流星のロックマン Record Of Pleiades 作:中佐
今回はいつもの倍の文量があります。
あまり話数を重ねすぎるのもどうかと思いますし。
考えてる時間は与えてくれない。
俺はコーヴァスと視線を合わせた後、ほんの少し地面から浮きながら、バルドゥールとの間合いを計る。
「さあ、来るといい。」
ちっ、余裕しゃくしゃくって顔しやがって。
「はっ、なら遠慮なく!」
次の作戦は一点集中。
俺とコーヴァスは翼を広げ、同時に突進する。
この鋭い羽を使い、二人で一カ所を狙う。
だが、下手をしたら正面衝突をする可能性がある。
だからこそ、常日頃こういう時の訓練は欠かしていない。
「うおおおおおお!」
「ふっ、その脆弱な翼ごとき折ってやるわ!」
バルドゥールが再び丸くなる。
そして、高速で接近する俺に思い切り転がってきた。
それは思っていたよりも早く、避けようと身を咄嗟に捻ると、逆に避けた方向に向かって来ていた。
「がっ!?」
おかげでもろにその巨体からの一撃をくらう。
ああそうか、まじで羽を狙ってたのか。
もう少し考慮すべきだったかと考えながら地面へ伏せる。
変身はまだぎりぎり保ってるが、如何せんダメージが大きく、体を動かせない。
「ジャック!」
「翼は削げなかったが、まあいいだろう。これで終わりだ。俺はロックマンを追わせてもらおう。」
そうだスバルだ。
ウォーロックはどこまで逃げれた?
あいつもスバルも負傷していて、生身のスバルのことを考えると、そこまで遠くには行けないだろう。
ウォーロックは何故かスバルを操れないとも言っていたし、無理矢理動かす事は不可能だ。
なら、追われたら追いつかれるのはすぐ。
俺が足止めしねえといけねえのに!
「とどめだ!」
「ショックノート!」
突如、バルドゥールの放ったエネルギーと、どこからか飛んで攻撃来た音符がぶつかり合う。
もしやと思いウェーブロードを見上げると、案の定そこにはハープ・ノートがいた。
「ハープ・ノート、推参!」
「今更新手か。しかも女とはな。」
「あら、ミソラが女の子だからってなめないでね。」
「そうよ。」
ハープ・ノートがジャンプをしてこちらに降りて来る。
手を伸ばされ、それを掴むと、思っていたよりも力強く腕を引かれ、立ち上がった。
電波変換すれば男女差も体格差も関係なく戦える。
素質さえあれば、誰でも兵器になりうる。
「平気?ジャック君。」
「ああ、まだ生きてる。」
すかさずリカバリーをかけられ、身体に力が戻ってくる。
傷つけばすぐに修復できる。
なんて便利なことだか。
「とりあえず詳しい事は後だ。あいつは防御型で、丸くなると俺の炎も弾きやがる。頭からエネルギー弾も撃ってくる。」
「わかった。じゃあジャック君は後ろに下がってて。」
「何言ってんだ。女に守られる程やわじゃねえよ。」
男女差はなくても女を守るのが男だ。
俺はハープ・ノートの隣に立ち、バルドゥールを見据える。
「二対一か。いいだろう。ローリングアーマー!」
丸い塊が俺達に迫ってくる。
軽く避けるが、代わりに周囲の建物が崩れた。
このままじゃ本当に町自体が危ないぞこりゃ。
「凄い威力!・・・ねえ、見た感じ硬くても、中は柔らかいんだよね。」
「ああ。」
また奴が突進してくる。
これ以上建物に被害を出すわけにはいかない。
どうにかして止める必要がある。
「なら、私とは相性バッチリ!任せて。行くよ!ハープ!」
「ええ!」
相性・・・そうか。
その言葉の理由に思い当たった俺は、いつでも追撃を加えられるように宙に浮き、翼を広げる。
チャンスは一度きりしか与えてはくれないだろう。
相手とハープ・ノートの動きに意識を集中する。
「何をしようとも、このアーマーを砕くことなどできん!」
「貫かなくても、いいよ!パルスソング!!」
「ぐおっ!」
「今だ!!くらえ!フェザーシックル!」
打撃でも射撃でもない、体内に響く《振動》で攻撃をすることにより、表面の硬さは関係がなくなる。
それはものによっては、何者もを貫く矛になる。
装甲を超え、ダメージを与えられたバルドゥールが一瞬、柔らかい正面をさらし、俺はその隙を逃さないようにすかさず翼に力を込め、奴を切り裂いた。
「ぐっ。」
「さあ観念しろ!」
そのままブレイブクローで追撃をしようと手を振り上げる。
そこでふと、違和感を感じた。
空が、曇っている?
