IS 一夏がいない   作:稲穂焼き

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十四話

 俺と一夏はISを装着したまま、二人並んで女子四人の元へ。

 たまたまアリーナの観客席を見たら、意外と人がいた。まぁ、専用機持ってて男二人が戦ったもんな。話題性バッチリよ。そろそろ記者さん来そう。やっぱ、来ないと思う。

 

「お疲れー」

 鈴が一番最初に声をかけてきた。俺の現在地から少し離れた場所で、一夏は箒とセシリアさんと、会話を始めたようだ。

 

「夕だって結構戦えるじゃない」

 

「地上戦ならな。空中戦はまだまだこれから」

 一夏との勝負は意外と楽しかった。やれば出来るもんだな。バンシィも強いし。

 

「ま、確かにね。戦い方はすごかったわ。私は荒々しくて好きよ」

 今振り返るとすごいよな。ブレード踏んづけてるもん。武器破壊しそう。

 

「一夏君が清流なら、夕君は濁流ね」

 なんだ、その比喩は。言いたい事はわかるけどね。

 一夏は正統派だった。なんていうか……品がある? 綺麗な太刀筋で、闇を切り裂く光? ヒーローみたいでかっこよかったなぁ。

 

「それって、夕に対する侮辱にならない?」

 鈴が楯無さんの言葉に反応して、俺の代わりに問いただす。何故そんなに刺々しいの? 俺はいいんだよ。自覚出来るほど戦い方がヒールすぎるから。

 

「大丈夫よ。あくまで例えだから」

 

「あっそう。ならいいわ」

 例えだとしても、引き下がるのは早くね? なんだったんだ今のは。

 

「さて、これから夕君はどうする?」

 最初はとりあえず、帰って休むつもりだ。もうISを使う気力はない。ISってこんなにも疲労するもんなのか。俺だけ?

 

「部屋に帰って寝ます。初めての戦闘なので疲労が……」

 戦いは楽しかったけど、今までとは比べものにならないほどの疲れだ。これは筋肉痛になりそう。一応鍛えているけどさ。

 

「そう。なら、お姉さんも一緒に帰ろうかしら?」

 

「好きにして下さい」

 段々俺の返答が雑になってきた。視界がふわふわ時間。眠い気がする。

 

「私も付き合うわ」

 鈴ちゃん。きみぃ……一夏はどうするのかね? 自然という一夏の場所に帰りなさい、ラスカル。

 

「どうぞ。一夏はこれからどうする?」

 ちょっと離れた所で一夏は箒とセシリアさんと会話中。中断させるのは悪いが、聞くだけ聞いてみてみよう。

 

「ん? そうだな……」

 一夏はちょっと悩み始めた。

 

「参考に夕はどうするんだ?」

 

「部屋に戻って寝る。死ぬぅ」

 まだ十時にもなってないけど。そういえば、今朝はいつもやらない事をやったのが理由か。

 

「じゃあ、俺も一緒に寝るぞ!」

 

「私も混ぜろよ」

 

「わたくしもご一緒しますわ」

 

「私はさっき言った通りにするわ」

 

「お姉さんも」

 なんで皆ついてくるの? 休日なんだから好きな事しなさい。これがやりたい事?

 

「そう……じゃ、一旦解散」

 全員のISを解除して、俺と一夏は男子更衣室へ。他の四人は女子更衣室へ向かった。

 俺はふらふらと千鳥足で更衣室に到着。

 

「だ、大丈夫かっ? 危なっかしいぞっ?」

 大丈夫じゃない、問題だ。

 

「へーきへーき」

 たまに壁などにゴンと頭をぶつける。タンスにゴン。ISを解除して一つだけになったシールドファンネル状態のバンシィが、時々壁の間になってくれる。

 そして一夏に服を着せられた。俺は子供か! まだ少年でした。

 

「嫌だと言っても、俺は肩を貸すぞ」

 くるぞ、遊馬! 俺達はオーバーレイねっとりーを構築!

