機動武闘烈伝ダブルGガンダム   作:風雲再起

22 / 27
薔薇会・BGF参戦準備会議-ガンダム名決め-

「今日のテーマは各人のガンダム名を決めます。みんな、考えてきた?」「はい、お姉さま。」
「はい祥子。」「せっかくチームなのですから、名称も統一性を持たせるのがよろしいのでは
ないでしょうか。」『おー。』「いい案ね。どういうルールがいいかしら?」「はい。」
「由乃ちゃん。」「種および種捨てで、ろくな見せ場もなく消えていった不遇なガンダムたちは。」
ガヤガヤ・・「たしかに、弱者救済のダブルGの基本コンセプトには合うね。「でも種ガンダムは、
赤と青2以外はほとんど中遠距離戦用に造られてるのでしょう。格闘戦のガンダムファイトには
合わないのではなくて?」「もちろんそのままじゃ使いものになりませんから、モトネタを
活かしつつ大改造するんです。」オオ・・「さすが改造人間スーパー由乃、いいこと言うね。」

ストライク:「こりゃパスだね。際立った特徴ないし。」『うんうん。』「ボツね。」

イージス:「変型は使えそうですね。」「あれって、なんか花に見えません?」『あ・・薔薇。』
「あ、それいただき。薔薇の高機動形態・・って、必要かな?」『う~ん・・』「サウンド形態と
いうのはどうでしょう?」はっ。『静さま!』「ナイスだね。死の聖歌を増幅するアンプ形態
『ロサ・カニーナ』。どうよ?」『聖さま、グッジョブ!』「ではイージスは静さんのものね。」

ブリッツ:「これはイスカリオテでもうパクってるからダメね。」「同名のもすでに魔導空軍
ルフトバッフェにいますわ。」「使用済みならボツしかないわね。」「はい、消えた・・と。」

バスター:「あの大砲をどうするか、よね。」「はい、それもらい!」『由乃?』「大砲外して
余計な武装もとって、剣撃仕様に変えればいいもの。」「・・ソードカラミティ?」「そっちは
上位機種だから令ちゃんにあげる。私はこっちでいい。」「じゃあ自動的に令はソードカラミティに
なるけど、いい?」「もらおうと思ってましたから。むろん蛍光灯じゃなく別の刀を使います。」

デュエル:『う~ん・・』「特徴ないなー。アサルトシュラウドもいまいち・・」「逆にいうと、
応用しやすい機体ともいえます・・いただいていいですか・・」『志摩子?』「手持ち武器なので、
機体はシンプルなほうがいいんです・・」「いいんじゃない?デュエルなら自由度高いし。」

レイダー:「これ・・どうしよう?」「飛行型なんてリングの上じゃ、無用の長物だしね。」
「ハンマーでなくてもよろしいのですよね・・いただきますわ。」さっ。「お姉さま?」
「むろん口とかいろいろ改造させてもらいますが。」「機動性重視のくせに銃火器多いからね。」
「お姉さま、ハンマーは残したほうがいいのでは?」「あんなの重しにしかならないわよ。」
「いえ、もっとコンパクトにまとめるんです。」「・・あ、祐巳ちゃんの考えてることわかった。」
「なんですの、江利子さま?」「ゴーゴーボール、でしょ。」『お~。』「あはは、似てません?」
「??・・なんなの祐巳、そのゴーゴーとかいうの。」「とにかく、私に任せてくださいね。」

フォビドゥン:「あの三度笠は改良の余地ありね。」「それ、もーらい。」さっ。『聖さま?』
「けっこー面白い機体だから、狙ってたんだな。」「三度笠はどう使うの?」「コンデンサーに
改造して、板は電極に。」『ああ~。』「たしかに、電気関係を連想させるデザインかもね。」

プロヴィデンス:「これは乗り手を選ぶわね・・誰か?」「もらっていいですか?」『乃梨子?』
「狙ってました。」『ああ・・後光ね。』「さすがは仏像マニア。」「ドラグーンはオミットして
霊力増幅システム『曼荼羅』に改造します。」「呪術戦タイプか・・こりゃ面白そうだ。」

インパルス・セイバー:『いらん!』「はいはい。問答無用でボツね。」

カオス:「あ、これいただき。」『蓉子さま?』「かなり改造の余地ありありだけど、ベース色が
緑色なのが気に入ったわ。」「あ・・ゴルゴダの薔薇。」「どういじくろうかしらね・・」

ガイア:「はいはいはい!ください!」「祐巳?」「スピード命の私にはこれしかないです。」
「ゾイド形態も使うの?」「そこがいいんです。」「MTSなのわかってる?」「なんとかします。」

アビス:「これ、もらっちゃっていい?」『江利子さま?』「肩のバインダーが気に入ったの。
塗装は金ピカにしよっと。」「それオージェじゃないですか~。」「ポセイダルって呼んでね。」
「クワサン・オリビーじゃねえの?」「・・そのココロは?」「でこちん。」「・・(-メ」

「えーと、これでみんなに行き渡ったわね。ではそれぞれ改造プランに入って。」ガヤガヤ。
「お姉さま、やはり武装ポッドは不要ですわ。」「なにこの割り箸?いらないいらない。」
「うわ~、高出力ビームサーベルって蛍光灯みたいでかっこわる~。みんな外そうっと。」
「頭部サテライトキャノンって付けられるかな?」「ペケからかっぱらってくるかい?」
「ビーム扇子はここに付けて・・」「お姉さま、せっかくのアサルトシュラウド、どうにか
使えないものですかね。」「何かいい案ある?・・」「う~ん・・桜と銀杏・・これだ!」

「お姉さま。ゲームで使ったらどれもまあまあいい機体なのに、どうして本編でああもムダ弾
撃ちまくってるんでしょうか?」「乗り手の問題ね。DG細胞に冒されてるような性格破綻者が
ちゃんと使いこなせるわけないでしょ。」「ですね。種割れしてもノーマルに負けてるし。」
「あとは脚本と演出の問題。せっかくのメカ設定を活かす気が皆無ですもの。かといって、
本編で何をしたかったのかさっぱりわからない。だいたい主人公誰なの、あれ?」「ん~、
やっぱタイトルバックのガンダム乗ってる人でしょうね。」「ということは、もう一方は
当て馬でしかなかったわけね。ま、あの頭空っぽキャラじゃ、あれが相応の扱いかもね。」
「いわゆるシャアなりそこないキャラ立場ですね。」「そうそう、その極端な例ね。」
「最後までいいヤツにならないのも悲惨ですね~。」「もともとその気なかったみたいだし。」

*********************************************

黒薔薇会・BGF参戦準備委員会-改造案-

「今日の議題は各人のガンダムの改造プランの発表よ。では私から。由乃ちゃん。」「はい、
ディスプレイ表示します。」カタカタ、タン。ぱっ。オオッ!「名称はソーンカオス。モトネタの
変形機構はオミットし、背部ユニットも撤去。どのみちガウォーク形態なんて使い道ないものね。
手持ち武器はイバラ鞭『ロサ・キネンシス』。さらに接近戦武器としてモトネタの脚部クローを
残してあるわ。」「あれで蹴られたら、痛いじゃすまないね~。」「蓉子さまのイバラ鞭って、
あの『ゴルゴダの薔薇』ですか?」「そうよ。お姉さまの意思に従い伸縮自在。鞭にも槍にもなる、
まさに万能生物兵器よ。」「・・外見からはそうは見えないです。」「お姉さまの肉体と同化
してるからよ。いわば共生体ね。」「それだけで話一本できそうですね。」「書く気あればね。」

「次は江利子ね。」「名前はフラッシュアビス。指先から発する念動レーザーが主力よ。」
「『復活の光』。お姉さまの超能力ですね。」「念を破壊光線にして放つか・・たしかに稀有な
サイキック能力ですけど、間合いを詰められたらいかがします?」「由乃ちゃんはゼオライマー
見てないの?」「あ・・月のローズセラヴィー。」「そう。指先を合わせることで高出力レーザー
ソードになるのよ。」「じゃあ胸部とバインダー内のビーム砲は取り外すのね。」「その代わり、
バインダー内は鏡面仕上げにするの。」『なんで??』「わからないかな~、Jカイザー。」
「・・ああ!」「バインダーを展開して光線増幅パラボラに、マーカライト・ファープか。」
「名づけて必殺『ロサ・フェティダ』。戦艦すら一撃で沈める威力よ。」「やったことあるの?」

「聖、どうぞ。」「おっしゃ。名前はジェネリックフォビドゥン。例の三度笠は変電ユニット。」
「お姉さまの異能、『人間発電所』を応用するんですね・・」「コイツをかぶれば電磁フィールドが
全身を取り巻き、物理攻撃さえも防御できる。電極板を併用すりゃ、たとえバスター砲でも100%
反射できまっせ。」「質問です。それでは攻撃もできないのでは?」「両手からの高圧電撃。
これなら属性は同じだから攻防一体。さらに荷電粒子砲『ロサ・ギガンティア』が必殺技だ。」

「次は静。」「オラトリオイージス。通常は手足に仕込まれたビームブレードで戦いますが、
真骨頂はアンプ形態『ロサ・カニーナ』にあります。これは私の戦闘聖楽を増幅し、ソリトン波と
して相手に叩き付けて破砕します。」オオ~。「いわば音撃ね。」「楽器は使いませんけど。」

「祥子、どうぞ。」「名称はダークレイダー。モトネタの翼はそのまま活かして、さらに分離機能を
追加いたしました。」「それって、ジャス」ばん!「モビルレイヴン『ヒュッケバイン』。いわば
わたくしのママハハです。」オ~。「その手があったか。」「もしやマジでカラス乗せてるとか?」
「いいえ、超AI管制ですわ。大型のファンネルみたいなものね。なお翼の先端部と前翼部には
突撃用ビームフィールドを展開できますわ。」「いたたた・・だから、それファト」ごすっ!
「そして得意の百人一首カードビットに加えて、祐巳の強い推薦でハンマーも付けました。」
オオッ!「ここからは私が説明します。モトネタのは大きく重すぎなので、サイズを小さくし、
さらにビームブレードを内蔵することで破壊力を補いました。名づけて『三笠の月』。」
「♪天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも・・安部仲麿ね。」

「次は令ね。」「サムライカラミティ。武装は聖刀『独眼竜』。」『・・あれ?』「それだけ?」
「何か言い足りなかった?」「副武装とか、ギミックとかないの?」「剣一本でじゅうぶん。」
『む~・・』「令ちゃんらしいっちゃらしいけど・・」「ヘタな小細工は無用ってわけだ。」

「次は祐巳ね。」「名前はビーストガイアです。主武器は双牙刀。着脱式で、手持ち剣にも
なります。でもやはり真骨頂は高機動ビースト形態ですね。」「・・ブレードライガー?」
「素朴な疑問です。ビースト形態でのモビルトレースはどうなってるんですか?」『ああ・・』
「なってるよ、四つんばいに。」ザワッ!「なんでか知らないけど、四つ足モードがしっくり
くるんですね~。」「ケモノ系・・ですか?」「・・」ぴくっ。(・・変ね?いつもならここぞと
ばかりにツッコむ聖さまが、こんなに静かなんて・・?!)すっ・・(・・あの哀しい目は?)

「由乃。」「ハガクレバスター。武器はツイン・ヒートソード。合わせるとツインブレードに
なります。あと隠し武器として、ヒートニードルを手首に内蔵。どっちかというと、これが切り札に
なるかも。」「実戦では太刀よりも短刀での組み討ちが雌雄を決することが多い。そういう点では
認めるが、やはり基本の剣術がしっかりしてないと、その勝機すらつかめなくなるよ。」
「わかってる。だから令ちゃんに鍛えてもらってるんじゃない。もっとも、令ちゃんみたく一刀に
全てを託す境地までには至ってないけどね。」「ふふっ。」『はいはいごちそーさま。』

「志摩子。」「レイジングデュエル・・基本武装は各種の扇子ファンネルです・・なお乃梨子の
提案で、ちょっと小細工してみました・・乃梨ちゃん、説明を・・」「では絵を。」ぱっ。オオッ!
ザワザワ・・「着物風アサルトシュラウド『銀杏桜』。コンポジット・スペーシングアーマー型で、
いかなる攻撃も吸収緩衝します。これで相手の初期攻撃を無力化し、攻め疲れたところで強制排除、
反撃に移ります。」「やるぅ。さすがわたしの孫だってばよ。」「安心して隠居できるわね。」

「最後は乃梨ちゃんね・・」「命名、シャカプロヴィデンス。光背状バックパックは『曼荼羅』
システム。私の霊力を増幅し、大呪術を使えるようになります。」ザワザワ・・「何か?」
「いえあの、そのデフォ画像って・・」「なんでわざわざ蓮台に座禅させてるの?」「これが
デフォ形態ですよ?」しーん・・『・・はい?』「だから、この状態で闘うんです。」『ええっ!』
ザワザワ!「だって、脚は?」「あんなもん飾りです。」「マジですか・・」「・・前例が無いわけ
じゃないわ。マンダラとか。」ぱっ!「でしょ?でしょ!マンダラの試合はみんな観戦してました!
あれいいですねー!頭部あたりなんか、もう最高!」『・・まあ、あれも仏像みたいなもんか。』

会議終了後。ガヤガヤ・・「聖さま、少々・・」「ん?いいけど。」「こちらへ。」・・
「で、なんだい祥子?」「祐巳のことですが。」「・・なに?」「やはり・・聖さまは祐巳の
何かをご存知でしょう。」「・・さあね。」「お教えください。祐巳に何があるのです?」
「祥子の妹でしょ?ならそれは見つけてあげないと。」「・・正直、見つける自信がありません。」
「へえ、そういう弱音を吐くの初めて聞いた。ならひとつだけヒントあげる。祐巳ちゃんの字名って
誰が付けた?」「・・いえ、存じません。スールにする以前から『獣の数字』と付いてましたわ。」
「第二ヒント。その字名、おかしいと思わない?」「・・え?」「字名は聖書から引用するのが
主流。むろん乃梨子ちゃんみたいな例外もたまにあるけど。」「ならば祐巳の字名はまさに
聖書からの引用ですわ。」「わかってないな~。だからなぜ『獣の数字』なのかということ。」
はっ。「あ・・」「ヒントは与えたよ。あとは自分で見つけてあげて。」「・・わかりました。」
カツカツ・・「・・でもね、知らなかったほうがよかったってこともあるんだよ。」

********************************************

黒薔薇会・BGF参戦委員会その3-発注-

♪カラーン。「いらっしゃいませー。」『こんにち・・』「はい、すとおっぷ。」『え?』
「ガブ女の挨拶でもう一回。はい。」『ごきげんよう。』「ごきげんよう。・・いっぺんこれ
言ってみたかったんだ♪」「スーツの寸法取りをするということで、全員で参りました。」
「改造に合わせてスーツも手直ししませんと、せっかくの新機能がお飾りになってしまいます。
それには乗り手の精確な数値が必要ですので。」「よく理解しております。」「ではこちらの
全身スキャナーに乗ってください。磁気で走査しますので、精密機器と金物さえ外してもらえれば、
服はそのままで。順番待ちの間は冷やかしでもしててください。では最初の方からどーぞ。」

ピィィィ・・「はいおしまい。次の方。」ガヤガヤ。「お姉さま、このお店って変わったものばかり
ですねー。」「さすがは法皇庁推薦の錬金術士だけのことはあるわね。価格もそれなりですけど。」
「うわ・・このペンダント、一千万円!」「宝玉の中に何か見えるね。」じーっ。「これって・・
まさか・・星雲?!」「『フェッデンセンのペンダント』ですって・・」「ミクロコスモス・・?」
『祐巳さーん!もうすぐ順番よー!』「あ、はいはいはい!いま行きますー!」タタタタ・・

「ではいきますよ。」ピィィィ・・「ふむふむ・・ん?」ぐっ。ピィィィ・・ピッ。「・・・・」
「・・あのー、終わったみたいなんですけど。」・・はっ。「あ、はい。おつかれさまでした。
次の方どうぞ。」「?・・なんだろ、今の間は?」じーっ・・(・・ヤなもん見ちゃったな~。)

「・・あら?乃梨ちゃん、これ・・」「はい?・・こ、これは!」「はじめて見る仏様ね・・」
「もしやこれは、秘仏・摩利亜観音?!」はっ。「摩倶荼羅教に伝わる、失われし仏様?」
「はい。島原の乱の混乱の中で失われたという、天草四郎様ゆかりの切支丹仏です。」こく・・
「そう・・私たちの教えはそこから始まったわ・・教義を、信徒を守るには愛や信条だけではダメ、
自ら血に穢れても振るう剣が必要・・」「それゆえに汚れから身を起こしたマグダラのマリアを
信仰対象とし、逃げ込んだ山中で出会った異端の仏僧から教わった呪術を導入して、摩倶荼羅教が
生まれました。そして私たちは日本カソリックの歴史を影から支えてきました。その功績ゆえに
法皇庁から内々に正流認定を賜ったのです。」「その歴史を見つめてきた仏像・・これが。」
「価格は?・・50万。これなら。」「・・買えるわ。」こく。『すいませーん、これください。』
「はいはいまいどありー。・・これ?!うわ、ホントに買うの~。」ぴく。「何か問題でも?」
「これ呪いの仏像なんですよ。所有者はことごとく悲惨な死を遂げてます。」『うわ・・』
「それほどの呪力を秘めているなら、なおさら・・」「呪いを調伏するのが私たちの仕事です。」
「確認しますけど、これを所有するのはどちらです?」「私です。」「ならオススメしません。
こちらの方なら話は別ですが。」「?・・ああ、なるほど。」「では私が所有いたします・・」
「よし売った!出血大サービスでお安くしときます。」ぱっ。「5円で。」『ええっ?!』
「引き取ってもらえるだけでもありがたいんです。なにせ夜ごとに原城に散った三万七千信徒の
オラショが聞こえるし。」「それって・・」「紛うことなき本物ですね・・はい5円。」チャリン。

「えーと、これで全員ですね。データ取りは終わりです。ごくろうさまでした。」ガヤガヤ。
「あ、そーだ。ソーンカオスの方。」「わたくし?」「改造について少し相談があるんですが。」
カタカタ・・タン。「この背部装備、まるごと外せという要求ですね。」「そうですけど、何か
問題でも?」「う~ん・・個人的にこれ別の形で使いたいんです。」「・・どういうふうに?」
「実は・・」ひそひそ・・「なるほど、そういうもの。」「どうです?こちらのワガママなので
追加工賃はけっこうですから。」「タダで良いものを付けてくださるのに、否やは無いわ。」

「ありがとうございましたー。・・さて、と。」カタカタ・・タン。ぱっ。「・・軽くヤバいかも。
どーしよっかな、これ・・?」ぴく。『しばらくは守秘義務に徹してほしいな。」♪チリーン。
「へえ・・幽音が直々に出向くほどのことなんだ、これ。てことは・・えらいことしたね。」
「まあ、けっこう後悔してるかも。」「・・あんたの口から後悔って言葉を聴いたの初めて。」
「後始末は完璧にしたけど。記録すら残ってないよ。」「で・・何人?」「成功したのは二人。」
「もう一人いるわけか・・どこに?」「才能を活かせる職に就いてるよ。」「なんだそりゃ。」

****************************************************

黒薔薇会BGF参戦準備委員会議事録-最後の一人-

一年の教室。ガヤガヤ・・「瞳子、BGF出場選手の情報は?」「だいぶ集まってきましたわ。
プロフィールや戦闘スタイル、ガンダムの特徴など。」カタカタ。「どれどれ・・なるほど。
あれ?・・このガンダムの情報って、ほとんど空白だね。」「パラディンガンダムですわね。
なぜかファイターの情報って見つからなかったのですわ。」「ふ~ん・・わかってるのは、
ファイトで得られたデータだけか。・・主武器はビームショートソード・・あれ?」ぐっ。
「なにか?乃梨子さん。」「これって、変なショ-トソードだね。柄から先がカックンって
クランクみたいに曲がってて。」「・・たしかに。ちょっと見たことない奇妙な剣ですわね。
あ、剣とかとても詳しい方がクラスにいらっしゃったわね。」「『スカイ-ハイ』可南子さん?」
「そうそう。・・可南子さん!」「・・なに?」ぬうっ。「このタイプの剣ってご存知ですか?」
「・・これは銃剣、バヨネットね。」『あ、なるほど。』「バヨネットか~。しかも無数といって
いい数を使う・・と。」ぴくっ。「・・ちょっと見せて。」「え?・・どうぞ。」じーっ。
「・・まさか。」「可南子、なにか知ってる?」「・・瞳子、動画ある?」「ありますけど・・」
ぱっ。じーっ・・「・・間違いない。」「なにが?」「・・乃梨子さん、お願いがあるの。」
『・・ええっ!』「それは・・今となっては難しいよ。」「そこをなんとか。」「う~ん・・
そーだ、祐巳さまに相談してみましょう。」「そうだね。上級生に顔が効いて、話しやすいし。」

お昼休み。「BGF参戦希望?」「はい、こちらの可南子さんがぜひにと。」「なにとぞ・・」
「う~ん・・ちょっと難しいけど、どうして今になって?」「・・深い事情がありまして。」
「その事情次第では骨折ってもいいけど・・」ちら。こく。「ちょっと席を外します。」
「乃梨子さん?」「ほら、瞳子も。」ぐいっ、ずるずる・・「これで人払いはできたわ。」
「お気遣い感謝いたします。実は・・」・・「・・わかった。そういう事情なら、なんとか
お姉さま方を説得してみるよ。」「ありがとうございます!」「さてと・・どーすっか。」

放課後、黒薔薇の館。「祐巳ちゃん、緊急動議ってなに?」「BGF参戦志願者が一人おりまして、
ぜひ加えていただきたいと。」「へえ、一般生徒にそんな骨のあるのがまだいたんだ。」
「その意欲は買うけど、黒薔薇会に匹敵する実力がないとね。」「そこで、上級生のどなたかに
お手合わせ願い、その実力のほどを示せれば。」「それは面白そうね。」「で、その志願者って?」
「可南子ちゃん。」『・・ごきげんよう。」ぬうっ。『でかっ!』「一号生、『スカイ-ハイ』
可南子です。」「あ、知ってる。学園一のノッポさん。」「祐巳さんがホビットに見えますわ・・」
「・・この刺すような気。あなた本気ね。」「伊達や酔狂で志願したわけではありません。」
「ちょっ、可南子!」「黒薔薇会一同を前に、微塵の気後れも無し・・まずは気に入ったわ。
腕試し希望者は?」「では私が。」ガタッ。「令か。まあ順当なセンね。」「感謝します。」

ザッ。「始めようか。」チキッ、すっ・・「令ちゃん得意の居合いの構え!」「参ります。」すっ、
ジャキジャキッ!「あれは・・バヨネット?!」ザワッ!「・・蓉子、もしや。」こく・・
「・・ひょっとしたら、とんでもないものかも。」「バヨネット使いか・・これで二人目ね。」
「シイッ!」ヒュバババッ!「無数のバヨネットを!」「令ちゃん!」「・・はっ!」ダン!
シュピイッ!キキキキーン!「よしっ、全部はじいた!」ボオッ!『なっ!』「もう間合いを?!」
「シャアッ!」ビュオッ!さっ、ガキイイイーン!ビリビリビリ!「くっ!なんてパワー!」
ダン!ドゴオオオーン!「ぐはあっ!」ザザザザーッ!「蹴りとばした!」「やるわね、あの子。」
「ふう・・これは予想以上に面白いな。」ザッ、すっ・・ぺろっ。「!・・目釘を舐めて締めた?
令ちゃん本気だ・・」「シャアッ!」ヒュババババッ!「・・奥義・水月。」ユラリ・・
ドカカカカカッ!「消えた?・・はっ?!」ビュオッ!「!」ガキイイイーン!『止めた?!』
「信じられない・・令ちゃんとっておきの死角から襲う一撃を!」「すばらしい勘の鋭さね。
思考より早く肉体が反応・・あれは天性のもので、どんなに修行しようとああまでいかないわ。」

ギギギギ!「だがこの体勢では弾き返せまい。」「・・その必要はありません。」「なに?」
バサッ!「髪?・・いけない!」ババッ!ザザーッ!・・「さすが。よくかわされました。」
ピピッ、タラタラ・・「令ちゃんの腕に・・無数の斬線が!」「伴天連秘法・髪切丸。」
『なあっ!』「・・天草四郎様が使われた秘術!」「摩倶荼羅教でも伝承が途絶えた技・・」
「・・あと少し遅ければ、輪切りにされていた。」「そして奥義・髪嵐!」バサアッ!
「髪が無数の刃となって襲う!」シャバババッ!「令ちゃんあぶない!」「・・。」チキッ。

「はい両者そこまで!」ババババッ!ザシャアッ!「祐巳ちゃん?!」「祐巳さま?!」
キュルルルッ、ぱしっ!「これ以上は殺し合いになるよ。それは私たちの本意じゃない。」
「そ、それよりその腕!」「剣をまともに受け止めたら!」「これ?」シュルル・・
「・・傷ひとつ無い?」ぱっ。「そんな?・・無傷なんて!」「お姉さま方、いかに?」
「文句なしね。」「合格以上よ。」「いんじゃな~い。」「祐巳イチオシも納得ね。」
「歓迎するよ。」「ありがとうございます!」「む~・・」「?・・由乃さん、なに?」
「一号生ごときに、令ちゃんたら令ちゃんたら・・」ぷんぷん。「いつものことね・・」
「ガンダムの手配は一号生がサポートしてあげて。」「了解です。」「おまかせを。」

