IS 一夏がいない   作:稲穂焼き

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十二話

「へぇ、そんなにごてごてしてるのね」

 俺が知る限りの装備を、鈴ちゃんに教えた。まだ使ってないけどね。

 現在地は食堂。食堂で今日のメニューを頼んで五人で座り、鈴ちゃんと会長さんの間に俺は座る。挟まんでくれ、圧縮されちゃう。もし俺が喋らずに空気だったら、空気を圧縮ゥ! で、ぺちゃんこになるか、粉微塵になるかのどちらか? せめて十七分割にしてつかーさい。ハルナァ。

 

「俺も早く夕のISを見たいな。バンシィなんだろ?」

 

「私はバンシィと言うのかわからんが、綺麗だったぞ」

 俺じゃなく、箒が一夏の疑問に答えた。

 

「バンシィ風な」

 

「そうなんだ。すごいね」

 会長が冷たい対応だ。食事してるからね。

 

「そうだ! もしかして、ビスト神拳出来るのか!?」

 

「多分」

 ビームトンファーがあるから、一応出来るはず。フルコーンでゲームの方の真似だが。

 ビームトンファーとは、前腕部にある粒子の剣の事だ。サーベルの柄をホルダーで固定して、180°回転して手や肘の前後の方向どちらか片方に向けて展開して使える。手に持たないから、他の武器を持ったまま使える利点があるのだ。トンファーとして使う事は、ほぼない。

 

「ただな? 小さいISだと装甲に当てるのが難しいから、貫手が出しにくい」

 あれは巨大な機体の胸部に対して使われたから、そういう意味でだ。いや、武装破壊は出来るけど。

 

「なによ? そのビスト神拳ってやつ」

 どんな技で動きか知らない人は、傍から耳にしても理解不能だろう。鈴ちゃんもアニメ見てみるかい?

 

「手の指を真っ直ぐに伸ばして、破壊する攻撃だ!」

 

「つまり貫手ね」

 一夏の説明は、テンション上がっているからか、ちょっとわかりにくい。だから俺はわかりやすくした。

 

「それってかっこいいのか……?」

 まぁ、箒の言う通り話だけならダサく思うだろう。

 

「個人的にかっこいいと思うが、他人から見たらダサかっこいい?」

 一夏の言う通り、俺も癖になった。武器が全部なくなったからといって、正拳、手刀、貫手という一連の動作が好き。人ならともかく、ロボ系のジャンルではあまり見かけない。

 

「多分、拳法かなにかかな」

 一夏の感想に会長さんのちょっとした補足。これでなんとなく掴めたんじゃないかな?

 

「ふーん、今度見せてもらうね」

 鈴ちゃんは興味ないそうだ。ま、格闘だしね。というか、あなたの国の技も含まれてるんじゃない? ビスト神拳という単語でわからなかったのかな?

 

 

 

 

 俺達は食事を終え、各々部屋に戻った。というか、三人共戻ると自然に思っていた。だが、一夏と箒と鈴の三人は帰らずに、俺と会長さんの部屋でだらだらと過ごしている。いや、帰れよ。俺は勉強するんだ。ジャマしなければいいが。

 

「騒いでも構わないけど、僕は勉強するので邪魔しないで下さいよ?」

 眼鏡ないけど、眼鏡クイッとしながらがり勉風に言った。

 教科書と束さんの解説書の二つを見ながら、俺はベッドに寝転がっていた。バンシィのシールドファンネルは、俺の枕元の横に置き、大きめのレプリカは会長さんの方ではなく、その逆側の壁に立てかけてある。

 

『はーい』

 四人から行儀のいい返事を聞いた。

 そこから俺は教科書の内容をちょっとずつ頭に入れた。そう簡単には覚えれそうにないが。大変だなぁ。

 

 

「ぐえっ!?」

 うつ伏せになりながら肘を立てて読んでいると、誰かが背中に乗ってきた。後ろ髪が抜けるぅ。

 

「よう! 進んでるか?」

 一夏だった。俺の側頭部辺りに顔があるっぽい。乗ってもいいけどさ。タイミング的にはよろしくない。胃の中が口から出ちゃう。カエルじゃない!

