今週の授業は全て終わり、そしてこれからは終わりの始まりだ。つまり休日。勉強とISの調子は悪くない。まだビット触ってないけど。もう少し後だな、うん。
鈴と楯無さんに出掛ける事を告げ、俺は部屋を後にする。早々に行って帰ってきたいんだ。特に理由は無いけど。
一夏と一緒に学園の外へ。うん、悪くないな。学園内の空気と外の空気は、やっぱり違う。結界的な?
「俺に付いて来い!」
俺は先頭を歩いて一夏を誘導する。今から向かう目的地は教えてない。到着してからのお楽しみだ。別にサプライズでも何でも無いんだが。
はい、着いた。目の前には我が社のビル。
「お前の会社でっかいな」
隣に並ぶ一夏が、ビルを見上げながら漏らした感想。
「ふふん、でかいだろ」
ちょっと威張る。
「さ、こっちだぞー」
一夏に道案内を続けてビルの中に。
すれ違う顔見知りの社員さんに挨拶しながら、受付へ。いつものやり取りをして、目的の部屋に向かった。
いつものセキュリティー解除して、部屋に突入。
「ここに束さんが?」
きょろきょろと辺りを見回すが、普通の部屋すぎて疑問だらけらしい。偽装してるんだから当然だ。
「いるかわからんがな」
俺は床を叩いて地下に向かうための入り口を探す。ここか?
コンコン叩いていると蓋が開いた。
「持ち上げてー!」
上半身だけ入り口から出し、万歳する束さん。
「わかりました」
「は、はい」
束さんの第一声に一夏が戸惑いながらも、俺と一緒に束さんを高い高い。軽っ! ちゃんと飯食ってるんかな?
束さんの両脇に、俺と一夏は片腕を通しているから、肩に柔らかい物が当たってしまう。ごめんなさい。
そして俺は束さんを一夏に押し付けた。
「いっくん久しぶりー!」
「ちょ、ちょっと束さん! 危ないですよ!」
挨拶をしながら、束さんは一夏に抱きついた。顔に胸が当たっている。おー、感動の再会だ。そしていい光景。束さん、そこ代わって。
一夏が束さんを下ろして手を離す。
「お久しぶりです。束さん」
「うん! 夕君は二回目の久しぶり!」
束さんめっちゃいい笑顔。そりゃ、嬉しいか。
「はい。久しぶりです」
「ふんふん。それで今日の用件は何かな? でも束さんは天才だから、すぐに何かを理解したよ!」
「多分それだと思います」
流石天才や。というか、最初から知っててもおかしくない。ここに来た理由。
「うん! それじゃあ、束さん専用のラボにご案内ー! いらっしゃいませー!」
テンション高いな。気持ちわかる。
「俺に付いて来いっ!」
「わかった!」
一夏は元気よく返事して頷いた。
束さんは地下へ下りていき、俺も続いて最後は一夏。上を見るといい物が見える。うひょー。うん、俺もテンション上がってんな。
はい、到着。前回と変わりない部屋。
「さぁさぁいっくん! ISを出したまえ!」
束さんが掌を差し出して催促。
「どうぞ。でも、本当に可能なんですか?」
一夏が待機形態のISを束さんに渡した。
「大丈夫大丈夫。私が無理矢理にでも周りを黙らせるから。コアをハッピーバースデートゥース!」
多分だが、一夏は機体の事を言ってるんじゃない?
「それもそうですが、夕のバンシィみたいにユニコーンに出来るんですか?」
「問題無いよ! 夕君のついでに準備は済ませてあるから!」
やっぱりか。まぁ、そうでしょうね。俺だけだと他は無いのかってなるし。準備しておいた束さん最高や! 結婚して下さい!
