名出屋城。「学生だぁ?」「そうよ、ヨーコ。次の対戦相手は女子高生。」「マチルダ、プロフィール見せて。」
ぱっ。「聖ガブリエル女学園二年生『ゴモラの怒り』由乃。」「なにその怪獣みたいなの?」「はい、いわば
リングネームみたいなもので、学内の慣習だそうです。」「あ~、なるほど。あたしもコロニー高校時代は
似たような二つ名で呼ばれてたよ。」「ちなみにヨーコのは?」「そのまんま『審判のヨーコ』さ。」こぽこぽ。
「なんだ、つまんないの。」「もーちょっとガブ女みたく凝ればいいのに。」「ほっとけ。で、流派は?」ぐい。
「支倉流神聖抜刀術分派・島津示現流。」ブーッ!「なんだってぇ!」「あ、たしかヨーコも薩摩示現流よね。」
「・・島津か。まいったなこりゃ・・」「・・ヨーコが悩んでる?」「島津って、たしか薩摩藩の始祖が・・」
「そう、その島津家。しかも支倉流分派となると、幕末に猛威を振るったバリバリ実戦派の殺人剣法だよ。」
「データベース検索・・うわ、攘夷討ちのほとんどに関わってるじゃないですか。」「そりゃそうだ。薩摩藩は
幕府への反発から隠れキリシタンを保護し、イスパニアから西洋最新技術のみならず各種魔術・法術をも導入し、
250年もの歳月をかけて倒幕のための最強軍団を整えたんだから。」「でもそれって、最新銃器が主じゃないの?」
「いいや、白兵戦になれば銃は無用の長物。そのとき咆えたのが一撃必殺の薩摩示現流・・そして支倉流分派は
その中でも魔剣として恐れられた・・その圧倒的な破壊力ゆえに。」「でも銃が相手じゃ、いくら剣が速くても」
「その銃がまったく通じないの。・・防弾鎧で全身を覆って突撃してくるから。」「それ・・めちゃ重いんじゃ?」
「記録によると全備重量50kg。普通なら動けすらしない・・普通なら、な。」『ああ・・』「その重量に負けない
筋力と瞬発力・・たしかに魔剣ね。」「そして刀は・・いや、刀というより巨大鉈だね。敵を防御ごとぶち割る。」
「そんな恐ろしい剣術が・・」「明治・大正の剣法近代化の流れの中で、そういった殺人剣は消えていった・・
はずだった。」「いいや。その絶大な威力ゆえに密かに受け継がれた・・そして今、目の前に。」ギラッ。
霞ヶ関、旧官庁街。「由乃、始めるぞ。」『うん、令ちゃん。』ズン!「まずは廃ビル連続打ちだ。始め!」
「はあああーっ!」ゴオッ!「ずおりゃあああーっ!」ズババババーン!『お~。』「やるわね、由乃ちゃん。」
「あの巨刀を軽々と使うか、さすがサイボーグ。」「ハードスペックだけじゃ、あれほどの威力は発揮できません。
由乃自身の技量も上がってます。」「あんなバケモノ刀で斬られる相手が気の毒だな~。」「さてさて、そう簡単には
いかないわよ。」「蓉子さま、それは?」「相手はヨーコ・クサナギ。かつて日本剣道界で『剣聖』とまで言われた
豪剣士。今はアレクサンドラグループ四天王が一人・・アルカナ同盟『ソード・オブ・ジャッジメント』よ。」
『審判の剣!』「あ・・あの東方不敗マスターアジアから一本取った伝説の!」「決勝リーグ途中参戦を許された
古今無双の剣士!」「そう。・・生半可な腕じゃ勝てっこない、これ以上ない強敵よ。」「そんな相手が・・」
「はあああーっ!」ズバアッ!「まだまだ!そんな剣スジで、あの『審判の剣』の相手にはならないぞ!」
「うん!・・剣士なら誰も憧れるヨーコ様、その方と剣を交えるなんて、これ以上の誉れはないわ。はあっ!」
ズバシャアアアーン!「やってやる!悔いの無いよう、全力でぶち当たる!それがヨーコ様への最大の礼儀!」
ふたたび名出屋城。「う~ん・・」「ナディア、どうしたの?」「あ、マリア。・・ガブ女のガンダムって、
うちからの供与じゃなくて持ち込みなのよね。」「それが何か?」「いえ・・いくらネオヴァチカンとはいえ、
学生のために11機ものガンダムを揃えるのはおかしいと思うの。」「・・たしかにね。これだけの数だと、
費用も国家予算なみよ。」「・・よし。」カチャ、♪ピッ。「ヨーコ、いる?見てほしいものがあるの。」
「・・呼んだ?」「これなの。例のガブ女のガンダムなんだけど。」じーっ・・「・・素体はZACT製だね。
かなり手が入ってるけど、デザインのクセがある。HPのネットカタログを見れば・・」カタカタ・・「あれ?」
「なに?」「・・HPが無くなってる。」「えっ?・・あ、そうか。」「マリア、なに?」「ZACTインダストリーは
一年前にM&Aされて別会社になってるわ。」『あ~。』「思い出した。たしか・・」「メビウス重工ね。」
カタカタ・・「ここよ。・・さすがに昔のカタログは無いわね。」「軍事MSメーカーだったね・・ZACTのときは
つまんないデザインばっかだったけど、今はどうかな?商品一覧・・へえ。」「なに?」「変わったな、って。
明らかに今風の洗練されたデザインになってる。」「そりゃ会社変わったんだからむしろ当然でしょ。」
次の朝、ガンダム長屋。ガラガラ。「ちぃーす。ドモンさんいる?」「あらヨーコ、ドモンなら出かけたわよ。」
「ありゃ、スパってもらおうと思ったんだけど。」「うちの長屋に豪剣士ってドモンしかいないわね、たしかに。」
「短刀使いはけっこういるけどね。今回はリキのある剣が相手だから・・しゃーね、他あたってみるわ、ヘッド。」
「せっかく来てくれたのにごめんなさいね。」「ま、ヘッドの顔見るだけでも甲斐はあるけど。・・あれ?」
ガラガラ。「いってまいります。」「・・シエルさん、おでかけですか?」「はいヨーコさん。これからバイトで
非常勤講師に行くんです。」「へえ~、どっかの塾か駅前留学とか?」「いえいえ、聖ガブリエル女学園です。」
「ええっ!・・同行させてもらっていいかな?」「何か御用でも?」「うん、ちょっと見ておきたくて・・」
ツカツカ。「ほう、見聞を広めるための参戦ね。」「はい。わが校はそれでなくても促成栽培の傾向がありますので、
外の空気を吸わせるのは大切です。」「にしても、BGF参戦か・・よく法皇庁が許したね。」「・・私も疑問なのです。
ガンダム一機買うだけでも莫大な出費なのに、それを11機も。」「量産化してからコストはかなり下がってるけど、
それでも一機で数十億円だよ。」「さらにマルローネの手が入ってます。その改造費用も合わせると・・」
「それはうちでも話題になったわ。・・いったいどういうカラクリなんだろね。」「錬金術でも使ったのかしら。」
『シエル~!』はっ?タタタタ・・「アルクエイドさん?」「あーなんだ、『審判』もいっしょだったんだ。
さ、学校へいこー!」わしっ!ずるずる。「あ、ちょっと!・・ヨーコさん、ではここで失礼します~!・・」
「がんばってね~。・・さすが真祖・東方不敗、最強の代行者もケンカ友達レベルか。・・おや?」ぴたっ。
きょろきょろ。「なんだ、もう新橋か。そういや真祖の城は右手の日比谷公園、となると左手のここか・・」
ガヤガヤ。「濃緑のセーラー服・・まちがいない、ここがガブ女か。」ぴた。「・・すっげー校門。こりゃ
ロダンの地獄門のレプリカか。」「・・あれ?令ちゃん、あれまさか!」「ん?」くるっ。『・・ああっ!』
「ヨーコ・クサナギ?!」「ほ、ホンモノのヨーコさま!」「うん、本物だけど。・・知り合いだっけ?」
「あ、あの、午後の第三試合で対戦する『ゴモラの怒り』由乃です。」「あ~、なるほど。あなたがそうなのね。
よかった、対戦前に顔でも見れればとも思ったけど。」「それでわざわざ校門前に・・お手数おかけしました。」
「いえいえ、こっちの勝手だし。で、こちらは?」「由乃のスール、令です。」「スール・・ああ、そういう制度が
あるの聞いたことある。ん?」ちらっ。「それが得物?ちょいと見せて。」「はい。」ぐっ、ずるるる~っ!
「うへ~・・なげえ刀。斬馬刀か。いいかな?」「どうぞ。」ぱしっ。ずしいっ!「いいねえこの重さ。よっと。」
チキッ、ズラアアアアッ!「鞘おねがい。」「あ、はい。」シュイッ!「すげえすげえ!」ビュビュビュン!
「すごい・・生身で鬼平を軽々と。」「さすが・・」ぴしいっ!シュッ、チキン。「うん!いい刀ね。お返しに
あたしの愛刀も見せるわ。」ぐっ、ビュオン!ブワアッ!『うわっ!』ゴォォォ・・「なんて霊気・・これが
神刀『風林火山』。」「木刀なのに、名刀以上のオーラを・・」「持ってみる?」チャッ。「は、はい!」
そっ・・わしっ。ズシイッ!「なあっ!」「由乃?」「な・・なんて重さなの。鬼平より重く感じるなんて!」
「うん。木の密度がかなりあるのは事実だけど、それに加えて内に秘めた霊気圧もかなりのもんだからね。」
「令ちゃん、持ってみて。」「あ、ああ・・」はしっ、ずしいっ!「おおっ!・・こんなに重いなんて!」
「だから普通の人じゃ使えないのは、その巨刀と同じだね。」「・・やっぱりすごい、プロファイターって。」
「いいや、リングに上がればそんなもん何の役にも立たない。かくいうあたしも、リングでのし上がったんだし。」
はっ。「そうか・・あの伝説の試合。」「東方不敗マスターアジアに圧勝・・」「できるよ、あなたでも。」
ぶるぶる・・「・・やる!全力でぶつからせていただきます!」「おっし!その意気だ。それさえありゃ、あとは
何にもいらない。あたしも全力で迎え撃つ。それが対戦相手への最大の敬意。」びっ。「燃えなよ、熱く。」
黒薔薇の館。非常勤講師のアルク達は職員室が無いので、ここを控室代わりにしている。これは黒薔薇会も同意で、
どのみち午前中は留守がち(通常授業中)なので空いている。ズズ~。「マイカップまで持ち込みましたか。」
「シエルだって置いてるじゃん。ちなみにマイセンよ♪」「なんの、私のはベネチアングラス製です。・・ん?」
トントン・・バタン。『由乃ちゃん?』「ご、ごきげんよう・・」はあっ、はあっ・・「・・様子が変ですね。」
ガタン。ばたっ。「・・・・!」ぶるぶる・・「由乃さん、一時限目もう始まって・・?」ぽん。「やめとき。
ありゃとても授業受けられる状態じゃない。」「身体の具合でも?」「いや。・・心のオーバーヒートさ。」
「心・・ですか?」「そう、血が熱くたぎってどうしようもなくなる。武者震いのすごいヤツというべきかな。」
ガクガク・・「・・なにこれ?ファイトへの恐怖は無いはず。なのに・・なんでこんなに身体が震えるの?」
「・・ん。」ガタッ。カツカツ・・「由乃。」「・・アルク先生?」ぎゅっ。「あ・・」「しばらくこのままで。」
「・・はい。」フウッ・・「うん、ちょっと落ち着いたか。」「・・あらあら、けっこういい先生ぶりですね♪」
その頃、二号生教室。「・・すなわち相手の挙動は数値化および数式化することができ、それを定義できれば
未来動作の予測は数式の解に過ぎないのです・・」「・・由乃さん、来ないね。」「・・午後のファイトに備えて
コンディションを整えてるんでしょう。私だって、試合前に授業受けられるほどの平常心はできないかも・・」
「うん、そうだね。・・でも、どこでどうしてるんだろ。」「祐巳さん。」はっ。ビュッ!「はっ?!」ばっ!
ヒュン!「・・えっ?!」すこーん!「はぎゃっ!」どがっしゃーん!「・・というふうに、回避行動を予測し、
動作終了ポイントに二本目のチョークを飛ばすことができるのです。」「はう~。」「・・さすがシオン先生。」
二時限目前の休み時間。ザワザワ・・ガラガラ。「ごきげんよー!」『由乃さん!』「一時限目、フケちった♪」
「だいじょうぶ?」「無理しないほうが・・」「いいの。なんとか落ち着いたから。さて二時限目はなんだっけ。」
ガラガラ。「うぃーす。ほんじゃ真・世界史いってみよかー。・・♪」ぱちっ。「アルク先生・・ふふっ。」
余談だが、そのころアーネンエルベ城。『うわ~・・』ザワザワ・・「では三号生の皆さん、二時限目はこの
ギャラリーで審美眼の授業をしますわ。まず第一問。」ぴっ。「この絵の価格を予想してみなさい。」『え~?』
ザワザワ・・「作家が問題ですわね。」「このタッチだと・・ミケランジェロ?」「いえ・・もっとすごいわ。」
『静?』「・・ダ・ヴィンチ。」ぎょっ!「ま、まさか?」「間違いないわ。このタッチ・・ルーヴルのモナ・リザと
同じものがあるわ。」「そう・・静は実物を見てるのね。」「なら億単位か。」「・・令、十億以上にしましょう。」
『祥子?』「ダ・ヴィンチの作品一覧が家にあるの。・・知らない。この絵は一覧で見たおぼえがないのよ。」
「まさか・・未発見の作品?!」「もしそうなら、十億じゃきかないわ。」ひそひそ・・「これでいきましょう。」
「はい、ハウマッチ!」ぱぱっ。「・・ふむ、ほぼ数千万円ですの。まだまだですわね・・五十億?」ドヨッ。
「その値段の説明してもらえる?」「はい。作家はおそらくレオナルド・ダ・ヴィンチ。しかも記録に無い未発見の
作品と思われます。」ザワザワ!「解釈は大正解。でも本当の価格は百億ですわ。」オオッ!『ひゃくおく!』
「でもまあ、それだけ思いきった価格をつけたことで正解よ。この絵のモデルはアルクエイドお姉さま。個人的に
描いてもらったので、一覧には無いのよ。」「あ、あの・・それって、まさか?」「・・ダ・ヴィンチに?」
「当たり前ですわ。」ザワザワ!「はい、では次の絵。モデルは翡翠ですけど・・」「げっ!武蔵だ、あれ・・」
昼休み、黒薔薇の館。いるのはシエルと蓉子。「蓉子、ちょっと疑問があるのですが。」「何でしょう、お姉さま。」
「11機ものガンダム、どうやって入手できたのですか?」「・・ラクス様、覚えてらっしゃいますか?」「ああ・・
芸術科の。たしか代行者稼業からは足を洗って、機関の後援をしてるとか。」「メビウス重工の会長ですよ、今は。」
「ええっ?!・・そこって私のイスカリオテの元メーカーじゃないですか!」「ご存知なかったんですか?」
「ああ~・・メビウスって、けっこうありふれた企業名だから気づきませんでした。とはいえ、彼女が二十歳で
会長ねえ・・」「在学中ずっと黒薔薇会への招聘を断り独立を貫いたのが、スールの静にも影響してますね。」
「なるほど・・読めてきました。」「BGF参戦が決定してからまもなく、学園長に機体供与の申し出をされました。
そして送ってきた在庫ガンダムのカタログを見ながら、機種選定をしました。」「いわゆる不良在庫だったのですね。
それなら供与してもあまり痛くないでしょう。でも何かの見返りは要求されたのでしょ?」「はい、全ガンダムの
実戦データコピーと改造ポイントの技術情報を。技術科に対応を委譲してます。」「まずは妥当な要求ですね。
いずれも企業にはノドから手が出るほど欲しい情報です。・・そっか、あのラクスがねえ・・納得しました。」
ネオ浅草。「ほな新しいステージ衣装を買いにいこか。」「はーい。知ってる店にいいとこあります。」「どこや?」
「コスプレショップ『綾』。どんな衣装でも造ってくれるそうです。」「ほう、オートクチュールかいな。ほなら
まずそこ行ってみよか・・ん?」ぴた。・・カツカツ。「あの二人は・・」「えっと、デザイン帳はと・・」
すっ。「あら?・・ちょっと待ちなさいよミーア!」「はえ?」くるっ。「・・あーっ!メイリンさんだ!」
「そのとおり。ミーア、これより・・え?」「メイリンさーん!」がしいっ!「はぶっ!」ドガガガガーッ!
「あばばばば!」ゴォォォ・・「メイリンさん、サインください!・・って、聞いてます?」つんつん。
「あの勢いでタックルされりゃ、大の男でもこうなるわな。」「まともに受けたメイリンもまだ未熟だな・・」
「お互い、じゃじゃ馬には苦労しとんな、アスラン。」「いえいえ、バルド社長にはとうてい及びませんが。」
「・・あいたたた。」むくっ。「あ、起きた♪」「・・ミーア!あんたいきなり」「サインください!」ごすっ!
「はがっ!(色紙のカド)」「・・あれれ?メイリンさん、お疲れなんですね~。」「あう~・・」♪ピヨピヨ・・
「そろそろブレイクさそか。」「ですね。この調子だと、何かする前にメイリンが再起不能になりそうですし。」
「あいたたた・・な、なんなのよあれ。」「バルド社長によるとミーアは超常天然で、本人に自覚なくとも、
他人においしい迷惑かける性分だとさ。」「おいしいって?」「お笑い的に。ウケをとる本能があるとか。」
「ち・・お笑い要素も充実か。バラのレギュ狙ってるな。」「あのくらいじゃないと芸人と渡り合えないさ。」
「で、どこいったの?」「なんでも新曲用のコスを造るとか。」ぴくうっ!「アスラン、それ重大情報じゃない!
