♪かごめかごめ籠の中の鳥はいついつ出やる夜明けの晩に鶴と亀がすべった後ろの正面だあれ・・
二年前、デビルガンダム災害前の大手町。ヒュゥゥゥ・・「まるでゴーストタウン・・」
「ほとんどの会社がコロニーに上がってしまったからね。さ、ここだよ乃梨子。」「え?」
ゴォォォ・・「・・何の変哲もないビル?」「地上はね。中に入ろう。」ギィィィ・・
カツカツ・・「このエレベーターに乗るんだ。」♪ピッ。ガーッ。カツカツ・・パシン。
「何階?」「いいや。」すっ・・ピッ♪「階表示パネル?」グィーン・・「下がってる・・
表示は一階までしかないのに。」グィーン・・「・・長いね。」「もうすぐ着くよ。」
チーン♪ガーッ。カツカツ・・「?・・うわ~・・」サラサラ・・チュンチュン・・
「ここが我ら摩倶荼羅教の総本山、勝宮寺だ。」「話には聞いてたけど・・すごい。」
ウオオオオーッ!はっ?!「な、なに?」「・・また発作か。おいたわしや、姫巫女・・」
客間。「おひさしぶりです、住職。」「よくいらっしゃった。こちらがお話にあった娘さん?」
「乃梨子と申します。」「ようこそ。お若いのに呪法を能くするとか。」「娘の霊力は高く、
すでに私を超える力量に達しております。」「ほう、一級呪法師のあなたが褒めるとは。」
「で、姫巫女は?」「・・ようやく落ち着きました。乃梨子さんには?」「いえ、まだ。」
「ではお話しましょう。私の娘、志摩子のことを。」「摩倶荼羅教主の呪い、をな・・」
「志摩子は生まれながらに歴代教主の中でも傑出した強大な霊力を有しています。しかし、
その霊力の源は殉教した無数のキリシタンの霊たち。成仏できず救いを求め、依童である
志摩子にすがりついてくる。・・志摩子はその無数の霊を受け入れ、浄化して成仏させる
教主としての役割があるのですが・・」「心の器に収めきれない・・」「はい。ゆえに
たまに霊力が暴走し、先ほどのように・・」「ああなると、大の大人でも止めきれないほど
恐るべき力を発揮する。現にこれまでに数人ほど重傷を負わされてる。」「本人の優しさゆえ、
その程度で押しとどまっているようですが・・」「事情はわかりました・・御引き合わせを。」
奥の間。ギッギッ・・「ここです。」スーッ・・「?!・・座敷牢?」「発作が起きたときは
いつもここに・・本人の希望で造りました。」「・・あとは私一人で。」「はい・・」スッ。
(なんて・・なんて寒くて寂しい部屋。)すすっ・・(・・寝ている人が。あれが・・)
「・・どなた?」はっ。むくっ・・「お父様の声はしたけど・・」くるっ。(あ!・・)
乃梨子が見たもの・・それは真っ白な乙女だった。生まれて一歩もこの地下寺院から出たことが
無いであろうその身体は色素が抜け、人形のように白い。髪も黒さが薄く、金髪に近い亜麻色。
何より乃梨子が驚いたのは、その美しさだった。教主には西洋の血が混じっているといわれ、
なるほど彼女は日本人離れした、くっきりしたギリシャ彫刻のような顔立ちである。部屋着の
白装束がさらに彼女の純白の美しさを強調している。(菩薩さま・・)ぽ~っ・・「・・あの?」
はっ!「し、失礼しました。私は二条法師が娘、乃梨子と申します。」「・・ああ、二条の
叔父様の。おいくつ?」「14です。」「そう・・一つちがいね。」「姫巫女の御尊顔を拝謁し、
恐縮至極に・・」「姫巫女はやめて・・志摩子でいいわ。」「いえ、そういうわけにも・・
では志摩子さん、でどうでしょう?」「・・それがいいわね。」にこっ。「ではそれで。」
乃梨子は勝宮寺に逗留し、志摩子にせがまれるまま、いろんな話をした。世俗をほどんど知らない
志摩子には、どれも新鮮で魅力的な話だった。「・・ガンダムファイトか。見てみたいわ。」
「前回大会は世界中が熱狂しました。ネオ香港の東方不敗マスターアジアの強さは、歴代一と
絶賛されたものです。」「・・でも三年前に終わったんなら、もう見れないわね・・」
「ビデオありますよ?」「びでお・・って?」「あ・・そっから話さないとダメですか。」
住職の居間。「わかりました。TVとビデオセットはただちに揃えましょう。」「それ以前に、
テレビくらい見せてあげてもよかったんじゃないですか?すっかり浦島の翁ですよ、あれは。」
「面目ない。私自身が見ないもので。」「そのノートパソは何ですか?ネット環境があるなら
情報はいくらでも」「本人が興味を示さないもので・・」「はあ・・原因は家庭環境にも
あるようですね。」「そう言われると返す言葉が・・」「まあいいです、まだ挽回できますから。
幸いに志摩子さんは賢くあられ、知識を貪欲に吸収してます。」「よろしくお願いします。」
「それと!情報端末とネット環境も追加注文!」「はいはい、ただちに。」にこにこ。
殺風景だった座敷牢は乃梨子の手配により家具が増え、ようやく普通の部屋らしくなってきた。
だが乃梨子がいくら説得しても、牢組みだけは志摩子が頑として取り払うことを認めなかった。
「いつ発作が起きるかわからない・・そうなったら、お父様や寺の方々、そして乃梨子さえも
傷つけてしまうから・・」「・・わかりました。牢はこのままにしておきましょう。ただし。」
「ただし?」「私もここで寝ます。」「えっ?!」「私がここに来てから、幸いにも発作は
起きていません。」「でも!」「もし発作が起きても、私がそばにいればいくらでも打つ手は
あります。」「だめ・・乃梨子を傷つける。」「いいえ、そうはなりません。」「・・なぜ?」
「だって志摩子さんが私を傷つけるわけないから。」「・・もちろんそのつもり。でも暴走した
私は何をするか自分でも・・」「私は心配してません。志摩子さんはそんなに弱くない。」
「自信が無い・・恐ろしいの・・」「それは今まで一人だったから、です。でも今は私が
そばにいます。それは大きな違いです。」「・・わかったわ、乃梨子の言うとおりに。」
その夜。ばさばさ。「これでよし。」「・・なんだか楽しい。寝ることがこんなに楽しいなんて、
いままでなかったわ。」「一人で寝るより落ち着く人だっているんです。さ、消しますよ。」
フッ・・「・・乃梨子、起きてる?」「いま消したばっかですよ。」「そうよね・・ね、そっち
寄っていい?」「どうぞ。」ごそごそ・・「はあ・・あったかい。なぜか落ち着く・・」
「もっと寄っていいですよ。そうすればもっと暖かいです。」「じゃあ・・」ごそごそ・・
ぴたっ。「・・感じる。乃梨子の息づかいが。」「こっちも志摩子さんのいい香りが・・おっと、
いかんいかん。」「・・なに?」「ちょっとムラムラっときちゃった。平常心へーじょーしん。」
「??・・よくわからないわ。」「いいんです、こっちの問題なので。」「そう?・・??」
事実、それから一年の間、志摩子の発作が起きることはなかった。そう・・あの日までは。
「住職・・デビルガンダムはまだ?」「うむ・・デスアーミィがまだ跳梁しておるようだ。
だが信者からの最新情報によると、ドモン・カッシュが来日した。」「ネオジャパン代表の?」
「先に来ておった東方不敗と共に、デスアーミィの大軍を葬ったらしい。」「さすが・・」
『ああああーっ!』はっ!「志摩子!」「志摩子さん?・・まさか発作が!」ダダッ!
「うああああーっ!」「志摩子!」「志摩子さん、しっかり!」「霊が!・・デビルガンダムに
殺された無数の霊が!」「そうか!今回の犠牲者にはカソリック信者も多数含まれておる。
それが志摩子に群がっておるのだ!」「なんてこと・・」「・・うがあああああーっ!」
ばーん!「いかん!」「うわっ!」くるくるっ、ザザーッ!「始まった!」「これが・・暴走!」
ガアアアアーッ!「・・調伏する。」「待ってください!・・私が収めます。」「乃梨子くん?」
つかつか・・ばっ!「志摩子さん・・」グルルル・・キュルッ、スルスルッ・・ぱさっ。
びくっ!「?!」「おお・・」「さあ・・来て。」すっ・・「・・清き乙女は荒霊を慰撫する。
乃梨子くんは自らアメノウズメの役を・・」・・ガアッ!ぎゅっ。「?・・。」ぎゅっ・・
「・・ありがとう、乃梨子。おかげで私は自分を取り戻せたわ・・」「いえいえ、志摩子さんは
それができるんです。ただ、その心の拠り所が無かっただけです。」「・・ありがとう。」
「うむうむ、よかったよかった。」「・・あーっ!住職、そ、そこにいましたっけ?!」
「最初からおったよ。」「わわわっ!」ばさばさ!「ありがたやありがたや。」ジャラジャラ。
「お父様ったら。・・うふふふふ。」『お?』「あははははっ!」「うん。・・いい笑い。」
♪南無阿弥陀~。「おっと。・・信者からのメールだ。どうやら復旧作業に入れるらしい。」
「よかった。志摩子さんの入学に間に合うといいですね。」「まだ半年も先の話よ・・」
♪かごめかごめ籠の中の鳥はいついつ出やる夜明けの晩に鶴と亀がすべった後ろの正面だあれ・・
志摩子の指示により、部屋の牢組みが取り払われたのは、それから間もなくのことだった。
そして一年後、黒薔薇の館。「『色即是空』乃梨子です。」『ごきげんよう。』「これがウワサの
摩倶荼羅教の若き呪殺師ね。」「うん、なかなかハラの据わった顔つきじゃない。いいわ。」
「で、志摩子のスールに?」「はい・・もともとスールみたいなものですけど。」にこっ。
*****************************************
黒薔薇会日誌-獣の刃-
これは可南子が黒薔薇会に入った直後の話である。(「追加発注」の続きから)
「Atelier de Marie」。ヒソヒソ・・「で、あなたの特性を最大限活かせる武器が欲しいと。」
「はい。この双牙刀よりも刃渡りが長く、携帯しやすく、取り落としたりしないものを。」
「う~ん・・ならこういうのはどう?」サラサラ・・「固定?・・」「扱いは手持ちよりも
難しくなるけど、零距離戦ではほぼ無敵よ。」「・・試してみます。」「では試作を。」
数日後、
コトン。「これが・・」「付けてみて。」キュイッ。「腕全体で保持する形か・・よっと。」
ギュッ。「裏打ちは摩擦抵抗を上げてるから、ちょっとやそっとじゃずれないわ。」パチン。
「固定よし。」くいくい。「ブレードは手首の捻り込みで展開するわ。」「こう?」くいっ、
シャキーン!「角度は腕に対し垂直。腕のわずかな動きで切り上げ・切り払い・切り下ろしが
できるわ。」「よっ、はっ、とっ。」ヒュヒュン。「手持ちとだいぶ感触がちがいますね。」
「慣れれば手持ち以上に使えるはずよ。手首を返せば収納よ。」くいっ、シュィン。
「いいですね。」「そのまま制服の袖を上げれば、見た目では気づかれないはずよ。」
ごそごそ。「なるほど・・でも使うとき袖を破っちゃうか。」「なんで制服まで預かったか
わかってないな~。よく見てみ。」「え?・・あ、スリットが入ってる。」「刃はそこを
通って開閉するから、使うたんびに繕わなくていいわ。」「さすがですねー。ではこれで。」
「そう言うと思って、もう本物は造っておいたわ。」ゴトン。「おいくらです?」「200万。」
「カード使えます?」ぴっ。「いいですよ。・・あら、珍しいカード。これ持てるのは、たしか
法王さまと枢機卿だけのはず・・」「そうなんですか?」「・・ま、いいか。信用は確かだし。」
祐巳の家の廃工場。ガラガラ・・ガシャン。「戻ったかい?」「ただいま、聖さま。」がさっ。
「それが新兵器か。」「名づけてビーストセイバー。私の望んだとおりの新武装です。」
「さすがマルローネだね。・・知ってる?」「はい、こないだの寸法取りで気づかれました。
もっとも、口が堅い方ですから。」「プロだからね。・・祥子もうすうす気づいてきたよ。」
「はい。でもお姉さまは意識的に深入りを避けているようにみえます。」「恐怖、だね。
知ることへの恐怖。それが真実を見る目を逸らせてる・・時間の問題に過ぎないのに。」
「となると、全てを知ってるのは学園長と聖さまだけ?」「いや、蓉子には早々に見抜かれ、
江利子ももう知ってる。沈黙は守っててくれてる。」「感謝します。・・ふう。」ばさあっ!
「う~ん、羽根伸ばすと気持ちいい・・」コキコキ。「もうちょっとマシなマンションとかを
薦めようかとも思ったけど、その巨大な羽根を広げられるのは、たしかにここしかないね。」
「一人のときは出しっぱなしなんで、寝るときも敷き毛布だけで布団はいらないんです。」
「立派な羽毛ぶとんだしね。家具もあまり置くと引っかかっちゃうね。」「ちゃんと考えて
住んでますので。」「にしても、マットくらい置けば?ほい。」ぽい、「よっと。」ボスッ。
「これは?」「サープラスで買ってきた旅客機用脱出シューター。横のピン引いてみ。」
ぴっ、シュワワワ~ッ!「わ、でっかい。」「これだけ大きいマットは他にないよ。」
「ありがとうございます。これならソファ代わりにもなりますね。」「巨人用だけどね。
お代はいつものように法皇庁にツケといたから。じゃ、私はそろそろ。法皇庁にはきわめて
順調とまた報告しておくよ。」「モニター役、ご苦労さまです。」「勅命だからね。」
夜。照明スタンドひとつしかない工場内は真っ暗に近い。祐巳はノートのテレビを見ながら
超大型マットの上でくつろいでいる。ばさばさ・・「ふわ~。もう寝よっか・・?!」
ばっ!じーっ・・「何か用?幽音。」チリーン♪ボオッ・・「自分の娘の様子を見に来るのに
理由いるの?」「娘・・ホントにそう思ってる?」「いいえ。正直、実感ほとんど無いね。」
「それは私も同感。・・あなたが母親だなんて、タチの悪い冗談としか思えない。」
「気まぐれに、法皇庁医科学部にジーン・サンプルを提供したけど・・後悔すべきかな。」
「あなたには感謝もしてるし、ぶち殺したいほど憎悪もしてる。・・いったい私は何なの?
天使?バケモノ?それとも人間のできそこない?」「どれでもあり、どれでもない。あなたは
あなた、それ以上でも以下でもない。」「詭弁ね。・・でも少しはいいこと言ってる。そうね、
自分が誰かなんて、普通の人でもまず答えられない問題ね。・・コギト・エルゴ・スム。」
「我思うゆえに我あり・・それでいいんじゃない?」「帰って。そろそろ殺意が限界だから。」
「おー怖いこわい。それじゃ帰るね。・・その羽根、私のよりきれいだよ♪」チリーン♪・・
「たく、遊び人が。いつか必ずぶち殺してやる。・・さー、寝よねよ。明日も学校だ・・」
大戦艦ヴァルハラ。「・・・・」「?・・どうした、幽音。」「キング?・・なんでもない。」
「気になるのか、あの少女が。」「うん・・あの子、明らかに私を凌駕する潜在能力がある。
実の娘のはずが、それに滅ぼされるかもしれない・・」「創造主への憎悪。昔からよくある
フランケンシュタイン・コンプレックスだな。」「どうしたもんかな?」「手は二つある。
芽のうちに摘み取るか、そのまま育てるか。」「・・いえ、両方という手もあるね。」
「なに?」「敵をぶつける。それも強い敵を。それでやられるようならそれまで。けどもし
それでも勝ち残れば・・どうなるか最後まで見てみたい。」「ふふ・・それも一興。幸いにも
もうすぐBGFにも出場する。舞台は整い、強い相手にも事欠かん。」「だね。・・真打ちの
役者でも用意しときますか。」「刺客か。」「そう、極上のデスボーグをね。」にやり。
「デスボーグ?!・・完成したのか。」「もうすぐ使いものになるって。あのHELL-THINGが
いい参考になったみたい。」「むう・・ヘルファイターをも凌駕する怪物ガンダムか・・」
翌日、修行時限。「では訓練を始めましょう。」「お姉さま、今日は新装備を試してみます。」
「あら、いつの間に。見せてみて。」「ビーストセイバー!」ぐっ、シャキシャキーン!
「へえ・・面白いわね。扱いはまだ?」「これからです。」「ふむ・・それを使いこなすには、
短剣戦闘術を根本から見直さないと。今までの短剣術は忘れなさい。この武器専用の戦法を
組み立てることからよ。」「はい。」「では、まずこの武器の利点をあげてみなさい。」
「敵に間合いを悟られにくいこと。腕を下げれば刃は見えません。」「いいわね。次は?」
「振り動作の簡素化。普通の刃物は振り下ろすために『振り上げ』の動作が必要ですが、
これはそういった事前動作を必要とせず、まず相手に当ててから引き切る形になります。」
「ではまず練習用巻き藁で。」「はっ!」シャッ!ぴたっ。「はあっ!」グン!シュパッ!
「よろしい、次は『九重』よ。」さっ。「♪いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重に
にほひぬるかな♪」・・ボコッ、ゴバアアアッ!「九体の式神兵・・」「襲撃。」ばっ。
ドドドドッ!「・・はあっ!」シャッ!ぴっ、「陣風!」シュパアアアーンッ!タン!
「螺旋車!」キュゴオオオッ!ザキザキィッ!ふわっ。「飯綱!」ズバシャアアアーン!
ザン。グワッ!「後ろ?」すっ、ズドオッ!「磯撫・・はっ!」ばばっ!ザキイッ!
ツカツカ・・「九殺。」くいっ、シュン・・ドサドサドサッ!「見事よ。身体の捻りと
全体重をかけた斬撃は、いかなる防御も断ち割る。恐ろしい武器を持ったものね・・」
黒薔薇の館・二階。「祐巳ちゃん、さらに腕を上げたわね。」「どんどん力をつけてる・・
この分だと、いずれわたくしたちを圧倒するレベルになるわね。」「いいことじゃん。」
「問題は、その到達レベルが異常なものになることよ・・そうなれば確実に露見するわ。」
「アドベント・チルドレンか・・他にもいるのかしら?」「わからない。あの計画は記録ごと
幽音さまによって抹消された。法皇庁も、計画の遺産のあの子を監視するので手いっぱいさ。」
「いない、とは断言できないのね。」「あの子が現実にいるんだ、いないほうがおかしい。」
「・・一年前、聖が館に連れてきたときは、ごく普通の子にしか見えなかったけどね。」
「そうね。黒薔薇会とはきわめて異質に思えた・・けど。」「彼女こそ真の黒薔薇だった・・」
一年前。「祥子、妹候補を見つけてきたよ。」「はい?」「入って。」・・そっ。『祐巳さん?』
「知ってるの?由乃、志摩子。」「はい。同じ教室ですので。」「・・かといって、付き合いは
あまりありませんでしたけど。」「特に目立つわけでなし、ごくごく普通のその他おおぜいって
印象よね・・」「ええ・・お姉さま、なぜ祐巳さんを?」「人の潜在能力を見抜くのが得意でね、
この子にピーン!ときたんだ。」がばっ!「あひゃあっ!・・聖さま~。」「へえ・・聖が
そこまで言うなら試してみましょう。」「ではわたくしが。」すっ。「祥子か。やってみる、
祐巳さん?」「は、はい。やってみます。」「よろしい。では館の前で。」ガタガタ・・
ザッ。「二つ名を聞いてなかったわね。」「『獣の数字』です。」ぴくっ。「珍しいわね・・
その名にふさわしいか見てあげるわ。百人一首。」すっ、シャン!「はっ!」シュババババッ!
「・・・・」ゴオオオオッ!「・・よけない?」スッ・・スカカカカッ。「全部外れた?!」
「本人は微動だにしてないのに?」「いえ・・見切りよ。」「わずかな動きで、直撃する札を
すべて回避したのさ。」「今の・・動いてた?」「いえ、そうは見えなかったけど・・」
「手加減はしてなかったのに・・」「こちらからいきます。」フッ・・ボオッ!「なっ!」
「双牙刀!」ビュン!「楯札!」さっ、キィン!「はいはいはいっ!」ビュビュン!「なんの!」
キキキキィン!「す・・すさまじい攻撃!」「二本の短剣を、全身を使ってぶん回してる!」
「けど祥子もよく受ける。さすが『黒きマグダラ』。」「いえ、技が粗いのよ。だから落ち着いて
よく見れば、いくらでもスキがある。」「そうね。勢いはいいけど、上級者にはアラだらけよ。」
「はいっ!」キィン!「・・そこよ。」ぱしっ。「♪白露に風の吹きしく秋の野はつらぬき
とめぬ玉ぞ散りける♪・・貫風。」ドオンッ!「がふっ!」「決まった。・・札からの衝撃波。」
ズル・・「おっと。・・由乃、志摩子。」『はい。』タタタタ・・「よろしく。」どさっ。
「祥子、印象は?」「良い原石ですわ。磨けばまだまだ光るでしょう。」「だって。どうかな?」
「まあ、いいんじゃない。」「面白そうな子ね。」「祥子は?」「・・結論は、いま少し。」
館一階、物置。「どう?」「胸の強打による一時的気絶だけです。」「もう覚醒してます・・」
「祥子さ・・ゲホゲホッ!」「あ、そのままでいいのよ。・・スジはとてもいいわ。でもまだ
経験値不足ね。」「はい。・・やはり一人では限界があるかと。」「そうね。適切な指導を
してくれるスールがいれば・・なぜ今までスールを作らなかったの?」「グラン・スールに
なってほしい方が・・」「たしかにスール選びは大事ね。実のところ、わたくしもまだ
プティ・スールがいない・・」じーっ・・「・・どう?」「はい?」「なってみる?スールに。」
「ええっ!・・いえでも、私みたいなものが『黒きマグダラ』のスールにだなんて・・」
「聖さまじゃないけど、わたくしも剣を交えてピンときたの・・あなたなら、してもいい。」
「祐巳さん、この際。」「・・私たちから見ても、祥子さまと祐巳さんは相性がよさそうよ。」
「・・では仮免ということで。」「それでいいわ。試用期間として、明日から館に来なさい。」
そして数ヶ月、祐巳は仮スールとして黒薔薇会の手伝いをし、運動会や文化祭の年中行事を
テキパキとこなし、メンバー内での信頼を得ていった。「・・祥子、そろそろいいんじゃ?」
「ええ。・・でも、もう一度、立ち合ってからですわ。」「ほう、そのココロは?」
「この数ヶ月、わたくしなりに祐巳を見てまいりました。・・恐ろしいほどの上達ぶりです。
どんどん技量を上げており、この前とは比べものにならないくらいに。それゆえ、わたくし
自身でその成長を確かめたいのです。」「いいでしょう。志摩子さん、祐巳ちゃんを。」
ザッ。「さあ来なさい、祐巳。あなたの成長をお見せなさい。」「参ります、祥子さま。」
すっ、シャッ!「はっ!」キキィン!フッ・・「消えた?・・上!」シャッ!キィン!
「はいっ!」ババッ!「なっ?!・・受けの反動を利用して!」「天舞撃!」ババババッ!
「はいはいはいっ!」キキキキィン!「すごい・・宙に浮いたままの連撃!」「受けの反動
だけで、あれだけ浮けるの?」「そう、祥子が受ける力を利用して・・恐ろしい身軽さ。」
くるくるっ、タン!「地を蹴っての突撃?」ゴオオッ!「あれでは祥子のカウンターを!」
「もらいますわ!」ビュッ!「・・地背剣!」ザクッ!グン!スカッ!「なっ?!・・短剣で
地面を突いて軌道を変えた!」バババッ!「体勢が崩れた祥子の頭上から!」「しまった!」
「あれれ?」グラッ、「わきゃあっ!」「なっ?」ごろごろどっしゃーん!『あら~・・』
「あいたたた・・バランスが。あれ?」モガモガ!「うわっ!す、すみません祥子さま!」
ばばっ!「む~・・おもいっきり股挟みしてくれたわね。」「いえそのバランスくずれての
不幸な事故で!」「忘れてあげないわよ・・祐巳の感触と香り。」「あ・・(真っ赤)」
『あはははは!』「いやいや、面白かったわ!」「さすが祐巳ちゃん、オチをつけるわね。」
「いいないいなー、祥子だけ祐巳ちゃんの。」「ちょっとできない経験だね、たしかに。」
「あはははは!こりゃケッサクだわ!」「うふふふ・・祐巳さんらしいわ。」「はあ・・」
「・・うふふふっ、あははははっ!」『おっ?』「へえ・・祥子の大笑い、はじめて見た。」
「いいわ、とてもいいわ!・・祐巳、正式にスールになって。」「・・はいいっ?!」
「気に入ったわ。その腕、技の切れ、そして何よりアレね。」「アレ・・ですか?」ぼっ!
