此処はかつて、とある神の為に
それが創設されたのは、もう遥か昔――この星が誕生して、まだ間も無い頃の話。
今もこの祭壇は、当時の姿をそのままに残している。
それもその筈だ。
ここは、永遠の安息と平穏を約束された場所。
偉大なる神の力によって創られた、かくも異質な空間なのである。
周囲には果てしない闇が広がり、そこには無数の
しかしそれは、地上から見る『それ』とは次元が違うもの。
云うなれば、この星に秘められたもう一つの姿と呼ぶべきものである。
……
やがてその中から、一際大きな輝きを放つものが現れる。
赤、青、黄色、緑、水色、オレンジ、薄紅色、紫、肌色、白…。
それぞれの特性をその色合いに宿す、
彼らには意思があるが、肉体を持たない。
彼らにとっての肉体とは、自らの存在をより強調するための
単なる
それが神の力を受け継いだ彼らの特権であり、また宿命でもある。
十色の星々は祭壇の既定の位置へ、等間隔に配置される。
“
“とうとう動き出したようですね。 新たなる
最初に意思を示したのは、黄色の星であった。
それに呼応し、緑の星が新たな意思を空間に刻む。
“歴代の魔王と比べれば、随分とのんびりしたものだ…”
“それだけ、用意
実に
次に紫の星が意思を示すと、それに呼応し、薄紅色の星が意思を刻む。
意思とは常にうつろいゆくものであり、一箇所に留まり続けることはない。
“この気配、
“初代にして
続いて肌色の星が意思を示し、青い星がそこへ意思を添える。
つまり彼らもまた、うつろいゆくものであり、決して揺るぎないものではない。
“――来るか? 魔の時代、再び…”
“平穏を
赤い星が意思を示し、水色の星が意思を添える。
だから時折、彼らはこうして集うのだ。
自らの存在と、その意義を確認し合う為に。
“いずれにせよ、まだ我らが動くべき時ではない”
“……”
最後に意思を示したのは、オレンジ色の星であった。
白い星は沈黙を保ち、ただひたすらに静観を続けるのみである。
“勇者は…? 勇者はもう、現れたのか?”
“いや…そのような気は感じられん”
紫の星が発した疑問に、青い星が応える。
“魔の
“時代に――否、この星の意思に見捨てられたということでしょうか”
肌色の星と黄色の星が、それぞれに感想を刻む。
“いや…勇者は必ず現れる。 魔の脅威に
“なに…?”
“十人…ですか”
オレンジ色の星が
しかし、『
存在しないことを、他の星々は暗黙の内に把握している。
“まさか、その勇者とは…我らのことではあるまいな?”
“俺達が、魔を討ち果たす勇者様ってか…? ククッ…そいつはいい”
薄紅色の星が
“2人とも…この
“良いではありませんか。 可能性は、無きにしても有らずですよ”
緑の星の
“いずれにせよ、勇者の存在が、この星の行く末を
僅かなサインも見逃すな…。 一刻も早く、その所在を突き止めよ”
その意思を最後に、オレンジ色の星は空間から消失する。
彼が去ることは、すなわち、この集いの解散を意味することであった。
“迷える者よ…。 混沌たる時代に、己が意志、歪めぬよう…”
“時の
“勇なる者、か…。 出来れば、余の領域では見たくないものだ…”
“如何なる資質に恵まれし者か。
柔らかく澄んだ意思を示し、緑の星が空間を去る。
“
“私はいつも、あなたの傍に立ち、あなたを照らし続ける。
悩める時も、迷える時も、
確固たる意思を示し、黄色の星が空間を去る。
“……”
最後まで沈黙を保ったまま、白い星が空間を去る。
“――どう導こうってのかね…賢王様は”
残された2つの星の内、赤い星が呟いた。
“賢者は、人を導くものではありません。 人を試すものなんですよ”
赤い星の意思を受け、水色の星は淡々と述べる。
“フン…俺は、俺のやりたいようにやるだけだ”
赤い星は僅かにその輝きを強めると、
“えぇ、あなたはそれでいい。 それもまた、1つの
残された2つの星は、尚も意思を示し合う。
“
その意思を最後に、赤い星は空間から消失した。
“果てなき旅は、まだ始まったばかり。 でも…あなたならきっと、
素敵な物語を紡いでくれることでしょう。 ねぇ――榛名さん?”
青い星が去ると、空間はやがて徐々に
そこに示された数々の意思はやがて弾け飛び、
ドクン、と何かが脈打つような音がした。
それは恐らく、この星の――オルワディスの
世界が動き出す。