「やったね、可南子!」「乃梨子と祐巳さんのおかげです。」「よかったね、可南子ちゃん。」
「ま、上級生に一号生をなめんなよというアピールができたのも意義がありましたわ。」むっ。
「心外ね・・そういう下衆な思想は考えもしなかった。」「げ、ゲス?!・・てめえ・・」
(あの二人ってすっごく仲悪いんですよ。)(というより、傍目にはじゃれ合ってるとしか
見えないんだけど。)(お互い素直じゃないんですよ・・まったく、中立ちも苦労します。)

夕刻。「・・・・」「お姉さま?」・・はっ。「祐巳・・」「帰りましょう。」「え、ええ・・」
すたすた・・(・・髪切丸と令の居合いを無傷で受けきるなんて。いったいどうやって?
聞いてみたい・・けど。)ぐっ。(・・なぜか聞いてはいけない気がする・・知ってしまえば、
全て終わってしまう・・その恐怖がわたくしを縛る。)ちらっ。(・・いつも知ってる祐巳と、
もう一人、恐ろしい祐巳がいる・・修行時にもこんな感触は無かったのに、なぜ・・?)
「・・いずれわかりますよ、いやでも。」ぼそっ・・「・・え?何か言った?」「いいえ?」

薔薇の館。「・・なるほど、そういうことか。」「あれほど出場にこだわった理由がわかったわ。」
「たしか次はシエル先輩との対戦のはず、ちょうどいい機会かもしれないね。」「行きましょうか、
ガンダム長屋。一線級ファイターを見ておくのは大事だし。」「予習は必要だね、たしかに。」
「しかし・・今回のは危なかったわね。」こく。「さいわいにも深刻に受け取った者がいなかった
けど、いずれはばれるよ。ことにBGFに入ったらなおさら。」「わかってるわ。けど、小出しにして
徐々に慣らしていくも手。そうしておけば、最後の衝撃が少しは緩和されるでしょう。」
「そうだね、特に祥子は・・」「あの子は弱い・・真実に耐えきれないかもしれないわ。」
「そうかな?わたしはあんま心配してない。」「なんでよ、聖。」「祐巳ちゃんだから。」

*****************************************

黒薔薇会BGF参戦準備室報告2-追加発注-

♪カラーン。「いらっしゃいませー。おや、ガブ女の。」「こんにちはマルローネさん。実は
ガンダムの追加注文をお願いしに来ました。」「それは大歓迎です。で、どなたの?」「可南子。」
ぬうっ。「よろしくお願いします。」「ではまずは素体からですね。また種シリーズで?」
「はい、ドレッドノートをベースで。」「おっけい。となると、標準装備の大型ドラグーンが
改造ポイントね。」「マウント部を生かして、ビームバヨネットを扇状に付けれます?」
「簡単ですが・・もったいないな~。」「え?」「いえね、あくまで職人としての意見ですので。
お気に入らなければ言いませんが。」「・・参考意見としてお聞かせください。」「では。・・
あのでかい赤十字こそドレッドノートのミソです。むろんドラグーンのままは論外ですが、なにか
別の形であのフォルムは残したいなと。」「理解できなくもないです。・・ではこういうのは。」
ひそひそ・・「あ~、いいですね。そりゃ斬新です。喜んで造らせていただきますね。おっと、
機体名を登録してください。」「デスクロス・ドレッドノートで。」カタカタ・・「登録完了。
ロールアウトは一週間後になります。」「たった一週間?早い・・」「だからこの店なの。」

『ありがとうございましたー。』♪カラーン。「あ、終わった?」はっ。『・・祐巳さま?』
「ちょっと心配だったから。」「わざわざありがとうございます。」「いえいえ、自分で紹介した
責任感ってのもあったし。」「そこが祐巳さまのえらい所です。」「じゃ、私はついでにガイア
改造の話があるからここで。」『ごきげんよう。』♪カラーン。・・「いい方ね。」「うん。」

「・・。」チキッ、ギィィィ・・「いらっしゃいませ。」「ごきげんよう。ガイアに装備を追加して
ほしいんですが。」「お客様のご注文には完全に応じます。そのためにお客様のデータを再取得
させてください・・この前のでなく『真の』データを。」「当然ですね・・」クッ。「う!・・
これが。」「これでいいですね?」こく・・(幽音め、よくもまあ・・自殺行為だぞ、こりゃ。)

黒薔薇会BGF参戦準備委員会議事録5-そういや整備クルーが要るな-

黒薔薇の館。「困ったわ・・」「うかつだったわ・・」「こんな大事なことを・・一生の不覚。」
「お姉さま方、何か問題でも?」「ガンダムがもうすぐ納入されるのは知ってるわね。でもね・・」
「・・誰が整備できるの?」『・・あーっ!』ドヨッ!「ガンダムの整備どころか、自宅の
インターネット設定すらできないのにー!」「祐巳さん、それ遅れすぎ・・」「困ったわ・・
ビデオの留守録すらわからないのに。」「お姉さま、それはさすがに・・(^^;;」
「機械オンチのひと。」『はーい。(ほぼ全員)』「これだもの・・どーすんの?」「誰かいい
アイデアない?」『う~ん・・』「はい。」さっ。「静さん。」「技術科に相談しましょう。」

聖ガブリエル学園には、戦闘能力以外にもさまざまな「異能」な生徒が存在する。それらは自然と
学科を造り、大きく武闘科・情報科・技術科・芸術科に大別される。うち三つは相互に親密だが、
技術科は情報科以外との交流がきわめて少なく、まったく実態がわからないのが現状である。

技術科。「ごめんください。」「はい。・・あら、黒薔薇のお方様がたとは珍客ですね。」
「ごきげんよう、『神の手』三奈子技術科長。」「ごきげんよう。で、御用の向きは?」
「・・かくかくしかじかで、ガンダム整備に技術科の手をお借りしたいのですが。」
「が・・ガンダムを任せてくださるんですか?」「くだいていえばそうなるわね。」
「ああ・・技術屋として、現在最上級のマシンシステムであるガンダムは最高の憧れ!
わかりました、技術科の全力を挙げてサポートいたしましょう!」「感謝するわ。」

「ちょっと待ってください!」『え?』「・・真美?」「ご無礼をお許しください。技術科副長
『クラフトマスター』真美です。技術屋としてどうしても確認しておきたい事項がありまして。」
「いいえ、きわめて当然のことですわ。で、確認事項とは?」「引き受けるに一つだけ条件が
あります。整備に関しては、私たちの意見を最優先させてください。」「具体的には?」
「出せる状態でないのに、無理に出場させたりしないこと。そこらの機械と本質的に異なり、
ガンダムほどの超最先端システムともなれば生き物も同然です。それと同等の愛情と情熱をかけて
あげないと、まともに動いてはくれません。」「無理はさせない、か。」「くだいていえば
そういうことです。」「きわめて同感ね。いいわ、ガンダム整備に関しては、技術科スタッフに
一任します。」「感謝します。ではさっそくタスクチームを編成しますので失礼。」タタタタ・・
『・・アクティブ。』「申し訳ございません、私の妹の無礼の数々を・・」「いえいえ、しっかり
した副科長で安心しましたわ。」「三枝子は技術屋というよりも芸術家肌なんだから、ああいう
実際的な頼りになる妹を持ったのは大正解だよ。」「はあ・・」ぽりぽり。「ではよろしくね。」

技術科工房。カチャカチャ・・「おっし、暗殺カメラできあがり。さっそく実験。」ぽち。
どっかーん!プスプス・・「あ~・・弾薬の調合どっかミスったかな?けほっ。(真っ黒)」
ガラガラ!「蔦子さん!」「真美さん、なにか?」「ガンダム整備の大仕事が入りました!」
「おおっ!・・よっしゃーっ!この『メガニック』蔦子の出番がいよいよ来ましたよー!」
「ただし!勝手な改造はご法度です。」「ええーっ!改造なくて何させようってのよ!」
「『改造』はダメですが、『改良』はいいですよ。」「そうきたか・・まあいいでしょ。」

重機整備場。ガガガガ!「桂さーん!」『はーい。』ひょい。「真美さんと蔦子さん?」
「でかい仕事が入ったよ。ガンダム整備だ。」「整備タスクチームを立ち上げるので、
すぐに集合してください。」「・・出て、いいの?」『はい?』「出て、いいのね?!」
「あの、何のことか・・」さっ。「そうよ桂、出ていいのよ。」「・・いやったーっ!第一期も
出れたのは前半だけ、どんどん出番が削られ『みてはる』ではセリフいっこだけ!このまま
消え去るしかないのかとあきらめてたけど・・まさかダブルGで出番があるなんて!」
「弱者救済のダブルGだもの、桂は第一候補よ。だいたいこの話だって桂をどうにか出すために
でっちあげたんだし。」「あー、それでみんな技術科に設定変更されたんですね。」
「作者さん、ありがとうございますー!並薔薇(ロサ・カツーラ)よさらば、桂は新たな舞台で
ばんばん目立ってみせまーす!」「あ、通り名は『ロサ・カツーラ』だから。」「へ?」

********************************************

黒薔薇会日誌-研修-

四号生は卒業間近ということで、実地研修が必須とされている。むろん黒薔薇会のお三方も
例外でなく、他の生徒と同じく、校外実習という名の実戦任務を受けなければならない。
学園長室。「蓉子さん、江利子さん、聖さん。あなたたち三人の校外研修の世話人を紹介します。
どうぞ。」ギイッ。「ごきげんよう、皆さん。」『シエルさま?』「はい、私が担当することに
なりました。」「来日されてるのをさいわいに、お願いしたのです。」「いえいえ、私としても
妹たちがちゃんと働けるかは実に興味がありますし。」「あっちゃ~・・シエル先輩が担当か。
こりゃきついミッションになるね。」「聖、まだそうと決まったわけじゃ」「いいえ、とっても
きついミッションですよ、嬉しいことに♪」「なにが~。」「説明しますので視聴覚室へ。」

視聴覚室。「任務の概要を説明します。今回のターゲットはこの邪教集団です。」ぱっ。
「あ、これは。」「けっこう有名なカルトよね。」「たしか麻薬で信者を洗脳して自爆テロとか
やらせてるってウワサだね。」「事実ですよ。本拠は富士山麓のこの怪しい建物です。」ぱっ。
「あの配管・・ただごとじゃないですね。」「いかにも化学兵器造ってますよって。」
「そういや例のヤツに似てるね。」「目的は教団の殲滅。目標は教主および幹部の滅殺です。」
「質問です。信徒は?」「邪魔するようなら強制排除してもよろしいです。洗脳されてようが
関係なし、こんな宗派に入信した時点で背教者です。」「それ聞いて安心した・・」ニッ。

夕刻、富士山麓。ゴォォォ・・カツッ。「聖。」「おっけい。発電!」バリッ!「神雷!」
スドオオオーン!ズバシャアアアーン!♪ウ~!『緊急警報!何者かの襲撃あり!信者はただちに
武器を持って出動せよ!』「では作戦どおりに。」「散開し、各目標を撃破します。」シャッ!

ワアワア!『いたぞ!』ドカドカドカ!「ざっと10人ね・・」すっ、シュルル・・『一斉射撃!』
ジャキジャキッ!『撃て!』・・シーン。『・・なんだ?』『引き金が・・動かない?』
『なんでだ?!』「足元をよく見てみれば?」『なに?・・あっ!』キュルルルッ、ギシイッ!
『イバラが?!』『いつの間にか全身にまとわりついてる!』『くそっ!・・痛っ!』
「ヘタに動くとトゲが刺さるわよ。そして。」くいっ。ギャルルルルッ!ギガガガガッ!
『うぎゃああああーっ!』ドブシャアアアーッ!「イバラ鋸。数秒で骨まで削れるわ。」
ドサッ!「これぞ主の聖血を吸った『ゴルゴダの薔薇』。」はっ。『・・カソリックか!』
『この邪教徒が!』『我らは認めぬぞ!』「何を言おうとも、狂信者の前には無意味よ。それに
いま大事なことは、イバラにがんじがらめにされたあなた達の最期だけ。」『くっ!』すっ・・
「安らからず地獄の門へ至らんことを・・AMEN。」クイ。ザガザガザガッ!『ぐああああっ!』
「邪教徒の汚れし血肉、聖なる薔薇の肥やしにして、清めてさしあげますわ♪」にこっ。

カツカツ・・「たしかに毒ガス工場ね。こんなものはとっとと壊してしまいましょう・・?」
ドカドカ!『いたぞ!』『殺せ!』「無理ね。」ついっ、ポオッ。シュピィッ。『?・・なんだ?』
ズル・・ボトボトボトッ!ブシャアアアッ!「切られたことすら気づかず即死。次はこっち。」
ついっ。「乱れ斬り。」シュピィッ!シュパパパパッ!「おしまい。」くるっ、ツカツカ・・
バタン。ズル・・ガラガラドッシャアアアーン!「ドアだけ残して正解ね。さて次はと・・」

ガラガラガラ!「ん?・・江利子か。あいかわらずの切り裂き魔だね。・・来た。」ドカドカッ!
『侵入者発見!』『射殺せよ!』ズガガガガッ!「ふっ・・電磁障壁。」ヴン。ぴたぴたあっ!
『弾丸が・・止まった?!』ポツッ、パラパラパラ・・「こっちからいくよ。雷神剣!」すっ、
バリバリバリ!『手先から・・電気の刃が?』「ほい。」ブォン!ズバシャアアアーン!
『ぎゃああああーっ!』バヂバヂバヂ!「200万ボルトの雷柱だ、触れれば骨まではじけ散るよ。」

「・・あらあら、学生とはいえさすがあの三人、やりますね。」ヒュン・・スタッ。さささっ。
「ここが本部建物のはず・・」そーっ・・「・・ビンゴ。でかい神像がありますね。」
『第五小隊応答なし!』『化学プラント倒壊!』『第三中隊壊滅!』「軍隊でも来とるのか!」
『いえ、確認されたのは三人のみです。』「なんと・・たった三人でこれだけのことを!」
「いいえ、四人ですよ。」はっ!「黒衣聖母!」ヒュババババッ!ドカドカドカッ!『ぐはあっ!』
『なあっ!』・・ドサドサドサッ!すたっ。「教主とお見受けします。」「お・・お前は?」
「法皇庁・神罰代行機関。宗教裁判の結果、この教会は異端との判決が下りました。教主および
教団幹部は処刑、ただちに執行にとりかかります。」「信徒たち、悪魔の手先を撃て!」
グラタタタタ!ビスビスビスッ!『やったぞ!』「なにがですか?」・・ボオッ!『うわっ!』
ビュン、ズパアアアーン!コロコロ・・「・・バカな?ハチの巣にされたはず!」「うちの主は
ちゃんとご加護くださるわけで、邪教の弾丸など通りませんよ。」ググ・・カラカラーン。

「であえ、であえーっ!」・・ドカドカドカッ!「あらあら、気分は暴れん坊将軍ですね。」
「お庭番はおらぬぞ。」「いいえ、ちゃんといますよ。ほらそこ。」『?・・なっ!』
キュババババッ!ザキザキザキイッ!・・すたっ。「お待たせしました、お姉さま。」
シュピィッ・・スパパパパッ。カツカツ・・カツッ。「あら、ここが中枢でしたのね。」
ズバババババッ!バリバリバリ!ババッ・・ザシャッ!「お~、こりゃでかい神像だ。」
「ナイスなタイミングでした。主の御名において、神意執行。」ぴっ。『AMEN。』シャッ!

「貫け、ゴルゴダの薔薇!」シュバババッ!ズドドドドッ!『ぐはっ!』『があっ!』『いまだ、
武器は使えん!』チャッ。「いいえ。・・ロサ・キネンシス。」バリッ!キュドオッ!『ながっ!』
『・・服を破ってイバラが?』「わたくしの薔薇に死角はありません。」ぐっ、バサアッ!
『なっ?!・・全身に薔薇の蔦が!』ワサワサワサ。「見てのとおり、ゴルゴダの薔薇は私と
共生しており、あらゆる方向を護ってくれるわ。」『ば・・バケモノ!』「よく言われるわ。
でもね。」すっ、キュバッ!ズゴドオッ!『はがっ!』「邪教徒よりは千倍マシですわ。」

「はいはいはいっと。」シュピピピッ。ズパパパパッ!「耐熱光学装備で科学隊を出せ!」
ザザッ!「あら、そんなものまで。小手先レーザーじゃ力不足か。」『前進!』ザッザッ!
「じゃあこっちも少し本気入れようかな。」さっ、ぐいっ。『髪止めを・・上げた?』
ピィィィ・・「ロサ・フェティダ。」キュドオオオーン!『なあっ!・・』ズバシャアアアッ!
ゴォォォ・・「あら、影だけ残して消えちゃった。まあ対人ならこんなものか。」くいっ。

「雷弾。ほれほれほれっと。」ぱぱぱぱっ。バリバリッ!『しびびび!』『ビリビリ!』
「耐電装備隊!」ザッ。「懲りない連中だね~。それほど本気のを食らいたいのかい。」
がしっ。・・キュババババッ!『なんだ?!』『合わせた両腕に螺旋状の電気が?』
「ロサ・ギガンティア!」ズドオオオオーン!『うぎゃああああーっ!』ドバシャアアアーン!
「荷電粒子砲みたいなもんだから、当たりゃ分子すら残らない・・あ、もういないか。」

「・・カソリックはバケモノか。」「異端や邪教と何千年も戦った歴史の積み重ねです。あなたも
いっぱしの教主なら、異能のひとつでも見せてください。」「・・よかろう。」ぐっ、バリッ!
ぎょっ!「・・DG細胞!」「立ち上がれ信徒たちよ!」・・ムクムクッ。オオオオ・・
「・・よみがえった!」「ゾンビ?」ピキピキ・・「すでにDG汚染はここまで進行してたか。」
「どうだ、死者すら甦らせる、これぞ神の力だ!」「・・なるほど、デビルガンダムでしたか
ここの主神は。ならば遠慮は無用ですね。七つの大罪!」ぐっ、バササッ!・・ジャキーン!
「そんなものでこの軍勢を止めきれるものか!・・ぬ?」すいっ。「カルバリオ・ヴェッキア!」
ズドオオーン!ピカアッ!オオオオ!・・パキパキパキィィーン!ガラガラガラ!・・
「な・・なんだ今のは・・この悪寒は?!」パラパラ・・「浄化の光はDG細胞にも有効です。
さながら陽光を浴びた吸血鬼みたいなものですか。」「灰は灰に、塵は塵に。AMEN。」

「ま・・まだだ!いでよ守護神!」ギン!ピキピキッ、ガラガラガラ!『これは?!』グググッ、
ズシーン!「・・デスアーミィ!」パシュ、キュバババッ!シュルルッ、グイーン、バタン!
『うわははは!主より供されしこの守護神で踏み潰してくれる!』ズシーン!ズシーン!
「皆さん、援護を願います。そのスキに対抗策を打ちますので。」『了解!』ダダッ!
「ロサ・キネンシス!」キュババババッ!ギリリリリッ!『薔薇のツタなど!』グン!ギシィッ!
『なにっ?・・ちぎれん!』「ツタの棘が緩衝スプリングになってるから、象でも切れないわ。」
「ロサ・フェティダ!」ピィィィ・・キュドオオオーン!『くうっ!・・なんのこれしき!』
「ロサ・ギガンティア!」ズドオオオオーン!『ぐうっ!・・再生機能フルパワー!』
「なかなかしぶといわね。」「ガンダムあれば一発なのに。」「ま、時間かせぎだし♪」
「いいですよ皆さん。では今のうちに・・」すっ。「ガンダアアアアームッ!」♪パチン!
ゴバアアアアッ!「はっ!」ターン・・シュパッ。「MTS起動。」ギュルルルル・・ビシイッ!
「イスカリオテ、降臨!」『なんと、ガンダムまで!』「無益な抵抗は・・いえ、やめましょう。
せいぜい抵抗して苦しみぬいて死んでください。」『こうなれば死なばもろとも!』ダッ!
「黒衣聖母!」ジャラッ。ヒュバババッ!ドカドカドカッ!『投剣など効くものか!』
「そうですか?爆葬聖典。」♪パチン。カッ!ドカドカドカーン!『ぐおおおおっ!』
「けっこう効いたようですね。」『ま・・まだだ!』グワッ!「そうくると思いました。」
ユラリ・・ヒュッ!『・・なに?』キラリ。ピリッ・・ブシャアアアアーッ!ドサドサッ!
『ぐおおおおーっ!腕が!』「自己修復もしくは再生できるのでしょう?さあ腕を再生して
立ち上がってください。」『・・再生!』ビュルルルッ!ビチャッ。シュゥゥゥ・・ズバアッ!
『がああああっ!』ドサアッ!「はい、もう一回。お待ちしてますから遠慮なくどうぞ♪」
「シエルお姉さま、遊んでるわね。」「再生する先から切り落とされちゃたまんないわね。」
「あの性格の悪さは、昔のまんまだね~。」「そうそう、何度あれで悩まされたか・・」

『あがああ!・・』「あらあら、もう再生するだけのパワーは残ってませんか。ではそろそろ
遊び飽きたので、おしまいにしましょう。七つの大罪!」ギュイン、パタパタン、ジャキン!
グイッ。「地獄へすらも落としません。完全なる『無』へ還元し、原子からやり直しなさい。」
『そ、そんな!主のご慈悲を!』「なにをいまさらです。神意執行・・AMEN。」カッ!

カツカツ・・♪ピッ。ドカドカドカーン!ゴオオオオ!・・「殲滅完了。あとは消防と警察の
お仕事です。」バタバタン。ブロロロ・・「まさかデビルがらみだったとはね。」「予想以上に
蔓延してるみたいね、DG細胞は。」「たしかに衆をまとめるには最適か。」「三大理論はそれほど
魅力的ということです。そう、人であることを代償にしてでも。」「なんて愚かな・・DGに
乗っ取られるだけなのに。」「当の本人は気にしてないんでしょ。」「・・あのさ、今回ので
気がついたんだけど、DGって、吸血鬼に似てないかい?」『ああ~。』「聖の言うとおり、
ノスフェラトゥとの共通性は法皇庁でも議題になってます。一説によると過去の吸血鬼もDGに
類する未知のウイルスによるバイオハザードともいわれます。」「吸血鬼は感染症・・か。」
「これからはこういった輩が増えそうですね。」「はい、どんどん手が足りなくなります。ゆえに
あなた達には一刻も早く前線に出てもらいたいのです。いえ・・状況によっては卒業を待たずに
学徒出陣も。」『えっ?!』「あくまで可能性の問題です。・・かなり高いですけどね。」
『・・・・』「こりゃえらいことになりそうだ。」「三号生以上はまあなんとかなるとして、
問題は下級生ね。」「いきなり前線投入じゃ、殉教してこいと同義語ね。」「・・正直なとこ、
現役学生まで実戦投入する今のやり方は賛成しかねます・・とはいえ、ここのところ殉教者が
うなぎのぼりで、人材不足に拍車がかかってます。」「今回のも、何人死んだかしら・・」

大戦艦ヴァルハラ。「あらら、つぶされちゃった。」「なに、同じような組織はまだまだある。
ひとつやふたつ、どうということはない。」「既存の新興宗教や武装組織からも問い合わせが
殺到してます。」「来るものは拒まずや。そういう輩はどんどん感染してもろて、人でなしに
なってもらいまひょ。」『他人に迷惑かけるしか能の無い連中だ、相応な報いだろう。』
「そしてDG感染を治安組織にリークする。」ぱしっ。「楽しい殺し合いの始まりだね。」
「ヘルファイターやデスボーグの素材源にもなるしね。まあほとんどデスアーミィ行きか。」
「ではもっともっと増やそうね。お仕事いっぱいあると、あちらも喜ばしいことでしょ。」

次の日、黒薔薇の館。ぐで~。「お姉さま方、お疲れのようですね。」「研修疲れ・・」
「けっこう後からキたわね・・」「くか~。」「はい、熱いハーブティです。」コトコトン。
「ありがと乃梨子ちゃん・・」すぅ~。「・・はぁ~。少しはマシになったわ。」コキコキ。
「研修ってそんなにタイヘンなんですか。」「いきなりバリバリ実弾飛び交う実戦だしね。
聞いた話じゃ、他の班ではいくつか殉教が出たって。」「あー・・あの空席がそうか。」
「来年はわたくしたちもやるのね・・」「それまでにしっかり腕を磨いておかないとね。」
「うわ~・・代行者になるって、タイヘンなんだ。」「無事に卒業できるのはほぼ七割、うち
任務に就いて一年以内に殉教するのが五割が平均だよ。」「そこを越えれば、晴れて一線級の
代行者として、世界中を飛び回ることになるのよ、シエル様のように。」『おお~。』
「戦闘付きでも、公費であちこち行けるようになるのは楽しみね・・」「そういう動機?」


外伝:黒薔薇会日誌(1)

黒薔薇会日誌-予兆-

 

大戦艦ヴァルハラ。「刺客だと?」「そう。あの子に向けて刺客を放ってほしいの。」

「理由をご説明ください。あの女学生はいったい?」「説明は無し。それでダメなら

エリーちゃんに頼むから。」「ほう、幽音がそれほど拘る理由があるんやな。」

『可能性としては、幽音自身に関わる何かをあの娘が持ってる・・というところか。』

「それは面白い。」ぱしっ。「ならやってみようよ。どうなるのか見てみたいし。」

「・・いいだろう。ハニー、適当な組織に依頼を。」「かしこまりました。何か

細かい要求条件とかありますか?」「そうだね・・機関銃装備、腕は中の上、人数は

10人ほど。」「ならば民族主義グループに手ごろなのがあります。」「それでいいよ。」

「幽音、そのときは説明してくれるのか。」「結果しだいだね。あっさり殺られたら

何も言うことなし、でももし生き残ったら・・」「・・ならば応援しなくてはな。」

 

黒薔薇の館。「では今日の会議を終わります。解散。」ガタガタ。ガヤガヤ・・

「お姉さま、帰りましょう。」「ええ、祐巳。ではお先に。」『ごきげんよう。』

ツカツカ・・「お姉さまは今日は山手線ですか?」「ええ。品川からバスよ。」

「高輪でしたね。じゃあ田町まではご一緒できますね。」「祐巳は麻布だったわね。」

 

山手線。パシューッ。カツッ。「あ、あそこに一つだけ空いてますよ。」「一つじゃ

いっしょに座れないわ。」「お姉さまどうぞ。私は近いのでいつも立ちんぼだし。」

「じゃあ失礼するわ。」ストッ。ガタコンガタコン・・「・・え?!」ぎょっ!

