IS 一夏がいない   作:稲穂焼き

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十三話

 チュンチュン。昨夜はお楽しみでしたね。いやぁ、やっぱり楯無さんは強敵でしたね。

 朝、俺は楯無さんのベッドの上で起きたら、楯無さんは俺のベッドに寝ていた……。絶望した……! なんでやっ! 俺が抱きしめながら一緒に寝てたやろっ! ワイのヌクモリティは不満かいっ! つまりそういう事だ。この人やっぱり耐性がない。

 ちなみに風呂とかちゃんと入った しかも、楯無さん俺のシャンプーとか使ってた。かまへんかまへん。ちなみに俺が使うのはスカルプD。禿げてない。

 

 昨日のテンションが今日も続いて、楯無さんが寝ている内に、楯無さんのために朝ご飯を作りました! パンとご飯の準備完了! パン派とご飯派は相容れないのだ! だから宗教戦争が起きる。コーヒー派、紅茶派、緑茶派や、スパゲティ派にスパゲッティ派など、たくさんある。 相容れないなら出来るだけ無視して、自分の派閥で楽しみなさいな。お前、食料ないサバンナでも同じ事言えるの? サバンナになにがあったか忘れたけど。

 

 そして時間は七時。そろそろ起こそう。

 

「楯無さん楯無さん起きて下さい」

 俺はベッドの上に乗って、楯無さんをかけ布団の上から優しく揺する。

 

「ん……五分だけ」

 定番ですな。

 

「そんな事言わずにぃ!」

 今の俺はテンション油揚げ!

 

「起きないなら、それ相応の事をしますよ」

 ああ! 今ならやれる! 俺の血液がビートを刻むぞ!

 俺は少し布団を捲り、楯無さんの頬をツンツン。

 

「っ!?」

 楯無さんは驚愕して、光速でベッドから転がり落ちた。ああ、それはいけないな。

 

「大丈夫ですかぃ?」

 俺はベッドの上から落ちた楯無さんを、上から覗き込んだ。

 

「…………」

 返事がない。ただの乙女座のようだ。楯無さんは顔を真っ赤にして、片手で頬を押さえている。お相撲さんに張り手でもされたんですかね?

 

「仕方がないですねぇ」

 楯無さんが床に横になっているから、俺は空いている場所に足を置く。今日の楯無さんの服は、青いパステルカラーのパジャマだ。

 

「失礼しますねー」

 俺は楯無さんの両脇の下に両手を入れて持ち上げた。羽毛のようにライト! そんな訳ないじゃない! ある程度ヘビーだよ!

 

「…………」

 借りてきた猫かな?

 俺は大人しくて、動かない楯無さんにある事をした。

 

「失礼しまーす!」

 それは! お姫様抱っこ! 少し高い高いしてから、片手で楯無さんの膝下に手を通す。初めてやったけどかなりいいな、これ。後で一夏とかにもやってみるかな。

 

「ゆゆゆゆゆゆゆうくん! はなして! はなして!」

 ゆゆゆの二期が始まるのかな? 樹海化警報!

 

「ダメですよ。今離したら絶対怪我します」

 

「いいから! 恥ずかしい……」

 楯無さんの声が段々小さくなり、最後は両手で顔を覆ってしまった。

 まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ!

 

「あなたのために……味噌汁を作りました。だから……俺の味噌汁を食べて下さい」

 

「ぃゃぁ……」

 え? なんだって? 聞こえない。

 

「ほら、時間が来ちゃいますよ?」

 楯無さんをベッドの上に優しく下ろす。

 

「朝食の準備をしてきますね」

 そう言い残して俺は台所に立った。とりあえず、パンを用意しておく。トースターにすぐ入れられるように。

 料理は……好みは聞いてないから、わからないけどベーコンエッグにしておこう。

 レシピを決定し、調理を始める。

 

 

 そして楯無さんは部屋から出て行った。仕方ないね。でも、俺は悪くない。初日に抱きしめられ、二日目にベッドに入り込んできて、昨日は首筋にキス。これで俺が悪いのか……? ごめんなさい。