今のうちに調べなきゃ!」「言われなくてもうちの調査部が」「なーにゆってんの!今、私たちでやんなきゃ!」
「えっ?!」「さあ、どっち行ったの!」「三丁目のほうだったか。」「・・あの辺に気の利いた店あったっけ?」
コスプレショップ「綾」。「かしこまりました。お客様のご要望は、このような感じですね。」カタカタ、ぱっ。
「うん、そうそう。細かいとこはお任せします。」「お任せを。お客様の満足ゆくよう仕立ててみせましょう。」
「代金は前払いやったな。ほな200万円。」どん。「明日には仕上がります。」『早っ!』「迅速丁寧がモットーで。」
「なるほど、ええ店や。」「でしょ。・・あ、新作だー。」「セーラー服かや。」「聖ガブリエル女学園制服です。
それは注文品でして。」「へえ~・・あれ、なんかヘン。」「なんや?」「ほら、袖のところ。肘までスリットが。」
「捲り上げやすくしとんかいな?」「でも手首周りまで切れてない・・それにこれって、通常はバネ帯で閉じた
ままになりますよ。・・何かを通す、ため?・・」「う~ん・・わからん。」「あまりいじらないでください。」
店の外。「あれ?どこだ?」きょろきょろ。「このあたりなんだが・・」『・・あーっ!メイリンじゃない!』
「え?」くるっ。「・・お姉ちゃん!」「ルナマリアさん?」「よっ、アスラン。うちの妹が迷惑かけてるね。」
「お姉ちゃん、なんでここに?」「そりゃこっちのセリフ。いいアイドルが何してんのよ。」「いえその~。」
「ルナマリアさんは、たしかネオ横浜の会社でしたね。」「ちょっと仕事で上京したのよ。あ、ちょうどいいわ。
『Atelier de Marie』ってどこか知ってる?」『そこ。』ぴっ。「え?・・あ、なーんだ、ここか~。」
「あいかわらず土地勘悪いね。ナビ使わないと。」「ほっとけ。ほんじゃ、仕事に戻るわ。」カツカツ。
「・・お姉ちゃんも、下っぱ技術屋からいきなり重役か~。」「自分の能力をフルに発揮できて嬉しそうですね。」
「っと、ミーア見失ったか・・まあいいや、次の歌番でわかるだろ。」「よくよく彼女に興味があるんだな。」
「向こうはそうは思ってないみたいだけど、私にはわかる。・・ミーア、これからどんどんすごくなる。」
「ほう・・そこまで認めるか。ならば。」「私も負けない。ミーアという明確な指標ができて、自分が進むべき道が
わかったような気がするの。」「そうだ、ライバルは同時に最高の導き手でもある。・・闇を照らす灯台のように。」
「Atelier de Marie」。「いらっしゃいませー。」「マルローネさんですね。わたくし、こういうものです。」
すっ。「あ、ども。『メビウス重工 設計・OS技術部長 ルナマリア・イーグル』・・はじめまして。」
「さっそく用件ですが、聖ガブリエル女学園のガンダムの改造をされましたよね。」「ええ、そうですけど。」
「ご存知のとおり、素体は弊社の前身であるZACT製で、不良在庫だったものを無償供与したものです。」
「はい、知ってます。」「率直なご意見をお聞かせください。どこが悪いと思います?」「第一にデザインですね。
やたら高出力の火器を満載して、完全に機体バランスが崩れてます。あれじゃ歩行戦車のほうがまだマシですよ。」
「たしかに。・・他には?」「無意味な変型・換装システム。まあイージスほど斬新なものならまだ許せますが、
レイダーやセイバーの変型はなんですかありゃ。またストライクはまだいいとして、インパルスは完全に運用法
間違ってます。なんで合体時に未使用のミサイル投棄してんですか、もったいない。」「いえあれはブースターで、
外れた後は母艦に戻るコンセプトで」「んな手間かけるより、収納可能なブースターにすりゃ簡単でしょが!
それにシルエットシステムは、付属品で儲けようという根性まる見えですよ。」「いわゆるシoープ方式でして。」
「たく~。そんなんだから企業買収されちゃうのよ。」「ごもっともです。だから私たちメビウス重工は、
今の時代に合った商品を供給していくつもりです。」「ま、当然ですね。」「そのためにも、マルローネさんが
手がけた改造、いえ、改良点を教えていただきたいのです。」「・・やっと本題に入ったわね。まあ悪くない
前フリだったから教えたげる。」カタカタ・・シャッ。「DVD-R。これに全て入ってるわ。」「おいくらです?」
「いくら出す?」「十億円。」・・ふっ。「見る目はあるのね・・気に入ったわ。DVD-Rの代金プラス利益で120円。」
「ありがとうございます。では120円。」どさっ。「・・おい、これ1200万円だよ。」「技術料コミです。」
午後イチ、黒薔薇の館。ガヤガヤ!「三奈子、ガンダムは?」「オールクリアーです!」「由乃は?」「オッケイ!」
「よろしい。・・ではみんな、いよいよ初陣よ。」『はい!』「『ゴモラの怒り』、黒薔薇会の一番手として、
恥ずかしくない堂々のファイトを。」「ははーっ!」「サポート車には私・令・三奈子・桂。他の方はロイヤル
ボックスで応援してて。」「お姉さま、応援団は?」「あ、今回はいいですよ。サポート車がありますから。」
「ファイターとサポートクルーはガンダムで先行します。由乃。」「ハガクレバスター、起動!」ギン!
「手に乗って。」「桂さん、忘れものは無いわね?」「モニタープログラムのUSBメモリーは持ちました。」
「いいですね?飛びます。」ヒュィィーン・・「バーニアジャンプ!」ぐっ、ダーン!ドオオオーン!
アーネンエルベ城。ゴォォォ・・「お~、黒薔薇のガンダムが行くよ。」「そういえば今日が初陣でしたわね。」
「あれは由乃のハガクレバスターですね。」「斬機刀『鬼平』・・でしたか。なかなか面白い刀を使います。」
「あっはー♪私の仕込みで、腕前もグンと上がりましたよー。」「相手はヨーコ・クサナギ。名勝負の予感だね。」
「第三試合は三時からだよね。じゃ、みんなで見にいこうか。」「教え子の戦いぶり、見ておきませんとね。」
「さて今日の第三試合は注目の学生チーム「黒薔薇会」初登場です。ヨーコ・クサナギのガンダムジャッジメント対、
『ゴモラの怒り』由乃のハガクレバスターガンダム!」「ヨーコはんは以下略として、問題は学生さんやね。」
「聖ガブリエル女学園、略してガブ女は武道系が異常に強い学校で、インターハイでも常に上位にあるほどよ。」
「ほう、一般には超お嬢様学校としか認知されとらんが。」「由乃選手の流派はと・・支倉流神聖抜刀術分派・
島津示現流?!」「知っとんか、さくらはん。」「ええ。・・日本剣道界では異端中の異端、歴史の闇に葬られた
一撃必殺の殺人剣よ。」「ほう、そんなんやったか。ならヨーコはんとええ勝負になるかもな。」「そういえば、
ヨーコさんも薩摩示現流の流れだったわね・・となると。」「一の太刀から目が離せんっちゅーことやな。」
ネオ横浜・某所・・「いよいよ始まるな。」「あのクソガンダムを、よくもまあここまで手直ししたもんだ。」
「さすがは世界最高のガンダムスミス・マルローネですね。」「その技術も、いずれわが社のものとなる。」
「ちと卑怯くさい手ではあるがね。」「盗むよりは良心的ですよ。もっとも、ボクでもあそこは手が出ませんが。」
バタン。「ただいまー。・・おっ、ちょうど間に合った。」「例のものは?」「これ。」ひょい。『お~。』
「1200万で手を打ったわ。」「10億は覚悟してたが、予想外に安かったな・・本物か?」「見てみれば?」
カチャッ、カタカタ・・「11機の改造データ・・間違いない。」「ほんじゃ、さっそくラインに連絡しよう。」
「お待ちなさい。」はっ。「このファイトを観終わってからで。ニコル、記録は?」「情報部で録画中です。
同時に、TVネオジャパン中継車の入力ラインをハッキングして、未編集カメラ映像もモニターしてます。」
「さすが『見えずのニコル』ね。映像解析はOS部におまかせあれ♪」「できうるかぎりの情報を拾ってくれ。」
「では始めましょう、『プロジェクト・メビウス』第二段階を。」『ははっ。ラクス・メビウス会長。』
ザッ。「よろしくお願いします。」「こちらこそ。・・ひとたびリングに上がったからには、ここは戦場だよ。
遠慮は躊躇は自殺行為。あたしが誰だろうと、そんなことはどうでもいいこと。ただ、目の前の敵を倒すのみ。」
「むろん狙うは大金星!」「やってみせなよ!」さっ、『ガンダアアアームッ!』♪パチン!ギン!ドドドド・・
『バーニング・ガンダムファイト!レディー、ゴー!』ダッ!「斬機刀『鬼平』!」ズラアアアアーッ!ビュン!
「バスター、先制攻撃!」「なんちゅうバカ長い刀や、あら!」「ちぇすとおおおーっ!」ゴオッ!「ふっ。」
すっ、スカッ!「見切り?!」ズバシャアアーン!「もらうよ!」ブン!「なんの!」グン!スカッ!
「なっ!のけぞり回避?・・はっ?!」ビュン!「なにいっ!」さっ、ガキイイイーン!「くうううーっ!」
ザザザザーッ!・・「ふう・・あの体勢で飛ばした剣でも、このパワーかい。」「ちっ、まさか受けきるとは。」
『・・・・』「な・・なんやあれは!」「信じられない・・あの巨刀をあんな体勢から!人間技じゃない・・」
「・・ダテにでかい刀持ってるわけじゃないってことか。」「せいっ!」ビュン!「よっと!」すっ、スカッ!
くるっ、ドン!「なっ?うおっとぉ!」ばっ!ズドシャアアアーン!「やる・・普通なら真っ二つなのに。」
「な、なに今の動きは?!」「・・かわされた横薙ぎの遠心力を、体さばきで縦回転に切り替えよった。
あのバケモノ刀の特性を知悉した、見事な剣技や。」「・・そうか!あの使い方はバスタード・ソード!」
「なるほど・・日本刀と違い、バッソは剣の重さ自体を利用する。巨剣の扱い方としてはベストな方法だね。」
「はあっ!」ビュオオッ!(袈裟懸け・・受けきれない。ならば!)ダン!「踏み込み?!」「そこ!」ボッ!
バシッ!「くっ!」ぴたっ。ババッ!「つ・・裏籠手打ちとは!」ジーン・・「これが実戦の剣法よ。」
「なんや今の攻撃は?」「・・さすがヨーコさん、あの技を知ってたか。」「さくらはん、どういう意味や?」
「普通の剣道では、籠手打ちは手の甲から打つのは知ってるわね。」「それが常識やろ?」「ルールではね。
けど本来の目的においては、掌側を打つの・・そう、指をね。」・・はっ。「そか・・指を切るか潰すかして、
武器を持てなくするためか。」「一番有効なのが親指よ。他四本は一本や二本無くそうが代わりがきくけど、
親指だけはそうはいかない。考えもみて。親指無いと、どれだけ困るか。」「・・恐ろしいほどの戦法やな。」
「ウエイト。・・ギブアップか?」「・・いえ。」「・・そうか。ならば試合再開!」ユラ・・ダラ~ン。
「バスターの利き手は指が使えないはず、もうあの巨刀は握れない。なのに、なぜ?」「悪いけど、もらうよ!」
ゴオッ!「かかった。」ニヤッ。「え?」グッ!ブオオッ!ズドオッ!「なぶっ!」「胴切り、まともに入った!」
「バカ・・な・・」「私は全身サイボーグ。痛みは人並みだけど、折れたり潰れたりはしない・・金星いただき。」
「・・それは早計だねえ。」はっ!「・・まさか?!」ギギギギ!「木刀の柄で止めてる!」「へへっ、こういう
シチュは場数踏んでて・・ねっと!」ドンッ!「くっ!」ザザーッ。「ショルダーブロックでブレイク!」
「サイボーグだろうが何だろうが関係ねえ、要は打ち倒せばOK!」スッ・・ぴたっ。「正眼の・・構え?」
「あたしも木刀で戦うための術を会得してる。聞くけど、木刀の強さとは?」「・・刃で斬るのではなく、
肉を潰し、骨を砕くこと。」「50点ね。本当の強さとは・・!」ダッ!ビュン!「受け!」ギィンッ!くるっ、
パシッ。「なっ?!」「薩摩示現流奥義・陣馬斬り!」ブン!ドゴオッ!「がっ!・・」『おおっ!』
「持ち替えて柄で延髄を打った?!」「・・柄だろうが切先だろうが関係ない、ってことよ。」ズズゥン・・
「本来は馬を避けて騎馬武者を倒す技を、木刀用に改良したの。」「勝負あり、ガンダムジャッジメント!」
「由乃!」パシュッ。「・・いちちち。ちょっと脳震盪起こした・・」「さすがサイボーグだ、生身なら即死だよ。」
「うん。・・そこまで計算して、あの技を。」「全力で相手してくれたんだ、感謝しないとね。」「そうだね。」
「おーい、生きてっか?」ひょい。「ヨーコさん、ありがとうございました。」「いやいや、なかなか楽しかったよ。
巨刀の使い方も文句なし。しいていうなら、そのボディーに頼り過ぎないことかな。」「ボディー・・ですか?」
「そう。世の中には素手でMSぶっ壊すヤツなんてゴロゴロいるんだ、そういうのに当たれば・・ね。」「・・はい。」
プツッ。・・「負けたか。ま、学生であれだけ闘えれば立派か。」「だな。ガンダムもよく動いてたしな。」
「まずは期待以上の働きをしてくれましたね。」「へ~、ガンダムって、あそこまで動けるんだ。プログラムじゃ
ああはいかないな~。」「ならばこそ、今計画は有意義なのです。四銃士、ただちに情報をよく分析し、有用な
データを集めなさい。」『ははっ。』「・・いましばらくお待ちください、お父様。もうすぐです・・」ニヤッ。
君たちに最新情報を公開しよう。
黒薔薇会・第二の花は「色即是空」乃梨子。対するは「血塗られた月」のアリシア。
摩倶荼羅教呪法・幽波紋仏がアルテミスに襲いかかる。
変幻自在の奇怪な攻撃に、アリシアは己が秘術を発動する。
欧州史の闇に受け継がれてきた、暗殺貴族の恐るべき謎とは?
次回、バーニングガンダムファイト激闘編 第17話
「色即是空!紅き月の咆哮」へ、バーニング・ガンダムファイト!レディー、ゴー!!
これが勝利のカギだ!(ワラキアの夜)
第17話「色即是空!紅き月の咆哮」
一号生教室。「瞳子、アルテミスガンダムのデータある?」「もちろん。あさっての乃梨子さんの対戦相手
ですもの、総力をあげて調べましたわ。」カタカタ・・ぱっ。「航空戦仕様か・・武装は?」「固定武装は
外付け60mmバルカンポッド二基、手持ちは円月刀『紅月』。」「あれ?空対空ミサイルとか無いんだ。」
「オプションでミサイルポッドはありますけど、ファイトでは使わないようですわ。」「となると、主力は
円月刀か。・・可南子。」「・・なに?」ぬうっ。「円月刀の特徴知ってる?」「・・近接戦に優れ、
至近距離で最大の攻撃力を発揮するわ。・・裏を返せば、リーチはあきれるほど短い。」「なるほど。」
「いえ・・それだけではないようですわ。」カタカタ・・ぱっ。『これは?!』「アルテミスは円月刀を
ブーメランのように投擲する技も持ってますの。」「・・すごい。攻撃した後も、ちゃんと手元に戻ってる。」
「・・刃の形状が空力的に工夫されてるようね。まさにブーメラン。」「中遠距離もOKってことか。ファイターの
情報は?」「アリシア・シルバームーン。ネオスウェーデン軍特務中尉。出身はネオルーマニア・・あら?」
「なに?」「ワラキア貴族の血を引いてますわ。」「それってお姫さま?」「ワラキアですって!」『可南子?』
「まさか・・実在したなんて。」「どういう意味?」「瞳子、『ワラキア暗殺貴族』でググってみて。」
「え?ええ。」カタカタ・・ぱっ。「これ。このコンテンツを・・あった。」「・・『ワラキア暗殺貴族』?」
【中世暗黒時代。権力闘争にあけくれる欧州諸侯は、優秀な暗殺者をこぞって雇用した。中でも欧州一と
賞されたのが、ワラキア地方の貴族だった。高額な報酬で雇われ、戦場では敵将の首を狙い、平時には敵国に
潜入しての要人暗殺と活躍。だがその本拠はカルパチア山脈のいずこかにあるというだけで、精確な所在は
現在に至るまでも不明であり、それゆえに謀殺されることもなく、現在に至るまで欧州の夜を支配している・・】
「・・すごいですわね。」「機関でもいまだ実態を把握できてないと聞いたことがあるわ。・・まさか彼女が。」
「・・ふっふっふっ。」『乃梨子さん?』「面白くなってきたじゃない。暗殺貴族か・・顔写真ある?」
「BGF選手データベースにあるはず・・あった。」ぱっ。「どれ・・?!」ぐっ!「乃梨子さん・・なに?」
じーっ・・「・・こりゃ本物だよ。」「どういうことですの?」「二人には見えないだろうけど・・この写真、
ものすごい数の怨霊が渦巻いてる。」『えっ?』「常人ならとうの昔に悶死してるほどの・・なるほど、血か。」
「血・・?」「暗殺貴族の血脈。呪いすら己が力にする、圧倒的な霊力・・志摩子さんに匹敵するほどの。」
「強そうですわね・・勝てる?」「わからない。実戦経験豊富な軍人だし、勝算なんかハナから無いって。
ただ自分の力を出し尽くし、あとは主の御手に委ねるのみ・・聖霊と子の御名において。」ジャラッ。『AMEN。』
ガラガラ。「・・乃梨子、いる?」「あ、お姉さま。」タタタタ・・「ガンダム長屋でスパーリングの予約が
とれたわ・・ドモンさんがお相手してくれるって。」「手配ありがとうございます。」「二時半からよ・・」
「ではお昼をいつもの所でとってから八丁堀へ。」「そうね・・」「つきあいますわ。」「同じく。」
築地・要塞母艦「梁山泊」。「セーガクですか~。」「アリシア、学生だからって油断してると、とんだ大恥
かくことになるよ。」「そこまで驕りませんけど。」「・・いえ、これはプロ相手より締めていかないと、
大恥どころか大怪我するわ。」「アニー、どういうこと?」「彼女・・代行者よ。」『ええっ?!』ガタッ!
