IS 一夏がいない   作:稲穂焼き

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裏十四話

 あれから俺は、毎日が日曜日な日常を楽しく送った。楯無さんと簪は同部屋になって、一緒のベッドで眠るようになり、俺は隣のベッドに移った。おい、俺も混ぜろよ。いや、やっぱりいいです。

 束さんの研究所で俺と一夏は一緒に、シールドファンネルの操作に何度も挑戦。使用する度に俺と一夏は痛みで地面にうずくまる日々を過ごす。でも二人で何とか乗り越えた。二人なら飛ばせるさ。

 

 シールドファンネルに続いて、今じゃビットも六十六機全てを扱えるようになった。但し、俺の周囲数メートルが操作範囲で、更に操作中は不動になる。そしてビットの一つ一つが小さくて威力も低いから、ビット一発ヒットしただけじゃ雀の涙。火力を上げる事も可能だが、一回の一斉射撃だけでエネルギーが空になってしまう。

 なので、普通の使い方しか出来ない。でもロマンが凄く詰まっている。箒さん! 紅椿のエネルギーを僕に分けて下さいな!

 

 色々な人と共にいる生活が当たり前になってきた所で時はきた。

 今日がクラスリーグマッチ当日だ。アリーナの観客席は全て埋まっていて、試合を楽しみにしている生徒達が騒いでいる。今日って何か報酬があるんだっけ? 違ったか?

 

 そんな一大イベントだが、俺達の時とは違い水を差されてしまう。まぁ、何かしたいなら大会の開催日が絶好のチャンスだろうから、今日を選ぶのもわからなくもない。

 学園側は別の日に再試合すれば、今日潰れても問題無いと思う。雨天中止の運動会や体育祭だと考えればいいだろう。怪我人が出たら無期延期になると予想されるが、怪我人は絶対出ないよう、俺達の機体にとある細工が施してある。練習を何度も行って成功済み。もうそれが出来るんだから、無人機をビクンビクンさせて即倒しちゃえよ、と思わなくもない。

 

 俺の現在地はカタパルト内部の後方におり、敵の襲撃を待つ。試合はまだ始まらないが、観客席の喧騒が先ほどより大きくなっている。IS同士の戦闘を間近で見物出来る機会が少ないから、興奮して騒いでしまうのは当然だろう。俺も見ているだけで戦いに魅了される一人だ。あの自由自在の動きが、かっこよすぎるのが悪い。

 制服姿のバナージとISスーツ姿の簪が俺と一緒でカタパルト後方におり、バナージはダンボールを被っている。この場に相応しくない不自然な箱だが、バレてないから問題無し。ダンボールの中に隠れるのよ! 閉じ込められた!

 

 暇なので俺は簪の頭をわしわしと撫でる。早く試合が始まってほしいな。一夏と鈴の戦いが見てみたい。この世界の二人はどんな戦い方なんだろう?

 

 

 数分待っていると、アリーナ中央部分にISを装着した一夏と鈴の二人が出てきた。ここからじゃ試合が目視しにくいけど、楯無さんか束さんが録画しているだろうから、後で見させてもらおう。

 試合が開始され二人はいきなり格闘戦に突入した。雪片弐型しか持ってない一夏は自然と近接戦主体になるけど、鈴は龍砲あるのに何故に? 後、一夏は零落白夜を発動中。これまた何故? まぁ、戦闘スタイルは人それぞれだから、とやかく言えないよね。押し付けてごめんね。

 

(簪から見てあの二人はどんな感じ?)

 

「私の戦闘スタイルと異なるけど、武器の扱い方は参考に出来る。打鉄弐式は近接戦も可能だから。でも、開幕で挑まない」

 

(なるほど)

 俺も開幕の初動で格闘戦に持ち込みはしないかな? 射撃で牽制してじわじわと削る感じ? 行き着く先は格闘になるけど。

 

『今の俺ならシールドファンネルを使って格闘を押し付ける。大抵の射撃は防げるからな』

 聞いてもいないのにバナージが勝手に喋った。そしてダンボールのせいで若干聞き取りづらい。でも脳筋万歳。

 俺達は一言だけ会話して黙る。別に気まずいとかじゃない。

 

 

 数分経って簪は床に座り、俺に膝枕をしていた。いや、俺が頼んだ訳じゃない。簪が緊張してきたと言い始めたので、俺を膝枕したいと仰ったんだ。これで肩肘張らずにリラックスしてくれるならお安い御用よ。でもISスーツだから肌が直なんだよね。髪の毛で肌がくすぐったくないのかな?