 たった今気付いたが、アリーナの予約はどうするんだろうか。これはいけない。

 

 

 

 

 俺は一夏の肩を借りながら、寮の廊下を歩く。既に女子四人と合流済み。そして鈴ちゃんが一夏とは反対の肩を、支えてくれた。響ちゃんかわいい。

 

「迷惑かけてすまないねぇ。老いぼれみたいな俺に、力を貸してくれて」

 感謝しなくちゃね。

 

「これぐらいはどうって事ないさ」

 

「そうよ。たまには私達を頼りなさい」

 いつも一夏とか鈴とか箒とかに頼ってると思うけど。

 

「そんなに頼ってないっけ?」

 そんな事ないですよぉ。

 

「結構な」

 一夏は答える。俺の記憶には結構あるがなぁ。物理的とかそういう意味?

 

 

 

 

 部屋の中に入ってベッドまで運んでくれた。俺は一夏と鈴の肩を掴んで、ベッドに自身の体を使って二人押し倒す。三人で寝るなんて初めてかな?

 はい、おやすみ。

 

 

 

 

 ンゴゴゴゴゴ。俺のいびきうるせぇ。たまにあるんじゃないかな? 自分のいびきが聞こえる時。

 

 目を覚ますと、俺の両隣には誰もいない。そりゃ当然だわ。あっちは疲れてないんだもの。

 むくりと起き上がると、部屋には誰もいなかった。ここが静岡の裏世界か。壁時計は十二時ちょうど。オマエノシワザダタノカ。

 さて、昼食でも作るか。エプロンドレスを借りて、冷蔵庫の中を確認。そういえば、食材借りたからお金渡さないと。なにが好きでなにが嫌いか、食材で返すのは気を遣わせる。いや、金を渡しても気を遣うから同じか。でもマネーでな。いや、一緒に買い物かな。

 

 

 一人でいただきますして、一人でごちそうさま。自然の恵みに感謝を込めるという意味で、いただきますと日本人は言うのだ。外国ではいただきますの言葉はない。ちなみにごちそうさまの後に、お粗末様はアウトらしい。意味は合っていても、言葉の並びがよろしくないとかなんとか。知らんけど。

 片付けるために茶碗などを持って、流し台に。皿洗いは終わりのセラフしているのか、流し台には洗い物一つとしてない。誰かわからないけど、ありがとうございます。

 そして俺はテーブルで教科書を読みながら、浮いてるバンシィをたまにつんつんする。かわいい。

 

 

 勉強をやめて、部屋から廊下に移動。

 どこに行こうかしら? この学園広いから、下手に動いて迷子になりたくない。せっかくの休日だし、学園の外に行こうかな。申請すればいいんだっけ?

 一夏達になにも告げないのは、いないからだ。電話しても何故か出ないし。そういう訳でなにも言わない。

 それじゃ、行こうか。

 

 

 あ、制服なの?

 

 

 

 

 学園外に出てバンシィにはポケットに入ってもらい、とある目的地へ。たまに複数の視線が俺に向けられる。皆の視線を独り占め! そりゃ有名人ですもの。SPさん達はいないけど、今の俺には優秀なボデーガードがいるからね。後、俺になにかしたらあんた死ぬわよ。

 

 

 

 

 目的地に到着。目の前には変わらない建物。

 電話でポパピプペしてコール。

 

『もしもし?』

 

「おるかー?」

 

『いるぞー』

 

「はい」

 電話を切って扉に手をかける。五反田食堂の扉よ! 開けゴマ!

 

「こんにちはー!」

 俺は元気よく店内で叫んだ。お客さんも少しいて、俺を見る。そりゃ、ビビるだろうな。

 

「お久しぶりです。大将さん」

 そう言ってから、二言ぐらい大将に色々挨拶してから家に上がった。

 目的の扉は目の前に。ノックを二回鳴らす。

 

『入ってまーす』

 返事が返ってきた。今度は三回ノック。

 

『どうぞー』

 ドアを開く。

 

「お久しー」

 目の前には座っている一夏とは違う親友。し、親友でいいんだよね? アクセラレーターじゃないよね?

