保存の法則ですね。」「考えられるのは・・空気?」「蘭、この辺の大気組成を。」「はい。」ピピピピ・・

「特に変化はありません。変な元素もなし。」「気体合成ではないか・・」「・・ん?!」ダダッ!「幽?」

チョロチョロ・・「小川ですか?」「蘭、この近辺の気象記録を出して。」「気象・・ですか?」ピピピピ・・

「昨日は雨、その前も雨・・」「おかしい、この川幅だと雨が降れば水量はこんなものじゃないはず・・そうか!」

「どういうことだ?」「水ですよ水!ネメシスは土中に染み込んだ水を吸収して成長してるんです!」『ああ!』

「そうか、水ならば。」「しかも川によって水は絶えず供給される・・水源を絶てば成長が止まるかもしれません。」

「それならボクが上流へ行って水を止めてきます。」「リヴィなら可能やな。おし、ウチが上流まで運んだるわ。」

 

『そうはさせんぞ!』はっ!ジャリッ。「うぬらが魔獣の復活を邪魔する秘密部隊とやらか。」「・・何者だ?」

「魔獣教団総帥、魔獣大神官である!」『魔獣大神官!』「機将ゴールド、やつらを上流へ行かせるな。」『承知。』

ガチャッ。「ゴールドまで!」『出でよ機甲大隊!』・・ガガガガガ!「戦車隊です!」「M1エイブラムスですか。」

『米陸軍上層部にも我らの信徒はいる。』「ワシはタイタンとやらを引き受けよう。その他のザコはまかせる。」

「・・ザコですって?」「その言葉、あとで後悔することになるよ。」「死んで後悔していただきましょう。」

 

ギュラギュラギュラ!「人だろうが戦車だろうが同じことよ。影・・」ズズズズ・・キュィィィーン、ドオンッ!

ドカーン!『なにっ?!味方戦車を撃った!』【うふふふふ。この戦車はいただいたわ。はい次!】ドオンッ!

『三号車を倒せ!』ドドドオンッ!ドカアアーン!【本体はともかく、影は壊せないわ。】ズズズズ・・シュッ。

ドオンッ!ドカーン!『なにっ?!今度は五号車だと!』【影のあるもの全て、私の思うがままよ。】ドオンッ!

 

「いったいどうなってるんだ?!」「幽は影使いですから。」『・・なにっ?!』ズバドシュザキィッ!・・

「い・・いつの間に・・?」がくっ。「ちゃんとハッチ開けて入ってきましたよ。「気づかなかった」だけです。」

パチン。「さて、次の戦車に行こうかね・・」・・ザキザキザキィッ!・・「はいお次。楽な仕事ですね。」

 

「電脳マント「ファサーデ」七つの力、その四!」バサアッ!『飛んだ!』「フライ・ウイング!」ゴオオーッ!

スタッ。「その五、ウェポン・ベイ!」バサアッ!『マントの裏に無数の火器弾薬が!』「磁力地雷!」ゴン!

バサアッ!・・すたっ。「点火!」パチン!ドカアアアーン!「ファサーデは一個師団の戦闘力に匹敵します。」

 

「愛染!」ヴォン!ズパアアアーン!『剣で戦車を真っ二つに?・・面白い!』ダン!・・ガシャアッ!

「ほう、御大将ですか。」『機将ゴールド、お相手いたす。金将・銀将!』シャリン。「甲賀組若頭・月影の彩、

受けてたちましょう。」すっ。『むう・・柳生新陰流、影の太刀か。』すっ。「二天一流、波切りの太刀ですか。」

『・・はあっ!』ビュビュン!「はっ!」キキィン!『牛鬼角!』シャッ!「よっと。」すっ、スカスカッ!

『ほう、二刀の間でかわすか。見事な見切りだが、いつまでもつかな?鰐鮫顎!』ビュッ!「上段と下段か。」

タン!くるっ、スカッ!『バク転でかわすとは!』タン!「流星突!」ビュッ!『なんの!双刃壁!』ジャギィッ!

『狼牙打!』シャッ!くいっ、スカッ!「おっとあぶない。」『紙一重で突きを見切るとは!』キィン!・・スタッ。

『これだから秘密部隊は面白い。王将!』ガキン!「本気になりましたか。」チャッ。『はあああーっ!』ダダッ!

 

「さて神とやらの力、見せてもらおうか。」「腕に覚えがあるらしいな。」「ほなら!」シャッ!「フェイ?」

「その腕みせてもらおうかい!」ガキガキイッ!「ファイアークローや!」ゴオッ!「ヌルイわ!」ガギイッ!

「杖で止めた?!」「ふん!」バキィィーン!「くうっ!」くるっ、ザザザーッ!「ならプラズマ火炎や!」

ゴオオオーッ!「防御!」キン!ズババーッ!「結界やて?!」「打!」ドン!「おっとお!」タン!ドゴゴン!

「杖から衝撃波か。」「このジジイ、けっこーやるで・・」「フェイ、下がってろ。」ザッ。「お館さま?・・へえ。」

「さすがに魔獣大神官と名乗るだけあるな。」「自分で確かめてみることだ。」ザッ・・ダッ!「はあっ!」ゴッ!

「腕を砕いてやるわ!」ビュッ!パシッ!「なにっ?!・・受け止めただと!」「これが狙いさ。むん!」ギシッ!

「・・なにっ?!折れない!」「バカな!封印されてるとはいえ、あんな細木くらい簡単に折れるはずよ!」

「ふふふ・・折れはせぬよ。むん!」ドン!「くっ!」ビュッ!「ほれほれほれっ!」ドドドドドッ!

