♪コケコッコ~。ナディアの朝は愛用の目覚し時計の鳴き声で始まる。「ふああ~・・」ここ日本支社最上階・ペントハウスの
ナディアの個室は八畳の和間。ふとんの中からモソモソ出てくるその姿はピンクの襦袢。ほとんど吉原の遊女である。
「う~ん・・よし。」スッスッ・・彼女は小笠原流作法を習得しており、足の運びかた、襖の開けしめまで一分のスキもない。
グッ、ドッテーン!(襦袢の裾を踏んだ)「ふみっ!あいたた・・」・・が、修行不足のようである。(^^;;
キッチン。コトコト・・「スス・・よし。」彼女は朝食は自分で作る。今日の献立はご飯に梅干し、メザシに冷奴ネギのみそ汁。
バタン。「おはよ~、ナディア。」「おはよ、ヨーコ。白ネギの新鮮なのあった?」「はい。よくしまったのがあったわ。」
ヨーコは四時には起きて朝練をしている。(ちなみに夜九時には寝てしまう・・ほとんど小学生である(笑))
「どれ・・」チョン、カリッ。「うん、いいものね。」「どれ、ダシの方は・・」カタン。スイッ、チャッ。スス・・
「うん、いい味。だいぶうまくなったね。」「ヨーコの仕込みがいいからよ。」「・・あれ?この香味、けっこーいいね。」
「ちょっとゴマ油をたらしたの。」「へぇ・・よくそんなテク知ってるね。」「池波正太郎先生のおかげ。著書にいっぱい
ヒントがあるわ。」「仕掛人シリーズかい!ま、あたしも鬼平は見てるか。」「やっぱりEDよね~。ジプシーギターが
あんなに江戸情景に合うなんて。」「うんうん。あれだけ見てるヤツもいるっていうしね。」「昔は『35分の男』って
呼ばれてたわね。黄門さまは印籠から、必殺は仕事から。」「そりゃ作者じゃ!あ、将軍さまも成敗からだ。」(^^;;
ガチャ。「じゃ、いってくるね。」『いってらっしゃーい。』パタン。・・「情報局長専用オフィスか。まあ仕事がら
そういう場所も必要なのはわかるけどね。」「この共同オフィスもかなりのセキュリティレベルのはずだけど?」
「それでも不足だって。こことは異なる独自の保安システムを使ってて、マチルダでも侵入できない要塞なみ。」
「あそこはまさに鉄壁ですよ~。つけいるスキもありません。どこであれほどのシステム作ったのかなー?」
「でも・・あのオフィスはシュミ丸出しではないかい?」「いっぺん入ったけど、ありゃやりすぎだわ・・」
情報局長専用オフィス。六畳の和間である。書見台、桧造りの机、そして座布団。まるまる和室であるが、その裏には
高級テクノロジーが秘められている。「さてと・・」ピッ。シュッ。机からディスプレイが起きあがり、手元にキーボードと
各種コントロールパネルが現れる。「今朝のBGMはと・・琴にしよう。」♪ピピピッ。・・♪トリラリリトトン・・
「ん、いい音・・スピーカーを繊細な音が出るサンスイに替えて正解だったわ。環境音は・・川とウグイスと竹林。」
♪ピピッ。・・サラサラ・・チチチチ・・ザザザザ・・「これでよし。さって、お仕事おしごと。」カタカタカタ・・
♪チリーン。「あ、『世界』の定時通信ね。」ピピピッ♪ぱっ。『ういっす、悪魔。』「まだ生きてたのね、二ポりん♪」
『その呼び方はやめろー!・・てめえ地球へ生きて帰れたらおぼえとけ!』「そのときはそのとき。状況の変化は?」
『まもなく木星圏だ。ふみこたんの話では、ちょっと「斧」に寄っていくとさ。』ぴくっ。「・・そのセンはあぶないわね。
こないだの『ヘル=シング』はそこの所属の疑いが濃厚よ。」『おぼえてるさ・・けどかえって安全じゃないかね。』
「どういうこと?」『都市戦艦「斧」がいくらでかいったって、あたしらとドンパチやったらすぐにスクラップになる。
カーン財閥の金の成る木・メタンハイドレートプラントを犠牲にするかね?』「・・なるほど。でも暗殺という手もあるわ。」
『それがあんたならマジでヤバいけど、それ以外なら穏便に済ますさ。』「じゃ、明日から連絡なくなるつもりでいるから。」
「期待を裏切ってやるよ、じゃ。」『なまんだぶ~。』プツッ・・「ブリッジで秘密通信とはね。聞かれてもよかったのか?」
「別にふみこたんに聞かれて困ることはないからね。それに聞いたろ?『斧』では楽しめるかもしれねえってさ。」
「たく・・ほんっと君は揉め事好きね。」「人生は刺激がなくっちゃね。特に長生きしてるとそうじゃないかい?」
「たしかにね。刺激こそ若さを保つ秘訣さ・・さて私も通信がある。悪いがこちらは聞かれて困るが。」「おじゃまさま。」
カツカツ・・「・・これでよかったのか?幽音。」チリーン♪ボウッ・・「いいんじゃない。ついでに公会議にもお招き
しちゃおうかな。」「ふふっ、それはさすがにムリだろう。会議中はくつろいでもらうよう、インテグラに伝えておいて。」
「おっけい。それと少々の刺激もね♪」「ほう・・お手並みを拝見しよう。」「会議の余興にはもってこいだし。」
コーン。鹿おどしに模した時報。「お昼か。」♪ポン。『はい、食堂部出前課です。』「日替わり弁当、よろしく。」
『ありがとうございます。5分以内にお届けします。』ピッ。「さーてと、それまでお茶でも煎れておきましょう。」
♪ピッピッ。ススーッ。ザブトンはリニアモーターでオフィス隅にある茶席へと移動。そこでお茶を立てる。
「え~と・・駿河葉のほうじ茶にしよう。」茶葉も各種ブランドが揃っている。♪ペペン。三味線音のチャイム「はい。」
『出前でーす。』「どーぞ。」カチャ。オートロックが解除。「まいどどうも。」「ごくろうさま。はい、酒手よ。」
チャリッ。「こりゃどうも。局長だけですよ、出前要員にチップくれるのは。」「日本にチップの習慣がないのは知ってるけど、
昔はちゃんとあったのにね。」「まあ今はサービス料こみってのが常識ですからね。でも、もらうとやっぱり嬉しいもんです・・
はいこれサービス。」「まあ、納豆パック。ありがと。またよろしくね。」「はい。済んだら器は表に出しといてもらえば、
後で回収しますから。」「はい。さて今日はなにかな?」かぱっ。「おっ、カラアゲ定食♪ポン酢もちゃんとあるわね。」
午後は外出。どこへ行くかというと・・カラーン♪「あら、オーナーいらっしゃいませ。」「マルローネ、この前に
頼んでおいたものできてる?」「できてますよ。よっこいしょ。」ガチャン。「まずワイヤーショット。旧バージョンより
射出速度が向上。先端のスピアも強化したから、鉄板でも食い込みますよ。」カチャカチャッ。「ターゲットは?」
「天井のあそこが1cm厚の鉄板です。」さっ、シュピィッ!カツーン!クイクイ。「なるほど、しっかりかかってるわ。
巻き上げ速度は?」「モーターをバージョンUPしたので速いですよ。頭ぶつけないように。」カチン。ピッ、シュイイッ!
「おっと!」ぱしっ!「ね?速いでしょ。」「秒速10mくらいか・・使えるわね。」パシッ!ブツン!・・すたっ。
「これでいいわ。いくつ?」「まずは注文どおり50セット。一個20万とお安くしておきます。」「プロ仕様にしては
たしかにお得ね。使ってみてから大量発注するわ。」「まいどありー。さて次はちょっと高いですよ。」ゴトゴトン。
「まずは鋼拳プレミアムハート。パンチ力を数千倍に高めます。子供でも象を撲殺できます。」「いいわね。次は?」
「妖刀ムラマサブレード。これは使い手を選ぶので要注意。」「そう?」ぐっ、シュイッ。「・・あれれ?抵抗しない。」
「当然でしょ。私はもと『ソウルエッジ』所有者よ。」「あ、格がそもそも上か。」ムォォォ・・「刃に呪紋か・・
うちのメンツで使えるかな。ま、試してみるわ。」カチン。「次は大きいスよ。よいしょ!」ドン!「巨大十字手裏剣?」
「烈風手裏剣『不倶戴天』。これも別の意味でヒトを選ぶわ。」「うわ、こんなのどうやって使うの?」「知りません。」
がくっ。「・・まあ、うちの連中ならなんとかするでしょう。いちおうもらっとくわ。」「えーと、最後はこれです。」
コトン。「日本刀?ありがちね・・」カキッ、ズズ~ッ。「うっ!・・これは?!」「本日のオススメの逸品です。」にっ。
「黒い刃・・はじめて見たわ。」「忍刀シャドウブレード。その黒いのは燻しじゃなく、地金自体が黒いんです。」
「・・素材は?」「未知の鉱物、とだけいっておきましょう。切れ味は・・」くい、ぷつっ。スゥ・・パラリ・・
「髪の毛が触れただけで切れる・・おいくら?」「二億で。」「買った。」「まいどあり。お支払いは?」「振り込みで。」
♪ピピッ。「すぐに三億五千万円を例の口座に・・あ、それに人手を。」♪ピッ。「またのご贔屓をお待ちしてます。」
午後三時。名出屋城71階、資料部。日本支社内で最も目立たない部署であり、社員によってはその存在さえ知らない。
カツカツ・・ガチャ。「こんにちは。」シーン・・「・・どなたかね?」ひょい。「資料をいただきたいんですけど。
整理番号はTゼロのWN。」「いちばん隅っこの棚じゃ。」「どうも。」カツカツ・・「T・・ゼロ・・WN。」コトン。
スッ・・脇の壁を透過する。(ロックを外さないとただの壁)「う~ん・・もうひと工夫したいところね。」(仕掛け好き)
パシュッ。「おお、ナディアか。」「贈り物は受け取ってもらえた?ビッグシャドウ。」「うむ、良いものを感謝する。」
ここは情報局長親衛隊『タウン(街)』本部。防諜・護衛・非合法工作もこなす局長直属の隠密精鋭部隊である。
この「タウン」隊長こそ覆面の男ビッグシャドウ。本名不明、経歴も当然ながら不明。ナディアだけが全てを知っている。
「マルローネに頼んで世界じゅうから探してもらった特殊武器よ。さてあなたの部下に使いこなせるかしら?」「ふふふ・・
特に優秀なメンバーに渡したところだ。まあしばらくは様子見だな。」「・・あら?その刀は。」「これか。」チャッ。
「シャドウ・ブレードじゃない。部下のボーナスをあなたが取っちゃダメじゃん。」「候補者に持たせてみたが、私以外は
抜けなかったのでな。」「そんなもんなの・・まあ、あなたならわからないでもないけど。」「これで『タウン』の戦闘力は
アップした。いままで以上に活躍できるだろう。」「そのへんテロリストの死骸の山にしないでよ。警察やマスコミへの
圧力も限界があるから。」「なに、無人地帯へ放り出せば一晩で骨までなくなってるさ。東京シティはそのへんは便利だ。」
午後五時。「ただいま。」『おかえりー。』「これでみんないるわね。今夜は外食の予定だけど、どこ行こうか?」
「まだ行ってないチャンコ屋があるわ。」「おっ、チャンコはいいね。」「チャンコってなんですか?」「お相撲さんが
食べる鍋料理よ。すごくおいしいって。」「あー、ネットでみたことあります。」「ほんじゃ、行こうか。」
ネオ浅草三丁目通り。ガヤガヤ・・「さすがに外人さんが多いわね。」「ガンダムファイトで世界じゅうからお客さんが
来てるしね。おかげで外人集団の私たちも目立たないわ。」「あたしゃネイティブだよ。」「ヨーコは体型が外人じゃん。」
ぽん。「そうね。身長172で91もあるしね。」『ええっ!』「ヨーコそんなに重いの?!」すぱあああーん!
「バストじゃー!そんなに体重あるかい!」「あら、さほど変わらないはず・・きゃっ!」がしいっ!「ナディア・・
あんた命いらないのかい?」メキメキ・・(コブラツイスト)「あいたたた!ごめんごめん!」「街中でやめなさいって。」
ガラガラ。「いらっしゃーい・・おお、オーナーですかい!」「親方、六人前よろしくね。」「へい。そちらの座敷へどーぞ。」
「親方?」「もと相撲取り。弱かったけど、チャンコの腕は超一流って評判だったのよ。タニマチ時代に知りあったの。」
「ええ?タニマチまでやってたの?!」「それどころか、私の部屋もってるもの。今度の場所で十両にあがるわ。」
「へーい、まずはカツオのタタキ!」ドン!「おいしそう~。」「どれ・・」ぱく。「うん!身がよくしまってておいしい!」
「こりゃ新鮮ね。」「火の通し加減もバッチリ。」「タレがよくしみこんでるわ。」「このタマネギの辛さがいいわ~。」
「養殖とはいえ飼料と環境には気を使ってるから、ヘタな天然モノよりおいしいはずよ。」「え?・・まさかナディア、
養殖場まで経営してるの?」「だっておいしい素材を安定供給するには必要だもの。水野水産の協力で海底牧場を瀬戸内海に
創ったのよ。」「水野って・・ああ、フルハウスのアニーの母方の実家で、グループ海運の大元締めの。」「なるほど・・
ナディアこういうのは徹底的にやるのね・・感心するわ。」「へーい。今度はチャンコ鍋!」ドン!「おお!海産物と鳥肉が
いっぱい!」「この量なら六人でも充分食べられるわね~。」「残り汁でウドンもつくりやすから。」「これがうまいんだ。」
「ふーっ、よく食べた・・」「こりゃ太っちゃうわね・・」「だいじょーぶよ。プロ用とは違って、アッサリめにしてあるから。」
「そう?・・ま、おいしければいいやね。」「さて、行こうか。」「はい親方。心づけよ。」「とんでもない。オーナーから
もらったりしたらバチが当たりまさ。」「ほんの少しだから、ね。」「・・あの辺の心配りは日本人でもそうそうできないよ・・」
「ナディアがこのモールの店子から慕われてるのは、ああいう姿勢によるものらしいわ。」「たいしたオーナーね。」
「さ~て、ちょっと腹ごなしに歩こうか。」ガヤガヤ・・「しかし・・ここはホントに全て和風ね。」「まるで江戸時代に
タイムスリップしたみたい。」「かつての浅草・仲見世通りをできるかぎり再現したの。違うのは天井があるくらいかな。」
「でも天井が高いから圧迫感はないわね。道幅も広いし。」「周りは三階層の東洋最大のショッピングモールだしね。」
ワイワイ・・「中央広場がにぎやかね?」「ああ、アトラクションやってるの。」「え?」キーン!カキーン!
「チャンバラアトラクション?!」「一時間置きにやってるのよ。このモールの名物。」「へえ、まるで日光江戸村ね・・
あれ、あの座頭市は・・」「キラルさん。アルバイトしてもらってるの。」『ええっ?!』「どっからそんなコネつけたの?」
「情報局関係よ。暗黒街にも知り合い多いから、顔見知りなの。」「おっ、居合いの実演よ。」「たのむぞ、コクリコ。」
「はい、お父さん。それっ!」ぽいっ。ヒュッ!スパパーン!「よっとっと!」ぱしっ。ピキッ、パラパラ・・
オーッ、パチパチパチ!「さすがね。オヒネリなげよ!」シュピピッ。チャリンチャリン。「ほいほいほいっと!」
「さすが。オヒネリを居合いで弾いて助手の子の帽子に入れてる。」「・・ところで、あの助手の女の子はだれ?」
「うむ、今日もよい稼ぎになった・・殺し屋やファイターより身入りがよいな、これは。」「キラルさーん。」
「むっ?おお、オーナーではないか。」「お仕事ごくろうさま。そちらの子は?」「私の養女だ。」「こんにちはー。」
「あら、養女なんかいたんだ。」「いろいろあって、私がひきとって育てておる。」「コクリコ・アートマンです。」
「へえ~。・・あら?そっちの道具はもしや。」「ボクの手品道具です。」「おお~、マジックショーもやるんだ。」
「コクリコ、見せてあげなさい。」「はいお父さん。はいっ!」ターン!くるくるっ、「それっ!」ぽぽぽーん!
にゃあにゃあ!『おお~!』「なんて身の軽さ!」「アクロバットとマジックを組み合わせるとはすごいわ!」
「・・(これはいい人材かもね。あとであやめプロデューサーに話しておこう。年棒はまずは一千万からかな・・)」
「・・」ギリギリ・・(ターゲット・・クレオパトラ。)ぴたっ。(・・はっ?あれはヨーコ先輩?!なぜ先輩が?)
『弓とは古風だな。』はっ?!くるっ、わしいっ!「矢を押さえてしまえば使えん。」「・・!」シャッ!「なにっ?!
後ろから!」「はいっ!」パシッ!「あぶなかったですね、隊長。」「ティファ、助かったぞ。」「くっ・・!」がしっ!
「ぐっ!」「おっと。舌を噛んで自決しようとは見事なプロ意識だ。」「よくやったクラウド。」「遠隔操作式ボウガンが
あったよ。用意周到ね。」ぽい、ガシャン。「若いのになかなかの手練れです。実に興味深い。」「ユフィとヴィンセントか。
さて、どうする?」「吐かせるのはまず無理でしょうね。」「なら殺すか?」「しばし待て。・・おぬし、射撃の寸前に
動揺がみられた。何を見たか?」「・・」「当ててやろう・・ヨーコ殿だろう。」ぴくっ。「どうやら図星のようだな。」
「隊長、なんで?」「ひとつ。狙いをつけている先に見えるは女帝とフォアカードのみ。ふたつ、どうやら彼女は日本人、
そして使っている弓は和弓だ。ちゃんとした弓道を学んだものだろう。ならば武道つながりでヨーコ殿、という線だ。」
「なるほど・・」「提案があります。ヨーコ殿に面通しさせてはいかがでしょうか。」「!!・・」じたばた!