「冗談よ。今度こそ本気であなたをスールにしたくなったわ。受けてくれる?」「・・はい!」
「・・今にして思えば、あれはわざとだったのかもね。」「だね。あのまま攻撃を完結させたら
祥子の脳天は串刺しになってた。寸止めするにしても、祥子のプライドはズタズタになる。
それを避けるため、あえてああいう形に持ちこんだ・・」「あれでは笑うしかないものね。」
「けど問題はこれからよ。・・いずれ祥子をも超えるでしょう。そのとき祥子はどうするか・・」
「祥子は・・弱い。プライドの高さは自分の精神的弱さを覆い隠すためのもの。いざとなると、
砂上の楼閣のように簡単に崩れるわ。」「そう。だから祐巳ちゃんなのさ。彼女なら自分の身を
呈して祥子を守る、そういう子さ。」「少し安心したかな・・これで心おきなく卒業できるわ。」
カツカツ・・バタン。「あ、お姉さま方。」「おられましたか。」「上から見せてもらったわ。」
「祐巳ちゃん、また面白い武器を持ったわね。」「これから後ろから襲うときは気をつけなきゃ。」
「はあ・・聖さまも懲りませんわね。」「ライフワークなのさ♪」「はう~・・なんで私だけ。」
***********************************************
黒薔薇会日誌-伝説の薔薇たち-
黒薔薇の館の階段ホールには、歴代黒薔薇会卒業生の写真が貼られている。
わいわい。「シエル様の代って、みんな殉教しちゃったんですね。」
「そう、この歴代卒業生でいまだ健在なのは、ごくわずかよ。」
「それだけ過酷な稼業ってわけ。もっとも、殉教する気で代行者やってるのは
一人もいないけどね。己の腕に絶対の自信をもってても、死ぬときは死ぬの。」
「それでお亡くなりになった方には、ロザリオのシールが貼られてるんですね。」
「となると・・今もご壮健な薔薇様方は、すごい実力者なんですね・・」
「・・あれ?この三年前の卒業生って、お二方とも生き残ってますね。」
「三年前・・今の四号生のお姉さま方が一号生の時代ですね。」
「シエル様は三号生ですわね。お名前は・・『デウス・マキナ』幽璃華さま、
『パンツァーフィスト』マリアンナさま。」『はあ?』「変わった二つ名ね・・ん?」くるっ。
ぷるぷる・・「お姉さま方、なにか?」「・・思い出しちゃったの、当時を・・」
「あ~・・トラウマが。」「二度と思い出したくなかったのに・・」びくびく。
『・・・・』「・・最強の四号生が、これほど恐れる薔薇様方なのね。」
「この調子じゃ、お聞きするのは不可能ですね。傷口に塩すりこむようなものです。」
「となると・・やはりシエル先生ね。」「これは興味ありますわ、ぜひお聞きしましょう。」
ガンダム長屋。「三年前・・ですか。」ゲソッ・・『シエル様まで?』「お姉さま方と
同様の反応とは・・」「いったい何があったんですか?」「う~・・蓉子たちがトラウマるのも
一概に外れてないわけで・・とにかく地獄のような年度でした。」『地獄?・・』ごくっ。
三年前、黒薔薇の館。ダン!「いいかてめーら!どうもここんとこ学校の風紀がよくねえ。
これは先代の薔薇様方の統治が甘かったからで、このまーりゃんの代になったからには、
ビシイッ!っとモラルの引き締めやっど!」『は~い・・』どよ~ん。「まず一号生の
蓉子と江利子と聖!」『は、はい!』「今から暫定的にあたしと幽璃華の直属とする。
幽璃華、蓉子やる。江利子と聖、いくど!」「い、行くって?」「どちらに?」
「決まってんだろ、問題児の粛清よ!」『粛清?!』「昨今の女子高生が話してわかるタマか。
大事なのはファーストインパクト!まず叩きのめして動かなくなってから異端審問!
これが中世から伝わるオートダーフェイ(魔女狩り)の基本よ!疑わしきには神罰を!」
『え~と・・(反論はムダだとわかってる)』「一階の物置から鉄の処女出しとけ!」
「でと、蓉子ちゃんは私を手伝ってね。」「はい、幽璃華さま。(こっちでよかった・・)」
「まずは火刑場造りよ。」「・・はい?!」「前庭に目立つように。物置にマネキンあったね、
それを磔にして燃やすの。これ見ればみんな肝を冷やすわ。あとはまーりゃん達が拘引してくる
生徒待ちね。」「ま・・まさか本当に?!」「もちろん。一人や二人天に召さないと、こういうのは
なかなか定着しないわ。」「見せしめですか。」「客寄せパンダともいうね♪」「言いません。」
ドカドカ・・バタン。『・・はぁぁぁ~っ。』ぐたっ。「史上最悪の薔薇様方だわ・・」
「やってることは本質突いてるんだけど・・思想と手段が過激すぎ。」「幽璃華さまだけなら
まだしも、最凶のまーりゃん様と合わさると二乗倍・・」「シエル、なんとかならない?」
「な、なんでそこで私に振るんですか。」「お二方に意見できるだけ超強気なの、あなたと
みなみだけよ。」「はぁ・・ムダです。ここ二年間、プティ・スールとしてお姉さまに仕えてきた
私が言うんです。お姉さまは天上天下唯我独尊、人の意見なんてハナから聞いてません。」
『だよね~・・』「みなみは?」「まーりゃん様はメチャクチャなようでいて、ちゃんとした
考えを持ってらっしゃるわ。今のにしても、なぜ直属のスールやニ三号生を無視して、一号生だけ
駆り出したかわかる?」『・・え?』「綱紀粛正には苛烈な手段が即効。でもそれにより生徒は
黒薔薇会に憎悪と畏怖を抱く・・けど、あの編成ならその焦点は、お二方だけで済む。もとより
一号生は四号生に使われているだけだから対象外。」『あ・・』「さすがは『冥王の吐息』
みなみですね、見事な観察眼です。」「で、でもいずれは私たちにも白羽の矢は立ちますわ。」
「具体的には?」『う・・』「何も無いうちから不安がるのは無意味ですよ・・シエル様。」
「はい、みなみさん。帰りましょう。」すっ。カツカツ・・『ごきげんよう。』パタン・・
「・・やはりシエルとみなみはダメか。」「まーりゃん様と幽璃華さまの妹だもの、姉を悪く
いうスールはいないわ。」「・・こうなったら、刺客を放つしかないわ。」『刺客?!』
「原理主義グループチクって、襲撃させるの。よしんば失敗しても、少しはおとなしくなって
くれるかも。」『・・うん。』「リスクは高いけど、うまくいけば・・黒薔薇会は私たちのもの。」
帰り道。「♪りーりかる、とかれーふー。きるぜむおーるー!」「♪ごくーらくー、じょーどへー、
つれてってあげる~。」「・・なんつー歌を。」「はぁ・・疲れた。」「服装違反で火あぶり二人、
鉄の処女三人・・さすがに先生方がギリギリ止めたけど。」「みんな失禁してたね・・少なくとも
二人は精神科行きだよ、ありゃ。」「まあ効果あったっちゃあったけどね・・そういう意味では
本質は突いておられるのね。」「ニ号生三号生のお姉さま方が怯えてた理由がわかったわ・・」
「一号坊!私は今日はとても気分がいい。よってたこ焼きをおごってやろう。私に感謝するのだ!」
『ははーっ!』「まーりゃんがおごるなんて珍しいね。いつもシエルちゃんにたかってるのに。」
「それは問題ないのだ。プティ・スールのものは私のもの、私のものは私のものなのだ!」
ザザザッ!「お?」「え?」「武装してます!」「あのターバン・・原理主義テログループ?」
「待ち伏せか。」ジャキッ!ざっ。「待った。・・一号は見てな。いくぜ、『デウス・マキナ』。」
「手ぇ抜かないでよ、『パンツァーフィスト』。」ザッザッ。『撃て。』グラタタタタ!
ゴォォォ・・「・・それで?」『・・なに?』「はい、お返し。」ぽい、パラパラ・・
『バカな?』「幽璃華、タネ明かし。」「はいな。現出!」ボオッ。ジャキッ!『なんだ?!』
「・・虚空から武器が!」『う、撃て!』グラタタタタ!「ビームシールド。」ヴン。ぱしぱしっ!
「無音銃。」・・ビスビスビスッ!『ぐはっ!』『なぐっ!』『い・・いつ撃った?・・』
『分散しろ!』ザザザッ!「対人ミサイル。」ボオッ、シュドドドドッ!ヒュルルルッ!
『なにっ!』『小型ミサイルが!』ドガガガガーン!『ぐわっ!』「板野小サーカスね♪」
「これが・・『デウス・マキナ』。」「虚空から武装を創造する・・すさまじい異能ね・・」
「おい幽璃華、私のぶんも残しとけ。」「そっち任せる。」「おっけい、まかされた。」ザッ。
『こっちは無手だ、撃て!』グラタタタ!「おそいおそい。」シャシャッ、パシパシパシッ!
『銃口が追いきれない?』「いっぱしのテロリストが銃の狙い方くらいちゃんと習っとけ!」
ボオッ!『ひっ?』「アハトアハト!」ボゴオオオオーン!『ながっ!・・』ボトボトッ!
『な、なんだ!・・パンチ一発でバラバラに!』「人呼んで『88mm砲拳』。」ギュォォォ・・
「拳の周りの・・空間が歪んでる?」「私のパンチはなんたら空間波動を誘発する・・らしい。
原理はよくわからんが、効きめはご覧の通り。」「すごい・・まさに戦車砲級の破壊力。」
「『パンツァーフィスト(機甲拳)』とはよく言ったものね・・」「いや・・人間戦車か。」
『ば、バケモノ!』「あー?ヒト襲っといてバケモン呼ばわりだぁ?基本マナーがなってないって
アッラーに言いつけっど。」「それよりも、宅急便で送ったほうが話が早いんじゃないかなー?」
ぽん。「あ、そりゃそーか。よいしょ。」ドオンッ!『ぐわあっ!・・』ボゴオオオオーン!
ザァァァ・・(血の雨)「まーりゃん様、雨が。」「春雨じゃ、濡れていこう。」「はい~。」
『うげえええーっ!』ダバダバ!「ありゃ、リバースっすか。」「さすがに一号坊には刺激が
強すぎたかもね。」「ま、なにごとも経験だ。こんだけハデなの体験しときゃ、たいがいの修羅場は
平気の平左になるって。」「それもそうだね。」「ほんじゃ、タコ焼き行くぞー。」『え"~・・』
少し離れたビルの上。ガクガク・・「・・やっぱりダメだ。」「強すぎる・・絶望的なまでに。」
『・・やはり、あなたたちでしたか。」「こんなことだろうと思ってました。」はっ!
『・・シエル、みなみ!』「あなたたち、今まであのお二方の何を見てきたんです?」「おそらくは
史上最強のお二人。どのような策を弄そうと、あの非常識なまでの強さの前には児戯に等しいわ。」
「ともかく、この事は報告せざるをえないようです。」「そうですねシエル様。なにせ身内を
謀殺未遂とは、代行者にあるまじき重罪です。」「・・逃がすな!」さっ、ザザザザッ!
「あらあら・・ま、当然の対応ですか。」「座して死を待つよりは、代行者らしくていいですね。」
「何人いけます?」フッ・・ズパパパッ!『がはっ!』「かはっ!』ドサドサッ!「まず二人。」
『うっ!・・』「みなみの異能『冥王の吐息』!」「特殊な息の吐き方で真空刃を生み出す・・」
「あらあら、先を越されてしまいました・・黒衣聖母!」ヒュババッ!ドカドカドカッ!
『ぐはっ!』『はがっ!』ドサドサッ!「みなみさん、後始末。」「はい。」フッ・・シャバッ!
「原型をとどめないほどミンチにしました。」「あとは太陽とカラスたちのお仕事ですね。」
「この廃ビルの屋上には誰も来ないでしょうから、一週間でこの世から消えるでしょう・・」
次の日、黒薔薇の館。ぐったり・・「疲れた・・」「タコ焼き食べて、また戻して・・」
「代行者になるって、辛いんだなぁ~・・」「あらあら、なかなか可愛がられたみたいですね。」
「ご苦労さま、聖。ティー入れてあげるわ。」コポコポ・・「申し訳ないです、お姉さま・・」
「シエルお姉さま・・よくまーりゃん様に二年も仕えられましたね。」「慣れですよ慣れ。
それにお姉さまとご一緒なら、普通ではなかなか出会えない修羅場を経験できますから。おかげで
私もだいぶ耐性がつきました。」「そういうもんですか・・ところで他のお姉さま方は?」
「それなんだけど、みんな昨夜に失踪したって。」『ええっ!』「耐えきれなかったんですね。」
ドンドンドン!バキイイーン!「やほーい!まーりゃんご出勤ー!・・あれ?」ぽつねん・・
「シエルちゃん、みんなは?」「かくかくしかじかで、もういません。」「なんだかな~・・
シエル、三号生に補充の当てある?」「これはという生徒ならニ・三人知ってます。」
「みなみちゃん、二号生は?」「ざっと四人ばかり。」「じゅうぶんだ。スカウトに行くど!」
『・・うっわ~。』「お姉さま方がトラウマるわけね・・」「まあ、おかげで三人とも鍛えられて、
歴代一の薔薇様方とまで呼ばれるようになりましたけど。」「それで、そのお二人は今は?」
「数年は代行者して、今は他組織にヘッドハントされたそうです。」「やっぱり優秀なんだ。」
「・・そしていまお一方、『冥王の吐息』みなみ様は?・・」「プロ一年生ですけど、すでに
数十人のテロリストを葬り、勝率・キルレートで最優秀新人賞は確実ですね。」『野球ですか。』
そのころ。「かんちょ、GGG司令から通信です。」「メインに。」ぱっ。『るー!』「るー!」
(?・・ルリルリ、なにあれ?)(なんかGGGで流行ってる挨拶らしいです。)(ああ・・
ウワサの宇宙人の。)(あれホントなんですか?)(らしいよ。GGGそれで成立したらしいし。)
『幽璃華、デビル軍団の動向は?』「大戦艦ヴァルハラでけっこう動きあったみたいよ。
詳しくはレポート送るわ。」♪ピッ。『ふむふむ・・そろそろこっちもお座敷ありそーだな。』
「工業コロニー『アイアンサイド』が要注意ね。なーんか企んでる気配バリバリ。」
『うちの諜報部を潜らせてみようか。情報収集は勝利の基本。』「じゃあ頼むね、まーりゃん。」
ぷつっ。「かんちょ、GGG司令とお知り合いですか?」「高校時代の同級生。変わらないなー。」
さらにそのころ、東南アジア某国。『それでは閣下のご登場です。』パチパチパチ!「・・・・」
カツカツ・・『諸君、私はここに宣言する。偉大なるアッラーのため、国内より他の・・』
ふっ。キィン。『一掃することを・・』ぴたっ。?・・ガヤガヤ。ピキッ。ズル・・ブシャアッ!
『閣下が!』ウワアアアッ!ワアワア!「・・神意遂行。」くるっ、ツカツカ・・ワアワア!・・
************************************************
黒薔薇会日誌-カタパルトの美学-
黒薔薇の館一階・技術科詰所。「では設計会議を始めます。今回はオブザーバーとして黒薔薇会
幹部のお三方にもご参加いただきました。」『よろしく。』「今回の議題はカタパルト方式に
ついてです。昨今はリニアカタパルトとシグナル管制が主流ですが、これは高価でメンテも
旧来の蒸気式に比べて複雑です。また今回の企画では四つの学舎棟に三つづつ設置するので
合計12本。通常型戦艦の2本に比べ、6隻分に相当します。」「リニア式ではコスト高なのね。」
「いわゆる枯れた技術である蒸気式なら、全部合わせてもリニア式の3本分で済むという見積もりが
業者から出てますが、自家製ならさらに1本分の費用で造れます。」「質問。品質保証は?」
「メーカー品はたしかに保証ありますが、前提として保守契約を結ぶ必要があります。しかし実際に
実戦システムにおいて悠長にメーカー任せはできません。技術科でメンテすることを考えれば、
むしろ自家製のほうが自由度がきいて合理的です。」「なるほど・・同意してもいいんじゃない?」
「いつでもちゃんと使えるのが理想的ね。」「異議なし。」「ではそのように進めます。」
「次は発艦管制方法について。実際に使われる黒薔薇の皆様にお聞きしたいのは、シグナルと
手信号のどちらがよろしいですか?」「シグナルが簡単でいいかもね。」「いえ、戦況は時々刻々に
変化する。それに即時に対応するとなると、やはり手信号のほうがいいわ。」「たしかにね。
ストップ&ゴーだけじゃあ、味気ないってもんだ。」「でも手信号となると人手がいるわ。
吹きっさらしで熱かったり寒かったり轟音でうるさいわという環境で、いったい誰がやるの?」
『・・えへへー。』『え?』「いえ実は・・技術科生で志願者多くて。」「発艦指示員はけっこう
人気なんですよ。一番目立つしカッコいいしで。」「空母モノではパイロットより目立つしね。」
「ここで特別ゲストをお呼びします。『梁山泊』整備長にして発艦士官のアーサ・ケイト先生。」
ガチャ。「ういっす!先生ってのもいいもんだね。」「さっそくですが先生、発艦指揮について
お教えください。」「実際がとこ、けっこう大変な役目だよ。いざ戦場へ送り出す引導を渡す責任が
あるからね。対象機の重量・空力特性・温度に湿度まで考慮して蒸気圧を設定し、さらに装備の
セーフティピンやら各部動作の最終確認もやる。ときには戦況を読んで射出タイミングを
ずらすことだってあるよ。」「けっこう忙しいんですね。」「だがそれを入れても、発艦指示の
醍醐味はたまらないぜ。気合い入れて指示すりゃ、パイロットも士気が高まるって聞くしね。
たとえばだ・・」タッ。「射出モーションはできるだけ大きく。ガンダムからだと人間なんか
ミクロマンにしか見えないもんな。ましてやアーサは小さいからなおさら。」ぐっ!
「ワインドアップ!」ばばっ!『おおっ!』「流れるような美しいフォームだわ!」「まだまだ。
これがウエイブライダーだとまた違う。左主翼に首チョンパされないよう、最後はこう伏せる!」
バッ!「うわっ、あんなに低く!」「敏捷性・柔軟性も必要とされるポジなんですね。」
「もうひとつ質問です。昨今の主流であるシグナル方式については?」「はっ、あんな信号機で
パイロットを戦場に送り出す奴の気が知れんぜ。現場とバックアップの乖離のいい例だな。
どんないい機体でも整備と管制がなってなきゃあ、性能の半分も出せねえもんだ。ましてや
最近よくあるユニット換装式のヤツなんざ、ありゃ使い捨ても同然だ。そんなの精魂込めて
整備できっか?冗談じゃねえぜ!」『うんうん。』「ここんとこ、そこがわかってねえ連中が
多すぎるぜ。パイロットと整備士の質もどんどん落ちてやがる。機体は分身だってのが
わからねえか!」『まあまあ。』「・・ま、幸いにもガンダムファイターはそこんとこは
よーくわかってるからいいけどな。ダメなのはもっぱら軍の連中さ。」「・・というわけです。」
「よくわかったわ。手信号方式に同意します。」「ではさっそくその方針で施工を進めます。」
次の日、技術科工房。ザワザワ・・「ではこれより発艦指揮担当を決めます。学年ごとに一人づつ
代表者を決め、必要に応じてバックアップ要員を任命するシステムとします。まず一号生代表の
選出から。立候補は?」「はい。」さっ。「『寒山拾得』笙子です。」「他には?・・では
決まりね。二号生。」『はいはいはい!』さっ。「真美と蔦子さん?・・ジャンケンで筆頭を。」
『最初はグー!』ぱっ。「おし、勝ったー!」「蔦子さん、それ反則です!」
「三号生は・・あら、立候補いないの?じゃあ私やっちゃお。」「あ、ずるいです。」
「問題は四号生。技術科って、いないのよね・・」「はい、提案です。」「真美、なに?」
「お姉さまが四号生担当になり、三号生は蔦子さん、二号生は私にすれば理想的です。」
「おいおい、そうくるかよ。」「いえ、たしかに四号生に顔が利くのは三奈子様だけです。
また蔦子さんは三号生に対して気後れしない度胸あり。真美さんの言い分も一理あります。」
「そういう桂は乗ってこないの?」「私には別の役割がありますから。」「うーん・・それが
良さそうね。真美の案でいくわ。」「しゃーないか。」「代表者は明日に梁山泊で実地研修が
ありますので参加してください。なお、体操服を忘れないように持参してください。」
翌日、梁山泊。ザッザッザッザッ!「・・なにあの体操服の集団は?」「学生の研修だって。
アーサ整備長が手づから鍛えるって。」「しんどそ・・」「おーし、次は股割り!」『いででで!』
「堅ぇぞ!そんなんじゃ主翼にひっかけられて一緒に射出されっぞ。押せおせ!」『あだだだ!』
「次は数学だ。」カリカリカリ。「これが射出方程式だ。ちょいと複雑だが実際は機体形状によって
補正が必要になる。その値は自分で算出するのみ。アーサは全ガンダムの補正値を暗記してる。
いいか、蒸気圧が1lb違っても到達距離は10m単位で狂うんだ。人様が乗るもの打ち出すんだ、
根性入れて算出しろ。この演習問題で体で覚えろ!」「あの・・電卓は?」「んなもん使うヒマ
どこにあるか!みんな暗算だ暗算!」『えー!』バサバサ。「ひのふの・・2上がって・・」
「できました。」オオッ!「どれ、見せてみろ。・・おい、全問正解かよ。」オオッ!
「いいね。あんたは?」「技術科一号生『寒山拾得』笙子です。」「・・変な二つ名だね?」
「異能が『人間電算機』なので、『換算熟解く』のゴロ合わせなんです。」「あー、なるほど。」
さらに次の日。ぐったり・・「だいぶ絞られたようですね。」「かなりね・・蔦子さん、レイダーの
補正値は?」「0.88。笙子ちゃん、プロヴィデンス。」「1.65です。」「アビスは1.22・・頭の中で
計算式が回ってる気分・・」「あちこち筋も痛いです・・発艦指揮って、こんなに大変とは。」
「ご苦労様です。でもその甲斐は?」『・・あった。』「まあ、いい勉強になったのは事実ね。」
そして。ゴォォォ・・【四号生棟ドック、発艦開始してください。】「了解。さってと。」くるっ。
「ソーンカオス、射出位置へ!」ズーン!ガチャン。「蒸気圧設定よし。蓉子さま、最終確認を。」
『各部点検よし。オールグリーンよ、三奈子さん。』「了解。ソーン・カオス・・」ぐぐっ。
「ゴー!」ババッ!『いきまーす!』ギュイイイーン!ドバアアアーン!「くっ!」ゴォォォ・・
「・・ふぅ~。たしかにクセになるわこれ。人気あるのもわかるな・・つぎフラッシュアビス!」
ズーン。『三奈子、今のとってもカッコよかったわよ。』「次は江利子さま用のモーションを
お見せしましょう。何かリクエストは?」『振り向きざまでは?』「わかりました。最終点検。」
『オールクリア。』「了解。フラッシュアビス・・」ババババッ。「ゴー!」ズビシイッ!
『よっしゃ!いっきまーす!』ドバアアアアーン!「いってらっしゃいませ。」ゴォォォ・・
黒薔薇会日誌-博士-
あまり知られていないが、ガブ女には教頭がいる。
通称「博士」。だが職員室にも校内のどこでも見かけることはない。
学園長室。『「獣の数字」祐巳、入ります。』「どうぞ。」ガチャ。「お呼びですか、学園長。」
「・・教頭先生がお呼びです。」ぎょっ!「・・博士が!」「ぜひお話がしたいそうです。」
「あの・・何を?」「わかりません。ただ・・博士がそうおっしゃるなら、それだけの理由が
あるはずです。」ゴク・・「・・わかりました。」「一人では不安でしょうから、先生を一人
つけましょう。」「あ、はい、それは心強いです。」「どうぞ。」ガチャ。「・・シエル先生?」
「はい、私が付き添います。博士との面会経験もありますし・・」ブルブル・・(・・怯えてる?)