 しょうがない。一夏達でも呼ぶか。

 

「バンシィ! ちょっと来てくれ」

 俺はバンシィを呼ぶ。手を素早く洗って、タオルで拭いたタイミングで、来てくれた。

 俺はバンシィを片手で触ってから喋る。

 

「俺の部屋に来ないか? 簡単だけど、朝食作ったんだ。いらないなら、俺が一人で食べるけど」

 そう言った瞬間、ファンネルからガタンと音が鳴った。多分、一夏になんかあった。一夏ぐらいしか慌てるような人物は想像出来ない。痛そう。

 

「四十秒で仕度しな。三分間待ってやる。いつまでも待つ」

 通信終了。とりあえず、作っておこうか。

 ちなみに昨日の楯無さんと俺の会話は、ほぼ筒抜けだと思う。

 

 

 最初に来たのは一夏。服装が乱れている。あわて過ぎィ。ゆっくりしていってね!

 

「おはよう、あなた。パンとご飯どっちにします?」

 

「……ご飯で」

 そして次に来たのは、箒と鈴とセシリアさん達だった。

 

「邪魔するぞ」

 

「邪魔するなら帰って」

 箒は俺の返しに部屋を出て、すぐに戻ってきた。

 

「おはよう、夕」

「おはよ」

「おはようございます。夕さん」

 

「はい。皆さんおはようございます」

 全員来るとは思わなかったが、いいでしょう。よーし! パパ頑張っちゃうぞー!

 ちなみにだが、一夏はジャージで鈴もジャージ。というか、皆ジャージ。皆に広めようジャージの輪! いや、マジで最近のジャージってシャレオツだから。

 

 

「そのエプロンドレス、意外と似合ってるぞ」

 あら、一夏に褒められた。私のセンス抜群ね! 本当は楯無さんが着てたエプロンを使いたかったが、さすがに人が使ったものを借りるというのは……だからエプロンドレスを選んだが、結局これも使ってるかも知れんな。お借りました。

 

 料理は全員分用意した。テーブルには、箒と鈴とセシリアさんが座って食事している。俺と一夏は台所で立ち食い。蕎麦屋かよォ。

 ちなみにセシリアさんは外国人の方なので、半熟が苦手な可能性がありターンオーバーで対応。

 

「あらあら、ありがとう」

 頬に手を当て礼を言った。

 

「そういえばさ、楯無さんはどうした? いないようだけど」

 これは正直に答えよう。

 

「俺はな? 一夏達が帰った後、とある部分でテンション上がって、俺と楯無さんにリミットオーバーアクセルシンクロしたの。それで今日楯無さんが起きたら、恥ずかしがって出て行っちゃったの」

 嘘じゃないよ。嘘じゃないよ。

 一夏と話していたら、向こうのテーブルで、ガタンと音がした。誰だよ……よろしくない。

 

「へぇ、アクセルシンクロか。どんな風にだ?」

 よし、気になって一夏が聞いてくれた。キャーステキー。

 

「眠っている楯無さんの布団の中に、アクセルシンクロ」

 これ、わかるだろ?

 ガチャンとまた向こうから、皿を落とした感じの音がした。静かに食おうぜ!

 

「へぇ、楽しそうだなぁ」

 

「ちなみに朝起きたら、楯無さんは俺のベッドで寝ていた」

 そんなに嫌だったのかね? やっぱり攻撃特化の人は、防御がぺらっぺらだね。

 

「やっぱり弱いんだ」

 

「そうなの」

 ごめんなさい、楯無さん。

 

 

 

 

 俺達は食事を終えて、アリーナに向かっている。そのため廊下を歩いているんだが、俺達の後ろをついてくる、箒、鈴、セシリアさんの三人は顔が茹で蛸みたいに赤くなっていた。俺は自分の裸以外は、基本恥ずかしくない。

 俺の隣を歩く一夏は普通だ。ま、男だからね。関係なさそう。

 

 

 男二人と女三人で分かれて、それぞれの更衣室へ。

 

「へぇ、夕のスーツはそうなっているのか」

 俺と一夏は服を脱いでスーツ姿になった。

 

「ああ。これで青じゃなく黄色だったら、マジで全体がバンシィ」

 

「確かに。工事現場の紐にも似てるな」

 だろ?