「このくらい!」ビュビュビュッ!「うまい!杖の内径にとびこみました!」「もらった!」ゴッ!「そうかな?」

キン!「杖が剣に?!」シュバッ!「はいっ!」パシーン!「なっ?!真剣白刃取りだと!」「うりゃあっ!」

グン!「ぬおっ!」ブワアッ!バシィィーン!「ぐうっ!」「やったわ!」「神闘技・奥義「ムサイ」ですな。」

「ふう・・なにっ?!この剣はまさか!」キラッ。「スキあり!」パン!シュバッ!「おっと!」クルッ、

ザザザーッ!ドロ・・「一郎さん!」「かすっただけだ。」【さすがはタイタン。よくぞ必殺の一撃をかわした。】

「・・なぜキサマがここにいる!ゴーメンガースト!」『ええっ!』「まさか・・十二神の剣神ゴーメンガースト?!」

「ほうか・・そのジジイがレンフィールド(操剣士)なら強いのも納得や。」「ちがうな。ワシは自らの意思で

ゴーメンガースト様のお手伝いをさせていただいておる。」「キサマ何をたくらんで魔獣復活などということを!」

【・・もうすぐわかる。イヤでもな。】「エデンの掟に反すればいかに十二神といえども重罪よ。」【その掟はもはや

無意味だ。】「・・どういうことですか?」【・・またすぐに会うことになる。さらばだ。】ザッ。シュバババッ!

フッ・・「・・逃げられたか。」「ゴーメンガーストはアスガルド神族よ。となるとやはりアイツが一枚・・」

「ああ・・ヴォーダンが裏で糸を引いている公算が高い。」「あのふたりは昔っからつるんどったしな。あやつが

十二神に選ばれたんも、ヴォーダンのヒキが大きかったともっぱらのウワサやで。」「ラグナロク戦役では精霊軍

一個中隊があの方ひとりに全滅させられたものです。」「神さまもいろいろタイヘンそうだな。」「・・そうだね。」

 

キィン!「親玉は逃げたようですが、どうします?」『関係ない。もとよりアテになどしておらん。自分は己の力

しか信じておらん。それに・・パージ!』「むっ?」パパパン!ガチャガチャン!「鎧を外した?・・ほう。」

バサアッ!キラキラ・・「・・あなたとは本当の実力で戦いたいから。」「女性とは聞いてましたが・・!」キィン!

「女だからとあまくみないことね。それっ!」ゴオッ!キキキィン!「剣のスピードが上がりましたか・・だが。」

すっ。「・・スキだらけ?もらう!」ビュオン!「それを待ってました。」すっ、スカッ!「なっ?!半歩ステップ

しただけで見切った!」「はいっ!」ヒュン!パシン!「くうっ!」クルクルッ、ドスッ。「手が・・」ジィーン・・

「峰打ちなので痺れただけです・・戻れ、愛染。」シュッ・・フッ。「これで終わりにしましょう。」くるっ。

「待って。・・あなたの名は?」「・・忍びに名などありませんが、いちおう「月影の彩」と呼ばれてます。」

「月影の・・彩・・」「できればもう二度と戦いたくないです・・あなたには鎧よりドレスが似合ってますよ。」

「・・あっ、私の名は」「シーッ。・・別の格好で別の所で会うときまで、楽しみはとっておきます。」シュッ・・

「あ・・」ひゅぅぅぅ・・「彩・・初めて私の胸に火を付けた方・・もう一度会いたい・・ちがった形で。」

 

すぱあああーん!「あいた!・・幽、なにをするんです。」「もう!ちょっといい女みるとすぐコナかけるんだから。

悪いとこばっかし伊賀組の若頭といっしょね!」「まあどちらも黙ってても女性が放っておきませんけどね。」

「街、それはそれ、これはこれよ!」「でも若頭・・もとい、隊長はなぜか内輪にはコナかけないんですよね。

そこんとこが幽さんがカッカくる原因なんですよ。」「だって幽と蘭は家族みたいなものですから。さすがに

伊賀若頭の節操の無さにはかないませんよ。」「国内はもちろん世界各国に愛人がいて、それに飽き足らず

小さいころからいっしょに育ったくノ一にまで手を付けた方ですからね。」「もうすぐ結婚するそうですよ。」

「血のつながらない兄妹ってのはロマンよね~。」「でもあれは確実に尻に敷かれますね。」『うんうん。』

「幽もちゃんと尻に敷いとかないと、愛人28号くらいまでいっちゃうよ。」「な、なにいってんのよ!」あせっ。

「そうですね~、もう12号くらいまでいますからもうちょっとですか。」にやっ。「こ、この~・・(-_-メ」

 

「そっちは終わったか?」「なんとか。大神官とやら、お知り合いですか?」「かくかくしかじかということよ。」

「十二神ですか・・たしか綺羅という方もおられるとか。」「リヴィ、読めるか?」「う~ん・・考えられるのは、

ヴォーダンがマスターを憎悪している点かと。」「・・ヴォーダンが俺を?」「一郎さん気づいてなかったの?」

「はた目からはロコツにわかっとったで。」「そうなのか?・・たしかにヴォーダンはなぜか俺につっかかることが

多かったよな。」「それにまったく気づかないことさえ憎悪の対象だったようですな。」「神格ならぬ仁格の差ですよ。

ヴォーダンに仁はありません。あるのは己のみ。」「自分の都合のええように大義名分化するのがうまかったな~。」

「おかげで十二神筆頭なのにほとんどのメンバーに嫌われるか、弄ばれるかのどちらかだったわよね。」「さっきの

ゴーメンガーストくらいですね、ヴォーダンのシンパは。」「それで大半の皆様が御主人様の方に寄っていくのが

憎悪の根本にあるかと。」「ひがみ・・ですか。」「神さまってけっこう人間くさいのね。」「ギリシャや北欧神話の

神々も似たようなものです。」「霊的存在だかなんだかしらんが、やってることはどこも変わらんということさ。」

 

ピキピキピキ!「さて、ネメシスを止めにかかるか。」「触れると石にされますので気をつけてください。」

「リヴィ、たのむ。」「はい。たあっ!」ザパーン!・・ズゴゴゴゴッ、ゴバアアアーッ!『おおっ!』

「リヴィくんが巨大な亀に!」『回転ジェット!』シュボオオオーッ!・・シャルルルルッ!「飛んだ?!」

『上流へ行きます。』「たのむぞ・・あっ!」グワアアアッ!『なっ?!巨大結晶が!』ガシャアアアーン!

