IS 一夏がいない   作:稲穂焼き

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十八話

 ショッピングモールに到着。ここはゾンビが出たらオススメ。スーパーとホームセンターが一緒のお店もオススメ。食料と武器が一気に入手可能だから。

 

 俺は両腕に引っ付く二人を見た。移動中の間、二人が俺を離さないお陰で、動き難くて仕方が無かった。せめて歩幅は合わせようぜ。鈴は小さく楯無さんは大きめだから、必然的に俺の体は斜めになった。地味にキツい。

 周囲の視線は別に気にならなかったな。制服姿で身分バレバレだし、ニュースを見ていた人は顔ぐらい知ってる筈だから、集まっちゃうけど何故か気にならないなぁ。目立ちたがり屋?

 

「鈴ちゃんは最初は何を見たい?」

 

「やっぱりここは服じゃない?」

 二人が顔をだけを前に出して、俺を挟んで会話をし始めた。だったら離せよ。俺はちゃんと後ろにいるから。ま、申し立てても無駄なのは知ってる。

 

「じゃ、服にしましょ。行こうか、夕君」

 俺は二人に同行され、服を選びにいった。

 

 

 女性物の洋服屋に着いて、二人は俺を解放して先に店内に入っていった。

 

「これからの季節に合わせた服を選ぶから、夕君も付き合ってね」

 

「はい」

 

 

「ねぇ、夕! これとこれどっちがいいかな?」

 俺は適当に服を眺めていると、鈴が二つの服を両手を使って見せてきた。

 

「うーん……」

 腕を組んで二つ見比べる。

 鈴が持ってきた服は、一つは長袖で薄手の膝上辺りのワンピース。青と白のチェックだ。

 もう一つが青のショーパンに、白で無地のTシャツ。上着に白のカーディガン。淡いピンクのストール付き。ワンピースの方は手抜きってレベルじゃねぇぞ。

 

「鈴はどっちがいい?」

 

「私は……こっちかな」

 ワンピースじゃない方の手を少し上げた。

 

「俺もそれだな。絶対似合う」

 個人的にそのワンピースが好きじゃないんだ。もっと他にあるでしょうよ。どう考えても選んでほしかったのが、マネキンから持ってきた感じの方。

 

「わかった!」

 元気よく返事して、広い店内だが所狭しと服が並んでいる隙間を、鈴は小走りでどっか行った。店内では走らないようにー。

 

「ねぇ、夕君!」

 今度は楯無さんだ。一つはカーキ色のカーゴパンツに、薄い桃色のTシャツ。薄い青の上着。

 もう一つが灰色で、丈が少し長めのチュニック。青のジーパン。

 

「これはどっちも似合いますね」

 

「ホント?」

 

「はい。最初に見せてくれた方は、ボーイッシュというか爽やかというか健康的な感じです。もう片方は大人っぽい雰囲気ですかね」

 本音はどちらも楯無さんが着れば、二十代に見違える服な気がする。凄く似合うんだけどね。

 

「じゃあ、キープするね」

 

「はい」

 楯無さんは満足気な表情をしながらどこかに行った。

 

 

「あの、すみません」

 

「はい?」

 適当に服をがさごそ見ていたら、横から知らない女性に声を掛けられた。これは二つの内の、どちらかがヤバい。

 

「さっきの人達を見てたんですけど、よかったら服を選んでくれませんか?」

 

「ゑ?」

 

「男の人の視点がなかなか無くて……」

 ちょっと照れながら理由を話す女性。十代ぐらいの人かな?

 

「まぁ、基本的に男は女性の服選びに興味ないですからね。わかりました。好みに合致するかわかりませんが、自分でよければ」

 仕方無い。言われてしまったなら、協力しましょうか。ナイスガッツだ。コミュ力凄いな。

 

「ありがとうございます!」

 頭を下げてお礼の言葉をいただいた。この女尊男卑の世界に稀有な人だ。いや、俺としてはそこまでドギツい人と接した事はないけどな。かなりの確率で、目立つ一夏の方に向かってくから。あなた私の靴を舐めなさいとか。それは嘘だけど。

 

 さてさて、着せ替え楽しみだなぁ。嫌いじゃないわ!