「よほど会いたくないようだな。むん!」ドンッ!「!・・」くた・・「これは面白い。ぜひ顔合わせさせてやろう。」
名出屋城ペントハウス、大浴場。カコーン・・「ここのオフロは大きいからいいわ~。」「ニューヨークの屋敷なんて、
個人バスだけだもんね。」「はーあ、ゴクラクゴクラク。回路のオゾンが洗われるようだわ~。」「シルビア、マチルダ
お湯に入ってだいじょうぶなの?」「腕時計でもいまどきは防水だよ。問題ないない。かえってバイオスキンはこうして
定期的に洗浄することで冷却効果が高まるのよ。」「しかし・・このオフロの作りはまさに銭湯ね。」ザザァ・・
「あのタイルの富士山、いつ見ても感心するわ~。」「このゲロリンのポリ桶、どっから持ってきたんだ?」
「日本じゅうのつぶれかけた銭湯をめぐって、買い集めてきたものの寄せ集めよ。情緒があっていいでしょ。」
「脱衣場にある映画のポスター、ありゃ半世紀も前のじゃない。」「しかもC級のゴミ映画のばっか。金もらっても
観たくないというデキのよ。」ちっちっ。「マリア、まだまだ甘いわね。ああいうゴミの中からキラリと光るものを
見い出すのが映画の醍醐味なのよ。」「あ、それはナディアに同感。まれにいいのに当たるとすごく嬉しいんだな。」
「そうそう。この映画は自分しか知らない!という優越感がクセになるのよね。」『マニアっぽいな~。(^^;;』
「具体的にはどういう映画なの?」「人食いエレベーターの映画って知ってる?」「のっけからうさんくさいな~。」
「あと巨大人食いウサギの群れの映画。」『なんやそれ~!』「やっぱアレでしょ。人食いトマト!」「おおっ!」
がしいっ!「仲間。」ぽんぽん。『おいおい・・(^^;;』「ヨーコとナディアの漫才は見てて飽きないよね~。」
脱衣場。ぽん、んぐんぐ・・「ぷはーっ!」「腰に手を置いて一気に。さすがネイティブジャパニーズのヨーコね。」
「こればっかりは日本人の遺伝子情報の基礎の基礎だしね。」「じゃあ私はフルーツ牛乳で。」ぽん、んぐぐぐぐーっ!
「・・ぷはああーっ!細胞が活性化する~!」「変な習慣ね~。・・じゃ、コーヒー牛乳を。」「プラッシーで。」
「オロナインでいってみよー。」んぐぐぐぐ~っ!x3 『・・ぷはああああーっ!』「こりゃいいね~!マリア、これをぜひ
輸出品目に。」「文化習慣の輸出は扱ってませんってば。」「いまから扱えばいいじゃん。」「またムチャを言う・・」
「さて、ちょっと涼もうかな・・」チリーン、チチチチ・・ナディアの部屋の外には小さいながらも室内庭園がある。
そこは常時、秋の気温に保たれ、微風が吹き、コオロギや鈴虫が鳴いている(BGM)。ここの縁側で涼をとる。
「・・?」ぴくっ。「・・わかったわ。」すっ、トントン・・「・・ヨーコ、まだ起きてる?」・・ガラッ。「なに?」
ヨーコの部屋には縁側で続いている。「ちょっと・・」トントン・・「・・あれ?庭に誰かいる。」「テロリストよ。
うちの者が捕獲したけど・・見覚えある?」「?・・ちょっと待って。顔を伏せててよく見えないね・・」カラン。
カラコロ・・すっ。「・・手錠じゃなく縄で?舌を噛まないようにボール咥えさせてるのが古風というかSMというか・・」
くいっ。「・・あああーっ!」・・ガラガラッ!『なにごと?!』バタバタバタ!「あちゃ~、みんな来ちゃった・・」
「ナディア、あれは?」「黒いドレスの女性?」「どうやってここに?」「かくかくしかじか。」「へえ・・ヨーコの顔見知り?」
「花火ちゃんじゃない!」がしいっ!「なんで?どうして花火ちゃんが!」「ヨーコ、死ぬからボール取っちゃだめよ!」
「うっ!・・ナディア、これはどういうことなんだ!」「言ったでしょ。私たちを狙って失敗したテロリストよ。」
「そんな?!・・あの花火ちゃんがテロリスト?信じないよ、あたしは信じない!」「事実よ。」すっ・・ぱしっ。
「天井から紙が?」さっ。「・・いまので身元が判明したわ。須佐乃男花火、ネオジャパン出身。コロニー高校卒・・
卒業年度からいうと、ヨーコの一学年下ね。弓道部に所属し、インターハイで三度優勝・・卒業後に結婚するも、
デビルコロニー災害で行方不明・・記録はここまで。」「この二年でいったい何があったの花火ちゃん!」がくがく!
「これ外すよ。話もできやしない。」「だめだって!」「死なせない!」きっ!「・・わかったわ。」ぐっ、カポッ。
「・・!」さっ、ガブッ!「?!」『あっ!』「つ・・」タラ・・「指を突っ込んで止めるなんて!」「く・・せめて
事情だけでも聞かせてよ・・ね。」「・・」かぱっ。「ヨーコ、手を!・・うっ!骨までいってる・・」ドクドク・・
「マチルダ、薬箱!いえ、医者を!」「いらん!・・来い、最後の審判!」・・シュッ!がしっ。「たのむよ。」
オォォォ・・ピカッ!シュゥゥゥ・・「すご!・・あの深い傷が再生していく!」シュゥゥゥ・・「これでよし。やっと
まともに話せるわね。」「先輩・・すみませんでした!」「そう思うなら、ちゃんと話して。」「・・はい。」
「そうか・・そんな事情が。」「・・もう昔には戻れない。今の私は血にまみれた殺し屋です・・」「それはちがうね。」
「・・えっ?」「やり直す気があるなら何とでもなるよ。現にさ・・」ぼそぼそ・・「・・ええっ?!」「しーっ!」
ばっ。「・・なんですか?」「そう。だから花火ちゃん程度なんか問題にもならない。あたしも更正を手伝ってあげるよ。」
「ヨーコ、そのことなんだけど・・情報局は優秀な人材を常に必要としてるの。うちとしては大歓迎よ。」「ナディア?」
「私に預けてくれない?けっして悪いようにはしないわ。」「ナディアんとこで良いようになるとも思えないけどね。」
「花火ちゃん、やってみる?」「先輩のお心づかいに応えるためにも。」「おっし!」ぽん、ズキッ!「!・・いたたた。」
半刻後、ナディアの部屋。「・・そういうわけで明日には引き渡します。」『助かります総帥。これで欧州支部員候補が
またできました。先のキラルさんの養女も交渉に入ります。』「よろしく、あやめ司令。夜分に悪かったわ。」プツッ。
深夜・・「スー、スー・・」・・ピピピッ♪ぱちっ。「緊急コール?」ピッ♪『夜分遅くすみません。』「いいのよ。なにごと?」
『ネオナチス大幹部の日本での潜伏先が判明しました。ホテルニューポート2308号室。』「あら・・すぐ近くじゃない。
灯台もと暗しね。」『すぐに行きますか?』「もちろん。2時間もあればカタはつくわ。ありがと、父さん。」ピッ♪
静かにフトンを抜け出し、床の間から隠し部屋へ。黒づくめの仕事着に着替える。足跡も残さず庭園を駆け抜け、隠しドアから
ビルの外へ。ビュウウウ・・「ちょっと寒いかな・・まあ75階だしね。」タタタッ、ターン・・ゴオオオオーッ!
「ワイヤーショット。」シュパッ!ヒュルルル・・ガキイッ!「リバース。」カチッ。ジイイイーッ!ギューン!・・スタッ。
「うん、いいわね。明日に大量発注しましょう。」『使えるな。』ボオッ。「助っ人無用よ、シャドウ。このくらい自分だけで
やらなくちゃ『悪魔』の名がすたるわ。」「その気はない。見学だけだ。」「・・好きにしなさい。」タタッ、ターン・・
ホテルニューポート2308号室。「・・」すっ・・ドギュ!『!』くわっ!メリメリ・・グシャアッ!・・がくっ。
ズボッ。「お仕事おしまい。参考になった?」「『ネンブツ』で心臓を握りつぶすか。まったく参考にならん。」
「でしょ。外傷なし、出血なし。司法解剖されても動脈瘤破裂としか認識できないわ。」「他殺とはならぬか。さすが。」
「いま何時?」「午前三時だ。」「いっけない!四時に起きるヨーコより先に戻らなきゃ!」「ご苦労さまだな。」
戦艦「グラーフ・ツェッペリン」艦橋。「老師、見えたよ。」「ほう、あれか。外惑星圏の門、都市戦艦『斧』・・」
ゴォォォ・・「前はタイタンに直行したから見るのは初めてだね。」「メタンの海に浮かぶ巨大な扇、いや、斧か。」
「メタンコンビナートとその従業員の家族、合わせて一万人が居住している。加えて外惑星圏へのターミナルだな。
最近は後者のほうで有名か。」「たしかにいろんな大型船やシャトルがあるね・・おや?」「なんじゃ?」「ほら・・
都市下部のポート。あんな巨艦あったっけ?」「はて、あれほどでかければそれなりに有名じゃろうに・・知らんの。」
「ふみこたんなら知ってるだろ。ありゃ何だ?」「あれは個人所有艦だ。艦名は『ヴァルハラ』。」「ヴァルハラ・・」
「あんなでかい艦を個人で?どこのどいつだよ。」「それ以上は残念ながら機密事項だ。私もそこまでしか知らぬ。」
「コロニー連合空軍准将が知らされない?そんなえらいヤツがこの世にいたっけ?」「ふむ・・心当たりがないのう。
しいていうなら表の世界の者ではない、ということか。」「裏世界か・・たしかにそれならありえるかもね。」
「『ダンテ』ポートに接岸します。」「なんだ?」「『斧』のスペースポートにはいろんな名称が付いている。なんでも
大領主のシュミらしい。」「へえ・・」「ダンテ・・『この門をくぐる者、全ての希望を捨てよ』・・か。」ニッ。
みなさんお待ちかね!ヨーコは駆け出しプロファイター。
早朝特訓あたりまえ。今日はチボデーとガンダムファイト!
試合が済んだら整備と修理。今夜はガンガン飲むぞ~!
次回、機動武闘烈伝ダブルGガンダム第50話
「ヨーコのファイターな一日」に、レディー、ゴーッ!
第50話「ヨーコのファイターな一日」
午前四時。日はまだ昇らない。「ん・・起きなきゃ。」ヨーコの朝は早い。「ん~・・おはよ、子供たち。」オォォ・・
抱いて寝ていた二刀はさわやかなオーラを発している。服を素早く着替える。灰色の地味なトレーナーに千円札一枚。
クレオたちを起こさないよう、静かに台所へ。ガパッ。「えっと・・三つでいいか。」ココン、パカパカッ。
大きなコップに生卵を割り入れ、少し醤油をたらして、ぐいいいいーっ・・コトン。「ふう・・よし。」玄関で愛用の
スニーカー(10キロのウェイト入り)を履き、早朝トレーニングに出発する。もちろん75階から階段で降りる。
シーン・・新市街中心にあたるここはまだ目覚めていない。耳をすませば、かすかに築地の魚市場のざわめきが聞こえるが、
すぐにそよ風にまぎれる。タッタッタッ・・トレーニングエリアに向けて走りだす。約5キロの道のり。10キロのウェイトが
全く感じられない軽快なピッチ。タタタタタ・・しだいにピッチを上げ、疾走となる。シャシャシャ・・ヒュオッ!
時速60キロものスピードを維持しつつ、白々と明けゆく東の空を背に、朝霧をまいて灰色の影が走り去っていく・・
「はぁはぁ・・」桜田門・旧警視庁前。このエリア一帯はファイターのためのトレーニングエリアに指定されており、
周りの廃ビル群は壊そうが砕こうが自由。大会後には新たな街が作られる。「さてと・・」霊刀「最後の審判」を抜き、
正眼にかまえる。「・・ラスト・ジャッジメント!」ゴオッ!ドオンッ!ドガアアアアーン!「ちぇすとおおおーっ!」
ブオンッ!ズガアアアアーン!木刀の一振りで次々とビルが粉砕されていく。「はあああーっ!ファイナル・ジャッジメント!」
ズドオオオオーン!ガラガラガラガラ!強大なエネルギーがビル五つをまとめて破砕する。「よし、次はあなた。」シャッ。
小刀「審判の日」を抜き、腰溜めにかまえる。「はぁぁぁぁ・・」気息を整え、気合をためていく・・ゴゴゴゴゴ・・
「・・!ジャッジメント・デイ!」ダーン!「でりゃあああーっ!」ドゴオオオーン!ズドドドドオオオーン!
「ひとつ、ふたつ・・みっつ!」ドバアアアーン!「はっ!」ザシャアッ!シーン・・グワラガラガラガラ!「ビル三つ!」
パチパチパチ。「ん?」「グレートだぜ!」「チボデー?・・早起きね。」「ファイトの日はここでウォームアップすることに
してる。まさか今日の対戦相手が一足早く来てるたぁ思わなかったがな。」「あたしゃ駆け出しだからね。人一倍稽古しなきゃ。」
「ナイスな心がけだ。じゃ、参考までに俺のトレーニングも見せてやるぜ。それっ!」シャッ!ドオンッ!ドガアアアーン!
ガラガラガラ!パンチの一撃で崩れるビルの巨大な破片がふりそそぐ。「それそれそれーっ!」ドガガガガッ!バガバガン!
次々と破片を連打で打ち砕く!「さすがに速いね・・」「まだまだ!アトミック・パーンチっ!」ズドオオオオーン!
ズゴゴゴゴーッ!「ビル五つ粉砕?!さすがクイーン・ザ・スペード・・」「へっ、所詮はタダのスクラップビルさ。
避けもしなけりゃ反撃もしねえ。実際にはこうはいかねえよ。」「まあね・・」「じゃ、リングで会おうぜ!」シュッ。
「いいファイトにしようね・・さて、続けるか!」チャキッ。「・・アトミックパンチを上回る一撃。そいつを!」
午前七時。帰り道の早朝開店スーパーで生鮮食料を買っていく。「え~と、大根と豆腐、葱と・・ん、鯵だな。」さっさっ。
ピッピッ♪「千円からおあずかりします。528円のお返しです。」「あ、百円玉でください。」「かしこまりました。」
ポリ袋を片手にかけて、店先の自販機でDr.ペッパーを買う。パシュ、んぐんぐ・・「このかき氷みたいな味がハマるね♪」
カンカンカン・・「はあっ、はあっ・・75階駆けるとちっときついわ。」ガチャ。「ただいま。」同じく早起きのナディアが
朝食の準備をしている。「お帰り。お味噌汁、ちょうどダシをとったとこよ。」「はい、ネギとトーフ。アジはあたしが焼くわ。」
「よろしく。」ジジジジ・・その間にもダイコンおろしを作り、あさつきを散らす。手際がよい。「あら、いいお豆腐。
これなら冷や奴にしたほうがいいわね。」「カツブシあったっけ?」「えーと・・あった。茗荷もあるから乗っけるわ。」
「いいね。・・ナディア、今日のファイトが終わったら、いっしょに昼寝しようか。」ぴくっ。「・・そうね、私もちょっと
寝不足だし。つきあうわ。」「決まりね。」トントン・・(さすがヨーコ。気づいてて、それでもなお気遣ってくれる・・)
八時前。ようやく他の三人(プラス1)が起きてくる。『おはよ~。』「ゆでたまご、作っておいたわ。」「ありがと。
ソーセージは自分でやるわ。」「あれ?トースト切れてる。」「冷蔵庫の上に新しいのあるわよ。」「あ、あった。」
「はい、コンロ空いたわよ。」「どーも。」「えーと、コーヒーいるひと。」『はーい。』「和食チームも欲しいっス。」
八時。『いただきまーす。』カチャカチャ・・ちなみにクレオ・マリア・シルビアはトースト・ソーセージ・ゆで卵の洋式、
ナディアとヨーコのみ和食である。「二人とも、よくその量で昼までもつわね。」「このくらいで丁度いいのよ。必要な栄養と
ビタミンは全てそろってるし。」「それにあたしゃ日本人。これが一番体に合ってる。」「ヨーコはわかるけど、ナディアは
東欧出身でしょ?」「どこだろうと関係ないわ。これほど美容にいい食事体系はないのよ。」「そう。コレステロールはなし、
ビタミン・カルシウム類はピュアなまま。お茶には脂肪を溶かす効用があるし。」「私も和食にしてから体調が良くなったわ。
体重も安定したし。」「それで二人ともエアロビなんかやんなくても、そのプロポーション維持できてるのね。」
「身体は自然なままがいいのよ。ナコとかアレンビーなんて、あれだけスリムでバンバン闘ってるのよ。聞いたけど、やっぱり
ウエイトトレーニングなんてやったことないって。」「そーよね。アレンビーの一度見たことあるけど、ムダな筋肉さえ
ついてないし、しなやかで強靭な筋肉だったわ・・思わずほおずりしたくなるような・・」『おいおいマリア・・(^^;;』
午後九時。「さてと、ドックへいくか。」ここ日本支社最上階(75階)のペントハウスには専用の重力シューターがついており、
一階まで数秒で落下する。昇りもあり、彼女たちはこれで地上を行き来する。(ヨーコだけはトレーニング時は使わない)
専用のIDセンサーを持ってない人にはただの自殺用エントツである。「よっと。」奈落のトンネルにとびこむ。ヒュゥゥゥ・・
ストン。半重力技術の応用で、階段一段分程度の速度で着地。「でもこれ、慣れないとバンジージャンプよりコワイね・・
クレオなんて初回は尻込みして、ムリヤリ蹴り落としたら、下で泣いてチビッちゃってたし♪」悪い連中である・・
地下・ガンダムドック。カーン。ガガガ・・「おはよー、おやっさん。」「おはようございやす、社長。」「あたしの相棒の
調子はどう?」「全システム順調。暖気も済んでやす。」「おやっさんの滞在してる旅館の住みごごちはどう?」
「さすがに局長の息がかかってるだけあって、設備もサービスも文句ねえです。まだ利用したこたないけど、芸者までいやすぜ。」
技術長は近くの旅館に長逗留している。一緒にペントハウスへ入っていいと言うのに、「娘っ子が6人もいちゃあ、さすがに
居ごこちがよくねえ。」と移ってしまったのである・・意外とテレ屋である。「ビジネス街のど真ん中の温泉旅館か・・
ナディアもぶっとんだ発想するわね。」「外国客なんかには評判いいですぜ。うちの連中も出張の定宿にしてやすし。」
「さてと、そろそろ時間ね。会場へ行きましょう。コクピットに入って。忘れ物はないよね?」「え~と・・全部そろってやす。
サポートパネルも回路点検済み。」「よしと、ガントリー解除。」グィーン・・「メインハッチオープン。」ガガガガ・・
「リニアカタパルト射出五秒前。メインバーニア点火してください。」ヒュイーン・・「3、2、1、射出!」「いきまーす!」
シュバァッ!ゴオオオッ!ドバアアアーン!排気口を模した射出口から50mも打ち上げられ、そのままバーニア加速に入る。
ドドドド・・「射出完了。ハッチクローズ。」ドックから急上昇するジャッジメント。脇には日本支社の石垣を模した
スモークグラスの列が見える。「おっ、社長。あれあれ。」「おっ、社員が窓に群がってるね。」「あっちには用意よく
横断幕をかかげてやすぜ。」「試合時間には?」「もちろん、社員全員で観戦できるよう、一時間の業務中断になりやす。」
「クライアントが来てるとまずいね。」「へっ、クライアントも観戦させやすよ。いい宣伝になるし。」「ならいいか。」
会場上空。「え~と、入場門どっちだっけ?」「龍の門でやすね。虎の門にはもうマックスターがスタンバってやす。」
「あらホント。・・着地。」ズズーン。「最終チェック始めやす。ガンルーム(控室)でお茶でも飲んでてください。」
「トイレにいってくる。済んだら手伝うよ。」「ションベンし終わるまでには済みやすよ。」「大きいほうだけど・・」
ジャーッ。「これしとかないと、スーツ着てるときにもよおしたらオオゴトだからね。」「最終チェック終ってやす。
一杯どうぞ。」「ん・・これ、お酒?」「ヤットウたちにも湿し入れてやってください。」「そーだね。」グイッ、ブーッ!