今日は雲の一つもない快晴だったはずで、それはここ数日は続くと聞いていた。
この現代では、天気は予報されるものではなく予告されるもので、外れることは一切ない。
なら、この街を覆うこの雲はなんだ。
そう考え、空へ意識を向けた瞬間、雲の切れ間からハープ・ノートへ一筋の雷が落ちてきた。
「危ねえ!」
「なに、っきゃあ!」
俺はハープ・ノートを突き飛ばし、直撃は免れた。
「あ、ありがとう。」
お礼はどうでもいい。
攻撃してきた奴を探す為、周りを見回すと、声が聞こえた。
「あの攻撃をよく避けましたね。」
「誰!」
その時、雲と雲の間から、電波人間が一人、ウェーブロードに降りてきた。
「私はスティング・エンゲルフェン。」
天使のように微笑む彼女は俺達と変わらない年齢のようだ。
緑をベースとした胴体と比べ、不釣り合いに太い腕や足には鋭い爪、背面や頭には棘が付いている。
長いしっぽにも棘が付いていて、触られるだけで痛そうだ。
両手には何やら細い棒を持っているが、それを武器に使うのだろうか。
「貴方達がおじさんを怪我させたんですね。」
おじさん?
バルドゥールのことだろうか。
「カタリナ、何故来た。来るなと言っただろ!」
「嫌よ!私だって戦えます。おじさんは逃げて。この悪魔達に殺される前に!」
「な、何言ってるの。私達は悪魔じゃない!」
そうだな、そこまで言われる筋合いはない。
というか会話だけ聞くと、本当に俺達が悪い奴見たいな言い草だな。
「お前らのやった事の方がそう言われるべきなんじゃねえのかよ。」
「貴方達がおじさんに手を出した事に変わりはありません!」
「ならバルドゥールがロックマンに手を出した事も変わらねえな!」
俺は腕を振り、鋭い爪を飛ばす。
「俺は投降する!カタリナには何もするな!」
「私一人でもいけます!」
バルドゥールの提案にのりたいところではあるが、カタリナがそれを聞くつもりがないようだ。
彼女は俺の攻撃を避け、棒を振った。
「私のレクイエムを聴いてください!《レクイエム・恐怖》!」
それと同時に聴いたこともないような音が聞こえはじめる。
瞬間、胸の奥に冷たい刃を突きつけられたような緊張が走る。
心臓が強く打ち始め、心が、今にも折れそうな柱に片足で立っているような、不安定なものに書き換えられていく。
「しっかりして!」
だが言の葉が俺を呼び止め、急速に現実へと引き戻した。
「が、っはぁ、はあ!くそ、なんなんだ。」
唐突な感覚に弄ばれ、思わず咳込む。
俺を呼んだのはハープ・ノートだ。
「何故幻惑に捕われないの!?」
「私はシンガー。いつも心はロックなの。その程度の曲じゃ私の心は打てないわ。」
カタリナは戸惑った表情を浮かべ、次の行動に移らない。
ああ、そういうことか。
バルドゥールが戦いから遠ざけた理由を理解した。
大切な人である以前に、こいつは戦闘経験が殆どないのだろう。
力は、幾ら強くとも制御できなければ意味がないし、戦いは同じ事ばかりする機械相手でないのなら、常に様々な可能性を予測し、対処していかないといけない。
俺達がすぐにやられて、そのままだと考えるこいつは甘すぎるんだ。
「それにレクイエムは、死者にささげる鎮魂歌。それは、今を生きる者に聴かせる為のものじゃない。」
「私の指揮は間違っていません!」
おいおい、なんか別の争いになってねえか?
