IS 一夏がいない   作:稲穂焼き

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お久しぶりです
こちら四話連続投稿の一話目になります


五話

 こっちへ来てから一週間。特に何事も無く非常に平和な日々だった。というか、とてつもなく暇だった。何せ襲撃がゼロ。敵のての字も見当たらない。

 そのおかげでバンシィは完璧な調整が完了した。といっても、量子系は手付かずだが他はオールグリーン。今ならトランザムも起動可能だ。

 

 早く何かしらのドンパチが起きてほしい。不謹慎極まりないが、ぶっちゃけ戦闘したい欲が出てきてる。

 一時期、トチ狂って学園の模擬戦中に乱入して暴れてこようかと思ったほどだ。流石に不味いと理性が働いてくれたから良かったものの、抑え込むのに大変苦労している。だって暇なんだもん。

 

「そろそろ良い頃合いなんじゃないのかねぇ? どう思います、マドカさん」

 

「そうだな……」

 対面に座るマドカがPCを触る手を止めて考え始めた。作業の邪魔してすみません。暇なんや。

 

「定石通りなら、今までが威力偵察だったんだろう」

 

「ほうほう。その理由とは?」

 

「本気で勝ちに行くなら相手の情報を得るのが何より重要だ。既知の相手と未知の相手、お前はどちらと戦いたくない?」

 

「そりゃもちろん、知らない敵とはやり合いたくない」

 

「そういう事だ。これだけの期間を空けるのは、相手も相応な準備をしてるはずだ。数か質か、それとも両方かは不明だがな。はっきりしてるのは、次が大規模な戦闘になる可能性が高いだろう」

 

「ま、その次がいつになるんだって話よね」

 

「だな。相変わらず正体も目的も不明で進展無し。打って出ようにも手掛かりすら無い。今は我慢の時だ」

 

「では、我慢の限界を迎えた俺は外出してきます」

 椅子から立ち上がり、近くに置いて準備していたコートを着る。

 

「出不精なのに珍しいな」

 

「いや別に出不精じゃないぞ。今は仕方なく引き篭もってるだけだ。身分的に」

 今日は平日で補導の可能性が高まるが、流石にストレスがヤバいので散歩がてら暇潰しの旅に出る。変な挙動をしなければ職質される確率は低いはず。

 

「何か買ってきて欲しい物とかある?」

 

「特にないな。それより、あんまり遅くなるなよ」

 

「ういー。いってきまー」

 外に出ると冷気が容赦なく襲い掛かってきた。暑い夏が恋しくなる季節だ。逆に夏になると、冬が恋しくなる。一年間、春と秋辺りの気温で固定してほしい。

 ひたすら前へ前へと歩いていると、体が温まってきたのと同時に景色も変化した。

 

「さて、どこ行こうかな」

 無心で足を動かしていると、そろそろ街に到着する。街に入ったら適当にぶらつこう。目的は遊ぶ事じゃなくて気分転換だし。

 脳内でルート選択をしているとサイレンが鳴り響いた。聞き慣れない音に思わず驚く。

 

「これが例の襲撃……?」

 何てタイミングの悪さ。せっかく気分が落ち着いてきたというのに、邪魔された気分だ。とりあえず、我がマイホームへと戻ろう。何か興奮してきた。

 急いで戻ると、マドカはPCとにらめっこしていた。あっぷっぷー。

 

「さっきサイレンが鳴ったけど、もしかして襲撃?」

 

「ああ。しかも、いつもの倍以上だ。ようやく実戦データが取れるが出るか?」

 

「うーん……一応、待機はしとくかな。先生とかの許可無しに暴れ回るのは、今後の事を考えると一発アウトだし。とりま着替えてくる」

 別室に移り、服は変えずISスーツだけ中に着用して戻る。

 

「オーダーはありますか?」

 

「調整後のバンシィかフェネクスのデータが欲しい。それ以外は好きにしろ」

 

「んー……出るのは一夏達がピンチになったらでいい?」

 

「夕の判断に任せる。この先、いくらでも機会がありそうだしな」

 フラグっぽく聞こえるが、今回で終わる訳ないから大丈夫だろう。

 

「んじゃ、行ってくる。期待せずに、お待ち下され」

 