シュゥゥ・・「さすがに吸いこみがはええや・・もう乾いちまった。」「こいつらも飲み助だからね。」オォォォ・・
♪トトン!トトトトン!「五分前の触れ太鼓。さ、いこう!」「サポートクレーンへ行きやす。」「よろしく。いくよ、
ジャッジメント!」ギン!「MTS作動!」ギュギュギュ・・「こーゆーとき、バストあるとちょいとキツいね・・」
ちなみにヨーコは91である。「最新は92だい!」失礼。ギュギュギュ・・「はぁぁぁ・・むんっ、おりゃあっ!」
スーツ装着後の予備運動。はた目にはカッコツケだが、これでスーツのムラをとっておかないとフィードバックがばらつき、
正しくトレースしなくなる。「はいーっ!ガンダム、ジャッジメント!」バーン!「よし!・・リングへ。」ズーン!
『ヘイ、ヨーコ。ナイスなファイトをやろうぜ!』「全力でいくよ、チボデー!」『そうこなくっちゃ!』「両者、中央へ。」
レフェリーの指示。「構え!」マックスターは正統派クラウチングスタイル、ジャッジメントは「最後の審判」を正眼に。
「・・始め!」『ガンダムファイト!レディー、ゴー!』「おりゃーっ!」ビュオッ!「そりゃあ!」ガチイイーン!
刀と拳がかち合う。「やる。それい!」ビュッ!「ミドルフック!」ガキイイーン!「この中段までも合わせた?!」
「ハリケーンアッパー!」ドンッ!「くっ!」クッ、スカッ。・・ドオンッ!「ぐっ!衝撃余波が!ちいっ!」ザザザーッ。
ズキズキ・・「いてて・・至近回避でもこれだけ痛むなんて、さすがチャンプのパンチ・・あの拳自体が強力な武器か。」
「そりゃそりゃそりゃーっ!」ドドドドッ!「なんの!」タタッ、ババババッ!「シット!ナイスなフットワークだぜ。」
「てりゃあっ!」ドン!「くっ、柄突きでブレイクか!」「この間合い!ラスト・ジャッジメント!」ズドオオオーン!
「バーニングパンチ!」ズドオオオーン!バキイイイーン!「また合わされた!」「そうそう簡単には食らわねえよ!」
「このままじゃラチがあかない・・一気に勝負!吼えろ!あたしの子供たち!」オォォーッ!ビーン!「ハイパーモードか。
なら俺も!うらあああーっ!」ビーン!「砕け!ファイナル・ジャッジメント!」カアッ!ズバシャアアアーン!
「撃滅!アトミックパーンチ!」ドオオオーン!バシイイイーン!「俺のパワーの方が上だ!」「うりゃあああっ!」
ダン!ズドドドドッ!「ジャッジメント・デイ!」ドバアアアーン!「ジーザス?!突き抜けやがった!」「もらった!」
「まだだーっ!」ブオン!ドバギイイイーン!『ぐがっ!』ゴォォォ・・「・・さすが。ぐっ!・・」ユラ・・ズズーン!
「ヨーコもな・・どおっ!」グラ・・ズズーン!「そこまで!この勝負、引き分けとする。医療班、急げよ。」
「あいててて・・ま、負けなかっただけいいか。」「お疲れさんでやした。アイスノン使いやす?」「ちょっとちょうだい・・
アゴとボディにいいのもらったから。」「へい。・・アザになってやすぜ。」「ボディはともかくアゴはかすめただけなのにね・・
さすがはクィーン・ザ・スペード。」「ふむ、これならコイツラの霊力で一晩で治るでしょう。いちおーバンソウコウを
貼っときますわ。」ぺたっ。「へへっ、けっこーお似合いですぜ。」「うるせ。・・さ、帰ってガンダムのダメージリペアしよ。」
ジーッ。カンカン・・「ふう、これでよし。」「装甲板の歪んだヤツを張替えるのと、過剰応力がかかったパーツのチェック
だけで済みやしたね。さ、食堂から弁当出前してきてもらってやす。ちょいと遅いが昼メシにしやしょう。」どん。
「そーね。・・しかし、これだけのガタイなのに整備しやすいね、こいつは。」ぱくぱく。「さいです。こんなよくできた
キカイは珍しいですぜ。」「他のクルーにも聞いたけど、ガンダムって作るの大変だけど、いったんできてしまえばこれほど
扱いやすいシステムはないって。」「極限までメンテナンスの簡略化が進んでやすからね。面倒なのはソフト面くらいでさ。
今日の動作データ、さっそく本部へ送っときました。」「本部も貴重な実働データ解析で大忙しだっていうしね。」
「この出張、通常業務以上の実入りでさ。ガンダムのテクノロジーはいろんな応用がききやす。医療機器、バイオテクノロジー、
サイバネティクス・・まさに技術屋のオモチャ箱・・いえ、宝箱でさ。」「そうだね・・マチルダもそこから生まれたしね。」
「さて、次は四日後ね。」「対ローズですか・・ローゼスビットは厄介ですな。」「ま、何とか対応策を考えとくわ。
あさってにドックで。」「ほいじゃ。・・旅館の温泉、今の時間なら空いてるな。ひとっ風呂浴びて生ビールといくか。」
「さーて・・フロ入るか。」ペントハウスの大浴場は彼女たちが滞在中は24時間沸いている。チャポーン・・ザザーッ。
「あいて・・ちょっとお腹のアザにしみるな~。ま。血行をよくしてやれば治りも早いか・・ん?」ガラガラ・・ぺたぺた。
「この時間に入ってくるのはマリアね。」「あったり~。」ザバァ・・「あんた一日何回入ってるの?」「平均6回くらいかな?
起き抜けでしょ、朝食後とお昼休みと仕事がハネたあとと寝る前。」「よくフヤケないわね~。キレイ好きにもほどがあるわ。」
「ほっといて。ヒトのシュミよ。」「ま、いーけど。」チャポン・・ススーッ。「・・おいおい、マリア・・」「あらら・・
玉のお肌にアザつけちゃって。もったいない・・」「ち、ちょっと・・目の色が違うよ・・」「日本人の肌はスッピンでも
これだけきめ細かいのね・・」すりすり・・ぞわあっ!「や、やめやめ!あたしゃそーゆーシュミないってゆーに!」
「いいじゃない、減るもんでもないし。」ぐぐぐっ。ぱこおおおーん♪(湯桶)ぷかぷか・・「やれやれ・・あぶなかった。」
「さてと・・マリアは正気に戻ったから一休み・・」ドサッ。万年床のフトンに大の字に寝っころがる。愛用の浴衣姿
(木綿の安物)のあられもないカッコーである。パンツくらいはけよお前わ・・見えるぞ。「うっさい。あたしゃノーブラ
ノーパン党だい。」さいでっか。「さ~てと・・レポートでも見るかね。」ピッ。天井に埋め込まれたモニターに世界の工場
からのレポートが流れる。すべてその国の言語である。「ふむふむ・・ほう、キエフで大雪で操業停止か。ニースはストライキ・・
おっ、ケープタウンで新製品か。」ヨーコは15か国語はペラペラ。基本会話だけならあと30はいける。肉体派かと思いきや、
意外と知性派である。博士号は数えきれないほど持っており、ノーベル賞は何回もノミネートされるも毎回辞退している。
「そういうのはもっと地道に研究してる人にあげなきゃね。あたしみたいな直感であとから理論づけしてるのはダメよ。」
「・・ん?もう五時か。みんな仕事済んだみたいね。どれ、夕食に行くかね・・」むっくり。Tシャツとベトナムズボン
(これもワークショップの安物)に着替え、軍用ジャケットをはおって部屋を出る。ヨーコの典型的ファッションであり、
ボリュームのあるボディによく合ったワイルドなスタイル。無頓着なようでポイントは押さえているのが粋である。
「今日はどこいこうか?」「ルナんとこはどう?」「あのファミレ?」「こないだ会ったときに来い来いってさんざか
言われてたし。」「あそこなら和洋中華なんでもあるし、ルナは味にうるさいからいいかもね。」「じゃ、そこに。」
「PIA・キャロット」。『いらっしゃいませー!』ザワザワ・・「うわ、さすが人気店。けっこう混んでるわね。」
「六人さまですね・・あっ、ひょっとしてオーナーの皆さま?!」「そうだけど。」「し、少々お待ちください!」
ぱたぱた・・ぱたぱた。「・・なんだよ~。来るなら来るって言ってくんなきゃ。いま空席待ちの時間帯だよ。」
「忙しそうね、ルナ。」「う~ん、お客さんすっとばすわけにいかないしな~。・・ね、酒のあるとこでもいい?」
「そりゃかまわないけど、ここってお酒出さないよね?」「姉妹店があんのよ。そっちなら席が作れるから。」
「えっ?・・そんなお店あったっけ?」「右に行ってすぐの角を右の奥。店には連絡しておくから。」「じゃあそっちへ。」
『はあ・・』「・・なんだこの店名は。」「『ガンダム酒場』ねえ・・私もこんな店があるなんて知らなかったわ。」
「ナディアが知らないってのは珍しいね。」「とにかく入ってみよ。ルナの店なら味もたしかだし。」ガラガラ。
ザワザワ・・「へえ、これはこれは・・」「丸テーブルに大きなカウンター・・これまんま西部劇の酒場みたいね。」
「いらっしゃーい。店長から聞いてます。そちらのテーブルにどうぞ。」ドカドカ。「うわ~、いいフンイキ。」
「・・あれ?どっかで見たようなお客さんばかりね。」「・・あ、あそこにいるのアルゴさんの海賊の皆さんだ。」
「あら、あっちにはネオタイランドのサポートクルーよ。」「こっちで食事してるのハンスさんじゃない。」「そういえば
ここってガンダムファイターとそのクルーたちが多いね。」「ご注文をどうぞ。」「あ、ちょっと。このお店って?」
「はい、ファイターとクルーは顔が知られすぎてて普通の店だと落ち着けないとのことで、店長が特別に作られた
ガンダムファイト関係者限定の店です。」「それでか・・聞いたことがないはずだわ。」「ルナも粋なことするわね。」
「注文はまとめて出すから、まずはビールと熱燗、そしてアイスティーね。」「はい。」「ビールとアツカンはいいとして、
アイスティーって?」「クレオは未成年でしょ。」「え~、そりゃそーだけどぉ・・」「あ、生酒一本よろしく。」
「へぇ、シルビアよく知ってるわね。」「こないだヨーコに教えてもらったの。アルコールの苦みがなくておいしいのよ。」
「私は日本酒はダメだから。」「マリアはワイン党だったわね。」「というより、日本酒のあの臭みが合わないの。」
「お待たせしました。」コトン。「これこれ。」コッコココ・・「あ、いい音・・」「この注ぎ音は・・はじめて。」
ぷ~ん・・『はぁ~・・』「・・なんて芳醇な酒精の香りなの。ワインやブランデーとはまた違った柔らかさね・・」
「お、ワインにうるさいマリアがめずらしい。」ツツ・・「あ~・・おいしい♪」「ちょ、ちょっとシルビア。私にも。」
「あれれ?お嫌いじゃなかったの?」「ぐ・・ちょっと冒険したいの。」「ま、いいでしょ。ほれ。」コッコココ・・
ツツ・・ぎょっ!「・・この味は?!」「どうしたどうした。」「うまい・・こんな味の日本酒があったのね。」
「あー、くださいください~!」「ほいマチルダ。」ツツ・・「こっ!・・こんなおいしいお酒があるなんて!」
「あの・・私も~。」『クレオはダメ!』「・・とみせかけて、ほい。」ちょっぴり。「どーも!・・」くいっ。
「え?これホントにお酒なの?」「でしょ~。こんなおいしいのはじめて。」「調子に乗ってバカスカ飲むと足にくるよ。」
「お待たせしました。ご注文の料理です。」コトコトン。『お~。』「グラタン・サザエの壺焼き・北京ダックにピザ。
ホントにここは何でもあるのね。」「あ、追加でシシ・カバブね。」「サンマの塩焼きもくださいね。」「まいど。」
ガラガラ。「ちぃーす。」『こんばんはー!』「あっ、チボデーとギャルズよ。」「おっ?ヨーコじゃねえか。こんなとこで
会えるとはね。」「おねえちゃんたち!」『クレオー!』「おお、そういや昔なじみだったか。」「クレオとこうやって
話すのは何年ぶりかしらね。」「ごめんね、忙しくてなかなか会えなくて。」「いいのよ。TVやなんかでクレオが元気で
やってるのを見ると、あたしたちもブロンクスのみんなも元気づけられるんだから。」「そうよ。それにクレオの会社は
ブロンクスからもいっぱい雇ってくれてるからみんな感謝してるのよ。」「それはこっちのヨーコのおかげだよ。」ぽん。
「うちは学歴じゃなく人間で取るから。ハングリーさと根性が主なポイントね。それと常識にとらわれない変人ほどいい。」
「ああ、そういえばうちの荒くれ連中さえ恐れ入る変な上司ばかりって聞いたわ。」「うちの技術屋はカレッジ出のウラナリ
なんかいないから。技術も必要なら学ぶ。机上の勉強よりも現物をいじったほうがよっぽど短期間で身につくものよ。」
『ほお~。』「それはよくわかるわね・・ろくに学問なんて受けてなかった私たちだって、チボデーのためにと必死に勉強
したものね。」「それで今やベスト・サポートクルーに選ばれるほどになったんだよね。」「人間、やれば何でも出来るのよ。」
「そのとおり!『できない』んじゃなくて『なぜベストを尽くさないのか』が問題なのよ。ベストを尽くせば道は開けるの!」
「いいこと言うねー!ね、うちの社に入んない?」「おいおいヨーコ、うちの大事なクルーをヘッドハントしてくれるなよ。」
「さーて、フロも入ったし、寝ようか・・」ヨーコは九時には寝てしまう。「ガンダムファイトハイライト見ないの?」
「ビデオ撮ってるよね?明日の朝食の時に見るわ。ワイドショーよかマシよ。おやすみ~。」「相変わらず健康優良児ね・・」
「ふああ~・・おやすみ、子供たち。」二刀を抱いて、あっという間に熟睡に入る。ヨーコの特技である・・
木星成層圏上層・都市戦艦「斧」。ザワザワ・・「おー、けっこう人いるな。」「コロニーとまではいかんでもそれなりの
規模の宇宙都市じゃからの。」「ふみこたんは二~三日ここで用事を済ますらしいから、こちらもそれまでいろいろと
準備をしておこうかね。」オン。「ここで一つか二つ騒動があってもそれはそれで面白かろう。」「あるさ・・絶対にさ。」
「ここまで来たか。」「インテグラ、殺っていいか?」「今回はターゲットが明確だ。意思の齟齬はなかろう、フハハハハ。」
「ちょっとちょっと。『斧』内でやり合ったらあちこち被害が増えるって。」「そこが問題だ・・さて、いかにすべきか。」
『舞台を作ればいいのでは?』「むっ?」・・シュッ。「貴殿は・・ゲーリング准将。」「少々ハデにやってもかまわない
結界をどこかに作り、そこへおびき寄せればいい。老朽化したプラント区画とかな。」「ウォルター。」「第46ブロックが
来月に取り壊し予定でございます。」「うむ、そこでよかろう。由美子、手配を。」「かしこまりました、マイマスター。」
みなさんお待ちかね! 敵の巣窟『斧』に待つ必殺の罠!