「正しくは代行者のタマゴ。件の学校、実態は代行者養成組織よ。」「・・あのシエルさんみたいなのね。」
「マコはちょっと知ってるんじゃない?」「ええ。・・代行者はルール無用のテロリストや邪教集団に対抗すべく、
それら以上の実力と残虐さを併せ持つ。いっさいの躊躇や動揺、死すら眼中に無い。行動原理はただひとつ、
教義に弓引く者を殲滅すること。連中にとって敵は人でなく『悪魔』だから、殺戮に微塵の感傷も持たないの。」
『・・・・』「・・ふふふふ、上等じゃない。」『アリシア?』「私も似たようなもの。なにせ実家代々の稼業は
刺客だったもの。」「・・そういえばアリシア、トランシルバニアの出だったわね・・まさかワラキア貴族?!」
「ぴんぽーん。欧州暗黒史に隠然と輝く暗殺貴族・・それが父方の実家よ。」キラリ。「面白くなりそうね。」
「アニー、対戦相手のもっと詳しい情報ある?」「一年生『色即是空』乃梨子。流派は摩倶荼羅教呪法。」
『呪法?』「くだいていえばシャーマンね。」「呪術ファイターなんて初めて聞くわ。どんな闘い方するの?」
「戦闘記録は無いですけど想像はつきます。私が水、レイちゃんが火、マコちゃんが電気を使うように、何らかの
媒質を使っての攻撃が想定されます。」「いえ、もう一人いるわ。呪術的ファイターが・・由美子・マリガン。」
はっ!「あの見えない攻撃!」「あれは不可視エネルギー塊みたいなもの。・・たしかに、そのセンもありそう。」
「アリシア、午後からガンダム長屋へスパーリングに行くよ。」「はい。」「午後三時に予約しといたから。」
お昼、講堂裏手の桜の木の下。サラサラ・・「この木の下でのお昼がいいですね。」「ええ。・・落ち着くわ。」
「この桜、年中満開ですわね。」「東京名物『呪い桜』・・皇居跡が群生地だけど、ここに一本だけあるとは
知らなかったわ。」「・・あ、いたいた。」『祐巳さま?』「可南子さん、ダウト!」「あっと。・・お姉さま。」
「う~ん、まだ慣れないな~。しばらくはいいよ。」「いえ、そういうわけにも・・使い分けに困るし。」
「お互い慣れていこうね。さてと、お弁当。」ガサッ。「祐巳さま、またコンビニ弁当ですの?」「そうだけど?」
「・・お体によくないです。」「朝に作るほど早起きできなくてね~。」「・・私がまとめて作ってあげるって、
前から言ってるのに・・」「志摩子さんや由乃さんの気遣いはありがたいけど、そこまで厚かましいのは、ね。」
『ならわたくしが!・・え?』はっ。「いいよいいよ。余計な負担かけさせたくないし。」「名案がありますよ。」
「乃梨子・・なに?」「可南子と瞳子、日替わりで作るんですよ。それならさして負担にならないし、片方のを見て
自分のもがんばる励みにもなる。すなわち『お弁当バトル』!」「なにそのバトるって・・」『激しく同意!』
「え"?」「グッドアイデアですわ。さすが一号生筆頭!」「・・本来はスールのお役目。瞳子には負けない。」
「わたくしだって、可南子さんには負けませんわ!」バヂバヂ!「ほら、やる気まんまん。」「あ、ははは・・」
「では明日の当番を決めましょう。」「よろしいですわ。」・・!『じゃんけんぽん!あいこでしょ!』
「・・乃梨子は、あの二人の性癖を心得つくしてるのね・・」「毎日あの調子ですから、イヤでもわかりますよ。」
「でも乃梨子ちゃんって、一号生筆頭だったの?」「引き受けてもいないのに、勝手にみんなそう呼ぶんですよ。」
「・・そうね、たしかに凛々しくて真っ直ぐで男らしいものね・・」「ちょっと待て、最後のヤツはなんですか?」
「あははは。この分だと聖さま・令さまの後を継いで、ミスター・ガブ女になるかもね。」「え"~、それヤだ。」
カツカツ・・「懐かしいわ。・・講堂裏の銀杏林も健在かしら?ちょっと時間あるから寄っていこうかな。」
ザッザッ・・『じゃんけんぽん!あいこでしょ!』「あら?なにやら賑やかな声が・・お昼どきだしね。」
ひょい。「勝ったー!」「くっ・・明後日に万全で臨む。」「うふふっ、一号生かしら?初々しいわ。」
ザッザッ・・『あれ?』「・・OL?」「卒業生の方じゃ?」「ごきげんよう。」『ごきげんよう。』キラッ。
「黒薔薇の記章・・黒薔薇会の皆さんね。」「はい。卒業生の方ですか?」「ええ、二年前に。・・見知った顔は
いないわね。」「はあ、ここにいるのは二号生から下ばかりですので。」「『無限の輪廻』ラクスといいます。」
「ええっ!・・あ、あのラクス・メビウス様!」「志摩子さん知ってる?」「ええ・・静さまのグラン・スール。」
『静さまの?!』「お姉さまに聞いたことがあります・・学生時代から任務を務めた、当代最強の代行者。」
「あなたのお姉さまって?」「私ですよ、ラクス先輩。」ザッ。『聖さま。』「まあ、ひさしぶりね、聖。」
「先輩もお元気そうで。今日は?」「学園長にお話があって。」「静はいま呼びに行かせました・・ほら来た。」
タタタタ・・「・・お姉さま!」「静、お元気でした?」「・・お姉さま!」バッ!『うわ~・・』「静さまの
あんな姿、はじめて・・」「ほらほらみんな、散ったちった。ジャマだから。」『あ、はい。』シュシュッ。
「さすが黒薔薇会、引き際も鮮やかね。」「・・お姉さまが一年前に足を洗ったと聞いたときは驚きました。」
「勅命により、野に下って法皇庁を支える仕事についたのです。今は実業家やってるわ。」「そちらの方が
似合ってると思います。」「自分でもそう思うわ。・・こんな桜の木は、以前には無かったわね。」サラサラ・・
「あの災害で生まれた『呪い桜』の一つです。校内で手軽に花見ができるので、生徒たちにも評判です。」
「さっきも団体さんがいたしね。・・そういえば、黒薔薇会に入ったって聞いたけど。」「いえ、あくまで
BGF期間限定の客員です。」「そう・・あの人見知りする泣き虫静が、ようやくここまで成長したのね。」
「・・たしかに、お姉さまが卒業されてからの半年は、音楽室で一人で泣いてました。・・けど、聖さまが
救ってくださったんです。」「だったらそのままスールになればよかったのに。」「いえ。・・私のお姉さまは
お姉さまただ一人。それに聖さまも、私をスールにすることをためらいました。」「・・栞のことがあったしね。」
「つかず離れず・・その距離が私には心地よかった。いつもいないのに、いてほしい時には必ずいてくださる。
正義の味方みたいな方です。」「うふふふっ。やはり聖は今も、不器用で傷だらけのヒーローなんですね。」
黒薔薇の館。「『無限の輪廻』ラクス様・・懐かしいわ。」「お姉さまが一号生のときに四号生だったんですね。」
「ええ。けど黒薔薇会ではなかったの。」「え?・・実力も人気もありそうですが。」「静と同じよ。人を統べる
器じゃないって。・・いま実業家なら、とんだ逃げ口上だったのね。」「静さまのスールとなると・・芸術科?」
「そう。パイプオルガン奏者として客演の仕事もたびたびあったわ。睨下の御前で演奏されたことも。」
『へえ~。』「すごい方なんだ。」「でも音楽のほうではあまり聞かないですわ?」「卒業して半年は本部で
代行者として働いてたけど、諸々の事情で退職。いまは実業家やってる。」「へえ~、どんな会社ですか?」
「知ってるはずよ。・・メビウス重工。」『えっ!』「それって・・私たちのガンダムの。」「元メーカーさ。
ラクス先輩が寄贈してくださったんだ。」「そうだったんだ・・」「先輩にお礼言いたいですね・・」
「ムリね。ラクス様、黒薔薇会とことん嫌ってたし。なにせ在学中一度も館に入らなかったと聞いてるわ。」
「?・・それでは話が合いませんが。」『それは私が説明しましょう。』はっ!『・・ラクス様!』ザッ!
「ホント、いまごろになって始めて入ったわ、この館。・・思ったほどドロドロしてなくて安心したわ。」
「ラクス様、ごきげんよう。」「祥子か~。蓉子と江利子と令は?」「そろそろ来るころでしょう・・ほら。」
トントントン・・『・・あら?』『来客かしら。』『こんな時間に珍しいですね。』『誰でしょね~?』
さっ。『・・ラクス様!』「え?(由乃はわからん)」「由乃、かくじか・・」「ええっ!ご、ごきげんよう!」
「三人とも貫禄ができてきましたね。」「この度はガンダムの寄贈を感謝します。」『ありがとうございます。』
「在庫処分のついでだったから。」「にしても、あれだけ黒薔薇会を『烏合の衆』と毛嫌いしていた先輩が、
どういう風の吹き回しで?」「理由は簡単、昔の私はバカだったからです。・・社会に出ても、何でも一人で
出来ると思ってた・・けど、そんなに甘くなかった。そんなとき、ある人物と出会い、信頼できる仲間の大切さを
実感したのです。そして今回のBGF参戦の話を聞き、何かお手伝いがしたかったのです。」「・・それだけ?」
『聖さま?』「・・どういうことかしら?」「いや、独り言さ。客観的に感謝はしてるしデメリットは無い。
だから問題なし。ただ・・私たちは二年は先輩のことを見てた、ということをお忘れなく。」「・・なるほど。」
館の外。カツカツ・・「ひさしぶりですね。」ぴくっ。くるっ。「シエル・・」「あなたの腹の底くらい、私や
四号生にはミエミエですよ。黒薔薇会を利用してガンダムの実戦データを取る。以前にイスカリオテを寄贈して
くれたときも同じことを考えたようですけど、上層部が保安を理由にデータを渡さなかった・・でも今回は
うまくいきそうですね。」「不良在庫とはいえガンダム11機、そのくらいの見返りはむしろ当然でしょ。」
「そのとおりです。だから責めるつもりはありません。ただ・・知ってて踊ってあげてるということです。」
「・・聖はそれを言いたかったのね。」「ま、協賛してくれてる間は今の良好な関係を維持しましょうね。」
「シエルも相変わらず食えない性格ね。」「でないと黒薔薇の頭は務まりませんよ。それに・・」ちらっ。
『わたしの遊び相手もね。」ざっ。ぎょっ!「・・アルクエイド。」「しばらく見ないと思ったら、けっこう
稼いでるみたいね。腕はどう?」「・・確かめてみたらどうです。」「いえ、その必要なし。・・あれから
かなり場数踏んだか。」「認めてくださるんですか?」「腕はね。中身は・・こりゃ直しようがないか。」
「性分ですので。では。」くるっ。「また、ね・・」カツカツ・・「・・とんだ鬼子に育ったもんだ。」
「よくご存知のようですね。」「まあね・・昔は素直だったのに、すっかり性格ゆがんじゃったな。」
「あの偽善者ぶりは高校時代のまんまですけどね。」「親の愛が足りなかったせいかな~。」ぽりぽり。
ガンダム長屋。ここんとこミーアは毎日のようにスパーリングに来ている。ばくばく!『あらら~・・』
「欠食児童のように、よく食べるな。」「バルド社長、ちゃんとご飯食べさせてるの?」「そらもちろん。
飯と汁と漬物の一汁一菜で。」すぱあああーん!『戦国時代かい!』「それならこの食欲も納得ね。
ミーアちゃん、遠慮せずにバンバン食べていいのよ。食費はあとでこのバカ社長からとっとくから。」
メキメキ!(コブラツイスト中)「いでででで!」「はーい。おかわり。」さっ。「オッケイ。」ぱんぱん。
外の通り。「アスラン、ガンダム長屋ってどこなのよ?」「住所が公表されてないから、いろいろ当たって
どうにかこの辺とまで絞れたけど・・それらしい設備って無いね。」「ミーアがこの辺にいるはずだけど・・」
ガヤガヤ。『・・うわ~、ギリギリだ。』『・・乃梨子、ドモンさんがお待ちのはずよ・・』ぴくっ。「ドモン?」
「あのドモン・カッシュか。」「・・おし、アスラン、あの学生を尾けるよ。」「わかった。」ささささ・・
「?・・尾行者です。」「二人、ですわね。」「・・尾け方がシロウト、敵意も無いけど・・瞳子ちゃん。」
「おっけい。ロザリオアニマル。」ぽいぽい、カチャカチャッ。「・・?」くいくい。「なんだ?・・なっ!」
グイグイ!「な、なにこれ?!あ、やだちょっと引っぱんないで!」「この!」ブン!ひょい、タタタタ・・
「な、なんだったの・・」「よくわからなかったが・・はっ?!」こつぜん。「ど、どこいったの?!」
『いらっしゃいませー。』『本日のバーゲン品はカレールウの大、200円でーす。』「くっ・・見失った。」
『たのもー。』「あら?・・あ、こっちよこっち。」『あ、そちらでしたか。』タタタ・・『ごきげんよう。』
「お待たせしました?」「いや、ちょうどいいくらいだ。呪術師と聞いたが、俺も初めてのタイプで楽しみだ。」
「では胸をお借りします。」「連れのみんなは、こっちのベンチで観戦よ。」『はーい。・・ミーアさん?』
「はーい。すっぴんなのに、よくわかりましたねー。」「いえ、前にその格好で会ってるんですけど・・」
ザッ。ジャラッ。「・・数珠?」「先手をどうぞ。」「ならばいくぞ!」ダッ!ゴオッ!「地蔵菩薩守護壁!」
びたあっ!「なにっ?」「ドモンが止められた?!」「千手観音連撃!」ドドドドッ!「なっ!」ばっ!
ドガドガドガッ!「不動明王昇竜剣!」ゴオッ!「うおっ!」グン!ヒュゴオッ!くるくるっ、ザザーッ。
「ふう・・なんて技だ。」「すごいわ・・指一本動かさずにあれだけの攻撃を。」「こいつは面白い。ならば!」
フッ・・「消えた?」「帝釈天全方眼・・!」ボッ!「もらった!」ゴオッ!『月光菩薩水月影・・』
スカッ!「なにいっ!」「うつせみ?!」ぴくっ!「そこだ!」ドン!「裏拳?!」ジャラッ!ガキイイーン!
「・・ふう。」「ここまでだ。・・面白かったぞ。」「見抜かれましたか・・」「むしろ本能に近かったがな。
あと百分の一秒反応が遅ければ、決定打を食らうとこだったぞ。見事だ。」「ありがとうございました!」
『うわー!』ぱちぱちぱち!「大健闘でしたわ、乃梨子さん!」「お見事でした。さすが一号生筆頭。」
「だからその筆頭某はやめろって。」「・・技の目合わせもできたようね・・」「はい、なんとか。これで
本番への準備ができました。」「ちょうどオヤツどきよ。チボデーとこからもらったビーフジャーキーをどうぞ。」
ふたたび外の通り。「う~・・このあたりなのは間違いないんだけど。」「メイリン、もうあきらめたら。」
「いーえ、あと少しなの。あと一つ、何かの手がかりがあれ・・ば?」じーっ。「なんだ?・・あ、あれは。」
『・・だからさ、投げ方もいろいろ工夫したほうがいいよ。」「やっぱサイドスローだけじゃ読まれますかね。」
(アレンビー・ビアズリーよ。)(ここにいるということは、長屋へ行く可能性が高いな。)(チャンス。)
くるっ、カツカツ・・「入った!あの路地ね。」たたっ。「こことは思いもよらなかったな。」「行くわよ!」
「ちぃーす。」「お、アレンビー。」「時間どおりね。」「軍人だもの、時間厳守。で、こちらが件の部下よ。」
「改めてアリシア・シルバームーンです。」「そういや以前に来たっけか。」「え?・・アリシア?」くるっ。
『・・あーっ!』「明日の対戦相手の学生!」「ご、ごきげんよう!」さっ。「あ、はい、ごきげんよー。」さっ。
『あはははは!』「やっぱり。つられて言っちゃうのよね~。」「ちょっとした流行語になりそうだな。」
「でと、さっそくスパってやってほしいんだけど。」「いや、それより面白いことを思いついた。師範代。」
しーん・・『師範代って・・だれ?』「こらお前だ、ミーア。」「・・はえ?」「働かざるもの食うべからず。」
「えっ?このアイドル歌手とですかぁ~・・」「アリシア、こないだの試合見てないの?・・彼女、強いよ。」
「ま、一宿一飯の恩義は大事にしなきゃね。腹ごなしにいっちょやりますか。」ぽきぽき。「やってみます。」
ザッ。「華奢な軍人さんですね。」「飛行機乗りだからね・・得物はやめとく?」「いえ、全力でないと有意義な
スパーリングになりませんよ。」「へえ・・いいこと言うね。では。」シャリン。「紅月!」シュバババッ!
「投剣ですか。」ゴオオオオーッ!「・・よけない?」「半月!」ビュッ!パキィィーン!『おおっ!』
「排蓮脚で弾いた!」クルルッ、ぱしっ。「ふーん、いい剣ですねー。」「返しなさいよ。」「では。」ぐっ。
ドヨッ!『あのフォームは?』ザッ・・ヒュバァッ!「なっ?!」ヒュバアアアーッ!「この変化は?はっ!」
ぱしいっ!「ふ~・・なんとか受けれた。」「師範代と言った理由がわかったか?ミーアのセンスは天才的だ。」
「はい・・おかげで新技のヒントが見つかりました。」「お役に立ててよかったです。」「やるわ・・」
じーっ・・「・・乃梨子、どう?」「何とかなります。つまらない試合にはしません。」「それで充分よ・・」
長屋の陰。「・・ミーア、どんどん強くなってる。」「場数を踏むほど経験値は上がるさ。しかしあれは・・」
「まずい・・今のペースじゃ追いつけない。」「ならば手はひとつ、強い相手と手合わせすることだ。」
「ファイターの知り合い、いる?」「う~ん・・あちこちなんとか当たってみよう。」「頼むわ、アスラン。」
ばさっ!『なっ?!』ギュイーン!「曲者じゃ、出会え出会え!」『なんだなんだ。』どかどか。「半蔵さん、
この二人は?」「長屋の陰に隠れて様子を見ておった。」『いえだからその私たちは!』「・・メイリンさん?」
「それにジャーマネのアスランやないか。」「知り合いでござったか?」ぷつっ、どさっ!「あててて・・」
「なにやっとんや、こないなとこで。」「あ、いえその、いろいろ事情があって。」「道に迷っただけです。
いやー、社長がいてくれて助かりました。では失礼。」どぴゅーん!・・「・・なんだったんだ、あれ。」
「どうせミーアの動向が気になってしかたないんやろ。」「ん~・・なんでですか?」ずるどしゃーん!
「あ、あのね、こういうのは答えはひとつしかないでしょ。」「レインはん、ムダや。ミーアそういう話は
まったく聞かん娘やきに。」「♪今夜のロケ弁、どんなんっかな~。」「・・芸能人って、すごい・・」
その夜、勝宮寺。乃梨子は通学のため住み込んでいる。部屋は志摩子といっしょ。カタカタ・・「・・乃梨子、
そろそろ寝ましょう。」「あ、はい。いま日記をセーブして・・と。」タン。「これでよし。」バサバサ。
「・・毎日まめに書いてるのね。感心するわ・・」「記憶を整理するのにいいんです。今日学んだことを再確認
できますし。」「そう・・えらいわ。今日得た知識は?」「リングに立つことの価値です。あのミーアさんも、
一度リングを経験したことで、以前より格段に技のキレが上がってました。リングの上で得るものは多い・・」
「・・そうね。由乃さんも、あれ以降は雰囲気が変わったわ。一皮むけたとでもいうのかしら・・凛々しさや
気品がぐんと増したわ。」「はい。・・私もそうなりたい。いえ、そうなれるようなファイトをしたい。」
「だいじょうぶ、乃梨ちゃんなら・・」すっ・・きゅっ。「お姉さま・・おやすみなさい・・」きゅっ・・
同時刻、梁山泊ラウンジ。「・・・・」「おや?アリシア、なーに黄昏てんの。」「リーダー・・BGFって、
何なんでしょうか。」「どういうこと?」「今日のスパーリングで驚いた・・一試合でシロウトがあんなに
変わるなんて。」「なるほど。でも誰にもありえることじゃない。大事なのは、何かを学ぼうという姿勢よ。」
「でもシロウト相手じゃ」「たわけ。そう侮って楽勝したヤツなんかいないよ。リングの上では常識なんか
何の役にもたたない。ただあるのは、どれだけ自分を出しきれるか・・それが出来たほうが勝つ。それだけよ。」
「・・自分を出しきる。」「言い切れば、対戦相手すらその為のパートナーともいえるわ。勝敗は二の次よ。」
「戦争とまるで違うんですね。」「そう。だから職業軍人ほど戸惑うね。・・ま、いい経験になるでしょう。」
次の日、一号生教室。ガラガラ。「ごきげんよー!・・っと?!」ずらっ!『乃梨子さん、ごきげんよう!』
「な、なんだぁ?」「ほんの壮行会ですわ。」「・・声をかけたら、一号生みんな集まってくれたわ。」
「いえいえいえ!そんなのいいって!」「手遅れですわ。はい。」『フレーフレーの・り・こ!』パンパパパン!
「おおっと!」たじっ。「さ、お言葉を。」「てめえらな~・・おっし!」ざっ!「この度は、不肖わたくしの
壮行に集まってくださって感謝いたします。今日の試合、一号生筆頭にふさわしい立派な闘いをお見せしますので、
負けても怒らないでね♪」ぱちっ。『あはははは!』「乃梨子さん、慣れないことはやめたほうがいいですわ。」
「・・男らしいのがデフォなんだから。」「あのな・・勝手に決めるなあああーっ!」『うわっ!』ドドドド!