「・・今でも、恐ろしいですか。」「むろんです。・・できれば二度と会いたくなかったです。」
「?・・」「祐巳さん、事前に言っておきます。・・博士は機関きってのモンスターです。
ちょっとでも油断したら、身体のどこかを『喰われ』ますよ。」「は・・はい。」ゴクッ・・
新黒薔薇の館。「教頭先生・・か。」「祐巳・・だいじょうぶかしら。」「いちおうシエル先生が
ついててくれてるけど、博士相手じゃ気休めにもならないわ・・」こく。「無事を祈るだけだね。」
「・・あの、その教頭先生とか博士とかって何ですか?」「そっか、一号生は知らなくて当然ね。」
「ガブ女教頭にして、代行機関の最高顧問。本名不明、経歴不明・・わかってるのは犯罪歴だけ。」
『犯罪歴?』「類稀なる大量殺人犯。犠牲者は政財界・セレブ界の有名人・・いえ、変態どもね。」
「ああいう世界には権力と財力にものをいわせて非道なことを楽しむ輩が多いって知ってるね。
博士の表の顔は心理カウンセラー。その優秀さでいくらでも上客がついた・・すなわち、獲物が。」
「博士は患者である変態嗜好者を生きたまま解剖し、その臓物、特に脳を好んで食したの。」
『うえ・・』「その数はわかってるだけでも60人。・・実質はその倍ともいわれてるわ。」
「そんなに・・よく捕まりませんでしたね。」「博士はきわめて頭が良く、犠牲者の痕跡を完璧に
消してたの。ゆえに十数年は失踪もしくは蒸発としか見られなかった・・ある刑事の執念の捜査が
博士を追いつめるまでは。」「その刑事は博士に八つ裂きにされながらも、命を賭けて捕まえた。
その執念に敬意を表し、博士は全ての犯罪を自白し、裁判でも自ら堂々と弁護台に立ったの。」
「すごい・・」「むろん判決は死刑。だが・・博士の恐ろしさはここから。判決を聞き終えると、
隣の若い警務官の喉笛を食いちぎった。」『なあっ!』「むろん法廷は血の海大パニック。
そのあまりの異常さに、警察病院特別房に入れられた・・おとなしく。」「・・なんてヤツだ。
死刑を免れるために、わざと。」「そのとおり。・・悪魔的な頭脳に食人嗜好。かといって
普段は温厚な医学博士・・その仮面を完璧に使い分けた、まさに犯罪史上最悪のモンスター。」
「そんな凶悪犯がどうして機関に?」「その頭脳を惜しんだため。まさに世界の偉人に匹敵する
超天才、現代のダ・ヴィンチになれたかもしれないその頭脳をね。」「そして、博士は提案を
受け入れた。いくつかの優遇措置とともに。」「究極の悪こそ悪を知る・・毒には猛毒を。」
ローゼンクロイツ66階。ゴォォォ・・「ここが・・ガブ女七不思議の『博士の階』。」
「旧校舎では強化ガラス貼りの独房でしたが、新居はフロアまるごと与えられたそうです。」
「ウワサでは、入った人が戻ってこないとも聞きますが。」「生還率が恐ろしく低いんです。
博士の魔性に魅せられ、檻の中へ自ら・・」「シエル先生も?」「はい。・・戦慄の記憶です。
聖アントニウスへのサタンの誘惑のほうがまだマシと思えるほど、危険で甘美な・・そして、
おぞましい記憶。」スイッ。「?・・右肩に薄いアザが。」「博士に食いちぎられた痕です。
いまだに消えません・・いえ、おそらく死んでも。」「う・・」「だからモンスターなのです。」
カツカツ・・「面会はこの強化ガラスの面会席からのみです。」♪ピッ。シャルルル・・
「・・?!」ぎょっ!【ようこそ祐巳くん。おや、シエルくんじゃないか。肩の傷は癒えたかね?】
「いまは教師です。」【そうだったな。今度、真祖も呼んでくれたまえ。ぜひお会いしたい。】
「この前話したら、ぜったい嫌だと。」【真祖に嫌われるとは、名誉に思うべきかな。】
「新居の居心地はどうです?」【前の四畳半一間よりマシだな。テレビもネットもできるし、
出前も頼める。手術室も完備してて、申し分なしだ。】「前のときは、医務室でしたからね。」
【シエルくんのリジェネレイト手術は楽しかったぞ。】「代金が肉一切れ。ベニスの商人よりは
良心的とはいえますか。」【だが数秒で復元したろ。効果の確認だ。】「痛いものは痛いです!」
スッ。【御主人様、ティーをお持ちいたしました。】コトン。「あれ?・・メイドさんがいる。」
「帽子?・・博士、まさか・・」タラ・・【ああ、元は原理主義テロリストだったが、前頭葉を
少しいじって再教育した。・・客の前では帽子を取りたまえ。】【失礼いたしました。】すっ、
「祐巳さん、見ちゃダメ!」「うっ!・・」【下がってよろしい。】【ははっ。】スゥ・・
「・・なんてことを。」【心配ない、人間は大脳皮質が少々無かろうが死にはせんよ。そろそろ
味にも飽きてきたが。】「そういう問題では!」「うぷ・・ヤなもん見ちゃった・・」
【さて本題だ。シエルくん、すまないが二人にしてくれないか。】「・・」じーっ。【前の独房なら
ともかく、ここでは出したくても出せんよ。】「・・わかりました。祐巳さん、終わったら声を
かけてください。」「はい。」カツカツ・・パシュッ。「・・くれぐれも気をつけて。」パシッ。
【これで気兼ねなく話ができる。・・見せてくれないか?】ぴく。「・・ご存知なのですね。」
【ダテに教頭はやっておらんよ。】「・・わかりました。」シュルッ、ばさっ。・・バサアッ!
【なるほど。法皇庁科学部の奇跡の遺産というところか。】「狂信と愚行の排泄物ですよ。」
【ほう・・それがわかっているか。近来稀に見る優秀な生徒だ。】「話の本題に入ってください。」
【簡単な質問をいくつかしたい。明解な回答はしなくてもかまわん。・・幽音が憎いか?】
「・・憎悪と殺意が無いといえば嘘になります。でも、身を焦がすほどではありません。」
【ではジュエルズに対しては?】「牙を剥けば折る、その程度です。前者ほど憎んではいません。」
【よくわかった。質問はこれまでだ。右のハッチの中を見てみたまえ。】「?・・」パシュッ。
「・・これは?」キラリ。【ロザリオのスカーフ止めだ。着けてみてくれ。】シュッ、パチン。
【やはりよく似合う。】「これはいったい?」【説明はシエルくんにしてもらったほうが早い。
羽根をしまってから呼びたまえ。】「あ、はい。」シュィン・・キュキュッ。「先生、どうぞー。」
カツカツ・・「・・?!その聖紋は!」「博士がくださったんですけど。」「・・まさか!」
【聖勅。現時刻をもって「獣の数字」祐巳を「薔薇枢機卿(ロサ・カルディナル)」に任じる。】
「・・ははーっ!」「え?え?・・いったいなにが?」「・・睨下、よくお聞きください。」
「?!・・睨下?」「薔薇枢機卿は神罰代行機関における第一位。大司教の直属となり、枢機卿の
職権を与えられます。」【公会議とコンクラーベにはちゃんと出席するように。】「ええーっ!」
新黒薔薇の館。『ははーっ!薔薇枢機卿睨下!』ザザーッ。「あぅ・・み、皆さん、お手をお上げ
ください!わ、私は、拝礼されるような者では!」「いえ、薔薇枢機卿は全ての代行者の上に立つ
最高位。我らのような下位の者には天上人であります!」「よ、蓉子さま、おやめください!」
「・・なーんてね♪」「・・え?」『あはははは!』「びっくりしたでしょ。実は事前に学園長から
お達しがあったの。・・地位はお飾りみたいなもの、気にしなくていいって。」「・・はぁ~。」
へたっ。「どうなるかと思った・・」「でも、その聖紋はよく似合ってるわ。」「きれいだから
そのまんま付けときなよ。ま、黄門さまの印籠くらいのご利益はあるから。」「はぁ・・」
「というわけで、シエル先生も今までどおりで。」「わかりました。・・ホントに驚きましたよ。
薔薇枢機卿なんて、見たの三年ぶりですから。」「・・前はどんな方だったんですか?」
「『パンツァーフィスト』まーりゃん様ですよ。」『ええっ!』「お姉さまは博士のお気に入りで、
その実力ゆえに当然の地位でしたが・・」「・・なんかやらかしましたね。」「そのとおり。
博士に聖紋を突き返して『ちいせえな。あたしゃ既に宇宙大統領だ!』と。」『うへぇ~。』
「まーりゃん様なら言いそう・・」「博士もそんなお姉さまの性分は百も承知で、笑ってあっさり
取り下げ、代わりに『うちゅーだいとーりょー』と手書きの名札をその場で書いて渡しました。」
「やるぅ・・」「お姉さまはそれは喜んで授受し、家宝にしてるそうです。」「すごい・・
あの博士と対等に渡り合うなんて。」「むしろ博士に近い精神構造なのかもしれませんね。」
軌道大要塞「高天原」・総司令私室。『・・というわけで、祐巳さんが薔薇枢機卿に。』
「はっ、あんの人食いオヤジ、また渡す機会を伺ってたな。たく、人を食った野郎だぜ。」
『お姉さまも人食いです。』「だな。・・しかしまあ、博士の人を見る目はさすがだな。」
『はい。・・真の実力は機関一、上下級生いずれにも好かれるカリスマ、いざというとき
人をまとめる求心力、そして・・』「つまらんことをくよくよ悩まない、単純明快さか。」
『よくおぼえてますね。』「黒薔薇の中でも、ひときわ黒かったからね・・光ってもいたが。」
プツッ。・・ちらっ。「・・ロサ・カルディナル。でもあたしゃ宇宙大統領がいいのさ。」
ふたたび66階。「さすがですね。」【あの子は機関、いや、法皇庁の最高の戦力にして財産だ。
与えて当然の地位だな。】「それに、その地位を良しとしないのも・・前もそうでしたね。」
【地位に驕るような輩には、最初から渡さんよ。】「表面的には今までどおり・・です。」
【イタリア出張には同行させてやれ。】「そうですね。ローマのおいしいお店を教えましょう。
おっと、それで今回の就任祝いの引き出物です。」パシュ。・・どさっ!【ほほう、こいつは。】
モガモガ!「男を誘惑しては殺し、保険金をだまし取っていたペイペロン(淫売)です。」
【十三人だったか。ユダまで勘定してるとは、典型的な自己陶酔型犯罪者だな。ではさっそく
脳組織の造りを見させてもらおうか。】ひょい、カツカツ・・「お口に合うといいですね。」
プロムナード。学舎棟の交差部直下は二階層ぶち抜きの広大な空間で、学生たちがテーブルや
ベンチにたむろする広場となっている。「・・あ、あれ!」オオッ。『ロサ・カルディナル!』
『薔薇枢機卿睨下!』ザザーッ。(全員、最敬礼)「うぇぇ~。えらいことになったよ~。」
「うふふっ。これはもう慣れるしかないわね。」「お姉さま~。」「・・さしずめ私は格さん。」
「ならわたくしは助さんね♪」「そーゆー問題じゃ・・」「なら、わたくしが必然的に、かげ」
「・・うっかり八兵衛。」どてーん!「あたたた・・可南子さん!」「・・お約束の入浴シーン、
瞳子じゃ無理。」「せめてわたくしくらいないとね♪」ゆさっ。「・・お姉さま、キャラちがう。」
****************************************
黒薔薇会日誌-博士2-
三年前、学園長室。『センセ、入るよ。』「どうぞ。」ガチャ。「卒業式直後に呼び出しとは、
おだやかじゃないね。」「教頭先生がお呼びです。」ぴく。「・・博士がねぇ。食われるかな?」
「行ってみればわかります。・・まあ、あっさり食い殺されるあなたでもないでしょうけど。」
「ひとつ頼みがある。・・牢のカギくれ。」「・・いいでしょう。」ジャラッ!ぱしっ。
地下房。ゴォォォ・・「・・なんて鬼気。」「シエル、ここで待ってろ。」「お姉さま・・」
「なに、なるようになるって。」ガラガラ・・ガシャン!カツカツ・・「ご無事で・・」
カツカツ・・カツッ。ゴオオオオ!『ようこそ、「パンツァーフィスト」マリアンナくん。』
「まーりゃんと呼びな。あたし公認だ。」『いいだろう。・・ほう、いい目だ。ここを訪れる者は
ほとんどが怯えた小動物の目をしているが、君は臨戦状態の肉食獣の目だ。そうでなくては。』
「社交辞令はいい。・・本題に入りな。」『いくつか質問をしたい。明快な回答はせずともよい。』
「・・ジャマだな。」ジャラッ。バチン。ガラガラ。「ほう・・」ザッ。「これでいこうや。」
「ふふふふ・・面白い、実におもしろい。こんな人間は初めて見る。・・まあ座りたまえ。」
「ゴルゴ13見てないのかい?プロは座らないんだよ。」「なるほど、失礼した。では質問だ。
君はスールを愛してるかね?」「イエス。」「ならば黒薔薇会メンバーは?」「部分的にイエス、
部分的にノー。」「神を信じるかね?」「神の定義による。」「君の定義を言ってみたまえ。」
「神とは己の為すべきことをやりぬいたとき、ごく稀に付いてくるご褒美だ。とはいえ、無くても
別に怨みゃしないさ・・天運に頼るほど、人間できちゃいないんでね。」「よくわかった。」
ガラッ。チャリッ。「受け取りたまえ。」「・・薔薇とロザリオの聖紋。『薔薇枢機卿』か。」
「君のものだ。」「いらねえ。あたしにゃそんな地位は小せえ。」「ほう?!」「よく聞け。
あたしゃすでに宇宙大統領だ!」ドーン!「・・それは誰が与えたのかね?」「あたし自身だ、
文句あっか。」「ふははははは!そうかそうか、ならば文句ない!・・ならばこうしよう。」
さっ、サラサラ・・ぺたっ。「これでどうかね?」「『うちゅーだいとりょー』・・いいね。
これならもらってもいいや。」「私が付けてあげよう。」カチャカチャ・・グワアッ!びたあっ!
「・・あんまりあたしの香りがいいからって、歯型つけちゃヤですよ・・は・か・せ♪」
ぴたり。ズズズズ・・「・・これは失礼した。ついつい。」すっ・・「それがウワサの重力拳か。」
「首スジにヨダレでも垂らそうもんなら、壁のタペストリーにしてたよ。」「唾液でそれとは、
割に合わんな。・・これから代行者として機関で働くに、その地位は実に役に立つだろう。」
「はっ、いずれにせよ法皇庁の番犬、なんも変わりゃしないさ。」「かもしれんな。しかし、
さほど長くはここにはいないだろう。」「?・・なんで?」「機関ごときで君は飼い慣らせん。
私のように自らの羽根を食わないかぎりは。」「・・学園長になら、飼い慣らされてもいいと。」
「だから私はヴァチカンでなく、ここにいるのさ。」「・・博士がそれでいいと決めたこと、
あたしゃ何も言うこたないね。」「君はこうならない。・・いずれもっと大きく羽ばたくはずだ。」
「・・もう帰るよ。」すっ。「カギはちゃんと閉めていきたまえ。看守が気の毒なのでね。」
カツカツ・・ガシャン。「お姉さま、ご無事でよかった!」「だいじょうぶだっていったろ。」
キラキラ。「?・・その聖紋はもしや!」「どうだ、宇宙大統領さまの勲章だぞ!」「え?え?」
一年後。カツカツ・・ぴたっ。『ようこそ、ナディア・コープランド。・・いや、こう呼ぶべきか。
ナイトメア。』「はじめまして。・・博士。」『用件をお聞きしよう。』「人材を捜しています。
デビルガンダムに立ち向かえる強さと・・牙を心に持つ者を。」『ほう・・狂犬なら二匹ほど
オススメがいるぞ。』「狂犬、いいですね。ぜひ見てみたいです。」『シスター式、本部に
あの二人を送らせてくれ。』「いいでしょう。すぐに連絡します。・・ときにどのような職種に?」
「戦闘団の長レベルに。」「ならば文句なしです。二人もさぞ喜ぶことでしょう。」カツカツ・・
『・・君も私と同じだな。』「否定はしません。そちら側にいたのは私かもしれませんね。」
『ごくわずかな差だけだ。だが悪も極めれば美学となる。君はその美学を確立したようだな。』
「いえ・・どんなきれいごとを並べようが、人殺しは人殺しです。だからこう考えます・・
どうせなら、美しく殺そうと。」『すばらしい。ぜひ君の脳組織を見てみたいものだ。さぞや
美しいことだろう。』「真っ黒かもしれませんよ。」『もしもいつか死んだなら、脳だけでも
私のもとに送ってほしい。』「そのときは跡形もありませんよ。・・それが暗殺者の宿命です。」
数日後、ふたたび地下房前。ザッ。「あんたがナイトメアかい。」「世界最高の暗殺者か~。
実物にお目にかかれるとはね。」「・・代行者『パンツァーフィスト』と『デウス・マキナ』。
さすがに知ってるわ。」「ほっ、そんなに有名?」「ええ。・・任務と手段が逆転してしまう、
史上最凶の代行者。一年目で200人も殺したそうね。」「えーと・・そのくらいだっけか?」
「食べたパンの数なんか、おぼえてるわけないでしょ。」『望みどおりの人材だと思うが。』
「いいわね・・用件だけど、私のもとで働かない?」「・・一考に値する提案ではあるか。」
「殺すたんびにお上に怒られるのも、いいかげんヤになってきたしね。」「いいだろう。ただし、
条件がある。・・一手所望。」「あら、先に言われちゃった。・・使えるかどうか味見しようかと
思ってたとこなの。」「ほう・・あんたも同類、か。外でやるかい?」「仕事で場所を選ぶの?」
「ここでいいってわけか。・・さすがだなっ!」ドオンッ!ボオッ・・ドゴオオオーン!
「・・そこ!」ババッ!ドオンッ!バゴオオーン!「速い・・?!」ばっ!♪ピィン。ぴたっ!
「・・やるわね。」「さすがナイトメア、ウワサ以上の動きだったよ・・」ギュォォ・・
『双方手詰まりだな。幽璃華くん、ブレイクさせてやれ。』「いい?いっせーの。」すっ。
「ふむ、いいわね。これなら雇ってもいいわ。」「いいね。これなら雇われてもかまわないぜ。」
『決まりだな。幽璃華くんの能力はここで試すようなものではないしな。』「印鑑いったっけ?」
数時間後。『・・というわけで、二人は登録抹消だ。・・いなくなって一番ホッとしてるのは
局長ではないのかね?・・まあいい、また優秀な新人を送ろう。・・では。』♪ピッ。
「予言どおりでしたね。」『必然、だな。まあスカウトがナイトメアだというのは驚いたが。』
「望みうる最高の雇い人ではありますね。彼女なら二人をうまく飼い慣らせるでしょう。」
『にしても、だ・・デビルガンダムの脅威いまだ消えず、か。』「黒幕が幽音なら当然でしょう。
何も解決してないに等しいですよ。」『今からそれに対処する組織、か。機関はどうする気だ。』
「何も。・・どこかでDG細胞の侵食による宗教テロでも発覚しないかぎり。」『・・ならば、
そうしよう。幽音に連絡はとれるか。』「なんとかしましょう。・・いい案ですね。中途半端な
新興宗教をDG汚染し、機関につぶさせる。さぞや上層部も喜ぶことでしょう。」『マッチポンプも
いいとこだが、泡沫教団の掃除ができる。ついでに原理主義系も汚染しよう。』「同意です。」
****************************************************
黒薔薇会日誌-チャオ・ソレッラ!-(完全版)
学園長室。「ええっ?!イタリア出張ですか!」「そうです祐巳さん。薔薇枢機卿の就任報告を
法皇睨下にするのが目的です。」「うわ・・アタマ痛くなってきた。」「ほんの二泊三日ですよ。
そうだ、誰か同行者を付けましょう。祐巳さんの好きな方を選んでいいですよ。」「・・はぁ。」
新黒薔薇の館。『イタリア?!』ガヤガヤ!「で、お姉さまにぜひ同行」「パス、ですわ。」
「なんで?!」「だって私、飛行機嫌いなんですもの。」「飛行型のレイダー乗ってるのに~。」
「あれは自分で動かしてるからいいの。」「あるある。自動車でも自分で運転しないと酔う人って
けっこういるよ。」「あぅ~・・お姉さまならラテン語も話せるから頼りにしてたのにな~。」
「いい機会だから下級生が行きなさい。」「とはいっても・・」「・・ラテン語は必修だけど
本番で使える自信がないわ。」「一号生もご同様です。」「・・はい、提案。」「可南子ちゃん?」
「瞳子が適任かと。」ぽん。「・・ええっ?!」「瞳子ならネットでいくらでも旅に必要な情報を
引き出せます。また会話も、辞書翻訳ソフトを使えば何とかなるでしょう。」「なるほどな。」
「え、でも、その!」わたわた。「瞳子ちゃん、お願いできる?」「う・・わかりましたわ。」
「心配しなさんな。四号生は修学旅行で経験済みだから、少しはアドバイスできるよ。」
「ではイタリア旅行のツボその1。」「水道水は飲めないのは海外の常識だけど、イタリアは
特にひどいわ。石灰分バリバリで、長年飲んだら身体が石化するくらい。」『うへぇ~。』
「アクア、すなわちミネラルウォーターには炭酸入りも普及してるの。個人の好みの問題だけど、
味はかなりきついからよく見て買うこと。」「まあコーラでも買っとくのが無難かな。」
「その2。レストランでは基本的にメニューは無いわ。」「よほどの観光地ならともかく、一般の
店では何を食べるか事前に決めて行ったほうがいいわ。ネットで何種類か選んでメモっておいて、
どれができるか聞くのが攻略法。」「軽食ならそこらにあるバールでサンドでも取るのがいいよ。」
「その3。公共交通機関では、いわゆる場内・車内アナウンスは無いので、どの便にいつ乗って、
どこで降りるかは自己責任よ。」「ローマのテルミニ中央駅でさえ、プラットホームすら無いよ。」
「どれも事前にしっかり調べておけば問題ないわ。」「基本はあくまで自己責任なんですわね。」
「その4。ローマ市内で私服の警官に声かけられることがたまにあるけど、それ詐欺師だから。」
「対策はカンタン。『記念写真をご一緒に』とすれば、面が割れるのを嫌って逃げるから。」
「あちらも生活かかってるから、暴力沙汰はかわいそうよ。穏便にお引取りねがうのが一番。」
「しつもん。もしそれでもしつこかったら?」「自己責任。」「・・自己責任、ですね。」こく。
ローゼンクロイツ露天甲板。『本部連絡便、まもなく発艦します。』「では、行ってきます。」
「おみやげを楽しみにしててくださいませ。」『いってらっしゃーい。』キュゴオオオーッ!
ゴォォォ・・「行ったね。」「学園長、ホントに謁見だけなんですか?」「気づいてました?
実は法王睨下暗殺計画が進行中との情報が入りまして、『第七』と『冥王の吐息』には既に
先行してもらってます。」『なにいっ!』「その最新情報では、どうやらDG細胞を有する組織の
関与が確認されました。至急応援が欲しいとも。」「シエル様とみなみ様が、てこずる程の・・」
「なら瞳子では!」「だいじょうぶですよ。・・『ソロモンの眼』は必ずや役立つでしょう。」
レオナルド・ダ・ヴィンチ空港。ゴォォォ・・カツッ。「ここがイタリアか~。う~ん!」
「んむ~!シートが広かったのでエコノミー症候群にならずにすみましたわ。」コキコキ。
『ヴォン・ジョルノ、ロサ・カルディナル。』『え?』くるっ。「・・シエル先生?!」
「それに・・『冥王の吐息』みなみ様!」「ようこそイタリアへ。」「歓迎するわ。」
「な、なんでお二人がここに?」「それは道すがら話しますね。」「まずは車へどうぞ。」
どん!『フェラーリ!』「みなみの愛車です。」「さ、乗ってのって。」「・・やっぱすごい。」
ローマへの道。ブロロロ!「・・というわけで、法王睨下を害せんものとする組織の撃滅が
今回の任務です。」「敵はMS戦力も有してて、シエル様のイスカリオテだけでは戦力不足なの。」
「ビーストガイアは別便でもう送られてきてます・・聞いてます?」カチコチ。「あ、あの、
300kmは出てるんですけど・・」「ひえええ・・」「あ、だいじょうぶよ。見てのとおり片側
6車線もあるから、ちょっとやそっとじゃぶつかったりコースアウトしたりしないわ。」
「で、でも~・・」「ねえ・・」「♪・・シートベルトしっかり締めて。」クン。ギャルルルルッ!