「わかりました。頼みます」
一夏は軽く頭を下げる。
「束さんにドーンと任せて!」
胸を叩いてから、束さんは作業に取り掛かった。
俺はテーブルの椅子に座り、バンシィを手に持ち人差し指で撫で撫で。
一夏は束さんの後ろに立ち、その仕事を見守る。待ち遠しいのだろう。
「雪片弐型だけは、外したくないからそのままにするね」
「わかりました」
束さんの言葉に一夏は返事をしてから、俺の隣に座った。そわそわしてる。
「今までの白式に不満は無いけど、機体が変わるんだ! すげーわくわくする!」
少年の笑顔で一夏が俺に話掛けてきた。きらきらして眩しー。そしてかわいい。
「そうだな。俺もドキドキするわ」
そりゃ一夏とお揃いだからな。色違いだけど、これで宣伝効果は倍だし。早く世界にロボアニメが流行らないかな。もちろんISもいいけど、他の形も増やしたい。
俺と一夏は束さんの作業終了までゆっくり待った。一夏が束さんに質問したり、束さんが一夏に答える。
「武器は基本的にユニコーンを再現してるよ」
白式だったISをモニターに映し、一夏に説明を始める。
「それは凄く嬉しいんですが、白式って拡張領域が余ってないんじゃ……?」
一夏がモニターの前に立ちながら喋ったり、束さんの話を聴いている。
へぇ、拡張領域は何とか覚えているが、一夏の白式って余ってないんだ。これ一夏さんキツいっしょ。
俺の位置からは、一夏の後頭部というか背中が見えて、束さんは全体が見える。
「いっくんの白式は今の所特別だから、アホみたいに拡張領域の余りがゼロ。つまりアイテムケース一つが丸々全部埋まっているか、またはこれ以上アイテムが持てませんっ!」
なるほど。わかりやすい。
「だったら単純に、もう何個か増やせばいいんだよっっ!!」
「出来るんですかっ!?」
「出来ますとも! PCとほぼ変わらないのだよ。やっぱり違うけど。まぁ、USBメモリかSD追加か外付けHDDと同じで増やせるのだ! そう! 束さんの……今の技術ならね……!」
リンゴのやつの言葉?
「凄いですよ! 束さん!」
二人共超熱が入ってる。
「まぁまぁ、そこまで褒めないでおくれよ」
束さんの頬が赤い。そしていい笑顔だ。素敵な笑顔です!
「これには他国の技術も一緒に詰め込んであるんだ。感謝するなら、他のお国さんにもお願いね」
「なん…………だと…………!?」
一夏がくっそ驚いている。そりゃ、束さんがこう言うんだもん。抱腹絶倒するよな。おい、笑うなよ。
「はっはっはっ! 今の束さんは、ニュー篠ノ之さん!」
両手を腰に当て、はしゃいでる。さすが篠ノ之さんっすよ! かわいい。結婚して下さい!
「本当に見間違えましたよ。束さん」
今の一夏はきっと、いい笑みを浮かべているんだろう。後ろ姿だから、わからんけど。
「天才という人間は常に進化し続けるのだ! 進化をやめた人間は、凡人なんだよっ! 俗物めっ!」
めちゃくちゃ言いまくってるな。俺、大好きだわ、この人。
「あ、ちなみにですが、この会社の仕事を束さんかなり手伝います! そして他国の武器など改良します! 0から始まり10まで束さん出来ちゃいます! 5以下で渡すけどね! それでも十分満足していただけます! 優秀なスタッフーさんも揃ってますしおすし」
本当に凄い人だ。
「やっぱり束さんは凄いなぁ。でも、0から10の5とかってやっていいんですか?」
一夏が疑問を投げ掛けた。確かにそれは気になる。
「急激な技術の引き上げはよろしくないのです! ISとかISみたいなISがISやISにISはIS……」
後半ぶつぶつ小さく呟いていて、ちょっと何言ってるかわかんないです。
「今の私は世界がちゃんと見えているよ。大丈夫。私はもう間違えない」
束さんは伸ばした両腕を腰辺りまで下げ、ここでは見えない天空を仰ぐ。その姿はまるで、星に手を伸ばしてその手で掴む日を、夢見る少女。スターゲイザー。キャッチしたら違うな。
「でも、もし間違えてしまったら……その時は修正してね」
束さんは笑顔でありながらも、人差し指で頬を突っつく。
「こう……ドカー! バキー! って」
パンチしたりキックしたりとジェスチャーする。子供みたいでかわいい。
『はい!』
俺達は同じタイミングで返事をした。ま、実際に間違えたなら、俺は殴らず抱きしめると思う。
「さて、説明に戻ろう」
「はい!」
「さて、最初は武器の説明を開始するよ」
『はい』
俺も一応聞いとかないとな。
「まずは雪片弐型を標準装備。シールド一枚にビームガトリングが二門。両腕二枚に背中一枚あるから、合計六門。シールドファンネルとして使えるし、高難度になるけど遠隔操作が可能。色は夕君と反対の黒。映えるでしょ?」
「いいですね。白と黒って感じで」
「箒ちゃんの紅椿も、いっくんのための機体なんだからね。忘れちゃダメだよ?」
「箒から聞かされてますから、大丈夫です」
「うんうん。わかった。次はビームマグナム装備」
「マジですか!?」
「うん。マジマジ。欲しかったでしょ?」
「はい! 撃ち抜きたいです!」
いいなぁ。俺無いんだよなぁ。
「一応伝えとくけど、夕君にもあるからね」
「マジっすか!?」
え? 見た事ないぞ?