「どうしました?」「祐巳・・つり革は?」「使いません、というより要りません。

バランス感覚の鍛錬にもなりますし。」「でも山手線の加減速は」『間もなくー、

浜松町ー。』キィィィィーッ。ガクン。「おっと。・・?!」ぴたり。「ほらね♪」

「すごいわね・・」「毎日の鍛錬の賜物ですよ。」「そうね。・・」じーっ。

『田町ー、たまちー。』「ではここで。ごきげんよう。」「ごきげんよう。・・」

じーっ・・『発車しまーす。』タタッ。パシューッ。カツッ。「・・あそこか。」

スススッ。(祐巳には謎が多すぎる・・不本意だけど、尾けさせてもらうわ。)

 

カツカツ・・すっ。「麻布じゃなく芝浦方面へ?・・気取られてはいないはず。」

カツカツ・・ぴたっ。「・・十人。気づかれてますよ。」はっ!ささっ。「・・?」

ザザザザッ!ジャキジャキッ!「武装集団?!助けなくては!」「ダメだよ。」

ぎくうっ!ばっ!「せっかくの実験が台無しになるから。」「・・幽音様?」

「悪いけど、大事な実験だからちょっと静観してて。」ぽん。ピキィッ!「あ!・・」

「動けないし、声も出ないよ。済んだらちゃんと解除するから心配しないで。」

「!・・!・・」「おそらく、見たかったものが見れると思うよ。」「?!・・」

 

ゴォォォ・・「どこの者?・・って聞いても、答えるわけもないか。」グラタタタ!

ドガガガガッ!ゴォォォ・・『・・いない?!『消えた?』「こっちだよ。」はっ!

ババッ!「いつまでも突っ立ってるほどバカじゃないよ。それとそこのあなた。」

ぴっ。「もう死んでるから。」『?・・なにをバ』ズルッ、ボトッ!『なっ!』

 

「?!・・」「首刈り見えた?」「・・」「だよね・・私も見えなかったの。」

 

「これで懲りて帰ってくれればありがたいんですけど。」『・・一斉射撃。』

ジャキッ!「やれやれ・・そんなに死にたいんですか。じゃあ・・」スゥ・・

『なっ?!』『め・・目が!あの目は?!』ヒュン!『う、撃て!』ドガガガッ!

チュンチュンチュン!『・・当たらない?!』『これほどの一斉射で?!』

 

「!・・」「すごい・・弾道を完璧に見切ってる。まさかこれほどとは・・」

「・・?」ガクガク・・(幽音様が・・恐怖してる?)「始まるよ・・殺戮が。」

 

「双牙刀。」ぐっ、シャリン。ドガガガガッ!シャシャシャッ。チュンチュンチュン!

シャバッ!『な?・・』ブシャアアアッ!『う、うわっ!』ズガガガガッ!ゴオッ!・・

「・・・・」ゴォォォ・・ついっ。チュイーン!『バカな・・弾丸をよけてる!』

ザガッ!『ば・・バケモノ!』ゴオッ!バゴオッ!グシャアッ!『蹴りで頭が霧散?!』

 

「す・・すごい!・・あ?」「もう意味ないから言葉だけ解除したよ。・・どう見る?」

「・・神経速度が異常に速くなってるようですわ。ゆえに弾丸すら見切れるのでは。

それにあの破壊的な蹴りは、スピードと思い切りが大きい要因です。すなわち・・

本能的抑制がかかってないのでは。」「ほぼ正解だね。どうやら自己抑制を完全に解除させ、

肉体および精神の潜在能力をフルに引き出してる・・いえ、もっと上のレベルかもね。」

「え?」「よく見て。ほとんど無表情、いえ、感情のカケラすら表に出してないよ。」

「・・まさか?!」こく。「そう・・今おそらく五感は機能してない。感覚器を介せば

それだけ反応が遅れる。あえて五感をカットして、全てを精神でまかなってるのかも。」

「・・今の祐巳は、まさに戦闘マシーン・・いえ、魔戦鬼とでもいうべき存在・・」

 

ゴオッ!ズバシャアッ!『胴体まっぷたつ?!・・こうなれば!出ろ、デスアーミィ!』

ギン!ゴバアアアアッ!「デスアーミィ?あんなものまで!」「別に不思議じゃないよ。

デビル軍団が資金源のひとつとして、DG細胞やデスアーミィを密売してるのは暗黒街じゃ

もう常識だよ。」「いくら今の祐巳でもMS相手は無理ですわ!」「さあ、それはどうかな?」

 

「・・。」『棍棒で叩きつぶしてやるわ!』グワアッ!ドゴオオオオーン!『どうだ!』

ゴォォォ・・「・・。」『ば・・バカな?!棍棒の上だと!』ダッ!タンタンタン!

『機体を駆け登ってくる?!この!』ゴオッ!ひょい。バンッ!『後ろに?ど、どこだ!』

シュタッ。グン!ドスウッ!ヒュィィーン・・『な、なんだ?・・操縦不能だと?!』

 

「な、なにが?!」「・・デスアーミィの駆動系を精確に破壊したんだね。まるでポイントが

透視できるように。」「サイキック・・ですか?」「想像でしかないけど・・エネルギーの流れを

なんらかの手段で感じ取り、その集中点、いえ、死点を突いたというべきかな。」「死点・・」

「正直、わたしでもそれはできない。あの子・・ある意味ではわたしを越えてる・・かも。」

 

『・・だが外へ出なければよいだけだ。あきらめるまで辛抱しよう。・・ん?』・・ボゴオッ!

『なっ!』ガギギギギ!『ば・・バカな?!正面ハッチをまるで缶切りのように!』がしっ。

バガアッ!『うわっ!・・』ザッ。「・・。」『まいった!降参します、殺さないで!』

「・・ならいいよ。」くるっ、タン・・ザシャッ。『・・死ね!』ジャキッ!ドキューン!

ユラッ、チュィーン!『なあっ!』「・・ウソつき。」ユラリ・・フッ。『?!・・』

わしいっ!ボギュッ!ブシャアアアーッ!「・・制服、汚れちゃった。」ぽい。コロコロ・・

 

「な・・」「・・素手で首をもぐなんて。」「あれだけの戦闘と殺戮をしながら・・まるで何も

なかったみたいに去っていく・・」「血まみれの制服はともかくね・・ねえ、尾けてみる?」

「え?」ぽん。すっ・・「あ、身体が。」「悪かったね。でも望むものは見れたはずだよね。」

「・・はい。祐巳にあれほどの力があるなんて。」「ある意味、予想以上だったかも・・ねえ、

あの子の私生活って知ってる?」「・・いいえ、学校と休日に外で会うくらいで、自宅までは。」

「いい機会だから見てみない?どのみちあの格好じゃ一直線に戻るだろうし。」「・・では。」

 

カツカツ・・「ずいぶん工場地帯に入ってくね?」「おかしい・・こんなところに住宅なんか

ないはず・・あ。」ギギギギ・・ゴトン。「廃工場?・・気取られたはずないんだけど。」

「屋根にまわってみましょう。」「賛成。」ターン・・スタッ。「・・あ、あれ。」「え?」

ひょい。「・・なに、これ?!」「工場内に家具が?もしかして本当にあの子の家?」

「・・ノート端末だけで、TVとかはありませんわね。」「おそらく兼用なんだろうね。」

「ベッドは・・えっ?・・床に毛布を敷いてるだけ?!」「ワイルドだね~。」

「照明は・・卓上スタンドひとつだけ?夜になったら真っ暗も同然よ。」「寝るだけなら

じゅうぶんじゃないかな・・あれは?」「え?・・写真スタンド?」ガラガラ。「きた。」

『ただいま、お姉さま。』「え・・」(しーっ。)『さっき変な連中に襲われましたけど、

どうにか切り抜けてきました。でも制服はごらんのとおり血だらけ。これじゃ洗濯しても

シミになるので、新しいのと替えますね。』ばさばさ・・(あ!・・)(なに・・あれ!)

バサアッ!『ふう・・羽根をしまったままにしておくのは疲れる。』(・・天使の羽根?!

幽音様、説明してください!)(わたしだって、あんなのあったなんて知らなかったよ。)

『さて、晩ゴハンは・・』ガチャ。ごそごそ・・『パンとチーズだけか・・いいや。DVDと。』

カタカタ・・ぱっ。【祐巳、がんばってくるわ。】【いってらっしゃい、お姉さま。】

(あれは・・運動会の。)『やっぱお姉さまは凛々しいな~。プティ・スールになれてよかった。』

(・・祐巳。こんな生活をしてて、私を心の拠り所に・・)「祐・・」はっ!(いけない!)ぽん。

 

「え?」ばっ。「・・お姉さまの声がしたような気がしたけど。ま、そんなわけないか。」

 

田町駅前。・・ボオッ。「え?・・ここは?!」「あぶなかった・・気づかれるとこだったよ。」

「なぜ?!」「あの状況で顔出したら、どういう結果になるかわからない?」「・・行きます。」

「ダメ。あの子のプライベートに入っちゃダメだよ。」「それでも!」「あの子は納得づくで

あんな所に済んでるの。文字通り羽根を伸ばせる完全なプライベート。そこに踏み込んじゃダメ。」

「いかせてください!」「行けば完全に縁が切れるよ!」はっ?!「そう・・あの子はあんな姿を

見られたくないの、特にあなたに。」「・・わたくしは受け入れられます!」「たとえそうでも、

向こうから去ってゆく・・そういう宿命を背負った子なの。」「わたくしは・・救いたいのです!」

「それはあの子の望んでること?いいえ、あなたの独善でしかないわ。」はっ。「大事なのは、

あの子を普通に受け入れることだよ。特に優しくしてもいけない、意識してもいけない。」

「・・できません!知ってしまった以上、もうそんなことは!・・」「・・好奇心は身を滅ぼす。

まさにそのとおりになったね。・・ね、レストアしたい?」「・・え?」「過去一時間の記憶を

完全に消去する。それならできるよ。」「それは・・」「もし今までどおりつきあいたいなら、

これが最善の方法。もちろん、この記憶を抱いたまま何とかやっていくのが一番だけど、そこまで

あなたは強くない。でしょ?」「・・おっしゃるとおりです。」「決まりだね。消すよ。」ぽん。

 

『品川~、しながわー。』「・・はっ?!降りなきゃ。」タタッ。ツカツカ・・「え?・・もう

こんなに暗くなったの?・・あらもうこんな時間。いけない、祐巳と別れてからついうとうとして、

山手線一周しちゃったのね。」ツカツカ。「・・なんか、変な夢を見たような気がするわ。」

 

その夜。キュッキュッ・「明日には新しい武器ができてるはず。双牙刀も御用納めね・・!」

ヒュッ、ドカカッ!『あいたたた。」♪チリーン・・ボオッ。「・・幽音。」「問答無用で

短剣投げはカンベンしてほしいんだけど。」「効いちゃいないでしょ。」ズル・・カラカラーン。

「驚かないということは、知ってるんだね。」「ええ。・・あなたが生みの親、精確にはジーン

サンプルの供給主。」「法皇庁医科学局の最高の成果というべきかな?」「滅びの原罪でしょ。

関係者は全て消された・・全てを知ってるのは法王睨下と枢機卿のみ。ここで疑問なんだけど、

なんで私たちも処分しなかったの?」「苦労してやっと出来た芸術品だもの、壊せないよ。」

「そりゃどうも。・・妹は?」「だいじょうぶ、いい環境にいるよ。」「そう。・・少しは

安心したわ。」「これからも、ちょくちょく様子を見に来ていいかな?」「ほどほどになら。

タチ悪いとはいえ母親だもの、無碍には断らないよ。」「おや、思ったより歓迎されたかも。」

 

次の日、新橋駅。『お姉さまー。』タタタ。「あら、祐巳。」「ごきげんよう。」「ごきげんよう。

あら?・・制服、新調したの?」「わかりますか?」「昨日までのはティーのシミなんかいっぱい

付いてたから。」「ありゃ。」「ほら、タイが曲がっていてよ。江利子さままでとはいわなくても、

ちゃんとしとかないと。」キュキュッ。「江利子さまのは本当に名人芸ですよね。」「できれば

職人ってゆってほしかったり。」「あ、江利子さま。」『ごきげんよう。』「タイの締め方に

コツがあるのよ。ここをこう持って、ピンと張るの。」「こうですか?」「あ・・なるほど。」

「教えられるのはここまで、あとは一子相伝ね。」「令にですか?」「いえ、後継者候補は別ね。

そうね・・志摩子ちゃんあたりがいいかも。」「スールじゃないんですか?」「あの令がタイの

形にこだわると思う?」『思わない。』「そゆこと。・・ところで話は変わるけど、わたくしを

モビルスーツに例えると何かしら?」『はあ?』「そうですわね・・百式とか。」「まあまあね。

祐巳ちゃんは?」「んーと・・ダブルゼータですかね。」ぴくっ。「・・そのココロは?」

「おデコにメガ粒子砲♪」「ぷふっ!・・祐巳、それハマりすぎよ。」「あ、ベタすぎましたか?」

キィィィ・・はっ!「・・なんなら、体感してみる?」「げ・・チャージ中!」「まずいわ!」

「おーっす!」ぺちーん!「あいた!・・聖?!」「よっ、デコッパチ。今日もよく輝いてるね。」

「チャージ中だったから!あーあ、不意にしばくからリセットしちゃったわ。」「朝に輝くのは

お天道様だけでじゅうぶん。」「あんたはいっつもそう・・」♪ぱちっ。『(聖さま、感謝~。)』

「さ、行きましょうお姉さま。」「ええ。・・あら?」ヒラヒラ・・「・・白い・・羽根?」

 

****************************************

 

黒薔薇会日誌-鋼の旋律-

 

汐留・聖ガブリエル学園女子寮。遠隔地出身の生徒のために用意された寮で、家賃は無料だが、

それ以外は全て居住生徒の自己管理に委ねられている。(早い話がただのマンション)

部屋は2DKで二人部屋。それぞれが6畳の個室を持ち、ダイニングキッチンとバストイレが共用。

令と由乃は当然ながら同部屋である・・「・・うん、だいぶ熱が下がってきたね。」ジャーッ。

「令ちゃん・・いつもすまないわ。」「それは言わない約束でしょ。」「う・・ん。」むくっ。

「ふう・・これさえ無ければ無敵のスーパーヒロインなのに。」「正義の味方はひとつくらい

弱みを持ってるものだよ。だから人の痛みがわかる。」「・・そうだね。でも令ちゃんがそれに

付き合うことないよ。いいから学校行ってきて。」「そうはいかないよ。また発作が起きたら、

頭痛で動くこともままならないんだから。」「そこはなんとかするから。だいたい夜だって

定期的に様子を見に来て、ろくに寝てないんでしょ。」「だいじょうぶ、睡眠はとれてるよ。」

「うそ。目の下の隈、昨日よりひどくなってるよ。」「・・」「だめだよ・・わたしのことで

令ちゃんがボロボロになっていくなんて見たくない。」「・・私はこうしたいからしてるんだ。」

「令ちゃん、優しすぎる。それでどれだけ損してるのかわかってるはず。」「それが私さ。それに、

由乃のためなら苦とは思わない。」「・・ちくしょう。この発作が恨めしい。いつまでたっても

新しい身体になじまない頑固な脳が!」「由乃・・」♪ピロロロロ。「あ、電話だ・・もしもし。」

『まいど、マルローネです。実は・・』「・・えっ?拒絶反応を治す手がある?!」「えっ!」

「はい、はい!・・わかりました、ただちに!」♪ピッ。「すぐに店に行くよ。」「わかった!」

 

「Atelier de Marie」。♪カラーン。「ようこそ。やっと手配がついたわ。」「それで?」

「紹介するわ。知り合いのお医者さん。」すっ。「ドクターと呼んでもらえればいい。患者は?」

「わたしです。」「拝見。・・微調整は正しくされている。」「これ以上ないくらいに校正しても

この有様なんです。もう私に打つ手はありません。」「原因は患者自身にある。すなわち脳だ。

新たな器を異物と潜在認識している。たとえ本人が割り切っていても、脳の中の自分までは

納得しきれていない。」はっ。「かもしれません。この身体になって半年、割り切ったつもりでも、

頻繁な頭痛のたびに思い知らされ・・思い出す。」「いったいどうすればこの悪循環を断ち切れる

のでしょうか?」「手はひとつ、この身体の必要性を脳に納得させることだ。マルローネ、裏を

借りれるか?」「え?いいですけど・・」「それとひとつ貸してほしいものがある。」

 

魔空間。ゴォォォ・・『うわ~・・』「こんな広大な空間が・・」「さすが地獄の錬金術士・・」

「では治療を始めるが、そちらの付き添いの方にいちおうお願いしておく。これから行うことで

患者を助けぬこと。あくまで患者のみで立ち向かわないと、完治は保証しかねる。」「はい。」

「マルローネ、たのむ。」「では。」ぱん!「練成!」バン!・・ゴゴゴゴ、ゴバアアアアーッ!

「な、なに?!」ムゥゥゥーッ!「これは・・クレイ・ゴーレム!」「これを一人で倒してみよ。

武器はそこにあるものどれでもよい。」「え?・・・えっと、バズーカ!」ジャキッ、シュドッ!

ボスウッ!・・「砲弾が・・埋まった?!」「クレイ・ゴーレムは粘土製。ゆえに火器および

打撃系武器は通用しませんよ。」グワッ!「しまった!」ドゴオオオオーン!「ぐはあっ!」

ザザザザーッ!「由乃!」「だ・・だいじょうぶ。」ググッ・・ザン!「はじめてこの身体に

感謝するわ・・生身なら即死だった。」ダッ!「得物は・・これ!」ばっ。「バトルアックスか。」

「威力はじゅうぶん、だけど。」「でりゃあっ!」ブン!ドゴオッ!「切れた!・・えっ?!」

ギシイッ。「なにこれ・・抜けない!」「刃渡りが足りないからだ。」「一撃で両断できないと、

粘土に埋まって使用不能となるよ。」グワアッ!「・・まずい!」ばっ!ズドオオオーン!

 

「由乃、頭を使え!」「令ちゃん?」「由乃には他の誰にも無いサイボーグパワーがある。それを

最大限活かして戦うんだ!」はっ。「そうか・・サーチ・アイ。」♪ピピピピ・・「内骨格は無し、

みんな粘土だけで構成されてるのね・・切断シミュレーション・・長く重く、そして切れ味のよい

刃物が必要か。」きっ。「武器解析・・最適照合・・これだ!」ばっ。「あの太刀は・・まさか!」

「やっと手にとったわね、とっておきのを。」チキッ、ズラアアアーッ!「ほう、長い刀だ。」

「戦国の斬馬刀をモデルに打った斬機刀。欠点はとてつもない重さで、普通の人は使えないこと。」

「なんでそんなもの造ったんですか。」「単なるシュミ♪でも由乃ちゃんにはピッタリじゃない?」

 

ズシイッ。「なんて重さ・・けど、今の私にはこの重さがちょうどいい!」ダッ!ムゥゥゥーッ!

「とりゃあああーっ!」ゴオッ!シュパアアアアーン!・・ドドーン!「右腕を一刀両断!」

ダーン!「もらったああああーっ!」ブオッ!ズバシャアアアーン!ムゥゥーッ!「・・はあっ。」

スイッ、クルッ。カラン。「どんな相手でも、とどめの一撃はせつない・・」シュィッ、パチン。

ピキッ・・ピキピキピキッ!ユラリ・・ズズーン!・・「脳天から真っ二つ!・・すさまじい。」

 

「さて、頭痛はどうかね?」「え?・・あ、なんともない。」「だろう。今の戦闘で脳と身体が

完全にマッチしたからだ。」「たしかに、手術後にこれほどのバトルはしていませんでした。」

「練習程度じゃ甘かったのかもね。」「これで私もアフターケアが終わって肩の荷が降りたわ。」

「ここまでケアしてくれるとは正直思いませんでした。せめて礼金だけでも。」「いいのいいの。

お客さまが安心して使えるようにするのが、製作者の義務です。」「さすがプロですね。」

 

チャッ。「これいいなー。欲しいなー。」「由乃、それは無理だろ。」「いいよ?」『・・え?』

「使ってこその刀だもの。ちゃんと使ってくれる人がいるなら喜んで進呈するわ。あ、それと

ガンダム用もペアで造ってあるから。」「やった!ハガクレバスターに持たせよっと♪」

「でもこんな大きな刀、持ち歩くのはさすがに・・」「このバック・ホルスターを着てみて。」

ガチャッ。『ホルスター?』「長物専用。ちょっと小細工してるけど。」「やってみようか。」

カチャカチャ。「着けたら、ヤットウを鞘ごとホルスターに。」「よっと。こんなん入るわけ」

スッ・・「あれ?」シュン・・「・・刀はどこに?」「信じられない・・あの長刀がすっぽり

納まるなんて。」「空間工法の応用よ。柄は手の届くとこに、ちょっぴりだけあるでしょ?」

ごそごそ・・「あ、これね。」ぐっ、シュイン!「・・うそ!」「簡単に抜けるなんて?」

「・・まるで魔術。」「タネも仕掛けもありますよ。」「気に入ったわ。まとめてください。」

 

「ありがとございましたー。」♪カラーン・・「はい先生、治療費です。」ドン。「ここまで

アフターケアするとは優良店だ。」「サイボーグ改造代金でたっぷりもらってますから、

このくらい費用のうちですよ。」「法皇庁か?」「はい。なんでも爆弾の上にのしかかって、

他の人たちをかばったそうです。」「ほう。」「・・そりゃひどいもんでした。四肢はバラバラ、

胴体も腰から下は粉微塵、上半身も半分焼けただれて・・これで意識があるのが奇跡でした。」

「強靭な精神力か。」「あと付き添いのあの子の執念ですね・・医者に見放され、最後にここに

駆け込んできたんです。・・あの形相見たら、さすがになんとかしようという気になりましたよ。」

 

「法皇庁もよく予算を出したものだ。」「強力なコネを使いました。」「なるほど、幽音か。」

「説得というより脅迫に近かったですけどね。」『ホント、あのときはまいったよ。」♪チリーン。

「お、ウワサをすれば。」「あんなすごい剣幕で迫られたら、うんというしかないじゃない。」

「どのみち幽音が出すわけじゃなし、いいじゃん。」「こっちの都合まる無視だもの。ま、今に

始まったことじゃないけどね。」「三年ぶりか。」「ドクター、ひさしぶり。」「ちょうどいい、

定期健診を受けていけ。10年前からごぶさただ。」「・・バリウム飲むの?」「味は良くなってる。

前よりはるかに飲みやすいはずだ。ちなみにヨーグルト味だ。」「・・なら受けましょうか。」

 

ピィィィ・・バサッ。「・・なるほど。」「どうなの?」「疲労がだいぶ溜まってる。しばらく

休養しないと、いずれ爆発するぞ。」「日ごろはちゃんと寝てるよ?」「寝なれない環境でか。」

「・・・・。」「治療法をアドバイスする。宗魔城で一週間ほど静養したまえ。」はっ。

「あそこが一番落ち着く場所のはずだ。典医の羽鳥にカルテをまわしておく。」「・・透くんか。」

 

黒薔薇の館。『うわ~。』「なんて長さの実体剣なの・・」「ガンダムより大きい刀とはね~。」

「たしかにサイボーグの由乃しか使えないね。」『では試し切りを始めます。』ズーン!