けど、おかげで隙だらけだ。
俺は再び空を舞い、素早くカタリナに接近する。
そのまま翼で切り裂いた。
「きゃああっ!」
「カタリナ!貴様!」
俺の攻撃をもろにくらったカタリナは悲鳴を上げ、よろける。
するとその声を聞いたバルドゥールが起き上がってきた。
「私は平気です。おじさんは無理をしないでください。」
「お前を傷つける者は許さん!」
っち、そのまんま寝ててくれりゃあよかったのに。
「私が引き付けるから、ジャック君は攻撃して!」
「おうよ!」
ハープ・ノートからの指示に従って俺は上を目指す。
腕を振り上げ、残っているパワーを込める。
「させるか!」
「マシンガンストリング!」
バルドゥールは追ってくるが、ハープ・ノートが弦を伸ばし、拘束した。
「今よ!」
「ペインヘルフレイム!!」
よく狙いを定め、タイミングを合わせて、俺は炎の塊を放つ。
それは追尾機能を持ち、確実に敵を狙い撃つ筈だ。
「させません!おじさん!《レクイエム・沈黙》!」
「!?」
だがその瞬間、二人の姿が消える。
何もなくなったことにより、ピンと張った弦は緩み・・・。
「まずい!!」
本当に奴らは消えてしまったのか、その追尾相手を失った炎は、無情にも町へ降り注いだ。
「あ・・・。」
『あんな勢いよく炎をばらまいたら、町も焼けちゃうよ?』
『へーきへーき。あれはリアルウェーブだし、実戦では追尾させる。』
『それで大丈夫かな。』
『平気じゃね。』
思い出されるのは、ほんの数日前のスバルとの訓練後のやり取り。
目の前に広がる火の海に、流石の俺も平常心を失いかける。
だが、ここでうろたえていたら駄目だと、何かが警報を鳴らした。
「そんな!・・・ガーディアンズはどこに行ったの!」
「追尾できなくなったなら、どこにもいなくなったっつー事になるけど・・・!?」
目の前に突如バルドゥールが出現した。
周囲は警戒していたし、どんなに速い移動だとしても、気配すら感じさせない筈がない。
だが、確かに銀色の塊がそこに出現した。
「ぐがっ、あああああ!!」
俺の腹に想像できないほどの重さのものが打ち付けられる。
「ジャック君!っきゃああ!」
それとほぼ同時に、ハープ・ノートが吹き飛ばされ地面に倒れる。
切り裂かれたようだが、視界が眩み、よく見えない。
その紅だけが鮮明に映る。
息ができない。
変身が解除されたのか、血の気の失せた人間の腕が見える。
死の足音が、僅かに聞こえてくるような気がする。
逃げようにも足は動かないし、助けを呼ぶ声も、退ける腕も、出せない、動かせない。
意識が遠退いていくのがわかる。
手負いのハープ・ノート一人じゃ勝てないのに、立ち上がることができない。
戦いで、身体が限界を迎えていた。
「私達の勝ちです。私だって戦えますし、役に立てます。」
「・・・・・。」
何もない場所に、カタリナが現れる。
ああ、そうだ、その体躯、カメレオンか。
もっと早く気づくべきだった。
「ジャック・・・君。」
ハープ・ノートが立ち上がる。
俺を心配しているが、すでにカタリナとバルドゥールに敵意を向けられている彼女に、たとえ声が出せたとしても、俺は助けを求められない。
「後はお前を始末してロックマンを追うだけだ。」
「ムーメタルは私達が回収します。」
「な、何を言ってるの?」
説明してないしわからないのは無理もない。
もう、意識が保てない。
俺は空を見上げる事しかできない。
町を覆う炎が俺の体も焦がしていく。
ああ、くそ。
俺はロックマンみたいに誰かを守ることなんかできもしねえ。
せめて、もっと早くカタリナの能力に気づいていれば。
まとめて炎で仕留めようとしなければ。
そんな後悔なんてどうでもいいと言うように、意識が閉ざされる。
最後に見えたのは突き抜けるような一筋の光。
「おい!ジャック!」
最後に聞こえたのは、コーヴァスの声だった。
よく考えたら誰もスティング・エンゲルフェンって呼んでないような?
あ、次でようやく今回の戦闘終わります。
長いですねー。
まあ次戦闘あるときは、もう少しスマートに終わらせるよう努力します。
文章のてきとーさや、変なところは、もうスルーの方向で!
ああああ、複数のキャラ動かすの難しいいいいい。
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