IS 一夏がいない   作:稲穂焼き

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八話

 俺と箒と一夏は、食事をしながら昔の思い出話に花を咲かせていた。そこに鈴が途中で参入してきて、四人で話す。昔や最近、こんな事が起きたと箒と鈴に教えた。

 

 

 気付いたらもう八時過ぎだった。四人共に食事は済んでいたからいいものの、未だに食っていたら遅刻する可能性が高かったと考える。

 食器を片付けてから四人で一緒に登校し、一組と二組で別れた。

 クラスメイトの皆に挨拶しながら、席に座って一息吐く。

 

「あんた達の昔話、面白かったわ」

 鈴が隣りの席に座ってから、話し始めた。

 

「あんがと。楽しめたならなによりだ」

 

「うん」

 鈴は頷いてから、俺達は会話を打ち切る。先生が来たからだ。

 

 

 大ニュースだ! なんと! なんと! 俺のISやスーツが完成したってさ! たった今先生から聞かされたよ! ジェバンニさん、ありがとう! しかし、昨日の今日だぞ? と、不思議に思ったが、転校する前から準備していた事だったな。

 そして俺は廊下を出た。箒も廊下へ出てきた。そして俺達は歩み寄った。

 

「私の ISが 完成 したぞ!」

 一々区切らなくても。箒がバタバタしてるので、興奮してるのがはっきり理解出来た。

 

「スカートスカート」

 

「おっと、これはいけない」

 嬉しさのあまり、スカートもふわふわとさせていたので、俺は指摘した。ふわふわさせるのはポニーテールと歌だけにしなさい。

 

「あら、私ったら淑女にあるまじき事を」

 

「お嬢様を装っているけど、素が滲み出ているよ」

 挙動や声で。

 

「そんな事はどうでもいい! 学園のアリーナの予約がトッポ状態だから、外部でやるそうだ」

 

「ああ、同じ事を先生から聞いたよ」

 そう。ここのアリーナはいつもぎっしり、愛情が詰まったバレンタインデーのチョコみたいだから、外で起動テストなどを行うと告げられていた。

 

「さ、早く校門にいるであろう黒きハイエースに乗るぞ!」

 その悪意ある色や車種はヤメルンダ!

 

「はいはい」

 箒が俺の手を引っ張り、廊下を走った。

 

「ストップストップ。逸る気持ちはわかるし俺もあるけど、廊下にいる教師に見つかったら確実に怒られるぞ。つまり、今のテンションに水が……って事だ」

 前を向いて走る箒に、引っ張られながらも軽く説明した。

 

「それはいかんな」

 

「でしょ」

 

「わかった。皆まで言うな」

 

「いや、全部言ったよ」

 俺達はスピードを落として、走らないように歩いた。ポジションは変わらない。

 

「そうか。いや、しかしだな……こうしていると思い出すな……あの時の事を」

 なんだ? 急に過去話を差し込んできたぞ。 またか。どれだけ話したいのか。気持ちは理解出来るが。

 

「私は剣道マシマシチョモランマな日々を送り、一夏は剣道、お前はただ神社に通ったな」

 

「道場あっても、俺はなにもしないニートだったね」

 いや、そもそも勝負事自体が好きじゃないんだ。負けたら超悔しいし。敗北を糧に強くなれ? 無理無理。だから、巻き込まれたら仕方ないと思うが、予防策を粘土みたいにこねこねと練った。俺はコスモスよりグレイス派かな?

 

「それを軟弱惰弱と、壊れたように繰り返した。ピリピリしてたからと言って、それを背負わず表に出すお前が言うなと」

 

「子供だったからね。感情を内で飲み込む事が出来なかったんだよ」

 

「感情を処理出来ぬ者は、ゴミだと教えたはずなのだがな……」

 子供の頃の自身に言っているのだろう。それは言い過ぎじゃない?