 

「よう。久しぶりじゃねぇか」

 しん……友人の五反田弾。

 

「へいへい、スタンダップ」

 手をパチパチ鳴らし、弾を立たせる。

 

「またかよ……」

 嫌々首を振りながら、重そうな腰を上げて弾が立った。弾が立ったった。

 俺は抱きついた。

 

「へーい! 元気にしてるぅー?」

 抱きしめている俺は、弾の背中をバシバシ叩いた。

 

「いてぇいてぇ! 元気だよ! お前は?」

 

「死にそう……」

 

「そうか。ま、とりあえず離れて適当に座れよ」

 弾に言われて、俺は離れながら正座。

 

「お前も災難だったな。一夏と同じ女だけの園なんてよ」

 穏やかに俺を心配してくれる弾。やだ、優しい。

 

「まーね。大変だよ? あの環境。勉強は皆と違って遅れてるし、ISはまだまだ基礎知識もないし、思い通りに動かせない」

 とりあえず、俺は弾に内容を話す。羨ましい? 苦しみは当人じゃないとわかりません。

 

「そうなのか。でも、専用機があるじゃねぇか。そこは羨ましいぜ」

 確かにそこだけ見ればな。

 

「ほれ。これが俺のIS」

 バンシィをポケットから取り出す。俺がなにも言わなくても、弾の近くで浮いた。

 

「飛んだぁぁぁぁぁぁ!?」

 弾が驚いて叫ぶ。普通のISと違うからな。

 

「……って、これってあのシールドファンネルかっ!?」

 

「うん。IS展開時はリディさんの機体。黒いよ」

 

「うおおおおおお! 羨ましいィィィィィ!」

 弾が勢いよく立ち、絶叫し始めた。だろう? 羨ましいだろ? 俺も学園にそこまで興味なかったが、IS持ったらよかったと思ったクルーテオ。他が辛いけど。

 

「怒られるぞ」

 一応注意しておく。

 

「いやいや、すげぇってこれ! 飛んでるんだぜ!? 普通飛ばないからなっ!」

 お前のテンションもかっとビングしてる。後、俺よりそこそこ詳しいじゃないか。

 

「うおおお! 俺もIS欲しくなってきた!」

 

「一夏と俺の情報で研究が進んだら、弾でも使えるようになるかもね」

 後は束さん次第。

 

「マジか!? 将来が楽しみになってきたぜ!」

 

「俺もなんとか頑張ってみるから、原因が判明して使えるようになったら、弾を優先するよう言っとく」

 ここまでハシャいでくれるんだ。なんとかしたいな。弾が最初とは言ってない。

 

「マジか!? サンキュー! 夕!」

 立っていた弾が、座っている俺に急降下してきて、涙を流しながら抱きついてきた。そんなに嬉しいのか。ははは、こ奴め。

 

「おうおう。落ち着きたまへ。まだまだ先になるんだ。ワクワクは後に取っておけ」

 

「でもなぁっ! 可能性があると言われたら、誰だって喜ぶぞ! 俺もその一人だぁっ!」

 

「はいはい。わかったわかった」

 興奮した弾を、落ち着かせるのも大変だ。なるほど。これが俺を落ち着かせる時の鈴ちゃんの気持ちか。面倒かけてごめんなさい。

 

「所で蘭ちゃんは?」

 そういえば、弾がうるさくしても、なかなか出てこない。

 

「あ? 蘭なら友達と遊びに行ってるぞ」

 弾が俺から離れて、その場に座ってから俺の言葉に答えた。近い近い。お前この距離嫌がるのに。夢中だったからかな?

 

「そうか。せっかく情報持ってきたのに」

 まぁ、いないのは仕方ない。俺が急に来たからな。事前に知らせておけばよかったか。いや、でも今日はISを一日中稼働させるつもりだったのに、俺が思っていたよりキツくてギブアップ。非力な私を許しておくれよ……。

 

「代わりに俺が教えるから、言ってみろ」

 

「はい。知ってる部分もあると思うけど、一夏は昔の幼なじみの女の子と同室。幼なじみは一夏が好き。一夏は幼なじみの事を、結構気にしてるみたい。幼なじみが告白すれば、多分エンディングを迎えそう。そろそろ告白するんじゃない?」

 グッドかバッドのどちらかは知らんが。グッド寄りじゃないかな? 時期はもっと先かも。

 

「あちゃー……そうか。やっぱり時間は強いな……」

 弾は残念そうな顔をしながら、状況を冷静に見た。

 

「まぁ、昔からの付き合いだったからね。俺も昔はよく遊んだし」

 クラスの友人より、特に一夏と箒と遊んだ。いや、ちゃんとクラスの人達とも仲良くしたよ?