「はいこちら整備班、試し胴を出します。」ゴロゴロ。『よいしょ、よいしょ。』ズズズズ・・

「厚さ1mのガンダリウム合金インゴット。通常型ビームサーベルは切るのに数秒かかります。」

「斬機刀・鬼平!」チキッ、ズラアアアアーッ!ビュン!ぴたっ。「ちぇすとおおおーっ!」

ブオッ!シュカァッ!『おおっ!』ぴたり。・・ゴトン。「ほとんど抵抗なくまっぷたつに!」

「豆腐を切るようにまああっさりと・・」「ふっふっふっ、極上ごくじょー。よしよし♪」

 

「桂さん、機体の各部応力は?」「いずれも許容範囲内です。連続使用での経時劣化予測値も

ほぼ算出できました。」「了解。こちら整備長、オールクリア。上がってください。」『了解。』

「お姉さま、劣化シミュレーションですが、係数は大きめにとっといたほうがいいと思います。」

「真美、どうして?」「由乃さんの性格です。後先考えずブン回すのはほぼ確実でしょうから。」

「あ、なるほど・・このくらい?」♪ピピピッ。「え?・・けっこう思いきった設定ですね。」

「機械を第一に考えるなら、ここまで考えないと。」「う~ん・・わかりますけど、いささか

オーバースペックかと。・・これでどうでしょう?」♪ピピッ。「うん、いいセンかもね。」

 

ワイワイ。「なんのかんのいっても、いいスールだねあの二人も。」「蔦子さんはスールを

造らないの?」「桂だって造ってないでしょ。」「あー・・なんか自分だけで手いっぱいで。」

「はい同じ。」しゅたっ。「ま、ああいうのはけっこう運命要素が大きいから、成るときは

どうにかなるんでしょ。」「三奈子さまと真美さんも、互いにピピッっときたらしいね。」

「そういう共振現象はちょっと憧れちゃうかも♪」「ニュータイプじゃあるまいし・・」

 

「令、由乃ちゃん見違えるように元気になったわね。」「・・そうですね。」「?・・なるほど、

今までみたいに手間かからなくなったのが寂しいのね。」どきっ!「そ、そんなことは?!」

「わかりやすいのね~。令はすぐ顔に出るから。」「・・。」「ま、もっとわかりやすいのは

祐巳ちゃんだけど。」「はい?江利子さま、なにか?」「呼んでみただけ。」「?・・はあ。」

タタタタ・・「令ちゃん、お稽古しよ!」「え?今から?」「少しでも早くうまくなりたいから。」

「よし、やろうか。」「いこ!」「グラン・スールもまぜてほしかったり。」「お姉さま?」

「じゃあ一緒にやりましょう、江利子さま。」「おばあちゃんの強さ、たっぷりお見せするわ。」

 

「へえ、あの江利子が練習する気になるとはね。」「妹たちのパワーに触発されたのね。

聖も、たまにはプティ・スールに胸を貸してあげたら?」「そっか~・・志摩子ー。」

「はい、お姉さま・・」すっ。「ひさびさにチャンバラしたい?」「いたしたいなら・・」

「じゃあいいや。」「そうですか。では・・」「・・聖、妹に甘えすぎよ。」「あ、わかった?」

 

************************************************

 

黒薔薇会日誌-子羊たちの沈黙-

 

薔薇の館。「・・・・」トントン・・ガチャ。「あ・・お姉さま、ごきげんよう・・」

「志摩子か。ごきげんよう。」「・・なにか?」「ん、なに?」「いつにないお顔を・・」

「ああ・・ちょっと昔のことを思い出してたからね。」「そうですか・・」「・・聞きたい?」

「お姉さまがお話したいのなら・・」「う~ん・・そう言われると、ちょっと気が変わるかも。」

『話してスッキリしたほうがよろしいと思いますが。』はっ。「静さま・・」「たしか静は

知ってるはずだよね。」「はい、全校を揺るがす大事件でしたから。」「大事件・・ですか。」

「二年前の冬の話。だから二号生以下は誰も知らない・・いえ、上級生は誰も話さないの。」

「なぜですか・・?」「消されるべき歴史・・とでもいうのかしら。」「大半は私に気遣って

沈黙してるんだろうね。」「今の三号生が卒業してしまえば、完全に消されるでしょう・・けど、

それでいいのでしょうか?」「静・・」「これはあくまで個人的意見ですが、あれは語り伝えるべき

物語だと思います。むろん記録に残すとかでなく、口伝えで・・少なくともスールの志摩子さんには

伝えるべきだと思います。」「静さま・・」「・・そうだね。たしかに静のいうとおり、志摩子は

知っておく権利があるね。」「お姉さま・・言いたくなければ無理には・・」「いや、やっぱり

これはきちんと話しておかなきゃならないことなんだ。」「・・わかりました。お聞きしま」

トントントン、ガチャ。「ごきげんよ・・?」『乃梨子?』「・・あ、用事を。」そそくさ。

「待った。乃梨子ちゃんはいいんだよ。」ぴた。「え?・・聖さま?」「乃梨ちゃん、こっち。」

「は、はあ・・」ガタッ。「ここは茶々が入りやすいですね。河岸を変えます?」「そうしよう。」

 

校内・薔薇園。この古風なグラスハウスは歴代生徒・スールたちの思い出が詰まっており、

それゆえに数十年を経ていまだ現存している。「知ってる?ここの伝説を。」「はい・・ここに

咲く薔薇は、どこにも無いここだけの品種だと・・」「いわば突然変異ね。世界の植物学者が

こぞって見たがるけど、部外者の出入りは厳しく禁じられてるの。」「わが校が法皇庁の管轄

だからですか?」「それもあるけど、もっと根本的な理由があるのさ・・例えば、この薔薇。」

ついっ。「・・なんてきれいな白薔薇・・」「でも・・この白さは異常ですね。そう、まるで・・」

「乃梨子ちゃん、その先はこれから話すから。」「?・・はい。」「そう、二年前の冬の話だ・・」

 

二年前、聖堂。『天にまします我らが父よ・・』「・・ん?」ぴくっ。(あの子は・・一号生か。)

「・・?」とん。(蓉子?)(どこ見てるの?・・あら、なるほど。)(なにがなるほどだよ。)

(聖好みの子だなって。)(知ってる?)(一号生『マリアの瞳』栞。異能は催眠術。自殺させたり

事故にさせたりするだけじゃなく、動物すらも操れるって話よ。)(へえ・・栞、か。)

 

放課後。ツカツカ・・「栞さん、ちょっといいかな?」「あ、『バベルの雷』聖さま・・」

「あなたの催眠術というのにちょっと興味があってね。人間以外も掛けられるってホント?」

「はい。例えばあの桜・・」キィィィ・・ポツポツッ、パァァァ・・「・・芽吹いて、咲いた?!」

「春の暗示を与えましたので。」「すごい・・花屋と酒屋が喜ぶ能力だね。」「うふふっ。」

 

黒薔薇の館。「蓉子、聖はここのところ館に来ませんね。」「はい、シエルお姉さま・・どうやら

ある一号生に入れあげてるようで。」「ああ、栞って子ね。(聖の姉。卒業後シリアで殉教)」

「あの子は危険な香りがするわ・・(江利子の姉。卒業後エウロパで殉教)」「聖はハマると

どん底まで落ちるタイプだから、ちょっと心配ね。」「なら姉として引き戻してあげなきゃ。」

「う~ん・・もうちょっと落としてからね。ちょっとは身に沁みさせないと。」「たしかに。

聖は黒薔薇会としての自覚が薄すぎます。多分に厭世的な性格のせいですが、ならばこそ

荒療治にいい機会かもしれません。蓉子、江利子さん。聖の様子から眼を離さないでください。」

『了解です。』「もうひとつ。・・情報科から気になる話を聞きました。実は・・」『・・えっ!』

「・・危険です!」「すぐに手を打たないと!」「まだ確証がありません。そこであえて・・」

「そんな!・・もししくじったら!」「最悪の状況も想定されます!」「そのときは、私自身で。」

『うっ!・・』「もしそうなったら、それまでだったということ。代行者に成る資格は無いわ。」

「・・わかりました。」「祥子と令も動員し、両者の集中監視を続けます。」「よろしく。」

 

講堂裏。「栞はどこいったんだ?・・あ、いた。」『・・・・。』「しお・・?!」ぴたっ。

(あれは・・まさか?)ささっ。「・・アッラーアクバル。」すっ、ざざーっ。(ムスリム?!)

ぽん。どきいっ!(・・祥子と令?!)(ご覧の通りですわ、聖さま。)(彼女はイスラムです。)

 

薔薇園。「どういうこと!」「簡単なことですわ。彼女はイスラム過激派から送り込まれた

工作員です。」「その任務は、代行者養成機関たる我が校の情報収集と、あわよくば・・」

「・・自爆テロ!」「そのとおりですわ。もし正体がばれるようなことになれば・・」

「そんな・・こんなことって!」「事実よ、聖。」ザッ。「蓉子・・」「なんなら私が始末して

あげてもいいけど。」すっ。「そうね、江利子なら指一本で決着ね。」「待て!・・私がやる。」

 

ザッ。「あ、聖さま。」「栞・・話がある。」「はい?」「インシ。」「アッラー!・・あっ!」

「そういうこと。・・どうする。」「・・こうします。」キィィィ・・「催眠術?しまった!・・」

「さあ聖さま・・私と共にムジャヒディーンとして、この悪魔の棲家を破壊しましょう・・」

ヒュン、ドスッ!「くっ!」「?!・・薔薇?」「・・蓉子か。余計なことを。」パリパリ・・

「はっ?!」ユラ・・「これで吹っ切れたよ・・神意代行。」すっ。「鳥よ!」ピィピィピィ!

ザザザザーッ!「雷網!」ズババババッ!ピイイイーッ!ボトボトッ!「焼き鳥おまっとさん。」

「くっ・・緑よ!」ザワザワザワ!ビュルルルッ、ギリギリッ!「引きちぎりなさい!」

「やれやれ・・地雷!」ズババババーッ!ボオオオーン!メラメラメラ!「そ・・そんな?!」

ザッザッザッ・・ザッ。ぽん。「聖・・さま・・」キラッ。「さよなら・・栞。」バリバリバリ!

 

ブスブス・・「てごわい相手だったわね・・聖?」ブルブル・・「栞は・・本当に私を愛して

くれてたんだ。」「なにを言ってるの?現に」「じゃあなぜ近づいたときに自爆しなかったんだ!」

はっ。「たしかに・・」「でも彼女はアッラーを選んだ。しょせんカソリックとイスラムでは

混じることはできないのを悟ってたのかもね・・それゆえに苦しんだ結果がこうなった。」

「おそらくは私に吹っ切らせるために本気で・・」「・・遺体を埋葬しましょう。校則どおり、

あの薔薇園に。」「また新たな薔薇がひとつ咲くわ。・・堂々と戦った勇敢な戦士の薔薇が。」

 

「ではこの薔薇たちは!」「そう、校内で死んだ敵の遺骸を滋養として育った薔薇。ここは別名

『無名戦士の墓標』。敬意を表すべき敵を祀る、鎮魂の薔薇園なのさ。」「そんな歴史が・・」

「だからここに思い出を持つ生徒は多いの。自分が倒した敵を忘れず、その魂と共に生きるため。」

「・・わかったわ。この薔薇の白は、魂の白さなのね・・」「栞も透き通るような白い子だった。」

 

タタタタ・・ガチャ。「祐巳ちゃん?」「こちらにいましたか。お姉さま方がお呼びです。」

「わかった。さてと・・ゆーみちゃん♪」わきわき。「げ・・先に行ってまーす!」ドピューン!

「あはははは。やっぱ正面からじゃ逃げられちゃうか。」「後ろから奇襲すればいいんですよ。」

「わっかんないな~。あれだけ深刻な話の直後にあれだもの。」「それがお姉さまよ・・」くすっ。

 

******************************************

 

黒薔薇会日誌-禁断のSEED-

 

技術科。「桂さん、ガンダム強化プランって?」「はい、まずはこれをご覧ください。」ばさっ。

『これは?』「ハイパーモードシステム?いや、違うね。」「構成がまるで違いますね。これは

まったく別のシステムです。」「桂さん、これはいったい?」「現行のハイパーモードシステムを

調べてて、その弱点に気づいたんです。」『弱点?』「発動持続時間の短さ。ファイト記録から

その平均時間は60秒以内。」「そりゃ必殺技を使うときくらいだから、短いのはむしろ当たり前

じゃない?」「ではもし、それで決着がつかなかったら?」『え?』「もしこの発動の時間を

乗り切ることができれば・・」「・・できるの?」ニヤッ。「それがこれです。」バン。

 

黒薔薇の館。「新機軸ブーストシステムの運用テストですって?」「はい。もしこれが成功すれば、

皆さんの戦闘力を最大限引き出すことが可能となります。」「でもそれって、現行のハイパー

システムでじゅうぶんじゃないの?」「そのハイパーモードの効果を長時間持続できるとしたら?」

『え?』「それがこれです。」ぱっ。「Sensitivity Extension and Enhance Disengagement

システム。略してSEEDシステム。」「これが・・興味深いわ。」「で、いいことばかりとは

思えないけど、リスク面は?」「むろんあります。長時間のブーストに耐えるだけの持久性です。」

「なるほどね。誰かスタミナに自信ある人は?」「はい!」「由乃ちゃんか。サイボーグなら

耐えきれるかもね。」「やってみます。」「可南子さんと・・あとは?」「やってみようかな。」

「祐巳?・・だいじょうぶなの?」「何事も経験、が座右の銘ですから。」「チャレンジャーね。」

「ではハガクレバスター、デスクロスドレッドノート、ビーストガイアにシステムを搭載します。」

 

グラウンド。最近はほとんど黒薔薇会専用ガンダム演習場となっている。「ではテストを始めます。

由乃さん、SEED発動してください。」「おっけい。・・!」カッ!ギーン!『・・あれ?』

「機体が金色に光らないけど・・」「SEEDは光りません。でも光の粒子は見えますよね。」

「ああ・・あれが。」「江利子さま・フラッシュアビス、模擬攻撃を始めてください。」

「おっけい。」シュドドドッ!「低出力レーザーだけど、当たったらコーヒー牛乳おごりね♪」

「はっ!」ヒュゴオッ!スカカカッ!『おおっ!』「レーザーを回避してる!」「どうですか?」

「いいよ、これいい!機体の重みをまるで感じない!」「まもなく1分です。」「これからね・・

反撃行動に移ってください。」「いきますよ江利子さま!」ゴオッ!「いらっしゃい由乃ちゃん。」

「鬼平!」ズラアアッ!「レーザーブレード。」すっ、ピシュゥン。「光線剣だから鍔競り合いが

できないのが残念ね!」シュバァッ!「鍔競り合いなんてのはシロウトのやることよ!」ヒュッ。

「えっ?・・当たらない?!」・・ボオッ!ぴたあっ!「うっ!・・」「本当のチャンバラは

いわば西部劇の早撃ちに似てます。すなわち、速いほうが勝つ。」「光より速いなんて・・」

「そこまで!真美、時間は?」「3分ジャストです。」「やった!大成功よ!」「まだよ、桂。

由乃さんはサイボーグなので特別、大事なのは生身で使いこなせるかどうか。これからよ。」

 

ズン!「可南子さんの相手はレイジングデュエル。志摩子さん、お願いします。」「はい・・」

「・・SEED発動。」ギーン!「まいります・・銀杏扇・晩秋の舞。」シュパパパパッ!

「・・見える。」さっ。グン!「?!」スカカカカッ。(軽い・・けど、軽すぎる。)

「一度だけではありません・・」・・ヒュゴオオッ!「・・。」ユラリ、スカカッ。「?!・・」

「回避は速いわね。」「いえ・・加速度計を見てください。」「・・これは?!」「はい、

瞬間最大で5G。でも問題は・・」「動作のたびにさまざまな方向にこれがかかる・・となると。」

「見事です・・では直接攻撃に。妖斬扇。」すっ、シャキン!パン!「バヨネット!」ジャキッ!

ドン!ゴオオオオーッ!「早春乱舞。」ヒュルルルッ。「シィッ!」ボボボボッ。(くっ・・)

「反撃!・・うぶっ?!」ガクッ!「?・・どうしたの?」「・・うええええっ!」ダバダバッ!

「やはり・・」「猛烈な加速度に内臓が耐えきれなかった・・予想された問題が出ましたか。」

「乃梨ちゃん、バケツ二つと雑巾を・・」「ただちに!」「ほら、しっかり・・」さすりさすり。

「可南子、ほらバケツ。」『うええええーっ!』「うっ!・・こっちまでもらいそう・・」

 

「祐巳ちゃん、どうする?やめとく?」「う~ん・・やれるとこまでやってみます。ダメなら

早めにギブアップすればいいし。」「相手はわたくしよ。」ズン。「ダーク・レイダー?」

「遠慮なくいらっしゃい。」「はい、お姉さま。・・SEED発動。」・・カッ!ギーン!

「百人一首ビット。」すいっ、シャリン。「いつもより数を増やすわよ。はっ!」シュパパパッ!

「ビーストモード。」ターン!・・ジャキン!シャシャッ、タタッ、タン!・・キュドドドッ!

「これは!・・最大6G!」「あの動きだものね。・・祐巳ちゃん、どこまで耐えれるのかしら。」

「さすがは高機動モード、ならこれはどうかしら?ナイトレーベン!」ガコン、シュパッ!

「サポートメカ?」「アタック!」ゴオオオーッ!「同時に百人一首!」シュパパパパッ!

「シンクロ攻撃、かわしきれるかしら?」「・・。」キラリ。ドバアアアアーン!ゴォォォ・・

「・・いない?!」ぎょっ!♪ピピッ!「・・上!」・・ゴオッ!「!・・」ヒュゴオッ!

ザシャアッ!「・・え?」「うげ、吐きそう・・ここまでです。」「ではテストを終了します。」

 

「で、結果はどうなの?」「予想された問題が表面化しましたね。発動時に生じるGに通常では

耐えきれないことがはっきりしました。」「記録によると限界時間は約1分。これではハイパー

システムと同等なので、メリットありませんね。」「使いこなせないシステムか・・惜しいわね。」

「例外的に由乃さんには有用と思われます。」「由乃、どうする?」「喜んで使わせてもらうわ。」

「可南子さんは?」「・・私には軽くなりすぎて却って使いづらいので、現行のままでいいです。」

「祐巳さんは?」「とりあえず載せときます。慣れれば1分以上いける感触はあります。」

「ではハガクレバスターとビーストガイアに仮採用ということにします。」「ご苦労様でした。」

 

帰り道。カツカツ・・「・・祐巳。」「はい?」「あの瞬間は・・いえ、なんでもないわ。」

「はあ・・?」(・・あのとき、祐巳は吐き気なんか無かったのでは?あの瞬間、間違いなく

レイダーの首は飛んでた・・それをしたくないから、わざと吐き気を装って・・?)

「・・。」(あぶなかった・・あそこでとどめをさしてたら、私に対する眼が変わる。それは

まだ早い。せめてBGFまでは現状を維持しないと・・それにしても、あのシステムはいいわ。

ちょっと重く感じてたガイアがとても軽くなった・・私のためにあるようなシステムね。)

 

「Atelier de Marie」。「・・これ、実際に造ったの?」「はい。けどトライアルの結果、

バスターとガイアにしか搭載できませんでした。」「そっか・・この図面は預かっておくわ。」

♪カラーン。「ふう・・不幸中の幸いね。あの二人なら何とかなるか。でも・・」ばさっ。

「偶然に造っちゃうってこと、本当にあるのね・・神殺し『ラグナロク・システム』を。」

 

**************************************

 

黒薔薇会日誌-諜報・魔界神話-

 

情報科。神意代行任務において、諜報活動は目立たないながらも重要である。

敵対組織の所在・構成・思想・活動内容を把握し、テロ等の行動計画を事前に察知することで、

代行者を最適なタイミングで送り込み撃滅することができる。

そういう諜報任務に就ける人材を育成することも聖ガブリエル学園の役割である。

だが情報関係の「異能」を持つ者はきわめて稀で、生徒数は最も少ない。

「ソロモンの目」瞳子はその一員で、傑出した情報異能を有し、一号生にして特別に

黒薔薇会への参入を許された逸材である。そしてその異能とは・・

 

一号生教室。「う~ん、わかんないな~。」「瞳子、どうかした?」「あ、乃梨子さん。

どうもよくわかんないことがありますの。」「へえ、瞳子でもわからないことがあるんだ。」

「これなんですけど。」カタカタ・・タン。「・・錬金術士マルローネ・パラケルスス?」

「いくら調べても出身も経歴もわからないんですの。いったいどこであれだけの超技術を

身に付けたのか・・」「WWWデータベースにさえ無いんだ・・となると、マルローネさんは

この世の人じゃない、ということ?」バン!「そこがわからないからいらついてるんですの!」

「まあ落ち着け。公表されてないだけかもしれないし。」「あ・・たしかにその方向も

可能性がありますわね。・・世界レベルの機密に関わってるとかなら。」「もしそうなら、

かえって深入りすると危ないんじゃない?」「代行諜報に危険もクソもありませんわ。

気になったらとことん調べ尽くすのみ。」「ま、自己責任でがんばってみてね。いちぬけた。」

 

古書「京極堂」。「マルローネさんに関する文献・・ですか?」「はい。あれほどの術士なら

何かしらの文献があるはずです。」「ん~・・兄さん?」「ひとつだけ聞く。彼女のことを

知って如何にする。」「情報調査訓練対象としての目的だけですわ。」「・・よかろう。

あの本を持ってこい読子。」「は、はい。・・いいんですか?」「なにごとも経験だ。」

はっ。「・・わかりました。」ぱたぱた・・ぱたぱた。「この本に記述があります・・」

「・・『魔界ハイスクール卒業生目録』?・・拝見いたしますわ。」すっ。「ストップ!」

「え?」「見ていいのは、このしおりの部分だけです。他は事情があってお見せできません。」

「?・・よくわかりませんが、わかりましたわ。」ぱら・・「・・こ、これは?!・・」

 

【マルローネ・パラケルスス:誕生日-不明種族-不明身元保証人-ドクター・メフィスト

中等部より入学、それ以前の経歴は不明。錬金術に関して天才的能力を持ち、なおかつ

カリスマも高く、上下級生問わず多くの友人を持つ。だが素行にかなり問題があり、

校則破りや魔界軍との喧嘩など日常茶飯事。また友人たちもそれらに参画し、高等部に

上がるころには魔界都市で知らぬ者はない『地獄の錬金術士』の仇名を馳せる。

 

高校二年時、魔界を揺るがした魔獣王復活事件において多大な活躍を成し、魔王陛下より

最高名誉勲章『逆十字勲章』を授与されるも、一笑のもとに辞し通常の生活に戻る。

 

卒業後は人間界の錬金術最高府・プラハアカデミーに特待生として招かれ、生徒であると同時に

主任教授を二年間務める。その後独立、ザルツブルグに開店して一年も経たないうちに、

暗黒街で『地獄の錬金術士』と恐れられる存在となる。現在はアレクサンドラグループの

招きに応じてネオジャパン・東京シティーに店を構え、特にガンダム製作・改造に関しては

他の追随を許さぬ高い品質で繁盛している・・】

 

「・・なんですの、これ?!」「読んだままです。そこからどう読み取るかは読者次第です。」

「・・知らない項目ばかり。どこから手つけりゃいいんでしょ・・まずはプラハか。」ぱたん。

「ありがとうございました。」「あまり役に立たなかったな。」「いえ、じゅうぶんですわ。

未知のURLを知っただけでも。」「えっ?!・・あ、裏表紙に書いてた。」「ここからが

わたくしの本当の腕の見せどころ。ではごきげんよう。」「あ、はい。」ガラガラ・・パタン。

「・・思ったより頭は回るみたいですね。」「というより現実主義者だな。諜報員としては

文句なし。だが。」「調べれば調べるほど混乱しますね。」「発狂しないことを祈ろう。」

 

視聴覚室。通常の授業では本来の目的で使われるが、瞳子だけは修練時限に別の使い方をする。

カタカタカタ・・タン。「さてと、USBコネクト。」シュルルルッ、パスッ。「ダイブイン。」

瞳子の特徴的な巻毛は単なる飾りでなく、情報端末に接続することでサイバーワールドへ

ダイブすることができる。これぞ彼女の異能『電能』。ネット内のあらゆる情報を引き出し、

また敵対サーバーへのサイバーテロのみならず、ある程度のIT機器ならば自在に操れる。

 

サイバーワールド内、アレクサンドラグループ・サーバー。「・・あ、またです。」「マチルダ、

どうしたの?」「はいシルビア、ここ最近、妙なのがワールド内をウロチョロしてるんです。

どっかの新参AIでもなさそうだし、どっからかダイブインしてきた誰かさんでしょうか?」

「へえ、私以外にもいるとはね。いまどこ?」「プラハ錬金術アカデミーサーバーへ

侵入しようとしてますね。」ぴくっ。「あそこか・・ちょっと様子を見てみましょう。」

 

プラハ錬金術アカデミーサーバー。「う~ん、やっぱりあの文献以上のデータはありませんわね。」

ちらっ。(・・あの制服はガブ女?)(該当者あり。諜報科一号生「ソロモンの眼」瞳子。)

(ガブ女なら納得ね・・何を捜してるの?)(卒業生データベースを当たってるようですね。)

(卒業生・・錬金術・・もしやマルローネ?)「残るはこのURLのみ・・行ってみましょう。」

ささっ。(どこへ行くのかしら・・あっちは行ったことないわね。)(あそこは・・まさか?!)

(なに?)(・・あそこは「テラ・インコグニタ」。ウワサでは電脳空間に穴が開いてるとか

いわれますが、真実は不明です。)(何でも知りたがるマチルダが近寄らないなんて・・なぜ?)

(わかるんです・・あそこは行っちゃいけないって。直感とかいうものかもしれません。)

(・・もしくはトロイの木馬で忌避プログラムを打ち込まれてるかね。)(そんな?・・)

 

ゴォォォ・・「な、なにこの穴・・サイバーワールドにこんなものがあるなんて。・・この先か。」

じーっ・・「・・ゴーストは行くなと囁く。でも代行者の辞書に後退はありませんわ。」すっ・・

「待って。」ぎくっ!ばっ!「・・あなたたちは?」「このワールドの住人よ。」「その先は誰も

行ったことのない『テラ・インコグニタ』。何があるか、戻ってこれるかはまったくわかりません。」

ゴク・・きっ。「未開の地に挑むがミッショネルの真髄ですわ。我らは主とともにあり、この命

なにするものぞ!AMEN!」ばっ!『あっ!』「たくー!これだから宗教関係者は・・マチルダ、

これ持ってて。」「糸・・ですか?」「有線ライン『観陀多』。いわば救命ロープね。合図したら

引っぱり上げて。」「わかりました。」「サイバーレスキューなんて初めてだわ。」ばっ!