 

「子供に無茶な事言うんじゃない」

 俺はやんわりと注意して笑った。少し自分の足を早めて、箒と肩を並べる。

 

「今の私が過去の自分に会ったら、力を込めてぶん殴って修正する。お前がッ! 泣くまで! 殴るのを! やめないッ!」

 俺の腕を掴んでない方の手で、握り拳でヒュンヒュンと殴るモーションを見せる。殺意込めすぎやろ……。

 

「絶対一発で泣くぞ」

 

「は? 誰が一発でやめると言った?」

 

「箒の言葉だよっ」

 この一つ前に吐いたセリフは、ちゃんと俺は覚えている。

 

「黄金の鉄の塊で出来ている今の私が皮装備の昔の自分に遅れをとるはずは無い 」

 

「そりゃ、体格とか違うし。それより玄関に着いたぞ」

 楽しいけど話を止めた。さすが箒。そんな箒ちゃんは嫌いじゃないわ、嫌いじゃないわ! 

 玄関から外へ出て行く時に、箒は俺の腕を離してから校門前に複数停まっている、普通車に近付いた。停まっている車は車種が全部違う。その周りには普通な服装した何人ものSPさんらしき人達が、普通に見えるように周りを見ていた。まるでこれから旅行にでも行くみたいだ。

 

「篠ノ之さんに白雪さんですね?」

 

『はい』

 SPであろう男の人に、確認をされて返事をした。そして意外だったのは箒だ。敬語使ってる……。いや、悪い考えだな。すまんな、箒。

 

「白雪さんはお久しぶりですね」

 

「えと、どこかでお会いしましたっけ?」

 この人の顔は知らんぞ。全く見覚えがない。どこで会った?

 

「そうでしょうね。先日とは違い、髪も下ろしてますし、カジュアルな服装ですからね」

 笑いながら説明してくれた。あ、なるほど。そりゃあ、わからない訳だ。失礼ぶっこいちゃう所だったわ。

 

「さぁ、車の後部座席にどうぞ」

 車のドアを開けてくれて、先に箒が入って俺も続いて入いる。ドアを閉めてから俺と箒はシートベルトをした。

 車の中は至って普通に見えた。後、ドライブレコーダーはあるんかね? 前後に。あると俺は悪くねぇって出来るし、自分以外の事故の時、証拠品に出来て安心。大丈夫、大丈夫。最近安いのでいいやつ買えるらしいから。車間距離も必ず空けた方がいいと思う。ぶつかって来られたら、俺は悪くねぇと堂々と言える。

 今更気付いたが、最初から助手席に女性が座り、さっき話しかけてくれた男の人が運転席に座る。

 

「白雪さんのご両親の会社に向かいますね」

 

『はい』

 ああ、家の会社なのか。まぁ、確かにテストするには最適だろう。いや、どれだけ広い場所でやるのか知らんけど。ある程度動けるスペースはあるのか? 興味なかったから知らないなぁ。マジで無関心だった。

 

 エンジンが掛かり、車は道路を走り始めた。

 

 

「お前の家に、一夏と何度も遊びに行ったが、お前の会社は一回もないな」

 首だけ動かして箒を視界に入れた。

 

「まだ、会社が小さかったからね」

 始まりは十数人の会社。今では……何人か知らないな。最低百か二百は絶対にいるはず。少ないか?

 

「今ではCMもやってて、俺はなんだか誇らしいよ」

 俺はなんにもしていないがなっ。

 CMはISの魅力を伝えるためだ。確かに世界中に知られているISだが、使いたいという女性は、意外と少なかったりするらしい。そのための宣伝。華麗な演武を披露して、ISへの興味を抱かせたり道を進ませたりと。男でも整備自体は出来るから、男も結構多いらしい。

 

「そうか。凄いな。だが、私の姉さんの方がすごいぞ。世界を男尊女卑から女尊男卑へとひっくり返したからな。どうなるか先も見えないバカだが。そのバカさ加減も、私には可愛く映る」

 

「そうだなぁ。この世界で束さんに勝てない」

 世界を一つ消したようなもんだ。ルドガーは普通に喋ってほしかった。

 

「だから、私達が支えるんだ。誰かが悲しむ事がないよう、間違った道をもう一度進まないように」

 箒が拳を出してきた。なるほど。箒のやりたい事がわかった。

 

「うん。俺達が守ろう。意外と寂しがりやの束さんを」

 俺は箒の拳に、握った拳の手の甲でハイタッチみたいにぶつけた。

 あれ? 今気付いたんだが、これって俺に言うセリフじゃないよね? フラグが違います。

 

「おい。箒さんや」

 

「なんだ?」

 互いの拳を戻す。

 