『うわあああーっ!』ヒュルルル・・ドドーン!「リヴィ!」「こいつ・・やはり意思を持ってる!リヴィを

阻止するように急激に成長したわ!」ゴゴゴゴゴ!「結晶成長が!」「・・加速しとる。敵と認識したんや!」

グワアアアーッ!「こちらに倒れてきますぞ!」「大きすぎて回避不能です!」「・・変神!」ピキィィーン!

グワシイッ!「はっ!・・タイタン!」「巨大結晶を支えてくれました!」グググ・・『・・うおりゃああああーっ!』

ドン!・・ガシャアアアーン!『ふうっ。』「ご主人さま、手は?!」『ガントレットがあるから平気だ。・・むっ!』

ゴゴゴゴゴ!「包囲された?!」『意思を持つ結晶・・まさに魔獣だな。』「一斉に倒壊して押しつぶす気ね。」

『・・アラクネ、あの手を。』「わかった。パワーストリング!」シュバババッ!ビタビタビタッ。「えーと、

あっちとこっちであーでこーで・・うん、これでよし。ねらいはこの結晶よ!」『いくぞ!ガントレット!』

ジャキッ!『エコークラッシュ!おりゃあああーっ!』ドゴオオオオーン!グラグラッ!・・グオオオオーッ!

「あっ、結晶が!」「つながれた糸で連鎖的に倒壊していきます!」ドドドドオオオオーン!・・パラパラ・・

「バッチリ計算どおり、外側に倒せたわ。」『ああ。だが・・』ピキピキピキ・・「また成長が!」「これじゃいくら

やっても増殖させるだけね。」『水を止めるのも一時凌ぎに過ぎない。雨でも降れば元の木阿弥だ。』「ちっ!」

 

『ひとつ試してみたい手があります。』ズズン!『リヴィ?無事だったか。』『海ぎわまではじき飛ばされましたが、

おかげで打開策が見つかりました。シーブラスト!』ブシャアアアーッ!「水をかけるの?!」「そら逆効果や。」

『実はそうでもないんですよ・・ほら。』『えっ?』ピキピキ・・ピタッ。「結晶成長が・・止まった?!」

『思ったとおりです。海水に浸かったネメシスの破片が成長しないのを見てひらめいたんです。』ビキビキ・・

「結晶が・・変質?」「解析してみます。センサーアイ。」ピピピピ・・「結晶構造に変化が!無数の水和基が

塩化ナトリウムと結合し、次々と不活性化してます!」「ということは。」「・・もう結晶は成長できない。

ネメシスは死滅するよ。」ビキビキ・・シーン・・「完全にくたばったようね。」『結晶は海へ捨てれば二度と復活

できまい。イエティ、手伝ってくれ。』「かしこまりました。アラクネ殿、細片を粘糸で集めてくださいませ。」

 

魔獣教団本部。「戻ったぞ。」「・・お待ち申しておった。」ボオッ。「ゴールドはどうしたの?」ふよふよ。

「殿を努めておる。」「連中の印象をお聞きしたい。」「・・汝らの言い分はもっとも。だが倒せぬ相手ではない。」

「そのとおりよ。」「砂風、ナポリへ飛べ。ベスビオ火山に眠る魔獣を復活させるのだ・・火山魔獣デロスをな。」

 

その夜、サンフランシスコ・フィッシャーマンズ・ワーフ。ガヤガヤ・・「この界隈はシーフード専門街だ。」

「うわ~、レストランはもちろん屋台もいっぱいありますね。」「ここでは屋台で買い食いするのが通なんですよ。」

「えーと、クラムチャウダーとゆでガニください。」「このロブスターはいくらだ?」「あっ、生ガキみっけ。

リヴィ、鮮度見てくれへん?」「うん、だいじょうぶですよ。」くんくん。「ここのガンボスープおいしそ~。」

ガチャガチャ。「みなさん料理はそろいましたか?」「足りなかったらまた買ってきますからだいじょうぶです。」

バリバリ。「・・何の音?」ぎょっ!「エリス・・カニを殻ごと食べてるの?!」「・・ソフトシェルクラブだよ。」

「ああ、脱皮したてのカニね。殻が柔らかいから丸ごと食べれるのよ。」くりくり。「そういうベルさんのは・・!」

「うわ・・山盛りの茹でザリガニや。」「クセあるけどハマるのよね、これが。」「・・」ちきちき。「幽さんでも

やっぱりカニ食う時は静かになるんですね。」「身ほじくるのにけっこう熱中するからね・・このこのこのっ!」

「一郎さんのロブスター、でかいわね~。」「一番でかいのを買ってきた。よいしょ。」バリッ!「お~、豪快。」

「アラクネのはカラアゲか?」「なんか「アリガトウ」とかいう魚らしいわ。でもこれ、鳥カラなのかな?」

「・・それアリゲーターだよ。」『なにいっ?!』「アリゲーターって・・あのワニの?!」「うん・・アメリカでは

よく食べられてるよ。」「へぇ~、どうりで味が前に食べた恐竜に似てると思ったわ。」ぎょっ!「アラクネさん、

恐竜って?」「今の名称で言うなら、プテラノドンとかラムフォリンクスとかね。でも一番うまかったのは、

やっぱ肉食のやつね。草食のは肉が青くさくて。」「アノマロカリスは見た目グロいが、けっこううまかったぞ。」

『えっ?』「ナンバー6、それは?」「いえいえ、ハルシゲニアのコクにはかなわないわ。」「ベルさんも?」

「・・でもうまいからって食べ尽くしちゃいけないね。」「残しといたさ、少しはな。」「・・会話が見えない?」

 

♪赤い火を噴くあの山へ 登ろう 登ろう

♪そこはデロスの口の中 あぶない あぶない

♪ナポリを襲う火砕流 ポンペイふたたび

♪噴火口が近づく デロスの口が

♪行こう行こう火の山へ 魔獣デロス倒すため

♪タイタン タイタン タイタン タイタン

♪あそこが紅蓮の決死線

 

 

 

 