 バナージ以外は楽な姿勢で、遠い場所で戦闘を行う一夏と鈴を眺めていると、いきなり何かの音が聞こえ、遮断シールドが破られた。

 シールドを破った攻撃が地面に着弾し、轟音と爆発を起こしながら巨大なクレーターと黒煙が上がる。クレーター周辺で炎が見えた気がした。

 

「来たかっ!?」

 バナージがダンボールを持ち上げて、万歳のポーズをしながら左右に数回腰を振る。やめろよ! こんな状況でOPのたまの真似されたら笑っちゃうだろ!

 俺と簪は急いで立ち上がり、三人の間隔を空けるため、少し離れてからISを同時に起動。

 水の中に漂うような感覚に、目に映る何かの数式がいくつも通り抜けていく。俺はISを装着する瞬間が好きだ。綺麗な色をしているから。

 

 そして俺達三人はISを纏う。俺はバナージのユニコーンを一瞥すると、俺と同様にNT-Dを発動していない。

 

「ん?」

 俺はユニコーンを二度見した。ユニコーンの装備がいつの間にか追加されている。腕と背中にシールドファンネル三枚、ビームマグナム一丁、雪片弐型一刀。それが俺の知るユニコーンの装備だった。

 だが、今のユニコーンは背中にバズーカ二門、左手にビームの照射が可能なリゼルライフル一丁、片足にハンドグレネード射出機が三門あり、両脚合わせて六門。結構な装備が追加されていた。だからごてごてしている。束さんとバナージは時間があったから、どっかから部品を調達して開発したんだろう。

 

「二人共、手はず通りに」

 

「了解!」

「了解した」

 簪の言葉に俺とバナージは返事をした。

 

「先に行く。打鉄弐式、出る!」

 一番最初に簪がカタパルトを使って、アリーナに飛び立った。

 

「バナージ・リンクス! 第二形態型ユニコーンガンダム! 行きます!」

 バナージもカタパルトでアリーナへと飛び立つ。声にドスがあり、コードネームをノリノリで名乗っちゃってる。なら、俺も乗るしかない。

 

「リディ・マーセナス。ユニコーンガンダム二号機。特殊兵装型バンシィ、出ます」

 俺もしっかり確認してから、カタパルトを使用してアリーナに向けて飛ぶ。正直楽しい。

 先の二人は並んでアリーナ中央を見つめている。

 機体を制御して俺も二人に混じった。

 

『ファンネルを、アリーナ観客席に向けて展開』

 簪の指示があり、俺とバナージはシールドファンネルをパージ。

 バナージは三機だが、俺は標準装備で二機なのでもう一機呼び出す。

 

『行ってくれ!』

『頼んだ』

 合計六機のシールドファンネルをそれぞれの観客席前に配置させ、六角形を作った。これで生徒達の避難が済むまでは、少しは安全なはずだ。

 

『上昇。射撃準備』

 簪が高度を上げながら速射荷電粒子砲二門を準備して、俺達二人も簪に倣って上昇しながらビームマグナムを構える。

 

『敵は何機か不明。確認するために、まずは射撃で煙りを散らして、把握する』

 武器を構えて俺達三人は、狙いをアリーナ中央部で立ち上る黒煙の中心に定めた。

 

『発射』

 まずは簪が荷電粒子砲を撃つと、荷電粒子二発が暗雲のような煙りを突き抜けていく。

 荷電粒子が地面に着弾する寸前に、煙りの中から黒い人型ISが二機飛び出してきた。

 二体共、重装甲でごっつい。いかにも防御力が高そうな機体だ。

 

『続く!』

『狙って!』

 俺とバナージはビームマグナムの引き金を引くと、アリーナに大音量の発射音が響いて二つのビームが撃ち出される。

 ビームが地面に命中すると、もう二体のISが飛び出てきた。

 