「ああ」

 待機形態のバンシィとフェネクスを引っ掴み、マドカの声を背に受けて再びの屋外。フェネクスを起動して、ステルス状態で学園へと向かった。フェネクスのステルスが便利なんすわ。

 数分で学園上空に辿り着くと、複数のアリーナで同時に戦闘が始まっていた。見た事ない敵を複数体発見。

 敵の外見はデータ上の写真で記憶しており、金属に覆われた虫っぽいのは知っている。だが、尻尾の生えたバカでかいゴリラっぽいのは初見だ。

 あれが今回の新兵器らしい。見た目からして重装甲なだけで強そうじゃないが、とんでもない強さを発揮するかも知れないから警戒しとこう。

 

 敵は各アリーナに配置されてるISに対して倍以上はいる。ゴリラ型の奴は一体だけだが、今後の襲撃では常連になりそう。ボスが雑魚敵として出てくるパターンのやつ。

 見知らぬISが結構いるけど、実力はあるんだろうが性能はさっぱりわからない。押し負けてはいなさそうだし、無闇に手を出す必要はないと見た。

 暇なので、織斑先生に一応連絡してみようと試みる。前回使用した回線で通信をしたら繋がった。もちろん、念の為に秘匿しておく。

 

『戦闘中に何の用だ?』

 

「あ、どうも白雪ッス。お元気そうで何よりです」

 

『やはり白雪か。久しぶりだな。色々と聞きたい事はあるが、その前に手を貸してくれると助かる。猫の手も借りたい戦況だ』

 

「ピンチには見えませんが、本当に助力した方がいいですか?」

 懸念しているのは、俺がいなくなった後を見据えてるからだ。今はいるから何度だって手伝えるし、全員が無傷とは言えないまでも損害は軽減されるだろうけど、同時に貴重な実戦の経験値も減りそうだし。

 

『そうだな……』

 織斑先生は顎に手を当てて考え始めた。俺と同じ事か全く別の事を考えてそうだ。

 

『……では、お前から見て危険だと判断したら、遠慮なくアリーナのバリア諸共ぶち抜いてくれ。それまでは静観しててほしい。いいか?』

 

「もちろん大丈夫です。怪我人が出ないよう見ときますね」

 

『頼んだ。私は各部隊を引き続き指揮する』

 

「了解です。お邪魔してすみません、頑張って下さい」

 通信が切れた。とりあえず攻撃の許可をもらったので、無許可の場合より混乱は軽減されそうだ。

 どこでも駆け付けられるようアリーナの上空で待機しとこう。戦場から目を離さず素早く目的地に飛んだ。

 今現在で苦戦してる部隊は見当たらない。流石、専用機持ち。代表候補生の名は伊達じゃない。

 こうして文字通り俯瞰していると、気になる点が二つ出てきた。一つは鈴に結構似てる人物がいる事。もう一つが一夏からオニールと呼ばれていた少女が双子で、二人で一つのISに搭乗している事だ。

 

 まずは鈴に似た人物から観察してみる。オニール氏とは違い、明らかに双子って外見じゃない。それでも似てる部分があるのは同じ血が流れているのかも。ただ、鈴と数年間過ごして一度も妹がいるとは聞いた事がない。そこから推測するに親戚辺りだろう。

 次にオニール氏だ。傍から見ても瓜二つで、正に双子って感じがする。その搭乗者の姉妹より一際目立つのはISだ。二人で一つのISを巧みに操縦している。普通なら意思の統一は一般人じゃ扱えないから、双子ならではの運用だろう。実現させたのは素人の俺からでも狂気の沙汰。開発者は変態。

 どういうISなのか探るため注視すると、どうやら歌で戦ってるらしい。しかも結構イケイケな曲調だ。なるほど、これはマクロスですわ。彼女達が歌えば光線が踊り出して敵が爆ぜたりしているけど、まごう事なきマクロスだ。誰が何と言おうとマクロス。

 つまり、彼女達の歌で絶対天敵(イマージュ・オリジス)と和解するんですね、ヤックデカルチャー。これには渚カヲル君もにっこり。ほんまか?