 

オォォォ・・「こ・・ここは?」きょろきょろ。「・・情報がまるで違う!読めませんわ!」

「落ち着きなさい。」はっ!「あなたは・・」「読めないんじゃなく、理解できないんでしょ。」

「・・あなたは読めるのですか?」「幸いに語学は得意なの・・なるほど、そういうことか。」

「なんですの?教えてくださいませ!」「この言語はこの辞書を使わないとダメなの。」さっ。

「・・古代ルーン語?」「アップロードしてみなさい。」「・・読める、読めますわ。」

「で、狙いはマルローネの過去なのね。」ぎょっ!「なぜそこまで?!あなたはいったい!」

「シルビア・ミハイロフ。電脳業界じゃちょっとした有名人のはずだけど。」「あっ!・・

女帝のフォアカードの。」「はい正解。マルローネともけっこう面識あるわけ。」「納得ですわ。」

「まあ個人的にも彼女の情報は興味あるわね。なにせ本当の『テラ・インコグニタ』だし。」

「お手をわずらわせることでもありませんわ。」「手伝う気はないわ。勝手に探るから。」

 

スゥゥ・・「ここですわ、URLは・・」「魔界ハイスクールか・・ここじゃダメね。だって

とおりいっぺんのプロフィールしかないはずだもの。」「そんなことありませんわ!侵入!」

「・・ほお、なかなかの腕ね。」「・・くっ!」「でしょ。重要情報をこんな学校に置いとくわけ

ないって♪」「ならどこにあるっていうんですの!」「あそこ。」「え?・・なっ?!」

ドクンドクン!「すっごいヤバそうな領域でしょ。ああいうとこにこそ欲しいものがあるはず。」

 

「・・侵入できない?キーがわかりませんわ!」「これは・・なかなかの攻性防壁ね。ヘタに

触ろうものなら黒焦げよ。・・マチルダ、見える?」【うへえ、こんなバカみたいにカタい防壁、

初めて見ました。】「合い鍵造るのどのくらいかかる?」【フル稼働で一時間、いえ、二時間。】

「だめだこりゃ。となると・・カンと経験か。」ぽきぽき。すーっ・・「・・自分を信じて。」

ピピピピッ♪・・「・・よっしゃ、キター!」ぱかっ。「開きましたわ!お見事!」「いぇい。

さてとさっそく情報を・・?!」「こ・・これは!」「・・閉めるよ。」こく・・パタン。

「マチルダ、帰るわ。ひっぱって。」【情報は手に入りましたか?】「とっとと上げて!」

【?!・・は、はい!】「つかまりなさい。一瞬で戻れるから。」「は、はい・・」がしっ。

 

サイバーワールド。「はあっ、はあっ・・」「・・まいったわね。」「い、いったい何が?」

「知らないほうがいいわ・・瞳子ちゃん、言うまでもないけど。」「わ・・わかってますわ。」

「王様の耳を見ちゃったんだから・・あー!知らなきゃよかった!」「・・何があったの??」

 

翌日、ガブ女。ぐた~。「瞳子、なに黄昏れてんの。」「いえ・・ちょっと自分の性分に猛省を。」

「・・それは殊勝な心がけね。少しは気遣いというものを覚えれば。」むかっ!「可南子さんの

どこ押しゃそういうセリフが出ますの!あなたこそその横柄な口調では友達できませんわよ!」

ギャアギャア!「あ、元気になった・・ま、お互い手が出ないだけ加減は心得てるのかな。」

「だいたいあんたは・・」「そういうあなたこそ・・」「♪仲良くケンカしな・・ってか?」

 

「Atelier de Marie」。【・・というわけで、情報部が鋭意調査中だ。】「魔界軍機密サーバーへの

侵入か・・できそうなメンツはあちらでもこちらでも一人しかいないわね。」【ほう、何者か?】

「いいわ、こちらで対処します。新型防壁を送りましたから書き換えよろしく、校長先生。」

【わかった。】プツッ。・・「・・シルビアなら、沈黙を守るか。情報の恐ろしさは誰よりも

わかってるはずだから・・クギだけ刺しとくか。」ぱかっ、カタカタ・・「送信と。」タン。

 

サイバーワールド。「シルビア、マルローネさんからメールです。」「え?・・見せて。」さっ。

「・・う。」ガクガク・・「なにか?」「・・ばれた。」ぱらり・・ひょい。「このメールに

いったいなにが?・・『王様の耳はロバの耳』?」「死んでも、死んでも言いませんから・・」

 

********************************************

 

黒薔薇会日誌-静かなる鎮魂歌-

 

芸術科。代行者を育成する聖ガブリエル学園にあって、きわめて異色な学科である。というのも

「異能」はさまざまな形があり、その中には芸術的価値をも併せ持つものも少なくない。

例えば悪霊を絵に描き封じる画家、殺人マジックの奇術師、真空蹴りのプリマドンナなど。

これら芸術異能者は同時にその分野においても一線級の実力があり、芸術家として表世界で

活躍し、同時に裏で代行者として働く、いわば『仕事人』として活動することになる。

「闇の聖歌」静は声楽家として既に国際的知名度があり、ベルフィルやロンドン響から客演依頼が

あるほど。声域は10オクターブに達し、ソプラノからアルトまで自在にこなす実力を持つ。

むろん黒薔薇会から招聘があったほどの代行者としての『異能』もある。それは・・

 

音楽室。在校生で歌唱系生徒は現在のところ静のみなので、修行時限は彼女の貸切りとなる。

♪Credo inunum Deum, Patrem Omni potentem,fact orem coe lieterrae・・

「あ、静さまいらっしゃる・・」すっ、『祐巳ちゃん、なに?』「えっ?!」ガラガラ。

「当たった。」「ど、どうして私だと?」「足音で。これって指紋のように個体差があるのよ。

音程・リズム・細かい音形もね。」「まさか・・みんな聞き分けられるんですか?」「全校生とは

いかないけど、同学年と黒薔薇会なら識別できるわ。」「さすが・・あの、用件なんですけど、

実戦訓練をごいっしょにどうかと。」「祥子が?」「いえ、静さまいつもお一人で訓練なさって

おられるので、私の独断で・・」「そう・・ごめんなさい、せっかくのお誘いなんだけど。」

 

黒薔薇の館。「・・で、丁重に断られたわけね。」「お姉さま、静さまはどうしていつも

お一人で訓練してらっしゃるんですか?」「静の『異能』はきわめて特殊なの。その性質上、

まともに受けきれる相手がいないの。」「誰も受けられない力・・?」「それは音楽。静は

音を武器とするのよ。」「音・・ひょっとして清めの響き?」どどんがどん。「・・あのね、

あの静が音撃棒振るう姿、想像できる?」「えーと(想像中)・・ちょっといいかも♪」

「けど当たらずとも遠からずよ。」「蓉子さま?」「もっとも、浄化だけではないけどね。」

♪ピンポーン。『三号生「闇の聖歌」静さん、ただちに園長室へ来てください。』『え?』

 

園長室。「情報部『ヨハネ』によると、またもやDG細胞を入手した邪教集団が現れました。」

「ここのところ激増しましたね。シエル様は?」「他の用事で手が回りません。で、あなたに

お願いしたいのです。」「わかりました。ついては信頼できるパートナーが欲しいのですが。」

「ならば黒薔薇会のお三方がよろしいでしょう。」「いえ。」すっ、つかつか・・バタン!

『おおっと!』ずででーん!「おやまあ。」「祐巳ちゃん由乃さん、お願いできる?」

 

黒薔薇の館。「・・で、二人を同行させたいと。」「いちおう上の許可をいただこうと。」

「いいんじゃない?静さんなら安心よ。」「ひとつ条件がある。志摩子も行かせて。」

「え?・・」「祐巳ちゃんと由乃が行くなら、志摩子も行かないとね。」「・・はい。」

「反対です!」「反対ですわ。」「令ちゃん?」「お姉さま?」「こういう場合はまず同学年に

振るのがスジだろ。」「そうですわ。なぜに下級生なの?」「なぜなら、今回はあくまで私の

サポートが任務だからよ。上級生はもちろん、同級生にもそれは頼めないでしょ。」『う・・』

「というわけで、二号生三人に行ってもらうわ。」『かしこまりました。』「よろしくね。では

任務の説明をするので、視聴覚室へ。」ぞろぞろ・・ばたん。「・・瞳子ちゃん。」ぱちり♪

「委細承知ですわ。USB接続。」シュルルッ、パスッ。「ダイブイン・・準備よろしいですわ。」

 

視聴覚室。「では任務の説明をします。」ぱっ。「目的は邪教集団『ずんずん教』の壊滅よ。」

『え~?』「ずんずん教って・・あの有名な。」「教義はともかく、人気はあるよね。」

「・・たしか、こーゆー踊りで祈るんですよね。」♪ずんずん。『ぷははははっ!』

「し、志摩子さん、それおもしろすぎ!」「キャラ崩すからやっちゃダメだって・・あはははっ!」

「・・けっこう好きなんだけど。」「話を戻すわ。たしかに今までならおもろい教団で済んだけど、

事態が激変したの・・DG細胞を入手してから。」ぎょっ!『DG細胞!』「最新情報によると、信者を

次々とDG感染させ、ゾンビ兵に仕立ててるわ。いずれ爆発的に拡大するでしょう。」ごく・・

「そうなる前に、教団ごと殲滅しなければならないわ。」「質問です。そういう状況ならかえって

殲滅は難しいんじゃないでしょうか?」「もし感染者を一人でも逃がしたら、どこかでまた感染が

広がるわね。」「・・エボラウイルスよりタチが悪いわ。何かいい手はないのでしょうか・・」

「そこが今回の作戦のキモよ。名づけて・・由乃さん、ちょっと。」「?・・はい。」つかつか。

ひょい、ぴしっ。「ハメルンの笛吹き。」『し、静さま・・(-_-;;』「一度やってみたかったの♪」

 

薔薇の館。「・・なるほど、奥多摩か。」「盗み聞きとは蓉子も悪党ね。」「いいえ、たまたま

視聴覚室のデータが同時に見れるだけよ。」「このくらいのハッキングなら朝飯前ですわ。」

「で、どーすんの?」「祥子、令、乃梨子ちゃん。」『はい。』「自費になるけど、いい?」

「ご心配なく、うちのリムジンを使いますわ。」「まあせいぜい目立たないようにしようか。」

「志摩子お姉さまを陰ながら守護せねば。」「むろん、情報戦専門のわたくしも行きますわ。」

「・・私も同行させてください。」「可南子ちゃんはいいのよ、あくまでスールの勝手だから。」

「ならばこれは私の勝手です。」「・・いいでしょう、来なさい。」「ありがとうございます。」

 

奥多摩。ザッ。「あそこよ、教団本部。」シーン・・「静かすぎる・・」「灯りも点いてないわ。」

「・・まるで人気が無いですね・・?!」ぴくっ。「・・いるわ、いっぱい。狂った気が・・」

「準備しましょう。」『はい。』カチャカチャ。「ん?・・祐巳さん、そのカゴなに?」

「魚篭だよ。」「・・どじょうでもすくうの?」「ん~、どっちかゆーと、人間かな。」

「みんな準備いい?では。」『散!』シャシャッ・・「・・うまく追い込んでね。」

 

ちょっと離れたところ。「散ったわね。」「それじゃ私たちも。」「瞳子はどうするの?」

「誰かと同行しつつ自分の役割を果たすつもりですわ。」「じゃあ私といらっしゃい。どうやら

祐巳は建物内に入るみたいだから、情報端末も見つけやすいわ。」「可南子は単独行動?」

「いえ、乃梨子といっしょに。呪文のスキを狙われないよう前衛を勤めるわ。」「おっ?」

「・・瞳子、なに?」「いえ、ゴーイングマイウェイな可南子さんにしては珍しいので。」

ふっ。「・・誰かさんみたく金魚のフンじゃ」「さ、いこいこ。」ぐいぐい。「あ・・」

「・・さすが乃梨子ちゃん、こじれる前にブレイクさせたか。」「呼吸を心得てるわね。」

 

建物内。シャシャシャ・・(・・誰もいない。なぜ?・・はっ?!)ターン!・・ぴたっ。

ぺったらぺたらこぺったっこ。「ウィィィ~。」(・・なにあれ?DGゾンビみたいだけど、

足音も動きもヘン。気持ち悪いからとっとと始末しよっと。)ぺったらぺたらこぺったっこ・・

ぶらん。かぽっ。『モガッ?!』「ビークラッシャー。」ぎゅいっ!バキベキボキバキ!

『モガモガモガ!・・』だらん。シュルッ、ぱこっ。「・・」ばたっ。「まずひとつめ。」

 

「・・祐巳、いつの間にあんな道具を。」「どうやら網の目構造が口紐のスイッチで絞られ、

頭部を破砕するほどの圧縮力を生み出すようですわ。」「それで顔が市松模様になったのね。」

「おっと、端末みっけ。さっそく侵入して情報を集めますわ。」「内部構造や、できれば配置も

わかるといいわね。」「セキュは止めます?」「いえ、気づかせるのがいいのよ。」「はあ?」

 

中庭。『ウィィィ~。』くねくね。ザッザッ・・『・・ウィ?』ザッ。「ゾンビになっても

踊り忘れず、さすがはずんずん教徒ね。」きょろきょろっ。♪ピッピッピッ。「ロックオン。」

『ウイイイーッ!』ドドドド!「斬機刀『鬼平』!」チキッ、ズラアアアアーッ!ビュン!

「ずおりゃああああーっ!」ブオオッ!ズパパパパーン!『ウギャアアッ!』ボトボトッ!

「一閃で首三つ。」「ウイイイッ!」ゴオッ!「ほい。」ヒュン、ザキイッ!「後ろからでも

ロックオンしてあるから死角にならないわ。」『ウイイイイーッ!』ザザザーッ。「間合いを

とった?」ボオオオオーッ!「なっ?!火を吹いた!」タタタン!ゴオオオオーッ!

「・・逃げきれない!」ヒュバアッ!ボシュッ!『ウイッ?』「?・・火が消えた?なんだか

わからないけどチャンス!」ダーン!『ウイッ!』「サイボーグの跳躍力をあまくみるな!」

ブオン!ズバシャアアアアーッ!『ウゲエッ!』ザシャアッ!「落雷斬り。・・往生しなっせ。」

 

「・・たく、前に突っ込み過ぎなのよ。」パチン。トン。「まだまだ手がかかるね・・」

 

裏手。『ウイイイイ!』ドタドタドタ!・・すっ。『ウイッ?』「・・中庭の応援に行かせる

わけにはいきません。」『ウイイイイーッ!』ボオオオオーッ!「・・鉄扇子。」バサアッ!

バシイイイーン!「・・お返しします。火炎旋風。」バサバサアッ!ブオオオオーッ!

『ウギャアアアーッ!』メラメラメラ!「・・ご自分の炎で焼かれるご感想はいかがです?」

「ウイイーッ!」ザザザザッ。「包囲攻撃・・チームワークはいいようですね。」「ウイッ!」

ダダッ!「銀杏扇。」すっ、バサバサッ!「枯風の舞。」ヒュルルルッ・・シュパパパパッ。

「・・ウイ?」ピリッ・・ズルドシャアッ!ブシュウウウウーッ!「おそまつでした・・」

ウィィィーッ!ぴく。「・・まだ来るのね。」さっ。・・シーン・・「気配が・・消えた?」

 

「千手観音連撃!」ズドドドドッ!バゴバゴバゴッ!「不動明王剣!」ブオオッ!ズバシャアッ!

「ウイイイーッ!」ブオオオオーッ!「火炎?」「・・まかせて。」ザッ。「詩篇シールド!」

バサササッ!バシイイイーン!「バヨネット!」ジャキジャキッ!「シェアッ!」ヒュバババッ!

ドカカカカッ!『グギャアアアッ!』「お返しするよ。孔雀明王火炎陣!」ボオオオーン!

『ギャアアアアーッ!』「・・片付いたわね。」「まだまだ。次いくよ。」「ええ。」シャッ。

 

ふたたび祐巳。サササッ・・(信者はみんな出払ったね・・さて教主はいるかな?)ちらっ。

(・・なにあれ?)「むっほむっほ。・・ん?」くるっ。「そこにいるのはたれじゃ?」

くるっ、スタッ。「よくわかったね。ただのお公家さまじゃないんだ。」「をほほほ。ダテに

ずんずん教主はしておらぬ。それにすばらしい力も手に入れたしのう。」ピキピキ・・

「DG細胞・・そういうのに頼って神さまがお許しになるの?」「問題ないない。わらわこそ

神だからじゃ。」「・・話にならない。神意執行。」ジャキジャキッ。「お、やるか?ん?」

スラアッ、ダン!ビュン!「なっ?!」ガキーン!「ほれほれほれ。」シュドドドドッ!

「くっ!」キキキキィン!「ほいっと!」ダン!ドン!「はっ!」くるくるっ、ザザーッ。

「・・こいつ、見た目よりできる!」「剣はマジメに稽古しておったでのう。ほっほっほ。」

 

「やるわね・・」「剣スジからみてフェンシングのようですわ。ショートソードの祐巳さまでは

リーチに不利ありすぎですわね。」「いえ・・祐巳にはそのくらいハンデにもならないわ。

さてどう攻めるの?『獣の数字』・・」「・・なにかむっちゃ悪い予感するんですけど。」

 

「しょうがない、アレでいこうか。」ぽい、カラカラーン。「む?剣を捨てたとな?」

「いくよ、おじゃる丸!」ボッ!「迎撃じゃ!」ビュオッ!カキィン!「な、なんじゃと?!」

「巻風!」ヒュルッ、ザキイッ!「のっ!・・」「・・神意、完遂。」すっ、パシャシャッ。

「・・まさか、肘に刃物があろうとは。」「ビーストセイバー。初陣はまずますね。」

「見事じゃあっ!」バシュウウウウーッ!「パンにはパンを、血には血を・・AMEN。」

 

「す・・すごいですわ。」「剣を振る動作を極限までコンパクトにしてスピードを上げ、なおかつ

全身でぶつかることで相手の防御を崩す・・やるようになったわ。」「あれが『獣の数字』・・」

フワサッ・・「?・・白い羽根?」ぱしっ。「変な羽根ですわね。鳩にしては大きすぎるし、

猛禽類にしては真っ白ですわ。」じーっ・・「・・いつかどこかで見たような気がするわ。」

 

正面玄関前。『ウイイイイーッ!』ドドドド!「そうそう、どんどんついてらっしゃい!」

タタタタ。・・ヒュン。「・・由乃さん、大人気ね。」「やめてよ志摩子さん。あれなら

アキバ系のむさいヤロウどものほうがまだマシよ。」「・・そういえばこの制服、地味なのに

売れてるみたいね。」「いまどきはアニメ調のハデなのより、シックなリアル系がトレンドよ。」

ヒュッ、シュタタタ。「ただいまー。教主は片付けてきたよ。」「ごくろうさま祐巳さん。」

「・・あとは一斉大掃除だけね。」「静さま、どうやるのかな?」「そろそろ作戦ポイントよ!」

 

ザッ。「来たわね。」・・ドドドドド!「静さまー!」「団体ご一行さま、ご案内でーす!」

「・・お待たせしました。」「はい、いらっしゃいませ。大歓迎しましょう。」すーっ・・

キィィィ・・ビリビリビリ!「・・なに?」「大気が・・震えてる!」「・・まさかこれが

静さまの?」♪アアアアアア~ッ!ドオンッ!『うわっ!』ゴオッ!・・『・・あれ?』

『ウギャアアアアーッ!』ピキピキッ、パキイイイーン!ガラガラガラ!「なあっ!・・」

「DGゾンビの群れが・・粉砕!」「・・これほどの威力なのに、なぜ私たちは無事なの?」

 

ザッザッ・・「これで殲滅ね。敵をまとめてくれて助かったわ。」「静さま、今のはいったい?」

「共鳴破壊声楽『ソリタリー・チャント』。固有振動数って知ってる?」「えーと・・たしか

物質はそれぞれ固有の振動数を持ってるというヤツですか?」「そのとおり。最初の高周波で

対象物の固有振動数を算出し、それに適した周波数の発声をすることで選択破壊が可能なの。」

「・・DG細胞の固有振動数を使ったので、私たちは直撃を受けても無事だったのですね。」

 

「さすがは『闇の聖歌』静だね。」「広域制圧能力としては学園一、上級生にも匹敵するものの

ない異能・・もし黒薔薇会にいたなら、次期首長は確実の逸材なのに惜しいことよね。」

「なぜ固辞したんですか?」「本人いわく、自分勝手で人をまとめる力は無いからだとさ。」

「・・とてもそうは見えませんが。四号生をも凌ぐリーダーシップを確実に持っています。」

「私たちもきわめて同感だ。だが。」「最大の理由はあの異能ね。ご覧のとおり多数集団への

後方支援攻撃としては最高のもの、けど声を発することで隠密性は失われる。」『あ・・』

「だから動ける範囲はおのずと限定される。それが静が自分を半端者とみなしている理由だ。」

「そんな・・じゅうぶんすばらしい能力なのに。」「・・いえ、わからないでもないわ。

見たところ静さまは完全主義者、しかもそれを自らに課すタイプかと。ならば隠密性を保てない

自分の能力を嫌悪しているのでは。」「とはいえその能力は学生の身で神罰代行を任されるほど

機関に評価されてるの。」「疑問です。それでは今回の任務協力依頼は矛盾してますが。」

「そう、本来なら一人でやるのを今回にかぎって・・そこはわたくしにもわからないわ。」

「私はちょっとわかる気がするな。」「令さま、それは?」「推測に過ぎないけど・・祥子、

静が変わりはじめた時期がある出来事と一致することに気づいてる?」「いえ・・なんなの?」

「昨年の学園祭。あのときの催しで静はなにやった?」「え?・・あっ。」「そう、一号生の

三人との合唱。二週間ほど合同練習してたよね。」「そうだったわね。・・あ、そういえば。」

「音楽室の前を通りかかったとき・・聞いたでしょ?静が大笑いしてたの。」「なるほど・・」

「あの優雅な静さまが大笑い?!想像できない・・」「・・やはり祐巳さま達は違う。」

 

「これで任務完了・・いえ。」きっ。『え?』「まだ残業しなきゃならないみたいね。」

ゴゴゴゴ・・ゴバアアアーッ!「デスアーミィ!」『をほほほほ!』「あの声は・・教主?!

たしかに殺したはずなのに!」『むほほほ。神の力を授かりしまろは不死身でおじゃる。』

「・・DG細胞をあまくみすぎてた。殺し足りなかったとは!」『ぬしらよくも可愛い信者たちを

手にかけおったの。たっぷりお返しするぞよ。』グワアッ!「巨大棍棒が!」ブオオオッ!

ヒュゴオッ!「一閃!」シュピィィィーン!「えっ?!」「・・あれは?」「令ちゃん?!」

ピキッ、バラバラバラ!『なんと?細切れに!』スタッ、パチン。「助太刀いたす・・ってね。」

「♪みかきもり衛士のたく火の夜はもえ昼は消えつつ物をこそ思へ♪・・防人の火!」

ヒュバババッ!ドカカカカッ、ドカドカドカーン!『のおおっ!』「あれは・・第四十九首・

大中臣能宣朝臣。まさか?」ザシャッ!「お姉さま?!」「さすがに草葉の陰も飽きたわ。」

ゴロゴロ・・「因陀羅轟雷撃!」ピシャアアーン!ズババババッ!『しびびびび!』ジャラッ!

「・・乃梨ちゃん?」「志摩子お姉さまは私にとって菩薩、守護するは我にあり。吽発多!」

「祐巳さま、ここからは私たちが。」ぬっ。「可南子ちゃんまで?」「いえいえ、単に皆さん

暴れ足りないだけですわ。」ひょい。「どり子まで来てたの?!」「瞳子です!由乃さま。」

「ふふっ、瞳子ちゃんはある意味正しいわ。」「たしかにストレス溜まってたのは事実ね。」

「あなたたちね・・」「迷惑だったかな?」「ちなみにボランティアよ。」「・・やれやれ。」

 

『ぬぬう、これほどの伏兵がおったとは。かまわぬ、まとめて踏みつぶしてくれる!』グワッ!

「おっと!」ばばっ!ズシーン!「♪朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれわたる

瀬々の網代木♪・・朝霧。」サァァァ・・『むうっ?見えぬ!』「由乃、いくよ。」「うん!」

シャシャシャッ!「一の太刀!」シュピィィーン!ぱくっ。「その傷口もらうわ!二の太刀!

ずおりゃああああーっ!」ブオオオッ!シュカアッ!『なんとおっ?右脚が!』グラッ・・

ズドオオオーン!「敵は擱挫したわ・・乃梨ちゃん。」「委細承知。」「・・破裏扇。」さっ。

「摩利支天剛力光!」サァァァ・・カッ!ダーン!「印影丹科砕。」パアアーン!グシャアッ!

『のおおっ!コクピットハッチが!」ひょい。「・・なんて醜い。バヨネット!」ヒュバババッ!

