東方真戦譚~戦闘神、立つ~   作:超淑女

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第六話『花の香り』

 あれから3日。

 紫との訓練は弾幕―――つまり射撃戦だけをすることになった。

 模擬戦などは紫曰く。

 

「私じゃ訓練にならないわよ。接近戦なんてできないもの」

 

 だそうだ。

 ということで遠距離戦の練習をしていた。

 遠距離戦であまりあぶなくない戦いだと、戦闘神にはならないからだ。

 

 そういえば最近上着をもらった。陣羽織のような服。

 神として派手さは欲しいとのことでそれを着ることになった。

 まるでブシドーを志す者のようだった。とココには書いておこう。

 

 

 

 

 

 そして、今日もまた、英雄神とチルノは共に訓練をする。

 冷気はなかなか押さえられるようになってきたので、今日は村に来た。

 触っても<冷たい>程度に抑えられるようになったご褒美だ。

 一瞬、心臓が止まりそうになるが、気のせいだと信じたい。

 

「早く早く!」

 

 チルノが彼の服の袖を握って走る。

 彼女なりにあまり素肌に触れないようにと気を使っているのを気付いて頷く。

 

「少し落ち着けチルノ?」

 

 笑って声をかける。

 赤い顔をして、止まった。

 彼の背後から、小走りで走ってくる二つの影。

 

「は、早いよチルノちゃん!」

 

「自重」

 

 大妖精とルーミアだ。

 肩で呼吸をしている二人を見て、チルノが『ごめん』と一言。

 

「まぁ…ゆっくりな?」

 

「ゆっくりしていってね」

 

 そういうルーミアを見たとき、一瞬どこぞの<饅頭顔>が見えた気がした。

 気のせいだ。

 彼は自分に言い聞かせた。

 

 ふと、彼は疑問を持つ。

 

「なぁ…ところで、生まれた時からに三人ともそのサイズか?」

 

 歩きながら、彼が聞いた。

 大妖精が頷く。

 

「はい、ルーミアちゃんは妖怪だからいまいちわかりませんが…私とチルノちゃんは初めからこのサイズでした」

 

 なるほど、と頷く。

 自分のせいで正史が歪んだと感じて、少し苦笑。

 その表情に気付いたルーミアが、彼の顔を覗き込んだ。

 

「おわっでぅえぁっっ!」

 

 急にルーミアの整った顔が目の前に出てきた。

 おどろいて、背後に倒れる。

 驚くチルノと大妖精。

 

「っ痛…」

 

「大丈夫?」

 

 手を差し出してくるルーミア。

 その手を握って立ち上がるのを手伝ってもらう。

 

「悪いな」

 

「私が悪かった」

 

 そう言って少し笑った。

 彼は珍しいものが見れたと頷く。

 ルーミアは頭を傾げる。

 

「どうした?」

 

「なんでもないのか?」

 

「いや、知らんがな」

 

 そう言うと、ルーミアは頷いた。

 相変らず無表情だったが、少し戸惑っているようにも見える。

 

「まぁ…とりあえずどうして急に町に来たいなんて」

 

 チルノが振り向いて胸を張った。

 まぁ、そこそこあるな。なんて下心を持ちながらも彼は見る。

 びしっ、と指をさして―――咎めるような視線だ。

 

「前言ってたじゃない!あたいが触っても大丈夫になったら何か買ってくれるって!」

 

 そう言えばそんな約束した気がする。

 しかし、金と言えば自分の石碑の横にあった箱にいくらかあった程度だ。

 それ以外は、なんと落ちている金をくすねた。

 あと紫から毎日少しだけお小遣いを。

 

 きたない、さすが神きたない。

 

「あんまり高いものは買えないからな?」

 

「うん!」

 

 わかっているのか、少し不安になりながらも笑う。

 そろそろ仕事ぐらいしなきゃと思いながらも、神を雇ってくれる場所を探さないといけないという困難が待っている。

 だから紫がお小遣い制なのかと考えた。

 

 チルノが走って行く。

 一軒の店を見て、手を大きく振っていた。

 何日か前より随分元気になったものだと嬉しさ半分で店に行く。

 

「これがいい!」

 

 チルノが指差したそれは、青いリボンだった。

 どこかで見たことがあると思いながら、店主にそれを頼む。

 

「おじさん、これ!」

 

「おっ、英雄神さまから金は取れませんな!」

 

 そういう店主。

 彼はそういう店主を少し睨む。

 

「強がるなよ、かみさんがわざわざ作ってんだろ…ほら、これは神からのご褒美ってことで」

 