 とりあえずの観察が終わったところで、全体を見渡すと戦況は有利そう。各々方は、しっかりと連携プレーが出来ており着実に敵機の数が減ってきている。残念ながら、スタンバイしてる俺の出番は無さそうだ。

 

 閃光が瞬く戦場を傍観していると、俺も戦いたいという欲求が湧いてくる。ただ、タイミング的に今じゃない。誰かが怪我しないよう注意して待機してよう。

 しばらく待っていると、一夏達に損害はなく雑魚敵は全て殲滅された。残るは、いかにもボスですって面をしたゴリラだけだ。全機で袋叩きにすれば確実に勝てるだろう。戦いは数だよ兄貴ってやつ。勝ったな、風呂入ってくる。

 各機が集結してボスゴリラに牽制射撃を行うが、バリアもないのに装甲で全部弾かれている。相当頑丈に作られているらしく、弱点を探るにも時間が掛かりそうだ。

 今度は数機が近接攻撃をするためか、ゴリラに向かって飛ぶ。味方の援護射撃を受けながらブレードなどで斬りつけているが、やはり大きなダメージにはならない。唯一、一夏の零落白夜はだけは少しだけ通っていた。

 

 ずっと木偶の坊だったゴリラは、攻撃を受けたからか外見には似つかわしくない機動性と運動性で、アリーナ内を縦横無尽に飛び回り始めた。移動と同時に尻尾の先からは弾丸が射出され、両腕をロケットパンチのように飛ばし、アクロバティックな体勢で攻撃を開始する。

 あまりの速さに回避する間もなく攻撃が当たり、一夏達は苦戦し始めた。ISの何倍も大きい質量の暴力。あれは放っておけない。

 

「行こう、フェネクス!」

 声を出してフェネクスに合図を送ると、NT-Dが発動した。ステルス状態が解除されユニコーンモードから姿を変えて、デストロイモードになった。

 機体を上昇させると、数秒で街が一望出来る高さまで到達した。

 

「一撃で決める……!」

 ビームトンファーを前方に向けながら構えて、動き回る敵の頭に照準を定める。狙うは一撃必殺。データを取るというマドカとの約束は破ってしまうが、可能な限り少ないダメージで鹵獲すれば、後のためになるはずだ。

 数秒が経過する毎に、一人ずつやられていくのが目に映る。幸いな事に怪我人はいない。焦る気持ちを抑えて、集中する。

 そして最後は一夏に通信を飛ばす。俺の狙いを伝えた方が、一夏以外のメンバーも動きやすいだろう。

 

「一夏、聞こえるか? 数秒でいいから動きを停止させてくれ」

 

『わかった! やってみる!』

 通信を切ってタイミングを待つ。すると、アリーナで戦ってる一夏達が、敵の足を狙い始めた。機体の大きさとバランス的に、足にダメージが入ればキツいはずだ。

 相手との戦いに慣れてきたのか、全員の被弾率が徐々に減ってきた。初見の相手でも、ある程度の時間が経過すれば攻撃に慣れてくる頃だろう。

 まだかまだかと待ち続けて数分。時は来た。一夏の攻撃が膝裏に当たり、飛び回っていた敵が皆から距離を取る。そのまま移動しようとした屈みかけた瞬間、バランスを崩した。

 

「今っ!」

 一秒もかからずバリアを割り敵へと到達し、その頭を地面へと縫い付けた。すぐさま離れ、両腕のビームサーベル伸ばして頭と両手両足を順番に素早く切り飛ばす。

 相手は行動不能となり、機能が停止した。俺の初の実戦は勝利。ラストヒットだけ奪ってくクズムーブだが致し方無し。緊急時だから許して。

 そして、長居すると説明をしないといけないので、この場を早々に離脱して一夏に全て丸投げしよう。後は頼んだぜ、ブラザー。

 離脱中、忘れず織斑先生にだけは連絡しておいた。俺がフェネクスに乗ってるのに驚いた織斑先生だが、察してくれたのか追求されずに済んだ。織斑先生サイコー!

 

 ぱぱっと帰宅しテーブルに座るマドカへ声を掛けながはフェネクスを渡す。

 

「戦ってきましたよ。これでデータ取れた?」

 

「ダメだ」

 ダメでした。

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