巨神伝説タイタン   作:風雲再起

6 / 12
アウターヘブン。「次はアメリカはデトロイトか・・誰が行く?」「私が行きます。」ヒラヒラ・・『シカンナ!』
「ついにシカンナが!」「ものすごいことになりますわ・・」ザワザワ・・「わかった。だがシカンナだけでは
敵の物量にいささか問題があるな・・」「俺が行こう。」すっ。「アルカディアか・・」「ありがとうございます。」
「ならば私もかな。」「綺羅まで?!」「いえ、綺羅さまにまでご出馬いただくのはおそれおおいことです。」
「いいのいいの、シカンナは親友だし。アルも私がいれば心強いでしょ?」「俺の出番がなくなるじゃないか。」
「ふふっ、安心して。私は個人的にちょっと会いたい相手を受け持つだけだから。」「・・知人がいるのか?」
「ええ・・エデンの古い友人がね。」「綺羅さまはエデンにもお知り合いがたくさんおられるのでしたね。」
「うむ、アルカディアと綺羅の二人ならなんとでもなるだろう。たのむ。」「ではみなさん、行ってきます。」

忍空挺「飛燕丸」。「・・出たわ。」「うむ。操縦櫓へ、距離を置いて追尾せよ。」『了解。』「今回はやっかいなのが
三柱も出たか・・よくよく考えて動かないとな。」「つかず離れず尾行し、打開策を講じようぞ。」「そうね。
相手の動きをよく見れば、手の出しようもあるかもしれないしね。」「ほう、ギネビアにしては慎重な意見だな。」
「それだけ気をつけなきゃいけない三柱だってことよ。ユーディット、今回はあなたにかなり働いてもらうことに
なりそうね。」「お役に立ちたく思います。」「なるほど、たしかに変幻能力は忍び仕事には有用でござるな。」

デトロイト。ブルルル!パーパー!「なんだこの街は・・どこもかしこも車だらけだ。」「空気が悪いですね・・」
「ここはアメリカ有数の工業都市だ。まあこれが日常さ。」「よくこんなんで暮らせるな~・・たまらんで。」
『たく、マスク買っといて正解だったわ。』『同感ですな。これはたまりません。』「そこまでしなくてもねぇ。」
『ゴホゴホ・・』「エリスは身体が弱いからしょうがないな・・」『さっさと魔獣をやっつけてこんな街から
とっとと出ましょうよ。』「それは同感だが・・さて魔獣はどこにいるのやら。」「エリス、何か感じない?」
『・・ここによみがえるのはたしか。でも精確な場所はわからない・・ゴホゴホ。』「難儀なこっちゃ・・」
「それについては「四魁仙」がすでに探りを入れてるはずだ。落ち合うホテルに急ごう。」『賛成ですな。』

第23夜「みどりの叫び」 - 大魔樹イグドラシル登場 -

市内高級ホテル・スィートルーム。「おひさしぶりね、みなさん。」「櫻華、あんたまたゼイタクなとこに・・」
「この空気の悪さじゃ空調が効いた高級ホテルじゃないとやっとれんわい。」「ひどい街なのだ、ウラ!」
「上海もこれほどまでにひどくありませんよ。」「で、手がかりがつかめたか?」「それなんだけど・・ナデラ。」
「なにやら妙な木の気配がするのだ。」『木?』「植物魔獣ということ?」「そのセンじゃろうな。ナデラは植物に
限るなら由比の卦より敏感じゃ。」「この街では私の羅盤は使い物になりませんし。」「どういうことですか?」
「・・この街の竜脈は死んでる、いえ、滅ぼされたというべきでしょう。」『滅ぼされた?』「たしかにこの地は
四方を湖に囲まれた要衝にあり、風水的にも繁栄が約束されています。でも・・」「・・この汚染か。」
「はい。緑を廃し、鉄とコンクリートの杭をあちこちに打ち込まれ、地の竜脈は死に絶えてしまいました。
水の竜脈さえ水質汚染で機能停止しています・・そして逆に悪気が流れ込み、まさに退廃の街となっています。」
「そういう環境じゃ植物魔獣も棲息しにくいんじゃないの?」「いえ・・待ってください。そういう汚れた環境を
好んで棲息する植物魔獣がいることをバベルの図書館で読んだことがあります。名はたしか・・イグドラシル。」
「ちょう待ち。そらアスガルド神族の伝承にある世界樹や。」「そこから命名されたと書いてありました。」
「穢れを糧とする樹ですか。ならばこの街などうってつけの場所でございますな。」「ああ・・どうなるか。」

ダウンタウン。「ひどいところだな。」「退廃と犯罪の匂い・・私はけっこう好きですわ。」「HOLD UP!」
「シカンナ、だいじょうぶ?」『はい、フェルメールさまに作っていただいた浄化フィールドのおかげで。』
ドキュン!シュボッ!・・「ホワット?・・弾丸が消えた?!」ドン!「なっ!・・」ボシュッ!サラサラ・・
「ジミーが!」「サノバビッチ!やっちまえ!」ドキュドキュン!シュボボボッ!・・「・・消えた?!」
ビスビスビスッ!『ぐわっ!』ユラ・・どさどさどさっ!「バカな・・弾丸が・・戻ってくるなんて・・」
「えーと、このへんかしら?」『もうちょっとあちらですね。』「とっととやろう。臭くてかなわん。」

スッ・・「なんという連中でござるか・・十数人を一瞬に殺して意にも介さないとは。」「神にとっては人間など
蟻のようなものだ。象が蟻を踏んで気づくと思うか?」「ああいうのもいれば、あの連中みたいに積極的に
人を守る神もいるわ。人間と同じ、神さんもいろいろよ。」「うむ・・あの綺羅というのは前に巴里で見かけたが、
美青年と蝶のような小さい女神は初顔でござるな。」「そうでもないわ。あの男神とは有明で一度会ってるし。」
「冥界皇子アルカディア・・またの名を「空間の貴公子」。時と空間を自在にあやつるかなり厄介なヤツだ。」
「ちなみに最初のチンピラを分解したのは綺羅の精霊光。あとのまとめて自滅させたのはアルカディアの
歪曲空間で弾道を曲げられたからね。」「ほう・・で、最後の小女神は?」「・・大地母神シカンナ。ある意味
十二神で最も恐ろしい神だ。」「ガタイは小さいけど、その神力はすさまじいわ。その気になれば北米大陸まるごと
沈没させることも可能ね。」「今回は厄介なのが三柱も揃ったということか・・」ニィ・・「・・嬉しそうね?」
「敵は強ければ強いほど良い。それだけ闘いの血が騒ぐというもの・・じっさい、拙者は神々とのいくさを
とても楽しんでおる。これは今までのどんないくさよりも燃ゆ。たとえ灰燼に帰そうとも悔いなきほどに。」
「現実主義者の忍者のセリフとも思えんな。」「いえいえ、砂風こうみえてけっこう熱血漢よ。浪花節だし。」
「ふふっ・・む?立ち止まったぞ。」「・・少し距離を置こう。何をしでかすかわからないし。」「賛成ね。」

『あ、ここですね。』「建物がジャマね。精霊核。」カアッ!ドオオオオーン!ブシャアアアアーッ!
『ぐぎゃあああーっ!』「綺羅、半径200mは消しすぎだ。」「ちまちまやるより最初から広げておけばラクよ。」

「うわ・・離れて大正解。」「先ほどの距離ではやられておったな。」「これでも手加減したほうだ。本気なら
この街など吹っ飛んでる。」「にしても、一区画ふっとばして何を?」「・・なにか捜しておるようだ。」
「ユーディット。」【ここに。】ドロ・・シュン。「ちょっとお願いしたいんだけど・・」ひそひそ・・
「・・かしこまりました。」「じゃ、タイミングをまちがえないようにね。」「では。」ドロ・・フッ・・

『えーと・・ありました。』ひらひら。「これか・・」すっ、じーっ・・「ただの種子にしか見えないが。」
「で、これをどうするの?」『私が発芽させます。地面に置いてください。』ぽとっ。『では・・始めます。』
キィィィ・・ゴロゴロゴロ。「ん?雲か・・」「シカンナは森羅万象を意のままにできるわ。雨雲を呼ぶくらい
朝飯前よ。」サァァァ・・「・・黒い雨?」「空中の大気汚染成分を巻き込んだか。俺たちには何でもないが。」
『・・いにしえの魔樹よ。汚れし雨をうけ、この不浄なる地にふたたび根を下ろせ。そして全ての穢れを糧に
大きくおおきく育て。穢れが絶えるその日まで・・はっ?!』ヒュッ!さっ、ドスッ!「あぶなかったわね。」
ぐっ、ズボッ。シュゥ・・「ほう、さすがは神。その程度の傷は跡も残らぬか。」ザッ。「・・ニンジャ?」
「ああ、おじゃま虫の三牙将とやらの。」「仮面の忍者、大砂塵。魔獣は復活させぬ。」「面白い。たった一人で
俺たちに立ちはだかるか。」「そうでもないぞ。」ザッ。「ちゃんと頭数はそろってるわ。」すっ。「へえ・・
これで三人そろったわね。」「いずれにせよ人の身で神に盾突く度胸は賞賛に値する。だがやはり愚かだ。」
「無謀は百も承知でござる。しかし我らに勝算あり。」「なに?」「魔獣の種子とやらはどこにいったのかな~?」
はっ!ばっ!『・・ありません!』「いつの間に!」「こちらに注意が向いているスキに決まっているだろ。」
「勝利の定義とは目的の達成にあり。種子を処分すれば魔獣復活は阻止できるということ。これぞ必勝法よ♪」
「なるほど・・では実力で奪還させていただきましょう。」キィィィ・・「精霊核!」ドン!ズゴオオオオーッ!
「一撃か・・なにっ?!」ゴォォォ・・「あーコワかった。」『綺羅さまの精霊核の直撃を受けたのに?!』
「よく見なさい。」「・・あれは?!」キィィィ・・「絶対防御壁?・・使える人間がまだいたとは驚きね。」
「二人とも、ここは退くが勝ちよ。」『おう!』シャシャッ!「逃げにかかったか!」「追うわよ!」シャッ!

そのころホテル。・・ピン!「はっ?!」「なに?エリス。」「・・お客さん。」【失礼します。】ドロ・・シュン。
「お前はユーディット。」「これをことづかってまいりました。」すっ。「・・種子?」「魔獣イグドラシルの種子です。」
『なにっ?!』「これを破壊してくれ、との伝言でございます。」「三牙将はどうしたの?」「ただいま三柱神を
牽制しております。」「三柱も?!」「どいつとどいつや?」「精霊女王綺羅、空間の貴公子アルカディア、そして
大地母神シカンナです。」『なあっ!』「なんて組み合わせよ・・」ガクガク・・「綺羅だけでも厄介なのに、
アルカディアとシカンナだと・・」「えらいこっちゃ・・この街どころか北米大陸まで消しかねない連中や・・」
「あら、それは面白い組み合わせね。」はっ。『櫻華?』すっ。「その三神は私たちが面倒をみましょう。ご隠居と
由比でアルカディア、ナデラはシカンナ、私が綺羅を。」「ほっほっほ、冥王の甥っ子か。どれだけ成長したか
見ものじゃの。」「はい。」「ウラ!まかせるのだ。」「櫻華・・ホントにだいじょうぶ?」「忘れたのアラクネ。
私と綺羅の関係を・・」「あ・・そうか。」「知り合いでございますか?」「知り合いっちゃ知り合いだけど・・」
「みなさんはその種子をたのみますね。由比。」ばさっ!「空門!」シュン・・「消えた?!」「空間転移ね。」

シャシャシャ・・ターン・・「・・来る!」・・ゴオオオーッ!「人間にしては軽い。さすがニンジャだ。」
「空間の貴公子どのか。」「それを知っている人間は初めてだ。ならば俺の能力も知らぬわけではないな。」
すっ。「・・!」タン!パキキィン!「虚檻を避けたか。見事だ。」ザザーッ!「歴戦のカンのおかげでござる。
砂弾!」シュバババッ!「攻撃はそちらに返るぞ。」「承知の上!」チュンチュン。「外れた?・・しまった!」
がしっ!「くっ!・・まさか肉弾戦とは!」「神に通じる攻撃は特別な武器によるものとあと一つ、すなわち!」
ダアアアーン!「己が肉体でござる!」「つかんだままでこの大ジャンプか!」「飯綱落とし!」ゴオオオオーッ!
ドゴオオオーン!・・すたっ。「普通なら頭蓋骨陥没骨折もしくは首骨折で即死だが・・」『そのとおりだ。』
ぐっ、ずぼっ!ぱんぱん。「なかなか見事な攻撃だ。これまで楽しませてくれる相手は四界にもそうはいない。」
「光栄のかぎり。」「ゆえに俺も本気を出そう・・!」キン!「・・なんだ?」くるっ。「お前はもう死んでいる。」
「なにを・・?!」ズル・・「なにっ?・・拙者の体が!」「空間斬撃。空間断層はいかなるものも切断する。」
ピキ・・ズズズズッ、ガラガラガラ!「・・背後のビルが!」「お前もすでにまっぷたつだ。」「・・ぐほおっ!」
ズルズル、ドシャアッ!「最後はあっけなかったな・・」『ほっほっほ、やはりまだ若い、青いのう。』はっ。
ぢゃりっ。「・・ご老人、何者だ?」「ハデスの若いころにそっくりじゃのう。」「?!・・叔父貴を知ってる?」
「いやいや、今のは老人の戯れ事ですじゃ。それより勝負はまだついておらぬぞ。」「・・なにっ?!」ばっ!
サラサラ・・ザザザザーッ!ビシイッ!「流石は空間の貴公子でござる。だが拙者にも物理攻撃は無意味。」

「ニンジャ・・これほどとは。」「いざ。」ざっ。「待たれよ砂風どの。」「ご隠居?」「ぬしの術でアルカディアを
負かすのは無理じゃ。ここは年の功にまかせなされ。」「ほう・・それでは。」「さよう。国連秘密部隊が第二、
『四魁閃』が者じゃ。」「ならば敬老精神はいらぬということだな。」キン!パキイイーン!「なんだと?!」
「ほっほっほ、手の内はわかっておる。由比、出ておいで。」『はい。』すっ。「・・風水師か、なるほどな。」
「八門の結界なら空間断層を止められます。」「わかっている。そもそも風水は俺が作ったものだからな。」
「えっ?!・・もしやあなた様は盤古!」「昔はそういう名で呼ばれておったそうじゃのう。」「正直嬉しいぞ。
すっかり占いに堕した風水をこれほど原初の形で使えるものがまだいたとは。」「お褒めに与り光栄です。」
「だが敵対した以上、容赦はせん。」シュン!「大極!」キン!パシイイイッ!ピキッ・・「結界にヒビが!」
「所詮は人の操りし術、神たる俺と比較にはならん。」「ほっほっほ。ではこちらも反撃するかのう。」ザッ。
「お前さんにもってこいの手があるぞよ。」ごそごそ、すっ。「・・人形?」「ほれいけ。」ひょい、ぱらぱら。
むくむくっ。「なっ?!」「なんと・・人形たちが等身大の美少女に。」「うわ~・・女性からみてもキレイです。」
『お兄ちゃん。』『あそぼ、お兄ちゃん。』じりじり・・「な・・」「その子らには悪意も殺意もない、大好きな
お兄ちゃんに遊んでほしいだけじゃ。問題がありとせば、『遊ぶ』という意味にあるがのう。」「く・・?!」
「むっ?きゃつの様子が変でござる。」「無理もないのう。あの子らの誘惑は催眠術レベルに達しておる。普通の
男ならとうの昔に理性が吹っ飛んでおるほどにな。」「ほう・・この攻撃は男にはきついでござるな。」「なんなら
お持ち帰りしてもよいぞ、ほっほっほ!」「たくも~・・どうして男はこうスケベなのよ。(潔癖性)」
「くっ!・・今日のところは退いてやる。」フッ・・「なかなかの自制心でござる。」「綺羅がコワいんじゃろ。」

ヒュゥゥ・・『お待ちなさい!』シュゥゥーッ!「あら、ちっちゃいのにけっこう速いのね。」『待たないと・・』
ワァァァーン!「えっ?・・ハチの大群!」『そいつを止めて!』ワァァァーン!「ならば召喚!」キン!
「いでよヴァーミスラックス!」・・ボオッ!バサアッ!キュオオオーン!『えっ?!スカイドラゴン!』
「火炎ブレスよ!」ブオオオオーッ!ボボボボオッ!『ハチさんたちが・・許さない!』ゴゴゴゴ・・
「・・なに?雲行きがいきなり・・」『雲よ風よ、集まりて渦を巻け。地表の全てを呑み尽くさんほどに!』
ゴゴゴゴゴ・・「雲が漏斗状に・・まさか!」ビュオオオオーッ!「・・この風は!」ズゴゴゴゴゴ!
「大竜巻が!きゃあああーっ!」『大自然の怒りを受けなさい!あはははは!』「アンアンガラ!」ゴバアアアッ!
『なに?いきなり巨大な木が!』バサアッ!「あいた!・・助かった。」「ナイスキャッチなのだ、ウラ!」
『・・あなたは?』「秘密部隊第二、『四魁閃』のナデラなのだ。」『木を生み出す・・あなたはドルイド?』
「なんなのだそれは?食えるのか?」「説明しましょう。ドルイドとは自然の精霊の力を借りる人たちのことよ。」
「なるほど、似てるけどちょっと違うのだ。」「ナデラは正確にはマクンバのシャーマンよ。」『ならば私と同じく
大自然を友とする方ですね。それならばジャマをしないでください。これは人間への自然の復讐なのです。』
「それはおかしいのだ。」『え?』「人間も天然自然から生まれたものなのだ。それを排除するのは矛盾するのだ。」
『いいえ、人間は自然の敵です。』「それを生み出したのはその自然なのだ。」『ちがいます!人を生み出したのは
天界の神々の傲慢です!我らカムイに人間は必要ありません!』「ダメねこりゃ。話がまったく平行線だわ。」
「じゅうぶんに話したのだ。ここからは」タン。『実力行使・・ですね。』すっ。『地を育むものよ。地を汚すものを
喰らいて土に還せ。』ザワザワザワ・・「ん?・・ゲッ!ミミズの大群!」「アフリカのよりちっちゃいのだ。」
『食い尽くされて大地の滋養となりなさい!』「それはまだ早いわよね。」「もうちょっと待ってほしいのだ。
せめてあと100年ほどは。いでよバビラン!」トンタタトンタタ・・ゴバアッ!「うわ・・でっかい花ね。」
ムワァ・・「ぐっ!・・ゲホゲホ!なんて悪臭!」ザワザワ・・『えっ?・・ミミズさんたちが花のほうへ?!』
ザワザワ・・ポチャポチャ。「なんで?ミミズが次々と花の中心部の穴に入っていく。」「人間には悪臭でも
ミミズなどにとっては至高のごちそうの香りなのだ。」シュゥゥゥ・・『ああ・・ミミズさんたちが溶けてく。』
「ヒョウ一匹くらい簡単に消化するのだ。これぞ自然の摂理なのだ。では反撃させてもらうのだ。アネムス!」
トンタタトンタタ・・ゴバアッ!「また花?」ふわっ・・「あ・・いい香り・・」とろん・・フラフラ・・
「ほれ。」ぎゅううう~っ!(ほっぺのびのび)「あいほひゃあああ~っ!・・あれ?」「まあ無理もないのだ。」
「あら、シカンナまで・・」『ああ・・なんてステキな香りなんでしょう・・』ひらひら・・ふわっ。
「アネムスの香りは強力な麻薬なのだ。それで虫を呼び、マヒ効果のある蜜を吸わせるのだ。」「・・マヒ?」
ぴちゃぴちゃ・・『こんなおいしい蜜ははじめて・・あう・・』ピクピク・・「あ、ホントだ。・・あ。」スゥゥ・・
ぴたっ。「花が閉じた?」「これで消化されるのだが、神さんはムリだろうからいまのうちにトンズラするのだ。」
「賛成ね。」シャッ・・ボゴワッ!『はあっ!はあっ!私としたことが・・でもこのお花はもらっていきましょ♪』