天界・精霊界大使館、大広間。ザワザワ・・「それでは十二神衆緊急会議を始める。まずは出席だ。」
「精霊女王・綺羅、おりますわ。」「軍神アーレス、ここに。」「戦女神ヴァジュラ三姉妹、おります。」
「福の神・大黒天、まかりこした。」「・・機神ミカヅチ、これに。」「工神フェルメールはここだよ。」
「冥界皇子アルカディア、いるぞ。」「大海神ボスタングである。」「猛獣公爵レオパルドン、これに!」
「シカンナカムイ、います。」「剣神ゴーメンガーストはエデンで準備中なので不在だ。そして我、ヴォーダン。」
「では聞こう。ヴォーダン、デウスに知られぬようここに集めたのはわかる。だが、そうまでして我らに見せたい
ものがあるというのか?」「いかにもボスタング殿。フェルメール、用意は?」「空間工房への道は造ってあるよ。」
パチン。シュボッ!『これは?』「諸君、面白いものをお目にかけよう。ついてきてくれたまえ。」カツカツ・・

『おお!』ゴォォォォ・・「どうかな?あたしの傑作、飛空大神殿アウターヘヴン。」「このようなものを極秘に
建造していたとは・・」「さすがフェルメールってとこかしら。(シャクティ)」「・・さしもの俺もはじめて見る。」
「ほう・・これが拠点となるわけか。」「空間工法を使ってるから、中はみんなの神殿を合わせたよりも広いよ。」
「それでも魔界軍の大魔艦パンデモニウムに匹敵する規模だな。」「うちの精霊大戦艦オベロンも顔負けですわ。」
「う~ん・・自然に住む私にはちょっと不便かも。」「そう思ってシカンナの神殿エリアは森を造っておいたよ。」
「それは助かります。」「では中で作戦の打ち合せをしよう。ここなら何を話そうが安全だ。」「ご苦労なことね。」

アウターヘブン内、大会議室。「・・以上が計画の原案だ。意見を。」「確認する。デウス様には傷ひとつつけない、
そうだな?」「そういう方針だ。アーレスの危惧もわかるが、無血占領することが第一義だ。」「そうですわね。
もし流血の事態になるようなら精霊界も黙認できなくなりますわ。」「冥界は中立だが、そういう事態になると
叔父貴も腰を上げざるをえまい。」「魔界も事態の収拾に介入することになるだろう。」「そうなれば天界は三界の
暫定統治という形になるね。でもその暫定がいつまで続くやら。(ラクシュミー)」「ありうるケースとして、
天界はいずれかの属領になるか、分割統治されるかですね。」「まるでエデンの敗戦国だな・・それも面白い。」
「だがそうなると我らの目的である天界の清浄化とはほど遠い結果となる。やはり我ら十二神衆の下での統治が
望ましい。」「ヴォーダンの、でしょ?」くすっ。「綺羅!」「ひとりごとですわ。」「・・確認しておくが、我らが
エデンに降りている間は三界は事態を静観し、天界は合同政権で暫定管理されるという約定はよろしいのか?」
「はい。精霊界からはワダツミ侯を派遣いたしますわ。」ザワッ。「大竜神の・・」「精霊府の前首相の・・」
「あの方なら信頼できますわね。(パールヴァティ)」「うむ、きゃつならば全権を委任してもよかろう。」
「魔界からはヴェール妃殿下が来られる。」『おお・・』「姉上ならば冥王の叔父貴にも顔がきく。適任だ。」
「アルカディア、ハデス様のほうは?」「さっきも言ったが、中立の立場は変えん。事態が激変するまで静観だ。」
「助かる。では各界はエデンの件が片付くまで事態を静観ということでよろしいか?」「魔界はそれでかまわん。」
「精霊界も異存ありませんわ。」キラッ。「・・?」(綺羅、何を考えておる?)(ボスタング様と同じことですわ。)

「次の議題に移ろう。・・「楽園復興」計画について。」「計画の主旨はわかる。増えすぎた人類を「適当な」まで
削減し、再び我らの統治に戻し、楽園を再興する。具体的手段として魔獣を人類削減の道具として使うとあるが、
使役することなど可能なのか?」「使役するのではない。好きに暴れさせ、頃合いをみて始末すればそれでよい。」
「私たちはそのお膳立てをすればいいわけですね。(パールヴァティ)」「それこそ始末はタイタンたちに任せれば
よいのではないか?そのためにおるのじゃろ。」「さほど被害が出ないうちに倒されては困る。ゆえに連中には
手出しをさせねばよい。」「具体的には・・抹殺するということかしら?」「それは難しいぞ。知ってのとおり
タイタンと四神獣の戦闘力はすさまじい。我ら総掛かりなら倒せぬこともないだろうが、およそ半数は返り討ちに
あうぞ。」「それ以前に敵対しようとする者はいるのか?我らの大半は彼らと昵懇の仲だろうに。」「大黒、それを
言っては始まらん・・私は大義のためなら情は捨てる。」オオッ、ザワザワ・・「一番の親友だったアーレスが
そこまでいうか・・」「私もアーレス様に賛成です。」『シカンナ?』「立ちはだかる者は・・友でも容赦しません。」
シーン・・「・・タイタンたちの処置は実際の出方をみて決めよう。それでよいか、皆の衆。」『・・意義なし。』