 

「だから青でよかった」

 本当に、バカにしてるとかじゃない。

 後、気付いたんだが一夏のスーツって、狩人か親善大使に似てるな。ポンポン痛くならんよう注意しなきゃ。

 

 

 俺達はアリーナで四人に合流。楯無さんもちゃんといた。今もまだ顔が赤いから、俺の方を向かない。首だけを逸らしている。

 

「よし、夕以外はやるか」

 一夏の声を合図に俺以外の五人がISを起動。俺、ハブられた……。

 しかし……皆すごいな……強者オーラがある。それに比べて俺は……。

 

「よしよし! 一夏ァ! 見ててくれよな!」

 俺は皆の前に出て、一夏に力強く指差した。

 

「ちゃんと見てるぞ」

 サンキュー。

 

(これは戦いじゃない。でも、お前が俺を選んだなら、その期待に少しでも応えたいから……力を貸してくれ)

 俺は目を閉じながら、飛び回っているであろうファンネルに語りかける。

 そして俺は叫んだ。

 

「行くぞ、バンシィ!」

 一旦目を開くと、セシリアさんと鈴のファンネルが消え、一夏と箒のファンネルが俺の元へ転送されてきた。

 シールドファンネル三枚が、同じ間隔で離れて俺を囲い、シールドファンネルが勢いよく回り始めて、光が俺の周囲を包んだ。なにこれかっけぇ。

 

 それは一瞬の光だけど、温かさを感じた。

 俺は閉じた目を開く。

 

「うん、成功したな」

 自分で機体を確認すると、各部の装甲がスライドして、金色の光を発生させている。そんな様子を確認出来た。

 これは完璧にアニメを再現してますわ。

 そして装甲は閉じていき、ただの黒い機体に戻った。

 

 ん? ちょっと待って……あれ? 形態移行だっけ? あれ?

 自分のISに疑問を抱きながら、皆の方を見た。

 

『………………』

 え? 俺なんかやった? ただ起動しただけだよな? なぜか皆、目を見開いて無言だった。

 

「す……」

 一夏が一番最初に言いかけた言葉はなんだ? す?

 

「すっげーかっこよかったぞ!」

 一夏が驚きながら感想を言って、ISの姿のまま勢いよく俺に飛びついてきた。俺はなんとか踏ん張って、一夏を受け止める。倒れたらどうするんだ! 俺は多分、亀やカブトムシみたいに倒れて、起き上がれないぞ!

 

「本当に、現実に飛び出してきたかと思ったぞ! 俺達まで眩しかった!」

 興奮するのはわかる。俺と一夏はよく、アニメを一緒に見ていたからな。でも、これは俺じゃなくてバンシィと束さんのおかげだ。

 これはCMに出ればいい宣伝になって、アニメに興味が出てきますわ。神々しくて神秘的ですもん。俺、卒業したら宣伝するんや。

 

「綺麗な光……」

 さっきまで赤面してた楯無さんが、俺のISの印象を呟いた。うん! これが俺のIS! 誰にも渡さない。

 

 

 その後、箒に鈴にセシリアさんの三人から感想を聞かせてもらった。まとめると、すごいだって。

 そして俺は一夏にISの動きを教えてもらった。他の三人は楯無さんから、なにか教わっている。

 後はビットをまだ使う予定がないので、セシリアさんに説明して後回しにしてもらった。今は基本動作すら難しい。

 

 

「おぉ! 段々上手くなってきた!」

 俺は一夏に地上の動きを教わった。歩いて走ってステップなど。

 

「そ……そうか?」

 俺は息切れしている。体力がないんじゃなくて、神経を使うから。一緒かね?