タタタタッ、ターン・・「へえ、人間にしては軽いわね・・でも。」キィィィ・・「あんまり手間かけさせないでよね。」
カッ!「おっと。」ひょい、シュゴオオオーッ!・・ドカアアアーン!「あら、はずれ。いいカンしてるわね。」
「綺羅め・・逃げてては被害が増えるか。」シュタッ!ふわっ・・すとっ。「やっと追いついたわ・・あれ?
あなたどこかで会わなかった?」「さあな。」「ん~・・思い出した。コスプレ会場でか。そっか、三牙将だったのね。」
「王将!」シャン!「あら面白い。いいわ、こちらもお付き合いしましょう。」すっ。「精霊剣『ヴァルムンド』。」
シュィィィッ!「ウワサに聞く剣の精霊か。」「よくご存知ね。あなたのナマクラとは格がちがうわよ。」シャッ!
カキーン!「はいはいはいっ!」ヒュヒュヒュッ!「なんのこれしき!」キキキン!「袈裟馬!」シュバッ!
「おっと!」シュタタタッ、スタッ。「ふ・・」「?・・あら。」ピシッ、バシュッ!「左腕がなくなっちゃったか。」
「その程度でヘコむ綺羅ではなかろう。」「そのとおりよ。」シュゥゥ・・ピシッ。「はい、もとどおり。」ぶんぶん。
「ち、やはり効かないか。」「あたりまえじゃない。単なる物理攻撃じゃ、よくて一時的に散逸するだけよ・・」
じーっ・・「・・なんだ。」「・・あなた、もしかしてデウスの娘のアテナ?」ぎくうっ!「たしか人間の女と・・」
「うるさい!」ダン!カキーン!「あら、ムキになるとこみると正解みたいね。あれから大きくなったわね~。」
「だまれと・・?!」カッ!ドゴオオオーン!「ぶはあっ!」ズザザザザーッ!・・「感情的になるとガードが
あまくなるわよ、うふふふ。」「く・・ガハッ!」ボタボタ・・「即死してないだけたいしたものよ。やはり神の
血が混じってるだけあるわね。でも・・」すっ、キィィィ・・「これでおしまい・・」ボコオッ!「くうっ!」
「・・なに?綺羅の手の甲がはじけた!」「いったあ~・・楊枝?!」キラッ。『崑崙の霊木を削って作ったから
綺羅にも効くはずですわ。』シュタッ。『櫻華?!』「おひさしぶりね、アテナ。そして・・綺羅ねえさま。」
「えっ!」「ひさびさに会った姉妹の挨拶がこれ?性格の悪さは相変わらずね。」「姉さまの腹黒さには負けますわ。
それよりアテナは私の大事なコレだから、消されたら困るわ。」「勝手に決めるな!」「あらそうだったの。だったら
私も味見しておくんだったわ。けっこう嫌いじゃないし。」「あげないもん♪」「だから勝手に決めるなって!」
「で、どうやら櫻華とは今は敵対関係のようね。」「昔から仲が良いとはいえませんでしたけど。」「たしかに。
ならば姉妹の語らいはやはり・・」「もちろん殺し合いですわ♪」「ヴァルムンド!」「一丈青!」カキーン!
ギギギギ!「デスクワークばかりでなまってるかと思えば、元気そうですわね。」「櫻華もオトコ漁ってばかりで
腐ってたわけではないようね。」ギィン!シャシャッ。「仙術がどれほど上達したか見てあげましょう。爆霊弾!」
ビュビュッ!「没遮爛!」ボオッ。パシュシュッ・・「へえ、中和するとはね。」「お返しですわ。鎮三山!」
さっ、ドオンッ!「おっと。」ふわっ・・ドドドーン!「おバカね。浮遊できる私に地走りなんか・・えっ!」
ヒュッ。「はぁい♪九紋竜!」カッ!ドドドドドッ!「くうっ!」ボコボコボコッ!ドザザザザーッ・・
「な、なんだ今のは・・一瞬で間合いを詰め、素手で綺羅を!」「瞬間移動術「神行大保」。そして精神体である
神や精霊には肉弾戦が有効なの。おぼえておいて。」「・・これほどやられたのは数千年ぶりね。」ユラ・・
「さすがは櫻華といっておきましょう。でもこれで本気にさせてくれたわね!」カアッ!「いかん、精霊核だ!
大陸ごと吹っ飛ぶぞ!」「だいじょうぶですわ。」ヒュッ。「・・はっ?!」「独角竜!」シャッ!ボゴワアッ!
「が!・・」「・・綺羅の胴体を貫手で!」「精霊核は発動するまでスキができますの。こんな近距離じゃ
ツッコんでくださいと言わんばかりに・・今日は退いてくださいね、お姉さま♪」「・・今回はね。」ふっ。
ボシュッ!ヒラヒラ・・「・・花びら?」「やれやれ・・久々に本気にさせてくれたわ。さすがお姉さま。」
「綺羅は・・」「逃げたわ。しばらくは療養に専念するでしょうね。アテナこそだいじょうぶ?」「すっかり。」
すっく。「さすがの再生能力ね。」「知らなかった・・櫻華が綺羅の妹とは。」「無理もないわ。あなたが天界に
上がったころにはもう都落ちしてたし。」「・・いや、いきさつは聞かないでおこう。」「賢明よ。で、助けたお礼が
欲しいんだけど。」「・・お礼?」たじっ。「あ、さっきのウソウソ。アラクネじゃあるまいしさすがに両刀はね。」
「ほっ・・で、なにを?」「おモチちょーだい♪ウワサに聞いてぜひ欲しかったの。」ふっ。「いいだろう。」

ホテル。「イグドラシルの種子ねえ・・」「どうやって破壊する?」「単純にたたきつぶすのがいいのでは。」
「ウチが燃やしちゃろか。」「冷凍乾燥させてからのほうが安全かと。」「爆弾じゃねえって。」「似たようなものよ。」
「叩いてみましょう。」グニュ、ビシッ。「・・腕がトンカチに?」「まずは基本からやってみよう。たのむ。」
「かしこまりました。」ブン!ドーン!・・バキイッ!「あーあ、高そうなテーブルこわしちゃった。」
「種は・・割れてませんね。」「ヒビさえ入らないとは、なんて頑丈な殻だ。」「次はどないする?」「叩いてダメなら
掘ってみるのはどうだい?」「掘る?・・ああ、ドリルね。」「・・いいかもしれない。」「ではドリルを。」グニュ、
シャキーン!「掘ります。」キュイイイイーン!バリバリバリ!「おっ、掘れてる。」「何とかいけそうだ。」パキッ!

ドガアアアアーン!「ぬっ?」「なんですか?」「ありゃ、こりゃまいったの~。」「でっかい木が生えてくのだ、
ウラ!」「あっ、まさかしくじっちゃったの?」「何をやっとるんだ連中は。」「こっひのふぇきにんでふぁ
のわいですふぁ。」もぐもぐ。(おモチ食べてる櫻華)「もう一個。」「よく食うな・・これで五つめだぞ。」さっ。
ゴゴゴゴ・・『あはははは!ヘタに殻を割ったマヌケがいたのね。おかげでイグドラシルは復活したわ!』

ゴォォォォ・・「なんという巨大な木でござるか・・」「高さ800m、幹は直径50mくらいありそうですね。」
「なるほど、まさに世界樹の名を冠するにふさわしいのう。」「・・下を見るのだ!」シュルシュルシュル・・
「あれは・・根?」キャアアアーッ!ギュバッ!「人間に巻きついた!」グワアッ!ばくうっ!『ぎゃあああっ!』
「あら、人間を大蛇のように飲み込んでしまいましたわ。」「なるほど、ああやって人間をも養分にするわけね。」
メキメキメキ・・「なんと・・犠牲者のふくらみがどんどんしぼんでおる。」「ああやって栄養にするわけじゃの。」
『そうよ、人も地の汚れ。どんどん喰らって浄化しなさい!あはははは!』「いったいタイタンたちは何してる!」

イグドラシルの根元。・・ゴバアッ!「やっと出れたぞ。」「まいった・・種子が爆発的に発芽するなんて。」
「おそらくイグドラシルはもう発芽していたんですが、堅い種子のおかげで成長できなかったんですね。」
「そか、それをウチらが無理に砕いたきに。」「あの殻では火炎も凍結も無意味だったでしょうな。」「・・本来は
水で殻を柔らかくして発芽してたんだろうね。」「そうだな。しかし・・」くい。「・・これは最悪の状況ね。」
「わたくしの大きなミスでした。」「ユーディットは悪くない。どのみち発芽は避けられなかったかもしれない。」
「ここまで覚醒が進んでたとは誰も思わなかったしね。」「今はこの巨樹をどうにかすることを考えましょう。」
「焼き払うのが基本やろうな。」「これほどの巨樹を焼くのは容易ではございませんぞ。」「しょうがねえな。」
ピッ♪「・・シャイアンか?俺だ。ただちにデトロイト市街地に出現した巨樹をテルミット・ナパームで
焼き払ってくれ。・・そうだ。じゃ、よろしく。」ピッ♪「いちおう連絡はしたがな。」「シャイアンってなに?」
「NORAD(北米防空司令部)のことよ。シャイアン山の地下にあるから。」「ひさびさにわけわからんコネが出たな。」
「あ・・あれ。」キィィーン・・「早いな。みんな、こんなとこにいたらトバッチリくらうぜ。」「退避しよう。」

『ターゲット確認。』『ジーザス、なんて巨大な木だ!』『テルミット・ナパーム弾投下位置まであと・・?!」
ビビーッ!『ボギーボギー!』『なんだと?!』・・ヒュンヒュンヒュン!『なんだこりゃ?!』ビスビスッ!
『ヒット!・・なにっ!これは葉っぱだ!』『バカな!鋼板を貫く葉など・・うわっ!』ズバババアッ!ドカーン!
『ガッデム!まるで対空砲火じゃねえか!』『梢全体から葉が飛んでくる!十字砲火だ・・わあっ!』ドドーン!

「そんな・・!」「葉っぱの対空兵器とは・・魔獣の名はダテではないようです。」「意思をも持つということか。」
「葉っぱごときウチの炎には通じん!」ダーン!「あっ!こらフェイ待ちなさいって!」バサアッ!テケレリリリ!
「あいかわらずの斬り込み隊長ですな。」「たしかに手をこまねいてる場合じゃない。俺たちも動こう。」ダッ!

「ほう、やっとお出ましでござるか。」「あとは専門家におまかせしようかのう。」「私たちは観戦ですね。」
「スケールちがいすぎね。あんなので相手になるのかな?」「まるで巨木にたかる虫なのだ、ウラ!」
「とりあえず様子をみて、いざとなれば手伝おう。」「そういうことね。もう一個もらえない?」「品切れだ!」

バサアーッ!ヒュンヒュンヒュン!ボシュボシュッ!『葉っぱなんかウチに効くかい!プラズマ火炎や!』カッ!
ゴオオオーッ!ボオオオーン!『あかん、デカすぎて火が回らへん・・はっ?』ビュルルルッ!『根っこかや。
せからしか!』ゴオオオーッ!メラメラメラ!『どや!タイマツにしたったで。』ビュルルルッ!ギリギリッ!
『しもた!』メラメラメラ!ギリギリ・・『燃えとんのになんちゅう・・!』ブン!バシイイイーン!『ぐはっ!』
ブオオオッ・・『もっかい地面に叩きつける気かや・・』『イージス・ブウウウーメランッ!』ヒュルルルッ!
ズパァァァーン!バサアッ!『だいじょうぶかフェイ!』ドドーン!『おおきに、お館はん・・ん?』
シャルルルーン!『お待たせしました。』『リヴィも来たなや。』ヒュヒュヒュッ!カカカーン!『葉っぱ手裏剣など
ボクの甲羅には効きません!』『根っこはわたくしが面倒みましょう。』オオオオーッ!ドンドンドン!
『イエティ、たのむぞ!』『レンの凍てつく風にございます。』ビュオオオオーッ!カチカチ・・ポロポロ。
「みんな、イグドラシルを倒すには幹の中にある中枢を叩くしかないわ。洞への入り口を探して!」
「・・それなら私が見つけるよ。」「エリス、できるの?」「・・真理の星霊ユピテルよ、その大いなる赤き目で
真実を見極めよ。エロイムエッサイム我は求め訴えたり・・!」カアッ!「エリスの目が!・・真っ赤に!」
「木星の大赤班の色ね。」「かつて木星は真実を見る天の目として崇められてたもんだ。」「・・それってギリシャ
神代以前の話じゃない。なんで知ってるの?」「古代天文学がシュミでな。」「・・あやしい。もうひとつ。前から
聞きたかったんだけど、なぜエリスは黒魔術なんか使えるの?」「ちがうわ。星霊魔術よ。」「どっちでもいい!
いい機会だわ、エリスとあんたたちのウラ、みんな話してもらおうじゃ・・」パチン!ぴたっ。「・・・・」
「やれやれ、静かになった。」「戦闘中にいい機会もないって。」「・・見えたよ。洞へ入る突破口が。」「おし。
以前のように「天の声」でアドバイスしてやれ。」「うん、お父さん。」「アラクネの記憶は三分前まで消去ね。」
「あの。」ぎくうっ!「・・しまった、ユーディットの存在を忘れてた。」「今の・・みんな見た?」「はい。」
「ものは相談だが、今のは誰にも言わないでほしいんだが。」「条件によります。」「条件って?」「それは・・」

ビュルルルッ!『ヒドラソード!』シュピィーン!ボトボトッ。『くそっ!でかすぎて突破口が見つからん。』
【あそこ。】『・・なにっ?』【あそこに木肌に隠された穴があるの。そこから内洞に入れます。】キラッ。
『君はいったい誰なんだ!』【・・・・】『切れたか・・やってみるか。イージスカッター!』キュイイイーン!
『ポイントは・・そこだ!』バリバリバリッ!ボコオッ!『あった!みんな、突破口があったぞ!』『おお!』
『リヴィさま、乗せていってくれませぬか?』『いいですよイエティ。』ゴオオオーッ!ズズーン。『どうぞ。』
『よっこいしょ。』ひょい。『飛びますよ。』ドン!ゴオオオオーッ!『これは快適。浦島の翁の気分ですな。』

ドオオーン!・・「よし、入ったわ!」「これで勝ったな。」「・・あれは?」ヒラヒラ・・「あっ!シカンナよ!」
『ん?・・アラクネ、こんなところに。』「シカンナ、温和なあなたがなぜこんな暴挙を?」『いいえ・・これは
前々から私が考えていたことです。たまたまヴォーダンの動向が渡りに舟だっただけです。』「そんな・・」
『あなたも人類の歴史に深く関わってきたからわかるでしょう。人は自然の破壊者です。自然のために、いえ
このエデンのために人類は滅ぼさなくてはなりません。』ちっちっち。「そいつはちょっと偏狭な意見だな。」
「ナンバー6?」「聞くが、そもそもエデンは何のために創世されたんだい?」『え・・』「いまさら人間が
神々の移し身なんてタワゴトは聞きたくないわ。いや、ある意味それは正解かもね。」「どういう意味よ?」
「なぜなら、神さんは人間に負けず劣らず戦いや破壊が好きだってことさ。そこに関しては一致してるな。」
「今まで聞いた話では、数百年オーダーではあるけど大きな戦争が絶えないそうじゃない。神の国ってもっと
静かなところだと思ってたけど、そうでもないのね。」「たしかに・・言われてみればそうね。」「とどのつまり
お題目はどうあれ、人間も神さんも負けず劣らず業が深いってことさ。ひょっとしてエデンを作ったヤツは
そういうのを神々に見せつけたかったんじゃないのか。」「・・エデンは神々の愚行のシミュレーション場だね。」
『!』『無礼な!人の分際で神を愚弄するとは!』「いえ・・シカンナ、今のけっこう真実かもよ。」『アラクネ?』
「シカンナ、あなたも怒りにまかせてどれだけ殺したかおぼえてる?」『それは・・』「わたしの知ってるかぎりで
数十万のオーダーのはずよ。人間がときおりやる大虐殺となんら変わりないわね。」『それはちゃんとした理由が!』
「理由があれば大虐殺は正当化される。人間といっしょじゃない。」『う・・』「シカンナ、今日のところはいったん
退いてくれない?もう勝負は見えたし、あなたもこれだけやればそれなりに満足でしょ。」「そーね。デトロイトは
もう潰滅状態だし。」「死者も数千人てとこかな。」「・・正確には死者2500人、重軽傷者は7300人になるね。
行方不明は5000人前後かな。」『・・あなたたち、ホントに人間なのですか?』「人間にもいろいろいるのよ。
こいつらはゲップが出るほどこういう惨劇は見てるから冷めてるわけ。けっこう特殊な人間かもね。」

ゴゴゴゴ・・ボコオッ!『出た!』オォォォ・・『これがイグドラシルの中ですか・・』『なんちゅう広さや!』
『下のほうに何か光っておりますぞ。』キラキラ・・『あれが魔獣の中枢か?』『ちょうど根のあたりですね。』
『暗いきにちと明るくしよか。火力増大!』カアッ!・・『・・あれは?!』『かなり巨大な結晶体ですな。』
『わかった!あれこそ汚れをエネルギーに転換する魔獣の中枢です!』『あそこを叩けばええんやな。いくで!』
バサアッ!ゴオオオオーッ!『全員で一斉攻撃だ!』『おおっ!』『プラズマ火炎、最大出力や!」カアッ!
『超水圧弾!』ゴオオオオ・・『レンの凍てつく風、絶対零度でございます。』ボォォォ・・『・・撃て!』
ドオオオオーン!ゴオオオオーッ、ズバシャアアアアーン!『とどめだ!プロメテウウウウースッ!』ゴオッ!

ドグオオオオオーン!『うわっ!』「イグドラシルが!」ドドドドド!・・「・・消滅していくよ。」ズズズズ・・
「みんなは?」「・・おっ、だいじょうぶだ。」『えっ?』ゴゴゴゴ・・つかつか。「魔獣殲滅、完了。」ザッ!

ナイアガラ、展望回転レストラン。ドドドド・・「魔獣は倒したが、デトロイトは潰滅だ。」「今回は大失態だな。」
「あまり気にするな。最小限の被害で済んだと思うことだ。」「ところでユーディットはどこに?」「帰ったわ。」
「しかし綺羅にアルにシカンナか・・よく追い返せたものね。」「特に櫻華はん、綺羅はんとやり合うてよう無事で。」
「ふふっ、今に始まったことじゃないから。ね、アラクネ。」「まあねえ・・あいかわらず仲悪いのね、あんたら。」
「そうじゃのう。あれだけそっくりなのになんでじゃろ。」「近親憎悪、というやつかしら。」「いえてる~。」
「ほっほっほ、ケンカするほど仲が良いということじゃよ。」『??(みんな姉妹だということを知らない)』

同じく展望回転レストラン、反対側。「これは絶景でござる。」「ごくろうさま、ユーディット。」「お役に立てず
申し訳ありません。」「お前のせいじゃない。気にするな。」「これ向こうさんからの詫び入れです。」ごそごそ。
どん。「なんだこのでっかいフロシキ包みは?」「いまどき唐草模様?まるでドロボウさんね。」「どれどれ・・」
ぱらっ。どさどさっ!『おとととっ!』ぱしぱしっ。「これは・・餅か!」「またなんつー量よ!」「ちょうどいい。
櫻華に手持ちをみんな食われてしまって困っていたところだ。」「お役にたてて嬉しゅうございます。」

そのころナイアガラ。ドドドド!『おお~!』「これが有名なナイアガラか!」「根来の実家にいいみやげ話が
できたな!」「みんなで写真撮るぞ~。集合!」『おお!』「おや?重蔵がおらぬぞ。」『なに?』きょろきょろ。
「おー、すまんすまん。」タタタタ・・「いやな、ミヤゲのまんじゅうを探してたのだが。」『あるかーっ!』

奇異なる岩が立ち並ぶ ここは太古の眠る場所
見とれてる場合じゃない 岩が殺意をはらんでる
大凶巌を見つけなきゃ みんな岩につぶされる
岩山ばかりでわからない どこにいるのかわからない
どこを見てるの? 目の前にいるよ
『死角の峪』はひっそりと あなたの頭上を狙ってる


第二十三夜~第二十六夜

虚数空間牢獄。オォォォ・・『・・サタンか。』『また来てやったぞデウス。ほれ酒と書だ。』『いつもすまぬな。』

『それは言わない約束だろ。・・これ言ってみたかった。』『ふははは。・・タイタンたちは息災か?』

『すこぶる元気だ。十二神どもはそろそろ疲れが見え始めたかな。』『だろうな。奴らはバリバリの実戦派。

まだ若い連中ではとうてい無理なこと。』『それ以前の問題だな。なにせたかが人間に後れをとってるし。』

『どうせぬしの息のかかった者じゃろ。』『それだけと思うか?』『・・なに?』『ここだけの話だが・・』

『・・なんと!ぬしはそこまで!』『ダテに魔王とは呼ばれてない。使えるものなら何でもウェルカムだ。』

『あいかわらず恐ろしいヤツよ・・』『誉め言葉と受け取ろう。さて、そろそろ次の幕を開くとしようか。』

『・・何を考えておる。』『舞台も良い役者も揃った。あとは終幕へ向けて盛り上げる演出だ・・お楽しみに。』

『サタンめ・・神も魔獣も人間も、楽しいオモチャくらいにしか考えておらぬ。ワシもそれかもしれんな・・』

 

アウターヘブン。「大凶巌・・見えない魔獣か。」「あらいやだ。私は今回はパスしますわ。」『綺羅が?!』

ザワッ!「昔に何かあったのか。」「ちょっとね・・それに前回に大ケガしたのでさすがにきついし~。」

「もう全快したんじゃないの?」「キズはね。でも精霊力がガス欠なので静養中ということで。あとよろしく。」

「ごまかすでない。今回の魔獣に注意点があれば言わんか。」「う~ん・・頭上注意。それしか言えない。」

『どういうことだ?』「まあ・・会えばわかるわ、いやでも。」「場所は中国の桂林か。拙者が行こう。」

「大黒か。」「大凶巌は少し知っている。なんとかなるだろう。」「じゅうぶんに気をつけてくださいね。」

 

第24夜「死角の峪」 - 岩石魔獣「大凶巌」登場 -

 

中国南部・桂林。ゴォォォ・・『うわ~・・』「これが有名な桂林の奇岩群か・・」「山水画そのまんまね・・」

「こないな静謐なところに魔獣なんておるんか?」「いえ、正確には観光地として賑やかですが。」キャッキャッ。

「なんたる不快。この雄大な景色を前にして騒ぐとは。」「イエティさんの感性と皆が同じとは限らないって。」

「騒いでいられるのも今のうちというのもあるな。」「・・みんな、もうちょっとこっちに寄って。」『えっ?』

ぐいぐい。「エリス、なぜ寄せる?」「このへんでいい・・くるよ。」「なにが?」・・ドドオオオオーン!

『うわっ!』「ね。」「・・び、びっくりした~!」「頭上の岩山が・・いきなり!」「・・さっきの観光客は!」

「岩の下じき・・でございますか。」「エリス!なぜみんなに警告しなかった!」「・・誰が信じるの?みんなさえ

わからなかったのに。」『!・・』「これが今回の事件だ。いきなり何の前触れもない落石。これが頻繁に起きてる。」

「わたしたちもエリスの予知能力できわどくかわすのが精一杯なのが、事態の異常さを物語ってるわ。」

「・・これも魔獣の仕業というのか。」「・・名前だけわかってる。大凶巌。」『大・・凶巌。』ぴくっ。「走って!

あっち!」ダッ!『なななっ?』「とにかく走れ!」ダダッ!・・ドドオオオオーン!『うわわわっ!』

「なるほど、こら異常や!」「まるで意思のある落石としか思えません!」「ホテルまで全力疾走!」ダダダダッ!