十二使徒公会議の余興とされた「世界」「愚者」対「Hell*Thing」のデスマッチ。
居並ぶ使徒たちの陣容は? 幽音の企む巨大な陰謀とは?
そして事態を楽しむゲーリング准将の思惑とは。
次回、機動武闘烈伝ダブルGガンダム第51話
「公会議開催!流血のコロシアム」に、レディー、ゴーッ!
************************
第51話「公会議開催!流血のコロシアム」
都市戦艦「斧」。「マイマスター、セリザ局長が到着されました。」「うむ。」「ハーイ!お嬢、おっひさ~!」ひょい。
「ようこそおいでくださいました。」「やっだ~、他人行儀な。あたしとお嬢の仲じゃん。昔みたいにカーモちゃんでいいの♪」
「それは子供のころだろ。」「んなのカンケーないない。いつまでたってもあたしはあたし、お嬢はお嬢じゃん。」
ふっ。「・・カーモちゃんがうらやましいわ。私はもうあの時には戻れない。」「んなの気のもちようだってばー。
あたしだっていろいろあったけどね。」ぴく。「ドーバーの惨劇か・・」「いっぱいありすぎて忘れちゃったな~。」
『あら、カーモちゃん来たのね。』チリーン♪ はっ。「幽音さま。」「幽音ちゃん!」「おひさ、カーモちゃ・・?」
ドドドドド!「幽音ちゃ~ん!」がしいっ!「うわっ!」チュッチュッ!「会いたかったの~!」「お、おいおい・・」
「ちょ、ちょっと待ってまって!」「半年も顔をみせないなんてひどいよ~!いつでもごちそうしたげるのにさ。」
「ごめんね、ここんとこ忙しくて。」「忙しいと感じるのはまだ余裕ある証拠だよぉ。」「なるほど、いえてるかも。」
「ほう、神選組局長どののお越しか。」「あっ、フーミン!」ずでーん!「いたたた・・セリザ、その呼び方はやめろ!」
「ふふっ、ゲーリング准将をつかまえてフーミンと呼ぶ人間は貴重だな。」「ふみこたんはけっこうポピュラーだけどね。」
「ウォルター、他のメンバーは?」「予定どおり続々と到着しつつあり、既に市街地でおくつろぎの方々もおられます。
ときに余興のほうですが、舞台の準備はすでに整ってございます。あとはゲストのお二方をご招待するだけ・・」にやっ。
市街地ブロック。ガヤガヤ・・「老師、そっちの買い物はいいかい?」「うむ、必要なものは揃ったぞ。」「あとは出航まで
のんびりするかね・・ん?」ぴくっ。「・・おい、あれってまさか。」「なんじゃ?」ちらっ。「ほう・・あれは。」
「盤古蘭も連れてくるべきだったかな。」「彼は摂政業務で多忙さ。だからボクが同行してるんだ。」「そりゃそうだ。
護衛だけなら魔雷妃だけでじゅうぶんすぎる。」「・・いちおう評価はしてくれてるんだな。」「性格的に合わない点は
問題じゃない。かえってズバズバ文句を言ってくれる部下のほうが頼もしいかぎりだ。」「たしかに意見の一致をみるのは
ごく稀だな。」「国政はそれでいい。ぼくの一存だけで決めてたら、小国ネオマリネラはとうの昔に消滅してるよ。」
「・・珍しく素直じゃないか。」「そうか?ぼくはいつも素直さ。」もぐもぐ。「そこで肉まんを買い食いするなー!」
「けっこううまいぞ。魔雷妃も食わんか。」ほかほか。「ふん!・・」ちらっ・・さっ。「つきあってやるよ。」ぱく。
「あれはネオマリネラ国王じゃな。ニュースでよく見る顔じゃ。」「なぜこんな辺境に?・・それ以前に一国の王がろくに
護衛も付けずに街中に・・いや。」「おるおる。市井に紛れてあちこちに護衛が・・あれがウワサの『T.M.N.G』じゃな。」
「Total Mission and Network Group・・ナディアの『タウン』に匹敵する、ネオマリネラを影で支える国王親衛隊か。」
カラカラ・・「おっと。」「すみません。」「いえ・・?!」カラカラ・・「・・どうしたんじゃ?」「・・今の。」
「車椅子か?」「・・いや、ちょっと知った顔かなと思ったんだけど・・気のせいかもな。」「にして顔が青いぞ・・」
「幽音さま、長壁胡蝶さまがいらっしゃいました。」「・・誰だ?」「卿は知らなくて当然だね。ここに通して。」ガチャ。
「よっ、幽音。」「わざわざ遠くまで呼びたててごめんね、おばさま。」「いやいや、『斧』にはいっぺん来てみたかったし。
でと・・」くるっ。「インテグラ=カーン卿。お初にお目にかかります。」すっ。「長壁胡蝶どの。卒爾ながら不勉強の故か、
お名を聞き及んでおりませんでした。」「いえ、それは当然・・『こちら』ではまだまだ無名ですので。」ふっ。
「?・・意味がわかりかねますが。」「いずれにせよ、私の十二使徒にはちがいないから。」「お気になさらずに・・」
ふたたび市街地。ガヤガヤ・・「ネオ大阪より狭いが、賑やかな街だな。」「惑星系の内外を結ぶターミナルでもあるしな。
いろんな人と物資が行き交う、ネオ神戸みたいなところだ。」「トレーダー分岐点か・・ここを征圧すればおいしいな。」
「やめとけやめとけ。ここのボス、カーン卿はてごわい。うちの一家の今の実力じゃ・・もっと人材を確保してからだ。」
「ということは、その気はあるのか。」「ないといえばウソになるな。まずはネオ大阪を征圧し、次はネオジャパン全土、
そしてアジア、世界、宇宙・・男の夢は果てしないものさ。」「夢はいいが、さしあたっては『紅座狗』を制さなくては。」
「そのためにも今回の会議は大事なのさ。なにせ影の国連みたいなもんだ、人脈の確保にはもってこいだな。」にやっ。
「うむ、幽音には先々代から世話になって、いろいろ便宜をはかってくれたしな。」「まさか一宿一飯の恩義がここまで
でかくなったとは、じいさんも草葉の陰で喜んでいるだろうな。」「勝手に殺すな。親父どのはまだまだ健在だ。」
「そうだっけ?・・おっ、タコ焼き屋発見。食うか?殺っちゃん。」「本場の舌で吟味してやろうぞ、厄司。」
その夜、宿屋。「さって、寝るかね・・?」スィッ。「手紙じゃと?」さっ、ぱさぱさ・・「・・へえ、これはこれは。」
【 明日11時 第46ブロックにて待つ 楽しみにしている HELL*THING 】「ほほっ、待ちかねたというべきかのう。」
「いずれは来ることだったのさ・・こりゃ明日はお楽しみだ。」オン。「準備も怠りなし。果報は寝て待てじゃな。」
大会議室。ザワザワ・・「全世界よりお集まりくださった同志の皆さん、長旅ご苦労さまでした。これより公会議を開催します。
私は主催を任されたインテグラ=カーン。順に自己紹介を願います。」「Gの狙撃者。」「その妻、マダム・ローザです。」
「『神選組』局長、カモメール・セリザ。カーモちゃんって呼んでね♪」にぱっ。「『百鬼夜行』総帥、長壁胡蝶だよ。」
「魔導空軍『ルフトバッフェ』、ふみこ・オデッサ・ゲーリングだ。」「『厄司組』組長、豊臣厄司。」「副長、鬼道殺。」
「パタリーロ・ド・マリネーラ七世だ。」「諜報将・魔雷妃。」「以上が十二使徒のうち活動中のメンバーだよ。こちらは
オブザーバーの闇シャッフル同盟のみんなと、エリーちゃん。」ザワザワ・・「では議題に入ります。幽音さま、お言葉を。」
「みんなも知ってのとおり、私は戦いが大好き。なぜなら戦いこそ人類を進化させるものだから。ゆえに私はいままで数々の
戦乱を引き起こして人類を進化させてきた・・けど、最近は状況が変わったわ。それがガンダムファイト。このルール化された
戦争はたしかに画期的なものなのは認めましょう。けど、これで戦争の大目的たる人口調整と淘汰が無くなったのは事実。
ゆえに私も新たな戦乱の種を撒いた・・それがデビルガンダム。」シーン・・「第一次DG戦役はそれなりに成功だったわ。
全世界にDG細胞の恐怖を知らしめ、ガンダムファイトから戦争の代替行為という匂いを抜き取った。その一方で、各国
および各種組織はDG細胞の力を我が物にせんと暗躍を始めた・・それが核以上に人類の手に負えないものだとも知らずに。
いえ、知ってても力に目がくらんだというべきかな。・・そんな人の欲望により、デビルガンダムは何度でもよみがえる。
まさに予定どおりというべきかな。人が人類の天敵を存続させる・・その連鎖はおそらく永劫に切れることはないね。」
第46ブロック。ゴォォォ・・「ここは工業プラントだったんだね。」「老朽化が進んで廃棄処分になる寸前なんじゃな。」
「なるほど、ここなら多少ドンパチやってもだいじょうぶだわな。さて、そろそろ時間だけど・・」ぴくっ。「来たね。」
ザッザッ・・「ひさしぶりだ、世界と愚者。」「また会えたことを主に感謝しよう。」「元気そうでよかった。」にこっ。
「あんたらもな。・・あんまり話すと和んじまうから、ちゃっちゃと始めないかい?」「そうだな・・殺ろうか。」ニッ。
「老師はあっちを。あたしは神父と遊ぶ。シクルゥはお姉ちゃんを。」「あ、今回あたしは見学だから。このアトレイデスじゃ
外壁までぶち抜いちゃうから。」「あらそう。じゃ、シクルゥも応援団な。」オン。「こっち来ていっしょに見よ。」
「・・ということで、各人の役割は以上のとおり。質問は?」『・・・・』「それではこれで公会議を終了します。」ちらっ。
こく。パチン♪カラカラ・・「お飲み物をお配りいたしますのでお休みください。そして余興も。Dr.ハインケル。」
「ははっ。」さっ。ぱっ。『おお・・』「ただいまよりエキジビションマッチ、私が生み出した超生物兵器『HELL*THING』と
アルカナ同盟最強の『パーフェクト・ワールド』と『クレバー・フール』のデスマッチをお送りします。お楽しみください。」
「ほほう・・これは見もの。」「ウワサのアルカナ同盟、お手並みを拝見しましょうか。」「面白いファイトになりそうだねー。」
「さてさてどうなるか・・」「酒席にもってこいの余興だ・・人間界にもいい酒があるものね。」「?・・いいブランデーだ。」
「私は未成年だ、ココナツミルクでよい。」「魔雷妃、どう見る?」「そうだな・・実力伯仲というところかな。」
ザザザッ。「シャカール。」チャッ、ドキュドキュン!「よっとっと。」パシパシッ!「?!・・銃弾を手で受け止めた?」
シュゥゥゥ・・「正確には指ではさんだんじゃがの。」ぽい、カラカラン。「銃は無用ということか・・そうでなくては。」
ぽい、ガシャン。「ほう・・素手で来るか。」「行くぞ、老師。」ダッ!「?!・・疾い!」ゴオッ!バシイイイーン!
「ぬおっ!」ザザザザーッ!・・「ふう・・なんてパワーじゃ。」ジーン・・「さすが。止められたのは賞賛に値する。」
ビュッ!「ほいっ。」シュルッ。「?!・・すり抜けた!」「ほれいっ!」ドオンッ!ボゴワッ!「ぐぶっ!・・」
ズザザザザーッ!「・・これが八極拳か。」シュゥゥゥ・・「頬骨破砕のはずじゃが・・すぐに再生するとはの。」
「・・ふははははは!楽しい、こんなに楽しいのははじめてだ。老師を第一級エネミーとして認証する。」「せんでいい。」
「美しき女豹。まさに主への生け贄にふさわしい。」シャリン!「シイッ!」シュババババッ!「まだまだ!」シャシャッ!
ズドドドドドッ!ザシャッ、タン!「ぬうっ?!」「カムイリュッセ!」バサアッ!「目くらましか!シイッ!」
ビュバババッ!ドスドスドスッ!「・・なに?」バサァ・・はっ!「上か!」「おせえ!」ゴオッ!ズバアアアアーン!
「ぐほおっ!」「・・?!」タン!ドカカカカッ!「あぶねえ・・とっさに退いて大正解。」「・・クハハハハ!いいカンだ。」
シュゥゥゥ・・「傷口が・・消える。なんて再生速度だい。」「いくら切ろうが突こうが、私には意味がない!シイッ!」
ヒュバババッ!「うおっと!」タタタン!ドカカカカッ!「ふう・・あんたのバヨネットは四次元ポケットかい。」
「あらら~、ちょっとヤバそーだね。」オン。「ん?・・なんとかなるって?」オン。「ならなんとかなるでしょうね。」
くんくん。「・・あたし、臭い?」ふるふる。オンオン。「・・あ、そう。変わった匂いなのか・・まあそうだろうな。」
すりすり・・「・・ありがと。なぐさめてくれるんだ。」ゴロゴロ。「・・・・」(単にじゃれついてただけみたい)
「かなり苦戦しているようだな。」「あの再生速度はヘルファイター以上ですね。」「加えて人間離れのパワーとスピード。
これでは勝算が見えんな。」「だが『世界』と『愚者』がこれで終わるはずもない。」ぱしっ。「どう反撃するかやな。」
「ちょっとは強いとこ見せてもらわないと、面白くないもんね。」「・・あのHELL*THING、致命的な弱点があるわね。」
はっ。『エリー?』「ちょっと見落としやすいけど・・あの二人がそこに気づくかどうか。そこが勝機ね。」にっ。
「ではそろそろ反撃させてもらおうかの。」「ほう、それは楽しみだ。」シャッ!「単純な拳だ。」バゴオッ!・・メキッ!
「な・・に?」「はあっ!」ドオンッ!「ぐふっ!」「それいっ!」ドゴオオオーン!「ぐはあっ!」ズザザザザーッ!
「・・このダメージは?・・再生できぬ!」「ちと工夫をしたに、よう効くじゃろ?」「・・ならば!」バサアッ!
ビチビチビチ!「ほっ、分裂しおったか。」『これで殴れるかな?』グワアッ!「やってみようか。ほれいっ!」ダン!
ドオオオーン!『ぬおおおおーっ!』ビシャアッ!『ぐおおおお・・』ズズズズ・・シュゥ。「・・これが『愚者』か。」
「さてと、あたしも本腰を入れようか。」ツイッ、ドロッ・・「?・・マキリで傷を付けるとは、何のまじないだ。」
「ご利益あるんだなこれが・・!」シャッ!ズバアアアーン!「・・クハハハ!言ったはずだ、この程度では・・?!」
ドクドク・・「バカな?!・・傷が閉じぬ!」「な、効果てきめんだろ。」チャッ。「・・いったい何を?!」
「おおっ?!」オン。「・・ホントになんとかしちゃってるよ、おい。ねえシクルゥ、どうやったの?」オン。
「あれは?!・・Dr.ハインケル、どういうことだ!」「そんな?・・」・・はっ!「そうか!そんな手を・・」ギリッ!