「すみませんなぁ」

 

 そう言って、店主は金を受け取った。

 チルノがリボンを持って店を出る。

 

 それに続いて彼も出ると、ルーミアと大妖精が居た。

 

「リボン買ってもらったんだ」

 

「うん、大ちゃん結んでくれる?」

 

 そう言うチルノのリボンを受け取って、髪の毛を結ぶ大妖精。

 嬉しそうな顔をしている大妖精を見ると、良かったと安心した。

 チルノに結び終えると、良く見た。

 

 あぁ、チルノだ。

 

 そう、リボンを結ぶと髪型が数多の動画や絵で見たチルノだった。

 元々髪が長いので、後ろでポニーテールのようになっているがかなりチルノだ。

 

「可愛くなったな!」

 

 そう言ってチルノの頭を撫でると、チルノの顔が真っ赤になった。

 

「そうだ、少し待ってろよ!」

 

 そう言って彼は、店内に入っていった。

 のれんの向こうの彼は何かを買っているようだ。

 

 そして、出てきた彼の手には二つのリボン。

 

「これ、二人にもだ」

 

 ルーミアと大妖精にそれを渡す。

 受け取った二人。

 大妖精には黄色いリボン。

 ルーミアには赤いリボン。間に白いラインが入っている。

 

「ありがとうございます!」

 

 大妖精はそう言って、サイドポニーにした。

 リボンを持ってぼうっとしているルーミアのリボンを、彼が手に取る。

 

 キョトンとしているルーミア。

 

「結んでやるからさ」

 

 そう言って、彼はルーミアの髪に赤いリボンを結んだ。

 我ながらうまくやったと頷く。

 こうして髪型は元の三人に近くなったわけだが、身長と体系と髪の長さだ。

 

 まぁ、これはこれで良いのだろう。

 

「さて、帰るか?」

 

「うん!」

 

 チルノの返事を聞いて、大通りを歩き出す。

 四人はずいぶん現代とは違う服を着ているので目立っているが、前方にもっと目立つものが見えた。

 緑色の髪をなびかせ、この時代には合わぬ日傘を差して、歩いてくる。

 

「……冗談だろ?」

 

 ボソッと口に出す。

 そこには、たしかにヒトが居た。

 あれは最強クラスの妖怪。

 紫とどちらが強いかまでわからないような、あげくにアレは接近戦も得意だ。

 

「あら、神力が出てるわね。アナタはこの地の神?」

 

 目の前まで歩いてきた女はそう聞いてきた。

 背中に冷や汗を浮かべながら、余裕の表情を見せる彼。

 

「あぁ、英雄神といわれてる」

 

「へぇ」

 

 女は笑って辺りを見渡す。

 汗が流れるのを感じる。

 ルーミアや、大妖精も少し驚いているようだ。

 

「風見幽香か…」

 

「あら、私も有名になったのね。私は…そこの氷精しかわからないわ」

 

 そう言って指差されたのはチルノ。

 少し怯えているようにも見える。

 幽香は笑う。

 

「ところで、英雄神……この地を私に頂戴」

 

 沈黙。

 辺りの村人も動きを止める。

 何を言っているのだろうと、その女を興味ありげに見ている。

 

「なにを?」

 

「くれれば良いの…この村って薄汚いでしょ?だからお花で一杯にするのよ」

 

 さも当然と言うように幽香は言った。

 むしろ、幽香がなぜ?と首をかしげていた。

 

「悪いが、渡せない」

 

「そう……じゃあ、力づくでもらって構わないかしら?」

 

 太陽のように輝く笑顔を見せた。

 背筋が凍るような感覚がして、チルノが英雄神たちの前に出た。

 そして、両手を前方に向ける。

 

「アイスシールド!」

 

 氷の盾が出現した。

 その瞬間、弾幕が一斉にチルノたちへと奔る。

 それら全てをなんとか防いだ氷の壁は、ボロボロ。

 

 氷の壁が消えると、チルノは肩で息をしていた。

 

 一方幽香は余裕の表情だった。

 

「邪魔するの氷精?」

 

 ビクっと震えるチルノ。

 何かあったのは良くわかる。

 

「また、前のように可愛がってあげましょうか?」

 

「ひぅっ!」

 

 完全におびえた顔になっていた。

 その時、チルノの頭に手が乗る。

 

「っ…」

 

「良く守ってくれたチルノ、後は俺の出番だ」

 

 チルノが負けた相手に勝てるのだろうか。

 紫には相性で勝てたようなものだ。

 むしろ紫は手を抜いていたんだと思うから、おそらくコイツには勝てるかわからない。

 