『合計四……一体だけ形状が違う』

 簪の言葉に敵をよく観察して見ると、機体の色は灰色で腕が異様に長く、ゴーレムというかゴリラのISを発見した。あのISの形って人が乗れるのか? 乗れるならもう少しボディ周りを何とかしてあげて。搭乗者が危なそう。おまけに全身タイツ姿に見えてダサい。

 

『きっと、あれが指揮官機』

 敵が何故か動かないので、俺とバナージは簪と普通に会話している。

 

『先に指揮官機を潰しますか?』

 

『ここは、他の三体を先に狙う。私が指揮官機を引き付ける。残りはお願い』

 

『了解しました!』

 

『危なくなったら言ってくれ』

 

『了解。各機散開。後にあれを』

 簪の言葉を合図にして、俺達二人は左右に分かれてアリーナの壁に沿って飛び、俺達で三角形を作るように移動。

 配置についたら、俺とバナージでナノマシンのフィールドバリアを張る。緑の光がアリーナ全体を霧のように包んでから、霧は消えて通常通りの視界に戻った。これでガードは完璧だ。

 

 相手の様子をしっかり目に映しながら、俺はアームド・アーマーDEを手に持ち、銃口を敵に向けてビームの照射を開始する。

 俺とは別の位置にいるバナージも、同じタイミングでリゼルライフルでビームを照射し、簪も荷電粒子を数回撃って敵を三角に挟み込む。

 すると、今まで沈黙していた四対のISが回避して散らばる。

 俺とバナージは一体ずつで簪には指揮官機と他一体が向かい、俺達にビームを連射しながら突撃してきた。

 ビームの威力は低そうに見えるが、至近距離ならきっと洒落にならない。

 

 攻撃を回避するために俺は照射を止めて上昇するが、敵は重装甲の形に似合わない急加速を見せ、ビームを撃ちながら近接戦の距離まで詰められる。

 俺はNT-Dを発動。今の俺ならこの肉体のお陰で振り回されない。

 上昇してくる敵と攻撃を避けて、相手に体を向けたまま急降下。

 先ほどまで敵に負けていた機動力が上がり、相手との距離をどんどん引き離す。

 

 アリーナの天井部分には遮断シールドが張られており、フィールドバリアもあるけど、わざわざ当てる事に俺は心の中で謝罪しながら、真上にいる敵に向けてビームマグナムを撃ち始める。

 

 ビームが敵に掠りもせず外れてしまった。出来ればコアを残したい所だが、戦力的にそんな余裕は無いだろう。そもそも、一発当たった所で相手の装甲が厚く、撃ち抜ける場面は想像しがたい。

 俺と敵がビームを撃って撃たれてを何回か繰り返すと、俺は地面が間近に迫ってると知って進路を変更。

 地面スレスレに後退して飛ぶと、相手も同様に地面に触れないギリギリの高さで、俺を追ってビーム攻撃を続行してきた。

 

 アームド・アーマーDEをシールドにして、敵のビームを防ぎながらビームマグナムを構えるが、観客席の生徒達を考えて俺は攻撃を中断。物理防壁が出ていて、一応シールドファンネルとフィールドバリアもあるとはいえ、俺が生徒に怪我を負わせたら大問題になるからだ。

 俺は敵の攻撃をガードしながら他の人物を見ると、バナージは豊富な武装で射撃を行い、敵一体を相手にしている。簪は回避優先で後退して敵二体の攻撃を避けていく。一夏と鈴の二人を見れば、突っ立ったままだった。とりあえず、逃げるか戦うか二つの選択肢を選んでほしい。可能ならば助太刀してくれるとありがたいんだが。

 

 現在の俺は敵に体を向け、シールドを構えながらバックで移動して、相手のビーム攻撃を防いでる。だから、自分の位置次第で他の敵に攻撃が可能だ。

 俺は簪に食らいつく敵二体のどちらかに向けて、誤射しないタイミングでビームマグナムを発射するが、当然回避されてしまう。

 だが、横槍を入れたにも関わらず、あの敵は簪だけを執拗に狙っている。アリーナ内部にいるメンバーの中でなら、簪が一番指揮官に向いているからだろうか。

 