『うわわわわーっ!』「あらあら。」「カウンターステア。」クン。ぴたっ!「お見事。さすがは
みなみですね。」「伊達に特A級とF1ライセンスは持ってません。」『はわわわ~。』♪ピヨピヨ。
ネオヴァチカン。カツカツ・・「ここが法皇庁・・」「荘厳ですわ・・」ピタッ。「ここです。」
「『ロサ・カルディナル』をお連れしました。」『どうぞ。』ギィィィ・・「さ、中へ。」
カツカツ・・「おお・・これが新たな薔薇枢機卿ですね。」『!・・法王睨下!』ばっ。
「楽にしなさい。ようこそネオヴァチカンへ。お会いするのを楽しみにしていました。」
「光栄に存じます。」「睨下、かねて打ち合わせの『イスキリ』計画、実行に移します。」
「本来ならば私自身で悪魔に立ち向かうべきですが・・」「生きて人々に尽くすことこそ、
主の御心かと。」「・・わかりました。よろしくお願いいたします。」『・・??』
翌日、サンピエトロ広場。ワァワァ・・『全世界の信者の皆さん、デビルガンダムこそ
主の遣わされた試練です。主義や人種の壁を取り払い、一致団結してこの巨大な悪魔に
立ち向かうことこそ、主の御心です。』『AMEN!』ドキューン!ガクッ。『法王さまが!』
『狙撃だ!』「スイス傭兵団は睨下の周りをかためろ!ヨハネ騎士団は犯人の捜索を!」
ワアワア!「・・任務完了。」チャッ。パタン。カツカツ・・すすっ。(尾行よ。)(はい。)
♪ピピッ。『狙撃手を追尾中。警戒態勢解除ですわ。』「・・いたたた。」むっくり。
「やれやれ、影武者も楽じゃないです。」『なっ?!・・眉間に命中してるのに?』
「このくらいケガのうちにも入りません。」グググッ・・ポトッ。『・・さすが「第七」。』
「もう安全です、睨下。」「ごくろうさまでした。」ばさっ。「法衣をいただきます。」ばさばさ。
「早替わり完了。」「もうよろしいです、皆さん。」『ははっ。散れ。』ばばっ。オオッ!
「みなさん、だいじょうぶです。主のご加護のおかげで弾は逸れました。」ワアアアアーッ!
(・・では私は三人を追います。)(無事を祈ります。そして悪魔の手先に神罰を。)(AMEN。)
アッピア街道。ブロロロ・・「瞳子ちゃん、ロックオンできてる?」「バッチリですわ。」
カタカタ。(持参の多機能ノートパソ)「機関所有の多目的衛星『ベツレヘムの星』で追尾中。
10km先を南に移動中ですわ。」「ナポリ方面か。・・もしやガリアーノ大司教?」「誰です?」
「半年前の政変で失脚した急進派の黒幕。現法王および法皇庁に恨みを抱き、マフィアとの
繋がりもある・・瞳子ちゃん、ナポリ教区の金の流れ、見れる?」「やってみますわ。USB接続。」
シュルルッ、パスッ。「ダイブイン・・」「・・どうかな?」「・・見つけた!ナポリ一帯を
仕切るドン・リカルノの子会社に数十億ミラが動いてますわ!」「ビンゴ。次はドン・リカルノの
アジトよ。」「これは簡単ですわ。・・ベスビオ火山の麓。最新衛星写真で確認・・ん?」
「どうしたの?」「・・隣接する山麓に、人為的に手を加えられた形跡がありますわ。」
「!・・もしやそこが本拠か。」「もっと詳しくわからないかな?」「・・よし。」カタカタ。
『ベツレヘムの星』、座標セット・・赤外線映像・・キター!」ぱぱっ。「うわ、真っ赤っか。」
「マグマより低い熱源反応あり!」「そこが敵本拠よ!」「瞳子ちゃん、大手柄!」ぱちぱち!
「こうなれば追跡はもう無用、追い越して先行待機しましょう。」ダン!ブロロローッ!
「あと4km・・2km・・あれ!」ヒュン!・・「お先に失礼ー♪」「目ぇ丸くしてるわね。」
ベスビオ山麓。ブルルル・・「入った。」「ここで合流よ・・来た。」・・ゴオオオオーッ!
ズズーン。パシュ、すたっ。「追跡ごくろうさま。はい、差し入れです。」どさっ。ばさばさ。
「サンドイッチとカプチーノですか。」「途中のバールで買ってきました。さ、めしあがれ。」
『いただきまーす。』ぱくぱく。「あれ、シエル様は?」「私はこれですよ。」ガサッ。
「・・カレーパン?」「ローマの日本料理店に特別にお願いして作ってもらってます。」ぱく。
「そんな手間かけずインド料理店で済ませばいいっていうのに。」「ルウが全然ちがいます。
やはりハ*ス食品のジャ*辛口じゃないと。」「イタリア来ても、そこまでこだわりますか。」
そのころ、ローゼンクロイツ。「ベスビオ山麓に敵本拠を確認しました。」「よろしい。」
シャッ!『上申!』「おや、黒薔薇会の皆さん。」「ローゼンクロイツ出撃を要請します。
これは黒薔薇会のみならず、全校生の合意事項です。これが連判状です。」ばさーっ!
バラララーッ!「・・確認しました。けど今からではどうがんばっても間に合いませんが。」
【いや、手は一つだけある。】はっ。・・ガラガラ。(拘束箱)『教頭先生!』「ほう、博士が
ご出馬とは。」【私の血判もそこにあるよ。】「妙案がおありで?」【フィアトルクスだ。】
ふたたびベスビオ山麓。「これがマフィアのサーバーからハックした秘密基地の見取り図ですわ。」
「大きなMSドックですね。一個大隊90機は入ります。」「機種は陸戦型デスアーミィのみか。」
「いえ、もう一体、大物がいますわ。この赤外映像を。」ぱっ。「・・なにこれ?こんな形の
MSなんて知らないよ。」「二本角のサイコロですね。」「MAにしては大きさが中途半端ね・・」
「3DCGに起こし、ライブラリ照合してみますわ。」カタカタ。ぱぱぱぱっ、♪ピピッ。
「最も類似の機体・・ええっ?!」『なに?・・うっ!』「・・獅王争覇グランドガンダム!」
「デビル四天王・・なぜここに?」「いえ、DG細胞ならありえます。通常型MSに感染させ、
野放しに進化させたのでしょう。」「デスビーストはともかく、これはかなり厄介ね・・」
「・・私におまかせください。」『祐巳ちゃん?』「こういうのの相手こそ、薔薇枢機卿
(ロサ・カルディナル)の領分。地位に見合った働きはします。」「わかりました。作戦ですが、
私は指令室を落します。」「では私は生活ブロックを。」「ドックで暴れて一機でも減らします。」
「瞳子ちゃんはこの合流ポイントで作戦管制を。」「了解ですわ。」「では。」『AMEN。』シャッ!
ローゼンクロイツ。【作戦名「ヴォアチュール・リュミエール」。まず各ガンダムに防御法衣を
付けてもらう。三奈子くん。】「では説明します。これが装甲繊維『サント・シンドーネ』に
対光学兵器表面処理を施した、ガンダム用補助装甲衣『神衣(カムイ)』です。」ぱっ。オオッ。
「全身をすっぽり覆う形になるのね。」「必要なら爆発ボルトで各部ごとに除装できます。」
【発艦後、所定の座標に滞空。そこへフィアトルクスを当てる。】「それではガンダム自体が
蒸発してしまいます!」【絞りは最大にするのでその心配はない、欲しいのは光圧だけだ。
これを受けて機体は高速射出され、イタリアまで届く弾道軌道を飛ぶ。】「光のカタパルトか。」
【むろん問題もある。この急加速は瞬間最大10G、普通の人間ならよくてブラックアウト、悪ければ
心臓麻痺で即死だ。きわめて危険な賭けとなるが、他の手は無い。・・どうするかね?】
『・・。』こく。「我らの命、我らのものにあらず。」「ただ主の手に委ねるのみ。」『AMEN!』
【よろしい。技術科は取り付けを急いでくれたまえ。】「もう突貫工事にかかっております。」
【射出座標は私が算出し、管制室に上げる。各機の詳細な設計データを私の端末に送るように。】
管制ブロック。「バカもの!法王は生きているではないか!」「そんな?・・たしかに眉間を
貫いたのをこの眼で!」「もういい!・・やはりMS部隊でネオヴァチカン侵攻しかないか。」
【・・我ら代行者主の御心に従い聖なる剣を振るい悪魔とその使徒を葬るものなり】はっ!
「なんだ?」「あ・・あの聖句は!」『邪教徒に速やかなる死を背教者に苦痛に満ちた死を』
「・・来る!」「誰だ!」ドカドカ!「バカ者、出るな!」『ぐはあああっ!』・・ヨロヨロ。
「うっ!・・」「黒い・・尼・・」シュン!ズル・・ゴトン!コロコロ・・「く、首が!」
「そこだ!」チャッ、ドキュンドキュン!バゴバゴッ!「強装弾だ、壁などぶち抜くぜ!」
カッ!バゴオオオーン!「ながっ!・・」『こちらもご同様です。』「・・胴体に大穴が!」
「な・・なんじゃこりゃあっ!」どさっ!「ひいいっ!」ユラ・・キュパッ。「ヴォーナ・セラ。
ガリアーノ大司教睨下。」「・・シスター・シエル!」「やはりあなたでしたか。いいかげん
逆ギレも度が過ぎましたね。法王聖下に害をなし、あまつさえDG細胞まで弄するとは。」
「も、もう遅い!デスアーミィ80機とグランドガンダムで、必ずやカソリックを我が物に!」
「状況がわかってませんね。」ヒュババッ!ドカドカッ!「はがあっ!」「火刑法典。」
ボン!ゴオオオーッ!「うぎゃあああーっ!」「テルミット・ナパーム内蔵、数千度の高熱で
骨まで灰になります。まあ、皮下脂肪が豊富そうなので、火力はじゅうぶんすぎるかもです。」
生活ブロック。ヒタヒタ・・「いちいち回るのも面倒ね。・・非常ベルか。」バン!ぱりーん!
♪ジリリリ!『・・なんだ?!』『火事か!』ドカドカッ!「はーい、もっとかたまって。」
ふっ・・ズババババッ!『なっ?!・・』ピリッ・・ブシャアアアーッ!ボトボトッ!「十人。」
『あそこだ!』『撃て!』グラタタタタ!「機関銃か。」ふっ・・ギュギュン!チュチューン!
『なんだ?!・・弾が曲がった!』「真空刃で空気密度が変わり、弾道が曲がるの。そして。」
ザキザキィッ!『ぎゃはぁっ!』「無数の真空刃はもともと攻撃のためよ。」ブシャアアアーッ!
MSドック。・・シュタッ。(やっぱりデスビースト。・・こんなに。)シュシュッ・・すっ。
ぴっ、(C4チューインガム。)クチャクチャ。(アクティブ。)プッ。ぺたっ。(爆発まで10分。)
シャシャッ・・たっ。(!・・これが。)ドォォォ・・(グランドガンダム・・ん?)ぴたっ。
(あれは・・ドン・リカルノ。)『・・というわけで、核砲弾の積み込みは完了しました。』ぎょっ!
(核砲弾?!)『よろしい。これで大司教もさぞやお喜びだろう。』(なんてものを・・ヴァチカン
のみならず、ローマ全体まで巻き込むつもりか・・)♪ジリリリ!『むっ?』『非常ベル?』
ドカドカ!「ドン、一大事です!管制室で出火、生活ブロック応答なし!」「なんと!大司教は?」
「そ、それが・・管制室内に二つの遺体、いえ、灰の塊りが。」「・・身罷られたか。まあいい、
クライアントが死んだとあっては、この軍団はワシが引き継ぐしかないのう。」「御意。」
「ふふふ・・労せずしてこれだけの戦力。ワシがイタリア、いやヨーロッパ全土を掌握するに
実に役立つだろう。」『そうは問屋がおろさないよ。』シュン、ズバシャアッ!『ぐがっ!』
ザシャッ!「ニ殺。」・・ブシャアアアーッ!ドサドサッ。「な・・何者だ?!」「法皇庁・
神罰代行機関。ドン・リカルノ、主の御名において成敗。」「・・しゃらくせえ!」チャッ!
シュピィン!・・ズルッ、ボトッ!「!・・手がああああーっ!」「大司教がステュクス河で
お待ちかね。同行二人ともいうし。」「く・・くそお・・」・・ギン!オォォォ・・「なに?」
「・・グランドガンダム?」パシュ。ビュルルルッ!「コクピットから触手が!」ギリギリッ!
グン!「うおおおおーっ!・・」「ドンを・・引き込んだ?」ビュルルッ!ズボズボッ!
「うがああああーっ!」「・・生体ユニットに同化した!」オオオオ!ググッ・・ズシーン!
合流ポイント。ゴゴゴゴ・・「な、なに?」ドバアアアーン!・・オオオオーッ!「ゲゲッ!
グランドガンダム!・・皆様?!」・・シュタタタッ。「やれやれ、えらいことになりました。」
「人が動かしてるよりタチ悪いわ。」「おそらくドン・リカルノの負の感情に反応したかと。」
「DG細胞にとって最高のごちそうですものね。」「・・あっ、あれを!」・・ザッザッザッ!
「デスビーストまで・・グランドに共鳴したのね。」「・・あと3,2,1。」ドカドカーン!
「十機ほどにC4プラスチック爆弾を。」「チューインガム偽装型の、噛むと10分後に時限起爆する
やつですね。」「一枚でMS一台破壊できる強力爆薬だものね。」「でもあの数では、ぶっちゃけ
焼け石に水ですわね。」「もう一つ大事なことが。・・グランド、核搭載してます。」『なっ!』
「砲弾型のようですので、戦術核レベルかと。」「それでも街ひとつじゅうぶん吹っ飛びます。」
「追い詰めると無差別砲撃・・ですね。」「はい提案。」「?・・祐巳さん、どうぞ。」
「授業で習ったかぎりでは、核兵器はひとつ起爆手順をしくじると爆発しないんですよね。」
「そのとおりよ。あれだけ小型ならプルトニウム型、爆縮タイプ。爆縮のタイミングがずれれば
核分裂は起きないわ。」「ならば発射前に損傷させれば。」「なるほど・・具体的には?」
シャッ、ザシャッ!・・オオッ?!「敵はこちらですよ。」オオオオーッ!ザッザッザッ!
「来ました団体さん。・・今のうちに。」『了解です。』「みなみ、サポートよろしく。」
「おまかせを。」タッ。ザッザッザッ!「これほどの大物は切った経験ないけど、なんとか
切ってみせましょう。」スゥゥ・・フヒュッ!ズバシャアアアーッ!ザキザキザキィッ!
「あらあら、一撃で6機輪切りですか。やるものです。」「思ったより歯ごたえ無いわね。」
「生身に撃墜王取られちゃ立つ瀬がないですね。黒衣聖母!」シュバババッ!ドカドカドカッ!
「爆葬。AMEN!」ドカドカドカーン!・・ザッザッ!「こりゃきりがないですね。」ぽりぽり。
ローゼンクロイツ。「DG反応、急上昇!」「グランドガンダムの暴走・・最悪の事態ですね。」
【一番手、所定の座標に。もう始まってるぞ。】「祥子、ダークレイダー、入ります。」ぴたっ。
【レーザー設定よし。フィアトルクス、発振まで3,2・・】「・・。」ぐぐっ。【放射。】
カッ!ドオオオオーン!「はぐっ!・・」ギュイイーン!【加圧終了まで3,2,・・カット。】
フウッ・・『祥子、生きてるの?』「・・ゲホゲホッ!・・な、なんとか。」『よかった・・』
「ま、まあ祐巳と乗った絶叫マシンよりはラクでしたわ。」『どんなマシンなんだか。』
【これで安心だな。いちばん華奢な祥子くんがクリアできたから。】「・・お試しマンですか。」
【あとのメンツはより頑丈なので、心配ないだろう。】『・・なんかカチーンとくるけど。』
【到達まで80秒だ、着いたらすぐに参戦できるよう準備を怠るな。】「各部再点検、始めます。」
シャシャシャッ。「まさか生身で接近するとは思わないよね・・」ザッ。オォォォ・・
「でかっ。核砲弾は・・右肩内部。」ターン!・・タタタン!ウォッ?「もう遅い!」ジャキン!
「ハッチ両斬!」ズバシャッ!「核砲弾みっけ。・・!」ギュルルルッ!「やっぱり来たね、
テンタクルアーム。・・はっ!」ばっ!グシャアアアッ!「よしっ、これで砲弾は使えない!
ガイアアアーッ!」♪パチン!・・ゴオオオーッ!「はっ!」スパッ!・・ビシイッ!
ドドーン!オオオオーッ!「・・征くよ、グランドガンダム!」ダッ!「はああああーっ!」
ズバシャッ!「・・ガイア?!」ズバババッ!「ついに始まったのね・・けど薔薇枢機卿でも
グランド相手にタイマンは手に余るわ。」「急いで応援に行きたいのはやまやまですが・・」
ザッザッ!「このデスビーストの壁をどうにかしませんと。」『♪村雨の露もまだひぬまきの葉に
霧たちのぼる秋の夕ぐれ・・村雨!』・・シャアアアアーッ!ズドドドドッ!ドカドカーン!
「ブレードカードの雨?」「この技は百人一首・・まさか!」・・ゴオオオーッ!「祥子!」
「お待たせしました、援軍ただいま到着ですわ。」ジャキン、ドドーン!「頼んでませんよ。」
「けどどうやって日本からここまでこんなに早く?」「それは後ほど。今はこのザコの皆さんを
排除するが急務ですわ。沖つ白波!」ヒュヒュン!ズバババッ!「でも一人増えたところで・・」
『あら、お姉さまらしくもないですね。』・・ヒュバババッ!ドガドガッ!「イバラ槍?」
『黒薔薇会諸法度、お忘れですか?』ピィィィーッ!ズパパパパッ!「レーザーメス!」
『第三条・戦うときはみんなで戦う!』ピシャアアアーン!バリバリバリ!「雷撃・・やはり!」
キラリ・・ゴオオオオーッ!『黒薔薇会四号生、助太刀いたす!』ドドーン!「あなたたちまで!」
「いいえ、まだまだ。」・・ゴオオオオーッ!『黒薔薇会、ここに全員集合!』「乃梨子さん!」
「まもなくローゼンクロイツも追いつきます。」「やれやれ・・予想外の大戦争になりました。」
「私・レイダー・ドレッドノートはガイアの応援に。他はザコ掃除を。」『AMEN!』シャッ!
ドンドンドン!ドカドカーン!「ちいっ!バカスカ撃ってきやがる!」ドン!ギュルルルッ!
「捕まるわけないでしょ!」ゴロゴロッ、ドガドガッ!「上段スキあり!ビーストモード!」
くるっ、ダッ!ターン!「その首、もらった!ウイングセイバー!」ビィン!グオオオオ!
ギュオオオッ!「グランドホーン?くっ!」ガキイイイーン!バジジジ!「・・止められた!」
ブオオオオッ!ガシャッ、ズドオオオーン!「がはあっ!」メキメキメキ!「ちいいいーっ!」
「祐巳!」「あのままではグランドに踏み砕かれてしまうわ!」「一斉攻撃で排除しましょう!」
「疾れ、ゴルゴダの薔薇!」ビュルルルッ、ギリギリッ!バリバリバリ!「・・なんて厚さ!」
「デスクロス、いけっ!」ダギュルルルッ!ズドズドズドッ!「デスクロスフォーメーション!」
ジャキッ!キュドドドッ!ドカドカドカーン!・・グオオオオーッ!「?!・・効いてない!」
じーっ・・!「弱点見たり!」ぴっ。「♪山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草も
かれぬと思へば・・枯眼!」シュパパッ!ぺたぺたっ。カッ!ドカドカーン!オオオオーッ!
「うまい!メインカメラなら強化もしようもないわ。」グラッ・・「脱出!」ゴオオーッ!
ザザーッ。「祐巳、ダメージは?」「肋骨2本ほど。もう自己治癒にかかってます。」シュゥゥ・・
「ならまだ戦えるわね。」「お姉さま、あれを?」「そう、黒薔薇会秘伝・究極スール攻撃よ。」
「かしこまりましたわ。祐巳、可南子ちゃん、わかる?」「鍛錬はしてあります。」「スールの
必修奥義ですから。」「いくわよ、フォーメーション!」『AMEN!』ザザッ!『はああああーっ!』
「地縛!」・・ボゴオッ!ギリギリギリッ!「祥子!」「♪長からむ心もしらず黒髪のみだれて
けさはものをこそ思へ・・みだれ髪!」ブワアアアーッ!ズパパパッ、ドサドサッ!「グランド
ホーン寸断。祐巳!」ダッ!「ダブルホーンランサー!」ジャキッ!「うりゃあああーっ!」
ズドドッ!「デスロール!」ギュルルルッ!ブチブチィッ!「首級とったり!可南子ちゃん!」
「デスクロス突入!」ゴバアッ!ビュルルルッ!ズボズボッ!「内部からなら。カウンター・
デスクロスフォーメーション!」ズズゥン!メコッ、メコボコボコッ!・・ドカアアアアーン!
『やった!』ドサドサドサッ!「さしものグランドもバラバラよ。」「終わりました、わね。」
ドドドーン!・・ザシャッ!「デスビースト掃討完了。」「グランドも片付いたみたいね。」
「思ったより歯ごたえなかったかしら。」「・・いえ!」『令?』「・・悪気はいささかも
衰えてはいません!」「でも令ちゃん、みんなバラバラじゃ・・えっ?」ピクッ、ズズズズ・・
「・・デスビーストの破片が動く?!」「あっちのグランドのほうに動いていきます!」
ブオオオオーッ!『うわっ!』「これは・・もしや?」『名無ちゃん?』「このデスビーストが
あのグランドから分裂したものとすると・・復元のため呼び寄せている!」「DG三大理論ですか。」
「そうか、新宿では最終段階にデスアーミィを同化していたわ・・!」はっ!『まずい!』
ゴオオオーッ!「なに?!」「破片が・・集まる!」ピシピシピシッ!「・・グランドの残骸に
破片が・・集結?!」パリパリパリ・・「ま・・まさか!」・・・ギュルルルッ!ドバアアアーン!
『・・デビルガンダム!』ズシーン!「こ・・これがデビルガンダム!」「・・なんておぞましい
ガンダム、いえ、怪物!」「これが・・真の敵。」「・・まさに悪魔のガンダム。」タラ・・
メコメコッ、ボコオッ!「?!・・あれは壊したはずの核砲弾!」「同化して再生したんだ!」
「動く核爆弾・・絵に描いたような最悪の事態ね。」「だめだこりゃ。こんな大バケモノ、
個々でどうこうできるもんじゃんないよ。」「聖のいうとおり、総力を結集しての全力攻撃で、
一撃でDG細胞全てを滅殺しないかぎり、勝利はありません。」「けどいったいどうやって?」
「ひとつだけあります・・代行者贖罪奥義、『最後の晩餐』。」ぎょっ!『・・贖罪奥義!』
「け、けど、あの奥義はセンターに位置する者の命を引き換えに打たれるものです!」
「そうです。ゆえに、センターは私がやります。」「・・お待ちください!」『祐巳ちゃん?』
「その役目、このロサ・カルディナルに。」「祐巳?なんてこと!」「私ならシエル様より
生存率は高いはずです。」「う・・」「けど失敗すれば、パワーの逆流で肉体は砕け散ります。
それでも・・」「・・これはロサ・カルディナル勅命である!」はっ。ザザッ!『AMEN!』
ザザザッ!「ガイアを囲む形で12宮座に配置してください。・・はいそこもう少し右へ。」ザッ。
「聖法陣完成。ロサ・カルディナル!」「全機最大出力!仕掛けます。SEED発動!」パキィーン!