ドボボボボッ!「・・浄炎。」♪パチン。ドカドカドカーン!ボオオオーン!「やった?」

ググッ・・わしっ!「そんな?!」「まだ再生するというの!」【わ・・われは死なぬ、いくら

やられようと何度でも再生してくれるわ!】ピキピキピキ!「ゾンビよりタチ悪いですわ。」

 

「しょうがない、私が引導を渡しましょう。」すっ、シャキシャキン!「両袖から双飛剣?」

「はい。」ヒュヒュッ!ヒュルルル・・ドスドスッ!【なんじゃ?こんな小さい剣二本では

どうにもならんぞよ。】「そうかしら。よく見てみなさい。」【ん?・・糸?】ピーン。

「激震弦・風鳴り。」キュイッ。♪n・・・・「ハミング?」ビリビリビリ・・【ながっ?!

な、なんじゃこの気持ち悪さは!】「なるほど・・剣に付いたテグスを共鳴弦として、DG細胞

破壊音波をダイレクトに叩き込んでるのか。」「空気伝播による減衰がゼロになるため、のべ

数十倍のパワー。」「いわゆるひとつの滅びの糸電話ですね。」「由乃さん、ザブトン一枚。」

【ひぎゅああああっ!】メコメコメコッ!「DG細胞の断末魔ね。」「うわ・・北斗神拳みたい。」

【おじゃるっ!】ボシュウッ!サラサラサラ・・「・・灰は灰に、」「塵は塵に。」『AMEN。』

 

「やっと任務完了か。」「この建物、どうします?」「DG感染を予防するためにも消毒ね。」

「・・ならおまかせを。」ヌウッ。「可南子ちゃん?・・いいわ、やってみて。」「はい。

エレナズ・ネイル。」ガシャッ!「巨大釘の束?」「いったいどこから?」「はあっ!」

ビュビュビュッ!ヒュルルル・・ドカカカッ!「?・・建物の四方に?」「・・結界?」

「デスクロス・フォーメーション!」ピカッ!ジャキジャキッ!「展開して十字架に?」

「インフェルノ・フレア!」キュドドドッ!ドオオオオーン!『うわっ!』ゴオオオオーッ!

「こ・・これは!」「結界内を大焦熱地獄に!」「可南子さん、いつの間にこんな技を!」

ゴォォォ・・「・・執行終了。」ぱん!ボシュッ・・「・・堕ちなさい、マルボルジェへ。」

 

数日後、黒薔薇の館。「で、瞳子ちゃん、重大情報って?」「ずんずん教のサーバーにあった

情報を解析したところ、恐るべき事実が判明いたしましたわ。」ぱっ。『・・これは!』

「デビル軍団と接触のあった各種組織リスト。その数はおよそ五十にものぼりますわ。」

「こんなに・・」「思ったより事態は進んでいるようね。」「機関も忙しくなるぞー。」

「またこちらにお鉢が回ってきそうですね。」「機関も深刻な人材不足らしいしね。」

「学生の静が本職兼任という実情だしね・・」「ん~・・それって、ムチャな任務でむやみに

殉教させる上層部の問題じゃないかと思うんですけど。」『う・・(みんな思ってた)』

「とはいえ、こういう状況だと今回のように私たちまで動員される可能性は高くなります。」

「わかってるわ・・けど幸いなことに、我々にはひとつだけ本職に負けないものがあるわ。」

「チームワーク、だね。」「そのとおり。一人ひとりは未熟でも、それを補って余りある

仲間たちがここにいるわ。」「なるほど・・ではこれからも助っ人たびたびお願いしますわ。」

 

会議後。ガヤガヤ・・「静。」「聖さま。」「・・どう見た?」「いいですね、祐巳ちゃん。

本当の実力はうまく隠してますが、無意識のうちに漏れ出てます。」「だろうね。あえて

実戦投入させて潜在能力を見るプラン、まずは成功というところかな。」「そのために昨年は

デュオさせて布石を打ったんですね。」「あ、バレてた?」「歌い方でコブシまわってるのには

まいりましたけど・・ふふっ。」「あれでも、ど演歌が大好きらしいからね。そういやいっぺん

BOX連れてったときも、演歌ばっかし歌ってたか。」「あら、次は私もお誘いください。」

「いいとも。聖歌ってカラオケあったっけ?」「いえ、実はクィーンが大の得意でして。」

「へえ~、そりゃぜひ聞きたいね。十八番は?」「ボヘミアン・ラプソディ。」「さすが。」

 

********************************************************

 

黒薔薇会日誌-祐巳と桂の「これが黒薔薇の館だ!」-

 

「祐巳でーす。」「桂でーす。」『二人そろって「略してOK!」コンビでーす!』すぱーん!

「どーゆーコンビ名やねん!」「あ、蔦子さん。」「ボケばかりでどーしようっての。ここは

ツッコミ役も必要でしょ。で、なにすんの?」「あ、はい。今日は黒薔薇の館がいったい

どんなとこなのか、桂さんとレポートしていこうかと。」「一般生徒からすれば伏魔殿か

怪物の巣窟かのようなイメージを持たれている黒薔薇の館の実体を暴き出す突撃レポート!

報道の血が燃えます!」「あんた技術屋でしょーが。それにモトネタ反映するなら、三奈子さまか

真美さんの仕事じゃ?」「二人は設定変わったとたんに報道魂が技術屋魂にチェンジしたんで。」

「あと設定変えても出番が少ない桂さんに優先的にまわすという作者の親心だそうです。」

どーん・・「そうなのよ・・ここでも出番が少ないのは、もはや運命なのかしら。」「まあまあ。

レギュでも目立たない江利子さまや由乃さんて例もあるし。それに出番が無いこと自体が

ネタになってるって考え方もできるって。」「蔦子さん・・それって哀しすぎるんだけど。」

「・・ええい!気をとりなおして、さっそく館に突入するわよ祐巳さん!」「おー!」

 

「はい、まずは玄関前です。祐巳さん解説どぞ。」「外見はモトネタまんまです。二階建て。

中もおおまかな構造はモトネタのままだけど、細かい点で異なるので、そこは説明します。」

ガチャ。「玄関入ってすぐ右が物置。主に使用頻度の高い生徒会活動用備品が納められてます。

ある程度のスペースがあるので、二階が手狭になったときは副作業室としても使われます。」

「今は技術科整備チームの詰め所となってて、絶えず何か作業している音が聞こえます。ほら。」

カチャカチャ・・「誰かが回路チェックでもしてるのかな。」「今ここにいないメンツだと、

どっちかだけど・・」『・・うふふふふ。』「あ、三奈子さまだ。」『ああ・・美しいわ。』

「また何かヘンなもの開発したみたいですね。」「科長の悪いクセがまた・・ん?」バタン。

「あ、皆さん。三奈子さまは?」「中にいるわよ、真美。」「どうも。」ツカツカ・・ギイッ。

「ゲッ!」「・・お姉さま、なんですかこれはー!」「あ、その・・」「また予算の無駄遣いして。

実用性の無いもの造らないでください!」「ごめんなさいごめんなさい!」「風物詩ね。」

 

「階段下にも物置があります。こちらは備品はもちろん、歴代卒業生が残していった各種武器やら

なぜかコスプレ衣装などもゴチャゴチャ入ってる四次元ポケット状態。けど探せばそのとき使える

何かが必ず出てくる、という黒薔薇会伝統のジンクスがあります。」「うわ~、すご・・」

「技術科倉庫といい勝負ね。あそこもオーパーツがよく出てくるけど。」「そうなの?」

「歴代技術科生が造ってった、わけわからない道具がゴロゴロ。何にどう使うのかわからないものも

かなりあるわ。」「そういやいっぺん、信管生きてる核弾頭が発掘されて大騒ぎになったね。」

 

「階段と物置の隙間の奥に摩倶荼羅教の仏壇。ちょうど志摩子さんと乃梨子ちゃんがお勤めを

してます。」♪ポクポクポク、チーン。『アグル・ダー・エスト・イリリ・ウルクァ・・』

「なんだかよくわからないお経ね?」「志摩子さん、それは?お経とも聖歌ともちがうけど。」

「・・これは摩倶荼羅教独特のオラショなの。」「原典はスペイン語とも言われてますが、

調べてもよくわかりません。」「・・法皇庁に照会しても、該当する聖歌が見つからないって。」

ガチャ。「おっ、お勤めやってるね。」『聖さま、ごきげんよう。』「どれ、私もいっちょ

拝ませていただくかね。」「・・どうぞ、お姉さま。」にこっ。「まずお線香上げてと。」ボッ。

すっ。「・・・・よし。」♪チーン。「ありがとうございました。」「鐘の音が好きでね。」

 

「中二階、というより踊り場にはステンドグラスの明り取り。ガブ女の「G」を基調とした校章と

黒い薔薇のデザインです。」「Gのシグモイドカーブに短剣と荒縄が絡み、周囲に銀貨二十枚。

てっぺんには毒薬瓶があしらわれてます。」「短剣・荒縄・銀貨二十・毒薬。この四つは代行者の

象徴(シムボル)とされてるの。」「異教徒を打ち倒す短剣、背教者を吊るす荒縄、神前に寄進し

免罪を請う銀貨、万が一敗れた際に生き恥を晒さないための毒薬。まさに代行者の規範です。」

「黒薔薇はどういう象徴なんですか?」「黒薔薇の花言葉は『束縛』。教義というイバラに縛られ

主の走狗として命を賭して戦う・・そういう誇りと自嘲をも含むの。」『うーん、深いな~。』

 

「階段の手すりは一階までストレートに通じてて、急場などはよく滑り降りるんです。」

「でも踊り場の急ターンは、いったん止まらないと曲がりきれないんじゃない?」「そのとおり。

だから慣れない下級生はここで曲がりきれず、踊り場の壁に激突することが多いんです。これは

黒バラ会全メンバーが一回は経験済み、というより、この経験を乗り越えなければ黒薔薇会として

認められない通過儀礼になってるの。」ガチャ。「・・祐巳さまたち?」「ちょうどいいわ。

可南子ちゃん、手すり滑りやってみて。」「・・はい。よっと。」ひょい、シューッ!

「・・ここで重心ずらして減速しつつター・・っ!」つるっ。「しまっ!・・」びたーん!

『うわ~・・』「というわけ。一号生だとコツつかむまで最低でも半年はかかるの。」

「あいたた・・」「可南子ちゃん、だいじょうぶ?」「祐巳さん、お手本見せてあげたら?」

「え?」「・・見てみたいです。」「う・・わかった。」トントン・・くるっ。「いくよー!」

ひょい、シューッ!「まもなく180R!」「・・速すぎる?!」「はっ!」がしっ!ブオン!

『おおっ!』シャーッ!・・すとっ。「こんなカンジ。」「す・・すごい!」「左手一本で

180Rを回りきるなんて!」「それで異常な加速をかけてたのね。身軽な祐巳さんならでは。」

 

ギイッ。「二階が黒薔薇会の中枢、サロン風会議室です。16人掛け長テーブルと壁ぎわの

予備椅子で、最大30人は入れます。」『失礼しまーす。』「いらっしゃい、桂さん、蔦子さん。」

「祥子さまだけですか?」「他のメンバーはまだ来てないわ。」「では内部の説明をします。

入って右隅に流し台と食器棚。モトネタでは電気湯沸しだけですが、さらに卒業生が持ち込んだ

電子レンジがあります。」「冬場にお弁当を温めるのに便利なの。まあ、たまに冷凍食品そのまま

持ち込んでくる豪傑もいるけど・・」ちらり。「あ、はははは。」『やっぱ祐巳さんなのね・・』

 

「左の突き当たりはスクリーンが下ろせ、プロジェクター投影ができます。」『プロジェクター?』

きょろきょろ。「どこに?」「見当たらないけど・・」「今ここには無いわ。・・来たようね。」

ガチャ。「ごきげんよう。」『瞳子ちゃん?』「瞳子ちゃん、プロジェクター見たいそうよ。」

「いいですよ。よっと。」どさっ。ぱか、カタカタ・・「立ち上げよし、プロジェクター起動。」

ぴかっ!ぱっ。「あー、なるほど。」「ノートパソ内蔵か~。さすが情報科、いろいろあるね。」

 

コポコポ・・「ここは憩いの場でもあり、昼休みや放課後は必ず何人か溜まってお茶してます。」

「茶葉や菓子はめいめいで持ち込んでくるので、切らすことはまずないわ。」「とはいえヘンな

嗜好の人もいるわけで、怪しげなドリンクや食べ物もよくあるの。ほとんど毒見かロシアン・

ルーレット状態になることもしょっちゅうよ。」「へえ~。」ガチャ。「ごきげんよう。」

『蓉子さま、ごきげんよう。』「あら、技術科の方もいたのね。」「失礼してます。」

「祐巳ちゃん、また新しいの開発したんだけど。」コトコトン。「ミルクと・・日本茶?」

「ミルクティーがあって、ミルクお茶が無いのはおかしいでしょ?」こぽこぽ。『ミルク茶~?』

「はい皆さんめしあがれ。」『う・・』「いただきまーす。」『祐巳?』ぐーっ・・『・・どう?』

「悪くないですよ。ただお砂糖入れればもっといいかも。」『・・では。』ぐーっ。・・ブーッ!

『ゲホゲホゲホ!』「合わない!」「緑茶はムリっすよ~。」「お姉さま、これはちょっと・・」

「あ、そうか・・おいしければ商品とかになってるわよね。」「そこに先に気づいてください。」

 

コトン。「私はつねづね不満に思ってたことがあるの。・・黒薔薇会が妙に聖域化されて、

一般生徒が特に用事があったり、呼ばれたとき以外は基本的に立ち入らないってことに。」

「たしかにそうですわね。現に技術科のお二方も、居心地悪そうですし。」ぎくっ!

「ねえ、正直なところを聞かせて。」「・・たしかに黒薔薇会に対する畏怖はあります。

一階を間借りしている私たちも、呼ばれたり用が無ければ二階に上がりたがらないですし。」

「こうやってお茶に招かれることもありますが、正直なところ居辛いとこはありますね。」

「武闘科が主体になるのはまあ必然だと思いますが、一般生徒や他の科からは、やはり

支配組織としての色眼鏡で見られているのは無理からぬことかと。」「よね。・・そういった

認識は伝統的に確立したものだけど、もっと開かれたイメージにしたいのが私の願いなの。」

 

「蓉子さま、それは最近少し改善されてきたと思いますわ。」「瞳子ちゃん、どういうこと?」

「あ・・たしかに、近寄りがたい黒薔薇会のイメージが最近少し和らいだと一般生徒の間で

ここのところ囁かれてます。」「高潔な美貌と知性というのが基本イメージだったけど、

いずれも当てはまらない異端のキャラが出現したことが契機ですね。」「蔦子さん、それは?」

「この人。」ぽん。「?・・ええーっ!」『祐巳さん?』「特に美人とか背が高いとか無い

ごくごく普通のルックス。成績も中の中、よくヘマする。セレブな趣味や言動はいっさい無く、

好きな歌はアニソンと演歌。あくまで典型的な庶民キャラです。」「誉めてないよね?」

「ここのところ、一般生徒が黒薔薇会に接触しようとするとき、まず祐巳に相談するケースが

圧倒的に多いようですの。」「あ・・たしかに議題が上がるのは、祐巳ちゃんか祥子からが

多くなったわね。」「わたくしの分も、ほとんどが祐巳からですの。」「それはアレね、

祐巳さんは黒薔薇会で一番話しやすいキャラだから。」「でもそれなら乃梨子ちゃんのほうが」

「一号生じゃ上級生に顔が利かないし、乃梨子さまの成績は学年筆頭、いわば一号生の元締め

みたいなもので、祐巳さまほど話しやすくないですわ。」「へえ~、乃梨子ちゃん秀才なんだ。」

「それ以上に人望あるのが祐巳ちゃん、か・・まったく不思議な子よね、祥子。」「おそらくは

飾りの無い素直な言動、そして思い込んだらとことん突き進むまっすぐな性分が、わたくしたち

代行者にはまぶしいくらい素敵なのでしょう。」「あ、ははは。・・誉められてるのかな?」

 

***************************************

 

黒薔薇会日誌-子羊たちの装い-

 

「祐巳でーす。」「桂でーす。」『二人そろって!』すぱぱーん!「前回のコピペで始めるなー!」

「はい、今回はガブ女こと聖ガブリエル女学園の制服と短剣についてお話します。」

「ただの地味~な制服かと思えば大間違い。007も真っ青なギミック満載の特殊スーツなんです。」

「短剣もガブ女生の必須アイテム。この一本に秘められたドラマがいま明かされる!」

「いえ、それほど深い背景無いんですけど・・(^^;;」

 

「まずは制服。モデルは祥子さま、どうぞ。」「うふふ・・やはりこういう役割はわたくしね♪」

「全体のフォルムと配色はモトネタまんまですが、まず素材に注目。蔦子さん、どぞ。」

「9mmマシンガン!」「・・え?」グラタタタタ!「きゃああっ!」チュンチュンチュン!

ゴォォォ・・「・・いきなり何するんですの!」「祥子さま、おケガは?」「してたら殺すわよ。」

「ご覧のとおり、9mmパラ程度では痛くもかゆくもなし。」「そのヒミツは法皇庁聖遺物管理課

『マタイ』の開発した特殊繊維『サント・シンドーネ(聖骸布)』にあります。この繊維は絹の

しなやかさがありながら衝撃吸収性に優れ、たとえ454カスール弾をゼロ距離でぶちこまれようが、

バトルアックスでぶん殴られようが、アザひとつ付きません。」「そういう問題ではないですわ!」

 

「次のモデルは由乃さん、どーぞ。」「はいはーい。」ひょい。「スカーフタイですが、こちらは

アモルファス繊維で造られていて、その引張り強度は本四架橋の高張力ケーブルに匹敵します。」

「ゆえに非常時には万能ロープとして使え、人ひとりぶら下がってもだいじょうぶ。同時に

ギャロット(絞殺具)としても転用できるの。ではお手本を。」「いくわよ祐巳さん。」シュルッ。

「え?」ヒュッ、ギシイッ!「ぐげげげ!」ぱんぱん!「タップね。」ぱっ、シュルッ。

「ゲホゲホ!・・由乃さん、そのスカーフおかしい!なんか堅いもの入ってる!」「あ、これ?」

ばさっ。『・・銀貨?』「ここで咽仏を潰すとすぐにあの世行きよ。」「それイスラム系アサシンの

手法じゃないですか。」「そのとおり。良いものに宗派は関係ないわ。」「良いものって・・」

 

「なお制服にはあちこちに隠しポケットがあり、毒薬・剃刀・暗器などを忍ばせることができます。

祐巳さん、たとえばどんなの入ってるの?」「えーと、キャンディーにガムにチロルチョコに・・

あ、賞味期限切れてる。」「あんたお菓子ばっかやないの!」「ちなみに技術科生はさまざまな

ミニ工具セットやポケコンを入れてます。」「いちばんすごいのは志摩子さんかな。志摩子さん!」

「・・なに?」すっ。「スカートめくりー!」ばさっ!「あ。」『おおっ!』「見てのとおり、

スカートの裏に戦闘扇がびっしり。」「祐巳さんたら・・」「まるでオージェですね・・え?」

タラ~ッ。ゴゴゴゴ・・「・・祐巳さま、志摩子さんになんてことを!それは私がやりたかった

ことじゃないですか!」『・・はい?』・・はっ!「あ、いえその・・煩悩退散!喝!」

じゃらじゃら!「ちなみに乃梨子ちゃんの数珠もスカート裏の隠しポケットに入ってます。」

 

「靴も特別品。ぱっと見は普通の通学靴だけど、内張りはチタン合金。戦車に踏まれても

つぶれず、また蹴りの威力を倍加させます。」「ここに試し割り用の杉板ならぬ鋼板を用意。」

コンコン。「厚さ5cm、拳銃弾じゃ貫通できません。・・祐巳さん、ホントにこれでいいの?」

「いいよ。桂さん、中段に持ってて。」「お手柔らかに・・」ザッ。「・・はっ!」ザン!

バコオッ!『おおっ!』「どうかな?」「うわ~・・ホントに蹴り抜いちゃった。」

 

「では次はガブ女標準装備の短剣について。」「短剣は代行者の象徴なので、制服の一部として

常時携行が義務づけられています。」「とはいえ、短剣のデザインは特に決められていませんので、

各自好みのデザインのものを所有してます。」「ではここで本日のメーンエベント!黒薔薇会

全メンバーによる短剣コレクション、略して『バラコレ』を開催しまーす!」ぱちぱちぱち!

 

「まずは蓉子さま。豪華な装飾ですねー。」「まるで宝飾品、使うのがもったいないですね。」

「これはアクセサリーみたいなもので、実用性はほとんどないの。せいぜい紙切りくらいね。」

「このように装飾品と割りきり、別の得物を使う人は多いです。」「異能の相性もあるしね。」

 

「次は江利子さま。バリソング型ですか。」「変わったのが好みなの。」カチャカチャッ。

「こうやって回して遊べるし。」「象牙柄の彫刻がすばらしいですね。シブさ満点です。」

 

「聖さまのは袖の中ですか?」「スカートの隙間や下から抜くのってめんどくさくて。これなら

手を振りゃすぐに出せるし。」すっ、シャン!「また細い短剣ですねー。」「いわゆるスティレット

(錐刀)だね。切るよか突くほうがメイン。」ヒュッ、ズドッ!「うわ・・木に柄まで刺さった。」

 

「令さまのは、まんま合口ですね。」「なんか仇討でもしそう。」「短刀はできるだけシンプルな

方が使いやすいのさ。いくさ場で最後に己を託すものだから。」「さすが実戦派の剣士です。」

 

「祥子さまも装飾用ですね。」「基本的に使わないので。その代わり意匠には凝ったわ。」

キラキラ・・「握りのこれって・・まさか?」「15カラットのサファイアよ。」『うわ~。』

 

「静さまは・・双飛剣が二本?」「私にとって接近戦武器ってこれしかないから、こと短剣には

こだわってるの。」「なるほど、十手のように攻防一体。なおかつテグス付きで、投げては

引き戻す技も使えますね。」「こうね。」ヒュドドドッ!「うわ・・」「まるでマシンガン・・」

「加えて糸を介して音撃も可能よ。」「轟鬼さん?」「琵琶や三味線も欲しかったかも・・」

 

「由乃さんのは・・ドス?」「合口よ。令ちゃんからもらったの。」「いえあの、それドス以外の

何物でもないんですけど・・」「はい、こう持ってこう構えて・・腰を落として身体ごと突く!」

「往生せいや!」ドンッ!「ほら、スジがいい。」「由乃さん、そういうのハマりすぎ・・」

 

「祐巳さんのは?」「腕にあるよ。」ぐっ、シャキン!「制服の袖を破って飛び出た?!」

「腕に付けてる特殊シースに入ってるの。ちなみに袖は改造して、切れ目を入れてるんだ。」

「ダガーというよりも、セスタスかカタールに近いわね。」「これは自前の主力武器なの。

形状は自分でデザインして刀工に造ってもらったんです。」「じゃあ正規の短剣も持ってるの?」

「これです。」『・・あれ?』「これ、祥子さまのと同じ・・」「当然です。お姉さまから

スールの契りで授受されたものですから。」「継承用の短剣は、儀礼的なものが多いのね。」

 

「志摩子さんのも装飾系?」「いいえ・・ここに。」すっ、シュン。「袖口から・・小柄?」

「お姉さまにいただいたものです・・ほとんど使いませんけど。」「扇があるからね。」

 

「乃梨子ちゃんのは・・こりゃまた変わった・・」「独鈷杵をモチーフにしたものです。さらに

握りを回すと・・」くりっ。シャキィィーン!『おおっ!』「六方輪鈷杵に変型します。これは

志摩子さんの実家の摩倶荼羅教寺院に所蔵されてた戦闘法具をスールの契りに授かったものです。」

 

「可南子ちゃんのはどんなの?」「・・バヨネットが短剣代わりです。」「そっか・・お姉さま。」

「なに?祐巳。」ひそひそ・・「・・祐巳がそれでいいなら。」「では決まりですね。」

ごそごそ・・「?・・」「可南子ちゃん。」「は、はい。」「これを受け取って。」すっ。

「こ、これは?!・・短剣?」「どうかな?私のじゃダメかな。」「と、とんでもありません。

でも・・これをいただくということは・・」「そう、私とスールの契りを結ぶことになるの。」

「う・・」じりじり・・「祐巳・・さま・・」ぴたっ。・・「・・はいそこまでよ、祐巳。」

「お姉さま?」「可南子ちゃんはまだ心の準備ができてないわ。だから躊躇と葛藤がまだある。

もうしばらく時間を置いて、自ら受け取れるようになったら改めて。」「それって私のときの

ケーススタディですね。」「そういうこと。可南子ちゃん、それでよろしいわね。」「・・はい。」

 

「最後は瞳子ちゃんだけど・・」「情報科生の短剣はちょっと変わってましてよ。」さっ。

『USBメモリー付き?』「容量10テラバイト。むろん市販品でなく手造りの一点ものですの。」

「私たち技術科では十徳ナイフが主流です。」「ビクトリノックス社に特注した技術屋仕様

『テクノボイジャー』タイプ。これ一つでたいがいのことは間に合うわ。」「重いけどね。」

 

「・・・・」「可南子さん、どうするおつもりですの?」「・・瞳子。」「あなたが前から

祐巳さまをお慕いしてることはわかってますわ。」「・・そういう瞳子も。」「わたくしは

情報科生、武闘科のスールにはなれませんわ。」「・・そんなルールは無いわ。スールは

縁で結ばれるもの、科は関係無い。」「・・ひょっとして、わたくしを気遣って躊躇を?」

どきっ!「そ、そんなことない。・・なんで瞳子に遠慮しなきゃ。」「・・そ、そうですわね。

あなたに情けをかけられる筋合いなど・・」『・・あ、あの!』はっ。『い、いえ・・』

 