「これってさ、一夏にやる事だろ。俺にやってどうする」

 

「ああ。私もたった今気付いたぞ。攻略ルート間違えた事に。一夏ルートのはずが、何故か夕ルートの友情か家族エンドにな。恋愛エンド系じゃないのが救いか」

 昔から俺よりも、長く過ごしていた箒と一夏。一夏の傍には箒が。箒の傍には一夏が。その二人の傍に俺はいた。二人共俺と一緒にいてくれたから、仲間外れとは思わなかった。二人共性格よすぎィ。

 

「何年も会ってないから、別の人間を好きになる事もあるってさ。中学の時に聞いた。遠距離恋愛とか」

 まぁ、それは仕方ない事だと思う。箒はそんな事はなくてよかったかな。

 

「その時はその時で、だ。だがな、未だに一夏を一途に好きだと、心から思っているから、結果私は問題ない。初恋はよく実らないというが、私がそのジンクスを打ち破ってみせる」

 GN-X? 炭酸?

 

「頑張れ、応援するぞ」

 

「ありがとう。ただな……セシリーがあの一夏に惚れてる気がある気がする」

 え? セシリアさんのファンやめます。

 

「そうなのか……どこでわかった?」

 

「昨日に話した事だ。クラス代表戦」

 そういえば聞いたな。

 

「セシリアが勝ったんだがな……それから高慢ちきな態度が反転して、タカビーが引っ込んでドン引きするぐらい穏やかになった」

 マジか。今のセシリアさんを見ると、そんな風だった過去は全く見受けられない。あ、でも猿呼ばわりしたんだっけ?

 箒の言葉の中に散りばめられたら悪意が感じられる。まぁ、恋敵だからしょうがないのかね?

 

「まぁ、悪く言うのはほどほどに」

 

「事実だし、少しは吐かせてくれ。一夏に直接や他の友人に間接的にも言えないだろ? 下手したら友人にバレる。女怖い」

 君も女でしょうが。

 

「だから口が尻軽くない、一番信頼出来るお前に愚痴るんだ。あ、大好きで愛されている私に、頼られてるからって泣くなよ?」

 さすがにその言葉じゃ泣けない。大丈夫だぁ。問題ない。後、セリフの中の尻軽いってチョイスはどうなの?

 

「ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ」

 

「か、勘違いしないでよね!私は別になんとも思ってないんだから!」

 前言撤回早いな、おい。クルーテオ卿が過労死しちゃう。

 

「はいはい」

 

「所で、SPさんの車の中で私達は何を話しているんだろうか……?」

 

「さあ? でも、いいんじゃないの? この会話を漏らす人ならクビじゃない?」

 人の命がかかっている事もあるんだし。スパイなら別。

 

「なるほどな。つまり、気に入らない奴やいけ好かない奴がいたら、上に報告すればクビに追い込めるのか」

 

「なんて物騒な思考」

 

「なんやかんやでなんもかんも、全て姉さんが悪い。過去の最近の日本は男尊女卑でも、そこまで女性を軽視しずに、色々やっていたらしいじゃないか。もちろん男も女も不満がある奴はいるだろうが」

 すごいな。箒がここまで熟思しているとは。でも、脱線している。

 

「あ? お前……今心の中でバカにしただろ? あ? 私は姉より天才なんだぞ? 人間性的に。私は天才だぁ! 姉さんの血が流れているからな」

 それを言うなら親の血じゃない? 確かに兎さんと同じ血は流れているけどさ。

 

「まぁ、細かい所に目を瞑れば……うん」

 

「バッカお前ェ……全てをこの眼に映してこそ、姉さんへの思いは成り立っているんだ」

 よくわからんが、それってただの盲目なんじゃ?

 

「だったら今度会った時に直接か、電話で連絡してあげなよ? IS作ってくれてありがとうって」

 

「ああ。ちゃんとお礼ぐらい言うさ。でも、姉さんは足が付くのを嫌がるからか、一々電話番号変えるんだ。いつも電話番号をメールで寄越してくれるんだが、即座に電話をかけても出ない。その代わりか、いつも綺麗な声をしたお姉さんが、何度も何度も同じ言葉を繰り返す。そんな所にしかかからない怪奇現象が頻繁でな? だから電話は嫌なんだ……」

 それは確かに面倒だ。でもイタズラとかは、わざわざしてこないよね? 忙殺されてそうだし。 後、それは電話のアナウンスだろ。世間知らずか!