 シールドファンネルを呼び戻し、俺は敵に背を見せて二枚のシールドファンネルで、後ろに張り付く敵の攻撃を防がせ、スラスターの出力を上げる。

 加速した俺は簪に食らいつく指揮官機じゃない、もう一体の方にビームガトリングを放つ。

 進行ルートを先読みして撃つが、相手はしっかりとガトリングを回避して、簪に狙いを定めたまま飛行している。

 

 相手の目標が簪から逸れないと判断して、まずは俺を狙う敵の対処する事に決めた。判断を誤ったか。

 俺は背後の敵に振り返って、シールドファンネルを自機の正面に向けてから、Yの字に配置して格闘戦を挑む。射撃のみで相手を倒す事が出来るのは、セシリアさんとバナージと簪ぐらいだろう。一夏と鈴は悪いが知らない。

 ビームマグナムを格納してから、片腕のサーベルを出力。

 ビーム攻撃を継続する敵に、シールドファンネルを正面に配置して突撃。

 

 その瞬間、俺と敵機の間にいくつもの何かが通り抜けていき、敵はブレーキをかけ俺は後退した。この攻撃には見覚えがある。龍砲だ。

 そして、少し懐かしく感じる後ろ姿が、俺の目の前に二つ現れた。

 

『大体理解したわ。そいつの相手はあたし達に任せなさい』

 鈴が通信を入れてきた。

 

『ありがとう。助かった』

 会話の余裕を保つため、シールドファンネルを二人の前に配置して、敵の攻撃から身を守る。

 

『後で素性を聞かせなさい。それでチャラよ』

 俺達は通信中で無防備だが、敵は律儀に待機してくれている。ありがたい。利用させてもらおう。

 

『了解した。だが、凰鈴音。君はあっちの白い奴に協力してほしい』

 

『何でよ?』

 

『相性の差だ』

 

『……よくわかんないけど、わかったわ。あんたの言葉に従ってあげる』

 

『重ねてありがとう』

 了承してくれた鈴は、バナージの元へ飛んでいった。

 俺は鈴の移動に邪魔されないよう、シールドファンネル一枚で護衛する。

 

『よろしく頼む。織斑一夏』

 俺は一夏と肩を並べた。

 

『……なぁ、何であんたは俺の名前を知ってるんだ?』

 

『その話は後だ。俺が合わせるから敵に突っ込んでほしい』

 

『そんな無茶な!』

 

『無茶はやらせんし、嫌ならやらなくても構わない。俺は一人で戦う』

 

『……わかった。俺はあんたを信じる』

 

『強要したようで悪い。でも感謝する』

 鈴の護衛を勤めていたシールドファンネル一枚を戻す。

 

『このシールド三枚を君の周囲に配置する。相手がビーム兵器なら、絶対にこのシールドを抜けない。今まで見ていたのなら、何となくでも把握しているはずだ』

 シールドファンネルを一夏の周囲に停滞させる。

 

『それと零落白夜は常に発動しずに、雪片弐型を振る瞬間に使うんだ。エネルギーの消耗は避けるべき』

 

『わ、わかった』

 俺の急な指摘に戸惑いながら、一夏は雪片弐型の零落白夜を停止してくれた。

 

『即席だがよろしく。背中は任せてくれ』

 

『こ、こちらこそよろしく……背中は頼んだ』

 一夏は俺の対応の仕方に困って無難な返事になっている。

 

『では、行くぞ!』

 

『……ああ!』

 俺は一旦後ろに下がり、一夏は敵に突撃してくれた。

 俺達の動きを察知した敵が後退して、迎撃しながら一夏から逃げ回り始める。

 だから俺はアームド・アーマーDEを背中に背負い、スラスターとブースターを全力稼働させ、敵の進行ルートを予測して先回り。俺の狙いは一夏と挟撃する事。

 

 だが、敵もバカじゃない。飛行ルート上の挟撃を防ぐため別方向に旋回しながら逃げていく。でも、俺と一夏の機動力ならどうであろうと問題無い。

 一夏は敵の攻撃をシールドファンネルで防ぎ、ただひたすらに敵へと近付く。俺もまた先回りして挟撃を再度狙う。

 ここで俺はアームド・アーマーDEを持って移動を止め、ビットを自機中心に全機射出。

 