第14夜「紅蓮の決死線」- 火山魔獣デロス登場 -

イタリア・ナポリ。『♪サンタールチ~ア!』「今回は正統派やな。」ずるる~っ!「フェイ殿、パスタを音を
立ててすするのはマナーが悪いですぞ。」「辺境ではこれが正統派なんや。それに・・」ずるるる~っ!
「お館さまやナンバー6もそうやっとるで。」「御主人様がそのようなマナーではしめしがつきませんぞ。」
「大黒が年末にふるまってくれた年越しそばはこれでよかったはずだが。」「あれはヤマト神族固有のものです。
地域によってマナーは異なるのですぞ。ほれ、アラクネ殿なぞ口のまわり真っ黒ですぞ。」「いや~、やっぱ
本場のイカスミスパはおいしいわ。「嵐の海」産クラーケンのはどうも大味なのよね。」「「忘却の海」産のイカは
けっこう味が深いですよ。」「あっちは高級食材だもの。一郎さんの収入ではちょっと高嶺の花だったのよね。」
「悪かったな、自由神で。」「やはり天界政庁勤めほどの安定収入がありませんとな。」「俺がアーレスみたく
書類と格闘してる姿、想像できるか?」「無理ね。」「三日もたんわ。」「う"~ん・・」「基本的に風来坊ですからな。」
「えらい言われようだな。」「あんたもヒトのこた言えないわよ。」「・・宮仕えが無理な人たちばっかりだね。」
「ところで第六が合流するという話だが。」「ナポリには着いてるはずなんだが・・ん?!」「どうした?」
「・・ファムからの指向性テレパシー通話だ。・・結希が邪悪な気配をベスビオ火山方面に感じたので、直接
そちらへ行ってるそうだ。」はっ。くるっ。『エリス?』「・・まだ完全には覚醒してない。それを感知するなんて
結希さんの受動テレパス能力はすごいね。」「それじゃデロスはまだ山の下なのね。行っても見つかるのかしら?」

ベスビオ火山、火口。ゴォォォ・・「・・感じる。ゆっくり動いてる。」『そろそろ覚醒が近いっちゅーことやね。』
『結希はん、いつ目覚めるかわからへん?』「・・もうじき。明日か一時間後かはわからないけど。」「あらあら、
だったらこんなとこにいたら、いの一番に襲われますわ。」「・・いったんナポリへ降りるのが賢明かも。」
『ううっ、ここすごくイヤ。邪悪な波動が下からやってきてるよ。それに・・』ちらっ。『・・あの廃墟から
怨念と呪詛の声が聞える・・痛い、苦しい、助けて・・この苦しみを他のやつらにもわからせてやるって・・』
「ポンペイね・・」「あの街が滅んだのもデロスのせいかしら?」「・・可能性は高い。そしてその怨念がデロスの
覚醒の助力になるかもしれない。」「これがいわゆる悪循環というものですね。」『シーラ、不謹慎!』「あらあら。」

ポンペイ。・・シャッ。「なるほど・・大神官の思惑ももっともでござる。さて始めるか。忍群!」シャシャッ!
「手はずどおりに霊波受信プラグを魔法陣形状に打ち込め。散!」シュババババッ!「中心には火山に向けて
送信アンテナを設置せよ。」カチャカチャ。シュタッ。「頭領、準備完了。」「うむ。増幅器を起動せよ。」パチッ。
ピィィィ・・「射線上に入るな。増幅霊波で狂死するぞ。送信開始。」シュバッ!「あとは待つだけでござる。」

ナポリ市街地。「・・というわけです。」「ポンペイか。覚醒の点火栓にはもってこいだな。」「デロスが目覚めると
やっぱ大噴火が起きるのかしら。」『魅霊、現在の気象状況でのシミュレーションできっか?』「やってみるわ。
現在の風向と風速・・独立峰による山岳風・・まずい。」『なに?』「もし火砕流が起きた場合、ナポリ直撃です。」
「俺がもし魔獣教団なら、このタイミングを逃がしはしないな・・」「ポンペイへ行ってみるか?車で30分だが。」
「・・はっ!」ガタッ!『エリス?!』「死者の呪いが・・デロスを起こした!」グラッ!ドドドドド!
「地震です!」ズズゥゥゥーン!・・「あの音!」「噴火や!」ダダダダッ!「・・ベスビオ火山が!」ゴォォォ・・
ドドオオーン!「やはり・・始まった!」「まだ初期噴火や。大噴火までは時間があるで。ウチは火山地帯に
育ったきん、火山のクセはようわかる。」「余裕は?」「もって半日やな。」♪ピッ。「・・市長か?ただちにナポリ
全市民を避難させろ。陸路はだめだ、海に逃がせ。・・ここは港町だろ、ありったけの船をかき集めろ!
足りなきゃ近隣の町からも呼び寄せろ。必要なら海軍に近辺の艦船を向かわせる。タイムリミットは半日だ。」

ワアワア!『市民のみなさん、ただちに船で避難してください!港湾員の指示に従い、乗りすぎないように!
船はじゅうぶんにあります!落ち着いて行動してください!』「大パニックだな・・」「まず半分逃げられれば
オンの字だろう。」「あと半数は?」「運を天にまかせるしかないか。」「訂正だ・・俺たち次第だろ。」「まあな。」
「あんた、ビッグバードの映像がきたわ。」バサッ。「どれ。・・これか。」トン。『火口の下に何か巨大なものが
おりまんな。』『これが魔獣デロスなのねん?』「こいつが噴火の元凶ね・・」「おおよそ200mはありますわね。」
「・・さて、どうやって地下からひっぱりだすかだな。」『なにか好きなもので釣るとええかもな。』「好きなもの?」
『デロスはマグマを食糧にして生きとる、ということはそれ以上のエネルギーになら食いつく可能性はあんな。』
「しかしマグマを超えるエネルギー源となると難しいぞ。」「ありますよ。」「シーラさん?」「ここに、ほら。」ぽん。
『・・結希か!』「たしかに結希のサイキックパワーは核兵器をも凌駕するパワーだ。しかしな・・」『結希はんを
オトリにするのは反対やで!』『危険すぎるて!』「だいいちパワーを開放したが最後、ナポリどころかイタリア
半島自体が真っ二つになるかも!」「・・そうなったら噴火どころのさわぎじゃない。僕もこの案は反対だ。」
「・・」【あたしも反対。けどその理由は・・結希さんをオトリにすること自体に。】はっ。「・・ナナちゃん。」
【みんなひどいよ。どうして結希さんを気づかってあげないの?そんなに結希さんのパワーがこわいの!】
『・・・・』「・・たしかに僕たちが間違ってた。結希さんは兵器なんかじゃない、人間だということをつい
失念していた。」『そやな・・』『どうしてウチらってこうなんでしょ・・』「全ては結希くんの力ゆえだな。」
「・・一郎さん。」「もうひとつ間違ってることがある。・・なぜ暴走するときめつける?結希くんのパワーは
結希くん自身の力だ。それを制御できないわけがない。」「できてたら誰もこんな心配はしませんわ。」『シーラ!』
「いえ・・シーラさんのいうとおり、私は自分を制御することさえできない・・」「・・それこそ間違いよ。」
「アラクネ?」「できないと思ってあきらめたらそれ以上の進歩はないわ。あなた、やってみようという気に
なったことはあるの?」「・・」「やっぱりね・・わたしにはシーラの冷徹な態度がよく理解できるわ。それは
あなたの脆弱な心に対するいらだちよ。自分でできることをやってないあなたには人に助けてもらう資格はない。
ギリギリまでがんばって、それでダメなときにはじめて仲間の助けというものの価値があるのよ。」「でも・・」
『何もする必要はござらぬ、いや、させぬ。』はっ!「その声は!」シャシャシャッ!ザザッ!「忍者軍団?!」
「魔獣教団か!」「無形の砂風、参上いたした。」ザン。「やはりキサマの仕業か、砂風!」「襲!」ザザザザッ!