 

 

 

 

「あー……」

 俺は店の目の前のベンチに、腰をゆっくり下ろした。なんだよ、あの数は……。少しは遠慮してくれよ……。楽しかったけどさ。

 あの後、あの人から始まり結構な人が、私の服を見立ててくれとお願いされた。ま、仕方が無いね。でも、親しい君らも彼女や友人の服を選んでやれよ。一言これがいいって。

 いやぁ、それにしても意外と温かい世界でしたね。男は肩身が狭くて苦労する世界だから、男のIS起動者を排除しようと刺されてもおかしくなかったが、そこまでヤバい人は闊歩してないようだ。まぁ、刺したら社会的にその人は死亡。これが権力や。後はバンシィと楯無さんや鈴がいるから問題ない。

 

 そういえば俺って制服着てるから、ありがたかったりするんかね? あの人に服を選んでもらったー、という感じで。写真も求められたし。うん、これは芸能界デビュー出来ますわ。しないが。

 

「人気者ね」

 洋服を何着か買って、紙袋を持った鈴に話し掛けられた。ムスッとしてなく、苦笑している。

 

「俺って稀少だから。服選びは適当に選んで流す人大多数だし」

 世の中の男は興味がないからね。俺も特別興味がある訳じゃないが、女子関連でどうしても聞かされてたし。休日のデートの格好はこれでいいかって。

 

「一夏や弾達がやりたがらないから、必然的に付き合いのいい夕になるのよ」

 

「嫌いじゃないから構わん」

 

「はい、これどうぞ」

 洋服屋の紙袋を持ちながら楯無さんは、近くの自販機で購入した、飲み物を受け取る。

 

「ありがとうございます」

 炭酸最高だわ。

 

「お昼にはまだ早いからどうする?」

 楯無さんが壁にある時計を見た。

 

「まずはその荷物をコインロッカーに預けましょう」

 どこにあるか知らんが。

 

 

 二人の荷物を俺が持って、コインロッカーに預けて身軽になった。

 

「次はどうします?」

 俺は二人にどうするか尋ねた。

 

「夕君の服を買いたい」

「夕に服を着せたい」

 

「自分で選ぶんで大丈夫です」

 レディースの次はメンズだとさ。マネキンが着てるやつとか、適当に探して気に入った物を着るから俺のはいいんだよ。

 

『えー』

 不満気ですね、あなた方。

 

「全く……わかりましたよ。付き合います」

 俺は肩を竦めて観念した。ここで断って次は代わりに下着選んでとか言われたら、俺は死ぬ。下着売場だけは絶対に入りたくない。あそこはマジで男子禁制だし、他の女性客から嫌な視線を絶対に向けられるから。嫉妬か不快感かのどちらかを。見られるのは構わんが。水着ならギリセーフ……かな。

 

 そして俺は二人に手を引っ張られて、メンズショップへと引きずり込まれた。

 

 

「夕君にはこれが似合う!」

 

「いや、絶対こっち!」

 二人が俺の服で言い争いを開始。私のために争わないで!

 楯無さんが持つのは、俺を大人っぽく見せるクール系。

 鈴は今時の若者達が着てそうな、カジュアルなタイプ。

 どちらもセンスは抜群にいい。女の子だしね。だが、自分の趣味の押し付けはいかんなぁ。ちなみに鈴の選んだ服の方が好みだ。

 

「どっちも買いで」

 これは仕方が無いね。いつまでも決着がつかない平行線だし。だったら二つ買えばいいだろ! 後、他のお客さんの迷惑です。

 

 

 そういう訳で二人の二着に、俺が選んだ二着を購入。

 

「夕君はそういう服が好みなんだ」

 コインロッカーに向かいながら、先ほど俺が選択した服の感想を、楯無さんが呟く。

 

「ふふん! 私は夕と長く付き合ってるからね。好みの把握なんて余裕よ」

 

「ぐぬぬ……」

 楯無さんが悔しそうに鈴を睨み、鈴は勝ち誇ったドヤ顔を楯無さんに見せつけた。俺をサンドイッチにしないでやってくれ。巻き込まないで。

 

 

 そろそろお昼時だ。ファミレスを選択した。

 俺が一人で対面に二人が座る。

 

 そして注文した料理が運ばれてきた。

 おい、バカ。二人で俺にあーんするんじゃない。一気に二つは食えんぞ。

 

 

 食事を終えたら、今度は店内の食料品店へ。

 

「夕君は苦手な食べ物はある?」

 

「夕は出された料理は、基本的に食べるわ」

 野菜コーナーで楯無さんに苦手な物を聞かれたが、先回りで鈴が代わりに答えた。

 買い物かごを二人が持っているから俺は手ぶら。自分で持って選びたいんだって。

 

「あなたに聞いてないわ」

 

「夕に聞かなきゃわからないのね」

 そりゃ、俺に尋ねんと好き嫌いがわからんからな。普通の事だよ、普通の事。

 

「ハンデとして好みぐらい私にくれたら?」

 

「ヒントがなければ夕の事を理解出来ないの?」

 何なのこの人達……。

 

「くぅ……」

 楯無さんは唸る。あーあ、黙っちゃった。ま、楯無さんが好意を伝えなければ、鈴も告白しなかっただろうに。タイミングが悪かった。

 