 

ホテル・ロビー。『はあっ、はあっ・・』「ここは岩山から少し離れてる・・安全だよ。」(息も切らしてない)

「事態の深刻さを身をもってわかっていただけたか。」「でも変じゃないか。これだけの大惨事なのに、なぜ

何もなかったように観光客がこのホテルにも来てるんだ?」「さっきの一団も何も知らない様子だったわ。」

「それが異常事態のその2。・・恐ろしいことに、この事実がまったく認識されてないの。」『・・なに?』

「はい、ツアーのみなさま。これより奇岩めぐりツアーに出発いたしまーす。」ザワザワ。「こら!出たらあかん!」

「外は危険だ!」「ではついてきてくださーい。」ドヤドヤ・・「・・どうなってるんだ。」「あの一団もここへは

二度と戻ってこないだろう・・ホテル側も何もなかったように次の客を受け入れる。」「・・まるでハメルンの

笛吹きですね。」「これほど異様な状況ははじめてね・・」「指摘しなかったらみんなだって同じ末路だよ・・」

「ナンバー6たちはなぜ惑わされない?」「エリスは説明するまでもないし、俺たちは自己催眠くらいかけられる。」

「この事実を知ったのだって、帰りの旅客機のキャンセル客の異常な多さが発端だったのよ。」「なるほど・・」

「でもあれだけの大惨事が起きてるのに誰も気づかないのはやはりおかしいです。」「・・どこに大惨事があるの?」

「だってほら・・ええっ?!」「落石が・・のうなっとる!」「そんな!さっきまでそこに・・」「異常事態その3。

落石はあっという間に消滅してる。犠牲者ごとな。」「だからしばらく真相が気づかれなかったわけ。」

「しばらくとは?」「およそ五日間。犠牲者は推定で三千人くらいで今も更新中だ。」「だったらなぜ観光客を

止めない!」「止めたわ。政府にここへのルート完全閉鎖してもらって、いま出てった一団で最後になるわ。」

「今の一団とホテルの従業員は完全防御装備させた人民解放軍がとっ捕まえて強制退避させている。この一帯に

いるのはもはや俺たちだけだ。」「さすが・・もう手回し済みですか。」「これでも後手にまわったほうよ・・」

 

同ホテル・スィートルーム。「ところがそうでもないのよね~。」「このような豪華な部屋にロハで泊まれるとは

役得というものでござる。」「正しくは無断宿泊だがな。」「お食事をお持ちしました。」カラカラ・・『おお~。』

「これもまた豪華な。」「レストランの厨房にいっぱい残ってました。」「ハラが減ってはいくさは出来ぬだもんね。」

「ユーディット、部下たちには?」「はい。それぞれのお部屋にお持ちしました。」「心づかい感謝いたす。」

「眩惑の魔獣、大凶巌か・・ギネビアの知識が無ければ我らも惑わされていたかもしれん。」「対抗魔法薬の

おかげで観光に誘い出されずに済んでなにより。しかし今回はよく知っていたでござるな。」「ちょっと前に

ケータイに連絡が入ったおかげよ。」「・・誰から?」「言わずともしれたことでしょ。」「ああ・・なるほど。」

「さて連中がどう動くかだけど・・ん?」ぴくっ。「なんだ?」「・・応援のご到着みたいね。」ズズズズ・・

 

ズズズズ・・「あの音は?」「おっ、着いたな。ベル、防御装備は?」「送る必要ないって返答だったわ。」

「・・あれは『ダンテ』です!」「第三部隊?日本からご出張ね。」「玄関前に降りるようだ。」「行きますか。」

ゴォォォ・・パシュ。「やあやあ出迎えご苦労、諸君。」つかつか。「ショウ、防御装置はいらねえのか?」

「ふっふっふ。このバルカンスーツの性能をあまくみてもらっては困る。そのような眩惑など無意味のひとこと!」

『うわ~。』ぞろぞろ。「すげえな~!ホンモノの桂林だ!」「観光に行きましょうよー!」「それは賛成ですね。」

「この背景ならやっぱ陳家太極拳やらんとな!」『・・(--;;』「みんなおもいっきり眩惑されてますけど。」

「これは不覚、マイ社員たちは修行が足りなかったか。ミス・フェイ。」「なんや?」「その真紅なハリセンを

貸していただきたい。」「ええけど。」すぱぱぱぱあああーん!『あいた~!』「たく、みんな弱っちいね~。」

のこのこ。「千夏さんはだいじょうぶなのか?」ぽりぽり。「あたし風景キョーミないもん。」ぬどどどど~!

「あいたた・・そういう問題ですか。」「ちなみになぜ吾輩が平気なのかは」『あんたは説明の必要なし!』

 

ダンテ内作戦室。「以上が現在の状況だが・・聞いてたか?」「今回はこれや。」「・・『カラスの仮面』?」

「ちゃうちゃう、カやのうでガや。」「あれ、こっちはバッタ仮面ですね。」「そら仮面ライダーや!」わいわい。

「状況はおおよそ了解した。要するに魔獣がどこにいるのかわからんということだな。」「エリスちゃんでも

特定できないんですか?」こく。「・・同時にいろんなところにいるの。でもすぐ消えてしまう・・」

「どうやら岩山の中を高速で移動しているようですね。」「サリーくん、こういう考え方もあるのではないか。

すなわち、この山地一帯全てが魔獣であると。」はっ!「感知されるのは意識の集中点とすれば同時多発の

説明もつく。そう・・我々はすでに魔獣の顎の中にいるのかもしれん。」「・・うん、それが正解かもね。」

「となるとどうするの?まさかここら一帯を吹っ飛ばすわけにもいかないし。」「フッ飛ばせばよかろう。」

『なっ?!』「我らを誰だかお忘れか?これこそファイアワークスの独壇場だ。」「六の字、ええんか?

中国政府がうんと言わんやろ。」「かといって人民解放軍を投入して事態を収拾できるわけもない。悩みどこだな。」

「なに、魔獣の本体さえいぶり出せばよいのだ。」「ほう、いかにして?」「そこはサリーくんの仕事だ。」

 

カチャカチャ・・「これでいけそうね。愛美、これ打ち込んで。」さらさらっ、ビリッ。「ほいな。」ぱしっ。

カタカタカタ・・タン。ぱっ。「作戦を説明します。この山地一帯を覆うように高周波爆弾をセットします。

これは爆発させると地中に猛烈な衝撃波を発生します。包囲網の外周から順に爆発させることで、岩中魔獣は

中心へと追い込まれます。そしてこの中心輪陣に入ったところでいっきに地表まで追い上げます。名づけて

『巻き狩り』作戦。」『ほう・・』「だがこの作戦は危険な要素があるぞ。爆弾設置の時に落石に襲われるだろう。」

「その護衛を皆さんにお願いしたいのですが。」「そういうことならいいんじゃない?」「これでいきましょう。」

 

「・・という作戦だそうです。」「さて我らはどう動くか。」「しばらくは連中にまかせてみよう。その作戦なら

今はまだ動く要素がない。」「あら、アテナにしては消極的な意見ね。」「別に何もしないというわけではない。

大黒天の動向を把握しよう。ギネビアの貼り付けた使い魔の情報によれば、もう来ている公算が高い。」

「うむ。きゃつめの動き如何では厄介なことになり申す。事前に押さえるが良策。」「では動きましょ。」

 

ドドドド・・「第八エリアだよー。」「ここから峡谷の設置になる。危険性は高いだろう。」「よし、まずは俺が

護衛しよう。」「よろしく。ではいくぞマイアシスタンツ叡智とかがり。」『はい!』「降下!」シャアアアーッ!

ゴォォォ・・「なんかすっげーヤな雰囲気だな~。」「・・まるで誰かに見られてるみたい。」「じっさいのところ

我らは見られておるな。眩惑されない人間がいると。」「ああ・・作業を急いでくれ。かなり危険な雰囲気だ。」

キュイイイーン!カンカンカン・・「・・!」グラッ、ゴオオオッ!「変神!」ピキィィーン!グオオオオッ!

『ガントレット!』ジャキン!『どりゃあっ!』バガアアアーン!ガラガラガラ!『やはり来たか・・ん?』

カラ・・キュキュキュッ。『岩の破片が・・逃げるだと?!』「むん!」シュピッ!カツーン!『ショウ?』

ぴちぴち。「一匹捕らえたぞ。あとでダンテで解析しよう。」「さっすがしゃちょ~。」「得意の投鏨ですね。」

 

ザァァァ・・「なんと・・もう大凶巌は復活しておるではないか。」グラッ、ゴワアアアアーッ!「愚かな。

そのような眩惑が吾輩に効くものか。」すいっ、ドドーン!「ほれ、ハズレだ。」・・キュキュキュッ。

「外すとさっさと逃げる。下劣な魔獣だ・・このようなものさえ利用して大義もクソもあるものか。よっぽど

タイタンたちのほうが純粋で美しい・・そうは思わんか?そこの三人。」くるっ。「そこまでわかっててなぜ

降りぬ?大黒天。」ざっ。「あなたほどの自由神が十二神のしがらみを断ち切れないはずはないでしょ。」

「義理と人情の板ばさみは理解できぬでもない。だがそういう時こそ己が信ずる道を選ぶべきでござらぬか。」

ふっ。「痛いとこを突く・・たしかに吾輩は徹頭徹尾この計画が好かん。だが吾輩が抜けてしまってはもはや

歯止めが効かなくなるのでは・・そう思うとな。」「難儀なことね。ま、それならそれでもいいけど。みんな、

行きましょ。」くるっ。「・・戦わぬのか?」「場所が悪い。拙者らにも貴殿にも。」「落石魔獣の顎の下では

落ち着いて戦えぬということだ。」グラッ、ゴオオオッ!ドドオオオーン!『ほらね。』「・・直撃ではない?」

『わかっててつぶされるほど拙者らは暢気ではないでござる・・』『場所を改めて、また合いまみえよう・・』

「・・去ったか。三牙将、敵ながら頼もしい連中だ・・さて吾輩も仕事にかかるか。気乗りはせぬがな・・」

 

ダンテ。「千夏、どうだ?」「んー、おもしろい生き物だね。山海経にも載ってないよ、こりゃ。岩そっくりの

甲羅に機動性の高い多脚。それにこの口。吸うためだけにあるね。」「千夏さんは神話生物学の博士号を持って

いるんですよ。」「神話生物学?初耳ね。」「つまりなー、伝説や神話に出てくる怪物や妖怪をマジメに科学的に

研究するっちゅーおもろい学問や。ちなみに千夏はんの博士論文は『グリフォンの生物学的実在検証』や。」

「ふむふむ・・剥がしてみよっと。」ベリベリベリ!「やっぱりね・・」「千夏さん、なにかわかりましたか?」

「こいつはいわば陸アワビだね。」『あわびぃ?』「めちゃ堅くて重い一枚殻。こいつ一匹だけで3kgもあるね。

しかも環境に合わせて殻は変色する。これじゃ岩に貼りついてたら、まったく見分けがつかないだろうよ。で、

ここの腺から幻覚性ガスを出して獲物をおびき寄せ、数千匹がくっつき合って数トンの塊になって押しつぶす。

あとはミンチになったのをみんなで吸い取ってキレイに平らげるって仕掛け。ほれ、かがり。」ぽい。「おっと。」

ぺちゃっ。「・・なに?」「消化中の人肉片。」『げえっ!』「いやあああ~っ!エーちゃんとって~!(ToT)」

わたわた!「渚はん、ちり紙やちり紙!」「ポケットティッシュしかないですけど。」「それのこっちゃー!」

「かがり、いまとってやるから!」ばさっ!ぬちょ~。「!・・」「よし!トイレに流す。かがりは手洗い!」

「セッケン~!」どたどた!「いやはや大騒ぎであるな。」「度胸ないね~、みんな。」『誰でもこうなるわい!』

「擬態と群体の魔獣か・・駆除すんのにごっつ手間かかりそやな~。」「ともかく敵の正体が判明したことで

これからの対応に方針ができましたな。」「ああ、とにかく頭上注意だな。」「では設置作業を再開しよう。」

「じゃあ次はわたしの番ね。」「アラクネなら糸を張り巡らして感知も早いでしょう。」「より安心やな。」

『ふうはあ・・』よたよた。「エッチ、これ塩もみして天ぷらにできる?アワビだけど。」『ぜってーイヤ!』

 

ゴォォォ・・「峡谷のど真ん中か・・狙われるには絶好の位置ね。感知糸!」シュババババッ!・・ぴたぴたっ。

ピィィーン。「これで岩肌に動くものは全て感知できるわ。」「さすがは絡新婦。二人とも始めるぞ。」『はい。』

キュィィーン・・「社長、こちらは設置終わりました。」「こちらも完了だ。」『こっちもすぐ済みます~。』

「あっ!叡智くん、あまり離れないで!そこは感知圏ギリギリ・・?!」ピリッ!「感あり?・・叡智くん!」

グラッ、ゴオオオオーッ!「うわあっ!」「しまった、間に合わない!」シャッ!「王将!」シュパアアアーン!

パカッ、ドドーン!「!・・あれ?当たってない。」きょろきょろ。うじゃうじゃ・・「ひえっ!岩の断面に脚が!」

ダダッ!「エーちゃん、無事?!」「九死に一生だなマイアシ。」「今のは?」クルクルッ、ザシャアッ!「油断だぞ。」

ヒュン。「アテナ!」「あぶなっかしくてみてらんないわね~、やっぱ。」ふわっ。「ギネビアまで・・」

「ここはやはり人海戦術であろう。わが下忍たちを周辺の見張りに付けよう。」ザザザザーッ。「砂風さん。」

タタタタ・・「三牙将、やはり来たのか。」「おじゃま虫と言われようが、これだけはやめられないからね♪」

「よいではないか。人数が多いほうがより安心である。」グラッ、ゴオオオッ!はっ!『シュウ!』「なにかな?」

すっ、ドドーン!「ん?・・ほう、間一髪だったか。」「ギリギリじゃないですか~!」「つぶされたか思たで!」

「いや・・ものすごい見切りだ。」「左様。落石の大きさを精確に見切ってのミリ単位の回避・・見事でござる。」

「では援軍も増えたことだし一気に設置を仕上げようではないか。次へ行くぞ社員諸君!」『は、はい!』

 

夕刻、ホテル。「できたよー!」ドドン!「麻婆豆腐にエビチリにカニスープ!ついでに北京ダックもあるよ!」

『おおー!』「四川も広東料理もできるとは、さすがは叡智くんですね。」「「ここのグリルは火力があるから、

いい料理が作れましたよ。」「そや、料理は火や!」「おや、珍しく愛美も手伝ったんだ。」「他はともかく、

チャーハンだけならエイチにも負けへんでー!」ドドン!『おお~。』「では諸君。」すっ。『いただきます!』

「叡智くんは料理できていいなー。ね、うちにFAしない?サービスするから。」しなりっ。「あ"・・いいかも。」

「ギネビアさん!エーちゃんをユーワクしないでください!」「だってかがりちゃんの彼氏じゃないんでしょ?」

「だ・・だからそういう問題ではなくて!」「吾輩も暖簾分けすることにやぶさかではないぞ。」「しゃちょー!」

 

カチャカチャ。「うまい!これがウワサに聞く第三部隊のメシか!」「前から一度ご相伴にあずかってみたいと

思っておったが、予想以上にうまい!」「お褒めにあずかり恐縮です。」「我らの自炊のメシではこうはいかんな。」

「いや、飯炊きとみそ汁なら負けぬ自信はある。アテナどのもギネビアどのも喜んで食べていただいておるし。」

「よし、我らも料理を披露しようぞ。神々に供するも一興。」『おお!』「というわけで厨房を借りるぞ。」

「あとでまとめて片付けますから、存分に使ってください。」ドカドカ・・「ふふ・・部下たちには良い刺激に

なったようだな。」「少しは腕を上げてもらわないと、毎日一汁一菜じゃたまんないわよ。」「そうなんですか?」

「たしかに飯と汁は絶品だ。しかしその他のおかずには進歩がみられない。」「忍びは素食でござる故にな。

ちなみに一番人気がまぐろ缶だ。」「うわ・・まるで工事現場の飯場ですね。」「あたしは辛子明太子が好きね。」

 

どかどか。「飯と汁でござる。どうぞご賞味あれ。」コトコトン。「最後にこれでシメるのは和食の基本ね。」

『いただきます。』ぱく。ずず~。『・・うまあああーいっ!』どどーん!「このご飯とおみそ汁は絶品です!」

「炊き加減、食感、水分の具合もパーペキ!汁もちょっと濃いめの味付けがご飯とバッチリ合ってて文句なし!」

「単なる飯と汁だけでこないにうまいとは目からウロコやわ!」「豪華な料理もよろしいですが、その後にこれと

いうのもワビサビがあって風流というものでございます。」「これはいい。すばらしいトリを飾ってくれた。」

『おお!』「神々が喜んでくだされた!」「これこそ飯炊きの本懐というもの!」「明日のやる気が出たぞ!」

「アイアンシェフ叡智も今回ばかりは一本とられたな。」「いえ、料理の基本はやはりご飯とお汁ですよ。

全てはそこから始まるんですから。」「中華でいえばチャーハンとスープやな。」「さすが叡智くんですね。」

 

ガヤガヤ。「アテナ、ちょっといいか?」「お話があるんだけど。」ぴく。「タイタンとアラクネ・・なにか。」

「まあ昔話と思って聞いてくれ。ずっと昔の話だ・・至高神デウスの娘がいた。」「・・」「人間の女性に

産ませた子を天界へと上がらせたのよ。」「・・それは幸せなことだ。」「普通はそう思うな。」「けどね・・」

 

一千年前、天界神都。「デウス様、折り入ってお願いがあります。」「何かな、タイタン。」「アテナ様をわが方に

預けられたく。」「なに?だがアテナはちゃんと王宮のものが・・」「これでもですか。」すっ。よろよろ・・

「なんと!・・」「着のみ着のまま、風呂は冷水をあびせられ、食事は残飯。これが至高神の娘の扱いですか!」

「そのようなことになっていたとは・・」「わかりますか?神人混血を忌む者は少なくありません。それがこの

仕打ちに表れております!デウス様が執務に追われて目がとどかないのをいいことに!」「・・そうだったか。

すまぬ、アテナよ。」「・・・・」「ムダです。もうこの子には父親と神々に対する憎悪しかありません。

私とて心をわずかに開いてくれるまで今までかかったのです。」「・・わかった、おぬしに託そう。」「では。」

 

タイタン神殿。「アラクネ、そういうわけだ。」「これはひどい・・どこのどいつよ!わたしがぶっ殺してやる!」

「その必要はない。もう俺がぶちのめしてアーレスに引き渡した。」「あら。・・またこれで出世のチャンスが

つぶれたのね。」「そんなことはどうでもいい。まずアテナに熱い風呂とうまいメシだ。」「すぐに用意するわ。

ご主人さまはアゴラへ買い出し行って。」「なんの?」「アテナちゃんの新しい服に決まってるじゃない!」

「しかし俺ではな・・」「しょーがないなー。・・よし。」さっ、ピッピッ♪「・・あ、レダ?わたし~。

ちょっちお願いあるんだけど・・うん、じゃ、よろしく。」「・・ケータイは時代考証まずいんじゃないか?」

「神の国だからエデンの時代考証は考えなくていいの。(きっぱり)レダに頼んだからこっちはおっけいと。

さ、アテナちゃんはこっちいらっしゃい。とりあえずおいしいお菓子と飲み物あるから。」「えと、俺は・・」

「とっとと風呂を沸かす。」びっ。「へいへい。どうも主従関係がここんとこ曖昧だぞ・・」ぶつぶつ・・

「?・・(不思議なものを見た顔のアテナ)」「ん?・・これがうちの流儀なのよ。忙しければあるじも働く。

そのうちアテナちゃんにもいろいろ手伝ってもらうからね。でもま、しばらくはゆっくりお休みして。」

 

「そしてその娘は数年間をそこで過ごしたが、ある日、地上の母のもとに里帰りをして・・」「・・そのまま

二度と天界には戻らなかったの。」「捜したくとも俺たちはエデンの掟で降臨することはできなかった・・だが

ある日、アラクネが彼女のベッドの枕の下から書き置きを見つけた。」「今でも文面はよく覚えてるわ・・

『タイタンおにいちゃん、アラクネおねえちゃん、ごめんなさい。お二人の親切にはとても感謝してます。

でもアテナは地上に戻りたい。お母さんのところへ。きっと一人で寂しくて泣いてると思うとたまらない。

そしてこれからはずっとお母さんのそばにいてあげたい。だからもう戻りません。この数年はとても幸せだった。

けどそれでもアテナは帰らなくちゃいけない。わがままいってごめんなさい。さようなら・・』ううっ・・」

「・・すまないと思っていただろう。だがどうしても言えなかった・・そう思う。」「実のところ、うすうす

予感はしていたんだ・・むしろ、このほうがよかったんだと考えるようにした。」「・・戻る理由が無いわけでは

なかったはずだ。だが、母から自分を取り上げ、悲しみの内に死なせた父がどうして許せなかった・・」

「そのへんは以前に綺羅がエデンに降りたときに調べてくれたわ・・だからわたしたちもあきらめがついたの。」

「・・おそらく、その娘もタイタンたちには感謝はしているだろう。もし機会があれば、少しでも力になって

恩返しをしたい・・きっとそう思ってる。」「その気持ちだけでじゅうぶん恩返しになっているんだがな・・」

カタン。すっ・・「面白い話だった・・食事も終わりだ。では部屋に失礼する・・」「ああ・・おやすみ。」

「やっぱりアテナだわ。必死に感情を抑えて・・」「予想以上には素直に応じてくれたんじゃないかな・・」

 

バタン。・・がくっ。「・・うっうっ・・タイタンおにいちゃん、アラクネおねえちゃん、ごめんなさい・・

アテナはもうけっしてこう呼べないの・・こんなに穢れてしまったから・・ううっ・・」ぽろぽろ・・

(・・まいったな~。これじゃ入るに入られないじゃないの。)(・・しばらくそっとしてやろうぞ。)