『いくでニーコ!』『摩擦消去!』キン!つるっ!「なにっ?!地面がすべる!」シャアアアアーッ!ボゴアッ!
「ぐわっ!」『壁に人型の穴はさすがにあきまへんな。』『そらマンガやで、ファム。』「なんの!」シャアッ!
『あら、スケートもできるんやな。』「そこのウサギか!」シャッ!つるっ。「なにっ?!刃がすべった!」
『きっちり垂直に斬らんとすべりまっせ。』『ついでやからスッポンポンになってもらいまひょ。』キン。パラパラ。
「・・なあっ!服が!」『服もほとんど糸と布と肌の摩擦でできとるんやで。』『なんや、意外とちこまいな~。』

「手裏剣だ!」シャシャッ!「サイコバースト!」カッ!シュババババッ!・・「手裏剣が・・消滅した?!」
ドンッ!「なあっ!・・」ブシャアアアアッ!「これで三人・・はっ!」ババッ!「もらった!」ビュッ!
キィン!「・・レナ!」「・・油断大敵ですよ結希さん。はあっ!」ズバアッ!「火薬玉だ!」ヒュヒュッ!
「ナナ!」【まかして。天唾!】フッ・・ヒュヒュッ!「なにいっ!戻ってきた!」ドドドオオオーン!
『ぎゃあっ!』【自業自得よ、あっかんべー。】「・・ありがとう。」「それは敵をみんな撃退してからです・・」

『せいせいせいっ!』ビュビュビュッ!「あらららら♪」スカカカカッ!「な・・なんて女だ。これだけの人数で
かかって一撃も当らぬとは!」「そろそろ反撃しますわよ。」「囲んで一斉に突け!」ザザザッ。「輪斬陣!」ビュッ!
「おバカさんですわね♪」くるっ。スカカッ!ドスドスドスッ!『同士討ち・・バカな!』ドサドサドサッ。
「天鈿流古式神楽、華陵頻の舞ですわ。」「手裏剣だ!」シュバババッ!「同じことですわ。こちらへ。」ヒュルッ、
ヒュルルル・・「・・バカな?!まるで衛星のように周回している!」「これが天気輪の舞。それでは。」タッ!
「突っ込んでくるだと?迎撃!」ビュッ!パキィィーン!「・・刀が折れた?!ぐわっ!」ズバババァァーン!
「なんと!手裏剣の衛星で真っ二つにされた!」「この輪は攻防一体。それにこういうことも。あちらへ。」
ビュバアッ!ドスドスドスッ!『ぐはあっ!・・』「十発十中。ちゃんとみんな眉間にいきましたわね。」

「風よ!」シャン!ビュオオオオーッ!「なんだ?!いきなり強風が!」「ドラゴン!カッタアアアアーッ!」
シュバババッ!ズババババーッ!『ぐわあああっ!』「無数の真空刃か!火薬玉でふきとばせ!」ビュビュッ!
「あまい!タイガアアアーッ!バズーカッ!」ドオンッ!『ぶわっ!・・』ドゴオオオオーン!「爆風なみの
風圧で爆発ごとはじき返した!」「トリスタンリング!」バリバリバリッ!「ゴオオッド!サンダアアアーッ!」
ガラピシャアアアーン!『うぎゃあああっ!』「雷撃!・・なんというヤツ!」「私こそ空中戦艦・魅霊!」

「これは!・・さすが秘密部隊というべきか。」「残るは砂風さんだけですわ。」「さて・・誰があたる?」
『ほなウチらにまかしてんか。』『たまには隊長らしとこ見せとかんとな。』とてとて。「ウサギ?・・酔狂か!」
ザザザザ!「砂の弾丸でハチの巣になれ!砂嵐!」ビュオオオオーッ!『シールドや。』キン。パシパシパシッ!
「障壁?!・・なるほど、そういうことでござるか。」『ウサギや思て油断すっと痛い目みまっせ。』『そやそや。』
「ならば本気で当たらせていただく。ビッグ砂風!」ゴオオオオーッ!ドドーン!『あらら、巨大化しよった。』
『踏み潰してくれる!』ゴオッ!『おっと!』ドドーン!『さてどう拙者を倒す?』『そらカンタンやわ。』
『摩擦消去や!』キン!・・ザザアアアアーッ!『なにっ?!身体が・・崩れる!』『砂同士の摩擦を消したった。』
『むうっ!・・維持できぬ!』ザザアアアッ!・・「くっ・・この術が破られるとは。」『摩擦はこわいんやで。』
『ついでにあんさんも崩したろ。』キン!ザザアアッ!「ぬおっ!・・拙者の身体までも!・・」ザザザザ・・
シーン・・『崩れただけや、死んではおりまへん。』『顔洗って出直してきいや。』ザ・・ザザザザザ・・
『・・ふ~やれやれ、退いてくれよった。』『正直、これ以上の手ぇあらへんかったから助かったわ。』
「摩擦制御能力か・・使い方ではすごいものになるな。」「その気になれば都市ひとつ砂漠にもできますね・・」