 

「おい、私も混ぜろよ」

 このセリフを吐く人物は箒しかいない。

 そして重みが増したから、一夏の上に乗ったらしい。今まで顎で支えていたがキツくなって、一夏の顔がある反対側に頬を下に押し付けた。

 

「箒! 当たってる当たってる!」

 

『当ててんのよ!』

 俺と箒が同時に言った。

 

「面白そうだから私も混ぜなさい」

 今度は鈴か。

 

「おふ……」

 鈴が乗った。いやいや、退いてくれよ。死んじゃう死んじゃう。

 

「ラストはお姉さんね」

 会長もか。知ってた。

 そして更に増えて、俺はいつ圧死してもおかしくない重量に達した。皆の愛が物理的に重い。こんな事なら、愛などいらぬっ!! 実際に愛があるか知らんけど。

 

「トーテム……ポール……かよ」

 一つ一つゆっくりと、言葉を吐き出した。俺は皆の重さに、頑張って耐え続けた。

 

 

 

 

 ふぅ。重かった。

 あの後、皆が退いてくれて勉強を再開。そしていつの間にか三人は帰った。かなり集中していたらしい。けど、俺はなかなか覚えきれなかった。古代文字かな?

 

「私と夕君の二人きりだね」

 そうですね。だから背中から下りて。髪がゼーガペイン。消されるな、この想い。 忘れるな、我が痛み。毛の話……。

 諦めてさっきと同じように、俯せで肘を立てながら、教科書に目を通す。

 

「当たり前ですよ。会長さんと相部屋なんですから」

 

「名前を呼んで」

 無茶言わんといて下さい。そして私に乗らんで下さいよ。

 

「俺はまだ、あなたの名を知りません」

 とりあえず、片肘を崩して枕元にあるファンネルに手を置いた。

 

「…………そういえば、すっかり忘れていたわね。私の名前は高町なのは。フェイトちゃん、名前を呼んで」

 あなたの声スバルじゃないの? もう少し違う声の出し方をすれば、すごく似てる気がするんだが。

 

「なのはー」

 

「ふふ、冗談よ。私は更識楯無。生徒会長でロシア代表。名前の通り歴とした日本人」

 ロシア代表とか知らんがな。だから、普通に日本人だと思っていました。

 

「ありがとうございます。俺は白雪夕。二人目のIS起動者です」

 

「知ってる。私が守りたい、そして私の好きな人」

 あっ……そう攻めてくるとは思わなかった。

 おい、俺の頭に顔の頬をすりすりするな。大胆な行動に惚れてまうやろ。やっぱり俺ってちょろ甘だぜ。

 

「ねぇねぇ。私と付き合って恋人になって」

 

「無理です。おとこわりします」

 即座に答えを出す。言葉選びで迷ったら俺は負ける。いや、勝負じゃないんだが。不利になる。だから用意していた返事だ。

 

「知ってた。だけど私は諦めない」

 おいィ……俺をうつ伏せのまま羽交い締めにするんじゃあない。だから惚れるってつってんだろ! いいかげんにしろ! あまり言いたかないけど、睦言かよォ!

 

「知ってた。あなたはそう簡単に引く人に見えない。同部屋だし」

 

「バレてた?」

 

「あなた意外とわかりやすいですよ?」

 箒が猪発言したからね。知ってる知ってる。

 

「あら、私のポーカーフェイスもまだまだね」

 この状態で表情が見えるとでも? ISに乗っていたならわかるかな? 出しちゃいけないのはわかる。

 

「そうですよ」

 適当ぶっこいた。

 

「そっか。ねぇ、明日は休みだからデートしましょ? 恋人じゃなく友人として」

 ゑ? 明日休みだっけ? 気付かなかった。日にちの感覚が狂っている。

 

「違うね……ここは同居人として、親睦を深めるためにどこか出かけよ?」

 あの手この手で掴んで来ますね。

 

「夕君が疲れてそうだから息抜きにね」

 その言葉は俺に効く…………と思っていたのかぁ?