「・・あの三人、いいコンビよね~。」「トリオ漫才がハマってるね。」「黒薔薇会、三年向こうまで安泰ね。」
「さて!今日の第二試合はガンダムアルテミス対、シャカプロヴィデンスガンダム!」「実況と解説は以下略な。」
「アルテミスはネオスウェーデン軍特務部隊のアリシア・シルバームーン中尉。これってアレンビーさんとこ?」
「そや。アレンビーはんが少佐で、その部下やね。」「へえ~、少佐って大隊指揮官でしょ、すごいな~。」
「とはいえ、前回大会での功績による名誉特進やきん、あんまご利益無いって本人もゆっとったな~。せいぜい
基本給がようなったくらいやて。」「あら。で、中尉は元戦闘機パイロットだったのね。」「経歴によるとや、
トップガン中のトップガンやったらしいな。」「なんで空軍にいなかったの?」「性格やね。上官にも遠慮なく
噛みついて、干されたて。」「あー・・いるいる。こと腕がいい人ほど、そういう傾向あるものだわ。」
「アルテミスは空戦仕様やな。」「十枚の白い翼・・まるで大天使ね。」「あれみんな独立制御できるそうや。
空中機動性はVTOL以上やろう。」「でもリングじゃ飛行可能体積は限られてるわ。どうやって戦うんだろ?」
「ほな次はシャカプロヴィデンスや・・長ったらしな~。」「略してシャカでいくわよ。学生チーム『黒薔薇会』
第二の戦士ね。」「『色即是空』乃梨子・・ガブ女てカソリックやろ。なんで仏教なんや?」「仏教もいろいろよ。
彼女の宗派はキリシタン信仰と融合した摩倶荼羅教。」「なるほど、なら納得や。・・あんま聞かん宗派やな。」
「公には認められてない異端中の異端。一般には存在すら知られてないそうよ。」「時代が時代なら、いの一番に
弾圧されとるやろうしな。」「戦闘スタイルは?・・呪法?」「こら・・今までにまったく無いタイプや。」
「ガンダムで何かわからないかな。」「そやな・・な、なんやこら?!」「蓮台に結跏趺坐・・仏像?」
「・・マンダラまで言わんが、異様なガンダムやな・・」「光背まである・・ますますわからなくなったわ。」
ネオ横浜・メビウス重工。「あのプロヴィデンスがああなるとは。」「さすがに思いもよらなかったな、こりゃ。」
「呪術仕様というのは注目に値しますね。」「あとでもらうデータが楽しみね。」「日本カソリックの知られざる
守護者、摩倶荼羅教・・その秘法は貴重なデータになります。四銃士の皆さん、しっかり応援しましょうね。」
ザッ。「・・あれ?」どん。「・・・・」「いきなり座禅とは見せてくれるわね。・・始めちゃっていいかな?」
「よろしいです。」「アルテミス、メイクアーップ!」「御吉利吉利吽発多!来光、シャカプロヴィデンス!」
ギン!ドドドド・・『バーニング・ガンダムファイト!レディー、ゴー!』「フライト!」バサアッ!ゴオオーッ!
「アルテミス、いきなり制空権をとった!」シャリン!「まずは小手調べ。紅月・・」『愛染明王天弓覇!』
「え?」・・ヒュババババッ!「な、なに?」ドカカカカカッ!「きゃあっ!」「なに?アルテミス失速!」
「なんや?・・み・・見い!」「?・・えっ!」オォォォ・・「・・あの影は?!」「・・スタンドや。」
ヒュルルル・・「くっ!」バサバサアッ!ザシャッ!がくっ!「な・・なに?この矢に刺されたような痛みは!」
「念エネルギーの矢です。傷こそできませんが、実際に刺さったのと同じ痛みはあります。」「・・なるほど。
学生と侮ったつもりはなかったけど・・!」ドン!「全力で倒すのが礼儀よね!」「アルテミス、強襲攻撃!」
「その首もらうよ!」ビュン!「はっ!」ジャラッ!ガキィン!「数珠?!」「千手観音連撃!」ズドドドッ!
ドガガガガッ!「がはっ!」・・ズダダダーン!ゴォォォ・・「す・・すごい!」「なんちゅう強さや!しかも
よく見い、試合開始から一歩たりとも動いとらんで!」「てか、あれじゃ動くに動けないと思うんですけど。」
「・・そか、わかったで。シャカは動けんのやない、動かんことを前提にしとるんや。」「ええっ?!」
「ゆえに対戦相手は自分の間合いで戦おうとする。やが、いま見たとおり、シャカは全ての間合いを制する
豊富な技を持っとる。そう・・まさにお釈迦様の掌の上で右往左往する孫悟空と同じや。」「それでシャカ・・」
「く・・これがBGFか。」ググッ・・ザン!「面白いわ・・今までのどんな戦いより。」「・・あなたの実力は
そんなものではないはずです。さあ、全力をもって私を倒してください。」「言われずとも。・・はあっ!」
シュババババッ!「無数の円月刀が!」「こら回避不能や!」「・・弥勒夢想陣。】スゥ・・スカカカカッ!
『なあっ!』「・・透過した!」【・・夢にはいかなる攻撃も無意味です。】「夢なら攻撃もできないわね。」
【醒めればいいだけです。】キラリ。スゥゥ・・「・・!」シャッ!「アルテミス、わずかなスキを突いた!」
「シロウトが、あまいよ!」「それはどっちですかね?読みどおり動いてくれました。」カッ!「なっ?!」
「因陀羅轟雷撃!」ピシャアアアーン!バリバリバリ!「きゃあああああーっ!」ダダーン!「南無阿弥陀仏!」
「カウント!ワン、ツー・・」「ダメだ・・勝てないよ・・」「戦意喪失?」「無理もないわな。けど。」
【喝あああーつっ!】『うわっ!』キィィ~ン!「はっ?!」「な、なんじゃ?」『・・シャカ?』
「なんですかそのザマは!あなたは最後まで力を出しきることなくあきらめるというのですか!それで祖先と
背負った怨念に申し訳が立ちますか!」はっ。「私の・・宿命。」「さあ、もう一度立ち上がってください!
そして私を打ち負かしてください!」「おぬし・・むっ?!」ググッ!「・・よく思い出させてくれたわ。」
ザン!「セーフ!」「アルテミス、叱咤に押されるように復活!」「そう、私は誇り高き暗殺貴族の末裔。
欧州の闇を駆ける華麗なる影の一族よ!こんなこと、祖先は何度となくかいくぐってきた!そう、私もまた!」
ギーン!「ハイパーモード・・お見事です。ならば!」ギーン!「シャカもハイパーモード!」「はぁぁぁ・・」
「アノクタラサンミャクサンボダイ・・」キィィイイイ!「はあっ!」ドーン!「アルテミス、猛突撃!」
「これで決める気や!」「釈迦!御来光!」カアッ!・・ドグオオオオーン!『うわああああっ!』がばっ!
ガタガタガタッ!「か、核爆発?!」「・・念や、念波動を爆発させたんや!」「これじゃアルテミスは!・・」
ゴォォォ・・「南無・・はっ?!」ぞくっ!「まだ終わってない!」『そのとおり!』はっ!・・ゴオオオーッ!
「アルテミス、頭上はるかからヘルダイブ!」「あの爆発を急上昇でかわしたんや!」「これで決める!」
「対空迎撃!不動明王昇竜剣!」ビュオオオッ!ズバシャアッ!「真っ二つや!」「・・いえ!」バサササ・・
バサッ。「ウイングユニットだけ?・・しまった!」ばっ!ビュオッ!ガツッ!「くっ!・・」ぴたっ・・
「はあっ、はあっ!・・」「アルテミス、いつの間にかシャカの背後をとっていた!」「円月刀が首に完全に
かかっとる!決まりや・・」「根来忍法・比翼の術応用『ワラキアの夜』・・」「なるほど・・あの翼が闇夜、
それに惑わされ、赤い月『紅月』の餌食に・・お見事・・」「感謝するわ。私の魂を呼び覚ましてくれて・・決着。」
シュピィッ!ズル・・ゴトン!「勝負あり、ガンダムアルテミス!」「はあっ!」がくっ。「この技・・疲れる。」
タタタタ・・「乃梨子!」「乃梨子さん!」パシュッ。「あいたたた~。ホントに首チョンパされた気分・・」
「よくがんばったわ・・」「すっごく強かったですわよ!」「・・見ててゾクゾクしたわ。」「う~ん、中盤まで
けっこうラクだったけど、途中で思わずハッパかけたのが敗因かな。」「いえ・・あれはあれで立派なことよ。」
「そうですわ。あのときが一番ジーンときましたわ。」「・・すばらしいフェア精神よ。感動したわ。」
「いやいや、性分なだけで。」「そこが乃梨子のいいところよ・・男らしいわ。」「だから~。女の子だって。」
『おーい。』『ん?』「アリシアさん?よっと。」ザッ。がしっ!「ありがとう!」「はい?」「あなたの叱咤、
心に響いたわ。おかげで自分の納得いく闘いができたよ。」「はい。最後の技は本当にお見事でした。」
「いやその~、あれけっこうヒキョーくさくない?」「いいえ、立派な技です。すっかりだまされました。」
「ん~・・なんか勝っても自分的に反省しきりで。」「その反省が次にさらに強くなる第一歩ですよ。」
「いいこと言うな~。ね、うちの隊に入らない?高待遇は保証するわ。」「あんた自衛隊ですか。あいにく
間に合ってますので。」「惜しいな~。・・で、明日ちょっと付き合ってくんない?」「入隊テストなら
受けませんって。」「ちゃうちゃう、私の宗教もマイナーな古神道だから見せときたいと思ってね。」
パチパチパチ。「すばらしいファイトでしたわ。」「対戦相手を叱咤激励か。いかにも学生らしい純粋さだ。」
「汚れきった俺たちなら、嵩にかかって攻めたてるところだろうがな。」「あれでいいんですよ、若いうちは。」
「うー、いいないいなー。若いってすばらしいなー。」「ルナマリアだってまだ24でしょ?」「そこまでいけば、
立派なオバサンだ。」「イザークてめえ!オバサン言うな~!」「そういうとこがオバタリアンなんだよ!」
ギャアギャア!「今回のデータは明日に受け取りに行きましょう。」「また会長自らですか?ボクたちに任せて
いただければ。」「男性は論外、ルナマリアも卒業生じゃないでしょ。なら私が行くのが手っ取り早いです。」
「とかいいつつ、学校の近所のなじみの店とか行ってるんじゃないすか?」「当然でしょ。それも楽しみよ。」
次の日、新橋・航空神社。「へ~、ここがウワサの。」「・・学校のすぐ裏手にあったの、知らなかったわ・・」
「ビルの屋上じゃ、わからないのも無理ないわ。」ぱんぱん!『・・・・』「よしと、拝礼おしまい。」
「・・飛行機と神社って、ギャップがすごいわね・・」「鉄のハリボテが空飛ぼうってんだから、そうなると
最後には神様しか頼りどこがないのが現実よ。もっとも、その前に人事を尽くす大前提が欠かせないけど。」
「あー、某航空会社はそこんとこ間違えて落ち目になったんでしたね。」「そゆこと。そしてここの御神体が
あの八咫烏さま。」「お~、足が三本あるカラス。」「・・WC日本代表のシンボルにもなってたわね・・」
「それそれ。あれよく採用してくれたわ~。あの当時はちょっと参拝客が増えたって。」「ちょっとですか。」
「・・そういえば、根来忍法とかおっしゃってましたけど・・」「そう、私には日本の血が流れてるの。
曽祖父が根来忍者だったわ。」「へえ~、あの。」「うちのメンツは日欧混血が多くてね、あと風魔と
壱岐水軍がいるわ。」「まあ・・二次大戦前後に数多くの忍者がヨーロッパに渡ったとは聞いたけど・・」
「ゲルマン忍法の素地になったんでしたよね。」「それは中野学校系の甲賀衆。根来衆は主に連合軍に属して
東欧で後方攪乱とソ連に雇われた裏柳生と戦ってたわ。」「・・第二次大戦って、忍者大戦だったんだ。」
君たちに最新情報を公開しよう。
黒薔薇会・第三の花は「黒きマグダラ」祥子。対するは「銀河の女帝」クレオパトラ。
百人一首とタロット、東西カードの大空中戦。
しかもいずれも呪符魔術を使い、リングは魔戦場と化す。
だが祥子の意外な盲点がダークレイダーの危機を呼ぶ。
ギャラクシーの秘法「22の扉」に崩れ落ちるその耳に、祐巳の叫びがとどく!
次回、バーニングガンダムファイト激闘編 第18話
「黒きマグダラ!天使の切り札」へ、バーニング・ガンダムファイト!レディー、ゴー!!
これが勝利のカギだ!(第六十首 小式部内侍)
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第18話「黒きマグダラ!天使の切り札」
黒薔薇の館。「はあ・・」「お姉さま、どうしました?」「祐巳・・わたくしの相手、クレオパトラ様なの。」
「ああ、あのアレクサンドラグループ会長の・・あ。」「そう。父の上司に当たるの。」「そっか・・お姉さまの
お父様、グループ日本事業部長ですよね。」「直接の上司はナディア様だけど、クレオパトラ様はその上・・
勝敗で父の業務に差し障りがないかと心配なの。」「祥子、その点の心配は無用じゃないかと思うけど。」
「蓉子さま?」「あの『銀河の女帝』は、そんなケツの穴の小さいこと考えもしないわよ。おそらく祥子が
そういう関係ということすら自覚すらしてないんじゃない。」「そうでしょうか?」「巨象がアリの心配を
するとでも思ってる?」むっ。「どういう意味ですか!」「その程度の問題だということよ。ま、巨象に怯えて
ジタバタするのはアリの勝手だけど。」「く・・」「つまり、そんなこと考えるだけムダだってことよ。」
「うわ・・」おろおろ。「祥子、悪い意味で考えすぎよ。そんなことより、もっともっと大事なことあるでしょ。
第一に、アルカナの司令塔『銀河の女帝』に勝てるの?史上最強の戦闘集団を率い、強大なデビル軍団相手に
真っ向勝負を挑む『女帝』に。」キラッ。「お姉さま・・」「どう倒すか見せてもらうわ。・・試合まであと一日、
やるべきことをやりなさい。」「・・わかりましたわ。祐巳、ガンダム長屋へ行くわ。」「は、はい、お姉さま。」
「・・同行いたします。」「同じく行きますわ。」ゾロゾロ。「がんばってね~♪・・瞳子ちゃんて、あの組に
よくくっつくわね。」「未練がましいんですよ。」「ああ・・祐巳さんのスールになれなかったことね。」
「祐巳さまもそのへん曖昧なのが問題なんですよね。」「それは祐巳さんの優しさね。無碍にできないんでしょ。」
名出屋城。「黒薔薇会か・・学生とはいえ、油断できないね。」「三号生『黒きマグダラ』祥子。最新情報では
百人一首を使うそうよ。」「ひゃく・・なんだ?」「そっか、クレオはガイジンだから知らなくて当然か。」
「ナディアもガイジンでしょ。」「私は日本マニアだから~♪」「おし、集中講義したるか。えっと、確か・・」
ぱたぱた・・ぱたぱた。「あったあった。」どん。「これが百人一首。本札と読み札の百対でできてるの。」
「タロットとまた違うわね。」「ナディア、模範演舞。」「おっけい。マチルダ、どれでもいいから読んで。」
「はーい。えっと・・」「あ、五七五調でよろしく。」「では。・・♪しづご」『はい!』パパーン!『おおっ!』
「な、なに?」「ち、速い。」「ダメダメ、『しづ』でいかなきゃ。」「マチルダ、つぎ!」「♪けふを」
「はい!」パーン!「よしっ!」「二択で迷った・・つぎ!」『待てまて。』「熱くなるのはわかるけど、本来の
目的すっかり忘れてない?」『あ・・』「てなわけで、ルールはイントロクイズが基本よ。」「なるほど。」
「あたしとナディアくらいになると百首みんな記憶してて、下句でも頭の数語で判断できる。あとは速さ勝負。」
「どの札がどこにあるのか瞬時に記憶する技術も必要ね。」「でもあの動きは、まるで格闘技ね。」「そのとおり。
頭脳と反射神経どっちも駆使する過酷なスポーツともいえるわ。」「うへ~・・けっこう手ごわそうかも。」
ピピッ♪「ん?・・はい、ナディアです。」【私です。折り入ってお話が。】「いいわよ、入って。」パシュ。
「で、用件は?」「・・二人だけで。」「・・いいでしょう、応接室で。」「すみません。」カツカツ。パタン。
「今の、日本事業部長だよね?」「ナディア直属の部下なので、あんまり面識ないわね。」「えーと・・」
「マチルダ、なに?」「なんか大事なことを忘れてるような気がするんですよねー・・なんだっけかな?」
「超AIがそれじゃ困るけど。」「・・にしても、今の顔色はただごとじゃなかったね。あの部長、普段はあんな
表情しない人だけど。」「・・あーっ!わかった!」「だから何なの?」「娘さんですよ、部長の!」「誰が?」
「だからこの明日の対戦相手!」『・・ああ~。』「となると・・」くるっ。「親バカか、あるいは・・」
応接室。「・・なるほど、そういうこと。」「もし娘が会長に怪我でもさせたら・・」「できればね。」「は?」
「部長、心配なのはよくわかるけど、それは父として?それとも社員として?」「・・よくわかりません。」
「まあそうでしょうね。では明快な回答をするわ。・・なんにも気にしなくていいの。」「で、でも!」
「リングの上で何が起ころうと、それは二人だけの問題よ。そこは会長も私たちもよくわかっています。万が一
会長がそこで死のうが、私たちはあなたや娘に何の報復措置もする気はないわ。むしろよくやったと誉めるわね。」
「でも・・」「・・ではこう言い直しましょう。もし手加減もしくは手抜きが見られたら、あなたこれよ。」ぴっ。
「ええっ!」「確認。この件は娘に話した?」「い、いえ、まだ。」「よかった・・いい?何も言っちゃだめよ。
言えば必ず動揺する。そんな相手と闘っても無意味・・これは最高命令と受け取って。」「・・わかりました。」
ガチャ。『お。』「失礼いたしました。」パシュッ・・「・・で?」「・・筒抜けみたいね。だいじょうぶ、
しっかり釘は刺しておいたから。」「マジメな人だねえ。」「ならばこそ、望みうる最高の部下なのよ。」
「うーん・・この分だと娘さんも気にしてる可能性高いね。親子だし。」「・・ナディア、検索できる?」
「シュバルツ。」ボオッ。『一時間後にガンダム長屋にいるはずだ。』「だって。」「さすが情報局長・・」
大手プロ「ミネルバ」。「なんですって!」「上からの通達だ。・・BGF出場まかりならんと。」「なんで?!」
「常識的に考えて、いまさら出場したところでミーアの二番煎じにすぎない。またBGFとなるとガンダムを
保有することになる。機体は委員会で供与してくれるにしても、メンテにはそれなりの設備も要員もいる。
そこまでして出るメリットは無い・・そうだ。」「そんな・・やっと第一次審査パスできる腕になったのに!」
「これ以上はどうしようもないな。あきらめるしかない。」「・・いえ、まだ手はあるわ。」「メイリン?」
ひそひそ・・「なにっ?!・・本気か!」「こんなこと冗談でもいえないわよ。・・責任は私がとる。アスランは
聞かなかったことにすればいいわ。」「それはやめろ。ここまで築き上げたものを全てフイにすることになる!」
「そんなものに未練ないわ。たとえ追放処分にされようと・・私はあそこに立ちたい。」「・・わかった。ならば
僕も一蓮托生だ。」「えっ?!・・付き合うことないよ。別のアイドルのジャーマネやればいいじゃん。」
「ふっ・・あいにく僕もどちらかというとバルド社長に近い。メイリンの夢は僕の夢でもある。」「アスラン・・」
「となると、なるべく目立つ手でアピールするのがいいな・・よし、この作戦でいこう。」ピッピッ♪
ガンダム長屋。「ごきげん・・あら?」「ドモン様、おられませんね。アポ無しじゃやっぱりまずかったかな。」
「まいったわね・・他のファイターの方にお願いしてみましょうか。」「では服部半蔵さんに。」ドンドン。
『はーい。』「いた。」ガラガラ。「どなたですか?」『あ!』「真蔵様・・」「ああ、ガブ女の皆さん。」
『ご、ごきげんよう!』「あ、あの、実はスパーリングをお願いいたしたく。」「そうですか。あいにく父は
母と共に観戦に出かけてます。ちょうどエリスさんのカードなので。」「それで皆さん出払ってるんですね。」
「僕が留守居役というわけです。もし僕でよければお相手しますけど。」「よ、よろしくお願いいたします。」
裏の空き地。ザッ。「では始めましょうか。」「参ります。百人一首!」ジャッ!シュパパパパッ!「なるほど。」
キキキキィン!『えっ?!』「札が・・弾かれた!」パラパラ・・「・・いったいどうやって?」「見えませんか?」
キラリ。「・・糸?」「・・伊賀忍法・朱雲!」「知ってますの可南子さん?」こく。「・・伊賀秘伝の製法による
サブミクロンの鋼糸。その鋭さは、鋼鉄をも豆腐のように切り刻むわ。」「訂正です、ガンダリウム合金もです。」
「これが・・真蔵様の技。」タラリ・・「この糸の結界、破ってみてください。」「お姉さま、今こそあれを!」
「そうね。」すっ・・ヒュンヒュンヒュン。「ん?この音は・・」「はっ!」さっ、チュィーン!「糸が?!」
シャシャッ、チュチュィーン!「手を振っただけで・・はっ?!」ヒュン!ばっ!ドゴオンッ!「なんだ?!」
キラリ。「むっ?・・なるほど、やっと見えました。透明な刃分銅ですか。」「『沖つ白波』。テグスも透明度の
きわめて高いものを使ってますから、軌道を見切るのは困難ですわ。」「いい武器です。切断だけでなく打撃にも
じゅうぶんな重さ・・でも。」フッ・・「消えた?・・!」キュパパパッ!「盾札!」バサッ!ビチィン!