「ああ、わかったよ。」「幽音さま?」「まず老師は物理攻撃をしてるんじゃないね。あれは発勁だよ。」「発勁?」
「そのとおりです。しかもヤツの体軸に対して精確に垂直に打ち込んでます。ゆえに再生機能を麻痺させ、形態を変えようと
ダメージはダイレクトに伝わります・・恐るべき技量。」「そして神父のほうは、あの血がミソだね。」「・・血?」
「拒絶反応です。刃に付着した『世界』の血が神父の傷口に残り、細胞の再結合を阻害しているのです。HELL*THING細胞は
再結合しやすいのですが、反面、異物の混入・・特に優性細胞が混じると拒絶反応を示して細胞が『逃げて』しまうのです。」
「そんな弱点があったのか・・」「この問題は既に認識し改良にかかっておりましたが・・まさか実際に使われるとは。」
「ありゃ~、こりゃまずいかな?」グッ、ズル~ッ!オンオン!「わーってるわーってる。ちょっと水を差すだけだから。」
ジャキッ!「出力は最低、絞りは全開でと・・Ya!」ドオンッ!ボオーン!モクモク・・「なんじゃ?」「土煙が?」
『二人ともいまのうちに退却ー!』『婦警か・・』『余計なことを・・』ゴォォォ・・「・・逃げられたかの。」
「まあいいんじゃねえの?これでもう襲ってはこないさ。シクルゥ!」オン。タタタタ・・「婦警も逃げた?」オン。
懇親会。ガヤガヤ・・「さすがは世界と愚者だったな。」「敵分析力はたいしたものでしたわね。」「やあ失礼。」
「おお、パタリーロ陛下。」「・・まさかあなたが生きていたとは驚きです。」「そうでもないぞ魔雷妃。ちょっと
考えれば別に不思議でも何でもない。ボクはハナから確信してた。拾ったのはキングか?」「いや、幽音だ。聞いた話では
ネオオーストリアで出会ったとか。」「そうだ・・そこで大病に伏してたときに幽音が現れ、手を差し伸べてくれた。」
「あのままではその地で果てていたでしょう・・ゆえに幽音には大恩があります。」「それで十二使徒に加わったわけか。」
「一番新しい使徒となりますね。」「使徒は幽音と深いつながりを持つ者に限られる。つまり信頼を得たということだ。」
「それは修羅の道を歩むこと・・それでいいのか?」はっ。「パタリーロ・・」「承知のうえ。冥府魔道を歩むも酔狂・・」
「カーモちゃんさん、頼みがあるんだが。」「いい腕のヤツを捜している。」「おっけ♪知り合いの腕利きを紹介したげる。
あーくんはともかく、殺っちゃんの頼みは断れないもんね。」「感謝する。」「俺はともかくかい。」「まあまあ。」スゥ。
「む、幽音か。」「しばらくぶりだな。」「そちらも二年ほど顔出してなかったね。そろそろたこ焼き食べに行こうかな。」
「しっかし、殺っちゃんと幽音ちゃんはそうやって並ぶと姉妹みたいだねー。」「そうか?」「たしかに・・気味悪いくらい
似ているぞ。」「血がつながってるのかもね。」「身に覚えがあるのか。」「ん~・・」「そこで悩むな。心配になる。」
「よお厄司、元気しとったか?」「お、レディ。『紅座狗』が捜してたぞ。」「しかし無断脱退とはムチャをする。」
「覚醒したんやきにしゃーない。事情を話しても信じてくれるわけないしな。」「追っ手は何人返り討ちにしちゃったの?」
「ざっと数十人。けどかつての仲間やきに、さすがに命は取らなんだがな。」「ぶん殴ってから言うセリフじゃないね。」
「エルフィール・クロウリー・・こんなところで出会うとはね。」「お方様までご存知でしたか。」「大事件だったしね。
新聞の一面にデデンと出てたからよくおぼえてるよ。」「・・賞金いくらかかってました?」「1億ドレイクだね。」
「なんだ、それっぽっちですか。ヒドラ原虫じゃそんなもんか。」「死者が出なくてこの金額なら文句なしだろ。」
「ここにいたか。」ガシャッ。「よっ、ゲッツ。魔界軍の猛将が闇シャッフルだったとはシャレにもならないね。」
「まったくだ。おかげで隠退生活が台無しだ。」「私もゲッツ隊長のつてで幽音に雇われたから、まずは恩人ね。」
「ゲッツはいかついけど、優しいヤツだからね。いろいろ美談は聞いてるよ。」「あ、それ知ってる。なんでも・・」
「ほう・・これは初耳。」ぱしっ。「へえ~、ゲッツってジェントルマンなんだね。」「からかうな、燕雲。」
「まったく、情けない!」「あまんじて叱責は受けよう。」「次は殺す、必ず殺す。」「次はしばらく無いぞ。これから
細胞の改良処置を行うから、当分は釘付けだ。」「あの~、わたしも?」「婦警には別の用がある。由美子。」「はい。」
「婦警と共にタイタンへ向かえ。あの二人の動向を監視し、報告せよ。」「かしこまりました。」「出張か~。」
「准将、そこで頼みだが。」「了解した。うちの兵員を装わせて乗せよう。部下には私から話しておく。」「感謝する。」
「マイマスター、質問です。・・機会があれば?」「手を出してもいいだろう。・・機会があれば、の話だがな。」
みなさんお待ちかね!次回からはヨーロッパの「皇帝のフルハウス」の話です。
アリシアの一大プラン、ガンダムを飛ばしてしまおう!
そして完成、航空ガンダム。ネオナチス戦略爆撃団を撃滅せよ!
次回、機動武闘烈伝ダブルGガンダム第52話
「翔べ!ガンダムアルテミス」に、レディー、ゴーッ!
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第52話「翔べ!ガンダムアルテミス」
ネオスウェーデン軍・特務戦技研究隊「ワルキューレ」オフィス。アリシア少尉はデスクで航空専門誌を読書中。
ぱらぱら・・「おっ、コロニー連合空軍『ルフトバッフェ』の特集だ。可変航空ガンダムのスペックが載ってる。」
『どれどれ。』どやどや。「これがウェーブライダー形態?まるでホウキね。」「主翼をおもいっきり後ろに下げて、
脚部まで覆い隠してるのね・・デルタ全翼機みたい。」「機首に付いてるバスター・ワンドがすごく長いね。カウル部は
ガンダム時の頭部追加装甲か・・ヘブンズソードほどじゃないけど、魔法使いのトンガリ帽を彷彿とさせるね。」
「カッコいいな~。うちのガンダムも可変型にできないかな。」「ムリムリ。ノーベル派生型だから可変機構を入れる
余裕なんかないわ。たとえ入れても、重量増加に見合う出力を確保しないと。」「そっか・・大佐、もしアルテミスを
航空戦闘型にするとしたら、改造予算出ます?」「ん~・・新品パーツの予算は難しいな。そこらにあるジャンクを
使いまわすなら、何とかひねり出せるが。」「・・それって、『やれ』ということですか?」「うちにはちゃんとした
航空戦力が無いのを前々から気にしてたんだ。アリシア、できるかぎり協力するからやってみそ。」「感謝します!」
「さて、まずは設計ね・・このフライトシミュレーションにアルテミスのデータを入れて・・アニ~、たすけて~。」
「既存の可変モビルスーツのデータを参照すれば?ノーベル型に近いのは・・」カタカタ・・「う~ん・・どれも大型ね。
やっぱ可変機構と動力炉がスペース食うのね。」「じゃあさ、可変あきらめるからフライトユニット的にはどうかな。」
「それだって長距離移動用よ。空戦なんかとてもとても。」トントン・・「ん~・・その中間をとってみようか。」
カタカタ・・「質量から割り出される必要な揚力・・翼面積・・うえ、まるでハングライダー。こんなんじゃいい的だよ。」
「離陸揚力は考えなくていいんじゃない?バーニアでジャンプすればそんなにはいらないはずよ。」「あ、なるほど。・・
機動はAMBACでよし・・こんなんでましたけど?」ぽん、ぱぱっ。「へえ・・小翼の複数配置にしたのか。これはナイスね。」
「これなら舵翼いらないし、CCVの併用も可能よ。」「・・各翼角度制御?これはさすがに・・時々刻々変化する気流や
機体姿勢をリアルタイムでフィードバックするのはほとんど不可能よ。」「だいじょうぶ。その点は考えてあるから。」
カタカタ・・ぱっ。「えっ?・・MTS制御?!」「これなら文字どおりリアルフィードバックっしょ。」「・・できるの?」
「こと飛ぶことに関しては、あたしは天才よ。」「エンジンはジェットを使うのか・・バーニアよりは低燃費ね。」
「滑空をうまく使えば、滞空時間は最大4時間はいけそう。」「実戦を考えても、それだけあれば何でもできるわね。」
「よしと。さっそく施工しよう。まずは材料集め~。」「手伝うわよ。」「面白そうじゃん。手分けして漁ってみよ。」
ガンダムドック。「・・あったあった!」ガラガラ!「はりゃ~、よくもこんなに素材をかき集めてきたもんね。」
「空軍倉庫から使ってないヤツをもらってきたのよ。管理人の技術大佐、昔からの知り合いだから。」「ジュラルミン、
中古のジェットエンジン、フレーム素材・・こりゃちょっとしたガレージキット作りだね。」「パーツとかは共食いさせれば
デッチあげられるし、なんとかなるっしょ。」「な~んか空中分解しそうな予感がするんだけど・・(^^;;」
ジーッ!カンカン。ガガガガ・・「アリシア、右三番翼のデフォ位置はあと10cm前に。仰角は5度を維持して。」
「マコちゃん、水準器もう一個ちょうだい!」「ほらよ!」ぽい、ぱしっ。「こりゃけっこー精密作業ね・・」カンカン。
「左翼群のMTS接続、完了よ。」「なんで翼の制御部にMTSを接続するの?」「ビット技術の応用よ。いかなる条件でも
最適の揚力を得るには、デジタル制御では融通が利かないの。かえってアナロジカルなMTS制御の方が微妙なさじ加減が
利いて、連続的に変化する条件に合わせこめるの。」「なるほど・・固定有線誘導型のビットと考えればいいのか。」
「さてと、さっそくテストしましょうよ。」「じゃ、私とマコがグリペンでアベンジャーするわ。アニーは管制お願い。」
滑走路。キィィィーン!・・『グリペン離陸。アルテミス、発進して。』「了解。いきまーす!バーニアジャンプ!」
ダーン!シュボオッ!「スクラムジェットエンジン起動!」ヒュィィィーン・・ゴオオオオーッ!「高度500メートル。」
『まずは最高速度テストよ。高度3000まで上昇、そこから最大出力で水平飛行に。』「りょーかい。上昇!」ゴオオオーッ!
「高度よし・・フルスロットル!」グン!ゴオオオオーッ!『こちらグリペン。アリシア、一番翼端がマッハコーンの外よ。』
「確認。もうちょっと下げてと・・」グググッ。「音速突破まであと3、2・・いま!」ドオオオーン!・・「音速突破。」
『機体震動は許容範囲内。まだ上げられる?』「余裕っスね。」キーン・・「・・マッハ5!」『スゴイ!最新鋭超音速機
レベルじゃない!』『可変翼とガンダムの頑丈さ、そしてスクラムジェットのパワーのおかげね。』「まだまだ。今度は肝心な
空戦テスト!マコちゃんレイちゃん、手加減しないでいいわよ!」『じゃ、やりましょか。』『亜音速に下げて戦闘開始よ。』
ゴオオオーッ。「ケツにつけたわ。バルカン!」ブオオオオーッ!『おそい!』ヒュン!「なっ?!なんて機動なの!」
『さあ追いかけてみ!』ヒュンヒュン!「なにこれ?戦闘機の動きじゃないよ!」「これじゃロックオンできないわ!」
『こりゃCCVやVTOLの比じゃないわね。レベルちがいすぎ・・』クルッ、ぴたっ。「後ろに回られた?マコ、ブレイク!」
「よいしょ!」ギュイイイーン!『おっ、インメルマンターン!マコちゃんもいい腕してるじゃん。』「昔はハリアーとか
使ってたからね。反撃のサイドワインダー!」シュゴオオオーッ!『さあさあ、いらっしゃい!』グン!ヒュィィーン!
「赤外線追尾式でこの距離なら逃げられないよ!」『それはあまいっしょ。ほいっと!』クルクルッ、ギューン!
「なあっ?!真下にブレイク!」シュルルル・・「ミサイルが追い越しちゃった・・」『流れ弾処理っと。バールカン!』
ブオオオオーッ!ビスビスッ、ガガーン!「ありゃ~、やられた。」『ほーれ、ボケッとしてるヒマないよ。』『えっ?』
スウッ・・ぎくっ!「?・・真上!」コンコン。『入ってます?』「ま・・マコ!早く逃げて!」「つかまれちゃう!」
キュゥゥーン!『さあドンドン逃げて。ピッタリ追いかけるわよ~!』ゴオオオーッ!「な・・なんて運動性なの?
振り切れない!」「こうなったら・・レイ、アゴ引いて!コブラ!」グン!ガクン!ガガガガッ!『くうううーっ!』
『おおっ?』ヒュン!「追い越した!機首戻し!」バン!ガクン!「あいたたた!・・マコ、なんつーメチャな操縦よ!」
「だからアゴ引けって言ったろ。これで逆転・・なあっ!」ぬっ。『やるやる~。コブラで急減速して追い越させようてのは
グッドアイデアだったけど、その場で180度転回できるこの子には通じないよ。』「・・まいった。」「首が痛い・・」
ドック。「しっかし、とんでもないモノできちゃったね。」「これが採用されれば、私たちの行動範囲もグンと広がるわ。」
「それはまだまだ無理ね。」「え?・・どーしてよ、アニー。」「だってこのシステム、使いこなせるのはおそらく世界でも
アリシアだけだもの。」『なんで?』「機体の姿勢や重心移動にリアルタイムに対応してエンジンや各ウイングを制御できる
だけのOSがないのよ。たとえ『マチルダ』でも難しいでしょうね。」「じゃあ・・アリシア、あれをすべてマニュアルで
コントロールしてたの?!」「とゆーより脳波ね。でも航空に天才的カンを持つアリシアだからできること。もし私たちが
使っても、あっという間に失速して墜落するのがオチでしょうね。まあ、アリシアの制御パターンのデータが充分集まったら
そこから基本ルーチンプログラムが作れるから、それを使えば水平飛行くらいはできるかもね。」「それじゃいい標的じゃない。」
バタン。「ふ~、飛んだあとのシャワーはサイコー。お次どーぞ。」ふきふき。「冷や汗かいたから、ジャグジーにしよ・・」
オフィス。プルルル。「ほいほいワルちゃんだよー。」『あれ?・・番号間違い?』「ここでいいよ、クレオパトラ。」
『あ、大佐か・・何かと思った。いきなり用件ですけど、ウラルからネオナチスの戦略爆撃隊が発進したようです。』
「あっそ。目標と戦力は?」『こちらの情報だと目標はパリ。編成はアース重爆20、護衛機は円盤機ホルスが45よ。』
「大所帯だな・・うちだけじゃきついんで、助っ人呼んでもいいかい?」『NATO空軍ですか?』「いんや、知り合いに。」
魔砲艦グラーフ・ツェッペリン。「准将、ネオスウェーデン軍のクワトロ大佐から星間通信です。」「メインに出せ。」ぱっ。
『おいっす、ふみこたん。』「久しいな、魔神将軍。」『その名は出すなって。今はしがない窓際管理職だ。』
「よく言う。で、用件は?」『かくかくしかじかで、お楽しみへのご招待だ。』「ほう、残党どもがついに動きだしたな。
了解した、ただちに『ミステル』を跳ばそう。」『迎撃予定座標は送っといたから。じゃ、待たずに始めとくよ。』
「ミュンヒハウゼン。」ボオッ。「これに。」「『ミステル』に長距離出撃指令。全ガンダムの発進準備を。」「ははっ。」
艦内・魔女部隊「ミステル」オフィス。「あ~、ヒマだヒマだ。」「たいちょー、ヒマなら易筋経でも読みますかぁ?」
「いらん。どうせならドラゴンの一匹でも出して戦わせてくれ。」「鵺ならすぐに都合するでー。」「源頼政か俺は。」
「ゾンビーではダメでスーカ?」「ゾンビは臭いのでカンベンしてください。ミイラなら乾いてますから清潔ですよ。」
「どっちもいらん!」「たく、たいちょーワガママなんだから。ねえ華那ちゃん。」「・・・・」「・・あれ?」
くわっ!「ご神託が降りましたー!」「うわわっ!」どんがらがっしゃーん!「あいててて・・軍曹、なにごとだ!」
「ご神託です!もうすぐ出動命令がきまーす!」『おお!』「よっしゃー!総員出撃準備!」『了解!』ざっ!
ドカドカドカッ!・・ぱっ。『ミステルの皆様、出動命令でござい・・おや?』し~ん・・『さすがに速いですな。』
ネオスウェーデン軍基地。「とゆーわけで、いきなり実戦だが、いけるかアリシア?」「まっかせてください!」
「他四人と俺はスーパービゲンで出撃。第五ガントリーで準備中だ。」『了解!』「迎撃ポイントはモスクワからバルト海に
かけての空域になる。なお、援軍を要請しておいたので間違っても誤射しないよーに。」「援軍・・どこの航空隊ですか?」
「それは会ってからのお楽しみといこうや。んだば、とっとと上がってぶち落としてやろう。総員出撃せよ!」ザッ!
ヒュイヒュイヒュイ!『ミステル発進準備。整備クルーは最終確認を。』「なんだなんだ?」「戦争でも始まったかの。」
「ふみこたん、何の騒ぎだ。」「かくかくしかじかでうちの航空部隊を出撃させる。」「ちょっと待て、ここは木星と土星の
中間空域だぞ。」「地球まで亜光速でも半日はかかるぞい。」「うちがなぜ魔導空軍と呼ばれているかをお見せしよう。」
「ジークフリート・オッフェンバック、ウォーロックガンダム、いくぜ!」シュバッ!「ドゥレィミィ・サンドゥイッチ、
ウィッチガンダム、いきまーす!」「李葉月、フーシンガンダム、いきまぁす。」「葦屋愛子、インヤンガンダム、いくで!」
「オンブー・アルマナ、カルナックガンダム、いきます。」「モココ・アンダルシア、マンボガンダム、レッツゴー!」
「華那、イザナギガンダム、いっきまぁぁーす!」シュババババッ!ゴオオオオーッ!「全機、フォーメーションをとれ。
カルナックは先頭へ。」「了解です。」ゴォォォ・・「カバラ数式演算開始・・空間方程式『アトゥム』、解法します。」
ギュィィィ・・「歪曲空間、現出しました。」「ご苦労。お嬢ども、跳ぶぜ!」『了解!』ゴオオオオーッ!・・フッ。
「な・・なんだありゃ?」「空間がゆがんだところで消えてしもうたぞ。」「ミステルの魔女が一人、カバリストが算出する
歪曲空間さ。あれのおかげで太陽系どこにでもミステルは跳べる。」「ウワサに聞いたカバラ魔法数学か・・フェルマーや
ガロアが知ったら卒倒するぞい。」「それどころか、ガロアは知ってしまったから、決闘にみせかけて自殺したのさ・・」
キーン・・「敵部隊をレーダーで捕捉しました。」「・・気づいた!護衛機ホルスが転進!」「アースはこちらでやる。
アリシア、皿洗いお願いできる?」「ギリシャバーみたいに全部ブチ砕いてやりますよ。」ビーッ!「AAM感知!」
「まかせて。星月夜!」ビィィィ・・ヒュルルル・・「ミサイルが酔っぱらってます。」「強力なECCMで誘導装置が
オッペケペーになったな。いまのうちだ、アルテミス以外はECCMに紛れてホルスをやり過ごすぞ。」『了解!』
キィィーン・・「がんばってねー。・・さてと、いらっしゃい空飛ぶ円盤。たっぷりお姉さんが遊んであげるよ!」
ヒィィィーン!ドドドドッ!「へへーん!そんな機銃がなんだっつーのよ!バールカンッ!」ブオオオーッ!ズガーン!