 疲れているなら、仕事休みの父親にしてくれ。疲れてるんだ。休ませてくれ。

 

「ダメ?」

 俺の耳元で甘い甘い囁き。残念、それは耐えられる。一夏は無理そう。俺と一夏は正反対だ。一夏は接触だけじゃ君に届かない。だが、俺は接触だから簡単に君に届く。

 

「嫌ですね。俺は……ここにいるっ」

 第一相の死の恐怖かな?

 

「今の夕君は、まるで休日の家族サービスを怠るお父さんみたい」

 やった! 通じ合ってるなんて、俺達相性抜群! 六字熟語かな? そんなものはない!

 

「わかりますん」

 

「ふふ、可愛い」

 や、や、やめろォ! 頬をプニプニするなァ! 大切な玉の肌に傷が出来たら訴えてやるわ! 小さい事で一々訴えていたら、マイナスだから注意。安くないのよ?

 

「じゃあ、アリーナでISの練習してみる?」

 予約どうするんだよ? 割り込むのか?

 

「やりませんが、練習出来るんですか?」

 いや、聞くだけだから。やりたい訳じゃない。

 

「私達も混ざるの。使用する人達にお願いしてね」

 ああ! この手に限る。

 

「生徒会長というのはね、学園全員の上に立つの。私が強い証」

 

「なるほど……では、一ついいですか?」

 

「お姉さんになんでも聞きなさい」

 

「やるとしたらいつになりますか?」

 時間を尋ねる。

 

「そうね……午前と午後どちらがいい?」

 両方じゃないのか。残念だ。

 

「両方は無理ですか?」

 

「それはさすがに難しいわね……アリーナを使えると聞いて、やる気満々なの?」

 どうせやるなら、たくさんやりたいからだ。俺だけ遅れてるし。せめて勉学かISのどちらか、皆に追いつきたい。申し訳なくて心苦しい。

 

「はい。やっぱり月曜までには少しでも慣れたいんです」

 

「んー…………わかったわ。なんとかするね」

 

「頼んどいてあれですが、本当に大丈夫ですか? 無理なら無理で断ってもいいんですよ?」

 無理矢理だからね。予約はぎっしり埋まっているみたいだし。

 

「大丈夫大丈夫。お姉さんに期待しててね」

 会長は力強く俺を抱いた。あ、これはいけませんねぇ。理由というか口実が出来た。

 

「はい!」

 そして俺は叫ぶのだ。

 

「みんなー! 明日アリーナに集まれー! 八時に全員集合!」

 これでよし。多分届いた。

 俺はファンネルから手を離した。

 

「な、なにしたの?」

 いきなり俺が叫んだから、戸惑いながら問われた。

 

「いや、言ってみただけです」

 

「嘘ね」

 会長さんは俺の頬を舌で舐めた。

 キェアアアアアアアア舐められたあああああああ。

 

「この味は嘘を吐いているわ」

 

「正直に言わないと、キスマーク付けちゃうよ?」

 おう、好きにしなはれや。会長さんが不利になるだけだから。

 

「だったら、やってみせて下さいよ。人類全てをニュータイプに」

 

「…………なにかありそうだからやめるね」

 

「自分の発言はしっかり実行して下さい。あなたはヘタレですか?」

 ははは。煽る煽る。今はまだ、私が会長さんの名を呼ぶべきではない。このタイミングだと話を絶対逸らされるから。

 

「夕君は今、なにかで私を誘導している。だからその手には乗らない」

 

「そうですか……じゃあ、ファンやめます……」

 悲しみにくれた口調で呟く。元々ファンではない。

 

「!?」

 俺の背中に乗る会長さんが震えた。ハートが震えたかい? しかし、ファンってなんのファンだよ。烏龍茶?

 

「やるやる! ファンならやるわ!」

 手の平クルーテオ卿! お久しぶりです!

 本当に一言も会長のファンとは言ってない。計画通りっ!

 

 そうして彼女は、俺の首に何度もキスをした。意外と気持ちよい。なんかマッサージであるんだっけ? 吸盤みたいのやつを、背中に乗っけるマッサージ?

 そして明日が楽しみだなぁ! 超楽しみだなぁ! 今なら会長さんのベッドに、アクセルシンクロ出来ちゃうほど、テンションMAXウェル!

 よし、今日は楯無さんに、リミットオーバーアクセルシンクロォォォォォォォォォオ!!!!

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