「Nehmet,esset,das ist mein Leib(取りて食らえこは我が体なり)!」『Ich will dir mein
Herze schenken(我ら汝に心を捧げん)!』カッ!『Cenacolo Vinciano(最後の晩餐)!』
「最後の晩餐・・聖法陣により周囲の気を収集・増幅、中心に立つ者を強大なエネルギー弾に変え、
いかなる物質も原子還元する・・けど!」ゴオオオオ!「弾丸となった者はエネルギーの嵐に
翻弄される・・生還率わずか1%。いかにロサ・カルディナルといえども、1ケタ以下のはず・・」
ゴオオオ!「(くっ・・予想外にきつい。)可南子ちゃん!」「は、はい?」「『あれ』貸して!」
ぎょっ!「ま・・まさかアレを?!」「急いで・・早く!」「・・わかりました。」さっ、
パシュッ。「投げます!」ビュッ!パシュッ。「ありがとう!」ぱしっ。「主のご加護を・・」
♪ピピッ。ぱっ。『可南子、なに投げたの?』「・・エレナの聖釘。」【なんだって!】ぱぱっ。
『あ、あの玉砕の聖典を!』『な・・なんてことを!』『これじゃ生還率ゼロになるじゃない!』
『・・みんな、落ち着いて。』『祥子さま?』『祐巳に考えがあってのことよ。・・私たちはただ
祈り、信じるしかない。』『・・・・』『・・ひとつ妙案があります。』『シエルさま?』
メキッ、バリバリ!・・チャリッ。「エレナの聖釘・・これしかない。」ぱっ。『祐巳さん。』
「シエルさま?」『これが終わったら、機関からボーナスが出ますから、ローマはスペイン坂で
思うぞんぶんブランドもの買いあさりましょ♪』「ええっ!・・よーし、やる気1200%!ふんっ!」
グン、ドスッ!ズズズズ・・「神力注入・・これだ!」カアアアーッ!バササアッ!『おおっ!』
「光の羽根が・・12枚に!」「・・そうか!祐巳ちゃんはもともと神の血統、聖釘のパワーに
適応性がある。」「いわばスタミナ注射したわけか~。」「・・ぶっちゃけ、ドーピングね。」
「いくぞおおおーっ!」ドーン!グオオオオーッ!・・ゴバアッ!「デビルフィンガー!」
グワアアッ!「そんなものがなんになる!」バキバキバキィッ!グギャアアアアーッ!
「Er ist des Todes schuldig(彼は死に価す)!」カッ!・・ドバシャアアアアーッ!
『うわあああーっ!』「光の・・洪水!」「全てを光子に還元している・・」「・・祐巳!」
エーゲ海上、ローゼンクロイツ。ズズズズ・・『おおっ!』「ナポリ方面に光の御柱が!」
ガヤガヤ!「み・・見て!」・・バサアッ!「光の・・大天使!」『・・AMEN!』ザザッ!
「・・使ってしまったのですね、『最後の晩餐』を。」【Wahrich,dieser ist Gottes Sohn
gewessen(げにこの人は神の子なり)・・そう悲観的でもないと思うが。】「その根拠は?」
【現ロサ・カルディナルは無為に命を捨てるほど狂信者ではない。いや、そのような安愚な者に
私が称号を授けると思うかね?】「たしかに。」【どのような状況からでも笑って生還する・・
それでこそ機関のトップエース「薔薇の枢機卿」なのだよ。】『通信、回復します。』
ゴォォォ・・「・・どうなったの?」「爆煙がすごくて何も見えないわ。」「・・祐巳は?」
「まさかいっしょに光になっちまったんじゃ・・」♪ピピッ。「・・前方に動体反応?」
ヒュゥゥ・・「煙が・・晴れる。」サァァ・・ザッ。「・・Triumph(大勝利)!」ぶい!
『ぃやったあああーっ!』ワアアアアーッ!パシュパシュッ、ザシャッ!「祐巳~!」
「お姉さまー!」タタタ・・がしいっ!「よく・・よく還ってきたわ!」「やだなあ、これから
楽しいショッピングですよ。それを目の前にしてくたばる私じゃないです。たとい光子になっても
自力で復元して戻ってきますよ。」「うふふっ、欲望こそ最高の生命力なのね。」「そうですよ。
神がついてるとか主の加護とかアテにならないものより、よほど効くおまじないですよ。」
ゴゴゴゴ・・「ローゼンクロイツです。」「まずはお風呂ね、このありさまじゃ。」「え?」
「はい、鏡。」さっ。「・・ゲゲッ!真っ黒け!」「まるでドリフのコントよ、うふふふっ。」
翌日、ローマ・スペイン広場。「グッチ、ぐっち~♪」「フェンディにフェラガモ~♪」
「おおっ!ヴィトンもエルメスも日本の半額じゃん!」「買いよ、みんな買い!」
どっちゃり!「いや~、買ったかった。」「ボーナスたっぷり出たから使いほうだいね。」
「おまけに法皇庁割引もしてくれるし。(実際はありません)」「スペイン坂で待ち合わせよ。」
ガヤガヤ。『お待たせー。』「志摩子さんに乃梨子ちゃ・・ええっ?!」ガチャガチャ。
「・・どう?」「な、なんで二人ともヘビメタな・・」「レザー系や銀アクセサリー、さらに
サングラスも合わせてみました。」「しかし・・これはどう見てもレイザーラモンとしか。」
「あ、やってみましょうか・・」ぐっ。『うわああああーっ!』「志摩子さん、ダメー!」
「ローマの休日、フゥゥゥーッ!」どんがらがっしゃーん!「・・あ~、そっちでしたか・・」
そのころ、『真実の口』。「私はウソつきだから、噛まれちゃうかもね。」「だいじょうぶですよ
お姉さま。」「江利子さま、あれはただの言い伝えですよ。」「そう?じゃ、二人を信じて・・」
すっ・・「・・むん!」ゴロロロッ!バカアッ!『ゲゲッ!・・開いた!』「言い伝えどおりね。
ね、ちょっと入ってみない?」『いえいえ!』ぶんぶん!「身体半分持ってかれたくないです!」
「ほほう、面白そうだ。私はいいぞ。」『名無ちゃん?』「あら、うれしい。じゃあ二人でいこ♪」
つかつか。「あ、ちょっと!」「由乃、やめとき。・・ああなったらお姉さまは止められない。
まあ少々のことであの二人によもやはないだろうし。」「・・うん。そんじょそこらのバケモノが
束になっても話にならないね、たしかに。人間レーザー砲と、ひとり怪獣ランドだもんね~。」
ローマ地下で、二人はとんでもないものと出くわすのだが、それはまた別の話で・・
今回はこれまでいたしとうございます。
****************************************
黒薔薇会日誌-薔薇の聖騎士団-
ネオヴァチカン・サンピエトロ広場。♪Ave,formosis sima, gemma pretiosa,ave decus..♪
「うわ・・カルミナ・ブラーナだ。」「私たちにふさわしい歌ね。」「しーっ。・・睨下よ。」
ワアアアアーッ!【全世界の信者の皆さん、ここにある12人の乙女たちは神の聖騎士として
巨大な悪魔デビルガンダムの眷属を打ち倒した偉大な戦士たちです。】ワアアアアーッ!
【そしてあそこにあるが我等の聖なる無敵の砦、大聖塔ローゼンクロイツ。】ゴゴゴゴゴ!
【私はここに宣言します。彼女たち主の遣わせし武闘天使を、カソリック最強の騎士団として
認定することを。】『ええっ?!』【その名は聖黒薔薇騎士団(Ordo Equitum Sancti Rosa Nero)。
聖アレクラスト装甲騎士団・聖ヴァンディミオン鉄鎖騎士団・ハルツ聖霊騎士団・聖グリフィス
天啓騎士団ら、四大騎士団に列なるカソリックの楯と剣と認める。主よ、聖騎士たちに祝福を。】
「・・えらいことになったわ。」「体のいい学徒出陣じゃない。」「少年十字軍みたいなものか。」
「お姉さま方、冷めてますね。」「手放しでは喜べないのが本音ね。」「なんのかんのいっても、
やるこた前と変わらんさ。」「しいていうなら、運営予算の確保がしやすくなるくらいかな。
それも喜ぶのは機関の経理であって、私たちまで降りてきやしないわ。」「クールですねー。」
「ま、権力くれるっていうなら、とことん使いたおしましょう。」「そうね、あるものは最大限
有効に使わせてもらいましょう。」「なるほど・・このクールさが、黒薔薇会の強さなのね。」
「静が入会を拒むのも理解できるわ。」「いえ、代行者はこのくらいじゃないと生き残れないわ。
しぶとく、したたかに生き抜く・・任を務めるにはまず命ありき、だもの。」「そのとおりね。」
「ふふっ、みんな渋い顔してますね。」「事態の本質を正しく見ている証拠です。知ってなおかつ
権限と義務を担う。何も考えない狂信者では話になりませんからね。」「で、機関の立場は?」
「聖騎士団の統括組織として存続します。むろん代行業務は今までどおり。」「健在、ですね。」
「シエルさん、みなみさんには彼女たちの後見人も務めていただきます。若い力に老獪な知恵が
加われば鬼に金棒。」「老獪というのは、かな~り抵抗あるんですけど・・」「くすくす。」
【では叙勲をします。最年長者はこれに。】『ははっ。』【「ゴルゴダの棘」は、紅薔薇騎士隊長
「ロサ・キネンシス」と名乗りなさい。】「お受けいたします。」【父と子と聖霊の名において、
汝を聖騎士と認む。】『AMEN!』【「復活の光」は黄薔薇騎士隊長「ロサ・フェティダ」。】
「感謝のきわみ。」・・ぺろっ。【「バベルの雷」は白薔薇騎士隊長「ロサ・ギガンティア」。】
「謹んで授受いたします。」すっ・・ぶい。(聖さま、腋の下からVサインだ。)(いい度胸・・)
【他の者たちは、のちほど叙勲されます。】『ははーっ。』ザザーッ。(・・おまけなのね。)
(これだから偉いさんてヤツは。)(まあいいや、あんな場に出なくて済んで。)(あ、はは・・)
一時間後、新黒薔薇の館。「あ~、肩こった。」コキコキ。「かしこまった式は疲れるわ・・」
「うへ~、二度とごめんだ。」「お姉さま方、ローマで仕入れた香茶をどうぞ。」コトコトン。
「ありがと。」スス~。「さすが本場、香りも味も高級ね。」「ときにお姉・・いえ、ロサ・
キネンシス。」「いいのよ、祥子はそのままで。」「はあ・・」「令もね。ロサ・フェティダなんて
呼んだらコロすかんね。」「はい。」「志摩子もね。」「・・はい、お姉さま。」「それがいい。」
「それ以外は称号で呼ぶように。これは勅命ですから。」『はい。』「えーと・・蓉子さまが
ロサ・キネンシス。」「江利子さまがロサ・フェティダ。」「聖さまがロサ・ギガンティア・・
おぼえるのたいへんだ。」「早見表つくってしばらく貼っときます?」「そこまでせんでも。」
「ここで疑問。祐巳さんはもうロサ・カルディナルの称号を持ってるよね。それで呼ぼうか?」
「やめてよ由乃さん~。呼ばれたら逃げちゃうぞ。」「・・必要なときだけ使うようにしましょう。
みんなもそれで。」「三つだけでも大変なのに、もうひとつ加わったらたまりませんですしね。」
「・・変わらずお姉さま、それがいいです。」「称号なんか、屁のつっぱりにもなりませんわ。」
♪ピピッ。「映像通信?」ぱっ。『学園長?!』ザッ。【皆さん、少々問題が起きました。】
66階「博士の檻」謁見室。『果たし合い?』「聖アレクラスト装甲騎士団が勅命に異議を申し立て、
法皇庁は決着をつけるために代表者による天覧試合を決定しました。」「また面倒なことに・・」
【どうやら予算削減を危惧しての抗議らしい。ま、気持ちはわからんでもない。それに考えようでは
うちの実力を知らしめる良い機会ともいえるな。】「さらに他の騎士団も、この試合の結果如何で
態度を決めることを睨下に上申、勅命により決まりました。」【四大騎士団による資格試験だな。
いずれも誇り高く、なおかつ実戦経験豊富な実力派の騎士団だ、二言はないとみていいだろう。】
「ネオヴァチカン四大騎士団か・・」「鉄壁の防御と強大な攻撃力を誇る、聖アレクラスト
装甲騎士団。」「特殊武器を操り、一人で千軍に匹敵するという聖ヴァンディミオン鉄鎖騎士団。」
「聖霊術師で構成され、四大元素を支配するハルツ聖霊騎士団。」「実体も実力も不明、ウワサでは
諜報と謀略専門といわれる、謎の聖グリフィス天啓騎士団・・」「いずれも重攻撃力としてのMSを
保有していません。ゆえに法皇庁がガンダム12機を持つわが校に目をつけたのが、今回の事態の
一つの背景です。」【ガンダムは所有する組織の力の象徴の意味もある。しかもお飾りにすぎぬ
核兵器と異なり、実戦投入できるのが強みだ。法皇庁はなんとしても欲しかったのだろう。】
「そこで現行騎士団と軋轢が生じた・・と。」「こっちゃとんだとばっちりよ、まったく。」
「聖アレクラスト装甲騎士団の代表とは?」【データはもう回ってきてるが、なかなかに面白いのを
選出してきたよ。これだ。】ぱっ。「・・女の子?」「私たちとだいたい同じくらいですね。」
【それは普段着の姿だ。戦闘モードはこう。】ぱっ。『・・なんだぁ?!』「プレートメイル?」
「うわ、あんなごっつい鎧を・・」【聖騎士(パラディン)レジーナ。装甲騎士団最強の戦士。
見た目は華奢だが、筋力は人間の理論上限値をはるかに上回る。あの法儀済み全身鎧は物理攻撃は
もちろん、霊的攻撃すら無効化する。さらに全長3m・重量20kgのグレートソードを軽々と振り回す、
まさに人間戦車だ。】「まるでヘラクレスの娘だね。」「どっちかゆーとスラムキングだったり。」
「ではこちらの代表を決めましょう。」「やっぱ騎士隊長かな?」「こちらも最強戦力を出すのが
礼儀というものでしょうね。」「となると・・」くるっ。じーっ。「・・あ、ちょっとお手洗い♪」
そそくさ。すっ、わしいっ!「逃亡は認めなくてよ、祐巳。」「ふええ~ん、やっぱし・・」
次の日、サン・マルコ広場。ワーワー!「さて全世界の信者のみなさん、いよいよ世界注目の
天覧試合が始まります!伝統ある聖アレクラスト装甲騎士団と聖黒薔薇騎士団の大激突!
実況はネオジャパンからわざわざ呼ばれたわたくし神宮寺すみれと、」「せめてビジネスクラスに
してくんなまし!エコノミー症候群と時差ボケで気分いまいちの李紅蘭でお送りしまっせ。」
「着いて実況席まで直行だもんね。法皇庁じきじきの依頼とあらばいたしかたないけど。」
「しゃーないな・・けどなんでさくらはそない元気なんや?」「お薬飲んだから。これ。」
さっ。ぷ~ん!「うげ・・せーろ丸かや!」「何にでも効くわよ。あげよっか?」「いらんわ!
匂いだけで目ぇ覚めたわ。」「でと、今回はガンダムファイトじゃないって?」「そうらしいで。
生身でのガチンコやて。」「いいのかな?神聖なるこの広場でどつき合いなんかしても。」
「すでにコーナーポスト付きの特設リングまでこさえとるけどな。あらサバイバルイレブンの
使いまわしやね。」「生身の試合にフィールドバリアは、さすがにいらないと思うけど~。」
「あまいで。昨今は生身でガンダム級の破壊力持つヤツなんか掃いて捨てるほどおるんや。
ましてやここは聖地、周辺被害はゼロ以上のもんはない。」「たしかにね。さて選手ですけど、
黒薔薇の祐巳ちゃんはおなじみさんなので以下略として、装甲騎士団のレジーナさんて?」
「戦歴を調べてみたけどな・・3年前の『ロンギヌス事変』はおぼえとるか。」「法皇庁所蔵の
聖槍ロンギヌスを奪わんものと、某武装教団が襲撃かけた事件ね。けっきょく大失敗だったけど。」
「そんときの防衛戦闘で、飛び交う銃弾をものともせず敵陣に突っ込み、グレソーぶんまわして
首級の山を築いたそうや。」「まさに戦車ね。けど機動戦になると、身軽な祐巳ちゃん有利かな。」
「うんにゃ。物理的常識は忘れたほうがええで。今まで何回もそういう光景みたやろ。」
ザッ。「あれ?相手がいない・・?」・・がしゃんがしゃん。「・・モビルスーツの足音?」
がしゃん。「あなたが対戦相手ですか。」「あなたが・・装甲騎士団の。」「レジーナです。
今回はよろしくお願いします。」ふかぶか。「あ、はい、ごていねいにどうも。」ふかぶか。
「それと聖騎士団への昇格おめでとうございます。」「は、はあ・・でもそれに関しての諍いで
今回のこれですよね?」「ああ、上のほうの偉いさんの話です。私は何とも思ってません。」
「ではなぜここに?」「命令と個人の考えは別です。それに・・いささか興味もあったので。」
「・・なるほど。どんな経緯があろうとも、リングに上がればどうでもいいこと、ですね。」
「そのとおり。期待に応えてくださいね。」ガシャン!「もちろん、期待以上に。」ザッ。
「いよいよ試合開始です。」「と、その前に、法王睨下よりお言葉や。」『ははーっ。』ザザッ。
【選ばれし聖騎士たちよ、その持てる力と技のかぎりに闘い、主への忠誠を示しなさい。】
『AMEN!』【主よ、この聖なる乙女達の血と肉を糧に、祝福と栄光を。・・はじめ。】さっ。
貴賓席。「始まりましたね、茶番が。」「そうとも、どのみち我等の勝利はゆるがぬさ。」
「あら、私は別の意味で言ったのですよ騎士団長。こんな決闘をしても得るものは皆無、かえって
無用な傷がお互い増えるだけ。」「傷を恐れて騎士の名誉は守れん。」「あいにくと私たちは
現実主義、冷徹な計算と合理性を心情とします。」「・・ではなぜこの勝負を受けた、大司教。」
「勝算があるからです。・・たとえ『いかなる敵』であろうと、ね。」キラリ。びくうっ!
(隠し玉を気取られたか?!・・いや、そんなはずはない。)(・・顔にすべて書いてますよ。)
ザザザッ。「祐巳ちゃん、まずは間合いを計っています。」「対するレジーナはんは動かんな。」
(・・動かない、いえ、動けない?・・いえ、それはないはず・・)「・・」チキッ、ズラアアアッ!
「レジーナ選手、グレートソードを抜きはなった!」ブオオッ!「なっ?!」ザザザーッ!・・
「な・・なんと剣風だけで吹き飛ばされたで!」ピピッ、タラタラ・・すっ。「・・血?!」
「真空波も伴ってた・・恐るべき手練よ。」「・・さすが聖騎士。」「始まったばかりですよ。」
「そうだね。」ついっ、ぴちゃっ。・・ギラッ。「?!この気は・・いけない。」ザッ、グッ。
「本格的戦闘の構えに入ったで。」「・・すごい。一分のスキも無い完璧な構えよ。あれじゃ
どこからも攻められない。」「・・ふっ。」ユラッ・・シャッ!「祐巳ちゃん、突っ込んだ!」
「・・もらいます!」ブォン!「あかん、完璧に見切られとる!」「あれじゃ直撃よ!」ゴオッ!
「・・・。」ゴォォォ・・ユラッ・・ヒュン!『かわした?!』「ビーストセイバー!」ジャキン!
「はあっ!」ビュゴオッ!「まだ!」すっ、ガイイイーン!「鎧?!・・ちいっ!」ババッ!
「レジーナ、肩鎧で首スジの必殺剣をしのいだ!」「・・ちょう待ちい。こら真剣勝負やないか!
今の決まったら首ホンマに飛んどったで。ガンダムファイトやのうて、ガチンコの殺し合いや!」
きょとん。「・・紅蘭、なに言ってるのいまさら?」「・・さくらはんは承知のうえなんか?」
「ガンダム使わない時点でわかってたこと。真剣なのは当たり前以前の問題。それにね、真剣を
使うからこそ安全という考え方もあるの。」「切れたらしまいやないか。」「だから。・・
あえて一撃をもらう、なんて甘いこと考える余裕がないってこと。それだけ精神は研ぎ澄まされ、
攻撃にも防御にも心が入る。かえって木刀や模造刀なんかでやるほうが死傷事故って多いのよ。」
「・・なるほど、わかってきたで。」「常に刃の下に在り・・剣士とはそういうものなの。」
「こっちからいくよ。はあっ!」ビュン!ゴオッ!「なっ?!・・剣ごと飛んできた!」ばっ!
「それを待ってた!」グン!カクッ。『バカな!』「空中で曲がった?!」「・・AMBACや!」
「AMBAC?それMS空間機動の話じゃない。」「同じや。あの巨剣を振ると巨大なベクトルが生じる。
それを利用して飛んだり空中機動ができるんや。」「・・剣に文字どおり振り回されるわけか。」
ビュゴオッ!「なんの!」グン!ボオッ!「祐巳ちゃん、ものすごいスウェイでかわした!」
「ほとんどブリッジやないか。なんちゅう柔軟性や。」「・・はっ!」ダン!ババババッ!
「なんとそのままバク転で相手を追った!」「ガンダムのときとはまた違う鋭い動きや・・」
「背後をとられる・・」バババッ、ターン!くるくるっ、「もらった!」ゴオッ!「まだ!」
ドン!ザクッ!ガクン!「なっ?!」ヒュン!「な、なんと巨剣を地面に刺して急ブレーキ!」
「オーバーシュートさせたで!」「ちいっ、まくられた!」くるっ、ザザーッ!・・はっ!
ゴオッ!「なんとレジーナ、さらに加速していた!」「きまったあっ!」ビュオオッ!
「・・。」すっ・・ヒュォォォ・・「・・」スゥゥ・・ぴたっ。「?!・・真剣白刃取り!」
「お見事!祐巳ちゃん、神域級の白刃取り!」「あの巨剣が吸い付くように止まったで・・」
「さすがネオジャパン・・!」ぐっ!ぴたあっ・・「剣は完全に死んでる、もう動かないよ。」
「・・それはどうかな?展開!」ジャキン!「なっ?!」「なんと巨剣から何本もの剣が!」
「いま流行の複合剣や!」シャリーン!「両手がふさがってては勝負ありましたね!」ビュッ!
「・・せーの!」ブン!「え?」ばしいいーん!「うきゃあああーっ!」ズガガガガーッ!
「祐巳ちゃん、挟み止めた巨剣をぶんまわしてブレイク!」「ほい。」ぱっ、ガラガラーン。
「ダウン攻撃、もらうよ!」ダッ!「あの鎧ではすぐには立てんで!」「決まった、かな?」
「・・。」♪ピッ。ボッ!【キャスト・オフ】ババン!「なあっ?」バゴオッ!「ぶっ!」
ズダダダーン!「鎧が・・弾けとんだ!」「榴散弾のように祐巳はん直撃や!あら痛いで・・」
「・・あいたたた。いったい・・はっ?」きりっ。ゴォォォ・・ザッ。「初めてですよ、私に
鎧を脱がせた相手は。」「・・ここからが本番、というわけだね。」「そのとおりです。」チャッ。
聖ピエトロ大聖堂屋上。「レジーナに鎧を脱がせるか・・ロサ・カルディナルの名は伊達ではない
ようですね。」シャラッ。「聖騎士としての技量は及第点かな。」「・・あの方は光と闇の双方を
併せ持つ稀有な方です。しかも絶妙な均衡を保ちつつ、両方から力を最大限に引き出している・・
たとえ呪われた出生であっても、むしろそれを力として生きています。」「ま、それはそれとして、
騎士団長どのは何やら企んでるね。」「何を知ってるの?ソーニャ。」「おっきいネコちゃん♪」
「それをいうなら虎です。」「レジーナもろとも、か・・セルピコ。」ヒュゥゥ・・スッ。
「お側に。」「風の聖騎士・・♪」「おっ、出たね~。ファル姉のお稚児さん♪」「!」きっ!
「は、はあ・・」ぽりぽり。「・・もしものときは。」「かしこまりました。」「お待ちを。」
『シールケ?』「・・その必要はなさそうです。」にこっ。「ねえねえ、もしあの子が勝ったら、
お祝いに行かない?」「レジーナに勝ち、なおかつ危機をも乗り越える・・そうなればね。」
「それだけの実力と、なにより強運を持っておられます。」「ロサ・カルディナルか・・」
ゴォォォ・・(あの鎧を着てなお、あれだけのスピードと機動性・・となると、それを脱ぐと。)
「・・はっ!」ヒュン!「やっぱ疾い!」シャッ!『はあっ!』キィン!「はいはいはいっ!」
ビュビュッ!「・・。」ユラッ、ボボボッ!「レジーナ光速の剣撃に、祐巳ちゃん神速の見切り!」
「あの剣スジが見えるんか・・」「・・いえ、逆ね。おそらく何も見てないはず。」「なんやて?」
「奥義『死生』。自ら五感を封じ、己を空とすることで到達できる境地。明鏡止水に似てるけど、
よりその心は透明・・それが証拠に、あの目をよく見て。」「・・死人の目や。」「そう、己を
死なせることで、あらゆる束縛から解き放たれる・・死人は恐怖も葛藤も躊躇もしない、ただ
あるがままにそこにあるだけ・・あれは回避というより、攻撃の勢いが押してるに等しいわ。」
「・・わかってきたで。すなわち、相手が強いほど技が冴えるんやな。」「むろん限界はあるわ。
相手が柳や水を切れるだけの技量があれば通用しない。」「・・あちらさんもわかったようや。」
ザッ。「お見事です・・ならば。」すっ、スゥゥ・・「いけない・・あの構えは水切りの太刀。
水中の鯉すら一刀両断にする必殺剣!」スゥゥ・・ぴたっ。「・・はあっ!」ダン!ドン!