ドドドオオオオーン!はっ!「ベスビオ火山が!」「もう大噴火が始まったんか!」ゴオオオ!「火砕流です!
しかもこれは予想よりも大規模な!」「火砕流は数百キロの猛スピードで走る!とても逃げられんで!」
キャアアアアーッ!「まだ市民の大半が避難できてません!」「このままじゃ大惨事だ!」「・・結希さん!」
「シーラ・・さん?」「この惨劇を食い止められるのはあなただけですわ!」「私が・・?」「いまこそその力で
奇跡を起こしてください!あなたならできます!さもないと私たちも全員死にます!」「みんな・・死ぬ!」
「この命、あなたに預けます!」「そうだ、あの巨大なエネルギーは俺たちでもどうしようもない。」
「頼りになるのはあなただけなのよ!」「そや!いまこそ根性みせたれ!」(今ならウチが全員空へ逃がせるけど、
ここは黙っとくのがええやろな。)「あなたの力に数万の人の運命がかかっています!もちろん僕たちも!」
「もしかするとあなた様の生まれてきた理由はこれかもしれませんな。強大な魔獣や大自然の災害から人々を
守るため。そうは思われませんか?」「守る・・力!そうか!」カッ!『あっ!』バオオオオーッ!『これは!』
「結希の周りに・・巨大なエネルギーが!」「わかった・・今こそわかった!なぜ私にこの力があるのか!」
ドオオオーン!「飛んだ!」「そう、これは滅びの力なんかじゃない!力は使う者次第で神にも悪魔にもなる!
ならば私は・・神を選ぶ!」ゴオオオオオ!「火砕流が!」シャッ!「サイコ・バアアアアーストッ!」カッ!
ドゴオオオオオオーン!『うわああああーっ!』ドドドドドド!「なんというすさまじいエネルギーの激突!」
「ものすごい閃光でなにも見えない!」「・・腕でかばってまだまぶしいなんて!」『あまりにも巨大な光量で
視神経に直接当たっとるんや!』「結希は・・どうなってるの?!」「だいじょうぶ・・勝ちますわ結希さんは!」
ドドドドド!・・ゴォォォォォ・・「・・終わったのか?」「光も轟音も鎮まっていくわ・・」「もうええか?・・
ああっ!」「どうしましたフェイ?」「あ・・あれを見い!」『・・ああっ!』ゴォォォォ・・「ベスビオ火山が・・
消滅しておりますぞ!」「ひゅ~、跡は平坦な大地になっちまってるぜ。」「これが・・」(シヴァの力なのね・・)
「結希は?」「・・あそこだよ。」スゥゥゥ・・すとっ。「ふう・・どうにか制御できた。」「やればできましたね。」
「・・シーラさん。」「でも火山自体まで消し飛ばしたのはやりすぎですわよ。まだまだ修行が足りませんわ。」
「・・」しゅん・・ぽん。「?」「ま、はじめてにしては上出来ではないですか?どなたも最初は初心者ですもの。」
「シーラさん・・うん。」にこっ。「あらあら、はじめて見ましたわ結希さんの笑顔を。けっこうプリティですわ♪」
「これでやっと憎まれ役はお役御免かな。」「あまいアラクネさん。シーラはもともとあーいう性格なんですよ。」
「考えようでは結希さんより危険な存在だ・・別の意味で。」【レナにさんせー。ダンナ苦労するよね、ぜったい。】

「さて、デロスもいっしょに消滅してくれてると話が早いが・・」・・ゴゴゴゴゴ!『地震!』ドバアアアアッ!
ギュオオオーッ!「出た!」「あれが魔獣デロス・・手も足もない巨大ミミズとは!」「しかも全身が鋼のような
装甲に覆われてます!」「高温高圧のマグマの中で生きるにはあの形態が最適なのでしょう。」ギュオオオーッ!
ドドドドド!「こちらにむかってくるで!」「やはり結希のエネルギーに惹かれたな。さて出番だぜ、タイタン。」
「言われるまでもない。変神!」ピキィィーン!グオオオオオッ!・・ドドーン!『さあこい、デロス!』
カアッ!シュゴオオオーッ!「溶岩を吐いた!」『イージス・シールドッ!』シャリン!バシャアアアーン!
『ブウウーメランッ!』シュバッ!ヒュルルルルッ、カィーン!『なにっ!イージスをはじく装甲だと!』
ギュルルルルッ!ギシイッ!『しまった!』「デロスが巻きついた!」ジュウウウーッ!『ぐわあああーっ!』
「いけません!高熱を発してマスターを焼き尽くすつもりです!」「やばいわ!・・イエティ!」「おまかせを。
ふんぬううううーっ!」グオオオオオッ!ドンドンドンドン!『レンの凍てつく風にございます。』ビュオオーッ!
「・・ダメよ!デロスの発熱のほうが強くて冷却しきれない!」「・・僕もいきます!はああああーっ!」
グワアアアッ!キュアアアーッ!『ギガ・ストリーム!』ブシャアアアーッ!ジュウウウウーッ!「すごい蒸気!」
ギュオオオーッ!「いけるわ!水と冷気の二段攻撃でさしものデロスも苦しんでる!」ピキピキピキ・・
「強制冷却でデロスの装甲に亀裂が!いまよタイタン!」『・・光あれ!』カッ!『ゼロ距離でもぶち抜いてやる!
プロメテウウースッ!』ドゴオッ!ギュオオオーッ!ドボオッ!『ぐうっ!・・体内も溶岩が詰まってるか!』
『御主人様!それでは手がもちませんぞ!』『いったん引き抜いてください!』『・・かまわん!ばくはつっ!』
カアッ!ドドオオオオーン!ビチャビチャッ!『ぐわああああっ!』「きゃあっ!飛び散った溶岩がタイタンに!」
『いけません!ギガ・ストリーム!』ブシャアアアーッ!『いま冷却しますぞ!レンの風!』ビュオオオーッ!
ジュウウウウーッ!「蒸気でなにも見えない!・・どうなったの?」「・・いたぜ!」ダダッ!「ナンバー6?」
シュゥゥゥ・・「・・よっこらせ。」「一郎さん!」ダダッ!「だいじょうぶだ。ちょいとヤケドがひどいが命に
別状はねえぜ。エリス、ヒーリングを。」「わかった・・」ぶつぶつ・・キィィィィ・・『これは!』「すごい・・
みるみるヤケドが治ってゆく。」「ヒーリング能力なんてはじめて見ましたわ。」「・・これもサイキックなのか?」
【生体治癒力を精神波で刺激して加速してるみたいだね。レナでもやろうと思えばできるかも。】「そうか・・」
「それにしても生体治癒力補助だけでこんなスピードの治癒が可能なのかしら・・ん?」ぶつぶつ・・
(エリスちゃん何か唱えてる・・)「・・慈愛と癒しの星霊リゲルよ、我が願いにより傷つきし者を癒したまえ・・
エロイムエッサイム我は求め訴えたり・・」ぎょっ!(これは・・まさか魔法の呪文?!)「う・・」「気づいた!」
「・・どうなった?」「デロスは爆散したぜ。あんたはとばっちりくってレアになりかけてた。」「そうか・・
ありがとうエリス。」「・・うん。(青ざめてる)」ふら・・「ちょっとリヴィ、エリスちゃんの介抱たのむわ。」
「わかりました。・・エリス、こっち。」ふらふら・・「・・かなりがんばって治癒してくれたのね。」「ああ・・」
近くの店内。「ふう、ふう・・」「エリス・・」「・・!」ぐっ・・『・・・・』(・・もういいよ。)(だめだよ。
いつもより力を使ってるからもっと吸わないと・・)(リヴィ・・)ぐっ。(そう・・僕はだいじょうぶだから。)