「大妖精とルーミア、流れ弾が飛んでいったら相殺を頼む」

 

 頷く二人。

 そして、彼は幽香との距離を詰めた。

 

 お互いの距離は3メートル程。

 

「滅ぼされたいのかしら?実力も私以下、神力それといってあるわけではない…ただ、右手の妖力が気になるわね」

 

「そりゃ…やってみなきゃわかんないだろ?」

 

 村人とたちが逃げたのを確認した。

 まぁ、あそこまで派手な弾幕があれば逃げるか、と思った矢先。

 先に動くのは幽香だった。

 傘をたたんで、彼の懐に入り込んだ。

 

「おしまいかしら?」

 

 アッパーが炸裂して、上空に飛ばされる。

 体制をなんとかして整えると、下を見る。

 幽香が居なくなっていた。

 

「こっちね!」

 

「なっ!」

 

 背後から、傘で殴られる。

 吹き飛ぶが、なんとか体制を整えた。

 スピードはともかく、相手の死角などを取った戦闘。

 

「まぁまぁ…こいつぁ一筋縄じゃいかないな」

 

 なんとか冷静を装っている。

 戦闘神を開放するべきかを悩む。

 しかし、するほか勝てる術はない。

 

 しても勝てるかわからないが、賭けてみるのも悪くない。

 

「あら、動かないのかしら?じゃあお終いね。アナタはいい男だから…これで葬ってあげる」

 

 幽香の右手に、金色の光が溜まる。

 そして、振りかぶった。

 

「マスター」

 

 突き出された右手。

 

「スパーク!」

 

 轟音と共に、金色の閃光が走る。

 下にいる三人の顔が、絶望の表情へと変わった。

 

 

 直撃。

 爆発。

 爆風。

 爆煙。

 

 幽香が、軽く息を吐いた。

 

「疲れたわ…後はここの人間を食べるか殺すかして、平地に変えなきゃいけな……」

 

 爆煙が晴れると、そこには一人の男が立つ。

 青白い光を体から放っている。

 恐ろしいまでの殺気を放ちながら、彼は笑いだす。

 

「フハハハハハハッ!おかげで右腕はみなぎったよぉ!!」

 

 彼の体から、少し遅れて残像のようなものが見える。

 張り詰めた空気。

 幽香の表情にも笑みが満ちた。

 

「アナタっ!殺しがいがあるわ!」

 

 飛んで、傘をふりかぶる。

 しかし、斬ったのは残像だけだった。

 

「当たるわきゃねえだろぉぉぉっ!!シャイニングショット!」

 

 幽香の背中に衝撃。

 背後を見ると、そこには彼が立っていた。

 笑っている。

 その余裕の姿を睨む幽香。

 

「くっ、やるじゃない…接近戦と行きましょうか!」

 

 傘を地面に投げる。

 それは見事に突き刺さった。

 それと同時に幽香が飛ぶ。

 

 拳を振りかぶり放つが、それはあっけなく戦闘神の右手に掴まれる。

 

「ハハハハッ!たいした攻撃だ!」

 

 彼は左手で幽香の右手を掴む。

 幽香の顔の眼前に、彼の顔が近づく。

 その顔は、どこか相手を馬鹿にしているような表情で……

 

「っこのぉ!」

 

 足で、戦闘神の顎を蹴り上げる。

 両手が離れることで、幽香は彼から離れた。

 

「フハハハッ…愛いやつめ!」

 

 残像を残しながら移動する戦闘神。

 それがなにか理解しがたいが、妖怪や神を超越した力なのは理解できた。

 幽香は再び腕を彼に向ける。

 

「マスタースパーク!」

 

 その閃光が、戦闘神に直撃する。

 だが―――爆煙の中から彼が飛び出してきた。

 

「そうだぁっ!」

 

 幽香の首が掴まれる。

 つかんだのはほかならぬ“戦闘神”であり、ほかの誰でもない。

 その眼は先ほどまでの彼とは全く違う。

 

「あぐっ!」

 

「死を意識するからこそ生を実感できるのだ!!」

 

 掴まれた幽香が、苦しそうに呻く。

 笑っている戦闘神。

 

「チルノはどういう風に可愛がったんだぁ?」

 

「がっ…はなっ、しな…さいよっ!!」

 

 幽香が、片手を戦闘神の眼前に構える。

 そして、手から何十もの弾が放たれる。

 爆煙と共に、ゆるんだ手から幽香が抜け出した。

 