『やはりそう受けましたね。』はっ。「・・フェイント!」ギリギリッ!「くっ!」「お姉さま!」『80点です。」
すっ・・すとっ。「注意が一方にいき過ぎるクセがありますね。同時攻撃に対処する訓練を推奨します。」すっ。
プツッ。「はあっ・・ありがとうございました。」「お姉さま?!」「だいじょうぶよ。」「がんばってください。」
『ちょーっと待った。』「え?」ザッ。「あやうく入れ違いになるとこだったわ。」『・・クレオパトラ!』
「あなたが明日の対戦相手ね。」「はい。よろしくお願いいたします。」「こちらこそ。でも今のを見たけど、
ちょっと期待はずれかな。」ぴくっ。「は?」「カードってのは・・」『!』シュバババッ!キキキィン!
『おおっ!』パラパラ・・「前言撤回。やるじゃん。」「そちらこそ。」にやっ。「これで楽しくなったわ。
事前に会えてよかった。じゃ、明日ね。」くるっ。「ごきげんよう。」ぴらぴら・・ピッ!「!」ぱしっ!
「・・『女帝』のカード。」「あげるわ。ほんの名刺代わり。」「どうも。・・右肩のもお受けください。」
「・・え?」はっ!「!・・いつの間に。」ぴっ。「・・日本語、読めないのよね♪」ぬどどどどどーっ!
テレビ局楽屋。ミーアとメイリンは相部屋。ぱたぱた。もぐもぐ。キュキュッ。ばりぼり。さっさっ。ずず~。
「・・ミーア、あんたロケ弁やお菓子食ってるヒマないでしょーが!もうすぐ本番よ!」「そうですか?」
『ミーア、10分前やでー。』「あ、はーい。さてと。」どっか。しゅぱっ。「え?・・メイク用具を両手に?」
「はいっ!」キュパパパッ!「おおおおっ?!」バン。「メイクよし。さて・・戦闘開始です。」スタスタ。
「・・ええ。」バタン。「ほな行くで。」「番組プロデューサーに話は通した。打ち合わせどおりに。」こく。
「今日はいま人気急上昇中の二大アイドル競演、ミーアさんとメイリンさんです。」『ごきげんよう。』
「ごきげんよう。上品な挨拶ですね。」「ミーアちゃんに習いました。」「ファイター間でブームなんですよ。」
「ほう。ミーアさんはBGF出場してから、一段と輝きが増したように見えますね。」「友人もいっぱい出来て、
ホントに出場してよかったと思ってます。」「こうなると、先輩のメイリンさんも負けてられませんね。」
「はい。いまさらつぶすにも返り討ちに会いそうで。」「は、はあ・・」「やっぱり正々堂々のガチンコが
互いを解かり合う早道ですよ。」「きわめて同感ね。」「で、メイリンさんも太極拳を能くするそうですが。」
「ミーアちゃんに刺激されまして、昔とった杵柄ってとこですね。」「わー、見たい、みたいですー!」
「こちらに試し割りの樫板を用意しました。」コンコン。「厚さ5cm。空手とかで使う杉板より厚いですね。」
「では。」すっ、ぴたっ。「?・・指先を板に?」「・・はっ!」バコオッ!「なっ!」カラカラーン・・
「すっごーい!ゼロ距離指拳で突き抜いちゃった!」ずぼっ、フッ。「ミーアもやってみる?」「はーい。」
ザッ。「メイリンさんが指一本なら、それを上回る技じゃないといけませんね。」「何か面白い趣向でもある?」
「こんなのはどうでしょう。」すっ、ぽん。「・・軽く触れただけ?」「はいおしまい。」つかつか・・
「・・なるほど、さすがにやるわね。」「え?・・いったい何が?」「3,2,1・・ばきゅーん。」バゴオオオーン!
「なあっ!・・板が爆発!」「ミーアが触れた時点で、板はもう死んでた・・最後はバランスの崩壊よ。」
「どちらもお見事です・・もしお二人がやり合ったら、どちらが勝つでしょうか?」「・・それを確かめるには。」
キラッ。「じっさいにやってみるのが一番。」ギン!ゴゴゴゴ・・「あ、いえ、その、何も今ここでとは・・」
「いえ、この場ならばこそ、視聴者が証人になるわ。」すっ。「メイリンさんの強さ、味わってみたいですね。」
ザッ。「司会者、下がってなさい。」「は、はいっ!・・」ジリッ・・『・・はっ!』ビュッ!バシイイイーン!
ネオ横浜「メビウス重工」。『おおっ!』「歌番組がガチンコバトルになるとは・・」「こりゃ面白いぜ。」
「たしかメイリンはルナマリアさんの妹さんですよね?」「な・・なにやってんのよメイリンは!こんなこと
やったらアイドル台無しじゃないの!」「いえ、それは逆ですね。」『会長?』「この騒動、偶発的なものでは
ありません。よく見てみなさい、スタッフの動揺がほとんど見られないわ。」「あ・・たしかに。」「ヤラセか。」
「にしても、こんなの事務所が許すわけ・・あ。」「どうやら裏では複雑な思惑が交錯しているようですね。」
「はっ!」ドン!「はいっ!」ビュン!バシイイイーン!ばばっ!「なかなかやりますねメイリンさん!」
「ミーア、あなたは私の最大のライバル!必ずBGFの舞台で会いまみえましょう。そのために・・」くるっ。
「私は所属プロを移籍します!」オオッ!「今の事務所からではBGFに出られない。だから私は自分の夢、すなわち
BGFに出るために、その束縛を振り捨てます!」「で、でも、そんな重要なことをこの場で決めてしまって
いいんですか?」「ここで宣言することに意味があります。すなわち視聴者がすべての証人です!」オオッ!
「というわけで、バルド社長!」「電撃移籍、フゥゥゥ~ッ!」し~ん・・「見事にスベりましたねー。」
「やっぱベタすぎたんか?」「タイムリーではありましたけどね。」「まあええ、わて芸人やのうてギョーカイ人
やさかい。んで、本業のほうやが。」「移籍させてください。」「念のために言うとくが、ウチに来たら三食
まともに食えんで。ミーアみたくロケ弁とお菓子で食いつなぐ赤貧生活や。一ヶ月一万円生活が裕福に思える
ほどのな。それでもええんやな?」「そのハングリーさが私に足りなかったものです。太ったブタでいるよりも、
私は餓えた狼になりたい!」「よっしゃ!その意気ならもうなんも言わん。モト事務所のほうはまかしとき。」
ばん。「契約書や。」「では血判で。」オオッ!「美術さん、カッター貸して。・・どうも。」チキッ。シュッ!
「つ・・」ドロッ・・「芸能界の地位も名誉も、ただ熱き拳に全てを捧げる!」バン!「戦場へようこそや。」
『おおーっ!』ぱちぱちぱち!「なるほど、こういうことでしたか。」「なかなかやるもんだな。さすが妹。」
「思い込んだら猪突猛進なとこは姉君と同じだぜ。」「・・ルナマリアさん、どうしました?」ぶるぶる・・
「あ・・あのバカなに考えてんのよ!移籍してまでBGFに出たいなんて!」「でもこれはわが社にとっても
チャンスともいえます。」はっ。「・・二コル、なに考えてるの?」「そんなに悪いことではありませんけど。」
『・・お~。』「これは妙案。ルナマリアの肉親関係がこんなとこで役立つとは。」「おねえたまの意見どーぞ。」
「・・まあ、たしかにナイスアイデアなのは認めるわ。あたしとしても妹に接触する機会が増えるのは歓迎よ。」
「では決まりですね。」「いえ、あともう一つ面白い手が打てます。・・アレクサンドラグループに。」にやっ。
楽屋。『イエーイ!』ぱーん!「!・・あててて。」「あ、手切ってましたね。」「ほら、手当てしないと。」
「さーて、そろそろ事務所のモンが来るはずやな。」ぽきぽき。「やっぱ組いますかね。」「間違いなくね。」
「まあ任しとき。ちょーっと話し合ってくるさかい。」「肉体言語ですね。」「当たり前やろ♪」バタン。・・
どんがらがっしゃーん!「おー、始まったはじまった。」「応援に行かなくていいのかな。」「うちのしゃちょー、
めちゃ強いからだいじょうぶ。マスターアジアがケンカ友達だったって。」『うわ・・』「こりゃ大正解ね。」
ガチャ。「穏便にお引取り願えたで。ほな仕上げや。」ピッピッ♪「・・はい、わてですねん。TV観とった?
ほな話早いわ。・・へえ、『ミネルバ』です。ほな、よろしゅう。」ピッ♪「一件落着や。もう誰もなんも
言うてこんはずや。」「なにやったんですか?」「コネっちゅーのは、こういうときに使うんやでー。」
タタタタ・・ガチャ!「やりました!視聴率35%!視聴者からの反響もすごいです!」「作戦大成功やったろ、P。」
「さすが『芸能の虎』。ついては、お二人の成長ドキュメントを、ぜひ当局で。」「わかっとるわかっとる。」
「それと、マスコミの皆さんがお待ちかねです。」「おっし。ほな行くで、三人とも。」『はい!』ザッ!
名出屋城。「・・というわけで、『エターナル』は我がアレクサンドラグループの傘下にあります。もし事務所に
害をなすような状況が発生するなら、それは弊社への挑戦とみなし、対象者は徹底撃滅いたしますので・・
そうですか、それは良いことです。お互い穏便が一番です・・では。」ピッ♪「これにて一件落着・・と。」
「ナディア、ひさびさにドス効かせたね。」「あの芸能プロはタレントを使い捨てるので業界でも評判悪く、
私も以前から嫌いだったから、ちょうどいい機会だったわ。・・ついでにぶっ潰すのが世の中のためかな?」
「あんまりハデにやらないでよ。マスコミ封じも限界あるから。」「暴力的な手は必要ないわ。マチルダ。」
「はーい。」「事務所の口座、ウラまで捜し出して。そして手形決済寸前に・・」ひょい。「不渡りか。」
「しかもウラ口座に動いてたとなると最悪ね。」「信用失墜、融資も止まるね。」「うわ、えげつな~。」
「これなら足はつかないし、濡れ衣もかぶせられるわ。」「ホント、ナディアを敵に回したくないわ・・」
「・・あ、クレオ、お電話です。」「どこから?」「・・メビウス重工会長、ラクス・メビウスです。」
『メビウス重工?』「・・いいでしょう、出るわ。」ピルルル♪カチャ。「はい、クレオパトラです。」
ピッ♪【はじめまして。ラクス・メビウスと申します。】「お噂はかねがね。」サラサラ。[洗って。]
【実は芸能事務所「エターナル」についてですが、メイリンさんのガンダムを提供したいと思います。】
「それは興味深い提案ですね。弊社のほうで供与しようと計画はしてましたが、協賛のご申し出があるなら、
喜んで受けさせていただきます。」【感謝します。とはいえ、弊社の在庫品供与なので、ある程度の手直しは
やむをえないかと。】「素体に比べれば改良コストはさしたるものではありませんのでご心配なく。」
【では細部は事務レベルで。】「契約書は総務へお送りください。・・では。」ピッ♪「というわけ。」
「動きが速いね。」「しかも商売敵のはずのうちへの協賛申し出とは・・メビウス会長、できるわね。」
「マチルダ。」「ラクス・メビウス。一年前に旧ZACTインダストリーを買収し、現在までに黒字転換させた」
「そのくらい誰でも知ってるわ。聞きたいのはもっと深いところ。」「えーと・・あ?!」『なんだ?』
「これは重大情報かもしれません。彼女の家庭情報ですが・・」「彼氏でもいるの?」「父親のことです。」
「もしかして有名人?」「はい・・マスターアジア。」『・・ええっ!』「東方先生の・・娘?!」
「マチルダ、間違いないの?」「検索した本人が驚いてるんです。万が一ガセにしても、それによるメリットは
特に何もありません。」「たしかにね・・騙りにしても、相手が悪すぎるわ。」「これは・・面白そうね。」
ガブ女・運動場。「祐巳、もっとよ!」「可南子ちゃん、次いくよ!」「はい!」『そーれ!』ビュビュッ!
「はっ!」タタッ、バシバシッ!「・・もう真夜中なのに、よく続きますわね~。」つかつか。「どう?」
「あ、蓉子さま。こんな遅くまで?」「私も特訓してたから。・・祥子、ようやく自分の弱点に気づいたわね。」
「ディフェンス技術は申し分ないと思われますが?」「技だけじゃないのよ。問題は心のディフェンスね。」
「心・・?」「ああいうひたむきさ。己が腕に驕らず、むしろ自分の弱さを認め、それを克服しようとする姿勢。
どれも今までの祥子に欠けていたものよ。」「なるほど・・けど祐巳さまも可南子さんもよく付き合いますわ。」
「それがスールよ。姉妹のためなら、どんな苦労も惜しまない・・そういう瞳子ちゃんも付き合い良いわね♪」
「こ、これは、もののついでみたいなものですわ。」「ふふっ。・・以前にいたわ、スールを作らずそうやって
サポートに徹する人って。」「・・その方は今は?」「代行者にはならず、なにやら戦艦の艦長をしてるって
話を聞いたわ。そう・・『デウス・マキナ』幽璃華さま・・なつかしいわ。」「『デウス・マキナ』・・?」
宇宙・某所。「へっくし!」「かんちょ、風邪ですか?」「おっかしーなー?生まれてこのかた、風邪どころか
病気のひとつもしたことないのに。」「国民健康保険が未使用なのはもったいないですな。」「ああ~、それは
きっとアレねぇ、誰かが悪いウワサしてるとか。」「うちの艦長なら、そーゆーの多いかもね~。」「それ以前に、
かんちょが風邪なんかひくわけないですが。」「そうそう、健康優良児だったもんね。」(・・バカだから。)
ピピッ♪「レーダー感。コロニー連合軍所属艦と識別。」「相対ベクトルちょーだい。事故りたくないから。」
「はい、どーぞ。」ぽい、ぱしっ。「ふむ、今ごろこの辺にいるとなると・・」「ふみこさんかなー?」
「おー当たり。魔砲艦『グラーフ・ツェッペリン』です。」「対象艦より通信。メインに出します。」ぱっ。
『ひさしぶりだな。』「ふみこさんもご壮健そうで。」『いつものとおり、外惑星圏最新情報を送る。して、
今回も土星宙域まで哨戒か?』「まだあそこは封鎖中ですから、『斧』を基点に外周部を予定してます。」
『「斧」に寄るなら、うまい店の情報も付けておこう。』「感謝します。」「ラーメンうまいとこを是非。」
ぷつっ。「・・『デウス・マキナ』か、よく言ったものだ。」『あの美人艦長、知り合いなの?」チリーン♪
「見た目と言動でみんな騙されるが、アイツはとんでもないヤツさ。まともに戦えば、私とて危ないだろう。」
「へえ・・ふみこさんにそれだけ言わせる相手なんだ。こりゃ就職大正解だったかな。」「なんのことだ?」
「それより、十人のおっさん達の様子は?」「ヒマつぶしにうちの連中を鍛えてもらってる。DG感染者には
特に注意を払ってるので、向こうさんも迂闊なことはできていない。」「悪いね、背負わせちゃって。」
「いいさ、少なくとも私の前ではおとなしく振る舞ってるうちは。」「大先輩だもの、誰も逆らえないよ。」
黒薔薇の館。バサバサ・・「へえ・・寝袋がこんなに。」「運動会や学園祭の準備で泊り込むことがよくあるから
用意してるのよ。」「お風呂は校内のシャワールームで済ませて、食事は近くのコンビニで買い出しだし。
聞いた話では一週間泊り込んだ先輩もいるって。」「洗濯とかどうしてたんでしょ?」「もう2時ね。8時には
誰か来るから、それまで寝れるわ。」「一号生ふたりは、こちらの寝袋を使いなさい。」どさっ。「二人用?」
「スールで一組なんだよ。」「お姉さまはお一人で使っていただき、わたくしと祐巳が同衾ね。」「反対!」
『蓉子さま?』「くじ引きで同衾相手を決めない?いつも同じ顔だと飽きるし、普段あまり接触のない相手との
コミュニケーション向上の意義もあるわ。」「お姉さまがそうおっしゃるなら。祐巳、クジを。」「はい。」
さっ。「同じマークのあるのが二組と、何も無いのが一本。」「一斉に引くわよ。せーの・・はい!」さっ。
「あら、可南子ちゃんね。」「・・蓉子さまと?」「あら、スカでしたわ。」「となると・・瞳子ちゃんと?」
「え・・祐巳さま?」「はいはい、クジの結果に文句はご法度よ。」「まあ、シングルならよく眠れますかも。」
「電気消します。」フッ・・「失礼します、蓉子さま・・」「いらっしゃい♪」「・・その言い方、エロいです。」
もそもそ。「だいじょうぶ、聖ほど同性にキョーミ無いから。」「ならいいんですけど・・」「・・アンデルセンね、
根っから魔に堕ちたわけではなさそうね。」はっ。「・・そうでしょうか。」「ここのところの動きを見てて、
わずかだけど迷いが感じられるの・・やはり元の精神力が強かったせいか、魔の力との精神的拮抗があるのね。」
「・・でも父は一年前に天に召されたのは紛れも無い事実です。たとえどんな理由があろうとも、魔界転生した
存在を許容することはできません・・」「・・そうね。そうなれば、あなた自身の手で葬るが親に孝・・かもね。」
「むろんです。・・BGFに参戦したのも、ただその為に。」「動機はそれでいいわ。明確な目標があれば鍛錬にも
力が入るし・・でも。」「でも?」「今もそれだけ?」うっ。「・・わかりません。」「うん、それで正解よ・・」
(・・祐巳さまと同衾なんて、夢にも見なかった・・)トクントクン。「?・・瞳子ちゃん、息が荒いけど?」
「い、いえ、なんでもないですわ。」ぷい。「・・もっとこっち来ていいよ。」すっ、ぐいっ。「あ!・・」
「聖さま譲りのスキンシップー。」「え、えと、あの・・」どきどき。「なるほど、効果てきめんだね。」
ふっ・・「あ・・」ぞくうっ・・「あ、ここか。私といっしょだ。」「あの・・あ・・」「ここかな?」
「・・堕ちた、わね。」ふっ。「瞳子ちゃんは攻めこまれると腰砕けになるタイプ・・よく見抜いてるわ。
聖さまのアレも、悪いことばかりじゃないわね・・ま、祐巳のことだから寸止めで済むでしょ。寝よ・・」
次の朝。ガチャ。『ごきげんよ・・?!』『ごきげんよう。』「ご、ごきげんよう・・」ギンギン。(目が真っ赤)
「瞳子ちゃん、どうしたの?」「黒薔薇会名物『相合寝袋』の洗礼よ。」「ああ・・相手は?」「祐巳。」
『おお~。』「うんうん、私のテクを確実に継承してるね♪」「いつも勉強させていただいてるもので。」
「瞳子、可愛がられたみたいだね。」「・・乃梨子さんは?」「こないだ経験済み。相手は江利子さま。」
「乃梨子ちゃんは、なかなか抱き心地よかったわよ。志摩子がうらやましいわ。」「・・令さまはどうですか?」
「う~ん、ちょっと硬いのよね。それもまたいいんだけど。」「あー!あたし令ちゃんとまだ同衾してない!」
「・・黒薔薇会のこーゆーとこがついてけないのよね。」「今度やってみる?私と。」「そ、それは・・」ぽっ。
「でと、祥子のコンディションも上々ね。」「特訓で身が引き締まりました。これで迷いなく全力でいけます。」
「セコンドは祐巳ちゃんと可南子ちゃん。瞳子ちゃんは留守番と昼寝ね。」「お気遣い、感謝しますわ・・」
ワーワー!「さて今日の第一試合は、黒薔薇会第三の刺客、『黒きマグダラ』祥子のダークレイダーガンダム対、
闘う企業家、クレオパトラ・アレクサンドラ会長のギャラクティカガンダム!」「どっちも長い名前やな~。」
「まずはクレオ会長だけど、これが初お目見えね。」「うんにゃ、非公式やが練習試合の記録があるで。なんと
レインはんとやったそうや。」「ええっ?それって特ダネじゃないの!」「あかんあかん、グループのガードは
鉄壁や。とても入り込めんわ。」「・・うちの親会社だしね。で、実力のほどは?」「うーん、ぼちぼちでんな。
もっと実績積まんと、どうにも評価できんわ。」「武器はカード状ビットか・・ちょっと力不足じゃないかな。」
「遠近どちらもこなせんと、BGFではつらいで。さて一方のレイダーやが。」「プロフィールから察するに、
中堅どころというとこね。」「次期首長候補らしいで。それだけの実力があるんやな。」「前の二人はあれでも
下級生だった・・となると、最上級生って、すごそうね。」「武器は・・おんや?こちらもカード武器や。」
「カード使い同士・・遠距離主体ならパン(俯瞰画像)が重要になるわね。」「広角カメラを再点検しとくで。」
ザッ。「ごきげんよう。」「?・・さすがお嬢様ね。」「会長ほどではございませんが。」「残念ながら私は
成り上がり者、セレブなのは上辺だけ。実体はスラム育ちのアウトサイダーよ。」「そう自らをさらけ出せるのは
すばらしいことですわ。それに底辺を知っているからこそ人を知っている・・企業家として大事なことです。」
「へえ・・さすがに聡明ね。気に入ったわ。では始めましょうか!カモン、ギャラクティカ!」パチン!