 

「そうか……残念な結果を、蘭に知らせるのつれー……」

 下手すりゃ矛先が弾に向くもんな。いや、ゲイボルグみたいに決まった運命かも知れん。大変だなぁ。

 

「今更だし、こう言ってはあれだけど、蘭ちゃんは一夏と相性悪いじゃないかな? いや、別に悪口じゃないよ?」

 

「わかってる。お前の話だ。聞かせてくれ」

 妹を悪く言うなとぶん殴られ可能性もあったが、弾は頭をがしがしと掻く。かいたから冷静だったのか? なんであろうと感謝する。後、禿げるぞ。

 

「まず、一夏は俺達の中で一番告白された奴だ。つまり、それは人を魅了する力がある。性格よし、顔よし、姉は有名だからな」

 

「イケメンがイケメンしてるんだよな……」

 

「だから、そこで蘭ちゃんが出てくる」

 

「そういう事か……」

 どうやら弾は、俺の数少ない言葉から言いたい事を察して、ゆっくり頷く。

 

「蘭ちゃんの性格だと、一夏の女性関係に耐えられるかわからないって事」

 少なくとも、蘭ちゃんの性格はかなりいいんだがなぁ。兄に対する言動を除けばだが。

 

「あいつは女と関わりたくなくても、勝手に寄ってくるからな……」

 別に同性が好きとかではなく、俺達とただ遊びたいだけなのに、周りが放っておかない。

 

「そりゃ羨ましいと思う部分はあるが、毎回毎回女の子を泣かす事になるから、一夏の心中はお察し」

 一夏は優しいから傷付いてしまう。だから俺達は一夏と一緒にいる。

 

「弾だって何回か告白されただろ?」

 

「あ……あぁ、まぁ……な」

 弾も思い出したのか、苦虫を噛み締めた表情を表す。

 

「友達からってなら多少考えたが……段階飛ばして付き合ってだからな……生半可な気持ちじゃ相手を傷付けるから断った」

 

「相手の事を考えればだ。よくやった……と、言えるかわからんが、少なくとも間違ってないはずだよ」

 断るという事は、単純に傷付けるという意味だ。でも、相手も自分も悪くないのは確か。

 期待させてって…………あれ? 俺も楯無さんに…… いや、自分の行動を振り返ってみたが、あれは違うな。追い払っているだけだ。あー、でも、今後の対応を少し考えるか。

 

「少しは気が楽になった。サンキュ」

 少しだが、弾に笑顔が戻った。

 

「ああ」

 俺は頷いた。

 ちょっと暗くなった空気を入れ換えするため、俺はある事を話す。

 

「唐突だが、俺の相部屋の人がな?」

 

「なんだ? 急に? 女と相部屋なんだろ? 一夏と一緒じゃないなら」

 

「うん。それでね……初日に相手の人に結婚を申し込まれた。いや、交際だな」

 

「は……?」

 わけがわからないよ。弾はそんな表情をしている。いや、QBの顔は無表情だわ。

 

「よっしゃ! 楽しくなってきたぜぇ!」

 衝撃を受けた弾が瞬時にリカバリーした。その後、前のめりになって弾の顔が、俺の顔に近付いてきた。

 

「これ以上距離を詰めると、チュッチュッしちゃうぞ」

 

「わ、悪かった」

 全速力で後退して、弾は姿勢を正した。

 

「んでね、両親がその人に俺のボデーガードを依頼したの。で、向こうは前から俺の事を見てたって。だから、付き合って下さいって」

 両親というのが結構強い。

 

「それストーカー気味じゃねぇかっ!」

 弾の的確なツッコミ。サンキュー。

 