「報告します。」ぎくうっ!ばっ!ずるずる。「?・・」きょとん。「・・ここならいいわ、ユーディット。」

「敵の動静はいかに?」「大黒天はどうやら夜這いをするようです。」『はあ?』「なにそれ?」「わからん・・」

「夜討ちと言いたいのだろう。」はっ!『アテナ!』「ユーディット、続けろ。」「はい。数km先で量産兵の

数をまとめているのを確認しました。」「来るか・・ユーディット、全員に連絡だ。」「かしこまりました。」

「あの、アテナ・・」「無理せずとも・・」「・・もうだいじょうぶだ。スッキリ暴れられる。」ふっ。

「・・・・」「ん?・・そうか、忘れてた。」ごそごそ、さっ。「ご苦労。褒美の餅だ。」「感謝の極み。」ぱく。

 

深夜・・ざっ。「夜襲とは我ながら姑息だが、あの連中をまとめて相手するのも問題だ。ハニワ・レギオン!」

ガチャンガチャン!「火箭筒、狙え!」ジャキジャキッ!「・・射よ!」シュドドドドッ!ヒュルルル・・

ドドドドーン!ゴオオオ・・「さて、これで倒せたとも思えんが・・」「当然だな。」はっ!「・・シュウ!」

「またお会いできたな大黒天。夜のノックはもっと静かにするのがエチケットだぞ。」「その後景気はどうか?」

「おかげさまで繁盛しておる。今回の任務も慰安旅行を兼ねている。旅費は国連持ちだがな。」「ならば観光地に

花火は付き物だな。」「そのとおり。盛大な歓迎花火を感謝する。ついでにイベントもあるので言うことなしだ。」

「では始めよう。レギオン!」ガチャガチャン!ドドーン!どさっ!じたばた!「なにっ?落とし穴!」

「そこら一帯は逆さ地雷原になっておる。ヘタに動くと深さ5mの穴に落ちて、吹き上がった土砂で生き埋めだ。」

ドドーン!どさどさっ!「むう・・爆弾で一瞬に穴を掘り、土砂を外周のみに噴き上げるとはなんという技術!」

「ただ吹っ飛ばすだけなら誰でもできる。これがアートなのだよ。」「レギオン、浮揚!」パチン♪ふわっ。

「ほう、滑空機構まで付いていたか。」「使う機会があろうとはな。かかれ!」ゴオッ!「あまいな。」キラッ。

シュパアアアーン!・・ガラガラガラン!「なんと!」ざっ。「剣客、金色夜叉。」シャルルルッ、ぴたっ。

「ショウ、行け。お前の任務を遂行しろ。」「その必要はない。」「・・なに?」「点火するだけなら社員たちで

じゅうぶん。すなわち、吾輩の任務はすでに完遂しているのだよ。あとは余興だけだ。」「・・まさか?」

「量産兵は頼もう。だが大黒どのは吾輩自身がお相手する。異存は?」「・・好きにしろ。」「行け、ダンテ。」

さっ。・・ズズズズ!「むう、行かせぬ!」『おっと。』ビュオオーッ!ザザザーッ!「ぐっ!・・砂?!」

ザザザザ・・ビシッ!「仮面の忍者、大砂塵。そして!」さっ、ザザザッ!『根来忍群、ここに集結!』

「ニンジャ軍団か。だがいささか我がレギオンには戦力不足。」『ちゃんと考えてあるわよ。召喚!』ゴバアアッ!

「なんだ?!」ズーン!キィィィ!「・・アイアンゴーレムか!」「やーね、ちゃんとアレクザンダーという

立派な名前があるのよ。略してキティちゃん♪」『略になっとらん!』「みんなでのツッコミ、さんきゅ。」

「これで戦力はそろったでござる。」「むう・・だが負けん!かかれ!」ゴオッ!「イッツ・ショータイム!」

 

ダンテ。「ショウはひとりでだいじょうぶなのか?」「三牙将がいるし、ショウもカタギではない。まちがっても

心配するようなことにはならないさ。」「そゆことだねー。ま、なんとかなるっしょ。」「千夏さん、どういうこと?」

「ショウにはお兄さんがいるのさ。職業は傭兵。」「傭兵・・ですか?」「そのスジじゃけっこう知られた名前だ。

さる流派の暗殺拳を能くし、素手で完全武装した敵を倒すほどの力がある。」「ほう、どちらの流派ですかな?」

「クルド暗殺拳。知ってるか?」ぽん。「おお、あの有名な。」「俺は初耳だが。」「わたしも知ってるな・・

バベルの図書館で読んだことがある。古代から伝わる秘拳・・発祥は魔獣戦争。」ぎょっ!「なんやて?!」

「魔獣七鎧聖のことはみんな知ってるよね。」『七鎧聖・・』「魔獣王直下の強大な七体の大魔獣か・・」

「その魔力は神々にも匹敵したと記録にありました。」「その七鎧聖の一体が有した能力が起源だとされてるわ。」

「魔獣の拳法・・」「だが人の身で魔獣の技を体得するのは、それこそ命と引き換えにするような苛烈な鍛錬を

求められます。免許皆伝を受けられるのはごくわずかな者だけと聞きおよびます。」「・・なんとなくわかった。」

「で、ショウもお兄さんと一緒に修行をしてたわけ。もっとも、あのバカせっかく免許皆伝受けたのに、カタギの

商売になっちまったのさ。」「なぜですか?」「それがさ・・あたしを泣かせたくないから、だってさ。」ふっ。

『あ~・・』「カッコええ殺し文句やな~。」「恋愛ゲーのようなロマンティックな話ですね。」「こらリヴィ、

また夜にやっとったな。」「だってエリスがやって勉強しろって・・」「なんの?」「いろいろ・・」ぽっ。

「エリスちゃん、どういうの推奨してるの?」「・・OOとかOOOとか。」「そらキチク系ばっかやん!」

「へえ~、神さまでもパソゲーとかやるんだ。」「不老不死だとけっこう退屈なのかもね。」「聞いた話では、

アクションやRPGよりもシミューレションが人気だということです。」「わかるで。マンガみたいなムチャな

能力を持っとんの珍しゅうないし。」『愛美だけには言われたくない!』「あんた以上ムチャなのいないわよ!」

「おっと、そろそろ爆破ポイントだよー。みんな配置について。」「よし、打ち合わせどおりに。」『おお!』

 

「射込み龍!」シャリーン!ズル・・グワラガラガラーン!ヒュルルルッ。「回り馬!」シャッ!ヒュバババッ!

ズババババーン!ヒュルルル・・ぱしっ。「ぶうめらんとか叫べとギネビアが言ってたが、忘れていたな。」

「雷火砲、ていっ!」ドンドンドン!カカカーン!「忍群、今だとりつけ!」シャシャッ、ぴたぴたっ。

「穿孔雷を。」ぺたぺたっ。「離脱!」タン!・・カッ!ドドーン!「貼り付け式指向性爆薬でござる。」

シュドドドッ!ボボボーン!「火球弾がアイアンゴーレムに通じると思ってるの?いいから踏んじゃえ。」

ムオオオ・・ズーン!どぐしゃあっ!「キティちゃんにかかればハニワ兵なんて100分の1プラモよ♪」

「賑やかでなによりのイベントだな。」「さすがに手強い連中だ。だが貴殿はどうかな?」「試してみたまえ。」

「ではお見せしよう、吾輩の得意とする古代格闘技『たまゆら』を。」スゥゥ・・「ほう、美しいまでに流麗な。」

「それい!」ヒュルッ、ボバッ!「なるほど。」スッ、スカッ!・・ドドドーン!「特殊な動作で超圧縮した

大気を叩きつける。当たれば爆弾と同じということだな。」「そういうことだ。次々いくぞ!それそれっ!」

ボバババババッ!「ふむ。」フッ、ドドドドーン!「消えた?!・・上か!」くっ。「そのとおり!」ゴオッ!

「バカめ、空中では回避できぬ!」ボバババッ!スカスカッ!「なにっ?透過した!」「それは残像である。」

はっ!「うしろ?!」がしっ!「クルド流暗殺拳、托塔落とし。」グン!くるっ。「ぬおっ!」ドゴオオオーン!

『おお!』「背中合わせから首を取り、肩ごしに逆落としに投げるとは!」「まさに暗殺拳。普通なら頚骨骨折で

即死でござる。」「あっぶな~。魔導拳でもあんな外道な技ないわよ・・」「むう・・なかなかの技だ。」むくっ。

「なに、ほんの名刺代わりである。」「ふはははは!これは楽しい。ならば吾輩も新手をお見せしなくてはな。」

ごそごそ、さっ。「宝船のお守り?」「ふん!」ぽいっ。・・ずもももも~っ!「ほう、巨大化するとは愉快。」

「なに?」「なんと、これはすごい!」「大黒の宝船か!」ゴゴゴゴ・・「見たか!これぞ『凱風快晴』!むん!」

ターン!・・すたっ。チャッ。「マイク?」「いいっ?!・・いかん!みんな耳をふさげ!」「えっ?」「何ゆえ?」

「ユーディット!」『ここに。』ドロッ、シュン。「防音シェルターを!」「かしこまりました。」ドロ・・ズン!

「ほらほら急いで中へ!」「だから何がどうなってんの?」「説明はあと!」げしげしっ!『あいたたた!』ばしっ。

「いくぞショウ。カラオケ最大出力!」グリッ。(ボリュームMAX)♪ズンズンズンズン!『♪あ”~っ!

あかいゆうひのなかにいいいい~っ!』ぼえええ~っ!『うわっ!』『あいかわらずひっどいオンチ~!』

『防音シェルター内でもこれか!』『「凱風快晴」は巨大なカラオケマシーンだ。外だと即死レベルだぞ!』

ドドドーン!ガラガラガラ!『なっ!・・岩山が崩れる!』『共鳴破壊でござるか!』『大黒め、千年前より

オンチに磨きがかかってる!』『はっ!・・ショウどのはいかがした!』『間に合わなかった・・よくて悶絶死

だろうが・・?!』ぱちぱち。「うむ、魂が震えるような歌声だ。」『なんで?!』『どういう人間だ・・?』

♪ザザン!(曲終了)「どうだ、吾輩の歌声にはしびれただろう!・・なに?」へーぜん。「なかなかのものだ。

だが世界じゃあニ番目だな。」ぶい。「なにっ?吾輩より上手がおるのか!」「あたり前田のクラッカー!うちの

カミさんに比べれば初代ゴジラとUSAガッズィーラの差である!それを毎日のように聞かされておるので、

吾輩の音楽センスはいやが上にもハイソなのだよ!」『とってもイヤね、それ・・』『慣れというのはすごいもので

ござるな。』『・・そういう問題なのか?』「・・よくわからんが、なんとなくすごいらしいのはわかった。

だが自身は吾が歌唱力には勝てまい!」「そうかな?はっ!」ターン・・すたっ。「では吾輩の番だ。」「ほれマイク。」

「不要!ついでにカラオケもいらぬ。」「なんと?」「まあ聞け。必殺、一人ハモネプ!♪ズズンパズズンパ!」

「なんとおっ!自ら伴奏もするとは!」「♪あ~あ~!」「ハーモニーまでもかぁっ!」『・・これはすごい。』

『ふつうは数人でやるハモネプを一人でやっちゃうなんてね。』『むう、すごいのかバカなのかよくわからぬ。』

「♪シィッドンシドンドシシシィッドドンド!」ぞくぞくう!「おお・・これだ!これぞ吾輩が永年求めてきた

究極のリズム!」「そう!肉体で奏でるリズムとメロディーこそ全ての音楽の原点なのだ。それをこのような

巨大カラオケマシーンに頼るとは本末転倒・笑止千万!神ならば自らのハートとソウルで奏でてみよ!」

があああーん!「ははーっ!吾輩が間違っておりました、先生!」がばっ!「うむ、わかればよろしい。」

『はあ~・・』『こういう決着かい・・まあ、あの二人らしいっちゃらしいかねえ~。』とんとん。『なんだ?』

くるっ、ぷにっ。『あ"。』『ひっかかった~♪』ひくっ・・『ギネビア、なんのマネかな~・・♪(青スジ)』

『アテナ気づいてる?ちこっと城壁が崩れてるわよ。』『・・なんのことだ?』『そのうちわかるでござるよ。

ユーディット、もうよかろう。』『解除します。』パチン!ドロッ、シュン。「さてと、大黒たちはどうなった?」

 

「吾輩は悟った・・まだまだ修行が足りぬ。そこでこれより武者修行に行く。まだ見ぬ強豪たちに会いに、

そして魂の音を極めるために。」「人生はすべて修行だ。それは終わりのない果てしない旅だ・・どうせなら

それを楽しもうではないか。我らの前に道はない、我らの後に道はできるのだ。」「すばらしい言葉だ・・

最高の旅立ちの餞別だ。では!」ざっ。「うまい魚が食いたくなったらいつでも遊びに来てくれたまえ。」

「行かせてしまってよいのか?」「大黒は迷惑だが悪いやつではない。また思い込みの激しさもひとしおだ。」

「そのとおり。ゆえにもう敵として会うこともなかろう。」「どこかで誰かがまた迷惑こうむりそうだけどね。」

 

「あーあー、こちらダンテ大本営、爆破指揮長代理の千夏。みんな準備おっけい?」「点火班、いいです!」

「追尾管制班、いいですよ。」『要撃班、いつでもいいぞ!』「五秒からカウント開始するよ。4,3,2・・マーク!」

「最外周A輪、点火!」ピピッ♪「・・動体反応や!逃げとるにげとる!」「かがりちゃん、B輪点火まで

あと5秒です。」「3,2・・マーク!」ピピッ♪「・・さらに加速!C輪前倒しや!」「あと3秒。急いで。」

ズズゥゥーン・・ビリビリビリ・・「来るよ・・四方から。」「ダンテの上なら安心だな。」「これぞ高見の見物と

いうことやな・・おっ?」「見えます!・・岩肌がうごめいてる!」ざわざわ・・『E輪点火!』ドドドーン!

「まさに追い込み漁ね。」「あと少しで集結するぞ。」「次が最後の爆発のはずよ。」『最終、F輪点火!』

ドドドドオオーン!ざざざざざ!「真下に来ましたぞ。」「よし。いくぞみんな!」『おおっ!』ターン!

ゴオオオーッ!「・・変神!」ピキィィーン!グワアアアッ、ドドーン!『タイタン、ここに光臨!』

「はあああーっ!」グモモモモッ、ドドオオーン!・・キュアアアアーッ!『リヴァイアサン!』

「燃えるで!」ボオッ!・・バサアッ!テケリリリ!『フェニックスはここや!』「ふんぬうううーっ!」

モリモリモリッ、ドドーン!ヒュゥゥ・・『イエティはここであります。』オオオオーッ!♪ドンドンドン!

「はっ!」シュバッ!・・ぺたっ。グーン!・・しゅたっ。「わたしは谷の上で準備と仕上げをするわ。」

ざわざわざわ!『岩が・・盛り上がる!』『なんという数ですか!ざっと数万匹はいます!』『巨岩になるで!』

ゴォォォ・・『直径50mの巨岩・・これが大凶巌の群体型態のようですな。』ユラッ、ゴロゴロゴロ!

「タイタン、そっちに行ったわ!」『しばらく引きつける。その間に谷じゅうに糸を。』「まかせて!」たっ。

『ギガ・ストリーム!』ブシャアアアアーッ!バシャアッ!『レンの凍てつく風!』ビュオオオオーッ!

パキパキパキ・・『濡れておりますから凍結が早いですな。』『プラズマ火弾や!』カッ!ドオオオーン!

ボオオオオーン!パラパラパラ・・『最外殻のアワビが死んだだけかい!』『数重、いや数百重のはずだ。

かまわんからどんどんひんむけ!ガントレット!』ブン!バガアッ!パラパラ・・『くっ!・・堅い!』

「みんな、もうちょっとがんばってて。」シュババババッ!ぺたぺたっ。「次はこっち。」シュバババッ!

「こーでこーで・・よし。もういいよ~!」『待ってた!全員で押し戻せ!』がしいっ!『蒸気ジェット!』

ドオンッ!ゴオオオオオーッ!『テッポウでございます。フンフンフンフン!』ドカドカドカッ!『よいしょ!』

『ほらみんなきばらんかい!』『フェイは応援だけかい!』『だってウチ鳥やもん♪』ググ・・ゴロゴロゴロ!

『動きました!』『いっきに土俵ぎわまでいきますぞ!』『そりゃそりゃそりゃーっ!』「オーライオーライ!」

ぎにゅ~ん!「ゴール!で、次はわたしのお仕事。」シュバババッ!ぺたぺたぺた。「はい、ラッピング終了。」

わさわさわさ!『アラクネの糸は強力やで~。これでバラけて逃げられんわ。』『ファイアワークス、たのむ。』

「まずは東の山だ!」「点火!」ピピピピッ♪ドドドドーン!ガラガラガラ!グシャグシャッ!「計算どおり、

岩山の質量と落下エネルギーでさしもの堅い殻も紙同然ですね。」「西の山、いきます!」「ファイア!」ピッ♪

ドカドカーン!ガラガラガラ!「二つの山で総重量はおよそ数百万トン。運良くつぶれなくても、二度と太陽を

おがめるこたないだろうね~、なまんだぶ。」ガラガラガラ・・『やりましたね。』『さすがはショウたちだ。』

 

アウターヘブン。「なにっ?大黒が出奔しただと!」「律儀にも辞表を破魔矢で飛ばしてきたわ。」ぺらっ。

「むう・・なんということだ。」「少なくとも今夜からは静かに寝られるということだな。」「やれやれ、あの

カラオケときたらアウターヘブンじゅうに響きおったしな。」「さすがに苦情申し立てて、日に一時間だけって

制限かけたけど、かえって悪化してたしね。」「『凱風快晴』で外へ出て歌いまくってたもんね~。ありゃ人間の

ライトウイングカーよりタチ悪いよ。」「そういう問題ではない!」「ヴォーダン、あなたあの歌好きなの?」

「う・・」「でしょ。これでアウターヘブン最大の問題が無くなったからいいじゃない。」「・・まあよい。

まだ十柱もおるから、一柱くらいの埋めは何とかなるだろう。」フッ。(いいえ・・まだまだ減るでしょうね。)

その嘲笑がすぐに現実のものとなるとは、さしもの綺羅さえ思いもよらなかっただろう・・そう、次で。

 

広州市、高級ホテル。『カンパーイ!』カチカチン!「大凶巌撃滅、みんなご苦労。三牙将のみんなも協力を

感謝する。国連のおごりだから遠慮なくやってくれや。」「部下たちにも広州料理をふるまってくれるとは。」

「国連はそんなに予算あったのか?」「首脳会議の費用に比べりゃ屁みたいなものよ。さ、食ったくった。」

「うむ、勝利のあとの老酒はやはりうまい!」「ほどほどにしときなよ。まだまだ料理来るんだからさ。」

「お待たせ~!」ドドドン!『舟盛り!』「ここは新鮮な魚がいっぱいあるから腕の振るいがいがあります。」

「水野海運・広州支社に連絡すれば、トラック一杯でも持ってきてくれますから。」「渚さん、すごいな・・」

「刺身は久しぶりだな。」「ほう、ワサビではなくカラシ醤油で食わせるのね。これも悪くないわ。」もぐもぐ。

「・・リヴィはお刺身好きだよね。」「うん。故郷の『静寂の海』には10mもあるハマグリとかいたしね。」

「へえ~、網焼きにしたらすごそう。」「でも獲ろうとすると、いきなり巨大な都市が現れたりビックリします。」

「ああ、そりゃ『蜃』だね。」ぽん。「それはさすがに知ってますね。蜃気楼を生み出す巨大な貝です。日本海にも

わずかですが魚津あたりに生息してますよ。」「ほんまにおるん?渚はん。」「いますよ。人魚に海坊主に舟幽霊。

大ダコ・磯撫で・あやかし・いしなげんじょも。」「最後のは水木センセのマンガでも聞いたことないな~。」

「マイナーな海妖だからね。石のクジラでよかったっけ?」「そんなとこですね。」「ねえねえ、人魚の肉って

ホントに不老長寿になるの?」「いやですわギネビアさん。お友達を食べるようなことはしませんって。」

「友達だと?」「珍しいサンゴとかおみやげによく遊びに来ますよ。お返しにお酒と焼き肉をふるまってます。」

「ほう・・さすが壱岐水軍。」「・・どうやって食卓につくのだ?」「海に通じてる水槽をバーカウンターのように

作ってありますから。たまに他のみなさんも来ますけどね。」「他って?」「エーゲ海から観光に来てくださった

セイレーンのみなさんとか。合唱がとてもステキでしたよ。」『・・すご。』「こういう人間もいるのだな・・」

 

♪解けぬ封印に縛されし いにしえの七つの大魔獣

♪けどその魂は 人に宿りてよみがえる

♪あの二人はだれ? ふたりで一体?

♪刻め 潰せ 打ち砕け 天震鎧姫の気刃が飛ぶ

♪その名は『魔獣七鎧聖』ゲッツエンディーネが神を討つ・・

 

******************************

 

数万年前。オォォォ・・「鋼鉄天使の軍団か・・わらわの領地に攻め込むとはあっぱれ。」『七凱聖がひとつ、

天震鎧姫ゲッツェンディーネを視認!一斉攻撃!』ドヒュヒュヒュッ!「ふん・・」すっ、ボボボボッ!

「ザコどもが。気刃!」ひゅっ、ズババババッ!『ぐわああああっ!』『手の一振りで数百の天使が?!』

『ひるむな!包囲して一斉攻撃!』ザザザザーッ!「ほう、少しは知恵がまわるようだな・・だが、あまい。」

ズズズズ・・「わらわの字名『天震鎧姫』の意味を知るがよい。怒轟層圏!」ドオンッ!『なあっ?!』

ズドドドドドオオオーン!・・さんさん。「雲まで消してしまったか・・洗濯物がよく乾くわ、ふはははは!」

 

イタリア・ミラノ。・・ボコオッ!「なんだ?!」「玄関が・・なくなった?」『ヴォン・ジョルノ。』すっ。

『夜だからヴォーナ・セラでしょ。』すっ。「なんだてめえら!」「強盗さんでーす♪」ちょい、シュピン!