「神と子と主の名において、来たれレイダー。AMEN!」パチン!『ガンダアアアームッ!』ギン!ドドドド・・
『バーニング・ガンダムファイト!レディー、ゴー!』「いけっ、サテライトカード!」シュパパパッ!ぴたぴたっ。
「・・カードが滞空?」「なにする気や?」「はっ!」シュパッ!「あさっての方向へ?・・いえ!」キキキィン!
「カード衛星反射や!」「これではどのタイミングで襲うかわかりません!」「・・そうでもないですわ。」スッ。
キキキィン!・・ヒュバッ!「いった!」「ふっ。」パキィィーン!『なっ?!』パラリ・・「残念でしたわ。」
「・・なに、いまの?」「防御したんやが・・どうやって?」「こちらの番ですわ。百人一首。」シュパパッ!
「こちらも滞空?」「♪朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪・・白朧。」キン!モワァァ・・
「霧?」「リングが霧に覆われました!」「・・こらただの霧やないで。見てみい、赤外映像を!」「え?・・
なにこれ、真っ赤じゃない!」「視覚系だけやない、レーダーまで撹乱されとる・・強力な電子妨害霧や。」
ザザザザーッ!「くっ・・レイダーはどこ?・・!」ピン!・・ヒュバババッ!「対空防御!」シュパパッ!
キキキキィン!「落ち着け、見えないのは相手も同じはず・・ジリ・・パリッ。はっ!ドカアアアアーン!
「うわっ!」ズダダダーン!「地雷?!」『奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき・・踏葉。」
「・・そうくるか。ならばこちらも!」シュパッ。キン!「魔術師の炎!」ゴオオオオーッ!「火炎放射?!」
すっ。「♪憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを・・山嵐!」ビュオオオオーッ!
「突風で吹き戻したで!」「まだまだ。塔の神鳴!」ガラピシャアアアーン!「♪淡路島 かよふ千鳥の なく声に
幾夜ねざめぬ 須磨の関守・・関守!」キン。バシイイイーン!「バリア?!雷撃を完全に防御したわ!」
ゴォォォ・・「やるわね。」「そちらこそ。」「な・・なんちゅう二人や。」「呪符魔術ファイター・・すごい。」
「小手先の技じゃ埒が開かないわね。」「ええ、趣向を変えましょう。・・」バキッ!「ぶっ!・・な、なに?」
ドガガガガッ!「なぐっ!」「な、なにが?!」「ギャクティカが・・何かの攻撃を食ろうとる!」バゴオッ!
「ぐはっ!」ズダダダダーン!「ダウン、ですわね。」すっ。「ワン、ツー・・」「な・・なにが?」ググッ・・
「見えない攻撃・・まさかスタンド?」「いや、そういう気配やない。・・こらなんかトリックくさいで。」
ザン!「セーフ!」「また立つのはよろしいですが、見切れますの?」ついっ。「そのつもりよ。」ジリッ・・
「・・・・そこ!」ばっ!バシイイイーン!『おおっ!』キラリ。「なんか見えたわ!」「そこズームや!」
「・・透明な・・斧刃?」「わかったで。目に見えんほど透明な素材で作っとんのや。またそれを振り回す糸も
きわめて細く透明なので、まるでスタンド攻撃みたいなことができたんや。」「よく見切られましたわ。」
「こっちも経験積んでるからね。反撃!」シュパパパッ!「もう届きませんわ。」すっ、パシパシパシッ!
にやっ。「かかった、法皇の怒り!」「え?」ズドドドドーン!「きゃあっ!」ダダーン!「指向性地雷よ!」
「やるで。叩き落されるのを承知で札を撒き、至近距離で爆発させる。あら回避不能や・・」「く・・」
「これで逆転ね。とどめは!」ぴっ。「・・『星』のカード!」「星に願いを!」キラッ・・ゴオオオオーッ!
「隕石が?!」「メテオの呪文・・RPGでも最強の攻撃魔法や!」「・・回避できない!」『お姉さま!』はっ。
「祐巳?」『いまこそ特訓で培ったあの技を!』「・・そうよ、その手がある!」ドガアアアアーン!『うわっ!』
ゴォォォ・・「・・直撃?」「どでかいクレーターが・・」「勝った・・?」くるっ。「レフェリー、裁定は?」
「なにを寝ぼけておる。何も終わっておらぬぞ。」「・・はっ?!」ばっ!『え?・・あっ!』「・・上空や!」
ゴォォォ。「このレイダーがもともと飛行仕様だったことを思い出しましたわ。」「・・あの一瞬に空へ!」
「ヒュッケバイン!」シュパッ!「リフターユニットが?」ゴオオオオーッ!「あら突撃ユニットでもあるんか!」
「こんなものでやられないわよ。正義の楯!」キン!バシイイイーン!「不可視バリア?」「止められたで。」
「ふう・・?!」ぴくっ。『・・♪大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立・・天衣!」
ババババッ!「真上から?!」「リフター無いのにどうやって?」「もらいます!」「・・月の露!」ぴっ。
「はあっ!」シャッ!シュバアッ!『首が!』「?!・・この手ごたえは!」ユラッ・・「・・幻影!」すっ、
ぴたっ。「はっ?!・・」ググ・・「天女の羽衣を着れるは天使のみ・・決着。」シュピイッ!ピリ・・
わしっ、ばっ。「女帝の首、主にお捧げいたします。AMEN。」ユラ・・ドサッ!「勝負あり、ダークレイダー!」
『やったーっ!』パシュ。「お姉さま、見事な勝利です!」「黒薔薇会の面目躍如です。」「・・ふう。」へたっ。
「?・・お姉さま?」はあっ、はあっ・・「祐巳・・結果は?」『・・は?』「・・ものすごい緊張感だったわ。
リングに上がったときから・・今の今までの出来事、何もおぼえてないの。」「そうだったんですか・・じゃ、
途中で声をかけたのも。」「・・ごめん、おぼえてない。」「祥子さまだけではありません、格闘技の試合では
よくあることです。これは経験者でも例外ではありません。」「そう・・で、結果は?」「お姉さまの勝ちです。」
ふうっ!「よかった・・お姉さまに面目が立った。」「そっか・・蓉子さまに。」「スールのプレッシャー・・
でもそれは同時に力にもなります。」「そのとおりよ。・・祐巳、あなたも。」こく。「主の名にかけて。」
「クレオ、生きてっか?」パシュ。「死んだ~。」「まあ初戦にしちゃ上出来でないかい。最後のアレはあたしも
見間違えたくらいだから、ま、しょーがないわ。」「くそ~、アレを見抜いてりゃ。」「勝ったり負けたり、
どんどん経験積むしかないんだな、こーゆーのは。・・おっ、来たよ。」ひょい。「ありがとうございました。」
「この負け必ずコヤシにして、次の試合までにもっともっと強くなるからね!」「それでこそ会長ですわ。」
「ヨーコ、日本事業部長に会長特別報奨手当を。」「えっ?」「ええんでないかい。」「勝利のご祝儀よ♪」
次の日、黒薔薇の館。がたごと。『おお~。』「夢にまで見たエアコンが・・」「うちの父からの寄贈ですわ。」
「これで夏場の蒸し風呂から解放されるわ~。」「・・なんか授業フケる率を増やす気がするんだけど。」
「そうはならないわ。ほら。」カチャカチャ。「箱?・・なんですか?」「コイン投入口。30分で百円よ。」
『ええ~!』「濫用防止と電気代の自己負担よ。鍵は私が管理します。」「まるでホテルの有料チャンネルだね。」
「取り付け終わりました。」「ごくろうさまでした。・・では、さっそく運転。」チャリン。ガーッ。オオッ!
「いきなり涼しい風が!」「最新型で、予備運転抜きで温風も冷風もすぐ出せるのよ。こうじゃないと、最初に
投入した人は割り食うものね。」「は~、すずしい・・」「これで夏場の泊り込みでも安眠できますね。」
「あ、それで思い出した!令ちゃん、今夜泊まりね。」「なんで?そこまでやる用事なんにもないよ。」
「う・・令ちゃんの特訓とか。」「対戦スケジュールに合わせて調整してる。受験じゃあるまいし、追い込みは
考えてない。」「う~・・あ、次のカード誰だっけ?」「わたくしよ。」「げ・・江利子さま。」「由乃ちゃん、
わたくしの特訓につきあってくれるのね。」「い、いえ、その・・」たじっ。「夜もたっぷり可愛がってあげる♪」
「言っておくが、お姉さまと寝るときは覚悟しておいて。寝かせてもらえないから。」「しょ、しょんな~。」
君たちに最新情報を公開しよう。
第四の花は四号生「復活の光」江利子、対するは初参戦のメイリン。
学園に君臨する三薔薇が一角、プロ同然の実力に大苦戦。
烈光弾に貫かれ、閃光刃に切り刻まれるドラゴンセイバー。
だが、失うものがない者は何も失わず、ただ奪い取るのみ!
次回、バーニングガンダムファイト激闘編 第19話
「復活の光!燃えよメイリン」へ、バーニング・ガンダムファイト!レディー、ゴー!!
これが勝利のカギだ!(斉派太極拳奥義・長城崩塁)
第19話「復活の光!燃えよメイリン」
浜松町「エターナル」。「いちにーさんし!」「ほいほい。」くいくい。「はっ、くっ、とっ!」ギシギシ。
「メイリン、かったいな~。身体の柔軟性は基礎の基礎やで。」「硬いとケガしやすいんですよー。」
「ミーア、あれやってみ。」「はーい。」すとっ、ぺた。「うわ・・180度開脚で胸までついてる・・」
「ええか、筋肉はさほど必要ないんや。大事なのは、思ったとおりに動いてくれる身体の柔らかさなんや。」
「なるほど・・でもミーアほどになるのはまだ時間かかりそう・・」「そうでもないですよ。ちょっと失礼。」
すすっ、ぐっ!「いたっ!」「はい、これでいいですよー。股割りやってみてください。」「え?・・じゃ。」
すとっ、ぺた。「うそ!・・」「腰のあるツボをちょいと押しただけで、そうなるんや。人体はおもろいで。」
ガチャ。「夕食ができました。」「ごくろーはん、アスラン。」「よいしょ。」ゴトッ。「ロケ弁雑炊です。」
「・・なんか見慣れた具が。」「あー、これはTVトキオのですね。」「ロケ弁の目利きはわても自信あるで。」
『いただきまーす。』カチャカチャ。「まいうー!」「おいしい!」「アスランええ嫁になるで。」「嫁ですか?」
「でと、明日は朝イチでガンダムを受け取りに行くで。」「えっ?セイバーの改造もう終わったんですか?」
「私のキャンベルも頼んで一週間でできましたよ。」「すごい・・」「それともうひとつ、対戦スケジュールが
決まったで。あさってや。」ブーッ!「ええっ?!ちょっ、そんないきなり!」「委員会に無理ゆーて、優先的に
カードまわしてもろたんや。」「・・相手はどなたですか?」「学生さんや。」ホッ。「あ、ちょっと安心・・」
「・・いや、メイリン。そう安心もしてられないぞ。相手はチーム『黒薔薇会』四号生、『復活の光』江利子だ。」
「・・だれ?」「あー、いま話題沸騰のあのチームですねー。私もガンダム長屋で何回か会って見知ってます。」
「過去三回の対戦を見るに、学生ながらプロも目を剥くような実力を示してる。しかも・・」「・・なんなの?」
「今度はその最上級生だ。プロ級の腕を持ってると考えたほうがいい。」「む~・・やってみないとわかんないか。」
「そのくらいでええんや。要は生放送のステージに立つときの心構えと同じや。」「あ、それならわかります。」
「さて寝よか。フトン敷くで。」どたどた。バサバサ。「まさか事務所で寝泊りしてるとは思わなかったわ。」
「とゆーより、ここが自宅ですね。」「レッスン場は広いきに、四人くらいなら余裕や。」「そういう問題では
ないんですけど・・どうりでキッチンにバストイレ、洗濯機まであるわけです。」「通勤不要で便利やろ。」
ばさっ。「はあ・・前の事務所の合宿レッスン思い出すわ。ねえミーア・・あれ?」「すかぴ~・・」
「早っ!・・にしても、あれほどの素養とハードなレッスンが、ミーアの力なのね・・今日も疲れた。寝よ・・」
「・・社長、事を急ぎますね。」「そか?こういうんはダラダラやっとれんさかい。それにな、リングがやっぱ
最高の修行場なんや。」「まず上がってみろ、ですか。それで済めばいいんですが・・」「済むわけないやろ。
相手もこちらを倒すつもりで挑んでくるんや。ゆえにこっちも倒す気でいかんと意味ない。BGFには判定なんか
あらへん、決着がつくまでの無制限マッチや。」「・・メイリンはそんな世界で、生きていけるんだろうか。」
「たいがいだいじょうぶやないかい。なに、ゲーノウ界に比べりゃ天国みたいなもんや。みんなええ人やし。」
ふっ。「たしかに、欲望と退廃の渦巻く業界に比べれば・・そういう意味ではメイリンにはよかったのかも。」
「・・アスラン、愛しとるんやな?」「愛が無ければMGは務まりません。」「あほ、そっちの意味やないわ・・」
「・・え?」「ンゴ~・・」「・・ふふっ、この事務所に移籍したのも大正解だったかな・・寝よう。」
次の朝、ガブ女。チュンチュン・・「明日はいよいよお姉さまの番か。」「でも対戦相手もまったくの新人でしょ。
江利子さまなら楽勝じゃ?」「お姉さまはクジ運も強いのかな。」「成績優秀、容姿端麗、おまけに質実剛健。
ここまでパーペキだとイヤミね。」「由乃、そうでもないよ。お姉さまには欠点もいっぱいあって、例えば・・?」
フラフラ~。『あ。』「ん?・・あら、令に由乃ちゃん。」『ごきげんよう。』「どこかお体でも?」「なんで?」
「だって、今の歩き方・・」「ああ・・ただいまディアクティブモードだから。」「いつもの退屈の虫ですね。」
「そう。なんか面白いこととか、変わったことないかしら・・」フラフラ~・・「・・まるで徘徊老人ね。」
「人呼んで『ガブ女退屈女』。お姉さまを動かすには、よほどの刺激が必要なの。」「明日はそうなるかしら?」
一号生教室前。フラリ・・はっ!『江利子さまだ。』『「復活の光」。』「ごきげんよう。」「ごきげんよう、
江利子さま。」「はい、ごきげんよう。・・ん?」ぴくっ。「あれは一号生トリオ・・ふふっ。」きらーん。
カタカタ。「メイリンて、こないだ長屋で見かけたアレだよね。」「・・先日の電撃移籍で知名度が上がったわ。」
「瞳子、流派やらなんやらわかる?」「実行委員会に提出された履歴書には『太極拳』としか書いてませんの。」
「フォアマン負けか。」「?・・乃梨子さん、なに?」『アリ勝ち、ということね。」はっ!『江利子さま!』
「な、なぜ四号生の江利子さまが一号生の教室に?」「ヒマだったから。瞳子ちゃん、メイリンの事務所って?」
「浜松町の『エターナル』ですわ。」「詳しい場所は?・・なるほど。ありがと。」「・・どうされるんです?」
「道場破り。」『ええっ!』「正しくは値踏みね。楽しませてくれる相手かどうかの。」「・・そうでなければ?」
「明日まで待つ価値なし、その場でぶっつぶすわ。じゃ。」ぴかっ!『わっ!・・消えた?』「・・大変だ!」
四号生教室。「?・・一人見えませんが。」「江利子さんです、翡翠先生。」「授業放棄は感心いたしません。」
ブルルッ。「メール?」さっ。(授業中なのでマナーモード)「・・?!先生、火急の事態が生じましたので、
退席を申請いたします。」「状況如何です、ご説明を。」「江利子が某所へ殴りこみを仕掛けるとの連絡です。」
ザワザワ!「静粛に。・・状況了解しました。蓉子様の退席が認証いたします。」「感謝します。」ガタッ。
「おーおー、出入りだ出入り♪」・・ボオッ。「うわっ!」「聖様を許可してません。席がお戻りください。」
「え~、蓉子~。」「んー・・聖、代わりに行ってくれる?わたくしが授業を受けるわ。先生、江利子を抑えるは
聖の方が適任です。」「・・わかりました。蓉子様の判断に尊重いたします。」『ありがとうございます。』
「悪い、蓉子。」「あとでいちごミルクね。」「わかってる、じゃ。」フッ・・「では授業を再開します。今日は
ブルボン王朝式歩行法の基礎へ伝授します。まず基本姿勢ですが、背筋を伸ばしアゴを引いて、目線は・・」
黒薔薇の館前。ザワザワ。シュタッ。『聖さま。』「蓉子の名代だ。各学年は祥子と志摩子と瞳子ちゃんか。」
「令と由乃では止めきれないとの判断ですわ。」「・・場所は浜松町です、急ぎましょう。」「先行偵察を
出しますわ。ロザリオアニマル!」ヒュッ!ぱしぱしっ。「ピーコ、江利子さまを見つけて!」バサササ・・
「足を出すよ。正門前で待ってて。」シャッ。「足って?」「・・タクシーでも拾うんでしょうか?」
正門前。「聖さまは?」「・・あら?」・・ブロロロ!キキィィーッ!『うわっ!』「・・ロールスロイス?!」
ガチャ。『聖さま?』「乗ったのった。」ドカドカ。「いくよ。」ブロロローッ!「聖さま、いつの間に免許を?」
「こないだ。」「・・ということは。」「若葉マークちゃんと貼ってるよ。」「ロールスは初心者マークの方が
乗る車じゃありませんわ!」「これ以上安全な車ないよ。馬力もあるし。よっと。」キキィィーッ!『うわわっ!』
「スピード上げすぎですわ!」「・・いま、内輪浮いたわ。」「マリア様、お守りくださいませ!」ブロロロ!