「夕は食べたい物ある?」

 楯無さんが沈黙している内に、鈴が差をつけるために攻撃。

 

「揚げ物かな?」

 

「唐揚げとか?」

 

「うん」

 俺は素直に答えた。嘘吐いても何もならんし。

 

 答えた瞬間、二人はダカダカ精肉コーナーに走っていった。危険ですので走らないで下さい。ドゥエらないだけいいか。

 

「あなた、幸せ者ね」

 俺が一人残され突っ立っていると、二人のやり取りを見ていたのか、ショッピングカートを押す主婦っぽい人に話掛けられた。この人頬に手を当てながら、かなりにこにこしている。微笑ましいのかな。

 

「はい。凄く幸せです」

 俺は主婦の人に笑顔で返す。

 

「頑張ってね」

 

「ありがとうございます」

 俺はお礼を言って会釈すると、主婦の人は野菜の選別を始めた。優しい世界だ。

 

「お菓子でも見てこようかな」

 俺は独り言を言ってから、お菓子コーナーへ向かった。

 

 

「夕! やっぱりここにいた」

 新作のお菓子を上下左右眺めていると、いつの間にやら鈴が隣にいた。俺の行動パターン読めてんなぁ。

 

「目当ての物はあった?」

 

「うん!」

 

「そうか。そいつはよかった」

 

「そろそろレジに行くね」

 

「一緒に行くよ」

 楯無さんはどうしたんだろう? ま、後から来るでしょ。

 俺は鈴のかごを持って、一緒にレジへと向かった。

 

 

 レジでお会計していると、楯無さんも並んだ。

 楯無さんと鈴の分を俺が払った。金はあるんだ。かまへんかまへん。

 

 

 

 

 買い物を終えて服の入った紙袋と、食料が入ったエコトートバッグを俺が持って、IS学園へと帰ってきた。私は帰ってきたきた! あまり落ち着けないお家ですね。

 鈴は自分の部屋に一旦戻って、荷物を置いてくるそうだ。

 

「今日は楽しかったね。一匹余分なのが引っ付いてきたけど」

 楯無さんは買った服をクローゼットに入れていき、俺は冷蔵庫に品物を並べていく。

 

「楽しかったのは同意しますが、その後の発言はマイナスです」

 鈴が同じ事を言ってもマイナスだ。別に贔屓ではない。

 

「三人で行けて楽しかったよ!」

 

「俺もです」

 普通の買い物より疲れた。こんなに疲れる買い物は初めてかも。胃は痛くないし面白いけど地味に面倒だった。

 

「また行こうね」

 

「はい」

 俺達は言葉だけだが、約束は交わした。

 

 

 ジャージに着替えた後、時計を見た。時刻は約十五時。ふむ、何をしようか。

 

「ねぇ、夕君。一緒にゲームしない?」

 

「え?」

 俺は今ベッドに座って教科書を読んでいる所だ。

 

「夕も一緒にさ」

 

「えぇ……」

 楯無さんと自分の部屋から遊びにきた鈴に誘われる。

 

「ずっと睨めっこしていても、簡単に覚えられないよ? 明日夕に教えるからさ」

 そ、そんなぁ~。ま、それはそうだ。

 

「わかりました。何するんですか?」

 

「格闘ゲーム」

 楯無さんにパッケージを見せてもらうと、世紀末のあれだった。

 

「やり方知りませんよ?」

 星が光るとかシステム辺りはわかるけど。

 

「大丈夫。私が教えてあげるから」

 鈴に言われて俺は無言で頷いた。

 

 

「ちょ、ちょっと待って下さい! 店員さーん!」

 楯無さんにバグ昇竜決められた。

 

 

「おい! 開幕いきなり座るな!」

 鈴に座られ、1ラウンド目から開幕ぶっぱされた。この二人は確実に俺の心を殺しにきてる。

 

 

「あっ……セクハラされた」

 

 

「あっ……槍投げだ」

 

 

「あっ……目押しミスらなーい」

 

 

「あっ……欲望が足りてる」

 

 

「あっ……ブー挑発された」

 そして俺の心は折れた。何だよ……どう考えてもあっちゃいけない事がいくつかあった。

 

「くそっ! 俺だって世紀末モード突入していたのに……」

 四つん這いになって、俺は泣いた。少しは接待してくれよ! バスケや田植えはまだ許されるが、メザメタコーってBGMが流れるのはおかしい!

 

「何だよっ! 俺が操作する時に限って、我が生涯に一片の悔いなししやがってっ! 悔いろよっ!」

 どう考えてもおかしい。プログラムか何かを確実に弄っている。

 そして俺の両隣で悪魔が微笑んでいた。

 

「俺は寝るっ!」

 自分のベッドに潜り込んで、頭から掛け布団を被った。

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