「下段からの切り上げや、あら回避できん!」「・・!」ズバアアアーン!『決まった!』
はっ?「・・違う!」・・ボッ!「!」『まさか?!』「切り上げたレジーナの眼前に現出!」
「切られたのは残像だけ?・・ちょう待ちい、スロー!」ジィィィ・・「ヒットの瞬間に・・」
「な、なんやあの異様な回避は?」「前方斜めに突っ込むコンパクトな側転?」「しかも地面に
倒れる寸前に、両手で地面を押して下段から相手のフトコロに・・なんちゅう運動能力や。」
「う・・」ぴたっ。「刃は首と胴にかかってる。どっちも致命傷になるよ。」・・ふっ。
「それと同時に、剣に串刺しにされますよ。」はっ、ぴたっ。「さすが・・どっちが速いか。」
「試すも一興・・」『・・・・』「双方、膠着状態です。どちらもまったく動けません。」
「動けば確実に相討ちになるきんな・・レフェリーがおらんが、いったい誰が止める?」
『そこまで。』シャラララーッ!『え?』ばしいいーん!「くっ!」「・・これは?!」ばっ!
シャラララーッ、キリキリッ。「それ以上はつまらない結果になります。双方剣をお引きなさい。」
「・・だれ?」「・・聖ヴァンディミオン鉄鎖騎士団長、銀鎖のファルネーゼ様。」「えっ!」
くるっ。「聖アレクラスト騎士団長、本来は貴殿が止めるべきところ、介入をお許しを。」
「い、いや。」「勝負は見てのとおり引き分け。この闘いの本質を考えれば、じゅうぶんに
目的を達したと思われますが。」「う・・」『いーえ、まだ演目が残ってるよね。』はっ。
ザッザッ・・「!・・シールケ様とソーニャ様まで!」「えーと・・だから、誰だって?」
「純白の法衣がハルツ聖霊騎士団長、四大元素のシールケ様。薄桃色の軽装が聖グリフィス
天啓騎士団長、無限のソーニャ様。」「・・四大騎士団長が全員。」「まあ・・正直なとこ、
うちの団長どのでは比較にもならないけどね。」「うん、それはすぐわかった。」「やっぱし。」
「ソーニャ、演目とは?」「シールケ。」「風の聖霊よ。」ボオッ。ギュゴオオ!「風圧弾。」
ドン!・・バゴオオオーン!「なに?」ゴォォォ・・「・・檻?」ゴルルル!『虎?!』
「全長4mはあんで、巨大トラや!」「な、なんでここに?」「レジーナが負けた場合、これを
解き放って襲わせる計画・・でしたね?」「そんな!・・」「し、知らぬ!でっちあげだ!」
『いいえ、証拠はここに。」・・ヒュオオオーッ、スタッ。「はい、ファルネーゼ様。」さっ。
「ご苦労。・・これは虎の発注証明書。発行者は・・聖アレクラスト騎士団長どの。」ぴらっ。
「そ、そんなものは偽造にきまっている!」「証拠その2。カモン♪」ちょい。どさっ!
「これは!・・」「売った密輸業者さん。ちょっと絞ったら、みんな吐いてくれたわ。」
「異端審問がちょっとですか・・」「ほれ、きりきり吐く。売った相手は?」「あ、あいつだ・・」
「はいよくできました。」「くっ!・・」「貴殿も騎士の端くれなれば、潔く罪を認めよ。」
「く・・こうなれば!ケージ開放!」ガシャン!のしいっ。「いけい虎よ!みんな喰い殺せ!」
ゴルルル!「はい、お約束。で、誰が殺る?」「ここはお任せを。」チキッ。「お待ちください。」
『ん?』「・・ロサ・カルディナル?」「その虎の処置、私にお任せください。騎士団長がたの
お手を煩わせるほどではございません。」「・・いいでしょう、やってみせよ。」「AMEN!」
ザッ。ゴルルル・・「・・そう、誰にも愛されず、哀しく、苦しかったんだね・・」キラッ・・
ゴオオオッ!「・・もういいんだよ。」クッ。ビクウッ!・・「虎の動きが・・止まった。」
「急に戦意喪失したようですね。」ゴォォォ・・ぽん。「もうだいじょうぶだよ、私がいる。」
「ありゃ~、てなづけちゃった。」「・・なんて方。獣すら心を開く慈愛・・予想以上です。」
「騎士団長、これはどういうことですか!」「う・・」「神聖なる闘いの場でのこのような暴挙、
装甲騎士団の名誉を汚したこと、上司といえども許せません!主への反逆に等しい行為です!」
「レジーナのいうとおりです。睨下、ご裁定を。」「わかりました。」すっ。「!・・睨下!」
「汝の騎士資格を剥奪する。おって沙汰あるまで謹慎せよ。」「・・こうなったら!」ばっ!
「おや。」「学園長?」「人質になってもらうぞ、大司教!」「・・バカが。」「愚かです。」
「・・愚策。」「ダメだこりゃ。」「?・・なんだこの反応は。」「・・そのまんまだよ。」
はっ?わしいっ!メキメキ・・カラーン。「こ・・この握力は?!」「お前は阿呆だ。」くるっ。
「!・・誰だ?!」「うわ、学園長の『死喜』が出た・・」「うらあっ!」バキイイーン!
「ぶふぉっ!」・・ズダダダーン!「お前ごとき『七つ夜』すらもったいない。そこでブザマに
あがいてみせな。」「ど迫力ぅ~。」「さすが史上最強の代行者『虚ろなる境界』ですね。」
「ぐぐ・・であえ、であえーっ!」ザザザッ!「ほう。」「騎士までとは。」「そんな?!」
「・・?」ひくっ。「この匂いは・・DG細胞!」はっ。「なるほど、配下に感染させたか。」
「ロサ・カルディナル、豊富な交戦経験からの意見を。」「感染レベルはまだ初期段階のようです。
治療は可能。」「了解した。」『我々も!』ダダッ!「黒薔薇騎士団は控えよ。この程度、我等と
彼女だけで充分すぎる。」「ぶっちゃけ、顔みせも兼ねてるわけだったり♪」『しかし・・』
「まあ今回は見学しておけ。お嬢たちの戦い方は必見だ。」『・・ははっ、大司教。』ザッ。
「命までは取らぬように。」「骨折までならOKですね。」「なるべく穏便に鎮圧しましょう。」
「そんな甘いこといってると返り討ちになるよ。」「身内の不始末なれば、この手で。睨下は
お下がりを。」「いいえ。」『え?』ぽん。すっ。「私もかつて装甲騎士団に属した者、身内の
始末はこの手で・・愛しき後輩よ。」「・・はい、睨下!」「今だけは『轟く鎚鉾』です。」
「かかれ!皆殺しにしろ!」ドドドドッ!シャラン。「いけ、ウロボロス!」ジャラララーッ!
「龍舞打!」ダギュルルルッ!ドガガガガッ!『ぐはっ!』『どわっ!』・・どさどさっ!
「輪分銅だ、命に別状はない。」シャラン。「あれが・・『銀鎖のファルネーゼ』の鎖術。」
「法儀処理された純銀の鎖『ウロボロス』。ポーランドの人狼を倒したことで有名よ・・」
ドドドッ!「・・。」ヒュゥゥゥ・・ヒュン。・・どさどさっ。「峰打ちです。痛いですけど。」
「一瞬で五人を?」「『風の騎士』セルピコ。副団長にして、ファルネーゼ様の腹心の部下。」
「あの『風精のマント』で風と同化し、疾風の剣を振るう。・・よく見りゃけっこーイケメン?」
「大地の聖霊よ!」ズズズズ!「噴火陣!」ゴバアッ!ドカアアアーン!『ぐはあああーっ!』
どさどさっ!「きつい打ち身だけです。「地面が輪状に爆発?!」「『四大元素のシールケ』・・
火水風土の四大聖霊を召喚・使役し、自然現象すら武器にする、世界四大魔導士がひとり・・」
ビュンビュン!「よっはっとっ。」ひょいひょい。「ほいっと。」ギュイン!ズダダダーン!
「そっちも。」ぽん。ギュン!ダダーン!「受け身がなってないね。柔道習ってないの?」
「な、なにあれ?軽く触れただけでひっくり返ってる!」「『無限のソーニャ』・・実のところ、
あの方の詳しいことはわかってないの。」「ただ確かなことは、他の騎士団すら一目置くだけの
実力者だってこと。具体的にどうこうは、お聞きするしかないでしょうけど・・まず無理ね。」
「皆さん、DG細胞なんかに屈しないでください!」ばきいいーん!「目を覚まさせてあげます!」
どかあああーん!「えーと・・その割には、力いっぱいぶん殴ってますねー。」ぽりぽり。
「愛がこもってますから問題ありません・・うしろ!」グワッ!「よいしょ。」ばきいいーん!
『ごはあっ!』ヒュー♪「振り返りもせずの後ろ蹴り・・すごいですね。」「いえいえ。」
きっ!ゴオオオオーッ!「う、わわわっ!」ドォンッ!「ぐわっ!」「ナイスだよトラさん、
そのまま押さえつけといて。もし暴れるようなら、ちょっとだけ噛んでいーから。」こく。
「さてさて、後輩を殴るのは遺憾ですが、この場合はむしろ慈悲でしょう。」ドドドドッ!
「昔とった杵柄、いえ鎚鉾をお見せしましょう。封邪印字打ち。」ぴっ、シュピピピッ!
ぱしぱしっ、ギュイーン!バリバリバリ!『ガガガガ!』「破魔浄化の響き。」ブン!♪ドンッ!
パリイイイーン!「・・はっ。」どさっ。「次です。」♪ドンドンドン!パリパリィィーン!
「う・・自分は?」「いったい何が・・睨下?!」ザザッ!「説明はあとです。続きなさい。」
「睨下って・・何者?」「かつて装甲騎士団に属し『轟く鎚鉾』の字名を持つ聖騎士だったの。
あの印字で魔を封じ、拡大した印字を聖鉾で打ち鳴らすことで魔を浄化する。・・でもまさか
DG細胞まで浄化できるとは思わなかったわ。」「へえ・・尊敬度がさらに上がりましたわ。」
ゴォォォ・・「あらかた制圧できたな。残るは・・」「ぐうう・・」「もと騎士団長のみです。」
「もう観念しろとはいいません。無駄な抵抗をして醜態を晒してください。」「略して言うと、
とっととくたばれってこと。」「お待ちを。」『レジーナ?』「・・私が始末をつけます。」
「トラさん、そういうことで。」こく。ぱっ。「はぁっ、はぁっ!・・レジーナ。」ザッ。
「せめて私の手で引導を。」「・・死ね!」チャッ!「拳銃?!」シャッ!シュピィッ!
「あれ?」ピリ・・ポロポロッ、ブシャアアアーッ!「指がああああーっ!」「・・祐巳さん。」
「・・。」ぴっ。「はい。・・!」ググッ!「・・はっ?!」「・・うおおおおおーっ!」カッ!
ばごおおおおーん!「ぶひゃああああーっ!・・」ヒュルルル・・ドグシャアッ!ぴくぴく・・
「おー、飛んだとんだ。国境越えだね。」「聖地を背教者の血で汚さずに済みました・・」
「さて、一騒動ありましたが、どうにか一件落着ですね。」「睨下、わが騎士団の解体を。
これほど御名に傷つけし大罪、万死に値します。」「いいえ、むしろ逆です。今回の一件で、
四大騎士団の意識が変わりました。」「そのとおりだレジーナ。鉄鎖騎士団を代表し感謝する。」
「つまらぬ縄張り意識なぞ、魔に付け入られる格好の餌。聖騎士たるもの、高潔であるべし。」
「睨下、そこでグッドアイデアなんだけど。」「承知しています。レジーナ、面を上げなさい。」
「ははっ。」「これを受け取りなさい。」チャリッ。「これは?・・騎士団長の印章?!」
「現時点をもって、聖騎士レジーナを聖アレクラスト装甲騎士団長に任命します。」オオッ!
「騎士団長方々、よろしいですね?」「レジーナなら文句なしです。」「高潔で公明正大。必ずや
よき長となるでしょう。」「先任のくそオヤジよか千倍マシね。」「装甲騎士団、異論は?」
『ございません!』「・・全力でお受けします!」「期待してますよ、後輩。」「ははーっ!」
「さてもうひとつ。大司教、よろしいですね?」「ええ、もちろん。」「黒薔薇騎士団は?」
『快諾いたします。』「・・え?」「四大騎士団長。」「合格以上です。」「歓迎します。」
「面白そうだね♪」「剣を交わした友です、否やは無し。」「え?え?(空気を読めない)」
「ロサ・カルディナル。」「は、ははっ!」ザッ。「これより黒薔薇騎士団長に任命します。」
「は?・・・・(真っ白)」しーん・・ひょい。「あー、ダメだこりゃ。完全に思考停止中。」
さっさっ。「まあ、祐巳さんらしいですね。睨下、今のうちに印章を。気づいたら、固辞するか
逃げるかのどっちかですから。」「それはそれで面白いですけどね。では・・♪」チャリッ。
日本への帰り道、新黒薔薇の館。「ふえええ~、えらいことになったよ~。」ぐったり・・
「まあまあ、黒薔薇会も機関も全力でサポートするから心配しなくていいのよ・・といっても、
祐巳ちゃんの性格じゃ、そうもいかないか。」「蓉子、そこが団長どののいいとこじゃない。」
「おかげで公式行事やなんやかやの義務をセンタリングできるから、動きやすくて助かるね。」
「ロサ・ギガンティア~。・・ん?」ゴォォォ・・「・・だいじょうぶだよ。なんとかするよ。」
「そういえば連れてきちゃったんですね・・トラ。」「だって引き取り先がなかったし、こんなに
なついてくれてるんだもの。名前はランチがいいかなー?」「ゴロンタにしよう、ゴロンタ。」
「メリーがいいわね。」「そういや一年生の呼び方設定まだだったよね。どうすべか?」
余談。『うわ~・・』「これがウワサのローゼンクロイツ内か~。」「日本へ戻るついでに
便乗させてもろて助かりましたわ、シエルはん。」「生徒へのインタビューはいいですけど、
撮影はご遠慮ください。さすがに機密情報のカタマリなので。」「むろん、心得てます。」
「モラルは守りまっせ。」(といいつつ、隠しデジカメで・・)カツカツ・・すっ。チリッ。・・
(ん?・・なんや今の妙な感触は。)きょろきょろ。(特に何も・・気のせい、かもな。)
数日後、TVネオジャパン。「というわけで、便乗レポートです。」「写真はこのメモカや。」
「よくやった。アイリス、さっそく出してみてくれ。」「はいはーい。」カチャッ。カタカタ・・
「・・あれ?」「どした?。」「・・メモカが認識できない。」『なにいっ!』ばばっ!
「そないなアホな?!」カタカタ・・「・・あかん、ウラ技使うても認識でけん・・壊れとる。」
「静電気?」「昔のフロッピーならともかく、メモカではほとんどありえんわ。ましてやウチは
プロや、メモカの品質管理も抜けはあらへん。」「となると・・特殊な電磁波かもしれない。」
「マリアさん、知ってる?」「最新セキュ技術にそういうのがある。電子回路、特にトランジスタに
直接働きかけ、次第に電気特性を変質させ、データ保持できなくするとか。」「それやな。おそらく
ローゼンクロイツ内にそういう発信機があり、隠し撮影とかできんようにしとるんやろう。」
「画がないと、番組になりませんわ。」「しゃーない、もっかい取材申し込むか。次はアナログで
あとでデジタル変換しようぜ。」「やな。正面から行けば、向こうさんもジャマーかけんやろう。」
「わかってると思うが、あくまで騎士団の面だけだぞ。」「わかってます。代行機関の側面なんか
流したら、命がいくつあっても足りませんよ。」「報道の自由とは、モラルあっての自由ですの。」
さらに余談、法皇庁・騎士団長サロン。「ガンダムがあれば、我等もBGFに出場したいな。」
「実行委員会から素体は供与されますが、カスタム代もバカにならないと聞きますしね・・」
「あと維持費だね。現地に整備拠点を持つとか、問題山積み。いまの予算じゃどうもならんわ。」
「法皇庁は黒薔薇騎士団所有のガンダム維持でいっぱいいっぱいで、これ以上は無理ですね。」
『出たいなら、なんとかするよ。』はっ。♪チリーン。『・・幽音さま!』ザザーッ。
「顛末は見せてもらったよ。・・まさか騎士団長にまで昇りつめるとは。ますます面白いね。」
「今回の御用は?」「ガンダム、欲しい?」『・・できれば。』「決まりだね。で、条件だけど。」
「・・黒薔薇騎士団とBGFでの対決、ですね。」「さすがシールケ、察しがいい。四体くらいなら
どうにかなるよ、整備拠点も。」・・こく。「お願いいたします。」「わかった。とりあえず
睨下には仁義を通しておいてね、形式上は。」『ははーっ。』「じゃ、また・・』♪チリーン・・
*****************************************
黒薔薇会日誌-聖餐-
二号生教室。ザワザワ・・「やれやれ、午前の座学おしまいっと。」「じゃあお昼に行きましょ。」
「ええ・・あら?」カツカツ・・「・・桂さん?」『え?』「・・いつも食堂とちがう方向に。」
「そういえば・・ここんとこ食堂で見かけないね。」「以前はたしかにお弁当持参だったはず・・
祐巳さん、志摩子さん、カモン。」「どうする気?」「・・まさか尾ける気?」「学年の治安を
守るのも黒薔薇会の仕事よ。挙動不審は要チェック。」「治安まではいかないと思うけど~。」
カツカツ・・ちらっ。(この方向は・・)(まさか・・66階へ?)(あそこは常時監視されてるはずよ。)
ぴたっ。きょろきょろ。(止まった?)(入り口はまだ向こうのはずだけど・・)すすっ、フッ・・
『消えた?!』シャシャッ。「どこ・・どこへ?」「ここは一本道、どこにも行けないはずよ・・」
「・・隠し扉か。由乃さん、センシング。」「サーチ・アイ。」♪ピピピッ。ジィィィ・・
「・・そんな?!無い、何も無いわ。」「・・よほど高度なジャミングをかけてるのね。」
「それほどの措置を必要とするもの・・しかも黒薔薇会すら知らされていないということは・・」
カチャカチャ。(どうかね桂くん。)「はい、とてもおいしいです。」(それはよかった。さあ、
これは特別に造らせたパテだ。試してみてくれたまえ。)コトン。「いただきます。・・おいしい。
コクがありますね。」(下ごしらえに手間はかかるが、その甲斐はある。明日はフライにしよう。
クラリス、そのように。)「かしこまりました、ご主人さま。」(サイドメニューにこれもな。)
新黒薔薇の館。『隠し扉?』「お姉さま方もやはりご存知ないのですね・・」「保安課によると、
やはり誰も出入りした形跡は無いとのことでした。けど。」「檻の中まではわからない・・のね。」
「・・もしそれが本当なら、由々しき問題ね。」「約定により、原則的に博士は檻の外には出ず、
緊急の場合のみ拘束箱での外出が認められてるわ。けど・・」「そんな隠し扉があるとすれば、
檻は何の意味もなさない。人食い猛獣の檻が開いてるのより危険だね。」「・・学園長へ。」
「お待ちください。もしそれほどのものなら、ローゼンクロイツ設計段階で想定されており、
なおかつ学園長が知らないはずはないのでは。」「なるほど・・瞳子ちゃん、設計図照合を。」
「データベースアクセス。設計図・・機密ランクS・・侵入。」「やっちゃうもんな~・・」
「メインに。」ぱっ。「66階平面設計図ですわ。問題の廊下は・・」グググッ。『・・んん?』
「・・何も無い、わね。」じーっ・・ぴくっ。「待ってください。瞳子ちゃん、ここ最大で。」
グググッ。「線が・・ずれてる?」「ぱっと見ではほとんど気づかないでしょうが、これは
あとで線を引き直した可能性が考えられます。」「もとの設計図にはあったけど、できてから
削除した・・ですね。」「そんな権限を有するのは、最高責任者のみ・・すなわち。」ゴク・・
学園長室。「・・いつまでかかります?」(明日で最後だ。それで全ての素材を使い切る。)
「しかし・・思い切ったことを。」(羽根を食い尽くした鳥に空は無い。新たな翼を得ぬかぎり。)
「よくまあ彼女が同意したものです。」(相性の問題としかいいようがない。しかも奇跡的な。)
次の日、二号生教室。「・・桂さん。」「・・はい?」くるっ。『!』「・・なに?祐巳さん。」
「あ、あの・・お昼いっしょにどうかなと思って。」「私は特別食堂には入れないはずだけど。」
「私たち同伴ならOKだそうよ、今まで知らなかったけど。」「・・いえ、いいわ。先約あるから。」
「・・先約って?」「ごめんね、じゃ。」カツカツ・・「・・わかった?」こく。「・・ちがう。
明らかに以前の桂さんじゃないわ。」「なんていうか・・眼が。」『・・博士の眼と同じ。』
66階「博士の檻」。(いよいよ最後のメニューだ。)「どうぞ。」コトン。「・・いただきます。」
ムシャムシャ。(・・よろしい。これで聖餐はおしまい、そして私は・・完全に私になった。」
すっ、「新たなる主よ。いえ、ご主人様、お帰りなさいませ。」「うむ、クラリス。ワインを。」
学園長室。「・・というわけで、桂さんは博士に魅入られたというのが私たちの結論です。」
「それは精確ではありません。正しくは見出されたというべきでしょう。」「どういうことです?」
「博士は後継者を探しておりました。自分の知識を受け継ぎ、なおかつ自由に外を歩めるものを。」
「・・博士の助手、と解釈していいのですか?」「いいえ、それは・・」「私が説明しましょう。」
はっ!『・・桂さん!』「祐巳さん、ごめんなさいね。今まで言えない事情があったの。」
「・・その秘密とは?」「・・この前、手術を受けたとき、私の遺伝子を調べた博士は狂喜した。
長い間求めていた最適因子を有していたから。」「・・最適遺伝子?」「簡単にいえば拒絶反応。
けど、まったく損失を伴わない因子を持つ人間も、確率は低いけど実在するの。」「それで・・」
「博士は私に事情を話し、私は同意した。博士の知識・頭脳が私のものになる。それは何物にも
換えがたい誘惑だったわ。」「ちょ、ちょっと待って。・・話が見えない。」「ん~・・つまり、
博士の助手になることだよね?」「いいえ、もっともっと簡単な話よ。すなわち・・」スゥッ。
ギン。『うっ!・・』「私自身になることだよ。」「この凶猛な気は・・まさか、博士?!」
「そうだ、ロサ・カルディナル。桂くんは私と一体化した・・大脳生理学的にも、物理的にもな。」
「・・物理的?」「ここ二週間、昼食時に姿を見なかったろ?なぜなら私と聖餐をしてたからだ。」
「やはり・・」「まだ話が見えませんけど。」「それも今日でやっと終わった。学園長、残りは
クラリスが精錬しているので、あとで渡そう。」「ちゃんと大英博物館に寄贈しますから。」
「各種検査データもまとめておいた。私の見解も書いてるので、さぞや良き資料になるだろう。」
「66階はどうします?」「気に入ってるので引き継ぎ住みたいのだが。」「よろしいですとも。」
『え?え?』「・・ま、まさか。」「さすが『ゴルゴダの棘』、その可能性に気づいたか。」
「蓉子、どういうこと?」「・・うぶっ!」『ロサ・キネンシス?!』「・・博士、やはり貴方は
モンスターです。」「誉め言葉と受け取っておこう。」「わ、わからない、わからないわ!」
「・・Nehmet,esset,das ist mein Leib(取りて食らえこは我が体なり)」『・・ああっ!』
「は・・博士、あなたという人は!」「な・・なんて恐ろしい・・」「自らを・・食わせた。」
「うげえええーっ!」「籠の鳥に未練はない。私は持てる全てのソフトウェアをコピーし、
肉体に残った情報も全て移管した。・・自分がこれほどおいしいとは思わなかったがな。」
「ば・・バケモノ・・」「人間じゃない・・」「あ、あなたは誰なんです!博士?、桂さん?!」
「どちらでもあり、どちらでもない。二つの知識と人格が融合した第三の人格というべきだろう。
さてと。」ザッ。「どちらへ?」「ひさびさにシャバの空気を吸ってくる。引っ越し準備もな。」
「引っ越し屋は手配しておきます。」「よろしく。」カツカツ。「あっ!・・学園長?!」
「あのまま行かせても?!」「もう戻ってこないかも!」「そのときは、機関の総力をもって
抹殺するだけです。ま、ありえないですけど。」「・・二号生、身辺警護を。」『AMEN。』
ガブ女校門前。「ん~!シャバは十数年ぶりか。・・かまわんでいいぞ。」「そうもいきません。
博士と同等の存在なれば、わが校の重要人物です。」「シークレットサービスは必然でしょ。」
「・・実のところ、お目付け役だけど。」『志摩子さん!』「ははは、志摩子さんはあいかわらず
率直だね。それがいい。」「で、どちらへ・・あれ?」『やーい、デカ尻エルー♪』『てめこの
未確認怪奇生物が待ちやがれです!』「いつものケンカか・・」「飽きずにようやるね~。」
「・・あら、こっちに来るわ。」タタタタ・・『アルク先生、シエル先生、ごきげんよう。』
「ごきげ・・っ?!」ザザーッ!「ととととっ!」どかあああーん!「あいたた・・アルクエイド!