「どうせ夕君は全部の武器確認してないでしょ?」
「はい。他の事で一杯一杯でしたから」
「やっぱり。まぁ、とにかくありまぁす! 但し、撃ちまくるとシールドエネルギーがごっそり根こそぎ持っていかれるから注意。エネルギーパック型にしちゃうと、片手にある雪片弐型持ってるから、取り回し最悪だからね。後は夕君もだけど、戦闘中は相手がその隙を逃さない。だからリロードタイムを消すため」
なるほど。エネルギー消費の燃費が悪いけど、リロードが必要皆無なのは効率的だ。効率的だよね?
「はい。撃ちまくらないよう気を付けます」
一夏が注意を受けた。これは俺もだな。
「他はサーベルが四本」
「両腕と背中に二つずつ」
「後は大事なNT-Dもあるからね。こんな感じかな? あ、いっくんは白式からユニコーンになっても、射撃用のシステムないから、自力で狙って頑張ってね」
「はい……」
一夏が肩を落とした。
そういえば一夏が射撃してる所を見た事無い。使わなかったんじゃなくて、使えなかったのか。それとも俺が見てなかっただけ? わからんぞ。
「さてさて、試運転してみなされ! そのままゴーゴー!」
一夏の背中を押して、束さん達は訓練所に入っていった。
俺はモニターに映る一夏達を見つめる。
束さんが少し離れた場所で、一夏はISを起動。光が一夏の全身を包み、光の中にいる一夏の様子が見えない。
そして姿を現すは俺の黒いバンシィとは対になる、白い機体。白式より全身が真っ白だ。かっけー。けど、やっぱり擬人化臭がするなぁ。俺と同じで頭部、肩から肘までの間、腹部、太ももが露出していた。でも、全身装甲? だと、NT-D発動時に顔の部分が挟まれるからなぁ。二回り以上じゃないと絶対無理。まぁ、この状態でもゴツゴツしてないだけよしだな。
一夏の機体を再度確認すると、背中にあった翼のようなアンロックユニットが、すっきり無くなっている。レッドブル飲んでないから?
しばらく装備を確認していた一夏は、現在は広い空間を飛行中。
「いやーやっぱり綺麗でかっこいいね! ユニコーンってさ」
この部屋に戻ってきた束さんが、モニターを嬉しそうに眺めていた。
「そうですね。白式の時もそうでしたが、今のISは更に白くて美しくさを感じ取れます。白い機体はかなり映えますから、絶対に目立つでしょうね」
俺はテーブルに手を起きながら、同意した。
「うん! これで束さんの道が一つ開けた……くくく……」
「楽しみですね。撮影」
「そうだね。許可はちゃんとあるから、いつでも問題無いけど、今はまだ私が動く時ではない……」
さっきからモニターに釘付けの束さんが、ダークなセリフを吐いている。かわいい。
「時期はもっともっと後になるかな? 色々まだ研究中で」
「ですよね。俺もまだまだだし」
「心配しなくていいよ。時が来たら教えるから。今度は技術的ブレイクスルーを起こさないよう、慎重にやるんだ。いや、逆に一気にパワーバランスをひっくり返す? いやでも世界に迷惑掛けたくないしなー。どうすればいいかな?」
「束さんでも悩むんですね」
「そりゃ束さんは世間知らずだったしね。人の事はまだまだわかんないんだよ」
「そうですか。んー……どうしましょうかね? とりあえず、一旦目的を定めましょうか」
「わかった!」
モニターの前から束さんが移動して、俺の隣に座った。視線はモニターに向けたままだが。
「束さんはねー、まずISだらけのアニメやゲームを排除。いや、排除じゃなくて、正しくは他のアニメをいっくん達が復興させるかな? うん。次に狙うは宇宙で、そして最後はIS以外の物を開発。これぐらいだね、多分」
「なるほど。アニメの復興なら俺達が看板役で。宇宙を目指すならIS以外でも出来る物を開発って事ですかね?」
「うん。私と言った事とあまり変わらないね」
「すいません」
束さんに頭を撫でられる。癒されるわぁ。
「まぁ、新しい物を開発しても、どうしても兵器にして悪用する人達が現れるだろうから、それのカウンターというか抑止力が必要だね!」
束さんが言ってる事が微妙にわからん。