 そして味方がいない部分を狙い、敵の回避ルートを塞ぐため、六十六機の展開したビットの射撃を開始。相手が一発の被弾も許さない性質なら、ビット全ての出力を最低にし、エネルギーを節約して数を撃てばいい。これならビームマグナム一発より安いから、しばらく撃ち続けられる。

 敵はビットのビーム攻撃を避けるが、俺はビームで壁を作っているので、一夏は敵機の懐に入り込み零落白夜を発動。

 そして一夏は相手の手足を両断した。

 

 ビットの射撃を中止して、その場から敵が逃げないように、俺はシールドファンネルを操作して敵を押さえ込む。

 俺の狙いを察した一夏がもう片方の手足を切り落としに成功。

 

『離脱して別の敵を追って!』

 アームド・アーマーDEを背中に戻し、ビームマグナムを呼び出して構える。

 

『任せてくれ!』

 一夏は別の敵を狙うため、今相手にした敵から離れてくれた。

 

『当たれ!』

 身動きとれない敵に向かって、ビームマグナムの引き金を引く。

 発射音と共に銃口からビームが放たれ、シールドファンネルを一瞬だけ退かして見事に命中。だが、表面上の装甲に変化はない。

 ビットを全機戻してから加速し、敵との間合いを詰めながらサーベルを出力して、頭部を切り払う。

 そして敵の体を掴んでから、急降下して地面に叩きつけた。

 

 クレーターが発生したのと同時に砂埃が巻き上がり、視界が悪くなる。

 俺は敵機を踏んで、両腕のサーベルで機体の装甲に傷を付けていく。コアがある場所はわからないが、体だろうと見当を付けている。

 敵が完全に沈黙したのかどうか試すために、踏んづけたままビームマグナムを撃つ。内部までは届かないだろうが、これで終わったはず。

 ラストに敵から足を退けて蹴り飛ばす。

 

 空へと上がりながら敵の様子を確認するが、俯せのままで何も起こらない。

 どうしても気になってしまうが、俺は他の人の援護するため、無力化したと思われる敵に背中を向けて上昇速度を上げた。

 現在の戦況を確認すると敵は指揮官が機一体。こちら側は六機になっていて、いつの間にかセシリアさんが加わってくれていた。指揮官機は未だに簪を狙って、追い続けている。

 

 スラスターと補助ブースターを噴かして移動。

 

『簪。状況は?』

 最初に通信を入れて確認する。

 

『数は有利。でも、持久戦を押し付けられたら、私達が圧倒的に不利』

 

『そうか。俺は何をすればいい?』

 

『合図をしたら、射撃機を除いた全員で白兵戦を挑む。シールドファンネルは、各機の守りを担当してもらう。それでいい?』

 

『俺は簪の指示に従うだけだ。飼い主の命令は忠実にってね』

 

『ありがとう。少し待機してて』

 

『了解』

 俺は合図を待つ間、簪を狙い続けている指揮官機を見つめた。バナージ、簪、鈴、セシリアさん達の攻撃を針の穴に糸を通すように回避し、簪以外の機体に対しても攻撃怠らない。もしかしてだが、超反応タイプのAIが積まれている? 代表候補生が三人もいて数で優位なのに、未だに撃墜されてないのだから、その可能性が高いと個人的に思う。

 

 

 数分経つが、依然一進一退すらない戦況だ。そろそろ皆の集中力が切れてもおかしくない頃だろう。俺以外の五人が疲弊している様子が目に見える。

 

『全機散開。私がポイントまで誘導するから、タイミングを合わせて一斉に、白兵戦を仕掛けて』

 簪の指示があり、俺達五人は敵を取り囲むように散らばる。射撃だけではエネルギーや弾を消費するだけで、当たっても撃破まで持っていけないと、簪は判断したんだろう。

 ビームマグナムやビットを仕舞い、次に腕のサーベルを出力しておき、いつでも突っ込めるように準備をしておく。時間的に敵を格闘戦で仕留めるしかない。

 バナージと合わせてシールドファンネルを各機に飛ばす。後は簪の合図待ち。

 

 そして簪が降下を始めて、敵も簪を追うために降下した。

 