あなたいきなり急停止って」「あんた誰?!」「・・え?」「やっと会えたな、真祖・東方不敗。」
「・・これほど歪んだ人間が現代にいるなんて。・・そっか、あなたがウワサの。」「そのとおり。
あれほど訪ねてくれと言ってたのに、全然来てくれなかったな。」「え?え?」きょろきょろ。
「シエル、遊んでるヒマなくなったわ。・・わたしはコイツを殺さなきゃ。」『ええっ?!』
「それほど危険、か。」「こんなの生かしとくとロクなことないわ。現に今もう桂を乗っ取り、
心身ともに犯し尽くしてる。」「とんだ誤解だな。私はこうしたかったからこうなったのさ。」
「やかましい!あんたにゃ心理誘導なんざ朝飯前だろうが。」「やれやれ・・やはり平行線か。
みんな下がってて。」ザッ。『桂さん!』「みんな、コイツはもう桂じゃない。桂の皮をかぶった
バケモノだ。」「私はシナモンティーらしいな。」カッ!「クレア・デ・ルーン!」ボオッ!
ダンッ!「くたばれ!」「それはどうかな?」ニヤッ。「・・いけない!桂さんにはアレが!」
バキイイイーン!「・・そんな?!」「アルクエイドの攻撃が・・届いてない?!」「因果応報。」
ブリブリブリッ、バリイイイッ!「ぐうっ!・・」「アルクエイドの腕が・・砕け散った?!」
さっ、わしっ、ベリッ!クチャクチャ。「うむ、天上の美味だ。」「てめえ・・わたしの肉を!」
「前から味わってみたかった。できれば次は脳を所望する。どうせ復元するんだろ?」ぞくうっ!
「ま、まさか・・博士?!」「そうだよシエルくん。君もおいしかった。」「あ・・そんな・・」
「ば・・バケモノが!」「君に言われるとは心外なのか光栄なのか。だが残念ながら私はガブ女
教頭で、なおかつ機関最高顧問だ。それだけは事実だ。」「ちっ・・次こそ殺してやるさ。」
「命を狙われるのは初めてではない。これでまた人生の刺激がひとつ増えたということだな。」
学園長室。「アルク先生が・・」「真祖すらかなわないなんて・・」「うふふふ、こうでなくては
ガブ女教頭など務まりません。」「学園長、いえ大司教睨下、あの怪物をどうされるつもりです?」
「特になにも。桂さんとして生徒のままで、なおかつ教頭としても働いていただくだけです。」
「二号生、やりにくくなりそうね・・」「いや、そうでもないんじゃないかな。」「聖、根拠は?」
「騎士団長どのがいるってことさ。」『祐巳ちゃん?』「ロサ・カルディナルは伊達じゃないよ。」
「さて、祐巳さん。」「は、はい!」「もんじゃとやらを食べてみたいが。」『・・はあ?』
「桂の記憶にあったが、実にうまそうだ。」「えーと・・校門前の『かしわぎ』でよければ。」
「お、あれか。近くていい。真祖とシエルもいっしょにどうだ?」「だーれが!」「まあまあ、
アルク先生。ここはひとつ私の顔に免じて。」ぱんっ。「・・しゃーないな、もう。祐巳ちゃんに
そんな顔されたら怒る気も失せたよ。シエル、行くよ。」「え?、あ、はいはいはい!」
ガブ女最凶『絶対不可侵領域』桂の誕生であった・・活躍は本編にて
黒薔薇会日誌-吾輩は虎である-
吾輩は虎である。名前はいろいろある。「ゴロンタ」「ランチ」「メリー」あたりはまだいいが、
「運慶」とか「パトラッシュ」あたりはさすがに違うんじゃないかと思う。
吾輩の住処は黒薔薇の館とかいうところだ。前の檻の中より広く、外出も許されておる。
ときおりヒマにまかせて館の外を散策すると、女生徒たちがさかんにかまってくれる。
「ゴロンタ、ソーセージ食べる?」「お菓子どうかな?」好き嫌いもままあるが、たいがいは
うまいものをくれるので満足である。・・おっ、ご主人様だ。「あれ、ランチ?散歩してるんだ。」
吾輩が唯一の主と認めるのが祐巳さま。吾輩の心をよくわかってくださる人間でも稀なお方だ。
「ウチ来てから、ますます大きくなったんじゃない?」「・・エサがいいからかもね。」
祐巳さまの連れ合い、由乃さまと志摩子さまだ。どちらも例によって吾輩を恐れもしない。
おそらくでっかいネコくらいにしか見ておらんのだろう・・じっさいそのとおりだが。
黒薔薇会にかぎったことではないが、この学校の生徒は普通ではない。誰も吾輩を恐れんのだ。
その理由を吾輩はよくわかっておる。・・牙を剥いたら、へし折られるのは吾輩だからだ。
どの生徒も素手で猛獣の一匹くらい倒せる腕を持っており、ゆえに恐れる必要がないのだ。
ある意味、ここはジャングルより恐ろしい所ともいえる・・だがものは考えようで、おとなしく
してさえいれば、食うには困らぬ。人間のことわざで「住めば都」とはよくいったものだ。
授業時間。吾輩はおかまいなしに教室に出入りすることを許されておる。誰も気に留めないのが
いかにもこの学校らしい。ゆえに吾輩もたまにいっしょに授業を受けることもある。
「あははー♪今日はトラさんも琥珀先生の授業を受けたいんですねー。実に関心ですよー。」
教師陣もご同様であるが、特にこの琥珀先生はいちばんの変わり者で、同時に恐ろしい。
かつて象とも戦った吾輩だが、それ以上の凄みを感じる・・絶対に勝てない、この人には。
「はいではこの問題、トラさんに答えていただきましょー。」・・どうしろというのだ。
「簡単ですよー。このおクスリを飲んでみるだけですからー♪」・・逃げるにしかず。
タタタタ・・「あららー、逃げちゃいましたね。」「・・ふつー逃げます、琥珀先生。」
お昼どき。♪リンゴーン。おっ、このチャイムは昼メシの時間だ。さっそく食堂へ向かう。
ガヤガヤ・・昇降機の中はこの時間は混む。「メリー、すまないけどまたがらせて。」
しょうがない、どうぞ祥子さま。・・うむ、よい乗せ心地だ。これならいつでもウェルカムだ。
『いらっしゃいませ。』「ランチ、こっちこっち。・・どれにする?」食事はバイキング方式で、
食べたいものだけ取れるのがよい。「これとこれね。はいどうぞ。」コトン。いただきます。
食後は館でくつろぐ。「ランチ、いい?」もちろんですとも。どさっ。「ん~、天然の毛皮の
クッションだね。」「祐巳はそうやってお昼寝するのが好きなのね。」「ここが一番です・・
すぴ~。」「あら、もう寝ちゃった。」「寝る子は育つというけれど、祐巳ちゃんは例外かな?」
「そういえば一号生のころから、あんまり成長してないみたいね。由乃ちゃんと志摩子ちゃんは
それなりにきれいになってるのに。」「いいえ、それは違うと思います。お姉さまは外面でなく
内面でとても成長されたかと。」「・・そうね。薔薇枢機卿や騎士団長の重い地位と責任が、
祐巳さんをとても大きくしたわ。」「立場が人を作るとはよく言ったものね。私たちも四号生に
なりたての頃は、不安でいっぱいだったわ。」「上に立つことの重圧はすさまじいものだったわ。
自分たちの判断が学園を左右し、黒薔薇会の歴史に残る・・吐きそうなほどの緊張の日々。」
「でも人間恐ろしいもので、一ヶ月も経てば慣れてきたね。そんなに肩肘はらずともいいじゃん、
できることから確実に、できないものはしょうがない。・・そう思う余裕もようやく出てきた。」
「来年は私と祥子がそういう立場か。」「令は心配してないけど、私はちょっと不安かしら・・」
「いうまでもないけど、私は食客なのでアテにしないでね。・・でも必要なときは支えるから。」
「それでいいよ、静。」「一歩引いた立場で、客観的な視点は貴重かもしれませんわね。」
「天下の御意見番ですね。一号生でいうと瞳子か?」「んー、そんなカンジですわね、たしかに。」
「・・瞳子には情報担当という役目もあるし。」「ただし小姑はカンベンしてくださいね。」
「二号生は・・あ。」「・・桂さん。」「うわちゃー、いちばん頼りになるけど、したくない・・」
「『闇薔薇』桂、か・・ああなってからは、博士以上にアブない存在になっちゃったわね。」
「人肉嗜好はまあいいとして、機関員と生徒の強化改造手術が最近とみに多くなったわ。」
「まあほとんどがリジェネレイト処置だけで、キマイラはさほど多くないらしいけど・・」ぴく。
『ごきげんよう。』「ウワサをすれば・・どうぞ。」パシュ。「桂教頭代行、御用の向きは?」
「ランチに差し入れ。クラリス。」「余剰品です。ほぼ三人分入っております。」どさっ。
「いつもありがとうございます。」「生ゴミ出すのももったいないしね。・・ん?」ちらっ。
「す~。」「あらあら、団長どのはお休み中ですか♪」「・・そっとしてあげてください。」
「何もしませんて。・・虎をも従属させるとは、さすが私の見込んだ『薔薇枢機卿』ね。」
桂さまも恐ろしい。この方はもはや人間ではない・・知恵と獰猛さを持つ完璧な人食い獣だ。
午後は修行時限。むろん吾輩は祐巳さまに付き従う。「祐巳、ビーストセイバーを変えたの?」
「はい、こないだ折れたので新しいのに。」ぐっ、ジャッ!「?・・前とだいぶ違うわね。」
「銘『鋼太貫』。ブレードは形状記憶合金で伸縮変幻自在。」「伸縮はわかるけど変幻自在って?」
「たとえば、こう。アイアンベルト!」シュパッ!キュパパパッ、ぽろぽろっ。「巻藁五本を!」
「スピアホーン!」シュピィィーッ!ズドッ!「・・大木を貫いた!」「刃鞭にも長槍にも・・か。
恐るべき万能兵器ね。」「そして最強攻撃が。」キュルルルッ、ジャキーン!『ドリル?!』
ヒュイイイーン!「スパイラルチャージ!」ダッ!ヒュゴオオッ!ドバアアアーン!・・
「なっ!・・100mm装甲板を!」「紙のように!」ザザザーッ!・・「最新重装MAの正面装甲でも
こうなります。」「これは・・すさまじい武器を得たわ。」「・・さすがマルローネ工房です。」
むう・・祐巳さまはさらに強くなられた。吾輩、地獄の底までもお供いたしましょうぞ。
夕刻。生徒の9割が女子寮なので、校内はこの時間でもにぎやかだ。吾輩は中央プロムナードに
腰を据え、皆を見守るが日課である。ワイワイ。「メリー、乗せてー。」よろしかろう。
のしのし。「うわー、すごいすごい!」「ね、つぎ私ね。」「三人くらい乗れそうだけど?」
やめてくれ。いくら吾輩でも女子高生三人はきつい。『よいしょ!』・・乗るんだもんな~。
そろそろ夕食だ。館に戻り、とっておきの肉をいただこう。・・おっ、今日のはハラワタが多い。
うむ、やはりハラワタが一番だ。いくつか足りないが、桂さまの食卓に上がったのだろう。
夜も更けた。退屈なので誰かのとこに行こう。・・♪ポロポロン。・・ん?この音は・・
おっ、ここは静さまの部屋だな。客員なのであまり面識がないが、なじみになるいい機会だ。
♪ぴんぽーん。『どなた?・・あれ?』・・ああ、カメラ視点に入らないのだな。ひょい。
『ああ、メリーね。いらっしゃい。』パシュッ。ごめんください。「今夜はここにするの?」
そのつもりです。・・ぎょっ!な、なんか黒くてでかいものがいる!「あら、ピアノははじめて?」
すっ、♪ポロポロン。・・ああ、これがさっきの音を。「ちょうどいいわ、いま練習中の曲を
聞いてみてね。」♪ツンターン、ツンターン・・いい音だ。なんというか・・故郷を思い出す。
「この曲はサティ『三つのジムペノディ』。フレーズ自体は単純だけど、それだけ一音一音に
しっかり心を込めないとすぐに破綻する、ピアニスト泣かせの曲ね。」うむ・・絶妙の間だ。
「次はもうちょっと激しいのいってみるわ。ドビュッシー『喜びの島』。」♪タラリラタラリラ・・
おお・・流れるような指さばき、そして跳ね踊る音符。これは楽しい、そしてすばらしい。
そろそろお休みの時間だ。吾輩は静さまのベッドの隣で休むことにしよう。子守唄代わりなのか、
音量を絞った曲が聞こえてくる。吾輩並に耳がよいらしく、普通ならほとんど聞こえないほどだ。
モーツァルトのなんとか(難しいので忘れた)という曲らしい。たしかにこれは・・よく眠れ・・
************************************
黒薔薇会日誌-幸運の星-
ローゼンクロイツ内・カラオケBOX「ベツレヘム☆スター」。
機関員およびガブ女生は2時間まで無料。(ドリンク代は2杯目から実費)
『あー、それでは第三回黒薔薇会対抗カラオケファイトを始めたいと思います。』ぱちぱちぱち。
『司会はわたくし、一号生「たゆたう混沌の」名無・オヤジ声バージョンでお送りします。』
「ほんっと、シブいわね~。」「幼女外見とのギャップがたまりませんな~。」「・・濡れるわ。」
『第一回・第二回は一号生の四人だけでしたが、ついに今回は二号生のお姉さま方をお迎えし、
盛大なものとなりました。まずは、き~コ~ナ~!鋼の錬金・・もとい、鋼の薔薇、由乃さま~!』
ぱちぱちぱち!「どーもどーも。」『し~ろコ~ナ~!囁きの薔薇、志摩子さ~ま~!』
「・・よろしく。」『あ~かコ~ナ~!兄尊の女王・特撮の薔薇、祐巳さま~!』「ウィーッ!」
『おおっ!』「あの雄叫びはまさしく伝説のグレート・テキサン、不沈艦スタン・ハンセン!」
「祐巳さま、プロレスも守備範囲だったんだ・・」「田園コロシアムはDVD持ってるよ♪」
『ルールの説明です。一号生と二号生の団体戦。相手の選んだ曲を歌いきり、勝負を決めます。
まず第一試合、由乃さまバーサス可南子~!』「先手は私ね。えっと・・これ。」♪ピッピッ。
♪チンチロチンチロ・・『オオッ!』「こ、これは・・『帰ってきたヨッパライ!』」
「さあ、あの声で歌えるかしら?」「・・ふっ。」さっ。『♪オラハシンジマッタダー。』
オオッ!「可南子が・・あの声で歌っている!」「どこをどうすりゃあの声が出せるんでしょ?」
『なあお前、天国はそないにあまいとこやないでー。ここから、でていけー。』オオオオーッ!
「声色をきちっと使い分けてる!」「・・さすが声優さん、プロの仕事ね。」『こらこら。』
「では・・こちらの攻撃ターンです。」ぱらぱら・・♪キラリ。「これを。」♪ピッピッ。
♪ル~ルルルル~ルルルル~。「え?・・なに?」「・・いけない!」ガタッ!「祐巳さん?」
「・・まさかアレを選ぶとは。」タラ・・「わ、わからない、わからないわ!」「・・勝った。」
『勝負あり、可南子~!』「くっ!・・いったいなんなのよ!」「わからなくて当然だよ。」
はっ。「祐巳さん、どういうこと?」「これは『悪魔くん』OP。歌詞は呪文だから。」さっ。
『♪エロイムエッサイムエロイムエッサイムゥゥゥ~・・地の底より踏み出でてハビオンハビラム
タビオラムぅぅぅ~・・』オオ・・「すごい・・さすがお姉さま。完璧に歌えるとは・・」
『第二試合、志摩子さまには瞳子。』「・・先手をどうぞ。」「ではこれですわ。」♪ピッピッ。
♪チントンテントン・・『これは!』「聖飢魔Ⅱ『地獄への階段』・・英語だわ!」「こんな
超どマイナーな曲を・・志摩子さん!」・・ニッ。すっ。「♪There's a man who was save to get
all the glitters in the globe and found the Angel's eye in the place below the Stairway
into Hell♪』オオッ!「・・歌ってる、完璧に!」「知ってらしたなんて・・」「当然です。」
『乃梨子ちゃん?』「経典は全て所有してますから。」『ええっ?!』「なんでも歯の浮くような
好きだの愛してるだのという典型的な歌詞が皆無で、芸術的なのがお気に入りだそうです。」
『♪HELL!HELL!AHHHH!』「シャウトもですか?!」「あのボーイソプラノを完全に再現してる!」
「す・・すごい。」タラ・・「・・反撃です。」♪ピッピッ。♪ジャンジャカジャカジャカ・・
「・・なに?」「わからない?・・同じ聖飢魔Ⅱの曲よ。」「う・・参りましたわ。」オオッ!
「これは『不思議な第三惑星』・・乃梨子、いっしょに歌いましょう。」「はい。」チャッ。
♪Want some beat? Want some beat? Talk at asheep,shall bull leads to care!♪
『え?え?』「・・日本語?」「発音はまぎれもない英語だけど・・ソラ耳曲?!」
♪All I know Oh, soon she needs want some beat Oh, tap your leads!♪
(俺のお寿司にワサビをたっぷり!)
♪Hanna needs going to keep the Oh, guitar! More dann it!♪
(鼻にズゴーンときたおおキた!もうダメ!)
「す・・すごいですわ。」「聖飢魔Ⅱを出すなら、せめてこのくらいは基本ね・・次は。」
♪ピッピッ。「志摩子さん、まだ歌う気?」「『STAINLESS NIGHT』は必ず歌わなきゃ・・」
「レフェリー、止めてとめて!」「志摩子さん、一旦マイク持ったら離さないヒトですから。」
「これで一勝一敗。大将戦は祐巳さまと乃梨子さん!」「どっからでもかかってきなさい。」
「いきますよ祐巳さま。そもさん!」「せっぱ!」♪ピッピッ。・・♪テンテロテンテロ・・
「これは?・・」「さあどうです?いかな特撮女王の祐巳さまでも、これは難易度高いはず。」
「・・ふっ、私を舐めるな一号生。LD持ってるよ。」ぎょっ!「・・まさかそこまで?!」
♪火を吹く島か空飛ぶ岩かぁぁ~宇宙の神秘怪獣ガッパ
♪南の海の波間に深く幾万年も住んでいるという
♪一度怒れば天地も裂ぁけぇるぅぅぅ~!嵐のようなその叫び声ぇぇぇ~!
♪宇宙の神秘怪獣ガッパガァァッパァァアアアッ!x3ガッ、パアアアアーッ!
『おおおおっ!』パチパチパチ!「くっ・・コブシまで完璧とは。ならばドローに持ち込むまで!」
「それはどうかな?そもさん!」「せっぱ!」♪ピッピッ。・・♪ジャンジャカジャンジャカ
「こ・・これはもしや?」「そのとおり。『ゴジラ対ヘドラ』より『かえせ!太陽を』。」
オオッ!「あ・・あの難曲を!」「さすが祐巳さん・・」「ほら、歌詞読んでいいから。」さっ。
「あ、ども。・・周期表?!」「それ見れば思い出せるよね?」「・・勝負あったわね。」
「・・まいった!」がくっ!「まだまだ修行が足りんのう。」かんらかんら!「では手本を。」
♪水銀コバルトカドミウム鉛硫酸オキシダン
♪シアンマンガンバナジウムクロムカリウムストロンチウム
『おおお~っ。』「完璧・・お見事。」「特撮女王にとっては、こんなのミーハー曲だよ。」
『ではノーサイド・フィナーレです。替え歌「代行戦隊黒薔薇会」。皆さんでどうぞ!』
♪代行がもしも無かったら邪教がたちまち攻めてくる
♪財産をあるだけ寄付させて君はボンビーになるだろう
♪代行はああ主の御心だ誰にでもああ輝く光だ
♪キネンシスフェティダギガンティア紅薔薇黄薔薇白薔薇
♪私たちの狂信も燃えている
♪Sanctus Dominus! Kyrie eleison!代行戦隊黒薔薇会!
そのころ「ゲッセマネの園」。♪Eli Eli,lama a sabthani!「『マタイ受難曲』ですね。」
「講釈師、見てきたような嘘を言い・・とはよくいったものだ。まあ、おおむね合ってるし
おかげで人気もあるので文句ないが。」「ロサ・カルディナル様たちの寄り合いにお出に
なられたほうがよかったのでは。」「そうしたいとこだが、私が『ついてけないからやめとけ』と
言うものでね。」「桂さまの記憶ですね。ワインのお代わりは?」「いただこう。」コポコポ・・
翌日、新黒薔薇の館。「いやー、昨夜は盛り上がったね。」「乃梨子ちゃん、第四回はいつ?」
「まだ日程も決めてませんって。仕込みの時間もいりますし。」「・・修行の時間ともいうわね。」
「お姉さまも出ればよかったのに。楽しかったですよ。」「い、いえ・・まだ未熟だしね。」
「なんかさ、着々と一号生は団長どののカラーに染められてないかい?」「あまいよ江利子。
最大の元凶はこのヒトだからさ。」「・・ロサ・キネンシスが?」「祐巳ちゃん、例のものは?」
「できてますよロサ・キネンシス。」ごそごそ、さっ。「ご希望の『潮健児特集』です。」
「これこれ。メフィスト弟と地獄大使は定番として、他には?」「いたち男と雷忍もです。」
「うん、さすが祐巳ちゃん。キャプターは盲点だったわ。」『・・濃厚きわまれり。』
********************************
黒薔薇会日誌-レディ、ゴー!-
ドンドンドオオオンッ!(実砲)「さて、ガブ女毎年恒例の運動会、いよいよ始まります!実況は
すっかり助っ人アナが板についたネオジャパンTVの神宮寺さくらと」「李紅蘭でお送りしまっせ。
しっかし・・富士演習場借り切って運動会やるけ?ふつー。」「なんでも実弾使用だけでなく、
マジで街の一角くらい吹き飛ばすような余波が想定されてるらしいし。」「運動会ちゅーより
スターリングラード攻防戦やな。種目もグリーンベレー真っ青のハードな内容やし。」ぱらぱら。
「ではまずはPTA会長・デューク東郷氏のごあいさつ。」『総員、アッテンシオーネ!』ザッ!
『・・・・・・・・・・用件を聞こうか。』ぬどどどどーっ!「み・・見事なご挨拶でした。」
「ところで会長ってことは、娘さんが在校生ということやけど・・」「・・いったい誰?」
タタタ・・「会長!」くるっ、バゴオッ!「はぶしゃっ!」「俺の後ろに立つな。」「し、失礼。
ワシントンポスト紙を。」ばさっ。「・・・・仕事だ。」カツカツ・・「おつかれさまでした。」
大会本部テント。「今年も盛り上がるとよろしいですね、教頭先生。」「それは保証付きだ。
今年は私が新機軸の趣向を用意したしな。」「それは楽しみです。野戦病院のほうもよろしく。」
「テント裏手にMASH(前線医療車)を準備してある。頭さえ付いてればすぐに治せるだろう。」
「まずは第一種目の投剣ホーガンズ・アレイです。」「ルールは通常のホーガンズ・アレイと同じ、
得物はテッポやのうて各自の投擲武器や。シチズン(市民標的)誤射すっと、即失格やでー。」
「さらに新ルールとして、実弾発砲標的が追加されました・・って?これ超アブナイんじゃ!」
「ガブ女生が38口径の二・三発くらいでおっ死ぬタマかや。」「・・マシンガンあるけどー。」
カツカツ・・♪ピン!シャッ!ズドドッ!「ナイフや手裏剣投げは、まあオーソドックスね。」
「中には標・印字・霞のつぶて、はては真空波とかもおるで。」「次は黒薔薇会の選手です。
三号生『黒きマグダラ』祥子さん。」「お姉さま、がんばれー!」「ちょっとやっつけてくるわ。」
カツカツ・・さっ。「百人一首!」シュパッ!カツッ、ドカアアアーン!「な、なんと爆発です!」
「あの札は手榴弾かや。」「はっ!」ばっ!シュパパパッ!トカカカッ、ボオオオーン!