「ぐわっ!」「ただし、頭に『殺人』がつくがな。」「撃て!」ドキュドキュン!「ほい。」すっ、ボボボッ!

「テッポウ弾なんか効かないよーだ。」ちょちょい、ズバババッ!『ぐはあっ!』「よっと。」ドン!ズボボボッ!

『ごほわっ!』「こんなもんかな。」ぱんぱん。「じゃあ、いただくものもらってトンズラしましょ♪」「おう。」

 

第25夜「魔獣七凱聖」 - 天震鎧姫ゲッツェンディーネ登場 -

 

エル・ドラド。「ナンバー6、次はヨーロッパか?」「イタリアだ。奇妙な事件が起こってな・・ベル、説明を。」

「ミラノで不可解な強盗殺人事件が起こったの。被害者は完全武装したマフィアの集団。」『・・はあ?』

「そらギャングの出入りちゃうんか?」「これが実際の現場写真よ。」ぱっ。「・・なんですか、これ?」

「玄関だ。」「まん丸の出入り口とはさすがイタリア、シャレてるじゃない。」「犯人によってくり抜かれたの。

断面写真がこれ。」ぱっ。「ほう、鏡のようにツルツルですな。」「次はガイシャの写真。」ぱっ。『なっ!』

「まっぷたつだと?」「宮本武蔵でも襲ってきたの?」「同じく断面写真。」ぱっ。「うわ・・まるで標本です。」

「別のガイシャよ。」ぱっ。「なんやこれは?!」「とても自分の目が信じられませぬな・・くり抜かれてます。」

「同じく断面」『見せんでいい!』「・・血がぜんぜん出てないね。」はっ!『エリス?』「そのとおりだ。

これだけハデなホトケを量産しながら、一滴の出血もねえ。」「さっき強盗といったな。」「事務所の金庫が

くり抜かれて、中に入ってたはずの数百万ドルがなくなってるわ。物盗りの犯行・・しかもきわめて異様な。」

 

「さて、異常な事件だと理解したところでこれを見てくれ。」ぱっ。「・・なんだこの二人は?」「若いわね。」

「目撃者の証言から作られたモンタージュ写真だ。犯人はどうやらこの男女らしい。」「人間・・ですよね。」

「現在『チーム・夢幻』がこの二人の行方を捜査中だ。まもなく確認が」ピピッ♪「お、ちょうどきたな。

キャプテン、メインに。」【了解。】ぱっ。『容疑者の行方をつかみました。バイクで東に向かったようです。』

「東といえば・・ヴェネツィアかいな?」『別の証言によると、途中のドライブインでヴェネツィアの地図を

買ったようです。ほぼ間違いないでしょう。』「よしきた。キャプテン、ヴェネツィアに針路変更だ。」

【そう思ってすでに北北西に針路変更した。】『僕たちもあちらで合流します。』「水の都で会おう。」

 

アウターヘブン。「次はヴェネツィアか。」「都市の下に封印されし魔獣の呪いで、水没しつつある街だ。」

「封印がゆるんで身動きしてるんでしょうね・・装甲魔獣ガレオンが。」「うむ、かつての魔獣戦争でもかなり

手こずったヤツじゃ。神剣をもってしても貫けぬ表皮はタイタンのプロメテウスをも通すまい。さて誰が行く?」

「わたくしたちが行きましょう。」すっ。「ヴァジュラ三姉妹か。」「タイタンたちではガレオンは倒せない。

これは絶好のチャンスね。」「今回こそは一泡ふかせてやれそうだね。」「よかろう。では、たのむ。」

「・・アル、前回は花火屋だったわね。」「そうだが。」(となると・・彼が出てくるか。)「・・?」

 

忍空艇「飛燕丸」。「ガレオンはやっかいだな・・」「アテナ、知ってるの?」「かつてバベルの図書館で

魔獣に関する文献はよく読んだ。まあ怪獣図鑑みたいなものだったが。」「ほう、これは意外な好みでござる。」

「ガレオンの表皮は異常なほど堅い。ゆえに神々も殲滅できずに封印するのが精一杯だったらしい。」

「でも関節部分とか口の中とかスキはいくらでもあるんじゃ?」「・・そのどちらもない。」「なんと?」

「あるのは巨大な一本の触腕だけだ。これをくねらせて移動し、触腕の先端から胃を出して人を食うそうだ。」

「げ・・コワイ考えになっちゃった。」「なんとも不気味な魔獣でござるな。」ガラッ。「お待たせしました。

お昼ができました。」ことん。(割烹着姿)「ご苦労さま、ユーディ。」「ほう、カレーライスでござるか。」

「ルウは?」「ジャワとインドのブレンドです。」「玉ネギは?」「バターでよく炒めました。」「ジャガイモは?」

「あとでしつこくなるので入れませんでした。」「肉は?」「味のなじみやすい鶏肉を使っています。」「隠し味は?」

「台所にあったまぐろフレークを一缶。」「パーフェクトだ、ユーディット。」「感謝の極みです、アテナ様。」

『いただきます。』カチャカチャ。「うむ、これはうまい!」「昔はよく私も作ったものだ。」もぐもぐ。

「へえ~、アテナって自炊してたんだ。」「昭和40年代に少し日本にいたときにおぼえた。」「日本で何を?」

「観光したり温泉に行ったり・・しばしの骨休めだ。ついつい長居して十年ほど暮らした。」「長生きしてると

退屈だもんね。まあ百年に一回くらいはいいんじゃない。」「そのときに和風に染まったのでござるな。」

 

ヴェネツィア、サン・マルコ広場。ザワザワ・・「・・あ、いました。」「お待たせしました、みなさん。」

『ん?』くるっ、ぎょっ!「おお、彩たちか。」「びっくりした~。みんな口のまわり真っ黒じゃない。」

「イカスミスパゲティを食べてたのよ。」「やはりイタリアに来たらこれですね。」「と、リヴィのゴリ押しや。」

「なんか異様な光景ではありますが・・」「では僕たちもつきあいましょう。」パチン。「ヴォン・ジョルノ。」

「ニョッキと素のピッツァを。」「あたしはペスカトーレ。」「タラコスパあります?」『ないない。』

「・・おや?街はどうした?」『あ・・』「例によって気づかなかったけど・・」「おられないようですな。」

「例の二人に貼りついてます。」「もう捕捉したの?」「ホテルにチェックインして今はゴンドラの上よ。」

 

チャプチャプ・・「ん~・・これこそベニスの休日ね。」「たまにはこうのんびりするのもいいかな。」

街は船頭に化けている。(・・ごくふつうの若いカップルだね。なんかの間違いじゃないのか?)

 

「宿泊名簿から素性が判明しました。大樹龍耶と天震朱音、日本人です。ともに20歳。」「二人の経歴は?」

「龍耶は武術家として世界武者修行中。朱音はその幼なじみで、観光半分でくっついてきてるようです。でも・・」

「なんや?」「・・一週間前に小物の魔獣がイスタンブールに出現しましたよね。」「ああ・・あれか。なぜか

俺たちも十二神も駆けつける前に誰かの手でまっぷたつに・・おい待て、まさか。」「そのまさかです・・

この二人、そのタイミングでイスタンブールにいました。」「ということは・・その二人が魔獣を倒したと?」

「手口からみて、まちがいないでしょう。そしてそれ以後に二人の動向に異変が生じたと思われます。」

 

ゴンドラ。「すべてはイスタンブールのあれが始まりだったな・・」(ん?・・)「そうね・・あの怪獣のせいで

タッちゃんは死に、あたしはそのショックで覚醒した・・こいつを倒す力が欲しい。そう心から願ったの。」

「怪獣を一撃で葬り、俺まで蘇生させたんだからすごい力だ。」「魂を半分あげたから、あれほどの『気刃』は

もう出せないわ。まあたいがいのものは斬れるけど。」「その代わりに俺の『気砲』がある。二人でならば

あのくらいの怪獣はじゅうぶん倒せるはずだ。」「武装組織の襲撃も、練習と実益を兼ねてるからね。」

(やはり・・でも『覚醒』とは?そして死んだ人間を蘇生させる力・・『気刃』と『気砲』か・・)

 

「異変とは?」「公になってないけど、同様の手口の強盗殺人事件がベオグラードでも起きてたの。ガイ者は

民族主義過激派の連中。アジトにあった活動資金をごっそりやられたみたいね。」「もちろんそれ以前には

同種の事件は発生していません。」「あれば大騒ぎになるだろうしな。」「そっちの事件は内ゲバとかで

政府が秘密裏に処理したんでしょうね。」「そのとおりです。・・魔獣に遭遇してから、あの二人は変わった。

奇怪な能力を身に付け、強盗殺人を繰り返す・・」「でも最低限の理性は残ってるようですね。被害者は

ギャングやテロリストばかり。一般人にはいまだ手を出してません。」「たしかにそちら方面なら文句の出る

筋合いでもないし、国情によってはニュースにもならないだろう。うまいっちゃうまいやり口だぜ。」

「同じホテルにみなさんの部屋を予約しました。しばらくは様子をみるが良策かと。」「それがいいね・・」

 

少し離れたカフェ。「気づいてないようね。」「さすが綺羅です。魔獣の気配を精霊結界で隠せるのですね。」

「あのエリスって子が魔獣を探知するアンテナ役らしいからね。ガレオンの覚醒まで気づかせたくないわ。」

「でも綺羅、今回はこっそり来てくれたね。なんで?」「私用がてらよ。ヴォーダンたちには内緒よ。」

「それにしても綺羅の洋装姿ってはじめて見ましたね。」「さすがにあの和風は目立つからね。それにイタリアは

なかなか良い服がそろってるからたまにはね。」カチャ。「サングラスがまた決まってますわ。わたくしたちも

綺羅に倣って、それなりの恰好してますけどね。」「あら、パールのその服もシックでいいカンジよ。」

「お姉はフォーマルが似合うからね。私は黒で決めてみたわ。」「あたしはピンク!この発色いいでしょ~。」

「お待たせしました、ジェラートでございます。」コトン。「グラッツィーエ。やっぱ本場だもんね♪」さくっ。

「あ、ラクシュだけずるいです。」「私もアイス好きなんだからさ。」「お姉たち!ここで出ないでってば!」

「・・一人でなにやってんだか。(一_一; 三心同体だから一人でいいでしょ。」「そうはいきませんわ。」

「味覚はなぜか三人とも別なのよ。」「だから注文したのはあたしだってば!」どたばた!「アタマいた~・・」

「あ、タイタンたちが移動するよ。」「尾行して宿泊先をつかみましょう。スキあらば手も出せるでしょうし。」

「それはいい案ね。行きましょう。」がたっ。「・・(そして彼に接触する機会をつかまえなくてはね。)」

 

また少し離れたカフェ。「今回はヴァジュラと綺羅か・・少々やっかいだな。」「連中に報せてやるか?」

なお三人ともさすがに観光客らしい服装にしている。アテナは品の良いクリーム色のスーツでエリートOL風に、

砂風はシックながら高級な背広、そしてギネビアはあいかわらず原色とブランドまみれのコギャルである。

「ん~・・」ぽりぽり。「ギネビア?」「まっぷたつにくり抜き・・なんだったかな~。ここまで出てるのに~!」

「?・・ああ、さっきの話か。」「里の書庫で読んだおぼえがあるのよ。えーとえーと・・思い出した!アテナ、

魔獣七鎧聖は知ってる?」「なっ?!・・まさか七鎧聖の一体か!」「拙者は知らぬが・・」「古代の地球を

支配してた魔獣の中には、超能力だけではなく、知性をも持つ高等魔獣が存在したのよ。」「知性とな?」

「言葉を解し、さまざまな知恵を駆使できる魔獣・・いや、もはや魔獣と呼ぶべきではないのかもしれない。」

「その中でも強大な力と高い知性でエデンに君臨した七体の高等魔獣が通称『魔獣七鎧聖』。あの技はその一体、

天震鎧姫ゲッツェンディーネの『気刃』を彷彿とさせるの。」「天震鎧姫・・聞くところ女性でござるな。」

「七鎧聖のうちでは比較的温和な性格だが、いざ戦うとかなりの強敵だったらしい。天使の軍団を一撃で塵に

してしまったと伝承にはあった。」「いわゆる魔獣サイドの十二神というべきか・・だがなぜ人なのだ?」

「そこがわからない。魔獣は封印されているだけで、死んでるわけではないので転生できるはずがないが・・」

「神や精霊や魔族ならいくらでも天星人はいるけど、魔獣の天星人というのはさすがに聞いたことないわね。」

「むう、また知らぬ単語が。」「『天星人』とは『転生人』の四界での俗語だ。くだいていえば語呂合わせだな。」

「前世が何かによって神天星・霊天星・魔天星と分類されるの。」「ふむ・・で、魔獣の転生はありえないと。」

「今まで出てきたような本能だけの低級魔獣は当然として、七鎧聖ほどになると転生はさすがに可能性はあるが

現実に死んではいないのだからそれ以前の問題だ。」「・・いえ、ひとつだけ可能性があるわ。」『なに?』

「幽体離脱なら。」「それこそ無理だ。よしんば成功したにしても、いったん転生してしまうと二度と肉体には

戻れなくなる。」「永劫に封印された肉体に未練があるのかしら。あたしだったらさっさと乗り換えちゃうわ。」

「・・その可能性、あり得るな。」「ありえない。人間の寿命は短い、まさに刹那的なものだ。永遠の肉体を

捨ててまでそのような挙に出るとはとうてい思えん。」「そうかしら?だからこそ面白いんだけどね・・」

カツカツ・・「皆様、タイタンたちと同じホテルがとれました。」「ご苦労さまユーディ。」「行こうぞ。」

 

ホテル。「ここのディナーはパーティ形式だ。みんなそれなりのカッコウをしてきてくれよ。」『おう。』

「イエティ、準備を。」「かしこまりました。では失礼して」タン。ズボッ!「!・・アラクネさんの指輪に?」

「この指輪の中にわたしたちの服や備品が入ってるのよ。」「工神フェルメールの作や。いわば携帯アパートやね。」

「・・どうりで手荷物が少ないと思った。」「世界各地でこれまで買ったものもみんな入ってますよ。」

 

そして夕刻。ザワザワ・・「意外といるんだな。」「名だたる観光地だからね。」「正装しての食事なんて

ルーマニア以来ですね。」「ま、たまにはえーんちゃうか。」「わたくしは毎食でもよろしいですが。」

「・・このドレス、ちょっと小さくなったかな。」「ムネが成長したんじゃないの?」「まあ年頃だしな。」

 

「いい雰囲気ね。」「神都の饗応を思い起こさせますわね。」「タイタンたちは・・あそこね。第四は・・」

「たしか忍者部隊とかいう連中だったっけね。」きょろきょろ。「・・あ、三牙将みっけ。」「どこどこ?」

 

「こういった形式のディナーも久しいな。」「実家じゃしょっちゅうだったな~。」「むう、この洋風正装は

窮屈でござる。」「民族衣装でもいいはずだが。」「いまどき紋付き袴を持ってる日本人は少ないってば。」

「ユーディットも正装するとみちがえるのう。」「お褒めにあずかり光栄です。」「いろんなファッション誌で

デザイン検討した甲斐があったわ。」「私たちより上等に見えるが、まあそれはそれでよく似合ってるな。」

 

「おじゃま虫の連中か・・綺羅、どうする?」「どうもこうも、ここでちょっかい出すと無用の混乱になるわ。

ここのところは様子を見ましょう。」「あら、いざとなったらわたくしの歌でみんな眠ってもらいますけど。」

「お姉は純情そうで私らより過激なとこあるよな~。」「そうそう。」「・・あ、第四の連中が来たわ。」

 

「あら、みんな似合ってるじゃないの。」「幽の正装ってのも目新しいな。」「というよりおミズ系ですね。」

「・・(-_-メ そういう蘭はマントないとお子様ね。」「いちおう美少女ですから。」「ムカつく~!」

「ところで街は?」「ここにいますよ。」『どきっ!』ばっ!「あいっかわらず気配もつかめんあんちゃんやな。」

「街、彩を見なかった?」「まだ部屋にいましたよ。伊達メガネで悩んでましたな。」「またムダな抵抗を・・」

「どう繕ったって隠せない美形ですからね。有名人でもあるし。」「賭けない?今夜は何人が夜食になるか。」

「・・夜食って?」「エリスちゃんはまだ知らなくていいことよ。」「ちなみに最高記録は五人でした。」

「ようもつな~。」「3Pが一組あったようですな。」『おいおい。』「・・あ、彩さん来たよ。」『なに?』

 

カツッ。『え?・・キャーッ!ステキなお方~!』ドドドド!シュン。すかっ。『あれれ?』・・すとっ。

「やれやれ。これだからパーティーディナーは苦手なんです。さて皆さんは・・ん?」くるっ、つかつか。

「あれ?彩こっちに来ないわね。」「さっそくおメガネに適った女性がいたようで・・あれは?」『アテナ?』

「うわ、美形~。」「え?・・あっ!見つけた!」「どうしたの綺羅?」「パール、先に行ってガレオンを

覚醒させておいて。私は連中の注意をしばらくひきつけておくから。」「わかりましたわ。」ヒュッ・・

 

「おい、アテナ・・」「・・気づいている。」つかつか・・ぴたっ。「ご一緒にどうでしょうか、お嬢さん。」

「この場で貴様だから自重したが、私の後ろを取って生きてたヤツはいないぞ。」「あなたらしい返答です。」

「アテナ、もうちょっと愛想よくしたら?」「私にそれを望むのは無理というものだ。」「それでいいんです。

あなたはあなたらしく、それが一番です。」「・・知っていると思うが、私は八百比丘尼だぞ。」「その呼び方は

ふさわしくないですね。千年女王がよろしいかと。」「よく知ってござるな。」「第三の愛美くんにさんざか

あれ読めこれ読めと押しつけられましたので。」「あ~、あの貸本マニアの。あたしもいずれ借りよっかな?」

「というわけで、お借りしてよろしいですか?」『どうぞどうぞ。』「人を貸本扱いするな!」「あら、ならば

私が立候補しますわ。」はっ!『・・綺羅?!』ざざっ!「待ってまって。今夜はやりあう気ないから。」

「来てたんですね。」「あなたが出てくるかなと思ってね。」「堂々と顔を出すとはさすがは綺羅だな。」

 

どかどか!「あら、タイタンたちまで。」「綺羅、どういうつもりだ?」「今回は十二神としてではなく、

あくまでプライベートよ。」「信じられません。」「ならここで一戦まじえる?周りの人たち巻き込んで。」

『う・・』「・・綺羅はんなら躊躇なくやるやろうな。」「人質とられたも同然ということね・・うざったい!」

「てっきり天震鎧姫がお目当てかと思ったわ。」ぎょっ!『なんだって?!』「あ、やば・・」「まさか・・

あの魔獣七鎧聖の天震鎧姫か!」「いえ、だから可能性とゆーか容疑者とゆーか。」「ありえないわ。七鎧聖の

封印はちょっとやそっとじゃ解けない。たとえ銀河潮流が変化しようと効果はいささかも揺るがないはずよ。」

「・・あ、皆さん、ウワサをすれば何とやら。」『えっ?』くるっ。「ほらあの二人です・・容疑者は。」

 

カツカツ。「アカネは正装するとまた印象がちがうな。」「カジュアルでもフォーマルでも着こなすのが

本当のレディーってもんよ。」「さすがにいろんな国の人たちがいるな。・・まずはあの辺に陣取ろうか。」

「おい、こっちに来るぞ。」「どうする?」「まずはさぐりを入れるのが基本やな。」ごしょごしょ・・

「・・なんでここで綺羅が密談に加わってる。」「なりゆきというか、ちょっと興味もあるしね。」

 

「あの、こちらよろしいですか?」「あ、どうぞ・・」「ヴォーナ・セーラ。皆さんはどちらからですか?」

「まあ、いろいろですね。お二人は日本の方?」「ええ、そうです。」「あー、なら日本語でええなー。」

「関西弁?!」「ほやで。ちょっと勉強したってん。」「お上手ですね~。」「びっくりしましたよ。」

わいわい。『・・イエティ、どう見る?』(神聖語)『ふむ・・外道照身眼。』きらっ。『・・ご主人様、どうやら

最悪の事態のようですぞ。』『ということは・・』『かつてわたくしが目撃した天震鎧姫の気に間違いございません。

ただ・・』『なに?』『・・二つに分かれているようです。あのお二人に。』『二つ?』『二つを合わせると

かつての天震鎧姫の気になりますな。』『変わった事例ね・・魔獣転生もそうだけど、二つに分かれての転生と

いうのは聞いたことがないわ。』『だからなぜ綺羅が加わってるんだ!』『だって面白そうなんだもの♪』

『・・あら、分かれたんじゃないわよ。』『俺が分けてもらったんだ。』ぎくっ!『なっ!・・神聖語を?!』

『わかるのか・・この言語が!』『なにいってんだか。神聖語はあの当時から世界標準語だったでしょ。』

『俺たち七鎧聖にも神聖語は第二言語、つまり基本だった。』『懐かしいのでついつい聞き入ってしまったわ。』

『・・本当に天震鎧姫なの?』『なんならお見せしましょうか?ここで。』すっ・・『待った!・・わかった。』

『そういうあんたたちは何者だ?俺たちの前世を知っているということは・・』『・・憎い神の連中かしら。』

 

「・・わからない言語で話してますね。」「蘭、翻訳できない?」「・・できません。わずかに古代ルーン語が

近いようですが、音律がだいぶ異なります。」「アテナとギネビアはどうか?」「わかるが・・」「これはちょっと

ヤバい雰囲気になってきたわね・・」「それは言葉がわからなくてもわかります・・みんな、臨戦体勢を。」

 