「・・たく~、似た者同士、ぶきっちょなとこまでいっしょとはね。」「なるほど、あの二人は

そういう関係なんだ。」「素直じゃないんですよね~。祐巳さまもさっさと引導をわたしたほうが

あの二人のためかと思われますが。」「そうかもね。でも今の微妙な関係をもうちょっと何とか

できれば、可南子ちゃんから動くよ。」「なるほど。・・友として少しケツ押してやるか。」

つかつか、ばん!『あいた!・・乃梨子さん?』「ほらほら、もんじゃ屋さんに行くよ。」

「・・え?」「でも・・」「あ、私もごいっしょしていいかな?」『ゆ、祐巳さま?!』

「どうぞどうぞ。上級生がいると払いの心配しなくていいんで。」「あ、たかるつもりだな~。」

「後輩におごるのは先輩の特権ですよ。」「あはは、痛いとこ突くな~。そう言われちゃおごるしか

ないじゃない。」「心理戦も大事です。」「今回は乃梨子ちゃんの作戦勝ちということで。」

わいわい!「・・乃梨子さん、すごい。」「祐巳さまとガチンコで話せるなんて・・さすが。」

『おーい!早く来ないと分け前やんねえぞー!』「あ、はい!」「行きます、行きますわ!」




黒薔薇会日誌-小さき仲間たち-

技術科・開発室。カチャカチャ・・「・・できた、できたわ!」ぱっ。パタパタパタ・・
「こっちも!」シュルルル・・「これも!」タタタタ・・「動く、動くわ!みんな生きてる!」

一号生教室。「たのもー。」「どーれ。・・『メガニック』蔦子さま、ごきげんよう。なにか?」
「瞳子ちゃんいる?」「あ、はい。瞳子!」タタタタ・・「乃梨子さん、なに?・・蔦子さま?」
「ちょっとつきあってくれない?プレゼントがあるんだけど。」「プレゼント?・・何を?」
「見てからのお楽しみとゆーことで。どう?」「うーん・・乃梨子さん、ごいっしょに。」
「私はいいけど、蔦子さま?」「取って喰おうってわけじゃなし、別にいいわよ。」「では。」

裏庭。「ここならいいわね。」ごそごそ、コトコトン。「・・ロザリオ?こんなにいっぱい?」
「いろんなデザインのがありますわね。」「あとは、これ。」さっ。「このロザリオが操作と
モニターシステムになってるの。」『??』「起動。」ピピピッ♪・・カシャカシャッ。
「ええっ!・・ロザリオが変型?!」「トリ型とイヌ型・・ヘビ型も?」「いきなさい。」
パタパタパタ。タタタタ。シュルルル。「おー、動いてるうごいてる。」「これはいったい?」
「偵察メカ『ロザリオアニマル』。このモニターを見てみて。」『どれどれ。・・へ~。』
「これアレの視界なの?」「そのとおり。マルチ画面で見れて、録画もできるのよ。」
「なるほど・・飛行型と地上型、狭いところを抜ける潜入型。情報収集にもってこいですわ。
これをわたくしに?」「情報科は戦わないから、こういうアイテムでも無いと目立たないでしょ。」
「ぐ・・痛いところを。」「瞳子、もらっときなよ。AIBOなんかより役に立ちそうだし。」
「ではお言葉にあまえて。」「他にもいろんなタイプを開発中よ。できたら渡すから。」

黒薔薇の館。「というわけで、瞳子に使い魔ができました。」『へえ~。』「このロザリオが
小型ロボットになるの?蔦子さんらしいわ。」「ね、ちょっとやってみて。」「いいですわ。
ピーコ・ハチコー・ニョロ。」ピピッ♪カシャカシャ。ぱたぱたぱた。タタタタ。ニョロニョロ。
『♪カワイー!』「いーないーな!瞳子ちゃんだけいーな。」「ペットじゃありませんわよ。」
「にしては可愛い名前つけたもんだね♪」「ま・・まあ分身ですから親近感が大事かと。」
♪ポンポンポンポーン。『情報科「ソロモンの目」瞳子さん、学園長室まで来てください。』

学園長室。「諜報任務をお願いしたいのです。」「ターゲットは?」「新興宗教『納豆の光』。」
「ああ、納豆を神の化身とみなすあの変な教団。」「不穏な動きが見られますが、秘匿性が強く、
確証を得るに至ってません。そこで。」「了解いたしました。潜入探索にまいりますわ。」

視聴覚室。「・・ちっ、いまどきネットも使ってないとは。やはりじかに忍び込むしかないわ。
本部の所在は・・赤坂砂漠内?また面倒なところに~。」赤坂砂漠・・デビルガンダム災害後、
赤坂界隈は砂漠化した。恐ろしいのは地下道やマンホールが流砂になっており、そこに落ちて
数十人が死亡および行方不明になっている。「判明している流砂ポイントは・・これだけ?
まあ無いよりましか。・・待てよ、信者はどうやって行き来してるんだろ?・・」♪キラリ。

旧千代田線・国会議事堂前駅。ススススッ。(やはり千代田線が抜け道になってましたわね。
このまま赤坂へ・・?!)ぴたっ。ドザザザーッ!「!」ザザザザーッ・・(ふう・・間欠流砂か。
巻き込まれたら即死ですわ。)ススススッ・・(赤坂駅・・?!)ひくっ。(納豆の匂い・・)
ささっ。・・カツカツ。(信者か・・ご案内ねがいましょう。ハチコー。)ぽい、カシャカシャッ。
タタタタ・・(登って・・廃ホテルか。セキュリティロック?暗証番号。)【♪ピッピッピッ】
(3,7,9・・よし。)ササササッ。タタッ。♪ピッピッピッ。シューッ・・(ビンコ。)

ホテル内。スススッ・・(どこにいるんでしょ?三匹とも散って探して。)パタパタパタ。
タタタタ。シュルルル・・(・・あった!十三階・・警備員がいるのね。)ススススッ。
ぴたっ。(ここ納豆くさ~。倒すのは避けて・・エアダクトか。ニョロ。)シュルルル・・
(そこ右・・左・・そこ。)【・・ついに手に入ったか。これさえあれば、我が教はどこよりも
強大になれる。】(あれはDG細胞!・・あの女性は?)【二千万円、たしかに。お買い上げ
ありがとうございました。・・ん?】ジャキジャキッ。【このまま戻れるとでも思ったか?
その浄財は返してもらおうか。】【先に言いました、クライアントの背信行為は許さないと。】
【許さなければどうする?】【きまってます。・・皆殺し。】ジャバババッ!ドスドスドスッ!
【があっ!・・ば、バカな、全身から刃が!】【二次元武装服。刺繍に見えたのは極薄武装よ。】
くいっ、ズバシャアッ!どさどさっ!【だいたい気に入らなかったのよ、納豆くさいし・・】
ちらっ。(はっ!・・逃げて!)シャッ!ガスッ!【誰?見られた以上、逃がさないわ!】

シャシャシャ・・「・・来た!」・・ゴオオオオーッ!「そこか!」「・・ピーコ!」ダン!
ガシャーン!「十三階から飛び降りた?!」ザザーッ!「・・なるほど。」バサササーッ・・
「まあその逃げ足に免じて、見逃してあげるわ。・・どのみち証拠は残らないから。」ピッ♪
ドドオオオオーン!「なに?!・・ホテルが!」ガラガラガラ!・・「なんてやつ・・」

次の日、視聴覚室。【だいたい気に入らなかったのよ・・】「彼女がDG細胞ブローカーですか。」
「外見だけでは二十歳そこそこ。WWWデータベースに該当する人物はいませんでしたわ。」
「でしょうね。簡単にわかるようなら、見逃してくれるわけもないですから。」「なるほど。」
「見たこともない武器、追撃も何かの内蔵推進器・・やはりデビル軍団の一員ですね。」
「教団は彼女によって完全に破壊されましたから、糸は完全に切れましたわ。」「ならまた
糸口を捜せばいい・・でしょ?」「はい。全力を尽くします。」「大義でした。」「AMEN。」
「洗濯とお風呂を急ぎなさい。」「はい?」「とっても臭いますよ・・納豆。」「ありゃ~。」

一号生教室。「あれ、可南子、瞳子は?」「・・後ろ。」「え?・・ありゃ。」「す~・・」
「えらくお疲れのようで。」「授業中は私に隠れて、先生には気づかれなかったけど。」
「まあ任務を果たしたらしいから。内容まで知らないけど。」「必要なら教えるでしょう。」
「おっ、そーだ。例のポケットペット、今のうちに借りちゃお♪」「乃梨子さん、それは・・」
ごそごそ・・ガジッ!「い"!・・あだだだっ!」はっ。「乃梨子さん、なにしてるんですの?」
「瞳子、これ、とって~!」ぶんぶん!「なにやってんだか。チョキ、もういいわよ。」ぱっ。
「あいた~。いつの間にカニ型まで。」「蔦子さまが出来次第、持ってきてくれますのよ♪」

大戦艦ヴァルハラ。「幽音、ガブ女つぶしていい?」「ダメだよエリーちゃん。あれは世界の
バランスに必要な組織だから。」「へえ~、そこまで大事なんだ。」「宗教は悪く使うと
歯止めが効かないほど暴走するからね。そういうのを事前につぶしてもらうのが役割。」
「それでDG細胞ばらまいて加速してるわけか。」「真面目な組織なら興味すら示さないけど、
予想外に食いついてくるね~。」「それだけいいかげんな教団が多いのよ。造りやすいし、
金集めやすいし。」「宗教は民衆の麻薬というけど、ある意味当たってなくもないよね。」
「うまく薄めて薬にしてるのが、カソリックと仏教ね。イスラムは調合むずかしいらしいけど。」
「いい例えだね。誤った処方箋は毒薬に・・いえ、大量殺戮兵器に等しい。そうさせないため、
解毒剤がいるの。」「よくわかったわ。・・でも、レベルアップの為の試練ならオッケイよね?」
「・・まあいいでしょ。でもやりすぎたらイエローカードだよ。」「なら一回まではいいのね。」

*****************************************

黒薔薇会日誌-ただこの一刀のみ-

大戦艦ヴァルハラ。「・・というわけなんだけど。」「『オルレアンの剣』令ですか。たしかに
興味ありますね。」「閃光とも異名をとる支倉流神聖抜刀術・・如月流霊剣術、勝てる?」
「純粋な剣技だけなら互角かもしれません。が、私にはそれを上回る『華燐』がいます。」
【そのとおりです。】スゥ・・「出たわね、黄金刀が守護霊。」【エルフィールさん、刹那を
挑発してけしかけるつもりですね。】「なんだ、バレてたか。」「ミエミエですよ。でも、
その話には興味ありますね。」「おっ?・・じゃ。」「いいでしょう。・・私も見てみたい、
失われた支倉流神聖抜刀術を。」【支倉常長が慶長遣欧使節団時に持ち帰ったカソリック法術と
日本古来の抜刀術を組み合わせた破魔の剣法ですね。】「けどキリシタン弾圧によりそれは
異端の邪剣とされ、剣法界から抹消され、伝承は途絶えたはず・・でした。それを使うなら、
ぜひ見てみたいです。」【ウワサではローマ教皇に祝福を受けた刀が現存してるとか。】
「事実よ。その刀こそ、彼女が持つ聖刀『独眼竜』。」「なるほど・・それは楽しみです。」

ガブ女・修行時限。「・・・・」チキッ。「!」シャン!・・パチッ。ズルッ・・ドドーン!
「決まった!支倉流抜刀術、灯篭断!」すっ。「はっ・・よし。」トン。「さすが令ちゃん、
あいかわらずいい腕ね。」「このくらい基本技さ。それに刀が良いのも大きい。」チャッ。
「令ちゃんの実家に代々伝わる『独眼竜』か~。紙も切れないナマクラだけど、令ちゃんが
使うときだけ何でも切れる・・まさに霊刀ね。」「刀というよりビームソードに近いかな。
霊刃を形成し、空間や霊すらも切る。」「普通の刀みたく、手入れの必要ないのもいいね。」
「手入れは大事だよ。きれいな状態にしてないと、霊刃だって鈍るさ。」「気分の問題じゃ?
ま、わたしも『鬼平』はちゃんと手入れしてるけど。」ポンポンポン。ぱさっ、スーッ・・
「そうそう。愛刀は己が分身、心を込めて手入れしてやれば、けっして裏切らない・・?!」
ばっ!「令ちゃん?・・はっ?!」びくっ!「この気は・・」「・・こんな強大な霊気は、
志摩子さんでも。」「・・来た。」すっ・・ツカツカ。「・・他校生?」「あの制服は・・
まさか、鞍馬学館!」ぎょっ!「あ、あの関西最強の!」『そのとおりです。』カツッ。
ゴゴゴゴ・・「鞍馬学館一年、如月刹那。『オルレアンの剣』令、一手所望します。」
「ちょっとあんた!他校にずかずか入り込んで」「待て由乃!・・如月刹那・・だと?」
「知ってる?」「ああ。・・昨年度の関西ブロック予選に彗星のごとく登場し、上級生を
いとも簡単に打ち負かし、決勝までいった・・だが。」「・・なに?」「決勝戦の直前に、
控室が何者かに爆破された。・・そして、バラバラになった遺体だけが残った。」「えっ?!」
「そこから続きがあります。遺体はニセモノ、私は過去を消し、新たな名を得た。」すっ、
ボオッ。『なっ!』「シャッフルの紋章?!」「あれはクィーン・ザ・スペード!・・でも?」
「そう、チボデー・クロケットのとは異なります。私は闇クィーン・ザ・スペード、ハニー。」
「・・闇シャッフル!」チキッ。「デビル軍団大幹部!」チャッ。「これが挑戦の理由です。」
「・・よくわかった。ならば受けましょう。」「・・その前に!」ダッ!「由乃?!」
「わたしを倒してからよ!鬼平!」チキッ、ズラアアアアーッ!「準備運動にいいですか。」
「でやああああーっ!」ビュオッ!ガキイイイーン!「?!・・これを止めるなんて!」
「パワーは一級品ですが、それだけでは切れません。」シャン!シュピィッ!「くっ!」
ザザーッ!「?・・この手応えは。」パラッ・・「なるほど、サイボーグでしたか。」
バヂバヂ!「由乃!」「だいじょうぶ・・自己修理機能は動いてる。」「そうと知ってれば
切り様はありましたが。」「・・あとは任せろ。」スッ。「令ちゃん・・あいつ、強いよ。」

ザッ。「如月流霊剣術・・真剣による立会いを是とし、日本剣法界で異端とされた流派。」
「そのとおりです。私は流派を隠して剣道界に入り、真剣で培った技で勝ち抜いた。だが
あるお方が現れたことで、宿命に覚醒した。」「・・宿命とは。」「世界の天秤を揺らすこと。
戦争の放棄は退廃と腐敗を生み、それが蓄積すると世界大戦につながる。そうさせないため
小規模な戦乱を起こし、傾き過ぎた天秤を揺り戻す。」「な・・あんた何様のつもりよ!」
「私たちは人類に必要な悪。そして片方の天秤にあなたたちがいる。」「・・なるほど。
互いに相容れぬ存在、というわけか。」「その認識で正しいです。・・いざ。」すっ・・

ヒュゥゥ・・「それが『独眼竜』ですか。」「そちらも名のある刀らしいな。」「はい。」
チキッ、スゥッ・・キラッ。「黄金?・・まさか!」「そう、『黄金刀』ニコラ・テスラ。」
「・・あの伝説の魔剣!」「大魔剣ソウルエッジより上位にあるといわれる!」「華燐。」
ボオッ・・「なっ!・・幽霊?!」【失礼ですね、守護霊と言ってくれませんと。】
「聞いたことがある、黄金刀に宿る精霊のことを。」【そう、私は黄金刀の魂。私を使える
剣士を選び、護るがさだめです。】「刹那はその資格があるほどの腕ということか。」
「華燐、まずは見ていて。」【心得てます。・・私が必要なだけの技量を期待しますね。】
スゥゥ~。「ちょっ!こっち来るなって、幽霊コワいから!」【別に憑りついたりしませんよ。】
「でも・・あれ?」【なにか?】じーっ・・「・・足、あるね。」【飾りみたいなものですが。】
「足あるんならいいや、安心した。」【??・・ああ、日本の幽霊は足ありませんでしたね。】
「そこの二人、友好を温めるのはけっこうだけど、審判をしてくれないか。」「あ、はーい。」

ザッ。「支倉流神聖抜刀術、令。」「如月流霊剣術、ハニー。」【両者、礼。】すっ・・
「・・始め!」スッ、ぴたっ。「?・・これは。」【あら、刹那が打ち込めないなんて。】
「令ちゃんの『不動の構え』は鉄壁。ヘタに打ち込むと、その瞬間に致命打をくらう・・
それを構えだけで見抜くか、やるわ。」ジリ・・【ゆっくり間合いを詰め、気取られず射程内に
踏み込めば、構えは崩せます。】「それを許す令ちゃんじゃないよ・・引き込んでる。」
(くっ・・読まれてる。)「・・。」すっ。【えっ?・・構えを解いた?】「・・」キラッ♪
(誘い?・・けど本当にスキだらけ。)「・・・・」【刹那が・・迷ってる?いけない!】
キラッ。「はっ?!」グッ!ぴたり。「?!」【やられた!】「決まった・・令ちゃんの
得意技『虚の太刀』。」「しまった・・一瞬の迷いを。」「迷い、疑念、躊躇、葛藤。いずれも
心に虚を生む。それを逃さず打ち込めば、今のように抜刀する間すら与えず一本とれる。」
「これが・・神聖抜刀術。」すっ。「これで手の内は見せた。次いこうか。」「そうですね。」
「?・・はっ!」ピリッ、パラパラ・・「令ちゃんのタイが?!」【さすが刹那です。】
「・・いつの間に。」「そちらが打ち込んだのと同時です・・本当に同時なのは驚きましたが。」
「抜く間は無かったはず・・まさか?!」【全部抜く必要はありません。柄に手が掛かれば、
抜刀したも同然です。】「・・そうか、刃を放つに刀は媒体に過ぎない、というわけか。」
「これが霊剣術・・」「むろん実刀を伴わないので、手の内程度の威力ですが。」ふっ。

「では、本番といくか。」「あ、その前に。・・華燐。」【お座敷ですか?】スゥゥ・・
「本番となれば全力でいくが礼儀です。」「・・むろんのこと。」【精霊融合。】ズズズ・・
「?!・・幽霊が入っていく?」「・・黄金刀の精霊と一体化することで、その潜在力を
完全に発揮できるということか。」「・・そのとおりです。」・・ギン!『うっ!・・』
ゴオオオオ!「これが・・黄金刀の剣士!」「この気・・人間のものじゃない!」チキッ、
シャィーン!バオオオオッ!「抜刀しただけでこれか!・・」「参ります。」ドン!
「・・。」チキッ、すっ・・「令ちゃん?・・あの構えは!」「烈光斬!」シュパッ!
キュゴオオッ!「光の気刃!」「・・!」シャバアッ!キラキラ・・「切り払われた?!」
カッ!「流星燕返し!」キラキラ。「星?・・はっ?!」シュババババッ!「くうっ!」
くるっ、ザザーッ!・・「・・見えない連斬とは。」ツゥ・・「遠当てなら私もある。」
ついっ、ぺろっ。「・・いいですね。久々に燃える相手にめぐりあえました。」ぷっ!
「ならばこちらも全力で応えましょう。」ユラッ・・ボオッ!ズドオッ!「なっ!」
「一瞬に間合いを詰めての胴突き!」「殲滅閃。・・?」「・・あぶなかったよ。」
「・・腋の下?!」「本能で見切れた・・!」はっ!ババッ!シュピィィーン!「くっ!」
ザザーッ!「ブレザーだけか。よく思いきって下がった。」ピラッ。「・・やる。」
「令ちゃんが互角だ!」「いや・・彼女はまだフルパワーを出しきっていない。」「えっ?」
「ここまでやるとは想定外でした。見くびったこと、まずはお詫びします。」すっ。
「・・で、本気になったか。」「はい。・・これより全力であなたを戮し、報います。」
チャリッ。ズズズズ・・「・・なんて闘気。」「次で決まるか・・それもいいだろう。」
「如月流剣術奥義!」シャッ!「むっ。」すいっ、チキッ。ぐっ。「支倉流抜刀術奥義!」

『両者、そこまでですわ。』はっ?!ゴオッ!・・ザシャッ!パシパシッ!「なっ?!」
「アキハ先生?」「これ以上は死合になります、それは本意ではないでしょ?今はまだ。」
「・・はい。」「令も構えをお解きなさい。」「はっ。」・・チン。トン。「それでよし。
紋章がうずくと思えば、闇でしたとはね。」ギン。「・・初代クィ-ン・ザ・スペード。」
「今日のところはお引きなさい。校内で騒がれては、教師のわたくしも傍観できませんから。」
「・・わかりました。当初の目的は達しましたので、これで。」くるっ、つかつか・・
「いつか、また。」ぴた。「・・強くなっててください、そのときまでに。」ヒュン・・

「ふむ、今の闇クィーンはまあまあですわね。」「先生、なぜ闇シャッフルなどという存在が?」
「表も闇も、もともと一つのものだったの。原初のシャッフルはバベルの女帝が創設したけど、
ある人物がその危険性を指摘したの。」「危険性?」「最強の存在がもし覇権を目指したら?」
『あ・・』「そう、誰も止められないわ。だから独走できないよう、対抗勢力を必要としたの。
そしてその人物は闇シャッフルを生み出した・・破壊と混乱を招く悪の集団、として。」
「光と闇のシャッフル・・」ふっ。「光というのは正しくないですわ。わたくし達だって
見方を変えれば、闘争と殺戮に酔う魔戦鬼ですから。」「そんな・・」「正義と悪なんて、
立場のわずかな違いに過ぎませんわ。大事なのは、自分が何をしているか認識すること。
一番悪いのは、ろくに考えもせず状況に流されること。それをザコといいますわ。」
「某ガンダム乗りみたいなのですね。」「由乃も似たような性格だから気をつけないと。」
「やめてよ令ちゃん。あそこまでバカじゃないわ。」「猪突猛進なとこはいっしょですわ。」

「・・あんな存在がいるなら、もっと腕を磨かないと。」「その気があるなら、いい先生を
紹介しますけど。」「います?」「琥珀!」「はいはーい。」ぬっ。『・・うわっ!』
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン。剣の腕を上げたいなら、お手伝いできますよー。」
「ちょっと腕のほうを見せてあげれば?」「いいですよー。では。」すっ・・「伯耆安綱!」
シュピィッ!・・パチン。『え?・・』ピキ・・バラバラッ、ガラガラーン!「大木が!」
「製材されたように板状に?!」「あっはー♪黒薔薇の館の補修にも使えますよー。」
「さて、どうかしら?」「ご教授お願いします!」「私も!」「修行はきびしいですよー。」

大戦艦ヴァルハラ。「で、どうだった?」「予想以上に面白かったですね。まだ粗いですが、
磨けばさらに光ります。」「あら。・・マジメなハニーを送ったのは逆効果だったかな~。」
『なるほど、そういうことか。」ぬっ。「キング?」ズラッ。「おや、御一同さまも。」
「ハニーに何か吹き込んでると思えば。」「できれば皆殺しにしてほしかったけどね。」
「そら無理やろ。あの学校には真祖もおるし。」『考えようでは、真祖たちを迎えたのは
その意義もあったのかもな。』「やるな、学園長。さすが伝説の代行者。」ぱしっ。
「仇敵をも利用するなんて、すごいね。」「うむ。そして真祖たちの技をも取り込むことで、
機関はますます強化される。・・エルフィールの危惧もわからんでもないな。」「でしょ。
だから芽のうちに潰しておいたほうが。」『勘違いしてるな~。」♪チリーン。「幽音。」
「敵は強いほど面白いんだよ。弱っちいのいたぶるのも確かに楽しいけど、強敵との激突が
いくさの華というもの。」「幽音も傾き者だな。」「というより、世界を盤面にして遊ぶ
ゲーマーじゃない?」「そう、だからゲームのルールは遵守しなきゃ。エリーちゃんは
隠しコマンドや無敵モードを愛用してるけど。」「PAR使うんかや。軟弱ゲーマーやな~。」
「結果を重視するのが理系の性よ。」「私は過程を楽しむほう。結果はどうでもいいわ。」
「わかりません・・これほど考え方が違うのに、なぜお二人とも仲がよろしいのです?」
『違うからこそ、だろう。』「互いに無いものを認めてるんだね。」「面白いな。」ぱしっ。