「うん。でね、そんな事があったけど初日は終わった。次の日の朝……」

 俺は一息吸った。弾はすごく気になるのか、食い入るように待つ。

 

「その人は……俺の隣に寝てた。ぶかぶかのYシャツだけ着て」

 いや、下着ぐらいかはあったかも。よく見てなかった。

 

「マジかよっ!? 羨ましいシチュエーションだなオイッ!!」

 弾は飛び跳ねるように興奮している。まさか、Yシャツと添い寝を本当にやってくる人がいようとは。

 

「でもな? そういう事を実行しちゃう人は危ないのよ? 俺の脱いだ服をスーハーしたり」

 

「ご褒美かと考えていたら、ヤンデレ気味じゃねぇかっ! いくら美人でも、それは無理だわっ!」

 実際はクンカクンカスーハーしてません。だが、それに近い行動はある。

 

「そんな人が俺の同居人なの。まぁ、今の所は俺のシャンプー類を使ってた事だけだな」

 俺の記憶が正しければな。

 

「乙女にしてはちょっとやりすぎじゃねぇか?」

 

「まだ実力行使はしてこないから大丈夫。でも、襲われたら俺は絶対に勝てん」

 

「お前より力があるって事か?」

 

「純粋なパワーだけなら俺は勝てるが、パワーを上回る格闘の技術があると思う」

 ロシア代表だろう? 格闘ぐらいは習ってるはず。

 

「やべぇな……この前まで一般人だったお前じゃ勝てんな……」

 

「でも、今日は力じゃないけど逆襲したぞ?」

 そう、今朝のあれ。

 

「どんな事だ……?」

 弾は生唾をゴクリンコ。

 

「その人が寝てる最中に、俺はその人の布団にアクセルシンクロ。つまりその人の布団に入った」

 これぞ逆転の発想! 守勢なら、攻勢に回ればいいじゃない。

 

「お前すげぇ度胸だな……俺じゃ押されっぱなしで無理だわ……」

 

「そして昨日、その人が寝る前にやってきた、キスマークがこちらになりまーす」

 俺は弾に、後ろ姿を見せてから、服の襟を下に引っ張り項の辺りを見てもらう。縛った髪は退けて。

 

「うわ……マジで跡が残ってんな。というか真っ赤だ。そして初めて見た……」

 弾が驚愕で声量が小さくなって、引いている。

 

「うん。俺も初めてされたわ」

 

「波乱な人生送ってんな……」

 弾から同情の眼差しをいただいた。ありがとう!

 所で、なんで皆はキスマークに気付かなかったの? 髪で隠れているから?

 

 

 

 

 俺はしばらく弾と遊び、今度一夏を連れてくる事を約束した。バンシィをポケットに入れて、五反田食堂から出て道を歩く。

 電話を取り出し、着信がないか確認する。なにもなし。

 さて、ここからどうしようか? 今は十六時前。一応余裕を持って帰るか。

 俺はゆっくりと、外の空気を胸一杯に吸った。うん、悪くない。

 

 

 

 

 何事もなく学園に帰ってきて、寮の廊下を歩く。他の女子生徒から挨拶されたので、俺も挨拶を返した。

 

 部屋に戻って服を着替えるために、ジャージなどを持って脱衣所に向かう。

 そしてノック。今、そのままスッと入る所だった。

 少し待ったが返事なし。シャワーの音もない。だが、油断するなよ。こういう時は、ハプニングが発生しやすい。だから、ゆっくりと脱衣所の扉を開く。

 脱衣所の明かりはなく、風呂場の明かりもない。よかった。それを確認してから服を着替える。

 

 そういえば、スーツも着てたなと思い出して、まずは上から脱いだ。

 上半身裸のタイミングで脱衣所の扉が開いた。oh……。

 

「あせか――――」

 楯無さんだった。

 ここはやるべきだと思考が結論を弾き出す。上半身を両手で隠して、俺は叫んだ!

 

「キェアアアアアミナイデー!」

 

「ごごごごごごごめんなさいっ!」

 楯無さんは顔を真っ赤にして、慌てて目を伏せながら謝罪。そして扉を強く閉めた。

 

 これ逆じゃね?

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