 

「そうだ。俺も触った時間があまりないけど、きっと大丈夫だ!」

 一夏がそう言ってくれるから、俺は素直に喜んだ。まだまだだけど。

 

「……ありがとう。ならさ、せっかくだからアニメを再現してみない?」

 俺は一つの案が頭に浮かんだ。

 

「それって?」

 

「この俺と一夏の機体で、UCみたいに空中戦」

 

「…………あれか! 三次元的なあの戦い」

 少ししてから、俺が言ってる事に気付いた。

 

「そうそう、それ。いずれだけどね。今は普通に、地上限定の近接勝負をしてみたい」

 

「今の夕には、空は難しそうだしな。だからそれをやってみるか」

 一夏は腕を組みながら、了解してくれた。

 

「じゃ、やろう。手加減してくれよ? 俺は待ちのスタイルで」

 普通にやったら絶対勝てない。普通にやってもまず勝てない。だが、地上なら一発だけなら。掠るだけでいいから。

 

「わかった。俺が攻めるぞ」

 俺と一夏は距離を離す。約十メートルぐらい。若干近くね?

 

(シールドファンネルや、他の武装を外してくれ。サーベルだけを頼む)

 バンシィは俺の言う通りに、サーベルだけを残してくれた。

 

(ありがとう)

 俺はバンシィに礼を言って、両腕の前腕部のサーベルをパージしてから柄を掴んで、標準ぐらいの長さでビームを出力して、二刀で構える。

 

『おいおい、いきなり二刀流か?』

 一夏の声が頭に響いた。これはIS間での通信だろう。

 一夏は白い太刀のような刀剣を一つ、正眼に構えている。

 

『二刀流でやってみたいんだ。他の武装は使わないし』

 

『そうか……わかった。構えろ。夕』

 真剣な表情で真剣な声の一夏に、言われた通りにビームサーベル二つを構えた。

 横目で他の四人を確認。どうやら、俺と一夏の対決を観戦するみたいだ。

 

『よし! 三秒数えたら行くぞ! 三!』

 カウントダウンが始まり、手が少し震えてきた。俺は殴り合いの喧嘩をした事ないけど、これは喧嘩の一つ上のステージ。

 

『二!』

 一夏に勝てるとは思っていない。力に関しての向上心は、俺は持っていない。だが、俺にはバンシィがいる。だから少しでも、俺はバンシィと一緒に戦いたい。勝敗なんて関係なく。いや、やっぱりやるなら勝ちたい。

 

『一!』

 どこまで行けるか試そう。

 

(行こう、バンシィ。一発でもいい、一夏にダメージを入れる)

 

『零!』

 

 一夏は真っ正面から接近。僅かだが宙を浮いている。

 

 頭上にブレードを上げて、垂直に振り下ろす。多分、様子見の牽制だろう。

 

 俺は一瞬だけ考えた。サーベルをクロスしてブレードを受け止めるか、それとも片手のサーベルだけでブレードの軌道を逸らすか。

 

 直感に従い、俺は片手のサーベルでブレードを斜めに受け流す。

 

 一夏はその受け流しを予想していたのか、高速で後退してブレード引いた。

 

 だから俺は接近した。今の一夏はブレードを引いたラグがあり、再度構えるにはそのブレードは長すぎる。ちょっとした隙でも、攻める。

 

 俺の動きを読まれたのか、一夏はサイドステップ。移動した勢いでその場を回転して、ブレードの重さを利用して回転切り。

 

 俺はそれをスライディングで避けて、片足を突き出し地べたを滑る。

 

 繰り出したスライディングを、一夏は地面で両足を揃えてから、空中で何回かひねり、俺の体を飛び越えた。

 

 俺は避けられたのを見て、すぐさま片方のサーベルを地面に突き立てた。サーベルを軸にして半回転し、勢いよく滑る。そして体勢が低めのまま、俺と一夏は少し離れた距離で相対した。

 ISのサーベルって地面を焼かないんだな。支えになるとは思わなかった。

 

『驚いたぞ! まさか下から潜り込んでくるだなんて!』

 

『俺も驚いた! 体操でよく見るやつだ!』

 

 俺達は互いに賞賛しあった。

 

『楽しくなってきたぜ!』

 

『俺も意外と楽しいぞ!』

 