ガブ女。さっさっ。「あー、ダメですよそんなに力入れちゃ。ホウキは優しく使わないと、
ゴミがひっかかってくれませんよ。」「は、はい。」さっさっ。「・・けっこー疲れる。」
「・・あ、お姉さま、あれ。」「令と由乃ちゃん?・・校庭清掃奉仕とは立派ですわ。」
「これも修行でね。」「あー、サイボーグなのにコシにくる。・・掃除ってこんなにハードな
作業だったのね。」「姿勢が悪いからですよ。令さんはさすがにきれいな掃き姿ですねー。」
「剣の道に通じるものがありますから。」「いかにきれいに掃くかも大事ですよ。状況を分析し
最適の手段を実行する、これは闘いでも同じことです。」「無思慮な動きは無意味なんですね。」
さっさっ。「・・やってみようかな。」「わたくしも。朝の低血圧克服にもよさそうですわ。」
「ではこれを。」ぽいぽい、ぱしぱしっ。「皆さん、楽しく気持ちよくお掃除しましょー!」
さっさっ。『あ、祥子さまがお掃除を。』『令さまも!』『・・うん。』「あ、あのー。」
「何かしら?」「お掃除、お手伝いしたいのですが・・」・・にこっ。「よろしくてよ。」
「いっしょにやろう。」『は、はい!』「・・あっはー♪思わぬ効果もありましたねー。」

かくて黒薔薇会の朝の校内清掃奉仕はブームとなり、一般生徒も参加するほどの盛況となった。
学園長室。「ここのところ校内がキレイになりましたね。」「生徒のコミュニケーションや
モラルも向上してます。清掃奉仕、なかなかの効果かと。」「大事なのは、押しつけでなく
黒薔薇会主導で生徒たちが自主的に始めたことです。」「時間割に組み込みますか?」
「いえ、制度化してはいけません。始業時間も遅らせる必要ありません。そのままで。」

***************************************
黒薔薇会日誌-死魔子-

日曜日。サラサラサラ・・「うわ~・・日本庭園まであるんだ。」「すごいですね・・」
「・・祐巳さんと可南子ちゃんは来るのは初めてだったわね。」「うん。・・まさか大手町の
地底に志摩子さんの実家があるなんて。」「ウワサには聞いてましたが、これほどとは・・」
「この勝宮寺は地下200m。だからデビルガンダム災害でも無事だったんです。」「乃梨子ちゃんは
摩倶荼羅教徒だから知ってたんだね。」「そりゃ総本山ですから。江戸初期キリシタン弾圧を
発祥とする摩倶荼羅教はいまだ日本仏教界では異端で、公に寺院を持てません。そこで元禄時代に
陰ながら擁護する某大名の江戸屋敷の地下に聖堂を造ったのに始まり、時代とともに大きく深く
増設され、のちの政財界の信者の支援もあり、現在はご覧のような大地下寺院になりました。」
チュンチュン・・「鳥まで飛んでる・・」「ここが地下なんて信じられない・・だってあそこに
お日様まで出てるもの。」さんさん。「・・あれは可動太陽灯で、空はホログラムなの。」
「はいお茶どうぞ。」コトコトン。「あ、どうも。・・乃梨子さんの巫女姿は初めて見るわ。」
「制服よかこっちの方がしっくりくるかも。」「志摩子さんも印象がガラリと変わって見えるね。」
「・・私も和装が好きなの。」「それで思い出しましたが、志摩子さまは校内一の霊力を持つと
聞きおよびましたが。」『!』びくっ!「あ・・何か悪いこと言いました?」「・・いいえ。」
「乃梨子ちゃんは知ってるんだよね。」「・・はい。」「・・可南子さんだけ知らないのは
いけないわね。」「志摩子さん、無理しないほうが」「いいえ・・黒薔薇に属する者なら
知っておくべきことだから。」「お姉さま・・」「そう・・あれは一年前のこと・・」

勝宮寺。サラサラ・・「志摩子、いよいよ明日から入学だな。」「・・はい、お父様。」
「志摩子の面倒は私がみます。ご安心を、住職。」「聖どの、よろしくお願いいたします。」
「で、さっそく黒薔薇会へ入ってもらうことになるけど。」「・・人づきあいの苦手な私に、
務まるでしょうか・・」「だいじょうぶ。メンバーには事情を話してあるし、四号生も
了承してくれてる。日本カソリックの影の功労者である摩倶荼羅教主の姫なら大歓迎だよ。」
「・・いえ、問題なのは私自身で・・」「ちゃんと私がサポートしてあげるから。」

黒薔薇の館。「ようこそ志摩子さん。黒薔薇会一同、摩倶荼羅教の継承者を迎えることを
光栄に思います。」「・・お世話になります。世間知らずですので、皆さんのご迷惑に
なるかもしれませんが・・」「今どき御墨付きの箱入り娘なんてほとんど無形文化財なので、
物珍しいというのもホンネだけどね。」「で、聖の妹にしたのね。」「はいな。短剣の授受は
もう済ましてます。志摩子。」「はい・・」すっ、キラリ。『おお~。』「これでよし。
令は由乃ちゃんが確定だから、残るは祥子ね。」「いえ・・まだこれといった出会いが。」
「まあ新学期始まったばかりだから、じっくり捜すといいわ。」「そういたします。」
「由乃、初仕事として、志摩子のエスコートをお願い。いろいろ見せて見聞を広めてあげて。」
「かしこまりました。」「・・よろしく。」「まあ任せておいて。とっておきあるから。」

銀座。「ネオ浅草モール。世界最大のショッピングセンターよ。」「まあ・・大きい商店街。」
「入ってるお店もちょっと他では見られないものばかりよ。」「由乃さん・・それで今日は
どちらへ?」「三丁目に我が校指定のアルケミスト・ショップがあるのよ。」「錬金術?・・」
「むろん変な薬とかじゃなくて、特殊装備品なら何でも揃うの。」「そんな便利なお店が・・」
「短剣も最近はほとんどそこ指定・・ん?!」ぴくっ!「・・なに?」「しっ。・・匂う。」
「匂い?・・これは?!」こく。「そう・・C3爆薬。昨日習ったばかりだからすぐわかる。」
「爆薬を持ってる人がいる・・すぐ近くに。」「・・あいつよ、あの東アジア人グループ。」
「・・外見からしてムスリムね。」ささっ。「身体に付けてる気配なし・・あのバッグね、
爆弾が入ってるのは。」「・・阻止しないと。」「かといってヘタするとその場で自爆よ。
さてどうするか・・よし、これでいこう。」ひそひそ。「・・ええっ?危険よそれは!」
「他にいい手があったら提案して。」「・・いえ。」「この携帯で令ちゃんに連絡して。
時間を稼ぐから。」タタタタ・・「あ。・・急がないと。令さま・・これね。」♪ピッ。
ささっ。じーっ・・シャッ、ドン!「あ、ごめんなさい。」タタタ・・『?!・・爆薬が!』
『今の女子高生だ!』『追え!』「よし、かかった!このまま隅田川まで!」タタタタ・・

築地。「・・勝鬨橋の上なら。」ぴたっ、くるっ。さっ。『あっ!』「それ以上近づくと
川へ投げ捨てるわよ!」『くっ!・・』「・・?」ちらっ。(・・来た!)『やむをえん。撃て!』
ジャキジャキッ。「!・・マシンガン!」グラタタタタ!チュンチュンチュン!「くっ!」
ゴォォォ・・『・・無事だと?!』「・・ふう、この制服に感謝。」『遠隔爆破しろ!』
「えっ?!」ばっ!「・・しまった、無線起爆!」♪ピッ。「・・この手しかない!」がばっ!
ズドオオオオーン!「あの爆発は!」「勝鬨橋の上です!」「由乃おおおおーっ!」ダダダダッ!

パラパラパラ・・『バラバラか・・むっ?』ザザッ!「由乃!・・きさまらあああああーっ!」
ダッ!『撃て!』グラタタタタ!「鎧刃!」キキキキキーン!『なんだと?!』ゴオッ!
「一陣!」シュピィィーン!・・パチン。ドサドサッ!『一瞬で三人を?!』「令さまはそのまま
由乃さんのところへ!・・残りは私が。」「頼む、志摩子!」ダダッ!「・・許しません!」
ゴオッ!『な、なんだ?!』「・・霊力解放。」カッ!ドン!『う、撃て!』グラタタタタ!
キュキュン!『弾が逸れる?!うわっ!』わしいっ!ボギャアッ!『首をひきちぎった!』
ブン!ボグシャアッ!『ひいっ、頭部が!ば、バケモノ!』ガアッ!ガブシュッ!・・ブッ!
『の・・のどが・・』ブシャアアアアーッ!ズンズン!・・にいっ。『ひいっ!』ガアッ!
「もういい志摩子!」がしっ!「もういいんだ、もう!」「・・お姉・・さま?」スゥゥゥ・・
「江利子は令と由乃ちゃんのところへ。」「ええ。」「さて・・生きててよかった、なんて
思わないことね。これから楽しい異端審問フルコースが待ってるから。」『ひええええ・・』
「お姉さま!由乃が、由乃が!」「・・制服でかばうことで爆発力を抑えたのね。由乃ちゃん
らしいわ。」「う・・」はっ!「・・まだ息がある!」「すぐそこの聖路可病院に運ぶのよ!」

聖路可病院。「無理です。いかに法皇庁の要請でも、これは・・」「けど・・けどまだ息が!」
「・・時間の問題としか。」「そんな・・」「・・時間はできるかぎり稼ぎます。」『志摩子?』
「霊力放射・・」キィィィ・・「・・これでしばらくは命をつなぎとめられます・・その間に。」
「・・一つだけ、ただ一つだけ可能性があるわ。」「お姉さま、それは?!」「ネオ浅草に。」

翌日、黒薔薇の館。『・・・・。』シーン・・「江利子、令からの連絡は?」「あれば必ず
この携帯に来ますから。」「そうね・・」「・・志摩子、説明してくれない?」「・・はい?」
「昨日のあなたの暴れっぷり、ただごとじゃなかった。そう・・まるで鬼神。あれはいったい?」
「あれは・・」「いい、私が話す。・・あれが霊力の制限を解いた志摩子の姿、『死魔子』だ。」
『死魔子・・』「摩倶荼羅教主は強大な霊力を有する。だがその霊力は弾圧された切支丹殉教者の
怨念が源であり、それはしばしば暴走し、教主を人ならざる悪鬼に変える。いかなる攻撃も
受け付けず、素手でたやすく人間など引き裂く。それが摩倶荼羅教の力であり、代償でもある。」
「それで志摩子はめったに表に出せなかったのね・・」「地下に封じた理由もそれね・・」
「いつもの志摩子からは想像もつかないわ・・」「黒薔薇会にとっては逸材ではあるけどね。」
「けど、私としてはできうるかぎり封印したままにしておきたい。」はっ。「お姉さま・・」
「聖、霊力を自己制御できるよう訓練させる手もあるんじゃ?」「それをやるのは志摩子しだい。
私は強制したくないし、させたくない。」「・・そうね、確かに大事なのは本人の自覚よね。」

♪ダーンダーンダーンダンダダーン!「ダース・ヴェーダーのテーマ?」「おっと。」♪ピッ。
「はい。・・令?それで?・・成功した?!」はっ!「ええ!ええ!・・わかった、それじゃ!」
♪ピッ。「サイボーグ手術は成功です!」『やったーっ!』ワーッ!「よかった、よかったわ!」

次の日、「Atelier de Marie」。「いやー、すごい生命力だったわ。こっちも半分ダメかなーと
思いつつやってたけど。」「マルローネさん、ありがとうございました。」「言うまでもないけど
あたしは医師免許持ってないから健康保険は申請しないでね。あと面倒だし、費用は法皇庁から
もうもらったから。」「もうですか?・・いつになく早い対応ね?」「こっちが病室よ。」
ギイッ。「お姉さまがた、志摩子さん。」『由乃ー!』「令、よかったわね。」「・・はい。」
ガヤガヤ。「これホントにサイボーグなの?」つんつん。「生身にしか見えないわ・・」
「生身は脳とあとちょっとだけで、あとは超合金なんです。皮膚はバイオ素材とかいうもの。」
「ぱっと見じゃ、以前とまったく見分けがつかないわ。」「本人はまだ違和感ありまくりだけど。」
ワイワイ。「・・・・」「志摩子さん。」「あ・・はい。」がしっ。「ありがとう。」「え?」
「志摩子さんが力を貸してくれてなかったら、ここまでもたなかったもの。」「いえ・・そんな。」
「そうよ。あなたが霊力を供給しててくれてたからこそ、手術にまで持ち込めたんだから。」
「私の霊力が・・」ぽん。「そうだ。力は使いようで悪鬼にもなれば神にもなれるのさ。」

サラサラ・・「そんなことが・・」「それから私はお姉さまの霊力鍛錬を手伝ってきました。
そして今では。」すっ。カラコロ・・さっ。「・・・・」キィィィ・・ボオッ!「桜の木?!」
「あの桜は・・学園の!」「殉教者の怨念はあの桜が受け取ってくれてます。・・お姉さまの
霊力の源として分離したことで、制御が可能になったんです。」「・・死魔子はもう出ないの?」
「いいえ。」はっ!「・・志摩子さん?」「死魔子は私自身よ。いつでも、いつまでも・・」

***********************************

黒薔薇会日誌-着メロ音楽祭-

「祐巳でーす。」「桂でーす!」『二人そろって!(以下略)』「で、今日はなにすんの?」
「作者が前回のを書いてて、ふと思ったそうです。『みんなの着メロどんなんかな~?』」
「作者、関西人ですか。」「都会人じゃないのは確かだけど。」(常連は知っている)
「で、息抜きEPで着メロ音楽祭をやろうかなと。」「イメージテーマみたいなもんね。」

「まず基本設定ですが、生徒のケータイは、これ学校の支給品なんです。」「代行者たるもの
情報の連絡とコミュニケーションは必須。むろん市販品には無い特殊機能が盛り込まれてます。」
「回線は法皇庁専用で、暗号キーは不定期更新され盗聴はまず不可能。また専用衛星通信で
全世界で使えます。」「メールとブラウザは基本ですね。さらに多元通話も可能です。」
「特殊機能として、GPS連動ナビ機能・緊急ビーコン・素子爆破装置なども付いてます。」
「むろんデジカメもあり、テレビ通話もスムーズにできます。バンドがバカでかいんで。」
「あとおまけでMPEG音楽・画像再生やTVも可能です。付属カードは20テラバイトの大容量。」
「できないのはDVD再生くらいね。」「いやいや、ひっぺがせば」「そっから先はダメー!」
「これだけ詰めて、このサイズ!」『小さっ!』「作者ご愛用の黒preminiくらいじゃない。」
「通話はソリッド型として使え、データ再生時にはこう横にして開けば・・」ぱかっ。
「ワイド液晶画面と超小型階段式キーボードが現れます。」「まさに携帯ノートパソだね。」
「余談ですがOSはTRONベースです。」「誰が毎週継ぎ当てするようなクズOS使いますかい。」

「では前説も終わったとこで、着メロ音楽祭いってみましょー!まずは一番の方どうぞ。」
「一番、『ゴルゴダの薔薇』蓉子。」「蓉子さまの着メロかー。やっぱバロックとかだろうな。」
「いいえ、マイテーマはこれよ。」♪チャッ!チャチャチャッンチャンチャ!『ケチャ?!』
「いいでしょ、このプリミティブな躍動感。」「はあ・・やっぱ蓉子さま、どっかシュミが変。」

「二番、『復活の光』江利子。」「前回はダース・ヴェーダーのテーマで驚きましたが、今回は?」
「わたくしのシュミは多岐に渡りますわよ。」♪今日~人類がはじめて~木星に着いたよ~
『たま?!』「最近イカ天にハマっちゃって。」「そーいやDVD出てましたね。」「個性的な
バンドが目白押しでいいわよね~。いまどきのはどれも同じに見えて・・」『うんうん。』
「スネアが新鮮なジッタリン・ジンもよかったよね。」「そうそう!そして忘れちゃいけない
陰鬱なベースが映える人間椅子!」『おお~っ!』「・・あのー、話ついてけないんですけど。」

「三番、『バベルの雷』聖。」「聖さまはちょっと想像つかないなー。性格のわりに高尚なセンス
持ってらっしゃるし。」「こんなカンジだけど。」♪ドンドンドンドン・・Flash!『クィーン!』
「やっぱり聖さま、センスがいい!」「普通なら『I was born to love you』か『We will Rock
You』にいくところを、あえてフラッシュ・ゴードンのテーマをセレクトするシブいセンス!」
「一般メジャーな曲より、ちょっとヒネったとこを好むだけだって。」「それが聖さまですね。」

「四番、『黒きマグダラ』祥子。」「あれ?・・そういえばお姉さまの着メロって聞いたこと
なかったな。」「一番掛けてくる人が隣りじゃ、かかってこないわよ。」「あ・・そっか。」
「で、祥子さまの着メロは?」「これよ。」♪テロンレンラロラテロンレンラロラ・・『鬼平?』
「ジプシー・キングスの『Inspiration』・・それてっきり由乃さんかと。」「あら、良い曲に
ジャンルなどありませんわよ。」「はあ・・お姉さまの懐の深さを垣間見た気分です・・」

「五番、『オルレアンの剣』令。」「ここで特別解説者の由乃さん、どーぞ。」「・・いやー、
祥子さまがあれ持ってくるとは驚いたわ。あれも入れてんだよねー。」「まだ由乃さんの出番じゃ
ないから、令さまの解説を。」「てゆーか、変なこと言うと乱入してくっからね。」『うんうん。』
「令ちゃんの着メロはセンスいいわよ。」「これがベストかな。」♪ああ私の恋は南の・・
どんがらがっしゃーん!「また期待どおりにコケてくれたね~。」「・・れ、令ちゃん!なんで
松田聖子なのよ!」「好きだから。」「せめてお嬢とか、バタやんとか!」『古いふるい。』

「六番、『闇の聖歌』静。」「静さまか~。こないだクィーンが好きだとは聞いたけど。」
「となると『Bohemian Rhapsody』かな?」「いいえ。」♪May it be darken the sky・・
『エンヤ?』「なるほどー、そのセンできたか。」「たしかにエンヤは盲点だったわね。」
「多重録音を差し引いても、あの美声は尊敬に値するものね。」「歌姫の面目躍如ですね。」

「七番、『ゴモラの怒り』由乃。」はーっ、はーっ。「いつもの爆発済んだ?」「な、なんとか。」
「由乃さんといえば、やはり鬼平だけど・・」「祥子さまに奇襲攻撃くらっちゃったものね。」
「ふっふっふ、そんなこともあろうかと、これだ!」♪パラパーン!パッパラパパラパパラパーン!
『必殺?!』「しかもただの必殺じゃないわ。『必殺ウルトラマンレオ』『必殺ベルばら』
『必殺アタックNO.1』とバリエーションは豊富よ!」「あ~、一時期、作者のマイブームだった
自作着メロね。」「どんな曲でも必殺風にアレンジしてたよね~。ちなみに以上の三つはホントに
造ったんですよ。」「『アタックNO.1』はあまりにハマりすぎてて、笑っちゃったけどね。」
「♪フフフフンフンフーン・・あ、必殺だ。」「え~・・あー、ホントにそのまま必殺になる。」

「八番、『アカシアの花』志摩子。」「志摩子さんの着メロは想像つかないな~。邦楽?」
「うん、そんなカンジね。『春の海』とか。」「いいえ・・」♪テレッテテレテテッテッテッ・・
『トランス?!』「うわ、予想外。」「ぜんっぜんイメージになかったわ。」「・・乃梨子が
連れてってくれたディスコでかかってて気に入ったの・・」『乃梨子ちゃん!』「いえその、
志摩子さんの頼みじゃ連れてかないわけにいかなくて・・」「楽しかったわ・・」にこっ。

「九番、『獣の数字』祐巳。」「祐巳さんはわかりやすいわね。」「アニソンもしくは特撮。
まず外れっこなし。」「さてどうかな?」♪誰の耳にも聞こえない三万サイクル音の笛・・
『んん?』「はい、わかる人。」『はい。』ささっ。「聖さまと・・蓉子さまもですか?!」
「こーゆーのは得意なの。海底人8823!」「ぴんぽーん♪正解です!」『お~。』ぱちぱち。
「では第二問!」♪氷河の底からよみがえる三万年の戦士たち「氷河戦士ガイスラッガー!」
「大正解!第三問!」♪山を砕きビルを蹴散らし地鳴りとともにやってくる「ウルトラQ!」
「最後は最高難易度!」♪空にかがやく五つの光・・「電撃ストラダ5!」「全問正解!」
オオーッ!パチパチパチ!「このくらい基本よ。祐巳ちゃん、お返しするわよ。そもさん!」
「お受けします。せっぱ!」♪風だ疾風だ嵐だ雲だ・・「大忍術映画ワタリ!」
「まだ初歩よ。次はこれ。」♪勇気だ力だ誰にも負けないこの意気だ・・「少年ジェット!」
「ならこれもすぐわかるわよね?」♪解けない謎をさらりと解いて・・「七色仮面!」
「ふっふっふ、若いのにやるのう、おぬし。」「日ごろの鍛錬の賜物です。」「よしよし。」
『・・・・』「な・・なんか別世界の会話が。」「蓉子の引き出しは図書館どこじゃないよ。」

「十番、『色即是空』乃梨子。」「やっぱお経?・・はベタすぎるよな~。」「ディスコとか
行ってるから、ロック系かも。」「まあ洋楽ですけど。」♪ズンズズンズズンズズンズ・・
『ピンクフロイド!』「ヘビメタっすか。」「レッド・ツェッペリンやメガデスもいいですね。」
「仏教とヘビメタ・・合ってなさそうで、合ってるかも。」「演歌も一種のヘビメタですよ。」

「十一番、『スカイ=ハイ』可南子。」「可南子ちゃんも予測つかないな~。」「雰囲気から
フォーク系のような気も。」「二アピンです。」♪コーンコーンコーンコーン釘を打つ・・
『山崎ハコ?!』「放送自粛曲『呪い』・・」「闇の歌謡曲マニアなので・・」フッ。
「しぶいな~。放送禁止曲は有名だけど、放送自粛曲まではフォローされてないわ、たしかに。」
「『チューリップのアップリケ』、『悲惨な戦い』、あの『イムジン川』もそうだったよね。」
「そうなると『戦争を知らない子供たち』はうまくクリアした例ね。」「あれはよく考えてます。
メッセージ性を残しつつ、歌詞のどこにも付け入るスキが無い・・まさに永遠の名曲です。」

「トリはわたくし『ソロモンの目』瞳子ですわ。」「瞳子ちゃんはまっとうな曲のような気が。」
「いやですわ、これだけ個性的なラインナップでトリがノーマルではオチがつきませんわ。」
「瞳子、あんた思想がだいぶ黒薔薇会ちっくになってきてるよ。」「・・いい傾向ね。」
♪タラララッタン!タラララッタン!・・「このイントロは・・サンバルカン?」「いいえ。」
♪じえーたいがもしもなかったらアカがたちまち攻めてくる・・『愛國戦隊・大日本!』
「右の人も眉をひそめる超問題曲をよくもまあ・・」「そのユーモアセンスの欠如がそもそも
いけないのですわ。思想すら笑いとばす、それだけの器があれば戦争なんて起きませんわ。」
「そーゆー人はそもそも政治家とかしないだろうし。」「ファイターとかけっこういそうね。」
「もうちょっとやらかいのもありますけど。」♪パラパーパラパーパラパーパラン・・
『ミッション・インポシブル?』むっ!「いいえ!スパイ大作戦ですわ!」「それ同じ・・」
「映画のはただのアクション映画ですわ!英知と策略の限りを尽くしてのミッションを描く
TVシリーズとはまったく別物ですわ!」「そりゃそーだ。あれは主役を引き立てるだけが狙いで、
ストーリーはオマケみたいなもんだから。」「毛唐にはあの静かなプロの仕事のワビサビなんて
わからないんですわ。だから実写サンダーバードも発進プロセスを抜かすなどという本末転倒な
ことやってるんですわ。大災害救助が本筋なのに、内輪話だけで造りやがって。」『うんうん。』
「だから次のスパイダーマンにはレオパルドンを出せと!」『あー、それはないない。』
「へえ・・瞳子って映画を熱く語るタイプだったんだ。」「映画の話なら夜通しでもウェルカム
ですわよ。」「いつか一号生だけでやろうか、朝まで生映画。」『あ、混ぜてまぜてー。』
「祐巳さまに蔦子さまに・・聖さまと蓉子さままで?!」「そーゆー話は大好きなんだな。」
「とっても面白い話が聞けそうだし。」「参考資料映像とかあると盛り上がるわね。ソースさえ
そろえてくれたら、技術科で編集するわよ。」「ネオ浅草にDVDプレイヤー常備のBOXありますよ。」

わいわい。「・・・」「祥子は行かないのかい?」「令?・・き、興味ありませんわ。」ぷい。
「そこが祥子の悪いとこだよ。・・自分にウソをつく。」「・・。」「もっと肩の力を抜いて
楽に生きたら?人生少しは明るくなるよ。」「・・聖さまのように?」「あれは極端な例。
聖さまはマイナス方向が深かったから、その反動でプラスにも大きく振り切ったんだ。せめて
蓉子さまや、江利子お姉さまとかくらいでじゅうぶん。」「うーん・・難しいですわね。」
「まず変わろうと思う気持ちから第一歩だよ。ほら。」ぽん。「あっ!・・と。」「ガンバ♪」

古書「京極堂」。「いらっしゃいませー。何かお探しですか?」「えっと・・あの、映画の
濃い話がある本を。」「お任せください。こちらの『映画秘宝』全バックナンバー以上の濃い
資料なんて世界のどこにもありません。」どーん!たじっ。「いえ、もっと集大成なのを・・」
「ならば『新・映画宝庫シリーズ』がお求めやすくなってます。」「拝見・・わ、こまかい。」
「アウトラインをつかむならこれが最適です。」「全9巻か・・あら、Vol.8は?」「あれは
劇場アニメ特集なので別扱いです。」「そう。・・8冊ともください。」「まいどあり。」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。