「これも追々決めるとして、とりあえず基準としては競技用に開発かな? スポーツにして誰もが楽しめる世界に! 悲しみを発生させる場所はぶっ潰すぅ! 対策しなくちゃね。今も非人道的な実験が行われているからさ。専用兵器だから特に顕著だよ」
「やっぱり、どんな世界にも悪人はいるんですね」
それがスポーツ界や会社の上司とか学校の先輩とか? 上司とか先輩とかスケールちっさ。知らんけど。
「世界は様々な人の集合体だからね。色んな考えが生まれるんだよ。善悪なんて人それぞれ」
「難しいですね、世界って」
「そうだね」
「俺達、アニメっぽい話をしてますね」
「うん! こういう会話は楽しいね! 世界とか悲しいとか言っておけば、深みを感じるからね!」
確かにそれっぽい。
「はい。お! この話はまた今度にしましょう。一夏が赤く輝いてますよ」
モニターの中にいる一夏の変化が見えた。いや、正確には映るだな。
「はーい! ちょっと行ってくるねー!」
今まで頭に手を置かれていたが、束さんが椅子から立ち上がり、向こうの部屋に続く扉に向かった。一夏の様子を直接見に行くらしい。
「いってらっしゃい」
束さんの背中に向けて、俺はひらひらと手を振った。見えないだろうけどね。
それからしばらくして、ユニコーンを解除した一夏と束さんが、一緒に帰ってきた。
「俺の白式改め、ユニコーンを見ていたか!?」
踏み込まれて肩を掴まれる。わかったから。
「見てた見てた。凄かったよ」
ユニコーンはやっぱり綺麗だよなぁ。バンシィは禍々しさでラスボス臭がしちゃう。いや、バンシィも好きだけどね。白より黒派だし。
「これで俺もガンダムに!」
エクシアに乗ってから言って下さい。
「残念ながら待機形態の変更は無理なんだ」
「いえ、構いませんよ。寧ろ、そのままでよかったです。白式を忘れずに、いつでも思い出せますから」
一夏は背後に立つ束さんに向き直ってから、いい子ちゃん発言。お、俺もそれぐらい言えるし……。
「うん。今まで付き合ってくれたからね。中身は変わってないし、これからも一緒にいるけど」
それはそうだろう。全部取り替えていたら、一日以上は掛かりそうだ。まぁ、元々準備していたらそんなでも無いか?
「はい。ありがとうございました!」
「どういたしましてー! 今日はいっくんに会ったし、最後はちーちゃんだね。束さん側から会うのは難しいし、ちーちゃん側に来てもらうしかないんだよねー」
「でも、千冬姉にも束さんの居場所は秘密ですよね?」
「悲しいけどね。でも機会があれば近々会えると思うんだ!」
「きっと千冬姉も、束さんに会いたいと思っていますよ」
「うん! 楽しみだなー!」
俺を抜いた二人が、会話を弾ませる。超和む。
「うん。いっくんに夕君。そろそろお帰りなさってくだせぇ」
俺と一夏が寛いでいたら、束さんに帰れと言われた。
「束さんも忙しいからね。このままだと、二人と話すのが楽しくなって、スケジュールが崩れちゃうー」
そういえば色々やってるんだっけ?
「あ、そうですよね。すみません、突然お邪魔しちゃって」
一夏が頭を下げる。何も言ってないけど、俺も下げた。
「ううん、気にしないで。また今度来てくれればいいから。連絡は控えたいし、直接になるけどね。今日は楽しかったよ!」
『はい! ありがとうございました!』
「それじゃあね。バイバーイ!」
束さんに見送られて、俺と一夏は束さんのラボを後にした。
学園に戻って参りました。時刻はお昼過ぎだ。朝早くから束さんに会っていたから、結構時間が経っている。凄いな束さん。
「ビームマグナム使いたいなぁ」
寮の廊下を一緒に歩く、一夏が呟いた。
「わかる」
俺も早くあの音を聞きたい。
「少しだけ、使用中のアリーナを使わせてもらえないかな? 隅っこでいいから」
「どうだろう。尋ねてみたら?」
どれだけ撃ちたいんだよ。一夏は多分、射撃が出来る事を喜んでいる感じがする。俺は音だ。
「わかった。行ってみる。だから夕も一緒にきてくれ」
俺もかよ。
「一人じゃ嫌なのか?」
「一緒に撃ちたいんだよ。再現ってやつだ。後、装備もまだ試してないし」
「……了解。行きますよ」
これから休みたかったが、普段お世話になってるしいいか。
「助かる!」
グイッと一夏に引っ張られ、肩を組んでアリーナに向かった。やだ、強引。