「60mmに耐えられる航空機なんか存在しない!三日月刀!」ビュオッ!ズバアアアーン!グラタタタッ!「やかましい!
コクピット狙いのハイヒール落とし!」ブン!バキイイイーン!「ほいっと。」ガシッ!「フリスビー!」ブン!ガシャーン!
ダダダダッ!「後ろ?エルボー!」ズドン!グシャアッ!ヒュンヒュン!「まだこんなにいるの?だーっ、うざってー!」
「隊長、爆撃機編隊を視認。」「護衛機は数えるほどだな。これならお得意さんかな。」「いっきにカタつけてやりましょ。」
「そうだな。全機、急降下!」キィィィーン!「まずは第一撃で一機一殺!」ブオオオーッ!ビシビシビシッ!ヒュン・・
ドンドンドン!ゴオオオーッ!「四機撃破!」「レイ、ホルスが追尾!」「んなろ!」キュィィーン!「・・ついてくる!」
「さすが円盤機、機動性もたいしたものね。でも。」ヒュイッ。「チームワークはこっちが上よ!」ブオオオオーッ!
チュンチュンチュン!ガガーン!「さんきゅ、マコ!」グラタタタ!「よっとっと。アニー、まかせるよ。」ひょいひょい。
「もうちょっと・・ロックオン!」カチッ。シュゴオオオーッ!ドガアアアーン!「サイドワインダー直撃!二機め!」
「この調子で・・ん?」ゴオオオオ!「アースが?・・なっ!」きらっ。「いかん!掃討タイプがいやがったぞ!」
ブオオオオーッ!『うわわわわっ!』「なんつー弾幕よ!」「全身にCIWSの針ネズミ?んなもんまでいたの!」
「いったん離れろ!」キィィィーン!・・シュゴオオオーッ!「なっ?対空ミサイルまで!」「しかもありゃフェニックス
誘導システムだ!図体にモノいわせて搭載してやがる。とにかくここは逃げの一手だ!デコイと急旋回で振り切れ!」
キィィーン!「振り切れませーん!」「ストーカーみたいにしつこいヤツ~!」「さすがフェニックスってとこね。」
「みんな、ちょっとムチャするよ。全機、垂直ダイブ!」キュィィーン!「ブロッケン山に向かって全速で逃げろ!」
ゴオオオオーッ!「峰に衝突します!」「まだまだ。あと3、2・・ブレイク!」キュィィーン!『くうううーっ!』
グワアアアーッ!「ぶつかる~!」ヒュイン!「ぬ・・抜けた~。」ドドドドォォォーン・・「ミサイルは無理だったな。」
「はあっ、はあっ・・死ぬかと思った。」「じっさいヤバかったけどね。ちょっと距離をとって小休止しようや。」
「でもこれじゃ近づくこともできないじゃない。」「アルテミスをこっちにすればよかったかな?」「ホルスの団体さんは
このスーパービゲンでもきついって。・・そろそろ助っ人が来るはずだけどな。」「・・さっきの援軍の話ですか?」
ガガーン!「これで12!・・あと20以上もいるか。」ヒュィィーン!「あーもうめんどくさ!どきなさいよ!」
『フレイムバルカン!』ヒュヒュッ!ドカカカッ、ズガーン!「なに?!」『式神ミサイルや!』ヒュゴオオオッ!
ドカドカーン!「援軍?」『鬼門遁甲ビット!』ヒュヒュッ、ぴたぴたっ。キン!「敵編隊の周囲に結界?」『空門!』
ゴォォォ・・「・・消えた!」『いまごろアベンジャーと同じとこを飛んでますぅ。』「だれ?・・あっ!」キラッ・・
ビュゴオオオーッ!「あれは・・ミステルのウェーブライダー!」『魔女空軍「ミステル」参上!チェンジ!』ジャキーン!
「ガンダムに!」「バスターワンド!」ブン!「エロイムエッサイム、炎の渦よ敵を焼け!ファイアートルネード!」
ブオオオオーッ!ドガガガガーン!「急々如律令!」ピカッ!「大極断光斬や!」シュピィィィーッ!ズル・・パラパラパラ。
「気の竜脈よ、この空に鳴動を!」さっ、ヒュオオオーッ!「大気擾乱!」ゴオオオーッ!メキメキッ、バキバキーン!
「すごい・・さすがはコロニー連合軍最強の魔導空軍!」「ここは私たちが引き受ける!」「この数なら互角以上や。」
「はやくお仲間のところへ向かってくださいねー。」「わかった、ありがとね!」くるっ、キィィィーン!・・
「・・来たぞ。」「えっ?」・・ゴオオオオーッ!「・・ウェーブライダーの編隊?!」シュゴオオオーッ!
「飛行要塞からフェニックス多数発射!」「あの相対速度では回避できません!」「それはどうかな?」ゴオオオオッ!
スカスカッ。『あれ?』ゴォォォ・・「すっぽ抜けた?!」「あ、やっぱし。」『こっちだぜ!』・・ヒュバアッ!
「なっ?!あんなに近くに!」「さすがだねえ。幻影で撹乱して、フェニックスの最短有効射程内に入ったぞ。」
「我は放つ、光の白刃!」シュバアアアーッ!ドカカカッ、ズゴオオオーン!「すごい!一撃で!」「まだ来るよ!」
「破壊の方程式『セト』、雷の解法!」ピシャアアーン!バリバリバリッ!ズガガガーン!「雷撃だって?!」
「カモン、デス・スピリット!」ギュオオオ!「ソウルテイカー!」シュバアッ!オオオオーッ!バン!フラフラ・・
「なに?ダメージないのに操縦不能?」「ああ・・ありゃ乗員だけを殺したんだ。もうあれは幽霊爆撃機さ。」
「たまふりビットだよ!由良由良都古留部!」ヒュンヒュン!バコバコッ!ボオオオーン!「ビット兵器まで!」
『チェーンジ!』ジャキーン!「待たせたな前座。真打ち登場だぜ!」「誰が前座よだれが!」「すみません。うちの
隊長はこういう性格なんで。」「いや、それはよく知ってるけどね。」「空戦の専門家のあたしたちが来たからには
もうだいじょーぶ!この航空巫女のハナちゃんにおっまかせ!」「・・航空巫女って、なに?」「たしかネオジャパンに
飛行機の安全を祈願する神社があるってアリシアに聞いたな。」「テキをまだたっぷり残してくれてて感謝するぜ。
少尉、軍曹、ガンガンやるぜぇ!」『おー!』ゴオオオーッ!・・「はりゃ~、元気なこと。」「もうまかせる?」
「勝負は見えたしな・・おや?」キイイイーン!「お待たせ~!・・あれ?こっちにも来てたのね。」「援軍だからね。」
「やば・・私のぶんがなくなっちゃう!ちょっと行ってきまーす!」キィィーン!・・「バーゲンセールじゃないって。」
「我は打つ、巨人の鉄槌!」ドオンッ!グシャグシャアッ!「闇の方程式『アポビス』解法。」ゴォォォ・・ボシュッ。
ガクン!ゴオオォォォ・・「全ての電気系統はマヒしてエンスト、あとは墜落するだけです。通信もできませんよ。」
「ホーリィスネーク、ゴーッ!」シュパパパパッ!ビタビタッ。シャアアアアッ!メキメキ・・グシャアッ!
「リターン!」ヒュバババッ、シュルルルッ。「サンクス。ミーのスネークはモビルスーツでも巻きつぶしマース。」
「ヤタガラス軍団、いらっしゃーい!」・・ゴオオオオ。カアカアカア!ヒュバババッ!バコバコバコッ!ドガガーン!
「うっしゃー!うちのカラス軍団のクチバシは徹甲弾なみなんだぞ!・・ん?」くるっ。・・ゴオオオーッ!
「待てまてー!あたしの分も残しとけー!」「あれ?・・その声はひょっとしてアリシアお姉ちゃん?」「えっ?・・
あーっ!航空神社のハナちゃんじゃん!」「やっぱり根来・月光家のアリシアお姉ちゃんだー!ひっさしぶりー!」
「軍曹、知り合いか?」「はい隊長どの!親戚であります!」「あー、ハナちゃんに聞いたことありますね。姪にあたる
『カミカゼ』アリシア少尉です。」「昔はそんな呼び方もされたな~。」「ハナちゃんのフレンド、ミーたちもフレンドね!」
「ああ、あの・・腕はたしかだと聞いてる。さっそく見せてもらおうじゃねえか。」「おまかせください、少佐どの!」
ゴオオオーッ!「残るアースは5機!このくらいならあたしだけでじゅうぶん!」グラタタタッ!「対空機銃なんかが
ガンダムに効くわけないでしょ!三日月刀!」シャリン!「うりゃあっ!」ズバアアアーン!・・ドンドンドン!
「次はそっち!」ダン!ゴオオオーッ!「ジェットアッパー!」ズガアアアーン!グシャアッ!ゴォォォォ・・
「秘剣・流れ月!」シュバアッ!ヒュルルルッ!ズバアアアアーッ!「三枚おろしで3機め!そして!」ヒュルルルッ!
ズパアッ!・・ベキベキッ!バラバラバラ・・「主桁を切られりゃ、どんな巨人機でも空中分解よ。これで残り一機!」
「やるぜ・・」「すばらしい動きですね。」「アンビリーバボ!あんな動きはミステルでもできるヒトいまセーン。」
「さすがアリシアお姉ちゃん。八咫烏さまを祀る月光家の血筋だけあるねー!」『おーい、みんなー!』ゴオオオーッ!
「お、ホルスは終わったか。」「完全にオシャカにしたでー。」「これでウラルの航空戦力は半減するねぇ。」
「ゆえにこちらの応援に来ました。」「ご苦労。けど、今回はだいじょうぶみたいだぞ。」「えっ?・・あのガンダムは。」
「お~、信じられん機動かけよるな。しかも爆撃機相手に格闘戦たぁ、空戦の常識を越えとるで。」「というより、あれが
空中機動型ガンダムの正しい使い方かもしれませんねぇ。」「航空機が相手なら、手足も立派な武器か・・すごいや。」
ゴオオオーッ!「最後の一機・・ん?」ガコン。「爆弾扉開放?・・いけない!逃げきれないと悟って、下のアムステルダムに
爆弾落とす気ね。そうはさせない!」ギィィーン!ガシイッ!「背面飛行しなさい!よいしょお!」グイッ!クルッ。
「そして・・アフターバーナー!」ドオオオーン!キュイイイーン!「アースを抱えたままパワーダイブだと?!」
「なんつームチャを!」・・はっ。「この下はアムステルダム市街地です。ここで撃墜させるのは危険とみて、北海まで
もっていくつもりです!」「すごい・・ちゃんと見てるんですねぇ。」ドドドドド!「燃料がきびしい・・いけるか!」
「やっぱ重いみてえだな・・」「お手伝いしましょう。風の方程式『ホルス』、解法します。」ビュオオオオーッ!
「おっ、強い上昇気流!ラッキー、これでなんとかなる!」「ナイスね、オンブー!」「うー・・ハナちゃんも手伝う!
チェンジ!」ジャキン!ゴオオオオーッ!「あっ、おい軍曹!命令してねーぞ!」「少なくとも命令違反ではないですね。」
「そりゃそうだが・・ま、いいか。総員、手伝いに行くぞ!」『了解!チェンジ!』ジャキン!ドオオオーン!・・
「ん?・・ミステルのみんな?」ゴオオオーッ!ジャキーン!がしがしっ!「イッキに海まで持っていくぞ!」『おお!』
ゴオオオオーッ!「・・海に到達!」「放せ!」パパッ!「とどめ!月光閃!」ズバババッ!「エルロンを切ったから
復元は不可能よ!」「ついでに!いでよ炎の剣、フレイム・ソード!」ボオオオーン!「バスター・ワンドに炎の刃が?」
「それいっ!」ズバアッ!ポロッ・・「垂直尾翼を切れば方向転換もできない!」ゴォォォ・・ドパアアアアーン!
「撃墜!ふぅ~、なんとかなった・・」「アリシア少尉、たいしたもんだ。」「当然!ハナちゃんの親戚だもん!」
その夜、ネオスウェーデン基地。「それでは、爆撃機隊の撃滅と援軍に来てくれたミステルを祝って」『カンパーイ!』
「ほんと、助かったよ少佐。」「なーに、空を汚す悪のあるところ、どこにでも駆けつけるのがオレたちの任務さ。」
「最後のアレで推進剤使いきって、こちらで補給させてもらうのは計算外だったけどね。」「推進剤くらいいくらでも。」
「おー、こら新鮮なオイスターや。これ食えただけでも来た甲斐あったわ。」「北海の冷水でよくしまってるでしょ。」
「まさかここでお寿司にありつけるとは思いませんでしたぁ。」もぐもぐ。「ここにもお寿司屋さんはありますから。」
「新鮮なお魚は空軍ではなかなかありつけませんから、これは何よりうれしいです。」「いつも宇宙だとそうだろうね。」
「ミーはオサシミだめなので、このカルパッチョがいいデース。」「刺身とあんまり変わらないと思うけど・・」
「ハナちゃんもアリシアお姉ちゃんみたいなカッコいいパイロットになるんだ!」「あー、そう言われるとプレッシャー。」
「ネオジャパンから取り寄せたいい酒があるよ。」ドン。「おっ、一升ビンとはいいねえ!」ポン、コッコッコッ・・
ぐいっ。「・・はぁ~!うめえ!」「隊長、あんまし飲むと明日のフライトにひびきますよー。」「なーに、そんときゃ
ふみこババアに連絡して、もう1日帰艦を伸ばしてもらうさ!」「ま、司令をババアとは怖いもの知らずですぅ。」
「あ、そらええな~。戦闘ダメージの修理に時間かかるゆーて、のんびり北欧観光とかしたいでー。」「それはいい手ですね。」
「アグリー!そのセンでさぼりまショー!」「あ、ハナちゃんはそれよりここで空戦テクを学びたいです。」『なに?』
「えらいハナちゃん!そういうことなら、あたしがマンツーで教えてあげる!」「そういうことなら俺のほうからも
ふみこたんに頼んでもいいな。あ、先輩たちのもついでにやっとくから、思惑どおり遊んでくれば?」『・・訓練しまーす。』
「アニー、ちょっとお願い。」「おまかせを。実家に頼んで、水野水産ストックホルム支社から新鮮な海産物をたっぷり
運ばせます。大事なお客さん用ということで。」『おおー。』「さすが海運王。」「明日はブイヤベースにしましょう。」
みなさんお待ちかね!アニーは実家へ里帰り。
バカンス気分でついていく仲間たち。だが、そこに見たのは玄界灘の荒海と竜宮城。
ネオナチス機動艦隊を撃沈せよ!超戦艦「轟天」出撃せよ!
次回、機動武闘烈伝ダブルGガンダム第53話
「怒りの太平洋!大海の女王」に、レディー、ゴーッ!
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第53話「怒りの太平洋!大海の女王」
ゴォォォ・・「もうすぐ日本か・・まさか日本にガンダムの改造屋がいるなんて思わなかったな。」「ミステル隊長に
教えてもらってよかったわね、アリシア。」「アルテミスの弱点である航続時間を無制限にできるなんて、はじめは
できっこないと思ったけど。」「なんでも『月光炉』とかいう特殊動力炉らしいけど。」「ミステルのガンダムはそれを
搭載しててな、あれだけ軽量でも絶大な出力を出せるんだ。ま、実際は推進剤が切れたらそこまでだが、それでも通常の
ジェット機より燃費は飛躍的に良くなるそうだ。」「まさに夢の動力炉ですね・・ガウ空爆、まもなく着陸しまーす。」
「Atelier de Marie」。「マリー、そういうことで。」「おまかせください。『月光炉』への換装は一週間ほどかかるので、
それまでどっかで遊んでてくださいね。」「というわけだ。みんな、納品まで日本観光を楽しんだら。」『はーい。』
「ご注文、ありがとございましたー。」カラーン♪「・・こんな小さい店のどこでガンダムの改造なんかできるんだろ?」
「どこか別のところにドックがあるんじゃない?」「アルテミスは陸運屋に任せたしね・・ちゃんと届いてたみたいだけど。」
「さてと、みんなどうする?」『う~ん・・』「大佐、日本へ来たついでに実家へ帰ってこようと思うんですけど。」
「ああ、アニーの母方の実家は日本だったな。」「はい、壱岐島です。」「まあいいんじゃない。」「ありがとうございます。」
「ねえねえ、私たちも行ってみたいな。」「アニーがどんな所で育ったのか、興味あるわ~。」「島だって聞いてるから、
海産物とかおいしいだろうし。」「アニー、いっしょに行ってもいい?」「私はかまわないわよ。」『おっしゃー!』
「バカンス、バカンス~♪」「さっそくネオ浅草で水着買ってこなくちゃ♪」「え?」「たしか専門店があったよね。」
きゃいきゃい。「あの、みんなちょっと・・あーあ、行っちゃった。」「なんか問題あるのか?」「玄界灘は別世界なんです・・」
次の日、ネオ佐賀県・呼子港。ヒュウウウ・・ザッパーン!「さむ~!」「波しぶきが冷た~い!」「だれよ~、バカンスだ
なんて言ってたのは~!」「玄界灘は荒海だから。・・あれが島から迎えに来てる船よ。」『えっ?・・帆船?!』ドン!