 

「もしかしたら兎さんの茶目っ気なんじゃない?」

 知らんけど。

 

「は? は? 逃げ回っている姉さんが、何回もそんな事するはずがないだろ! いいかげんにしろ! いや、メールだけなら可能かも知れんが……」

 威圧と一緒に否定してきた。知らんがな。

 

「向こうからのコンタクトを、待つしかないね。会った時はたくさん礼を言っとけ。飢えているだろうからさ」

 どのぐらい会ってないか、箒から聞いたっけ? 覚えがないや。どうせ俺はバカな子だよ!

 

「ああ、その時が楽しみだ」

 首だけ横向きだった姿勢を戻しながら、笑顔で頷いた箒。再開した時の事を考えているのだろうか? なんか二人が会うと退廃的な絵面しか浮かばない。失礼だけど。

 

 

 そろそろ到着すると、運転手に言われてから俺は返事をした。隣の箒を見ると、にやにやしている。普通に笑えよ。

 

 

 俺達は車から降り、SPさん達はバラバラの足並みの歩き方で、肩を並べる俺と箒に付いて来る。

 しっかしでっけぇビルだなぁ。何十階あるんだっけ? 数えてないから知らんが、大企業的な大きさかな? 大企業がどんなデカさのビルなのかもわからんけど。

 SPさん達とは入口で別れる。箒と一緒に、俺はいつもいる受け付けのお姉さんに、ISのある場所を尋ねる。顔パスだから、身分証明書なくてもへーきへーき。さっきから箒が首を動かしまくって、驚嘆したのか辺りを見まくっている。

 

 二階以上は一回も上がった事はない。そこから先は、許可ある者じゃないと入れないし。ガードマンが数十人が色々な場所で立っており、監視しているからね。でも一階のエリア全体は、明らかな不審者でなければ誰でも入れる。カードキーないと無理な場所もあるけど。

 受け付けのお姉さんに、折り畳まれた紙と道を教えてもらい、二人で移動した。ガードマンが配置されてる場所を通って、目的の部屋に続く廊下へと入る。また髪の話……。

 

「すごいなここ。よし、一夏はセシリアに譲って、お前と結婚するぞ」

 

「ステータスで決めるなよ。一途さはどうした」

 簡単に乗り換えるんじゃない。普通に恋愛して結婚する者達より、格が落ちまくるぞ。

 

「世の中は全て金だからな。金で私の愛は買えるぞ」

 

「金が欲しいだけじゃねぇか。普通の愛をくれ」

 そんな冗談を交わしながら、俺と箒は目的の部屋の前に着いた。持っていたカードキーとさっき渡された紙を開き、番号を入力。そして指紋認証。まぁ、一階に特別重要な部屋はないから、セキュリティーはこんなもん。

 ポケットにカードキーと紙を突っ込んで部屋に入ると、ドラマなどで見るいかにもな仕事部屋だ。そこら中のデスクの上に、PCがゴロゴロ置いてある。窓はなく空調機が設置されていた。あれはコピー機に、シュレッダー?

 

「特に重要そうな感じはないな」

 俺の隣で、箒はそう呟いた。

 

「で、どうすれば?」

 なにをすりゃいいのよ? この部屋にあるものじゃ、ISに関連するものはなさそうなんだが。

 

 

 そしてよくわからない内に、部屋の電気が消えた。俺と箒は互いの肩に手を乗せる。自分達の位置確認を怠らない。

 

「む? 停電――――」

 箒が喋っていた瞬間、いきなり誰かの手が俺の後頭部を掴み、前に引き寄せられた。

 

「えっ!? なんなの!?」

「誰だぁっ!? 私の後頭部を掴む奴はっ!?」

 視界が暗闇に慣れずパニックになり、声を張り上げた俺と箒。

 

 これはよくわからないが、誰かに抱きつかれてる? なんだか、落ち着く匂いだ。

 

 そして闇に包まれた世界で、懐かしい声を俺と箒は聞いた。

 

 

「ただいま。箒ちゃん、夕君」

 俺達は返す。

 

 

「おかえりなさい。束さん」

「おかえり、姉さん」

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