その夜、ホテル。第六のメンバーが一室に集まっている。「・・ということなんだけど。」「魔法とはな・・」
「ファム、ニーコ。魔法ってサイキックとはちがうのよね?」『そら似てるようで全然ちがいまんがな。』
『サイキックは身についた力のみ、魔法は自分を媒体にいろんな力を借りて使うもんや。』【ついでにいうなら
霊力とサイキックはとても近似してるね。一説には同じものという考え方もあるくらい。】「ではエリスちゃんは
サイキッカーではなく魔法使いということですの?」「いえ・・エリス自身に相当なサイキック能力があるのは
私も感知してるわ。現にそのような発動の仕方もあったみたいだし。」「となると・・サイキックと魔法、両方を
使えるということか。」「いまひとつ気になるのはその呪文ですわね。後半はおなじみのくだりだけど、前半の
星霊リゲルというところがひっかかりますわ。」「リゲルって・・星の名前だよね。星の霊だから星霊か・・
ナナちゃん、星霊って知ってる?」【霊界で最高位に属する霊だよ。さすがにあたしは見たことはないけど。】
「霊界?・・天界・精霊界・冥界・魔界の四つでこの世界はできてるのでは?」【ちがうよ。たしかに死んだ人は
冥界に行くけど、その前段階に霊界はあるの。そしてそれはいわゆる四界には含まれてないの。なぜなら霊界は
まったく独立した世界だから。】「独立した世界?」【いえ・・「世界」という表現は間違ってるかもしれない。
霊界はいわば精神の場。神にも魔にも精霊にもならない霊たちが集う場というべきかな。】『ようわからんな。』
『で、星霊っちゅうんは?』【まさしく星自体の霊。星はいわば巨大な生き物だから霊があるのはしごく当然。
もちろんその巨体に見合う霊格があるの。】「精霊とのちがいは?」【精霊はいわば実体を持つ霊だね。もちろん
星も実体があるけど、問題は互いの距離の遠さと、星自身では動けないという簡単な事実。】『・・あ、なるほど。』
【ゆえに霊体でないとどうしようもないよね。でも・・星霊魔術というのは初耳だね。そんなことできるんだ。】
「黒魔術は魔の力、白魔術は神の力、そして精霊魔術・・ここまではまあわかるが。」「星の霊なんてどうやって
呼べるんでしょうか?」『常識的に考えて精霊魔法は召喚する精霊と同等もしくはそれ以上の霊力か霊格を有しと
らんとあきまへん。』『例外は黒魔術やな。こら交渉次第でかなり高位の魔族まで呼べるきに。』「つまり・・
エリスちゃんは星霊を呼べるほどの霊格を持ってるってこと?」『人間ではまず有り得んな。呼べてもせいぜい
中位精霊のバルキリー止まりのはずや。』「・・ファムとニーコは精霊についてくわしいみたいね?」『当たり前や。
ウチら精霊界の出身やもん。』『ええっ?!』『いわゆる「神獣」というやつやね。四神獣のみなはんも知っとる。』
『あっちではいろんな意味で有名やったもんな。』『もっとも面識あったんはイエティはんだけやけどな。』
「イエティって、あのロマンスグレイのおじさまの?」『かつては精霊陸軍の将軍やったんやで。』『ウチらは
直属の師団長やったし。』「師団長?!・・かなり実力あったんだな。」『しっつれいやな~。今でもあるで。』
【それよりエリスさんだよ。・・人間ではとうてい呼べない星霊を呼べるということは・・】「・・まさか。」

そのころリヴィとエリスの部屋。「・・リヴィ。」「ん?(愛美の漫画を読んでる)」「おフロ・・」「出た?それじゃ」
「いえ・・いっしょに入らない?」「・・え?」ぽっ・・「・・背中を流させてほしいの。」「・・わかった。」
ザァァァ・・こしこし。「・・こっち向いて。」「で、でも・・」「見てほしいものがあるの・・」「・・じゃ。」
くるっ。「・・!!」「これが・・私。」「・・どうして?」「リヴィにだけは知っておいて欲しかった・・ウソは
つきたくなかった・・」ギュッ。「?!・・」「・・エリス、僕の気持ちは変わらない。」「・・ありがとう。」

♪暗き森にうかぶ白い影 あれはバンガ 聖なる魔獣
♪雄々しき姿 気高き姿 神の化身と奉られて
♪それでも倒すの? 魔獣だから?
♪バンガは森を護ってる ただそれだけなのに
♪「白き神」はそこにある それは心の鏡かも・・
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