「うわー!三本マストの大帆船だ!」「いまどきこれだけの帆船があったのね・・」「これ外洋長距離航海用の大物だよ!」
「実家の龍神丸よ。さ、乗りましょう。」トントントン・・「みんな、出迎えごくろうさま。」『お帰りなさいまし、お嬢様!』
「では船長、」「出港するぞ!錨を上げろ、舫いを解け!」『おーっ!』ドタドタドタッ!ガララララッ、バサササッ!
「一糸乱れぬ見事なチームワークね。よく訓練されてるわ。」「みんな将来は自分の船を持つことになる海の男たち。
OBは世界中でタンカーや軍艦の艦長を務めてるわ。」「前檣帆開け!離岸する!」ギギギギ・・ザザザザザ・・
ビュウウ・・ザザーン。「お嬢、ひさびさにマストに登ってみますか?」「いいわね。よいしょっと。」スルスル・・
「は・・速い。あっという間にあんな高い所へ・・」「さすがお嬢、いまだ腕は衰えてませんや。」「よっと。」
ゴオオオオ・・「ん~・・やっぱりマストの上で受ける潮風は最高・・ん?」シュパッ・・「十時の方向!クジラがいるわ!」
「なんですと?!・・やばい、衝突コースだ!大檣帆下ろせ!フォクスル全開!取り舵いっぱい!」『おおーっ!』
バサバサバサッ!ガラガラガラッ!「・・ダメだ!ぶつかる!」「私がなんとかするわ!舵そのまま!」シャアアアーッ!
スタッ。「お嬢、舳先に張り付いて何を?」「激流波!」ブオオオッ!ザザザザーッ!ギギギギ!「バウスラスターの原理か!」
ザザザザーッ!「・・よし、それたわ!」『さすがお嬢!』「ふう・・気をつけなさいね、クジラさん。」パシュゥゥ・・
「お疲れさん。壱岐水軍流水術、ますます磨きがかかりやしたね。」「けっこう使ってるしね・・そろそろ島ね。」
島の港。ワイワイ・・「さー着いた・・みんなどうしたの?」どよ~ん。「船酔い・・」「気持ちわる~・・うげ。」
「まだ地面が揺れてるよ・・」「シロートさんには今日のシケはちょいとキツかったですかね。」「この程度で?台風の
季節に比べれば凪みたいなもんよ。」「そりゃ船が揺りかご代わり、三分儀をオモチャにしてたお嬢ならそうでしょうが。」
「・・前から気になってたけど、アニーって海の民の出身のわりには色白だよね。」「お嬢の体質ですな。いくら潮風と
太陽にあぶられても日焼けひとつしやしねえ。そういや渚お嬢もそうだったですな。」「渚は冬の海が得意だったしね。」
「なつかしいですなあ・・玄界灘の女王。台風の大時化の中で擬装工作船のどてっ腹に銛をぶち込んだときは震えましたぜ。」
「ええ、渚の銛打ちは天下一だったわ・・三人の中では一番強かったし、水術の腕もダントツだったわ。」『・・何の話?』
ザザーン・・てくてく。「ここが私の実家よ。」どん!『・・お城じゃない!』「昔は水軍の基地だったのよ・・ただいま。」
ギギギギ・・『お帰りなさいませ、お嬢さま!』ザッ!「す、すごい使用人の列・・」「おお網。3年ぶりじゃの。」タッ。
「お爺さま、お久しぶりです。」「・・網って?」「私の日本名。水野網っていうの。」「そちらが網のお友達じゃな。
ワシが網の祖父ですじゃ。何も無いところですが、まあゆっくりしていってくださいの。」『おじゃましまーす。』
キュッキュッ・・「こちらが客間でございます。」スーッ。『・・』「ここ・・客間?」「大広間の間違いじゃない?」
「狭いところですみません。」『どこがじゃ!』「ねえアニー、あなたの部屋ってどんなの?」「見たい?こっちよ。」
ガラッ。『・・水族館?』「みんな、元気だった?」キュ~。「・・イルカにシャチにマグロにマンタ、カメ、大ダコ・・
サメまでいる!」「みんな私のお友達。この水槽は外海に通じてて、いつでも入ってこれるのよ。上にあがれば一緒に
泳ぐこともできるわ。」「だ、だって・・ホオジロザメまでいるじゃない!」ゴゴゴゴ・・「ああ、シロはおとなしいから
大丈夫。お腹がいっぱいなら襲ったりしないわ。」「今は~?」「そーね、晩ご飯前だから、ちょっと機嫌わるいかな?」
グォォォ・・「マンタまでいる・・すっごい大きい。」「甚兵衛さんに比べたら、カワイイもんよ。」「だれそれ?」「ほら。」
ぬうっ。『・・なにあれーっ!』「ジンベエザメの甚兵衛さん。大きいでしょ。」「じゅ、十五メートルはあるよ~。」
「たまに無理矢理入ってくるのよ。ここでもらえるエサがおいしいらしくて。ディックみたいに外でもらえばいいのに。」
「ディック・・まさかそれ・・クジラ?」「マッコウじゃなくて、シロナガスだけどね。よく食べるんで、今は50m
くらいになってるわ。」『シロナガス~?!』「彼は海底牧場の管理をしてるの。夏は背中で日光浴したものだわ。」
『はあ・・』「・・予想以上のスケールのでかさ。」「さすがは世界最大の海商王、水野グループの令嬢よねぇ・・」
ザッパーン。「驚きの連続だったけど・・こりゃ景色は最高ね。」「こんな天国みたいな所を離れて・・アニーもここに
いればずっと海のお姫さまなのに。」「アルカナの戦士としての宿命・・いえ、それ以前にこの海を守るために闘うことを
自分で決意したんだもの。後悔なんかしてないわ。」『はあ・・』「えらいね・・私はそこまで覚悟ができてるかな?」
『みなさんのお食事をお持ちしました。』「どうぞ。」ゾロゾロ・・「もう驚かないぞ。」「すでに神経がマヒしてるわ。」
「でも・・すっごい海産物の数・・」「さ、食べよ。」「じゃあ・・カキいこう!」「殻つきの丸ゆで・・豪快。」
「この身のボリューム!オイスターなんて問題にならないわ。」「このイセエビのお造り、まだ生きてるんですけど~。」
「アニー・・それなに?」つるつる。「ゲソ。活きがいいわよ。」「顔に吸盤が貼りついてるんですけど・・(^^;;」
「おっ、フグ刺し♪」ぱく。「おいし~い!さすが本場!」「アニー、それは?」ずるずる。「オキアミの酢の物。」
「どーしてそーゆーブキミなもんばっか食べるのよ、あんたわ!」「だってネオスウェーデンじゃ食べれないもの。」
「さーて、前菜はこんなものね。」ぶっ!『・・これが前菜?!』パンパン。ゾロゾロ・・「うわ~、来たきた・・」
「水軍焼き。どれから焼く?」「ハマグリ・アワビ・サザエ・車エビ・・みんな生きてる。」ジューッ。ジジジジ・・
「搾りレモンをたらしてと・・あふあふー!あふくてほいひー!」ハフハフ。「じゃあ私はこれを。」ジュゥゥ~ッ!
「だから生きたウミウシを焼くなってばー!」「あら、これって貝殻の無い貝の仲間よ。」「えーん、ブキミだよ~。」
「そろそろご飯ものね。」パンパン。コトコトン。『・・お釜?』ぱかっ、ほわああ~っ。「わっ!鯛の釜飯だー!」
「それと鯛のアラの澄まし汁か・・」ズズ~。「ん~!ダシがよく出てる!」「この中落ちの身がまたおいしー。」
ザザァ・・カコーン。「食事のあとのオフロは最高ね。」「それにしても大きな浴場。」「窓の外が一面の玄界灘の
荒海というのがイキね~。」「アニーんちって、やっぱすごいな~。ネオノルウェーにもお城みたいな家があるし。」
「父方の実家よ。バイキングの末裔という縁で水軍出身の母と結ばれたの。」「バイキングと水軍か・・すごいな。」
「アリシアの実家だってネオルーマニアの大貴族でしょ。」「山中の古いお城よ。周囲は不毛の岩山ばっかだし。」
「前に招待されたけど、すごかったわよ~。まるでドラキュラが住んでるんじゃないかって思ったわ。」『あははは。』
「そういやレイちゃんはネオイタリアのローマ出身だったよね?」「たしかローマ帝国時代から続いてる家系だって聞いたね。
ヴァチカンともつながりが深いとか。」「私行ったことある。ボルゲーゼの丘にある大邸宅で、ローマ市街が一望できるの。」
『お~。』「なによ、マコんちだってネオギリシャの神殿みたいな家じゃない。」「古いだけだって。」「聞いた話だと、
神話時代からの家系だって。」「ふ~ん・・みんなそれなりの血統なんだね。アルカナってそういうものなのかな?」
「世襲というわけではなさそうだけど、純血種という傾向はたしかにあるかもしれないわね。」「でもクレオなんか
ハイブリッドでしょ。本人も何人だかわかんないって言ってるし。」「そっか・・血はあんまし関係ないかもね。」
そんなこんなで数日間、四人はたっぷり楽しんで・・ザザーン。「いや~、いい旅だった!」「磯釣り、スキューバ、
海の生き物たちとの語らい・・いい経験だったわ~。」「シロナガスクジラのディックの雄大な姿には感動しちゃった。」
「帰りの船の用意はできてるわよ。」「また帆船~?」「いえ、酔うのがイヤだと思って・・ホラ。」どーん!
『潜水艦?!』「これって・・ネオロシアのアクラ級じゃない!どっからこんな骨とう品・・」「チタン合金製だから
錆びないし、うちで買い取ってから大改造したから性能は数倍になってるわ。名づけて『電光号』。さ、乗りましょ。」
カンカンカン・・「潜水艦なんて乗るのはじめて・・よいしょっと。」タン。「あ、中は思ったより広いのね。」
「ネオアメリカのロス級より大きいしね。こっちが客室よ。」カンカン・・ガチャ。『おお~。』「ソファとかある~。」
「ホントに応接室だ・・」「潜水艦の中によくもまあ・・」ズズズズ・・【離岸確認。これより潜水します。】
ピピピッ♪ピッ。「はいなんですか?」『お嬢、隊長さんからお電話です。』「隊長から?・・つないで。」ザザッ・・
【実家に連絡したらこっちだというんで回してもらった。ちょうど帰る頃合だったか。】「何かありましたか?」
【うん。女帝からの情報によれば、ネオナチスの機動艦隊が日本目指して進行中。目標は東京シティーの破壊だそうだ。】
『なんですって!』「・・ウワサに聞いた『アルメダ艦隊』ですね。たしかパラオ諸島の秘密基地で準備中だったわ。」
【さすがによく知ってるな。】「現在位置と針路と速度、艦隊構成は?」【132/32。方位348、約18ノット。
戦艦2、空母1、重巡2、駆逐4。】「・・種子島東方200kmくらいか。」ピッ。「艦長、聞いてのとおりよ。
海洋監視衛星『アルバトロス』で最新情報を。」『・・確認しました。現在本艦は豊後水道を通過。目標まで4時間。』
「どーする?ガンダム持ってきてないし・・」【アルテミスは改修が済んでるぞ。オートマチックで誘導は可能だ。
全速で飛ばせば30分くらいで回せるはずだ。】「あとは何とかします。アルテミスだけでもよこしてください。」
【了解だ。誘導周波数はオメガ2で。】ピッ。「アニー、いい手があるの?」「艦長、『轟天』は今どこ?」『足摺岬沖。
約10分。』「すぐに来させて。そちらへ移る。」『了解。ひさびさにドンパチやりますか。』「「轟天」とこの「電光」が
あれば、この程度の艦隊ならなんとかなるわ。」『ですな。浮上せよ!現ポイントにて「轟天」を待つ!』ゴゴゴゴゴ・・
ザザァ・・シーン・・「霧が濃いね~、何にも見えない・・」「・・来た。」ゴゴゴゴ・・ザバアアアアーッ!『うわっ!』
ザザザザザ!『こ・・これは?!』「霧が・・晴れる。」サァァァ・・「・・戦艦?しかもでかい!」「潜水戦艦?!」
グィーン・・ガコン。「さあ、移乗するわよ。」『お、おう。』カンカンカン・・すっ。『?!』「『轟天』艦長へ。
水野網ほか四名、乗船を申請します。」「乗船を許可します。ようこそ『轟天』へ。」ぴっ。「・・久しぶりね、姉さん。」
「あなたも元気そうで何よりね、タキ。」『あ・・アニーが二人!』「紹介するわ。私の三つ子の妹、」「水野瀧です。」
『三つ子?!』「聞いてないよ~!」「言わなかったもの。」「ああ・・そうか、こないだの渚って。」「そのとおり。
いま一人の妹よ。」「仔細は実家の海洋監視センターから受けてるわ。ネオナチス艦隊・・海賊よりは歯ごたえがありそうね。」
「さっそく出発しましょう。」「潜水用意!全速で敵艦隊に向かう!」「アリシア、アルテミスが来たら追いかけてね。」
「あと5分よ。追い越しちゃうから。」『アリシアさん、機影確認。あと3分です。』「どーも。とゆーわけ。」タタタ・・
ゴゴゴゴ・・「タキ、高速艇を貸して。私たちも打ってでるから。」「いいわ。水雷艇「怒龍」を使って。ひさびさに
姉さんの水術が見られるわね。」「総トン数勝負といかない?どっちが多く撃沈するか。」「この『轟天』で姉さんたちに
負けるわけにはいかないね。」「気負いはケガのもとよ。まあ気楽にいきましょう。」ぽん。「敵艦隊、ソナー捕捉。」
格納庫。「『怒龍』射出準備。」「操縦は私が。」「武装は私が。」「そして私は水術で闘うわ。」『射出!』ボシュ!
ズズズズ・・「海面まで15・・10・・浮上。」ザザァァ・・「水密武装ハッチ展開。」バシュッ、ジャキジャキッ!
「ウォータージェットフルパワー!」ギュウウウーン!「・・いた、敵艦隊!」「目標ロックオン、アスロック発射!」
シュゴオオオーッ!「この距離なら外れっこなし!」ビーッ!「対艦ミサイル警報!」・・ゴオオオーッ!「やらせないよ!
20mmCIWS!」ブオオオオーッ!ズガガーン!「撃墜成功!」「さっすがマコ!」・・ズズゥゥーン!「命中!」
「こっちには海龍刀!はあっ!」ブン!ズババババーッ!・・ザガシャアッ!ズズズズ・・「超水圧の巨剣で真っ二つ!」
「もう2隻めか・・さすが。こっちもやるぞ!アスロック12管全射!」ズボボボーン!「追いついた『電光』からも
8管発射・・命中!」ズズズーン・・「支援艦艇および空母、全艦轟沈。」「浮上。砲撃戦に移る!」ザザアアーッ!
「ふっ、敵の主砲はあさっての方位か・・目標、敵戦艦。」ウィィーン・・「撃て!」ズドーン!・・パパパッ!
ドドドーン!「やってるやってる・・はっ?!」キュィィーン!「艦載護衛機が飛び立ってたの?!直上急降下!」
「CIWSが間に合わない!」ビシビシッ!「えっ?」ズドドーン!・・ゴオオオオーッ!「・・アルテミスガンダム!」
『おまたせ~。』「ナイスタイミングよ。」『何機か空母から飛んだヤツがいるから、掃討しておくわ。頭上はまかせて。』
キィィーン!「いいねいいね~!新型動力炉のおかげで身体の軽いこと!」グラタタタッ!「おいしょっと。」ヒュイン!
チュンチュン!「今回は武器無しでいってみよ。ジェットストレート!」ブン!ドバギーン!ドガガーン!「まず一機!」
シュゴオオオーッ!ビーッ!「AAM警報?上等じゃん。パワーダイブ!」キィィーン!・・「海面低空飛行!」ザン!