『・・神ならどうする?』『俺たちを放置しておいてくれるなら敵対はしない。』『その逆なら殲滅するだけよ。』

『殲滅?・・この戦力差でできると思うの?』『なんでできないと思うの?』ふっ。『やめろ綺羅。天震鎧姫が

伝承どおりの相手なら、ここでやり合うのは避けろ。』『いっておくけど、あたしたちは低級魔獣の復活なんか

どうでもいいの。ただ二人で旅ができればそれでいい。』『では強盗殺人のことはどう説明するのですか。』

『旅費稼ぎさ。とはいえ一般人から奪うのはさすがに気がひけるので、文句の出ないところを狙ったがな。』

『ということは、これからも続けるんやな。』『そういうことね。まあカタギには手を出さないから安心して。』

『そういう問題じゃないわよ。』『・・提案があるわ。』『綺羅?』『私に手を貸さない?報酬は思いのままに。』

『こらこら!』『悪い話じゃないな。』『で、あなたはどなたかしら?この連中とは異なるみたいだけど。』

『精霊界女王・綺羅よ。』『ああ・・なら保証は万全ね。タッちゃん、どうする?』『仕事の内容によるな。』

『人類の削減作業よ。そうね・・今の一割残せばいいかな。』『綺羅!』『えーと・・45億人殺せばいいのね。

こりゃなかなかタイヘンだ。』『残りの連中を呼べばたやすいか。しかしだ・・』『問題は報酬ね。そうね・・

このエデンまるごとじゃないと合わないわ。』『な!』『あら、やっぱりそうなるか・・交渉決裂ね。』キラッ。

 

サン・マルコ広場。「この下ですね・・覚醒の歌。」すぅ・・♪沈みゆく都に眠る鋼の獣よ 目覚めの時がきた

いまこそ古き褥を跳ね上げよみがえれ その堅き甲羅であらゆるものを打ちくだけ・・♪・・ゴゴゴゴゴ。

「きたわ。」「ふふふふっ、無敵の装甲魔獣ガレオン、復活だよ!」「ではこちらも足止めを準備しましょう。」

 

ぴくん!「・・魔獣が!」『エリス?』ピリッ。「タッちゃん!」「ああ・・感じる。これはガレオンだ。」

『ガレオン?!』「あの有名な甲殻魔獣か!」「これはまずいですぞ。ご主人様のプロメテウスではガレオンの

装甲は貫けません!」「なんだと?!・・綺羅か!」「ちがうちがう。今回はオフだっていったでしょ。たしか

ヴァジュラ三姉妹の出番だったはずよ。」ぴくっ。「ヴァジュラ?・・アスラ神族の?」「?・・ええ。」

「タッちゃん・・」ちらっ、こく。「行こう、アカネ。」ダッ!「どこへ行く?」「決まってるだろ。」

「ガレオンとヴァジュラをぶっ倒すのよ!」タタタ・・『・・えっ?』「・・どういう風の吹き回しだ?」

「とにかく行きましょ!どうにかしてガレオンを倒す手を考えなくちゃ!」「ああ。行くぞみんな!」『おお!』

「おっと!・・彩、綺羅が変な動きをしないように見張っててくれ。」「わかりました。部下は同行させます。」

ダダダダ・・「けたたましいことね。」「人ごとのように言うな。」「あら?・・なぜアテナまで残ったの?」

「彩だけではどうにも心配だからだ。」「女性は何人でも大歓迎ですよ。」「とりあえず、飲みましょ。」

 

タタタ・・ズズズズズ!「あそこだ!」「サン・マルコ広場よ!」ゴバアアアアッ!シィィィィ!ズーン!

「うわ、でっかい巻き貝。」「武器はあの無数の針のような甲殻そのものです。」「あのトゲが高速振動して

いかなるものも突き崩すのでございます。」「攻防一体かや。」「当面は被害を食い止めるために足止めするぞ。」

『そうはいきませんわ。』はっ!ザザーッ!・・すっ。「・・パールヴァティ!」「ガレオンはやらせません。」

すぅ・・はっ!「いかん!みんな耳を」♪朝はまだ来ない 夜は始まったばかり 眠りの精は誘う・・♪

『うっ!』よろよろっ。「パールヴァティの・・眠りの歌・・」「しもた・・こら不覚や・・」がく・・

「うふふふ。さすがにパールお姉の歌はよく効くね。」「あとは私の虹剣アストラで首をはねればおしまい。」

シュィィィッ!「まずはタイタンから・・アーレス、ごめんね。」ぐっ・・ボッ!パキッ!「・・なに?」すっ。

「なっ?!・・刃がなくなってる!」『ラリホーしてからクリティカルとはさすがアスラ神族、卑劣なやり方ね。』

「だれ!」「ただの通りすがりさ。」すっ。「辻斬りはやっぱ止めないとね♪」ひょい。「・・人間だと?」

「わたくしたちがアスラ神族だと知っている・・いわゆる秘密部隊の方ではないようですが。」「第三勢力さ。」

「なんでもいいよ、ジャマだから殺っちゃえ。バズーカ!」ジャキッ、ドオンッ!「気砲!」ドンッ!ボシュッ!

「なに?・・ロケット弾頭が消えちゃった?!」「ほい。」ちょい、ピシッ・・「・・なに?」パサッ・・

「?!・・髪が!」「その気なら首ごと剃ってるけど、まずはごあいさつよ。」「この~・・アマゾネス!」

ザザッ!「雑兵か。準備体操にはいいが、面倒だな。」「ニンジャのみなさん、お願いできる?」「ニンジャ?」

『いいわよ、ザコはまかせて。無限影穴。』ズボズボッ!「うわっ!」「ぎゃあっ!」「なに?!レギオンが

呑みこまれた!」『影の落とし穴よ。底はどうなってるのか私も知らないけど。』ズズ・・「幻影の幽、見参。」

「影女?!・・誅殺!」ダッ!ズバッ!ドバッ!「ぐわっ!」「きゃっ!」「なっ!・・今度はなに?!」

「敵は?!」「見えない!」きょろきょろ。ドスッ!バキイッ!「ぐはっ!」「かはっ!」・・どさどさっ!

「『見知らぬ街』はここですが、気づいてくれませんなあ。」ぎょっ!「いた!なぜ気づかなかった?・・はっ?」

バサアッ!スタッ。「電脳の蘭、参上!」「一斉に斬りつけろ!」ダダッ!「ファサーデ・トルネート!」

バサササッ!ズバシャアアアーン!『うわあああっ!』ズダダダーン!「私に一斉攻撃は自殺行為です。」

 

「あっちはあの三人でなんとかなるだろう。俺たちはタイタンたちを起こそうや。」「手伝うでござる。」

ぺしぺし。「起きないわね。」むに~!「拙者の気付け薬でもダメでござる。」「・・しょうがない、アレを

やりますか。あんた、クツ下。」「なに?」「う・・」ささっ。「あれ?エリスちゃん、なんで下がるの?」

「・・拙者も後退しよう。」ささっ。「砂風まで?・・あ、思い出した・・あたしも下がってよ~っと。」ささっ。

「状況がよくわかりませんので判断不能。」「いーからユーディーも下がりなさいって。」わしっ、ずるずる。

「じゃ、よろしく~。」ささっ。「ベルまで逃げるんかよ。・・ちょいと荒療治だが、非常事態だからカンベンな。」

ぬぎっ。つ~ん!『うわっ!』「くっさ~!ここまで臭うわ。」「オヤジのミズムシってのはサイテーね!」

「仕込んだギネビアが言うな。」「確か使い魔の白痒菌でしたか。」「・・いいクスリないのかな。」

「ほれ。」ひょい。『・・うわっ!』がばっ!「くっさ~!なにこれ!」「とんでもない刺激臭です!」「ゲホゲホ!

こらたまらん!」「いやはやこれは!」「よっ。さすがに起きたな。」「ナンバー6、さっさとそれをしまってくれ!」

「おっと、そうだな。」ごそごそ。「起こすにしても手段ってものがあるでしょ!」「ひどいです~。まだ鼻が

ツンツンしますよ~。」「あ~、目までチカチカしとるわ。」「毒ガス攻撃を食らったような気分でございます。」

「ところで状況は?」「にわか連合軍ってとこだ。」「えっ?・・あっ!天震鎧姫が!」「ヴァジュラと?」

「そこの神さんたち。起きたんならガレオンの足止めをしといてくれ。」「このダダねーちゃん倒すまででいいわ。」

「なんやと!」「よせフェイ。俺たちの役割を果たそう。」「・・へえ。」「では行きましょう!」ダダッ!

 

そのころ、ホテル。「ナルシス・・ですか?」「そう。あなたは私の恋人だった精霊騎士ナルシスの霊天星なの。」

「その名なら聞いたことがある。・・精霊界最強の騎士。だがアスガルド戦役で惜しくも討ち死にしたとか。」

「数十万の敵軍勢を道連れにね・・それで戦役は終結したけど、滅びちゃなんにもならないじゃないのよ・・」

ぐいっ。「少しお酒が過ぎるようですが。」「かまわないわ・・あなたの部屋で介抱して。」「・・気持ちは

わからんでもないが、私が先約だ。」「えっ?」「あによ~!こっちは二千年先から予約してんのよ。なんなら

実力で」ぽんぽん。「まあまあここは穏便に。僕がまとめて面倒みますし。」「ほう、たいした自信だ。」

「ほんじゃさ、どっちが先に彩をイカすか勝負する~?」「・・えっ?」「・・よかろう。その勝負、のった。」

「決まりね。」ぱしっ。「とゆーわけで、お部屋へキリキリご案内~。」「酔ってるぞ。」「やれやれ・・」

 

「さて、こっちもさっさと終わらせましょうか。」「・・こんな侮辱を受けたのは初めてよ。パール姉!」シュン。

「わかってます・・本気で神罰を下しましょう、わたくしの聖歌で!」「パールヴァティが・・怒った!」

♪立ちふさがる壁を打ち破る それは愛と勇気という名の槌・・♪シィィィ・・ドオオオオーン!「なんだ?!」

「パールヴァティの必殺技『ディスラプト・コラール』、分子破壊聖楽よ!」「なるほど。」「なかなかだ。」

ズバシャアアアーッ!ゴォォォ・・「直撃では塵も残りませんね。」『どこが直撃なの?』「・・はっ?!」

ピッ。ズルッ、どさっ!「くうっ!・・腕が?!」・・ボシュッ!「うあっ!」がくっ!「・・左足が!」

ザッザッ・・ザッ。「残念でした。HPはカケラも減ってないわよ。」「『ひらめき』を使ったわけじゃないがな。」

「そんな・・?!」「流線型の気壁で破壊エネルギーはすべて受け流した。天震鎧姫の力をあまくみるな。」ぎょっ!

「天震・・鎧姫?!かつて始祖神アスラが封じた魔獣七鎧聖!」「だからアスラ神族には怨み骨髄なわけ。」

「一万年の封印の礼、ここでさせてもらう。」ボオッ。「くっ!・・」「ちょっと待った。」ぱしっ。『なに?』

「勝負はついた、あんたらの勝ちだ。・・これ以上は意味ねえんじゃないか?そいつもアスラとか自身じゃないし。」

「でも!・・はっ?!」「・・まさかあんたは。」「エリス、全治までどのくらいかかる?」「・・六ヶ月だね。」

「ヴァジュラさんとやら、ここでおとなしく退いてくれ。どのみちそれではもう勝負になるまい。」「・・」ちらっ。

「・・しょうがないな~。ね、タッちゃん。」「そうだな。これ以上なぶっても無意味だ。」「・・半年後に必ず

リベンジするから!」「そのころには決着はついてるさ、どういう結末になろうともな。」「・・」シュン・・

(あれでいいの?)(神はプライドが高い。もう二度と仕掛けてくるまいよ。ましてや相手があんたらなら。)

「さて、厄介なほうを叩くか。」「今の水入りのぶん、ガレオンにぶつけてやろっと。」「よろしくな。」ふっ。

 

ゴオッ!ドカアアアーン!『うわっ!』ズダダダーッ!『くっ!・・なんて強力な触腕なんだ!』『いかなる攻撃も

あのカラに阻まれてしまいます。』『耐熱性もカンペキでツボ焼きにもできひん。』『クール宅急便も無理ですな。』

「触腕まで甲殻で覆われてるなんて・・どこ攻めりゃいいのよ!」「お待たせ。」ぽん。「ん?・・あんたたち。」

「ようやく手が空いた。」「ガレオンの始末にはあたしたちの能力が有効よ。」「・・シャクだけどそのとおりよ。

ここはプライド抜きで・・お願い!」ぱん!「おっけい!まずいったん下がらせて。」「戦略的後退よー!」

『おお!』ざざーっ。「やるぞアカネ。」「ええ、タッちゃん。」すっ・・ぐっ。「おおっ?ディープキス!」

ズズズズ・・『なんだ?』『大気が・・鳴動してます!』『思うように飛べへん?』・・はっ!『皆さん伏せて

くださいませ!これは天震鎧姫の全力攻撃の予兆でございます!』『なんだと!・・伏せろ!』『わわっ!』ばばっ!

『怒轟層圏!』ドオオオンッ!シィィィィ!・・ピキッ、ピキピキピキ!パキイイイーン!シュゴオオオーッ!

『おお!』『ガレオンが・・砕け散っていく!』『まさに・・天震鎧姫の空間破砕奥義!』ゴオッ!ガラガラガラ!

『うわっ!』『なんやこの衝撃と轟音は?!』『破砕された空間に周囲の空気がなだれ込んだ衝撃です!』

『むう、まさに大気の怒号でございます。』ゴロゴロゴロ・・「・・ふう。」ちゅるっ。「一件落着だな。」

 

街頭の24時間バール。もぐもぐ。「生ハムサンドがおいし~。」「力を使うと腹がへるからなおさらだな。」

「今回は助けられたな。ここは素直に礼を言おう。」「へえ・・魔獣に礼をいう神ってのは初めてよ。」

「基本的に神々は好かないが、あんたたちは別だな。」ズズ~。(エスプレッソ)「そこで相談なんだが、

うちでギャラを出すからもう強盗はやめてくれねえか?」「金額しだいね。」「ベル、契約書を。」「これ。」

ばさっ。「・・ほう、意外と出してくれるんだな。」「条件は・・無用な破壊・殺戮の停止のみ?これだけ?」

「いわば保険金だ。あんたらが本気で暴れたら俺たちとしても対応せざるをえない。そういう事態は避けたい。」

「これだけのギャラなら魔獣退治をやれと言われても納得いくが。」「そこまで頼むのはさすがに厚かましいわ。」

「・・なら、こちらの自由意志で魔獣を狩ってもいい?」「・・いいのか?同族だろうに。」「人間も神々も

しょっちゅう殺しあってる。それと同じだ。」「魔獣もいろいろあんのよ。」「なるほどな・・では成立だ。」

「しっかし空間破砕攻撃ちゅーのは驚いたで。神々でもできんのそうそうおらんで。魔界は知らんが。」

「でもこうやってキスしないと出せなくなっちゃったの。」「二つに分けた魂を合わせる手段のひとつさ。」

「ひとつ?・・他にもあるの?」「ふ・・それは言えない、な。」「そのうちわかるわ、そのうちね・・」ふっ。

「さて、夜も白んできたことだしホテルに戻って一休みしよう。」「そういやアテナはどうなったかしら?」

「彩どのと一緒に綺羅を見張っておるはずだが。」「・・隊長のことだから3Pになだれこんでそうですね。」

むか。「たく、ちょっと顔がいいからって手当たり次第コマすんだから!そのうち変なビョーキもらうわよ!」

「彩さんの場合はまわりが放っておかないと思いますが。」「だからムカつくのよ!ワインおかわり!」だん!

 

ホテル・彩の部屋。「もうすぐ朝か・・」くるっ。「す~・・」「く~・・」「僕の一人勝ち、でしたね。」

 

ロビー。「みなさん、ご苦労さまでした。」「彩、綺羅は?」「帰りましたが。」『は?』「・・何もせずに?」

「いえ、正確には何もしなかったわけではありませんが。」ぴくっ。だだっ!くんくん。「幽、なにを?」ぴく。

「・・二種類の香水・・影ハンマー!」すっ、ぐっ、ずるる~っ!ブオン!「影から巨大ハンマーを?」ぐわっ!

「こーのスケコマシがあああーっ!」ブン!「おっとっと!」ズドオオオーン!「逃げるな隊長!副長として隊の

風紀は粛清するわよ!」「でも僕にとっては生活の一部なんですけど。」「だったらあちこち手を出さずに手近で

済ませ」「手近って?」はっ。・・かあっ!「な、なんでもないわよ!」ぽん。「わかった。ではアラクネさんに

専属になってもらおう。」「わたしはかまわないわよ~♪」「こらこら。」「・・むきいいいーっ!」ブンブン!

「よっとっと。」ドコドコドコン!「二人とも飽きずによくやりますね~。隊長も知っててやってるし。」

「まあ幽さんは一緒に育った妹みたいなもんですから。そこを踏み越えたくない心情はわからんでもないですが。」

 

「アテナ、どうだった?」「・・言わなきゃダメ?」「ダメ~。」「単独任務報告は正確に、が基本でござる。」

「左様です。兵器のサイズとその用法に応用に効果と情報項目は多岐にわたります。」「誰だユーディに変な知識を

つけたのは。」「ユーモアと言ってね。さ、きりきり話しなさいってば。」「・・ここじゃまずいから部屋で。」

 

アウターヘブン。「ヴァジュラの容態は?」「重傷だ・・治癒と再生にはかなりかかる。およそ半年はな。」

「もはや我らとの同行も無理じゃな。神都に戻すのがよかろう。」「・・七鎧聖が転生したとは計算外だった。」

「もはや魔獣を使っての人類削減などという事態ではないぞ、ヴォーダン。」「下級魔獣ならともかく、七鎧聖を

御するのは不可能だ。また転生したとはいえヴァジュラをあっさりと倒したとこからも、その能力はいささかも

衰えてはいないということになる。」「うむ・・さて、いかにすべきか。」『今までどおりでいいんじゃない?』

『むっ?』スゥゥゥ・・「綺羅、どこに行っておった。ヴァジュラがやられたというのに。」「聞いたわ。でも

転生した七鎧聖はまだ一体、しかも温厚な天震鎧姫よ。こちらからちょっかい出さないかぎりだいじょうぶ。」

「じゃが他の六体も転生しておる可能性があるぞ。」「あら・・ボスタング様は七鎧聖が恐ろしいんですの?」

「何をいうか!七鎧聖など恐るるに足らぬ!」『そのとおり。七鎧聖ならば相手にとって不足はない。』ズン!

「ダーリンならぜったい勝てるもんね。」「ミカヅチとフェルメール。」「魔獣をも相手にするか。これは

なかなか面白くなってきたな。」ゴルルル!『タイタンたちとまとめて始末すればいいことです。』ヒラヒラ。

「レオパルドンとシカンナ。」「・・俺たちはあと9柱もいる。なんとかなるだろう。」すっ。「アル。」

「わかった。作戦は現状どおりとする。ただし七鎧聖の転生には注意しろ。」ふっ。(そう、それでいいのよ・・)

 

ホテルの部屋。『・・お~。』「顔だけではなかったのでござるな。むう・・さすが伊賀若頭、それほどとは。」

「綺羅ほどのベテランがそんなに乱れるなんてね~。」さっ。「アテナさま質問です。中田氏でしたか?」

「ギネビア!ユーディットに何を教えこんでる!」「あたしゃ教えてないわよ。」「いえ、下忍のみなさんの」

ぎょっ!「まさか?!」「砂風!監督不行き届きだぞ!」「そ、そのような事実はない!」「みなさんの部屋に

あった本でですが。」『・・本?』「これです。」どさっ。「・・なんだこれは。」「世界各国のエロ雑誌ね。」

ぱらぱら。「・・うわっ!すご~。アテナこれこれ。」「ん?・・ぶっ!モロ!」「とても勉強になりました。

四十八手とかGスポットとか。」「そんなものはおぼえんでいい!」「むう、こんなものを買っておったか。

みな元気な男だから無理もないが・・これとこれは没収だ。」さささっ。『ガメるな砂風!』すぱあああーん!

 

エル・ドラド。「・・ナンバー6、あれでよかったのか?」「七鎧聖を野放しにするってのは考えものよね。」

「なに、鈴はつけたさ。」「少なくとも強盗殺人はしなくなるでしょ。金銭的な問題はクリアできたし。」

「・・あまいね。」『エリス?』ピッ♪【昨夜、ベルリンで民族主義過激派のアジトが何者かに襲撃され、

国際指名手配テロリストを含む全員が殺害されました。目撃者の話では犯人は若い男女で・・】『なにっ?!}

「またやったのか?」「・・今回はお金はとってないね。たしか止めたの強盗だけだったよね?」『・・あ!』

「ほな今回は殺し自体が目的かや!」「おそらくカンを鈍らせないためのトレーニングではないでしょうか。」

「まいったなこりゃ。・・ま、カタギが相手じゃなきゃ大目にみようか。」「六の字どのもけっこう過激ですな。」

 

♪ストーンヘンジに立つ少年 光るその眼は何を見る

♪見えない魔獣バルガード 足音だけしか聞こえない

♪第二の鎧聖 金眼念聖 ザ・カートカの笑い声

♪闇と光の破壊念 決め手は「ゼロ」の到達点

♪『足音を聞け』 あいつは街に向かってる・・ 




アウターヘブン。「次の魔獣は?」「バルガードだ。」オオッ!ザワザワ・・「透明魔獣バルガードか・・」
「その実体を見た者は誰もいないという伝承じゃ。」「バベルの図書館所蔵の『魔獣大鑑』にも挿絵はなかったね。」
「今回はちょっとホネが折れそうね。私が行きましょうか?」「いや・・オレが行く。」「アルカディア?」
「どうもイヤな予感がする・・それに前回の七鎧聖のこともある。転生したのが天震鎧姫だけとは思えん。」
「アルカディアならそのような緊急事態にも対処できよう。」「では、頼む。」「・・行ってくる。」フッ・・

ニューヨーク・マンハッタン某高層ビル。「・・・・」『ユキ、見える?』「・・はい。見えない魔獣・・
空間の貴公子・・そして・・あの少年は?」『もっと心の扉を開いて。そうすれば全てが見えるはずよ。』
「・・あの子も魔獣?・・七鎧聖・・金色の眼・・こっちを見た?!」『そこまで!』ぱん!・・はっ!
「はあっ、はあっ・・あぶなかった。」「相手もサイキッカー、しかもその精神力は人間の域じゃなかったわ。
無理にでも引き離さなかったら、ユキは殺されてたかも・・」「いったいあの少年は・・?」「人間だけど、
その中身は外見とはケタちがいに離れてた・・ユキ、サイキック能力開発プログラムを少し変更するわ。」
「変更?」「あの存在に対抗できるのはあなたのサイコ・バーストだけ。でも今よりもさらに高い段階での
制御じゃないと話にならない。ちょっと厳しくなるけど、いい?」「お願いします、『銀河の女帝』。」

イギリス南部。「・・誰かがボクを見ていたな、かなり遠くから・・人間にもなかなかの力を持つヤツが
いるもんだ。『あいつ』の提案を受け入れて自由になれたが、どうやら退屈しなくて済みそうだ。さてと。」
ザッ。「ストーンヘンジか・・よくもまあ壊されずに残ったもんだ。でもそれも今日までのこと。」キラッ。
シュババババッ!「切り込みよし。次は回し抜きと。」キラッ。ズ・・ゴゴゴゴゴ!「でっかいフタだね。」
ゴゴゴゴ・・ズズズズズ。「出ておいでよ、バルガード。」シーン・・ズシーン、ズシーン、ズシーン!