そのころ、「Atelier de Marie」。「これです。」『おお~。』ゴォォォ・・「ドラゴンセイバーガンダム。
セイバーの基本フォルムは残しつつ、大胆にアレンジしました。」「すごい・・まさにネオチャイナ系ね。」
「だいぶ印象が違うな。」「主砲のヴェズバーはブレードトンファー『ウイングセイバー』に差し替えました。
これはまた伸縮ドラゴンファングにもなります。むろん竜の口からファイアーブレス。」「変型機構は?」
「残してます。飛行形態『双頭竜』は見ものですよ。なおこのモードではサンダーブレスが使用できます。」
「さっそく試してみます。アスラン、サポートお願い。」「わかってる。このために集中講義受けたんだから。」
スパッ。「ふっ・・MTS起動!」ギュルルル・・ギリギリ!「くうううーっ!」シュゥ・・「・・はあっ。」
『メイリン、まずは基本動作だ。』「はいっ!」ギュイン!「はっ!」ババッ!「はあっ!」シュバッ!
『トレース係数良好。誤差微調整よし、各パラメータ良好。』「武装を試してみるわ。ウイングセイバー!」
ぐっ、ジャキッ。「なるほど、ウイングが大型ブレードになってるのか。はいはいはいっ!」ビュンビュン!
「龍撃!」ドン!ギュラララーッ!「宝貝!」ゴオオオーッ!「うん!いいねいいね。」『飛行形態も試すか?』
「もちろん。飛竜!」ドーン!ギュン、ジャキン!「おおっ!・・まさに双頭の翼竜!」「対地雷撃!」
ジャジャジャーッ!ガガガーン!「すごい・・」「首あと一本あればよかったんですけどね。」ズシーン!
パシュ。「サイコー!あたしの望んだ以上のガンダムよ!」「お客さんに喜んでいただけるのが冥利です。」
「あとはお任せしますね、技術顧問。」『むろん、しっかり引き継ぎます。』『え?』カツカツ・・カツッ。
「・・お姉ちゃん!」「ルナマリアさん?!なぜここに?」「エターナルの親会社、アレクサンドラグループ
本社との契約で、あたしが技術顧問になったの。」「そんなの聞いてない!」「僕もいま初めて聞きました。」
「まあそういうことなんで、よろしくね♪」「うえ~、お姉ちゃんがお目付けか~。」「やれやれ・・」
「んでバルド社長は?」「ミーアと事務所でお留守番だよ。」「なんでも朝からイヤな予感がするとかで。」
「?・・そういや人形町のマンション引き払ったの?」「うん、前の事務所の貸与だったし。今は事務所で
寝泊りしてる。」「ええっ?!・・アスランどういうこと!」「いやその、深い事情と浅い理由が・・」
そのころ事務所。「ほな復習や。義経に関するキーワード考えつくだけゆうてみ。」「鬼一法眼、遮那王、奥州平泉、
藤原氏、逆櫓、那須与一、安徳帝、腰越状、船弁慶、吉野、関守富樫・・くらいですか。」「ほう、大事なのを
みんな抜かしよったな。」「だって誰でも知ってるのはクイズになりませんよ。」「そやな。次は信長で・・?」
トントン・・『・・あ、ここね。ごめんください。』「はーい。」「開いとりまっせ。」ガチャ。「ごきげんよう。」
「あ、たしかガブ女の。」「『復活の光』江利子です。明日の対戦相手のメイリンさんにご挨拶までと。」
「わざわざすんまへん。いま出かけてますけど、子一時間で戻る思います。」「では待たせていただきますわ・・
少々見学してもよろしいですか?」「どうぞどうぞ。ミーア、案内したり。」「案内するほど広くないですけど。
まずここは事務所です。」「それは言われなくても・・へえ、いろんな本やビデオが。・・歴史読本?」
「クイズ番組で稼ぐための勉強です。」「レッスンの合間は雑学の勉強や。一般教養からトリビアまで、何でも
広う浅そうに網羅せんとな。」「それに頭のいいアイドルって、あまりいませんのでレアもの扱いされるんです。」
三階、レッスン場。「へえ~、こうなってますのね。」「ここで歌もダンスも鍛錬も、何でもやりますよ。」
「・・うわ~、すっごい衣装ばっかり!」「そっちが私、こっちがメイリンさんのステージ衣装です。」
「隅に積んでる布団は?」「ここ寝室でもあるんで。投げ技練習のマット代わりでもありますね。」「へえ・・」
事務所前。「もうすぐお昼か。」「急いで作らないとね。」「自炊までしてんの・・なんちゅー芸能プロよ。」
・・ブロロロ!キキィィーッ!『なんだ?』ドカドカ!「・・あ、メイリンさん!」「まだ無事ですの?」
「・・間に合いました。」「江利子さまは?」ワイワイ!「あ、あの、事情がよくわからないんだけど。」
「かくかくしかじかで、・・まだ会ってません?」『いいえ。』「となると・・もっとまずいかも。」
「とにかく事務所へ行ってみましょう。」ドカドカ!「・・何なの?」「明日の対戦相手の関係者です。」
ドカドカ・・バタン!「いらっしゃーい。・・おや、ご一同さん。」「社長さん、江利子は?」「上の階やで。」
ドカドカ・・バタン!『江利子さま!・・あ?』ふわさっ。「どう?」「わー、よく似合いますよ。」ぱちぱち。
「・・江利子、なにやってんの?」「聖?・・どう、すっかり気分は芸能人よ♪」くるくる。『・・は~。』
がっくり。「心配して損した。」「いつもながら先の読めない方ですわ・・」「・・なんだったんでしょう?」
コポコポ。「紅茶どーぞ。ワンパック出しですけど。」『あ、どうも。』「でと。メイリンさま、明日はよろしく。」
「はい、いい試合にしましょう。」「江利子さんでしたっけ。どういった技をお使いになりますか?」「光を。」
『ひかり?』すっ、ポオッ。「なんや?指先に光が。」ピーッ。スパッ!『おおっ!』「ティースプーンが切れた!」
カラカラーン。「こんなカンジですわ。」「・・生体レーザー。生体発光現象の一種だけど、ホタルの光や夜光虫が
現実的なとこで、これほど高出力のは見たことないわ・・」「お姉ちゃんよく知ってる。」「江利子は体内で分子の
振動励起を起こし、体外へレーザー発振することができる。指先なのは制御しやすいだけの理由で、その気になれば
身体のどこからでも発することができるよ。」「平成ゴジラのアトミック・ブレイクみたいなものですわ。」
『うわ~・・』「接近戦でも油断できませんね。」「黒薔薇会・・これほどとは。」「で、メイリンさまの流派は?」
「斉派太極拳です。」ぎょっ!「ええっ!・・まさか実在してたんですの!」『瞳子ちゃん?』「知ってるの?」
「はい。・・伝説の殺人拳。日中戦争の折り、完全武装の関東軍を徒手空拳で次々と葬った、闇の太極拳ですわ。」
「よくご存知で。現在の太極拳は健康体操みたくなってるけど、斉派は本来の一撃必殺拳としての威力を残し、
中国武術界からも異端中の異端とされてます。」「知っとるで。少林寺衰退の一因は、その斉派の一拳士によって
高僧が次々と倒されたからという伝説もあるくらいや。」「事実です。当代きっての達人、白老師。・・祖父です。」
「・・これは面白いわ。わたくしの光とあなたの闇の太極拳、いずれが勝つか・・」「面白くなりますよ、確実に。」
「そこで提案や。もしメイリンが勝ったら、あんさんウチの事務所に入り。」『ええっ!』「スカウトですの?」
「さっきから見とったが、皆はん素地がすばらしいで。ちょっとレッスンすりゃトップアイドルも夢やない。」
「でも学生の身分で・・」「小坊がガンガンやっとるご時勢やで。高校生でも遅すぎるくらいや。」「たしかに。」
「江利子どうする?人生のターニングポイントかもしれないよ。」「いいでしょう。わたくしも芸能人にはいささか
興味がありますし。」「江利子さま?!」「・・もっとよくご考慮を。」「こちらも条件をつけさせていただくわ。
わたくしが勝ったら、この事務所への黒薔薇会の立ち入り御免を。」『・・はあ?』「ほう・・かまへんで。」
「?・・えーと・・あれ?」「江利子、なんか企んでるね。」「そうよ聖、とっても楽しいことをね・・」キラリ♪
しばらくのち、黒薔薇の館。「・・江利子、アイドルになりたいの?」「ちょっと面白そうだから。」「お姉さま!
芸能人は見た目ほど華やかなものではありません!」「地獄のようなレッスンの日々、寝食すらまともにできず
ボロボロになっても働かされ、やがて忘れられ、捨てられる・・女工哀歌もかくやの過酷な世界ですよ。」
「そうかしら。息の長い芸能人も多いみたいだけど?」「あれはごくごくわずかな一握りです。その陰には名前すら
知られない数百倍の芸能人がもがいてるんです。」「弱肉強食、冷酷非情。それが芸能界です。」「ふーん・・
それって、代行者とどこが違うの?」はっ。「わたくしたちだって、日々鍛錬を欠かさず、一朝事あらば、命を
なげうってでも異教徒を屠る・・死して屍拾う者なし。さほど違いはなくてよ。」「なるほど、一理ある。」
「まあいいでしょう。客観的に江利子が負けるパターンは想像できないしね。」「くわえて、エターナルにコネを
つけておけば、芸能界へのアプローチが容易になるわ。」「あ・・そういう側面までは見てませんでしたわ。」
「次の学園祭には誰か来てもらえるかもね。」「生徒とのコラボも面白そうですわね。」ガヤガヤ。「静粛に。
たしかに江利子のいうとおり、芸能界へのパイプは魅力的ね。」「でしょ。まあ明日は楽しませてもらうわ。」
「む~・・」「?・・瞳子、どした?」「江利子さま、相手を舐めすぎですわ。斉派太極拳の恐ろしさを・・」
ふたたび「エターナル」。バン!「バルド社長、これはどういうこと?!」「ん~・・なんのこっちゃ?」
「事務所で生活してる件ですよ。」「せめてアパートとかマンションとか、普通の暮らしをさせてあげないと!」
「・・メイリン、そのほうがええか?」「・・いえ、今の私には臥薪嘗胆の環境が必要です。それに最初はやはり
戸惑いましたが、慣れてみると、これも悪くないです。」「メイリン?!・・アスラン、何とか言ってやって。」
「残念ながら僕も同じ思いです。メイリンが移りたいなら、とっくにそうさせてます。」「ふう。・・わかった。
あたしもここに泊まるわ。」「ミーア、余分のフトン出したげ。それと晩メシ一人前追加や。」「らじゃー。」
「やれやれ・・あんたも難儀な移籍したわね。」「前よりずっと楽しいよ。こうるさいこと言われないし、
公然セクハラも無いし。」「レッスンも充実した内容で、以前より格段に実力は上がってます。」「へえ・・
じゃ、ちょっと試してみるか。」ザッ。「いいよ。」ポキポキ。『はぁぁぁ・・』スゥゥ・・「おっ、やるんか。」
「ルナマリアさんもメイリンと同じく、斉派太極拳の高手ですから。」「はっ!」ドン!「はいっ!」シュルッ、
ぱしっ。グン!「龍尾擲!」ギュン!「おっと!」くるっ、ダン!「あの巻き投げから体を返す・・やるわ。」
ダッ!「迎撃!」ドン!「転舞!」ポン、ヒュルッ!「なっ?!」『おおっ!』ぴっ。「く・・」「一本もらい。」
「メイリンさん、すっごーい!」「無重力のように相手の体表を転がって後ろを取る・・軽気功の一種やな。」
「お姉ちゃんが弱くなったんじゃない、あたしが強くなったの。」「・・なるほど。でも明日の相手はまさしく光。
こんなに簡単にはいかないよ。」「たしかに光は速い。けど使う人間は光じゃない。」「ほう、見えとったか。」
「そうですよ。倒すのは拳銃じゃなく、撃ってる人間のほうです。」「・・いいでしょう。そこまでわかってるなら
もう何も言わない。・・ちょっと仕事してくる。」すっ。『え?』「セイバーに対光学兵器防御用の偏光塗装を。
一回までの直撃なら耐えられるはずよ。」「お姉ちゃん・・ありがとう。」「晩メシはドックに持ってきてね。」
近所の貸しガンダムドック。シューッ・・『ルナマリアさん、食事です。』「ありがとアスラン。」パシュッ。
スタッ。「どれどれ・・雑炊か。」「熱いうちにどうぞ。」「そうね。いただきます。」ハフハフ。「うまい!」
「・・まだかかりそうですか?」「子一時間てとこね。・・アスラン、進展あった?」「いいえ。メイリンの眼中に
僕は映ってません。今はミーアしか見えてませんね。」「やれやれ・・一蓮托生までした心理がわかってないか。」
「いえ、僕としてもメイリンは恋愛の対象ではありません。大切なパートナーではありますが。」「なるほど・・
当人がこれじゃ発展するわけもないか。」「恋愛の対象なら、どっちかといえば・・」ぴく。「・・おかわり。」
「いずれにせよ、メイリンが今ほどのびのびとやってる姿はありませんでした。」「トップアイドルの地位か・・
はた目にもかなりきつそうだったものね。」「実際そうでした。でも・・ミーアが現れてから、全てが変わった。」
「それはあたしにもわかるわ。・・あの子、すごい。今までの薄っぺらなアイドルとは本質的に違う。純粋でいて
同時に精緻なまでに考えぬかれた言動。頭カラッポのそこらのバカドルじゃ、まったく勝負にならないわ。」
「加えてバルド社長の辣腕と、そのバックにあるアレクサンドラグループの影・・まさに絶対無敵の布陣。」
「にしては、生活苦しいのはどういうこと?」「稼いだお金はみんな衣装やステージ経費につぎ込むためです。
お客には常に最高の舞台で最高のパフォーマンスを見せる、それがプロのアイドルだと。」「最高品質の商品を。
製造業では常識以前のことだけど、サービス業でそこまで徹底させるとは・・『芸能の虎』、名前どおりね。」
「考えようでは、事務所での合宿生活も常にプロ意識を持たせるためかも。」「サラリーマンじゃなく自営業であれ。
稼ぐはただ己が身ひとつのみ・・まさにプロね。あたしら大手の技術屋といえども、見習うべき点があるわ。」
同じころ、黒薔薇の館。「あら、もうこんな時間。祥子、帰りましょう。」「はい、お姉さま。」ガタッ。
ツカツカ・・ピカッ。「ん?・・あの光は。」「グラウンドのほうですわ。」「・・もしや。」「江利子さま?」
すぅぅ・・「・・はっ!」シュパパパッ!「やっ!」シュピィッ!「はああああーっ!」シュドオオオーン!
「・・江利子さまが、あんなに真剣に練習なさっている姿、初めて見ますわ。」「そうでもないのよ。江利子は
あれでも責任感が強く、常に最高の状態を保つため、ああして誰も見てないところで激しい鍛錬を積んでるの。」
「学園を統治する立場にある者は、いついかなる時でも最高の力を発揮できなければいけない・・ですのね。」
「そう。それこそが黒薔薇に課せられた責務・・よく見ておきなさい、『復活の光』の真の姿を。」「はい。」
「ふう・・どうも一人じゃはかどらないわ。」『令でも付き合わせばよかったんじゃ?』はっ。「・・聖。」
「いくら異能の特性が違いすぎるたって、スールを頼ってあげなきゃ。」「ケガさせちゃまずいからね。」
「ふふ・・しょうがないから付き合うよ。」ザッ。「聖が相手じゃ、手抜きはできないわね・・」ボオッ。
「手なんか抜いたら、あんた真っ黒焦げだよ。」パリパリ・・「軽いヤケドで済んだらラッキーということで。」
払暁、「エターナル」。(・・ん?)ぱち。(ミーア・・?!)ばさっ。(フトン畳んでる・・もう起きたの?)
ちらっ。(社長もいない・・そういえば、二人ともいつも先に起きてたっけ。まだ五時なのにどこへ?)むくっ。
そーっ・・パタン。(事務所?・・いない。玄関も鍵かかってる・・屋上?)トントン・・そっ。(いた・・)
『・・・・』(・・座禅?)「・・聞こえるけ?」「はい。・・ドーン・コーラス。太陽が地球を楽器として奏でる
壮大な交響曲が。」(ドーン・コーラス?・・何も聞こえないけど。)「耳じゃなく、身体で聞くんですよ。」はっ!