 何度目かの距離を取る。

 

「その程度かぁ!幽香!」

 

「化け物がっ!」

 

 幽香の両手から、マスタースパークが放たれた。

 それの直撃を受ける。

 案の定、爆煙から飛び出してきた。

 

「ハハハハッ!今のはいい攻撃だったぞぉ!!」

 

 頭から血を流しながら、そう言って幽香の首を掴んで地面に投げつけた。

 幽香は背中から、地面に叩きつけられ苦しそうに呻いた。

 

 

 

 真上にいる戦闘神を睨む。

 

 

 

 その瞬間、顔が絶望に歪んだ。

 こんな恐怖は初めてだった。

 見たことも感じたことも無い。

 

「爆熱……」

 

 彼が、言葉を紡ぐ。

 

 左手には赤いエネルギーが溜まっているのがわかる。

 その左手は、なにか恐ろしいものを感じた。

 

 幽香は体を動かそうとしたが、麻痺して動けない。

 帰って、風呂に入って着替えて寝よう。

 だから、早く帰ろう……

 

 こんな所に、こんな奴がいるなんて思わなかった。

 

「ゴッド―――」

 

 こんなに後悔したのは始めてだ。

 少し油断していた。

 少しどころじゃない。

 

 恐らく、油断しきっていた。

 全てを焼き尽くす炎が、放たれる。

 

「―――フィンガー!!」

 

 赤い閃光が、脅威となって幽香を襲った。

 それは火柱となって上空にも上がる。

 

 なぜか、辺りの家には燃え広がらないその炎。

 

 炎が晴れると、倒れている幽香がいた。

 そして、彼が降りてくる。

 

「また…やりすぎた」

 

 そう言う彼。

 戦闘神ではなく英雄神へと戻ったようだった。

 

「やりすぎたって問題かしらねぇ…」

 

 服がところどころ破けた幽香が言う。

 上体を起こして座り込んでいる。

 胸元を両手で隠しているところを見ると、そこのあたりも破けたのだろう。

 

「でも、勘弁してくれよ」

 

 彼は“お願い”と共に頭を下げる。

 すぐに上げると幽香の顔をうかがう。

 

「……」

 

 無視。

 溜息をつきながらも、彼は自分の着ている陣羽織を幽香に被せる。

 幽香は驚いたような表情で、彼を見た。

 

「悪かった。熱くなりすぎて…爆熱ゴッドフィンガーなだけに」

 

 少しは場を和ませようとしたのだろう。

 そういった彼は、溜息をはいて、地面に刺さった幽香の傘を抜いて差し出す。

 

「まぁ、全体は無理だけどさ…少しぐらいなら花植えても良いから…それじゃダメか?」

 

 幽香は、無言で立ち上がった。

 そして傘を奪うようにしてから、小走りで村を出て行く。

 ふう、と一息ついて、チルノたちのところへ戻った。

 

 ルーミアと大妖精が肩で息をしている。

 

「流れ弾の処理、大丈夫だったか?」

 

「なんとか」

 

 ルーミアも疲れているようだった。

 大妖精は尻餅までついている。

 チルノは自分の体を抱いて今だに怯えているようだ。

 

「大丈夫か?」

 

「う、うん…あたいは…」

 

 溜息をついて、彼はチルノの首裏と膝裏に手を回す。

 驚いているチルノ。

 

「行くぞ」

 

「えっ…ひゃぁ!」

 

 そのまま持ち上げられるチルノ。

 いわゆるお姫さま抱っこだ。

 そして、歩き出す英雄神。

 

「さて、帰るか?」

 

 至近距離にあるチルノの顔に向けて聞いてみた。

 チルノは真っ赤な顔をして、頷く。

 

「よし、帰るか」

 

 大妖精とルーミアが彼の後を追って歩く。

 チルノが、彼の首に手を回した。

 気恥ずかしそうなチルノ。

 

「っ…落とさないでよ」

 

「任せとけ」

 

 そう言って彼はチルノを抱えて歩く。

 もう夕日が空に昇っていた。

 

 

 

 余談だが、チルノは後々『解けるかとおもった』と語った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、山中の八雲家。

 

「……」

 

 紫が、不機嫌オーラを出しながら彼の帰りを待っていた。

 

 だがすぐに表情を変える紫。

 物思いにふける顔で色々と考えて、ため息をつく。

 明らかに彼のことだが、彼女自身語る気も無かった。

 

 




あとがき
ゆうかりんでしたぁ!
先に言っておきます…チルノはまだ落ちていません!

さて、では次回もお楽しみに♪
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