第26夜「足音を聞け」 - 透明魔獣バルガード登場 -

エル・ドラド。「次はイギリスか。」「ここだ。」ぱっ。『ストーンヘンジ?』「これはまたワケありの場所ね。」
「なにかあるの?」「魔獣の封印はいくつかの形式があるんです。」「カンタンにゆーと形になっとるものと
なっとらんものやな。」「いわゆる謎の古代遺跡というもののいくつかはその形ある封印でございます。」
「・・形ある封印はいつか誰かに壊される。なぜあえて形にしたの?」「封印の伝承が途絶えたからだ。
聖地として手つかずで残されているものもあるが、時と静謐は忘却を生む。」「あら、珍しく叙情的。」
「三日前の夜からストーンヘンジ周辺の村落が何者かに次々と襲撃され、住民が喰われている。」「目撃情報は?」
「それがね・・見えないのよ。」『見えない?』「正確に言おう。何か巨大なものが家をつぶし、人を喰った。
だが誰一人としてその実体を見たものがいない・・目の前にいるはずなのにな。」「透明な魔獣か・・アラクネ、
心当たりは?」「・・透明魔獣バルガード。まず間違いないわ。」『バルガード?!』「あの有名な魔獣か!」
「・・有名って?」「ある人間が著した書に登場したことがあるんです。」「あん時は天界でもえらい騒ぎに
なったな。そやつは潜在的サイキッカーやったそうやが、見たもんが悪すぎた・・太古の魔獣たちとはな。」
「なにせ緊急公会議が開催されるほどでしたな。そして全会一致で・・」「あれは過剰反応だ。放っておけば
単なる世迷言なのに、ヘタに口封じに異様な死に方をさせ、かえって後世に語り伝えられる結果になった。」
「あまつさえ冥界の手違いで近世に転生させてしまい、小説家として世間に流布させちゃったものね。よく責任者の
首が飛ばなかったわ。」「・・昔は迷信で歴史が左右された時代。今なら単なるホラー小説で済んじゃうね。」
「とにかく、現地でスペクトラムと合流する。」【ドーバー海峡上空到達。ブリテン島が見えてきたぞ。】

イギリス・ソールズベリ。「あれ?・・結希は?」「ただいま修行でアメリカに単身出張中ですわ。」
『高位サイキッカーがニューヨークにおってな、その方の指導でサイキックに磨きをかけとるんや。』
「へえ~、あなた達より高位の人がいるんだ。」「・・ボクの師匠だ。」はっ!「・・あのヤローか!」
『アラクネはん、なんか恨みコツズイって感じやね。』「一郎さん、わたしもちょっと出張してくるわ。」
「おいおいどうする気だ?」「ニューヨーク決戦!」びっ!「あんたが都市破壊したらあかんやん!」
【アラクネさん、糸でビルからビルにってできるの?】「ナナちゃん、それこないだ観た映画でしょ。」
「ああ、あれね。やったことないけど、やればできると思うわ。」「女性のウOコ座りは目のやり場が・・」
ブロロロ・・キキイィーッ。「トレーラー?」ひょい。「みんな乗ってくれ。ストーンヘンジに向かうぞ。」
「あんた、なんでまた?」「これじゃないとみんな乗れないだろ。」「・・バスじゃないのがらしいよね。」

『うわ~。』「コンテナの中はリビングか。」「動く応接室ね。」「たしかにこれならバスより快適ですね。」
「おんや?リヴィ、エリスは?」「酔うから前の助手席がいいそうです。」「お身体が弱いんですのね。」
『そうかぁ?見た目よりも頑丈ちゃうか?』『そやそや。あれは』チリッ!『あいた!』「ニーコ、どうした?」
『いまなんか・・?!』(余計な詮索はしないでね・・)(だれや?!・・はっ!)(ま、まさか・・)
『・・い、いや、静電気のせいや。』『そ、そやな。あらビリッとくるからイヤやわ。』あせあせ。「・・?」

運転席。ブロロロロ・・「ちょっときわどかったな。」「陰口はキライだから。」「でも見た目よりも頑丈なのは
ホントよね?」ふっ。「まあね。毎日リヴィにごちそうしてもらってるし・・」「で、例の件はどうなの?」
「・・マジで好き。ずっと一緒にいたい。」「よし。全てのカタがついたら盛大な式を挙げてやろう。かつての
オレとかーちゃんのよりもな。」「ごぢんまりでいいよ~。」『親の楽しみだっつーの。』「はいはい・・」

忍空挺「飛燕丸」。『頭領、まもなくドーバー海峡を越えます。』「了解だ。ストーンヘンジへ急げ。」パタン。
カタカタ・・「・・あ、これこれ。『魔界王立電子図書館』。」「そんなコンテンツがあったのか。」
「一般サーチャーには引っかからない秘密ドメインだけどね。魔界はけっこうIT化進んでるのよ。」
「で、魔獣バルガードに関する記録は?」「えーと、検索・・魔獣、バルガード・・あったあった。」
「どれどれ・・神聖語か。」「むう、拙者では読めぬ。」「えっとね・・『透明魔獣バルガード:四足種、肉食。
不可視な肉体を有し、目視はきわめて困難。ゆえに足跡のみで四足種と類別したが、体型は確認されていない。
武器は触手もしくは舌と推定。なお、喰われた者が消化されていく過程が見えないこと、また透明部分のわずかな
歪みが確認されるとこから、体表で光を回折しているものと思われる』だって。」「光学迷彩のようなものか。」
「うーむ、地獄の番卒もパソコンを叩く時代になったか。」「地獄?んなもん無いけど。」「・・無いのか?」
「魔界の観光地『七大地獄温泉』を勘違いしたんでしょうね。」「温泉なのか?」「うん。真っ赤なお湯の。
泉質に赤銅が多いからね。」「血の池地獄ですね。」「ああ・・別府と同じか。」「そういうことね。」
「アテナ様は行かれましたか?」「日本はひととおり廻ったからな。ちなみに由布院温泉が気に入った。」
「拙者も下忍どもを連れて慰安旅行に行ったでござる。あの辺は魚が新鮮で美味かった。」「特に岬サバに
岬アジだな。」「うむ!関でないところが通である。」「質問です。関サバ・関アジのほうが高級では?」
「獲ってる漁場は同じだ。どの港に上がるかだけで価格が倍も違う。典型的なブランド商法だな。」
「それは下関のフグにもいえることでござる。どの港に上がろうが獲ってるところは同じ。ならばわざわざ
高い値がついたものを買うことはない。」「日本人はブランドに弱いからね~。第三の渚さんちはそこを突いて
安くておいしい鮮魚のネット販売でひと財産築けたらしいわよ。」「鮮魚輸送も技術革新が進んでおるしな。」
「そのことですが、こないだ渚さんに会ったときに注文HPアドレスをお聞きして注文しました。」『なに?』
「まもなく届けられると思われます。」「この飛燕丸にどうやって?」カラカラカラ。「操縦櫓の鳴子?」
パカッ。「何事か。」『ジェットヘリが接近。所属は水野海運。』「なんと・・交信をこちらにまわせ。」
『まいどありがとうございます。水野海運・鮮魚宅配便です。』「こんなところまで届けてくれるのか?」
『ご注文があれば世界の果てまでもというのが当社のモットーでございます。これよりワイヤー降下させます。』
「下忍、受け取れ。」『了解・・受け取りました。中身は・・おお、マグロ・カツオ・アジ・イワシが大量に。』
『たしかにお届けいたしました。次回のご注文をお待ちしております。』「ちょっと待った。代金は?」
『すでにお振り込みいただいております。』「・・ユーディットか?」「前金ですので。」「明細を見せてみろ。・・
こんなに安いのか?!」「スーパーで買うのと変わらないわね。」『それで輸送費コミのお値段になっております。』
「いらぬ心配かもしれぬが、大赤字ではないのか?」『量をこなしておりますので。この足でロンドン郊外への
宅送も掛け持ちです。では失礼いたします。』ブロロロロ・・「やるな、水野海運。」「さすがは海商王よね。」

ストーンヘンジ。シーン・・「さすがに観光客とか一人もいないわね。」「当然だろ。このへんは警戒区域だ。」
「でもおかしい・・復活の気配が感じられなかった。」「また十二神の連中がジャミングかけよったかいな?」
キラッ。すっ。「ご主人様、これを。」「なんだイエティ・・地面に亀裂?」すーっ・・「長いですな。」
「これって・・ストーンヘンジ外周をぐるりと一周してるわね。」「・・これを見てください。」すっ。
「リヴィ、石コロがどないし・・なあっ?!」「この亀裂上にあったものです・・きれいに真っ二つに。」
「ということは・・空間そのものが切られたか。」「おかしいわ。バルガードにそんな能力はないはずよ。」
「・・まさか天震鎧姫が?」「いや、連中は今はアフリカに渡ってる。ここには立ち寄ってもいねえぜ。」
「あっ!みんな、こっちこっち!」『ベル?』どかどか。「この窪地に変な粘液が溜まってるんだけど。」
「この枝ですくってみよう。」すっ、どろ~っ。「うえ、気持ち悪い。」「ほとんど固体に近い粘度やな。」
「・・腐乱死体のようなひどい悪臭。」「むう・・こりゃ窪地じゃねえぞ。何かの足跡じゃねえか。」『足跡?』
『・・ずっと向こうまで続いとるで。』『あちらは来た方角やで。』「・・しまった!行き違いしたんじゃ?」
「そうですわ。魔獣はすでに復活し、ソールズベリへ向かったとすれば・・」「・・急いで追わないと大変だ。」
「ち、このルートじゃ車は無理だな。」「走っていきましょう。追いつけるはずよ。」「行くぞ!」ダダッ!

タタタタ・・ピクン!『はっ?!』ザザーッ!『こらぁ・・』「ファム、ニーコ、どうかしました?」
『匂いや。魔獣の匂いが二つあるで。』「二つだと?」『しかも一つは・・人間の匂いと混ざっとる。』
「・・まさか!」「第二の七鎧聖かや!」【あたしも感じる・・ちょっと上空から見渡してみるね。】
「たのむ、ナナ。」ふわっ。スゥゥゥ・・きょろきょろ。【えーと・・ん?】ぴたっ。【1kmほど南に誰かいる!・・
はっ?!】キラッ。バリバリバリ!【きゃああああっ!】『ナナ?!』ヒュゥゥゥ・・「おっと!」ぱしっ。
「ニーコ!」『霊的治療はまかしとき!』【あいたたたた・・なんで幽霊なのにこんなに痛いのよ・・】
「強力な精神波動か・・いったい何者が!」「わたしが行ってみる。ジェットスクランダー!」ヒュオッ、
シュパーン!「魅霊さん、気をつけて!」ゴオオオオーッ!「1km西・・あいつか!」・・ボゴワッ!「なあっ?!」
ドカアアアアーン!「ぐはあっ!」『なんだ?!』「魅霊がはじき返された!」ヒュゥゥゥ・・「俺が受け止める!」
がしいっ!ズザザザザーッ!「く・・ガハッ!」「重傷だ・・ファム!」『全身打撲・骨折に内臓破裂もいくつか
あるで!すぐにヒーリングにかからんと命までヤバいで!』「エリス、手伝ってやれ。」「わかった・・」

「・・近づいてきますわ。」サクサク・・「あれは・・子供?」「10歳くらいの少年・・あれが第二の七鎧聖か。」
サクサク・・ぴたっ。「君たちはだれだい?先日に接触したお姉ちゃんの思念が感じられるけど。それに今の幽霊と
風使いもユニークだね。」「・・結希さんを知ってる?人に名前を聞くときはまず自分から名乗るのがマナーですわ。」
「それもそうだね。ボクの名は・・いや、覚醒前の名は無意味だからザ・カートカでいいよ。」『ザ・カートカ!』
「思い出したわ!金眼念聖ザ・カートカ!」「ああ、それそれ。通り名のほうはすっかり忘れてたよ。」
「その七鎧聖がここで何をしている。」「バルガードを起こしてあげたのさ。見てのとおり封印をくり抜いて。」
「なんのために!」きょとん。「・・そういう質問は予想外だな。神々によって封印されたかわいそうなやつを
親切にも解放してあげたのに。」「魔獣を解き放てば多大な犠牲者が出るわ、いえ、もう出てる。わかってるの?」
「では聞くけど、ペットの猫が食べたネズミを気にする人っているの?」『!・・』「こら話にならんな。」
「みなさまはバルガードを追ってください。この子は私たちでしつけますから。」「だがナナと魅霊を欠いては!」
「・・足止めくらいはできる。ナンバー6、二人をたのむ。」「まかしとけ。」『うちらも忘れてもろたら』
『かなわんな。』ザッ。「行けや。ここはまかせろ。」「・・わかった。みんな、行くぞ。」『おお!』

「そうはいかん。」シュッ。「なにっ?アルカディア!」「せっかく復活させたものをもったいない。ここは
ザ・カートカに加勢しよう。」ちらっ。「お兄ちゃん、だれ?」「とりあえずの味方だ。」「まっぴらごめんだね。」
「なに?」ドン!ボゴオッ!「ぐうっ!」ザザザザーッ!・・「・・何をする。」「お兄ちゃんからは神の匂いが
プンプンする。この連中もそうだけど、あんたほどじゃない。ボクはこの匂いが大嫌いでね。だからイヤなのさ。」
「・・やはり漁夫の利はむずかしいようだな。」「それにあんたの姿勢も気に食わない。かなり前から、そう、
ボクがバルガードを解放したときから様子をみてたでしょ。神々に典型的なタイプだよね、自分の手を汚さず
他人をして汚さしみ、おいしいところだけ取る。そういうヤツらに比べたら、この連中のほうがよっぽど好きさ。
純でまっすぐで堂々と真正面からボクに挑んでくる。だからこそ闘いがいもある。」「・・なら俺が葬ってやろう。」
キュイン!「ん?」「虚檻。」パキパキ・・「デウスをも封じたこの虚数空間は破れはせん。永劫の封印だ。」
「へえ、こんなのにやられるなんてデウスも耄碌したもんだね。よっと。」パキィン!「なにっ?!」
「空間重複設定があまいよ。ボクを封じるには最低でも109次元でくくらないと。こんなふうに。」すっ。
キュイン!「なっ!」「これで98次元。破れるかどうかのパズルだよ。・・そこの連中、行っていいよ。」
「・・いいのか?」「気が変わった。バルガードはどうにでもすればいい。こんなのに利用されるくらいならね。」

「気が変わらないうちに行ってください。」「行くぞ!変神!」シュバアアアーッ!「ほう、これはこれは。」
『急ぐぞ、みんな!』『おお!』ゴオオオーッ!・・「なるほど、堕天使ならぬ堕神たちか。どうりで神の匂いが
希薄だと思った・・お姉ちゃんたちは残ったんだね。」「いちおうお相手いたしませんと。」「・・仲間を奇襲で
傷つけられたお返しもある。」『あっちはあっちの仕事がある。』『うちらはうちらの仕事をせんとな。』
「いいね・・それでこそ闘いがいがあるというものさ。」『!・・!・・』「こっちは空間パズルが解けるまで
しばらくかかりそうだから、ゆっくりやろうか。」すっ。『シールド!』バキイイイーン!「やるね。」
『シーラはん!』「おまかせを。」ヒュッ・・「ほう、軽い。」「こちらへ。」すっ、ゴオッ!「おおっ!」
「そこの岩に激突して反省しなさい。」「まだまだ。」クルリッ、ザザーッ。「慣性制御能力。はじめて見たよ。」
「あなたも重力制御で地上に降りましたわね、予想どおりに。」「なに?・・!」ツルーッ。「滑る?!」
『摩擦消去や!』『そのままクラッシュしいや!』「やるやる。よっと。」ふわっ。「レビテーション?!」
「あぶないあぶない。」「・・まだ安全じゃないよ。」「えっ?」くるっ。ヒュッ!「サイコ・斬覇(ザンパー)。」
ズバアアアーン!「ぐうっ!」・・ザシャアッ。「・・オモチャの剣に念をまとわせ、ボクの障壁をも無効化する
聖剣にするとはね。」「なっ?!」くるっ。ズズズズ・・「・・再生能力まで。」「本当に転生してよかったよ。
君たちのような相手にめぐり会えたんだから。くだらない神々よりよっぽど好きさ♪」キン。ドオンッ!『うわっ!』
「このパワーは?!」『・・まさか!』『サイコ・バーストや!』「・・結希さんと同じ力!」「さてどうする?」

ゴォォォ・・『どこまで行ったんだバルガードは。』『イエティ、見えんか?』キン。「透明だと捜すのが少々
骨が折れますな・・むっ?!」ぴくっ。『いましたか?』「こちらの方向、およそ20kmでございます。」
『わずかにずれとったか。』バサアッ!「先回りして迎撃する手がいいんじゃない?」『よし、それでいこう。』
ゴォォォ・・ドドーン!『ここでいいだろう。アラクネ。』「おまかせ。センシング・ウェブ!」シュバッ!
サァァァ・・ピーン。「1km内に踏み込めば糸で感知できるわ・・あっ。」『来たか!』「・・いえ、野ウサギ。」
『たのむきにオオカミ少年はカンベンしてな。』「ちゃんと識別でき・・?!」びくうっ!『アラクネ?』
ガクガク・・「な・・なによこの感触は・・吐き気がしそうな触感・・」『これは間違いないようですね。』

『こうするわ。』ボオッ、すたっ。「テレポート?」「・・結希さん!」すっ、バシイイイーン!「止めた?!」
『止めよった!』「ほう、ボクのサイコ・クラッシャーを止められる人間がいたとはね。」「・・・・」ちらっ。
「ナンバー6、ナナちゃんと魅霊は?」「重傷だ。いまエリスが全力で治療してるが・・」「・・ちょっと私でも
むずかしいよ。」「ファムとニーコもディフェンスで手が回らないの。」「そう・・あとはまかせて。」くるっ。
『ヒーリングは私も手伝うわ。』はっ!「・・その声は!」ボオッ、すとっ。「・・先生!」「レナ、ひさしぶり。」
「『銀河の女帝』までおいでくださるなんて!」『世界一のサイキッカーが来よった!』『二年ぶりやな~。』
ぴく。「このサイキックパターンは・・まさか?!」くるっ。「思ったよりも可愛く転生したものね。」ふっ。
「そうか・・君もまた。」「そういうことね。まあ、あなたと違ってしょっちゅう歴史に顔は出してたけど。」
「君の弟子たちならこの実力は納得だな。」「で、続行する?それとも私と来る?」「一緒に行ってどうする?」
「普通の生活をして静かに寿命をまっとうするというのは?」「君とずっと一緒ならそれもいいかもしれないな。」
「いいわよ、私は・・昔どおりに。」「・・でも、せっかくの短い寿命だ。ならば今を楽しもう。」ギン!
ドオオーン!「やっぱりね。・・ユキ、遠慮なく。」「はい。」すっ、バシイイイーン!「人間にしてはたいした
サイキック・ポテンシャルだね。でも所詮は人間、魔獣たるボクのパワーにはかなわないよ!」ドドドドド!
「そんなことわかってる。だからパワーでは対抗しない・・」すっ・・『えっ?!』「目を閉じて無防備に?」
「?・・なんのつもりか知らないけど、容赦しないよ!」ギン!ドオオオオーン!「・・アブソリュート・ゼロ。」
ドゴオオオオーン!「直撃?!」『あれでは分子も残らんで!』『・・待ちい!あれを見い!』「・・バカな!」
シュゴオオオオーッ!「・・ボクのパワーを!」「中和・・いえ、吸収してますわ!」「開眼したわね、ユキ。」
はっ!「これはいったい?!」「ゼロの到達点。いかなるエネルギーもゼロ転換し、無限の体内宇宙に取り込む。
あなたは虚空に向かって力を放っているのと同じ、何の意味もなさないわ。」「・・そんな能力は知らないよ。」
「いいえ、知ってるはずよ。これを成し得た有名な聖人がいるじゃない。」はっ!「・・皇子か!」「そのとおり。
色即是空・空即是色。これはその実際的応用よ。そして!」シュゴォォォ・・ぴたっ。「ユキ、お返しして。」
カッ!「アーカイブ!」ギュオオオオッ!「結希さんの手に光球が?」『あれは高密度エネルギー圧縮体や!』
『なんちゅう密度や・・結希はんのパワーも上乗せしとるに、恒星に匹敵するパワーやで!』「これは?!」
ぴくっ。「・・結希!」ググッ・・「はっ?・・魅霊さん、まだ起きたらダメ。」「だいじょうぶ・・くっ!」
ザン!「はあっ、はあっ!・・結希!」はっ。「・・魅霊?」「前に教えたとおり・・全力投球、一球入魂!」
「・・わかった!」ザッ、ガバアッ!「ワインドアップ投球フォーム?」ザシャアアア・・「足が・・上がる!」
グワァァァ・・ぴたっ。「・・放て、いま必殺の!」「さぁぁーいこおっ!」カアッ!「すぱああああああーくっ!」
ドギュウウウーン!『投げたで!』「シールド!」ビン。バシイイイーン!「なかなかおもしろい技だけど、
止められたよ。」【・・それは早とちりだよ。】ユラ・・「?・・さっきの幽霊?」【よく見てみなって。】
「なに?・・!」・・ギュルルルルッ!「シールドが・・食われる!」【歓迎会の準備しとくね。】ニイッ。
ギュルルル・・スボオッ!「くっ!」ズドオンッ!「・・とても楽しかったよ。」にこっ。ボシュッ!・・
「消えた?!」「いわば限定付きのブラックホール。ヤツを食うことで中和して消滅・・するはずだったけど。」
「・・だったけど?」「・・逃げられたわ。」「ヒットの瞬間にエネルギー擬体を残してテレポートしたわ。」
【・・さすがに見切られたね。】はっ!「テレパシー?」「・・かなり遠距離からね。」【今のは正直いって
受けきる自信がなかったから三十六計といったわけさ。ユキさんとやら、その力、とても尊敬に値するよ。】
「・・誉められるようなものじゃないわ。」【それがわかってることがすばらしいよ。じゃ、また会おう・・】
『切れた・・』「昔と変わらないのね、引き際のよさは。」「あの、お知り合いのような口ぶりでしたけど?」
「まあ、くされ縁かな。まさかまた出てくるとは思わなかったけど。」「・・十万年前から?」「忘れたの?
私は『管理人』だから継続転生を冥界に許可されてるの。」はっ。『そやったな・・全人類のうち数十人のみに
許可されとる「管理人」や。』「というわけで、ご感想は?ナンバー6、いえ、秘密部隊総司令。」くるっ。
「あんたが来なけりゃ俺の出番だったが、まあいいや。」「出番とっちゃってごめんね。さてと、もう帰るわ。」
「先生・・」「ユキ、やつはまた現れるわ。でもあなたならだいじょうぶ。」「・・ありがとうございました。」
「じゃ、がんばってね、みんな。」シュン!・・「いつもながらすごい方です・・」【まさに超人だよね・・】