「今度は炎上!」「ナパームよかよう燃えよる・・機関銃標的が!」バタン!ドガガガガッ!
「♪天つ風雲のかよひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ・・雲姿。』バシバシッ!
「直撃?!」「・・いや!」・・バサササッ!「札?・・うつせみ!」『そのとおりよ。」
シュパッ!ザキイッ!ズル・・どさっ!「ポイントね。」「さすが黒薔薇会メンバーや。」
「第二種目、障害物競走。」「全長100mの地雷原を走破するタイムトライアルや。ちなみに
VT(近接感知)信管タイプや跳躍式ゴルゴン地雷もいくつか混じっとるきん、気ぃつけや。」
ザッザッ・・ザクザク。「匍匐前進とスコップで掘り出すのが基本だけど・・」「次やな。」
「二号生『メガニック』蔦子さん。」ザッ。「ふふふのふ、こんなんいちいち発掘やっとれるか。
機動眼鏡『フリーダム』オープン!」バシャッ!「フルバースト!」シュババババッ!
ドカドカドカーン!ゴォォォ・・「進路クリアー。」ばっ!「失格!」「えー、なんでよ!」
「現場でそんな音立てたら敵がすっ飛んできます。なのにいまだスタート地点にいることから、
突破失敗と判定します。」「おっとお、掃海作戦はルール違反でした!」「まあ、そやろな。」
「次は一号生『寒山拾得』笙子さん。」ザッ。「なんや?このええ天気にえらい重装備やな。」
「資料によりますとー、笙子さんには陽光は毒だそうです。」「へえ、ドラキュラみたいな」
『・・変化。』バサササッ!キィキィキィ!「無数のコウモリに?!」「ホンマもんかい!」
「第三種目、騎馬戦。」♪ブオオオオ~ッ!ドドドドド!「・・って、騎馬武者軍団?!」
「この重装騎馬武者軍団をたった一人で強行突破し、本陣の軍配を取ったらゴールや。」
「な・・なんちゅうムチャな種目よ。」「ちなみに戦車もいっしょやで。」ギュラギュラギュラ!
「・・モビルタンク『ヒルドルブ』じゃない。また懐かしい骨董品を・・」「自衛隊の倉庫で
不燃ゴミになっとったんを、払い下げてもろて直したそうや。武装も強化されとるで。」
「対するは黒薔薇会筆頭『ゴルゴダの棘』蓉子さん。」ザッ。「さあ、いらっしゃい♪」ちょい。
ドドドドド!「まずは騎馬武者の一斉突撃!」「長槍もそうやが、馬蹄にかかるとミンチやで。」
「そうかしら?」・・ズズズズ。ゴバアアアーッ!『おおっ!』「地面から巨大なイバラの壁が!」
ヒヒヒーン!ザザザーッ!「足を止めたわね。千人長の槍。」ズボボボッ!ズドドドドッ!
「騎馬隊の足元から無数のイバラが!」「串刺しやね。ヒルドルブもイバラにからんで動けんわ。」
すたすた・・ひょい。「軍配もーらい♪」「な、なんと余裕で完勝。」「筆頭は伊達やないか。」
「第四種目、狩りもの競争。」ゾロゾロ・・「なんや?やたら人相の悪いんがいっぱい出たで。」
「えーと、捕獲された宗教テロリストの皆さんだそうです。これから富士の樹海に放ち、それを
所定時間内にいくら狩れるかの競争。」「そのまんま逃げるんちゃうか?」「首に付けた爆弾は
樹海を離れると爆発する仕掛け。また特定のキー以外の方法で外そうとしても爆発。助かる道は
ハンターの持つキーを手に入れることだけ。」「逃げるため必死になって襲ってくるわけやな。」
「ハンターの生徒がスタート地点に集合しました。」「注目は二号生『ゴモラの怒り』由乃はんと、
黒薔薇騎士団長『薔薇枢機卿』祐巳はんやね。」わいわい。「祐巳さん、負けないわよ。」
「こっちだって。」『よーい、どん!』♪パァーン!(89式)シャシャシャッ!「疾っ!やはり
祐巳ちゃんと由乃さんが一歩ぬきんでて樹海へ突入!他の生徒も一歩遅れつつも続きます。」
「狩りの模様はビットカメラにてモニターできまっせ。おっ、さっそくよしのんにお出迎えや。」
ザザザザッ!「・・来た!」ババッ!ズガガガガッ!「加速装置!」カチッ。シュン!『消えた?』
「こっちよ。」はっ?!「鬼平!」ズバシャアアアーン!『スキあり!』「後ろ?!」ビュッ!
ぱきいいいーん!『バカな?クロムモリブデン鋼のナイフが!』「残念でした。」ズバシャアッ!
『こうなったら!』ババッ、がしっ!「こいつ、まさか?」『アッラーアクバル!』どかああーん!
「おっとお、自爆テロだ!」「まあ想定内やね。さて、さすがに吹き飛んだかや?」ゴォォォ・・
ザッザッ。「・・無事です!由乃選手、何事もなかったように・・ええっ?!」「・・なんや?!」
♪キラリ。「っきしょーめ、人工皮膚は自動貼り替えに時間かかるんだぞ。」シュゥゥゥ・・
「・・サイボーグ!」「なるほど、ターミネーターやったんか・・さすが黒薔薇会や。」タラ・・
本部テント。「一号生『夢魔』のぞみ、二人め。」「三号生『紅蓮』りん、エンゲージ。」
「二号生『マイマイオンバ』うらら、三人を毒殺。」「四号生『ミロガンダ』こまち、軽傷。」
「負傷者は無理をさせず後退させるように。」「さて、私も忙しくなるな。MASHで待機する。」
『現時点のハイスコアは?」「『ゴモラの怒り』由乃、20ポイント。」「ロサ・カルディナルは?」
「いまだエンカウント無し、0ポイントです。ただ進行方向に敵集団あり。」「見どころですね。」
祐巳。ザザザザ・・ひくっ。「・・クレイモア!」パアアアーン!「・・・・。」スゥゥ・・
ヒュゥゥゥ・・ボボボボッ・・チュイイイーン!『バカな?榴散弾が当たらない!』きっ!
「アイアンベルト!」シュパッ!ザキイイイーン!『楯の樹木ごとぉっ?!』ズルッ・・
どしゃあああーん!「な、なんという切れ味!」「伸縮自在か。攻撃範囲が広うなったな。」
『撃て!』ズガガガッ!ボボボッ!「あ・・当たらない、AK-47の一斉射撃が!」「終わったな。」
ヒュン・・ザッ。『?!・・』キラリ。「全員の首に巻いたよ。・・AMEN。」くい、ボトボトッ!
「一度に十数人の首を!」「ひのふの・・ほい、よしのん抜いた。まもなくタイムリミットやで。」
「あと3、2、1。」・・ボンボンボーン!「ん?・・あ、残存者の時限爆発か。帰ろうっと。」
「生き残ったテロリストは爆死か・・容赦なしね。」「テロリストに人権なんぞあらへんわ。
向こうさんからして、基本的人権まる無視しとるしな。ま、楽な死に方できてえかったんちゃう?」
お昼の時間。「桂さん、差し入れ。」ぷらーん。「狂信者のは口に合わないかもしれないけど。」
「いえいえ、それはそれで料理の仕方があるから。」「から揚げにしてレモン添えが最適です。」
「あれ?クラリスさん、体育帽?」「運動会だからね。あ、そうそう。ついでにうちのお弁当を
毒見してみる?」「このお重です。」コトン。『う・・』「開けま」「あ、そうそう!お姉さま方が
お待ちなのでこれで!」『ごきげんよう!』どぴゅーん!「あ、逃げた。」「勘ぐりましたね。」
ぱかっ。「普通のお弁当なのに。」「・・おっ?すっごい豪華なお弁当。」「これはさつき先生。
おひとついかがです?」「ではご好意にあまえて、いっただきまーす。」ぱくぱく。「ふむふむ、
ちょっと変わった味ね。」「素材がちがいますから。」「この味にハマるとクセになります。」
『ん?・・ああっ!』ダダダダッ!「師匠?」「さっちん、それ食べちゃダメ!」「なんで?」
「材料は・・」こしょこしょ・・「・・うぶっ!」ダダッ!『エロエロエロ~ッ!』だばだば!
「あらもったいない、こんなにおいしいのに。」ぱくぱく。「好き嫌いはままあるでしょう。」
「そーゆー問題か。」「にしても・・アルク先生、その歳でブルマはさすがに反則ですよ。
ぱっつんぱっつんじゃないですか。」「そう?ジャージはどうも性に合わなくってねー。」
「言いにくいですが、食い込みモロです。」「うちのメンツはみんなそうだけど。」『え?』
「・・たく、この歳でブルマはさすがにイタいわ。」「・・私は履くの初めてです。」ぽっ。
「お二人ともよく似合っておいでです。」「♪あっはー、適度に出てるシオンさまはともかく、
アキハ様はずどーん!ですから、まんま現役でも通りますよー。」「な・ん・で・すって・・」
「そういえばシエルは?」「たしか桟敷を確保しているはず・・あ、いました。」ぶんぶん。
「さあ、お弁当にしましょう。」「あっはー♪運動会のお弁当はいつもよりリキ入りましたー。」
ぱかっ。『おおっ!』「豪華~!」「さすが琥珀ね。」『いただきまーす。』ぱくぱく。
「さてと私も。」コトン。「あれ?シエル、自分で持ってきたの?こっち食べればいいのに。」
「さすがにそれはあつかましいでしょう。それに私はこの方がいいです。」「・・魔法瓶弁当?」
カチャ、ぱかっ。ほかほか。「よし、ご飯は冷めてませんね。そしてこっちも。」ぱかっ。ぷ~ん。
『やっぱカレーかい!』じゃーっ。ぱくり。「うん、カレーがよく煮つまってますね♪」
黒薔薇会の桟敷。わいわい。「由乃さん、皮膚はもう直った?」「なんとかね。」ぷにぷに。
「個人的には機械むき出しのお姉さまも素敵です。」「そういやメタルKってマンガあったね。」
「古っ!乃梨子ちゃんよく知ってるね。」「けっこう貸本マニアですので。神田の古書街がまだ
健在だったころは、よく通ってました。」「今は『神々の図書館』になっちゃったもんねー。」
「・・あたり一面の古書の渓谷。今まで何人も書籍雪崩の下敷きになって死んだと聞きます。」
「それでも高価な稀購本を求め、あえて踏み入る書籍マニアや山師が多いそうですわね。」
「京極堂書店の読子さんはそのスジの超ベテランで、いくつもの激レア本を発掘したそうです。」
「あの店はいいね。求める本が必ずあるし。」「ご店主の偏屈さも、慣れればそうでもないわね。」
そのころ、京極堂書店。『・・へくしょん!あわわわっ!』「む?」ぴくっ。どさささーっ!
「書は大丈夫か読子。」「あたたた・・もちろんです。みんな身体をはって受け止めました。」
「ならばよし。」ぷい。「よっとっと・・ほいっと。」すととととっ。「本棚の整理よしと。」
「さて、午後の部に入ります。」「種目は黒薔薇会有志によるガンダムファイトや。なるほど、
学校の運動場じゃこれはできへんな。」「・・あれ?なんかガンガン闘ってたような気が。」
(しーっ!・・報道規制やで。)(おっとっと・・)「・・でと、どういう対戦組み合わせ?」
「一号生と三号生、および二号生と四号生の代表やて。誰が出るんやろ?・・おっと。」ズシン!
「名無ちゃんのクロムウェル、対するは祥子さんのダークレイダーね。」「ほう、一号生でも
最もわけわからんのをもってきたな。わりと正統派の祥子はんで対応しきれるんかいな?」
「名無ちゃん、手加減無用よ・・といっても、あなたならハナからするわけもないわね。」
「そのとおりです祥子さま。・・全力でいくぞ。」ギン。「それでこそ黒薔薇の騎士よ。」
『ガンダムファイト!レディー、ゴー!』「むん!」ドンッ!「クロムウェル、地面を?」
ゴゴゴゴ・・「・・これは。」ゴバアッ!「!・・牙!」「な、なんと地中から巨大な牙が!」
「楯札!」ぴっ、ガキイイーン!「牙は一本ではない。」ゴバゴバアッ!「まだまだ!」ぴぴっ!
ガキガキーン!「ま、まるで雨後の筍のように伸びて襲います!」「速さは数千倍やけどな。」
「さすがによく受ける。・・別の手を試してみるか。」すっ、シュバッ!「・・泡?」さっ、
バシャッ!じゅううう~っ!「?!・・地面が溶ける!」「溶解泡。ガンダリウム合金とて
発砲スチロールと同じだ。」シュバババッ!「守り札!」ぴぴっ!バシャアッ!ジュウウウ~ッ!
「札が・・溶けた!」「これで楯は無くなったな。」「・・ならば攻めるのみよ。」バラバラッ。
「・・なに?」「無数の札をばらまいたで?」・・バササササッ!「!・・札が・・舞う?」
「指一本動かしてないのになぜ?」「念動力・・いや、ちゃうな。」「死吹雪!」バサササッ!
「むっ?・・なんだ、単なる目くらましか。」『そう思う?』ヒュン。ズル・・どさっ!
「・・なにいっ?!」「クロムウェルの右腕が!」「なんで?札は触れてすらいないのに。」
「ば、バカな?どうやって?」『あら、ちょっとした手品よ。』ヒュン、ぽろっ・・ボトッ!
「今度は左腕が!」「・・そか!からくりがわかったで。超スロー。」ジィィィ・・
「・・なに?何か線のようなものがジグザグに。」「糸や。目に見えんほどの斬糸を飛ばし、
滞空させた札の裏を走らせ反射させて、死角から襲っとったんや。」「それで前方にいくら
目をこらしても見えなかったのね。」「これぞ複合技『黄泉風』。当たるまで感知できないわ。」
「なるほど・・さすがは『黒きマグダラ』。だが。」・・ズボズボッ!シュゥゥ・・わきわき。
「なんとクロムウェル、新しい腕を再生!」「切ろうが突こうが、私には意味が無いこと。では
こちらのターンだ。起きろ、みんな。」・・ぴくっ、バリバリバリッ!「うげえっ!切断された
両腕がわけわかんない生き物に!」カサカサカサ、ババッ!グワアッ!「こんなもの。」ヒュン。
ズパパパッ!「切ったな、やはり。」・・ボッ!「はっ?しまった、今の隙に間合いを!」
「もらう!」ダン!ブオッ!「クロムウェル、電光石火の貫手!」「まだまだ!」ぴっ。シュパッ!
「レイダーは刃札で応戦!」ガキイイーン!・・ピキッ、ボギャアアッ!『うわああああーっ!』
ズダダダーン!「相討ち!」「どっちの右腕もグシャグシャや・・やが!」ギュルルッ、ギシイッ!
「クロムウェルには再生能力がある、けど!」「くっ!・・」「勝負あったな、祥子さま。」
ばっ!わしいっ!「頭部をつぶさせていただく!」メキメキ・・『・・それはどうかしら?』
「なに?」『胸部をよく見てみなさい。』「胸?・・なっ!」ぺたり。「・・いつの間に札が!」
『♪風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけて物を思ふころかな・・砕波!』カッ!
バドオオオーン!「うおおおおおーっ!」ぱっ、スタッ。「指向性衝撃波。いかがかしら?」
ゴォォォ・・「お・・見事・・」ユラッ・・ドドーン!「レイダー、華麗な逆転勝利!」
「コクピットを揺さぶり乗り手に直接ダメージを与えたんやな。あれなら再生は関係あらへん。」
「第二試合、二号生代表は『アカシアの花』志摩子さんのレイジングデュエル、四号生は
『復活の光』江利子さんのフラッシュアビスです。」「接近戦仕様と光学兵装の激突かや。
間合いをとられるとデュエル圧倒的に不利やな。」「それは本人もよくわかってるはずね。」
ガキョン!「組み合わせが悪かったわね。近づく前に終わらせたげる。」「・・どんだけー。」
ぴくっ。「・・どこでそんなのおぼえたの?」「便利ですよ・・目上の方にツッコむときとか。」
「聖あたりね・・下克上、できるものならやってみなさい。」「もう一度・・どんだけー。」
『ガンダムファイト!レディー、ゴー!』ばっ。ピィィィ・・「パルスショット。」キュパパパッ!
「アビス、五指からパルスレーザー!」「威力は低いが牽制にはじゅうぶんや。」「鏡扇。」
バッ、ぱしいいいーん!「なっ?反射!」ばっ!キュパパパッ!「レーザーを反射した?!」
「あの扇や。扇面が鏡面加工されとる!」「化学実験の時間にミラーコーティングしました・・」
「単なる鏡で高出力レーザーに耐えきれるかしら?収束!」ぴっ、シュドンッ!「アビス、今度は
五指を揃えて発振!」「さっきよか口径もエネルギーもケタちがいや。」「天晴扇。」ばばっ。
「鳳凰舞。」ばさばさっ!キュキュン!『なっ?!』「レーザーが・・散った!」「なんでや!」
「そんな・・いったいどうやって?・・はっ?!」・・ボッ!「スキありです・・紅葉狩。」
ヒュヒュッ、ズバババッ!「ちいっ!」ドンッ!・・ザザーッ!「アビス、どうにか回避。」
「なんとか外装一枚で済んだか。」「くっ・・後退が遅れたら、中枢までやられてたわ。」
リングサイド。「志摩子さん・・すごい。」「光を散らすなんて・・乃梨子ちゃん、どういう
からくりか知ってる?」「あ、実に単純ですよ。屈折です。」『屈折?』「扇で真空断層を作り
それを光路に置くと、境界層で屈折するんです。」「でもそれだと垂直に入ってくる光にはまったく
無力だよね?」「平面なら、です。実際の界面は複雑な形状なので、ああいうふうに不規則な
光に分散されるんです。」「いわば大気のブラインドか。」「さすが志摩子さん、頭がいい。」
「なるほど・・光学の基礎ってわけね。でもね、そういう防御策を想定しない私だとでも?」
ダッ!「なんとアビス、接近戦を挑む気です!」「デュエルの本領は接近戦でこそ発揮される。
血迷うたか?」「・・銀杏扇。」パン!「迎撃。」ヒュッ、「おっと。」さっ、ガキイイーン!
「?!・・ショルダーバインダー!」「単なる反射鏡だけじゃないのよ。そして!」ぴっ。
「レーザーブレード!」ヴン!ズドオッ!「ぐっ!・・」「決まった、ゼロ距離から腹部に直撃!」
「あの間合いなら真空断層は使えん。さすがは上級生や、あっという間に攻略しよったで。」
ジジジジ!「中枢は外したけどまあいいわ、このまま胴切り真っ二つにしてあげる!」ググッ!
「・・S.E.E.D発動。」・・カッ!わしいっ!メリメリ・・「こ・・この力は?!」グシャアッ!
「ぎゃあっ!」「な、なんとデュエル、アビスの手を握りつぶした!」「あら痛いで~。」
「ぐううっ!・・志摩子!」【・・イイエ、ワタシは死魔子】はっ。「・・志摩子のペルソナ!」
ゴォォォ・・「・・なんや?いきなり天気が。」「えっと、天気図・・あれ?今日は晴天よ。」
「となると・・嵐を呼んだんか。」「嵐?・・」ピカッ!ガラガラガラ!「・・死魔子の気ね。」
【ロサ・フェティダ。イッペンシンデミル?】ぐっ、シャッ!「疾い!」ビュボッ!「くっ!」
さっ、ぱりいいーん!「・・左ショルダーバインダーが!」「貫手がかすっただけで砕け散った!」
「直撃食ろうたら、頭なんか消し飛ぶで・・デュエル・バーサーカーモードはバケモンや。」
キラキラ・・【ヨクヨケタネ。】「くっ・・このままじゃ勝ち目は・・?」はっ。キラキラ・・
「・・やってみる!」ばっ、ザザーッ。・・キィィィ。「アビスの頭部に・・光が集まる?」
「頭部レーザー砲や。強力やが、射線は見切られやすいで。」【アタルトオモッテルノ?】
「やってみればわかることよ。はああああーっ!」キイイイイ!・・ズゴオオオオーッ!
「極太レーザー発射!」【コンナノヨケレバイイコトネ。】ひょい、バシャアアアアーッ!
「はい、よくよけてくれました。・・計算どおり。」【ナニ?・・ハッ?!】ピピピピッ。
「なに?・・無数の光の線が。」「軌道がおかしいで。まるで空中で反射しとるとしか・・」
【エ?エ?】「いま放ったレーザーはあなたを狙ったんじゃないの、そこへ追い込み、なおかつ
反射させるためよ。」はっ。【・・カガミ!】「さっき砕いてくれたショルダーミラーの破片が
無数の反射鏡となり、レーザーを反射分光する。すなわち!」ピカッ!ドオンッ!【ナッ!】
「これぞ『烈光嵐』!」ズバシャアアアーッ!【ウワアアアアーッ!】「す・・すさまじい!
無数のレーザーがあらゆる方向から!」「あれだけ高出力となると、分光反射を繰り返しても
さほど減衰せん。ガンダムの装甲とて紙同然や・・」シュババババッ!「反射鏡が全て蒸発もしくは
落下すればおしまい。」ゴォォォ・・「・・さすがです、ロサ・フェティ・・」ユラッ、ズズーン。
「ガブ女の学年は年齢以上の力の格差があるのよ。そうそう簡単に下克上されるものですか。」
ローゼンクロイツ露天甲板。ゴォォォ・・「どや、実際に見てみた感想は?」「んむ、強そうなのが
いっぱいだね。」「とはいえ、私たちよりは若干落ちるか。」「実戦経験値の差だよねー。」
「それでも黒薔薇会はてごわそうですね。」「精鋭部隊っぷりは昔と変わらんな~。特にあの
『ロサ・カルディナル』は、めっちゃ強いでー。」「ならばいずれ試してしんぜよう。しかしだ。」
「・・なによ?」「体操服の上は入れる派?入れない派?」「私は入れない派かな。上半身の動きが
制約されるし。」「おへそ見えると恥ずかしいから入れるねー。ゆきちゃんは?」「入れますね。」
「わたしは入れない派ー。チラリズムはロマンだよ、リビドーだよ!」「わかんないんですけど。」
「まあ運動会には間に合わんかったが、あさってからいよいよ顔合わせや。引っ越しは済んだけ?」
「だいたいは。」「いまどきの引っ越しはダンボールいっぱいにならないんだね。」「リサイクル
梱包材を多用してますからね。」「ネット接続済み、HDもチャンネル設定予約済みー。デフォルトで
BSもCSもタダで見られるとは、さすが辺境とはちがうね。」「伊賀を辺境ゆーな。田舎だけど。」
地上。「・・ん?」ぴくっ。「なんなの、祐巳?」「・・誰かに見られてた気配が。・・上?」
ゴォォォ・・じーっ・・「祐巳さん・・なに?」「・・どこかで似た気を感じたような?」
夕刻、片付け後のダンス。とはいってもフォークダンスではなく本格社交ダンスである。
必修科目なので一号生もこの時期には踊れるようになっている。男役は教師と黒薔薇会有志。
♪チャーラチャーラ。・・『祐巳さま、シャル・ウイ・ダンス?』『ロサ・カルディナル!』
「あーはいはい。順番にならんでー。」「・・祐巳って、けっこう一号生に人気あるのね?」
「祐巳さまはコワモテの多い黒薔薇会の中でも、いちばん近づきやすいキャラですもの。」
「コワモテってのはちょっとひっかかるけど、否定はしないわ。・・なるほど、等身大か。」
「騎士団長やら薔薇枢機卿やらと、すごい肩書きあるのにね。」「それを鼻にかけず、以前のまま
自然体な姿勢がいいんですよ。」「そういえばうちの一号生も、実のグラン・スール以上に
祐巳ちゃんと話してるシーンをよく見るね。」「まず相談するなら祐巳さまに、というとこです。」
「むろんグラン・スールに相談するのがスジなんでしょうけど、自分のことで煩わせたくないとの
余計な気遣いが働いて、まずは・・というケースも多いです。」「なるほど、相談役か。」
「たしかに実スール間だとかえって近すぎて、ギクシャクすることもあるわね。」「そうか、祥子は
経験者だったね。」「半年も前の話よ。」「なにがあったんですか?」「ちょっとした食い違いで
二人が大ゲンカ。しばらく断絶状態にあったのを、お姉さまのとりなしでようやく修復できたの。」
「あのときは大変だったわ~。どっちも頑固で口ベタだから、テロリストの大軍をけしかけて、
イヤでも共闘せざるをえないようにしたり。」「・・あいっかわらず手段が過激なんですけど。」