 だからもう一度だ。

 

『さぁ! 来い、一夏!』

 

『だったら行かせてもらう!』

 

 一夏が正面からダッシュ。ブレードの刃を下にして突きの構え。

 

 俺はサーベルを順手から逆手持ちにしてクロスさせながら前進。

 

 一夏の突きを、サーベルをクロスした中心部分で受ける。

 

 俺はクロスしているサーベルの中心部分を下にズラし、一夏のブレードをクロス部分の上に通す。

 

 その際にクロスしたサーベルと脇でブレードを上下で挟み込み、俺はブレードに沿って前に進んだ。

 

 脇に通す時、シールドエネルギーが少し削れたが、お構いなしだ。これで俺はシールドエネルギーの残量が減った。

 

 一夏は後ろに傾き、後退してブレードを引き抜こうとする。

 

 俺は急ブレーキをかけて、引き抜かれないよう、脇とクロスしたサーベルでブレードをロック。

 

 ここで互いの動きが止まった。一夏と俺は動けない。どちらかが先に動けば、今の状態では小さな隙になる。

 

 一夏は回避重視でブレードを後ろに引けば、俺は引き抜く速度と一緒に詰める事が可能だろう。

 

 一夏がダメージ重視で前に突っ込むなら、俺のサーベルが待っている。

 

 だから動いたら、一気に勝負が決まってしまう。だが、このままだとダメージ負けするのは俺だ。一回ぐらいダメージを与えたい。

 

 俺は賭けに出た。両手のサーベルを離して、ブレードを瞬時に両手で挟み込んで、しっかり掴む。止まっていた一夏は反応が遅れた。

 

 先ほどの脇の下と、サーベルのクロスで挟むのと同じやり方だ。ダメージ重視で行く。

 

 両手でがっちり掴んだブレードを、最小限の動きでブレードの切っ先を、掴みながら片足で踏む。重さでブレードの切っ先は地面に刺さる。

 

 一夏は俺の事を構わず、ブレードの切っ先を引き抜こうと必死だ。だから俺は両手をブレードを離し、切っ先を踏んでない方の足で、柄の付近を踏みつける。

 

 一夏は危険と判断したのかブレードを放棄。一夏の判断は正解だった。俺はブレードを地面に踏みつけた。そのため地面に着地した硬直がまだ残っており、一夏はそれを見事に見抜いた。

 

 一夏は加速して俺に踏み込み、ストレートでもなくフックでもない技を繰り出す。

 

 腹部を狙うラリアットだ。胸部や首ならまだギリギリかも知れない。だからギリギリであるなら、まだなんとかなる。だが腹部じゃ回避は無理と判断して、俺は諦めた。

 

 

 だが、バンシィはそうは思わなかった。

 

 NT-Dが発動。俺は一夏の攻撃を避ける事が出来た。

 

 距離を離して仕切り直し。バンシィのおかげで助かった。

 

『きょ、今日はこの辺にしよう! ね? ね?』

 俺はそう提案した。NT-Dがなければ、俺はダメージを受けていたからだ。

 

『……そうだな。これ以上は肉弾戦になりそうだ』

 一夏も肩の力を抜いて、腕をだらんとしてぶらぶらさせた。

 

『楽しかったぞ! また相手してくれ!』

 俺はそう叫んだ。勝負事は苦手なんだけど、一夏との戦いは楽しかった。

 NT-Dが終わって装甲は閉じていく。

 

『ああ! もちろんだ!』。

 

(バンシィ、ごめんな。助けてくれたのに、やめちゃってさ)

 ただ、バンシィが力を貸してくれたのに、俺はギブアップした。それが心残りだ。

 

(俺はもっと強くなりたい。バンシィに頼るんじゃなくて、バンシィと一緒に並んで戦いたい。だからそれまで、俺の弱さに付き合ってほしい)

 答えが返ってくるかわからなかったが、一瞬だけ装甲の隙間から光が漏れた。それが返事だと思う。

 

(ありがとう。お疲れ様)

 こうして俺は、一夏と一緒に武器を回収して、四人の所へ戻った。

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