『今』

 簪から合図をもらい、狙撃のタイミングを待つセシリアさん以外の四人が、一斉に敵へと向かう。俺達四人は左右前後からの挟撃をするつもりだ。

 敵はこれから行う俺達の行動を察知して、移動と攻撃を停止した。

 スラスターと補助ブースターを全力稼働させて敵との距離を詰める瞬間、俺とバナージの機体の発光色が緑に変化し、飛行速度が更に上がる。

 

『これなら!』

『いいタイミングだ!』

 俺とバナージが先に敵の懐へと辿り着き、サーベルの出力を上げて両腕を切り落としてから、少し離れる。

 続いて鈴と一夏が相手に接近して頭部と脚部を斬り飛ばした。

 俺達は同時に敵機から離れると、レーザーと荷電粒子が命中する。

 爆発が起こり黒煙を吐き出しながら敵は落下していく。やけにあっけない最後だった。何かを探っていたのだろうか? そんな気がする。

 

『何か拍子抜けね』

 

『あのひょいひょい避ける機体に勝ったんだし、皆を守れたんだぞ? 喜ばしい事じゃないか』

 鈴と一夏が会話を始めた。どちらの言葉も頷ける。が、指揮官機を除いた三体は、確実に俺達のせい。ごめんなさい。

 俺とバナージは互いの目を見て、武器を全て仕舞ってから同時に降下開始。

 

『あ、ちょっと!? 逃げる気!?』

 

『逃げるなら既に逃げてるよ。もう終わったんだ。帰るべきだろ?』

 鈴の声にバナージが答えた。

 

『……そうね。あんたの言葉に一理あるわ』

 頷いた鈴は一夏と共に下降。

 機体性能が急激に上がった俺とバナージは、すぐに地面へと到着した。

 機体が発していた緑の光は消えて、同時に装甲も閉じていく。いきなり何だったんだろう? 特別な事は何もしてないはずだが。

 すぐに一夏と鈴も地面に着地。

 

『バナージ。面倒事を押し付けて悪いが、後はよろしく。かっこよかったぞ』

 

『ややこしいもんな。わかった、任せてくれ。お前もかっこよかった』

 俺はISを解除した。

 

「な、消えた!?」

 

「ちょっとあんた! 逃げないって言ったじゃない!」

 一夏は驚きで声を上げ、鈴は消えた俺に対して怒り始める。いや、俺がここにいると更にヤバいから。ここまで参加しといてあれだが。

 

「その事を含めて俺が説明するから許してくれ」

 バナージが庇ってくれる。いや、本当にマジでごめん。正直ここまできといて、どう立ち回ればいいのかわからないんだもん。だから、今度力一杯抱きしめるから許して。膝枕もおまけするから。耳掃除もしちゃう。

 簪とセシリアが三人の元へ集まってきた。

 

「先ほどの黒い御方はどちらに?」

 セシリアさんは俺がいない事を疑問に思っている。

 

「あいつは俺の親友で、何故か知らないけど来てくれたんだ。多分、幻かな?」

 

「なーんか嘘臭いわね……」

 バナージの言葉が嘘とバレそうな雰囲気。鈴というか、女の勘は本当に怖ろしいな。色んな事に働いちゃうから。

 

「で! あんたの存在も十分おかしい! どうして一夏と同じ顔で、同じ声してんのよ!?」

 鈴がバナージに噛み付いた。そりゃ、言われても仕方が無い。

 

「同一人物だから」

 

「はぁっ!?」

 随分ストレートに言ったな。

 

「でも、ここでの名はバナージ・リンクスだ。よろしく」

 

「な、何か……その声を聞くと寒気がしてくる……」

 バナージの自己紹介に一夏が体を震わす。

 

「話はもう少しだけ後にして。ピットに戻らないと」

 簪が一言だけ話に割り込み、皆に背を向けてピットに向かおうとする。

 その時に一瞬だけ俺に目をやり、リアスカート部分を指差す。

 俺は頷いてから飛び乗ると、簪はピットへ飛んだ。

 

(お疲れ、簪。皆を指揮する姿はかっこよかったよ)

 

「ありがとう。夕もかっこよく戦えてた」

 

(おう、ありがとう)

 

「うん」

 簪と俺はちょっとだけ会話した。

 しっかし、想像していた物と全く違っていたな。もう少し余裕があったら、もっと周囲の反応が変わっていたんだろうか? 不完全燃焼だなぁ。

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