「メイリンも来や。一緒に聞こで。」「は、はい・・」すとっ。「気を鎮め、心を開放するんです。余計なことは
何も考えず、この静謐な空気と一体化するつもりで・・」「・・空気と一体化。」すっ・・(・・?!聞こえる。)
ヒュイヒュイヒュイ・・(すごい・・わかる。静かなのに、天空いっぱいに響き渡る音楽が。)「聞こえましたね。」
「うん。・・これが天空の音楽。」「晴れた日の早朝に、ごく短い間しか聞こえん音楽や・・夜明けまでの。」
キラッ。「夜明けです。」すっ・・「ミーア?・・あ・・」スゥゥゥ・・「天照の舞。出雲のミーアの実家に
神代から伝わる舞や。」「アマテラス・・太陽。」「出雲の巫女は舞で神を降ろす天鈿女の末裔や。こうやって
夜明けを舞で迎える儀式を子供の頃からやっとって、弱視はその代償や。」「・・太陽光線で。」「ワテもしばらく
付き合っとって、グラサン必携になってもたわ。」サァァァ・・パアッ!「あ!・・」「見えたな?あのジャージが
陽光で消されたんを。」こく・・「・・羽衣をまとった天女。」「ワテがミーアに惚れ込んだ理由のひとつや・・」
「・・大空のステージ、宇宙のバックオケ、そして・・太陽の照明。」「そや、これぞ世界最大のステージや。」
ガクガク・・(勝てない・・スケールが大きすぎる。)すっ。「・・はっ?」「シャル・ウイ・ダンス?」「・・。」
すっ・・「技術は必要ありません。ただ心のおもむくままに、この朝の空気と光と一体に・・」スゥゥゥ・・
「ほう・・意外とスジええな。」・・カツカツ。「?!・・メイリン。」「あ!・・」(しーっ。)『・・。』
(メイリンが・・あんな舞を。)(二人ともなんて美しさなの・・まるで天女の舞。)(二人はいまトランス状態や。
まさに神が降りてきとる。しばらくこのままな。)こく。(これが・・ミーアの力。)(・・アイドル以上の舞姫。)
黒薔薇の館。チュンチュン・・「ごきげんよ・・おっ?」「すぴ~。」「くか~。」(江利子さまと聖さま?)
(まあ・・寝袋も使わずに。)(遅くまでやり合ってたようね。それで館に戻ったところでバタンキューと。)
(祐巳、蒸しタオルとお茶を。)(わかりました。)(ちょっとコンビニ走ってきます。)(頼むよ、由乃。)
ジャーッ。ぱたん。(濡れタオルを電子レンジに?)(これですぐに蒸しタオルができるんですよ。)(へえ・・)
「?・・んあ?」むくっ。「なむ~・・もう朝かい。」「・・あら、みんな来てたのね。」『ごきげんよう。』
チーン♪「できましたー。・・あちちちっ!」「こっち投げちゃいなさい。」「よっと。」ぽい。「あちちち。・・
起き抜けにはこれがイチバンね。」「祐巳ちゃん、こっちにも。」「はい聖さま。どっこいしょ!」ぽい。
「おあちちちっ!・・ふう、気持ちいい。」ふきふき。「そういえばおフロにも入ってなかったわね。」ぽんぽん。
トントントン・・ガチャ。「朝食にコンビニおにぎり買ってきました。」「ありがと由乃ちゃん。はいお金。」
「これから授業だけど、どうするの二人とも?」「パス。」「悪いけど。」「でしょうね。先生に言っておくわ。」
「そういや、一時限め何だっけ?」「琥珀先生の実用薬学よ。」『ゲッ!』「まずい・・琥珀先生だけはまずいわ。」
「フケた罰に、どんな変な注射されるかわかんないよ。」「こないだ一号生でツノが生えた人がいましたね。」
「二号生でも、重力が減って天井に貼り付いた子がいたね。」「ああ・・三号生でも皮膚が装甲化して、呼吸困難で
病院送りになった人いたわ。」「蓉子、やっぱ出るわ。」「あら、無理しなくても♪」「万難を排しても出る!」
一時限め。「ですので、ニコチン系は死に方が汚いので避けてくださいね。やはりきれいなのはスコポラミン系で、
自白剤にもなるので重宝しま・・あららー。」『え?』「す~・・」「江利子、起きなさいって。」ゆさゆさ。
「あっはー♪江利子さまはおねむなのですねー。ならば。」チャッ。「眠気バッチリ覚めるお注射を♪」きらーん。
「せ、先生、江利子は午後からファイトですので、ドーピング検査に引っかかるような注射は」「この琥珀さんが
そんなヘマしませんよー。ドーピング対象薬物なんて安易なもの使いませんて。」「・・余計にヤバそう。」
「えい♪」ぷす。「ん?・・?!」ぴきぃぃーん!「ほら元気♪」「え、江利子?」ゴゴゴゴ・・ボボボボオッ。
「まずい!全部の指先に発振が!」「あららー?ちょっと薬が濃すぎましたかねー。」「・・うがああああーっ!」
シュピィィィーッ!「全員床に伏せて!」ばっ。スパパパッ!「蓉子、こりゃ最悪だな。」「ええ。・・え?」
すとととっ。「琥珀先生?あぶない!」シュピィィィーッ!「ほいほいほいっと。」ひょいひょい。「すげ・・
十本のレーザーを完璧にかわしてる。」「よく見りゃけっこースキだらけですよー。」「さすが真祖の一族・・」
「はいそこまで。」すっ、とん。「あ!・・」ヘナヘナ・・「はい、制圧かんりょーです♪」「・・何を?」
「人体にはいろいろスイッチがあるんですよー。そこを押せば何だってできちゃいます。いずれ教えますよー。」
休み時間。「ふう、えらい目にあったわ。」「災難だったわね。」「変な注射で調子どうだい?」「ん~・・
なんか元気は出たみたい。」むん!「いちおー効いたんか。」「パワーバリバリ、MAX HEARTってカンジ?」
「?・・江利子、やっぱおかしい。」「こーゆー単語使わないヒトのはずだよね。クスリの副作用かな?」
「まあファイトには支障ないし、元気がいちばん!」「・・なんかむっちゃ不安なんだけど。」「聖に同感・・」
ワーワー!「さて今日の第二試合は、もうすっかりおなじみ『黒薔薇会』より『復活の光』江利子のフラッシュ
アビス対、今回が初陣の第二のアイドルファイター、メイリンのドラゴンセイバー!」「いよいよ最上級生の
ご登場やな。強力な『黒薔薇会』に君臨する三大幹部が一人や。」「データによると、光を武器にするそうね。
でもレーザー兵器って使えない武器だよね?」「ビーム兵器よかバカでかい電力必要やし、環境に左右されるし、
偏光シールドや電磁防壁で簡単に無力化されやすいしな。やきんMSの主力はビーム兵器なんや。」「ガンダムの
標準型動力炉出力くらいじゃ、とても実戦に使えないはずよね・・」「いや・・動力炉なんか必要あらへんかも。
それ自体が『能力』ならな。」「レーザー発振能力・・そんなもの本当にあるの?」「発光生物のすごいヤツと
考えるべきなんやろうな。いわゆる生体発電能力と根はいっしょかも。」「あ~・・なんとなくわかった。」
「さて次はメイリンはんやな。」「この前の生放送ハプニング電撃移籍から人気急上昇だって。」「にしては、
あれ以降はちょいとTVで見んなったな。」「なんでもデビュー戦に備えて強化トレーニングしてたそうよ。」
「まあ環境も変ったし、ある程度の再校正はやむをえんか。で、格闘スタイルは?」「斉派太極拳。」ぎょっ!
「な、なんやて?!」「紅蘭知ってる?」「・・こら予想外に、死闘になるかもしれん。」「・・なるほど。」
ザッ。「メイリンさま、よろしくお願いし・・?」じーっ・・「ここがリング・・どんなコンサート会場よりも
大きく、どんなライブよりも熱いわ。」「なんなら一曲歌ってもよろしいですけど。」「ええ、そうするわ・・
この拳で謳ってみせましょう。」ぐっ。「・・そうですわね。リングという舞台で詠うは、ただこの拳のみ。」
「そのとおり、しかもデュエットで。」「奏でましょう、美しき拳のコンチェルト(協奏曲)を!」「応!」
すっ。「光あれ、フラッシュアビス!AMEN!」「天宝来々、ドラゴンセイバー!」パチン!ギン!ドドドド・・
『バーニング・ガンダムファイト!レディー、ゴー!』「光よ、疾れ!」ボボボオッ、シュパパパパッ!
「アビス十本の指からパルスレーザー!」「ウイングセイバー!」ジャキッ!「ウイングシールド!」バサッ!
チュチュチュン!「あらビームコーティングされとんやな。」「楯なんか無意味よ・・そこ!」シュピィッ!
ビシッ!「つっ!足に!」「よく見てるわ・・わずかに隙のある足元を狙うとは。」「さすが黒薔薇の頭や。」
「もらった!」シュピィィーッ!「十本のレーザーメスが!」「こら回避できんで!」「・・はぁっ。」ユラッ。
スカカカッ!『外れた?!』「そんな?・・あれはいったい?」ユラユラ・・『斉派太極拳歩法・陽炎・・』
「な、なんで姿が揺らめいて見えるの?」「・・特殊なフットワークや。動く絵て知っとるか。」「ええ、
渦巻き模様みたいなのが、ぐるぐる回って見えるやつね。」「あれは視差の特性を応用したものなんや。」
「視差・・パララックス。」「知ってるとおり、右目と左目は同じもんやない。それぞれ個性を持っとる。
このズレがあるきに、物を立体的に見られるんや。やが、連続する模様を見るときは、それが仇となるんや。」
「その錯覚を?」こく。「セイバーはものすごい速度でごくごくわずかづつ移動しとるんや。レーザーが貫くは
残像のみ・・恐ろしいまでの歩法や。」ユラユラ・・スカカカッ!「これが・・斉派太極拳。」ゴク・・
『・・!』ダン!「動いた!」「接近戦に持ち込めば!」「そうかしら?アルミューレ・リュミエール。」
ピカッ!「目くらましなんか!」ゴオッ!「そんなつまらないことしないわよ。」バシイイイーン!「ヒット!」
「セイバーの拳が顔面直撃!」「・・いや!」ビタアッ!「な・・なにこれ?寸前で・・止まってる!」
「うふふふ・・まだ光ってるのがわからない?」「・・まさか?!」『光波防御帯よ!』「お姉ちゃん?」
『いわば光のバリア・・でもエネルギー攻撃だけでなく物理攻撃まで止めるなんて・・恐ろしい出力。』
すっ、シュピィン。「ライトセーバー。」ヒュッ!「はっ!」ババッ!スカッ!ザザーッ!・・「あぶない・・」
「この光壁はいかなる攻撃も通さない。無敵モードはズルっぽいけどね。」「・・お姉ちゃん、質問。なんで
相手の攻撃は通るの?」『光の周波数を同期させてると考えられるわ。それなら光壁は無いも同然よ。』
「なるほど・・ありがと。」すっ・・「はぁぁぁ・・」「セイバー、気を練りはじめた?」「どうする気や?」
「・・!」ダッ!「覇!」ドン!バシイイイーン!「ムダなことを。」「そうかしら?」ブゥゥゥーン・・
「?・・この音は?」ピキピキッ・・「・・まさか?!」「・・はああああーっ!」ドン!パリイイイーン!
『バリアが砕けた!』「もらったあああっ!」ドゴオオオーン!「ぶはあっ!」ズダダダーン!シュゥゥ・・
「セイバーのすさまじい突きがヒット!」「ば・・バカな・・無敵の光が・・」「いえ。光はいわば電磁波、
ならばエネルギー準位を上げてやれば、おのずと砕け散る。」「そんなことが・・はっ?・・生体波紋!」
「そう。呼吸法で生体波紋を練り上げ、光壁を振動させ暴走させた。これぞ斉派太極拳奥義・長城崩塁!」
「く・・けどまだ試合は終わって・・?!」ガクッ!「な、なに?・・身体が思うように動かない!」ギギギギ!
「胸をよく見てみれば?」「え?・・これは!」ブスブス・・「・・ドクロ状の打痕?!」「斉派太極拳奥義・
髑髏呪印拳。特殊な拳の握り方で打つことで、そのような打痕ができる。そして胸部秘孔への打撃により、
運動神経を一時的に麻痺させる!」「まさに暗殺拳!」「太極家流数あれど、斉派が最異端とされとるわけや・・」
「とどめる!」ダッ!「セイバー、フィニッシュに入った!」「・・ふふっ、そうかしら?花開け、黄薔薇!」
バタバタン!「え?」「アビスのショルダーバインダーが開いた?」「内側は・・鏡?」ググッ・・ぴたっ。
「腕をクロスさせた?」ボボオッ。ピィィィ・・「ロサ・フェティダ!」シュバババッ!カアッ!・・『なっ!』
キュドオオオオーン!『うわあっ!』ズドシャアアアアアーッ!「・・光の奔流が!」「あの凹面鏡でレーザーを
収束増幅させて巨大レーザー砲に!」ゴォォォ・・「・・地面まで!」「まるでソーラ・レイ・・なんて破壊力や。」
むくっ。「ふう、麻痺もとれた。・・さてと、リングの端まで吹っ飛んだのかしら?」『そうでもないけど?』
はっ?!「・・上!」ばっ!ゴォォォ・・「・・双頭の竜?」「これぞ飛行形態『双頭龍(シャオトンロン)』!」
「なんとセイバー空中に逃れてた!」「反撃よ。轟雷!」シュババババーッ!ズガガガガーッ!「くうっ!ならば
撃ち落すまで!」バカバカン!「またも反射鏡を開いた!」ピィィィ・・「ふっ・・はあっ!」ゴオオオーッ!
『バカな?!』「セイバー、アビスに突撃!」「自殺行為や!」「わざわざ攻撃圏内へ飛び込んでくれるとはね!
もらったわ!」「同じ手が二度も・・」ジャキーン!「ガンダム形態に戻った?」「通じるわけないでしょ!」
ドン!ギュララララッ!「ブレードトンファーのドラゴンヘッドが伸びた!」「・・そか、その手があったで!」
バリイイイーン!「反射鏡が!・・はっ?!」ボオッ!「双竜鼓打!」ドゴオオオーン!「がはっ!」「決まった!
ダブルトンファー両手撃ち!」「いや、相打ちや!」「え?・・あっ!」キラッ。「・・セイバーの首にアビスの
レーザー貫手が!」「あの瞬間に首スジに同時にヒットさせたんや・・」「・・まだこんな余力があったとは。」
「一矢くらい報わなきゃ・・沽券にかかわるわ・・」「やる・・わ。」ユラ・・ズズーン!「この勝負、相打ち!」
タタタタ・・「お姉さま!」「江利子さま!ハッチ強制開放!」パシュッ。「・・お姉さま!」スタスタッ。
「く・・」「・・アバラ三枚に脾臓破裂。由乃、救急班を!」「はい!」『その必要ないですよー♪」すたっ。
「・・琥珀先生?」「よく見てください、もう治りはじめてますから。」『え?・・あ。』シュゥゥゥ・・
「・・あれ?令と由乃ちゃん。」むくっ。「お姉さま、どこか痛いところは?!」「ん~・・今は無いわね。」
「ど・・どういうこと?」「あっはー♪あのお注射、役に立ちましたねー。」「・・いったい何を注射したんです?」
「名づけて『ふっかつのじゅもんくん11号』。投薬した時点の肉体を記憶させ、たとえ致命傷でも、その状態まで
復元させるんですよー。」「すごい・・」「もっとも、たまにミスってオダブツになることもありますけどー。」
「それめっちゃリスキーじゃないですか!」「逆に無敵モードに化けることもごくまれにあるので半々ですねー。」
「とにかく、今回はうまく働いてくれたみたいよ。」「よかった・・」「・・そういやあっちは大丈夫なのかな?」
「メイリン!」「生きてる?!」・・パシュッ。「うへ~、きつかった。」「首の具合は?」「だいじょうぶ。
MTS切ったら痛くなくなったよ。」「そうか・・よかった。」「傷系はフィードバックの痛みだけで済むからね。」
「メイリンさん、ナイスファイトでした!」「初陣でこの結果ならまあまあや。」「う~、自分的には反省多いな。
もっともっと強くならなきゃ。」「そや、その姿勢が大事なんや。それともうひとつ・・楽しかったかや?」
「・・はい、とても楽しかったです。」「よっしゃ、それが一番や。・・おっ、来たで。」「よっと。」スタッ。
「メイリンさん、ありがとうございました。すばらしいファイトでしたわ。」「江利子さんも強かったです。」
「さて相打ちとなると、約束はどうしましょうね?」「社長?」「そやな~・・事務所の出入りはまあええで。
それとスタジオ観覧とかも廻しまひょ。ほなら一人くらいその気になんのがおるかもしらんし。」『やったー!』
で、数日後。「乙女クラブ、始まるよ!」パチパチパチ!「司会のメイリンでーす。さて今日の乙女ゲストは、
いま話題の聖ガブリエル女学園の皆さん。」『ごきげんよう!』「では自己紹介代わりに、なんかネタよろしく。」
ささっ。「祐巳でーす。」「桂でーす。」『二人合わせて!』すぱあああーん!「そらもうええっちゅーねん!」
「ほへー。」「あー、桂さん気絶しちゃった!こーゆーときは、あれだね。ガンダムあるある探検隊~!」
『ハイ!ハイ!ハイハイハイ!ガンダムあるある探検隊!ガンダムあるある探検隊!(字余り)』「ガンダムの
『あるある』ね。」「いくよ!・・桂さんちょっと詰めて。・・せーの。スーツ着るたび身悶える。(以下略)」
アハハハハ!「これあるねー。」「あのスーツって、めっちゃきついもんねー。もーほとんどボンテージだもの。」
「祐巳さん、やったことあるの?」「もー、あちこち食い込んで・・って、やってないってば!」「怪しい・・」
アハハハハ!「あはははは!祐巳ちゃん、やるねー。」「桂さんのツッコミもうまいわ。」「いいコンビね。」
「うふふっ、あははははっ!」「祥子、珍しく大笑いだね。」「だ、だって、祐巳ったらおかしいんですもの!」
「次いくよ!・・せーの。変型までもトレースされた。(以下略)」アハハハハ!「あー、変型までトレースされたら
えらいことになるね。」「ちょっとやってみようかな。よっと。」どん、ぐっ。「ゼータガンダム。」アハハハハ!
「今のは初歩の初歩。次は上級編!桂さん、サポートよろしく。よいしょ!」ぐいいいっ。「・・イナバウアー?」
「ガンダムエピオン・・のつもり。いでででで!」「そりゃ無理だって。ヒザだけでいいんじゃ?」「そのココロは?」
「ハンブラビ。」アハハハハ!「さすが祐巳ちゃん!」「あ~!笑いが止まんない~!」「うふふふふっ。」
「さすが祐巳さま、玄人はだし!」「!・・」くっくっくっ!(声をおさえて笑ってる可南子)「まさか黒薔薇会に
お笑い芸人がいるとまでは想定外でしたわ。」「瞳子ちゃん、ちょっとちょっと。」「・・はい?」ツカツカ。
「これをこーして・・」ひょい。「はい、アッグ。」ワハハハハ!「・・祐巳さま!」ガーッ!「はい、その顔!」
「・・はい?」「桂さん、わかる?」「・・ザクレロ?」「大正解!」ワハハハハ!「あ、あのねえ・・」ぴくぴく。
「ほ~、なかなかやるで、あの娘。」「お笑いアイドルってセンもいいですねー。でも・・」「なんや、ミーア?」
「・・あの子、途方もない暗さも持ってます。私たちではとうてい理解できないほどの哀しみと・・憎悪を。」
「・・さすがによう見とんな。ワテも同じモンを感じとった。やが。」「光、ですね・・ごくごく小さいものですが、
心の暗黒の底に輝くものが。」「その光を育めるかどうかで・・」「悪魔になるか、天使になるか・・あるいは。」
君たちに最新情報を公開しよう。
第五の花は二号生「アカシアの花」志摩子、対するは「風の恋人たち」エリス。
可憐で優美な二つの花の美しく、しかし熱き戦い。
無数の扇子がリングに舞い、ツインダークが空を切り裂く。
だが摩倶荼羅教主の真の姿が覚醒するとき、リングは地獄に一変する。
暗黒の『死魔子』に勝てるか、ミストラル!
次回、バーニングガンダムファイト激闘編 第20話
「アカシアの花!冥府からの風」へ、バーニング・ガンダムファイト!レディー、ゴー!!