「リヴィ、これ飲んで。」『え~、ホントに飲むんですか・・』「食紅だから害はないってば。はい、あ~ん。』
『・・まあクスリだと思って。あーん。』どさどさ。「水は・・飲む必要なかったか。」『あたりまえです。』
ズシ・・ズシ・・「来ましたぞ・・」『ああ・・聞こえる。』ズシリ・・ズシリ・・『重々しく、しかも
粘っこい足音ですね・・』ズチャリ・・ズチャリ・・『足のある巨大ナメクジの歩行音みたいやな・・』
グチャリ!グチャリ!「すぐ目の前よ!」ガサガサッ!バリバリバリッ、ドドーン!『樹が?・・はっ?!』
ビュオッ!バキイイイーン!『うおおっ!』ドザザザーッ!『触手か?・・見えん!』「足跡で位置を読むのよ!」
ボコッ、ボコッ!『ちょう待ちい!こやつ足いくつあるんや?!』『一度にいくつもの足跡が現れてます!』
「いけませんぞ、狙いが定まりません・・おっと!」ビュオッ!バシイイイーン!「これは厄介ですな。」

「おい、なんか忘れてねえか?」『えっ?』「あれあれ。」・・パキイイイーン!「はあっ!はあっ!・・」
「アルカディア?!」「そういえばすっかり忘れてましたわね♪」「やっと解除できた・・ザ・カートカは!」
『とうの昔にどっかいてもーたで。』『タイムオーバーやな。』「・・レギオン!」パチン!ゴバアアアッ!
「量産兵!」さっ。「ならばキサマらだけでも倒しておかないと、何をしに来たのかわからなくなるからな。」
【迷惑なことだよね。】「・・さっきの戦いでみんな疲れてる。ここは私にまかせて。」ザッ。「結希さん。」
ぽん。「えっ?」ぱしいいーん!『シーラ!』「な、なに?・・」「のぼせるのもたいがいにしなさいね。
今ので一番疲れてるのは結希さんのはず、これ以上なにかすればそれこそ取り返しがつかなくなるわ。あなたは
まだ死んじゃいけない。いえ、開眼した今こそ、あなたはみんなを犠牲にしてでも生き延びるべき。それこそ
最後の勝利につながるの。それがみんなの、そして全人類のためよ。」「シーラさん・・」【でもいきなりビンタは
シーラらしいよね。】(・・不器用なんだな。)(本質的に優しい人なんですよ。)ひそひそ。「レナ、魅霊。
あとでおぼえてらっしゃいね♪」ぎくうっ!『シーラはんも難儀な人やな~。』『つきあうこっちも大変やで。』

『リヴィ、はやく色をつけろ!』『そうはいっても、どこを狙えばいいのか!』「・・この手しかないか。」
ぬぎっ。『アラクネ?・・まさか!』「・・はあっ!」メリッ!バキバキバキ!・・ドドーン!ガシュウウウ!
『アラクネが・・本来の姿に!』『ホントはイヤなんだけど、非常事態だからね。ジャイアント・ウェブ!』
シュイイイイ!ビラビラビラ・・「おお、糸がバルガードにからんで見えますぞ!」『リヴィ、いまよ!』
『これならいけます!スカーレット・ギガストリーム!』ブシャアアアーッ!バシャアアアーッ!
『見えてきたわ・・なあっ!』『こ・・これがバルガードか!』『な・・なんなんや・・・コイツは!』
グモモモモ!『こんなすさまじい実体とは・・』「むう、魔界にもこれほどのものはおりませんぞ・・」

「全員を叔父貴のところへ送ってやろう。」『いいや、里帰りするのはお前だ。』シャッ!シュピィィーン!
「なにっ?」ザッ・・「打ち込み角。」クルルッ、トン。・・ガラガラガラン!「数体のレギオンを一閃で!」
くるっ。「剣客・金色夜叉、推参。」「三牙将か!」『そのとおり。砂鉄砲!』ザザザザーッ!ズボボボボッ!
『ぐはあっ!』ザザザザ・・ビシイッ!「仮面の忍者・大砂塵、参上。そして!」パチン!・・バサバサアッ!
「土遁の術?!」シャシャシャッ!ズバザキイッ!『根来忍群これにあり!』ザザザン!「いつの間に!」
「スペクトラムの方々、あとは拙者らにまかされよ。」「お前たちはじゅうぶんに戦った。あとは私たちの仕事だ。」
「あらあら、おいしいところをさらわれてしまいましたわ。」「・・正直、助かった。」【このうえ十二神まで
お相手してたら死んじゃうもんね。】「ナナちゃんナナちゃん、あなたはとうの昔に死んでいるってば~。」
「・・お願いします。」すっ。『結希はんが引いた?』『シーラはんのいうとおり、やっぱ限界やったんやな。』
「正直なとこ・・今にも倒れそうね。」「ユーディット、みんなを安全なところへ。」「かしこまりました。」
グニュ、シャキーン!「救急車?」『お乗りください。』「さあさみなさん、とっとと乗ったのった。」どさどさ。
「いいですわ。」ブロロロ!♪ピーポーピーポー!「あら、いいエンジン音。」『ロールスロイス型ですから。』

ビュオッ!『ヒドラソード!』ヒュルルッ、ピシイッ!『見えさえすれば。てやあっ!』スパアアアーン!
『いくぞ!イージス・ブウウーメランッ!』シュバァッ!ズパパパパッ!ボトンボトン!『これでダルマさんね。』
ドロドロ・・『あかん!粘液を分泌して色を流すつもりや!』『消えてしまうとまた戦いにくくなります!』
「動きを止めましょう。むうううう~っ!」ぐもももっ!ドドーン!『凍てつくレンの風でございます。』
ビュオオオオーッ!・・『・・なんと?凍りませぬぞ!』『まさかバルガードの全身を覆う分泌液は不凍性?!』
ボコッ、ブジャアッ!バシャアッ!ジュウウウウ~ッ!『きゃあっ!』『アラクネ!』『強酸性の消化液や!』
『いま流します!ストリーム!』ブシャアアアーッ!シュゥゥゥ・・『あいたたた・・てめこのマジで怒った!』
ガシュウウ!『ぶった斬る!ストリング・スライサー!』シュバアッ!『糸の帯?』ズシャアアアーッ!
ズバッシャアアアアーッ!『おお!』『バルガードが・・まっぷたつに!』『糸の巨剣!』ユラ・・ドドーン!
『フェイ!』『わかっとる!プラズマ火球三連弾や!』ボボボオオオーン!ドカドカドカーン!ゴオオオオ!
『・・もういいだろう。イエティ。』『ははっ、冷凍ガスで消火いたします。』ヒュオオオオーッ!・・
『やれやれ、総力戦とはまいったわ。』シュゥゥゥ・・すとっ。コキコキ。「たまに獣化すると疲れる~。」

「これでお荷物はなくなった。」「雑兵どももあらかた片付いたでござる。残るは将、アルカディアのみ。」
「愚かな。俺の空間術に勝てるとでも?」すっ。シーン・・「・・なにっ?!力が・・使えない!」『油断したわね。』
ヒュッ、ふわふわ。「ウイッチ?」「ジャマをするから、おじゃ魔女シレソって呼んでね♪で、足元注意よ。」
「なに?・・これは?!」キン!「封力魔法陣。その中ではいかなる力も使えないわ。たとえ神とて人並みよ。」
「・・出ればよかろう!」ダダッ!スゥッ。「・・魔法陣がついてくる?!」「あ、すっかり言い忘れてたわ。
その魔法陣は擬似魔法生命体、くだいていえばモンスターだから逃げるとついてくわよ、子犬のようにね♪」
「これで互角ということだな。」ザッ。「この土俵なら存分に仕合えるというもの。」ザッ。「くっ!・・ならば
俺も腕にはおぼえがある。」さっ。「ほう、見事な構え。」「神の拳法か。おもしろい。」「はいはーい!」
『ギネビア?』「ここはあたしにやらせて。」「・・やれるのか?」「格闘家の魔法使いなぞ『どらくえ』でしか
お目にかかったことがないぞ。」「だいじょーぶ、ちゃんと『どくばり』持ってるから。アテナ、帽子とマントを。」
ぽい、バサアッ!「いいけど・・」ポキポキッ。「さーて、無制限一本勝負といきましょうか、アルカディア。」
「どんな技を持っているのか知らんが、俺には勝てん。」「そのセリフ、あとで撤回することは保証するわ。」
ザザザッ。「下忍ども、魔法陣を囲め。」『おお!』ザザザザッ!「ランバージャック・デスマッチね。」
「では遠慮なくいくぞ。」ザッ、シャッ!「なんという速い蹴り!」「よっと。」シュッ、パシイイーン!
「フットガード?」「だけじゃないわよ。」シュッ、バキイッ!「なにっ!」ザザーッ!「でしょ?」
「・・前蹴りが見えなかった。」「いかが?攻防一体のスペクター・キック。」ススゥ・・ぴたっ。
「ほう、片脚を上げたままで見事な安定性。」「腰もかなり強いようだな。」「やるな・・ならば!」ターン!
「跳び蹴りね。」「これは受けられまい!」ゴオッ!「完璧なフォームだな。」「たしかに受けられぬな。」
「受ける?ジョーダンポイ。こーゆーのは・・」パシッ、グン!「なっ?!」「当て身をとるのよ!」
ドゴオオオーン!「ぐおおっ!」「これは・・すさまじい!」「当て身から巻き込んで相手の勢いを加速し、
そのまま地面に叩きつけるとは!」「魔道拳奥義・イビルシュタイナー。」ぱっ。ユラ・・どさあっ。

「普通なら即死だけど・・」「く・・」よろよろっ。「やはり神、この程度ではくたばらぬようだな。」
「アルカディア、冥界へ帰れ。私としてはお前は滅したくない。」「・・はっ?!まさか・・アテナか!」
ふっ。「やっと気づいたね・・アルおにいちゃん。」「知り合いだったか?」「前に聞いた話じゃ、小さいころに
よく遊んでもらったってさ。」「そうだったのか・・アテナと知っては、これ以上意地を張るわけにはいかんな。」
「ギネビア。」「わかってる。ディスペル!」パチン♪スッ・・「封印は解いたわ。」「アテナ、ひとつだけ忠告
しておく・・綺羅に気をつけろ。全ての糸を引いてるのはあいつだ。」ふっ。「言われなくてもわかっている。
綺羅の腹黒さはあの頃にさんざん思い知ったからな。」「ふっ・・そうだったな。」「だが・・これは直感だが、
もう一枚裏があるような気がする。」はっ。「アルおにいちゃんも感じてたはず・・綺羅はたしかに狡猾だけど、
冥王と魔王まで丸め込めるとはとうてい思えない。ハデスとサタンの智謀はそんなに甘くないはずだ。」
「よく見ている・・たしかにうまく運びすぎている気はしていた。これはもうひと悶着ありそうだな。」ふっ。
「政治的駆け引きをエデンに持ち込むのははた迷惑よ。」「そういうことを楽しむ輩には馬耳東風だろうがな。」
「俺は冥界へ帰る。アテナ、生きろよ。」「私は不老不死だ・・が、今が一番生きていると感じている。」
「それで思い出した。デウスの封印はあとで解いておこう。」ぴく。「・・私には関係ないことだ。」くるっ。
「そうだな・・では、またいつか。」スゥゥ・・「まっぴら御免だな。」「できれば二度と会いたくないわ。」

数時間後、ソールズベリのレストラン。「ええっ?!アイツが来てたの!」「ああ・・アラクネのライバルとか
いうやつか。」「しまった~!残っとくんだった。そうすりゃ・・」『どうするっての?』「そりゃもちろん
二千年前のリベンジを・・え?なに?」(全員が指差している)「・・うしろ?」くるっ。「ハーイ♪」どきいっ!
わたたたた!「あ、あ、あんたいつの間に!」「先生、お帰りになられたのでは?」「旧友に会うって目的を
すっかり忘れてたから、戻ってきちゃった。元気そうね、アラクネ。」「そ、そ、そうね♪あなたも元気そうで
なによりだわ。」ひくひく・・「で、リベンジがどうとか聞こえたけど?」「あはは♪ソラミミよ、ソラミミ~。」
「ほう・・金髪に褐色の肌、それでいて顔立ちは東洋系か。珍しいな。」「先生はハイブリッドですから。」
「いろんな人種がごちゃまぜになってるだけよ。そちらがウワサのゴッド部隊のみなさんね。弟子たちがお世話に
なってます。」「いえ、こちらもけっこう助けられてますから。」「通り名は聞いとるけど、本名は知らんな?」
「クレオでいいですよ。ね、アラクネ。」びくうっ!「そ、そうね・・」「アラクネどのがこれほど恐れるのは
珍しいですな。」「そういや櫻華ともくされ縁だったか。」「櫻華か~。ここ最近会ってないけど、どうだった?」
「元気でしたよ。こないだも綺羅さまを打ち負かしてました。」ヒュー。「ついに長年の確執に区切りつけたか。
あの二人、いろんな意味で近親憎悪だったしね。」「いろんな意味?」「ま、それはそれとして・・アラクネ。」
びくっ!「な、なによ。」「うちの可愛い弟子たち、特に結希とレナには手ぇかけないでよ。んなことしたら
あのときよりひどい目にあわせるから・・」ぎらっ!「しないしない、したこともない♪」「どうだか・・私は
自分の体験に照らして言ってるんだけど。」ぼそぼそ。(イエティ、知ってるか?)(はい。かつて古代エジプトの
女王だったあの方をモノにして領地を広げようとした野望はあえなく潰えました、あの方自身の手によって。)
(そのころから強力なサイキッカーやったんやな。)(アラクネも、よっぽどひどい反撃うけたみたいですね。)
(完全にトラウマになってるな。しかし悪友が多いよな、アラクネは。)(類は友を呼ぶんですね。)(うんうん。)
「そこの一人と三匹、なに話してるの!」『いえいえなんでも~。』ぶんぶん。「さ、ウン千年ぶりに飲むわよ!」
ぱーん!「いてっ!・・あ、いえ、わたしすぐに次の魔獣を倒しに行かなきゃならないし~。ね、エリスちゃん♪」
もみもみ。(肩もみ)「・・ここ数日は静かだよ。」きっぱり。「だって。ね、アラクネお借りしていい?」
『どうぞどうぞ。』「ゲゲッ!」ぽん。「話は決まりね。三番街にいい店あるから。テレポート!」シュィッ!
「あ、こら巻き込むな~!」「がんばってリベンジしてこいよ~。」「ごゆっくり。」「みやげはティファニーな。」
「みやげ話の武勇伝を楽しみにしております。」『はくじょぉぉぉ~ものぉぉぉ~っ!・・』スゥゥゥ・・フッ。

アウターヘブン。「アルカディアが離脱しただと!」「うむ。辞表をよこしてきおった。」ばさばさーっ。
「『思うところあり、これ以上の同行の意義を喪失した由・・』とのことじゃ。」「おのれ・・綺羅は?」
「引き止めに行ってもらったけど、見込みは薄いね。」『アルカディアはかなり意思が強い。幼馴染みの綺羅とて
容易ではあるまい。』「うむ。もはや当てにせぬほうがよいだろう。」ゴルルル。「・・・・」「アーレス様、
なにかご心配でも?」ひらひら。・・はっ。「いや、ちょっと考えごとをしていただけだ。」(・・アルカディアは
デウス様を封印した張本人。ならばなぜいまだ封印が解ける気配がない?)・・はっ!(まさか・・綺羅が!)

少し前、出雲国・黄泉比良坂。スゥゥゥ・・『やはりこの近道を通るのね。』ぴたっ。すっ・・「綺羅か・・
止めに来たのなら無駄だ。」「止めないわ。」「・・なに?」「♪通りゃんせ通りゃんせ ここはどこの細道じゃ♪」
「・・この黄泉比良坂がその歌のモデルだ。」「♪ちっと通してくだしゃんせ ご用のないもの通しゃせぬ♪」
ぴくっ。「♪行きはよいよい帰りはこわい こわいながらも 通りゃんせ 通りゃんせ・・♪」「・・!」ダッ!
ドドドドン!ドカドカドカーン!「精霊連弾など俺に効くか!空斬波!」キィン!・・ズルルッ、ブシャアッ!
「?!・・簡単すぎる。」『当然でしょ。』シュピィッ!「ぐはっ!・・」「秘孔を精霊針で貫いたわ。」スゥ。
「綺・・羅!・・やはり!」「大義であった、影姫。」ズルズル・・「お役に立てて・・うれしゅうござ・・」
「遺族は手厚く遇するゆえ、成仏せよ・・介錯。」キン!シュバアアアーッ!『綺羅さまのお手で・・光栄で・・』
スゥゥ・・「愚直な家来はこういうとき便利よね♪」くるっ。「卑劣な!・・」ググ・・「なにをいまさら。
古いつきあいだから身代わりくらいすぐ見破られると思ったけど、拍子抜けね。」「・・連れ戻す・・気か!」
「いいえ。しばらく静養してもらいたいだけよ。みんな、よろしく。」パチン♪『は~い!』すとすとっ。
「・・アルラウネ?!」「そう、魔界から出稼ぎに来てる浮かれ女たちよ。高いギャラ払ったからよろしくね。」
「おまかせください綺羅さま。」「お言いつけどおり『花籠』から出しはしません。いえ、出たくなくします。」
「腕によりをかけて愛してさしあげますわ。」「・・なに?」「聞いたとおり。あなたは柔らかくて心地よい牢獄で
ゆっくりしててね。これは幼馴染みとしての精一杯の厚意よ。」「綺羅・・全てを操っているのはキサマではないぞ。」
「でしょうね。」「?!・・」「だからこそ、あなたにもデウスにもまだジャマしてほしくないの。役者が舞台から
飛び出して客席に乱入するってアドリブはどうかしら?」ニイッ。「!・・そこまで読んでいたか。」ぞくっ・・
さっ。「連れてって。」『はーい!』シュルルル~ッ、キュルルルッ。スウッ。「では参りましょう、お客さま♪」
「見物したいとこだけど、十八禁になるからやめとくわ。うふふふっ。」「・・隠し外伝で書いてやるぞ。」

そのころ、ニューヨーク。「あはははは!櫻華もよく来てくれたわ!」「古代最悪コンビが寄るとなれば、
こんな面白いことはありませんから。」「あんたも入れてトリオでしょ・・」「あら、そうだったかしら?」
「んじゃニューヨーク呑み干す気合いで次の店いってみよー!」「おー。」「・・あったまいた~。」
「よーよーキレイなねーちゃんたち、いっしょにどうだい?」ゾロゾロ。「おっ、出たでた♪」「箸休めには
やはりこれよね。」「これが狙いで裏道ばっか通ってるんだものね・・ウサ晴らしにちょうどいいか。」
どがべきごすっ!「な~んだ、つまんないの。」「安物の拳銃ね。子供のオモチャ以下だわ。」くい、ぐにゅっ!
「ぺぺぺっ。マズくて酔いざましにもならん肉だわ。」ぴこぴこ。「アラクネ、小指の骨が歯に挟まってるわよ。」

♪野獣の王がよみがえる 全ての人を喰らわんと
♪動物たちが牙をむく 全ての人に報いんと
♪百獣鎧王ガルガライ 邪悪な牙と清き牙
♪獣の王はいずれの牙か 餓狼の雄叫び 太古の響き
♪『誇り高きサバンナ』に 三つの牙が火花を散らす・
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。