ザバアアアーッ!「えっと・・敵艦みっけ!」ブオオオオーッ!「30mmゴールキーパー、とろすぎ!」ビュオッ!・・
ドグシャアッ!「衝撃波だけでもこれだけの威力。そして流れミサイルが・・」ドガアアアアーン!「同士討ちね♪」
「さあ大物いくよ!」ザザザザーッ!「艇はオートパイロットにセット。」「敵艦は轟天に気を取られてるわ。」
「私たち三人の合体技、いまこそ使うわよ!」『おおっ!』ザザッ!「まずブリッジをつぶす!風魔爆炎闘術・大焦熱弾!」
ズドオオーン!ヒュルルルッ・・バガアアアーン!「壱岐水軍水術奥義・絶対零度激流波!」シュバババッ!カキカキン。
「パルテノン雷電術・エレクトリッガー!」ピシャアアアーン!バリバリバリッ!『合体奥義!超電導クラーッシュッ!』
ピカアッ!シュゥゥゥ・・『おおっ!』「戦艦が・・消滅しました!」「加熱した直後に超低温で分子崩壊を誘発し、
さらに超電導状態に高圧電流を帯電させ、そのエネルギーで電子分解か・・戦闘状況終了。高速艇を回収せよ。」
カツカツ・・「やれやれ、いい汗かいた。」「さすが姉さま。総トン数はそちらの勝ちよ。」「タキだって戦艦への砲撃、
一発も外してなかったわね。」「艦の性能とクルーの腕のおかげ。私は何もしてないわ。ところで他の皆さんは?」
「だいぶ波飛沫かぶったんで、おフロとランドリーに案内したわ。」「海のシロウトさんには潮の生乾きはつらいわね。」
「まあね・・ねえ、あの後、海王兄さんとは会った?」ぴく。「・・2回ほど。どっちもケンカしちゃったわ。」
「まったく~。相思相愛なクセして、どちらも要領がわるいんだから・・まあ、そこがあなたたちのいいとこなんだけど。」
「やめてよ、部下が笑いをこらえてるわ・・おっと。」・・ガヤガヤ。「・・なんで戦艦の中にまで大浴場があるわけ?」
「海の民って、けっこうおフロ好きなのかしら。」「たぶん真水に愛着があるんじゃないかな。昔は苦労したそうだし。」
「マコのが近いわね。真水に対する執着は歴史的なものだから、使えるときはとことん使う悪いクセはたしかにあるわ。」
「東京まで送ろうか?」「いいわ。せっかくアルテミスが来てるから、アレに乗って帰れば1時間よ。」「まあ確かに
あっちの方が速いわね・・じゃ、またいつか会いましょう。」「じゃ、元気で。」「東京の渚姉さんにもよろしく・・
ガンダムが発進する。甲板を開けよ。」ヒュィィーン、ドドドド・・「また会いましょう、姉さま・・礼砲!」ドーン!
キィィーン・・「・・ねえアニー、何か妹さんとの会話、ぎこちなかったね。」「そうね、まるで姉妹というより友人
みたいな話し方だったけど・・」「いや、あれは妹さんのほうがかなり気をつかってるね・・」「タキが・・気にしてるのよ。
長女の私は一介の兵士で、妹は次期水軍後継者。私はそんな地位に未練ないけど、やっぱり心にすまなさがあるんでしょうね。」
「次女の渚さんとやらはどうして継承権を放棄したの?」「私とほぼ同じ理由かな・・跡目相続争いがイヤで、わざと
権利を放棄して東京へ出たの。じっさい、過去にはそれで骨肉の争いとかあったし・・」「それなりの苦労があるのね・・」
「あのね・・しんみりした会話はさておいて、この状況はなんなの?どーして人間と荷物がコクピット内に充満してるわけ!」
ごちゃあ!「だって外は寒いしー。」「MTS使ってないからいーじゃない。」「そりゃ水平飛行くらいならオートでも
充分だけどさ・・」「ほら、バッグをイスにして。」「あ、ども・・って!これ私のバッグじゃない!こいつらは~。」
『こちら厚木管制塔。コースがフラついてますが大丈夫ですか、どーぞ。』「うっさい!今とりこみ中!心配しなくても
ぶつけたりしないわよ、どーぞ!」『そーですか。いちおう前方注意してください。目の前に富士山があります、どーぞ。』
「え?・・!」グワアアアーッ!「ギョエ~ッ!」『ぶ、ぶつかるーっ!』ドンガラガッシャーン!ズリズリズリーッ!
「あいたた・・山頂でスライディングしちった・・」『思いっきりぶつかったようですが生きてますか、どーぞ。』
「死んでたら返答できないわよ!どーぞ!」「あいたた!マコちゃん足どけて足!」「イテテ!背中踏んでる!」
ネオ浅草、「Atelier de Marie」。「じゃ、預けるよ。」ガチャ。「・・ホントにいいんですか?この銃は大佐にとって」
「いまんとこ使うだけの相手がいないからね。普通の銃でじゅうぶんさ。」「もったいないな~。この子だって戦場で
撃ちまくりたいでしょうに。」「そうさせたいのはやまやまだが、今は部下の育成が大事。ちょっとはハンデつけないと
あの子らの経験値が上がらないからね。」「まあそうですが・・これ噛みつきません?」つんつん。「マリーならたぶん
大丈夫だろ。なにせ」「しーっ!・・そのことはまだ内緒ですよ、魔神将軍。」「あ、そうだったな。すまんすまん。」
「そういやウワサでは大元帥さまもこちらに来られてるそうですが。」「うん。ある組織にうまく入り込んだそうだ。」
「・・どこの?」「それはヒミツ。ま、いずれ姿を見せることもあるだろう。」「・・そっか、大元帥さまがねえ・・」
みなさんお待ちかね!レイに託されたポンコツ戦車。
戦車の慟哭を聞き取ったレイはスーパータンクに大改造。
ガンダム使用不能!出撃せよ超戦車トール!
次回、機動武闘烈伝ダブルGガンダム第54話
「進め!スーパータンク」に、レディー、ゴーッ!
第54話「進め!スーパータンク」
「お~い、レイ、ちょっと。」「はーい、何ですか、隊長?」「いいものあげる。これ。」「こ・・これは!」
「さすがに知ってるな。イスラエルの戦車、メルカバだ。」「なんでこんなコットー品・・」「陸軍倉庫の奥で
クモの巣になってた。幸いサビの山にならずに残ってたんだ。古い記録をひっくり返してみたら、新型戦車の参考に
する目的で中東戦争で全損扱いになったのをタダでもらってきたらしい。」「・・これM74の110mm砲の弾痕だわ・・」
「燃えないゴミで出されるところを俺が拾ってきた。お前さえよければウチの備品にしてもいいぞ。」ぴた・・
「・・感じる。この子が泣いてる・・もう一度走りたい、もう一度戦いたいって。この想いがこれまで朽ちずにいさせたのね・・
隊長、この子わたしに預けてください。必ずや復活させてみせます!」「そういうと思った。マシンの声が聞けるお前ならな・・
好きにしていいよ。いちおう改造プランを提出しといて。改造した後でもいいけどね。」「ありがとうございます!」
工房。「さてと、ただ再生するのも芸がないわね。今風にモビルスーツとも渡りあえるような強化策を考えましょうか・・
何かいいジャンクパーツあったかしら。」カツカツ・・『レイちゃんの武器庫。無断立ち入り、タバコはダメよ。』
ギギギギ・・「え~と・・80mmビームキャノン、ガンクラスター、120mmメーサー・・月並みね。もっとこう、
血がアツクなるようなの・・ん?」キラッ。「ひらめいた!えっと、これとこれと・・これね。」ガチャガチャ。
「アニー、ちょっとお願いがあるんだけど。」「なに?」「これこれこういうものって作れる?」「えっ?う~ん・・
そりゃ作れるけど・・責任重いわよ。それでも?」「覚悟の上よ。」「・・わかった。一週間で。」「お願いね。」
「マコ、ちょっと。こーいうの作れる?」バサバサ・・「・・へえ、面白いね。作れるよ。」「一発いくらかかる?」
「お金はいらない。材料さえ揃えてくれたら。」「感謝。材料はこれとこれと・・これね。わかった、これならすぐに。」
「あとは対空か・・アリシアちょっと。」「ほ~い。」「こういうの航空屋から見てどう思う?」ばさばさ。「ん~・・
ゲッ!こりゃトコトンやらしーわ・・」「そう・・よかった。」「なにがよ~。」「アリシアが嫌がるだけのものってこと。」
「おーい、レイ。陸軍にガンダムの動力炉、注文したのか?たしかオーバーホールは2年後だと思ったが。」「そうですか?」
「・・まあ、書類はキチンとしてるからツッコミはないけどな・・ついでにガンダムの予備装甲もオーダーしとけや。」
「・・えっ?」「これから戦闘増えるんで、いちいち小口で注文するよりまとめてストックしとけってこと。とっとけば
使い道もいろいろあるし・・な?」・・はっ。「了解しました。ただちに発注かけます。」「んじゃ、そゆことで。」
カンカン・・ジジジジ・・ちらっ。「レイ、まだやってんのか。」「これで3日連徹ですね・・熱中してますね~。」
「食事もロクに取ってないようですけど。」「しょうがないな~。何か食べ物を置いといてやれ。」「そう思って、
お弁当と水筒をここに。」「そーっと置いとけよ。刺激したら何するかわからんぞ・・」「じゃ、私が・・」ソーッ。
「レイちゃん、夜食置いとくね。」カンカン・・ピタ。「・・ありがとう、アリシア、みんな。」・・カンカン。
翌朝。チュンチュン・・コンコン。「レイちゃん、いる?」シーン・・「・・いないね。」「まさか・・まだ工房に?」
キイッ・・「やっぱり。メルカバの中で寝てる。」「毛布でもかけといてやれ。完成したようだ、いい顔してる・・」
「じゃ、お披露目といこうか。」「はい。ジャーン!」バサッ!「・・なんだ、オリジナルのまんまじゃないか。」
「そう見えるでしょ・・実は!」ピッ♪バシャバシャッ!『お~!』「前面にビームシールド、側面にビームサーベル。
これで時速200キロで敵集団に突っこんだら?」「・・えらいことになるな。」「対空に気化弾頭ミサイルポッド。
半径500mを火の海に変えるわ。」「くれぐれも対地に使うなよ。コワイから。」「主砲はオリジナルのまま。その代わり
砲弾にコッたわ。まずはマコ特製の100万ボルト電撃弾頭。一発でモビルスーツをスクラップにできるわ。そして
私特製のHEAT(徹甲焼夷弾)。ガンダリウム合金だってブチ抜くわ。」「ほう・・」「動力はガンダムの動力炉。
巡航速度で150キロは軽く出るわ。そして今回の目玉!トール!」ビン。ドルルル・・「はい、あいさつ。」ウィーン。
「砲身下げてあいさつしてる・・サスまで下げてる。」「AIロボット戦車?」「第五世代の自律学習型AIを搭載してるの。」
「おいおい、暴走したりしないだろうな。」「火器は手動のみでリンクしてません。それ以前にアニーの作ったAIがそんな
ヘマしませんよ。」「前にも言ったように、AIはマスターの心を反映するわ。レイちゃんがしっかり愛してあげれば、
そんな事態には絶対ならないわ。」「もちろん。手塩にかけて生んだわが子だもの。ね、トール。」ウィーン。
プルルル。「はい、クワトロです。・・なに!・・了解。」ピッ。「・・こんな時に。参謀本部からの緊急連絡だ。
ネオナチスモビルスーツ軍団がこの基地めがけて進撃中。機種はMSヤクト・ティーゲル60機。完全な奇襲攻撃だ。」
『なにーっ!』「まずい!全てのガンダムはC整備中で組むのに3時間はかかります!」「第一師団が迎撃出動はしたが。」
「おじさまの部隊が?」「あ~、そういやレイちゃんの叔父さん、第一機甲師団長だったね。」「私たちはどうします?」
「レイ、これ何人乗れる?」「メルカバはもともとAPC(兵員輸送車)としての側面もありますから、全員乗れます。」
「じゃ、決まりだな。みんな得意の得物を持ってとっとと乗りこめ。いきなりステージレベルが高いが、なんとかなるだろ。」
「たかだか60機くらい。私たちとトールがいれば何とかなります!」『その通り!』「とは思うけど、知り合いにもいちおう
助っ人頼んでおこう。」さっ、ピピピッ♪「知り合いって、だれ?」「・・あ、もしもし。ふみこたん?クーちゃんだよ。」
「あ、ルフトバッフェの。」「・・いやいや、あのくらい。なんなら今度ふみこたんもおいで。フグ用意しとくからさ。」
「ミステルに航空支援かな?」「でも今回は地上戦だし、どっちかいうと陸戦力が欲しいな。」「・・というわけで。」
同時刻・木星~土星間宙域、魔砲艦「グラーフ・ツェッペリン」。「・・ほう、それはなかなか面白い状況だな。で、・・
了解した。うちの陸戦隊を送ろう。・・では。」ピッ♪「ミュンヒハウゼン。」ボオッ・・「ははっ。」「聞いてのとおりだ。
魔導陸戦隊『ヴィルベルヴィント』、重力圏戦闘仕様で出撃させよ。」「かしこまりました。換装をただちに指示します。」
シュッ・・「ふみこたん、また出動かい?」「こないだのミステルとはまた違うようじゃの。なにやら陸戦隊とな?」
「わが魔導空軍には拠点制圧や要塞攻略のための陸戦隊もある。ミステルが戦闘機とすれば、いわば歩兵部隊だな。」
「なるほど・・海兵隊みたいなもんか。」「となると少数精鋭・一騎当千の腕利きばかりということじゃの。」「うむ。」
陸戦隊「ヴィルベルヴィント」オフィス。「・・あ、レイン姉さん?そう、アイリ。ひっさしぶり~。結婚式以来ね。」
「おや?隊長、アイリの電話相手ってひょっとして。」「そうだキース。現キング・オブ・ハート婦人のレイン・カッシュだ。
アイリの実の姉だそうだ。」「うへ~、ミカムラってどっかで聞いたと思えば。すごい身内を持ってるんだねえ・・」
「アイリせんぱいはやっぱりすごいんですねー。わたしも目標にしてがんばらなくっちゃ。」「サリアのマジック・ハンマーは
もうじゅうぶんすごいってば。」「あー、前の出撃で巻き込んだの、まだ根にもってますのね、キースせんぱいー。」
「おかげで20kmもぶっとばされて、再合流するのがタイヘンだったぜ。」「はははは。あれはとんだ災難だったな。」
「・・それじゃ、またかけるから。じゃあね~。」ピッ♪「たいちょ、近々地球へ行く用事ないですかねー。」「どうしてだ?」
「姉と話してたら、なーんかいきなりおスシ食べたくなったもんで。」『お~。』「スシはいいねぇ。ずっと宇宙勤務だと
なんでか新鮮な魚ってのにありつけないしな。」「月面のフォン・ブラウン・シティにも冷凍モノ の回転お寿司やさんしか
ないですからねー。」「鮮魚の宇宙輸送というのはけっこう難しいそうだからな。気持ちは俺もわかるが・・」ビーッ!
はっ!【ヴィルヴェルヴィント、出撃指令。目標は地球上・ネオスウェーデン座標026*003。重力圏戦闘仕様。】
「やった!」「地上戦だぜ!」「重力圏戦闘ですー!」「よし、全員出動!ただちにガンダムに搭乗せよ!」『了解!』
『ヴィルヴェルヴィント、発進準備完了。オンブー・アルマナ少尉、転送準備ねがいます。』「了解しました。」カチャ。
「カバラ演算器『スカラベ』起動・・空間法程式『アトゥム』に目標座標入力よし・・解法します。」ズズズズ・・
「ヴィルヴェルヴィント、転送射出よろしいです。」「了解。グレイ・リーダー、アルサレアガンダム、行く!」
「キース・エルヴィン、モーゼルガンダム、レッツゴー!」「アイリ・ミカムラ、ブリッツガンダム、いっくよー!」
「サリア・バートン、クロイツガンダム、いってきまーす!」シュバババッ!ゴォォォ・・「転送空間、突入成功。」
第一次防衛線。ヒューン・・ドドド・・「う~ん、なかなか厳しいな・・MSとタンクじゃ圧倒的に不利だな。」
「サラマンドラ将軍、こっちの戦線も押されてます。」「何か打開策があればな・・」ドドドド・・「・・ん?」
「なんだあの土煙は?」ドドドドド!「まさか?・・将軍、戦車です!戦車がものすごいスピードでやってきます!」
「バカいえ!どこの世界にあんなバカッ速い戦車があるか・・って、ひとつあったよな、以前に・・」サーッ・・
「ま、まさか・・タンクガール?!」「レイのやつか!いかん!」チャッ。「全部隊展開!道を開けろ、レイが来る!」
『ゲゲーッ!散れ散れ!トバッチリ食らうぞーっ!』ドドドドドーッ!『うわっ!』「ゲホゲホ!・・回線を。こらレイ!
どういうつもりだ!」『あらおじさま、おひさ~。』「ノンキにあいさつしとる場合か!たった戦車一台でどうする気だ!」
『訂正してください。「たった」じゃなくて、「タダモノでない」一台です。これからトラキチどもをぶっとばしま~す。』
『将軍、とゆーわけで後詰めを、』『お願いしまーす!』「むう・・クワトロやワルキューレどもも乗っとるのか・・わかった!
全軍反撃用意!レイが突破口を開ける!」「将軍、緊急入電!コロニー連合軍『ヴィルヴェルヴィント』が来てくれます!」
ぎょっ!「なんだと!あのバケモノ部隊が!いつ?!」「・・いまです!」・・ドドドドーン!『わあっ!』「これは?!」
ゴォォォ・・ギン!「まちがいない・・やつらだ!」【こちら「ヴィルヴェルヴィント」。これより援護行動に入る。】
ドドドドド!「えっ?!・・後方に未確認ガンダム四機出現!」「味方だよ。ほらさっき頼んだやつ。」「ルフトバッフェは
空軍ですよね。なんで陸戦型ガンダムが?」「・・ああっ!まさか『ヴィルヴェルヴィント』!」「はい、マコ正解。」
「私も聞いたことがあるわ・・コロニー空軍陸戦隊。少数精鋭、たった四機でMS一大隊を打ち破ったこともある、
おそらく世界最強の陸軍部隊・・あれが。」タラ・・【クワトロ大佐、応答ねがいます。】チャッ。「ここだよん。
よく来てくれたな、グレイ。」【お久しぶりです、先生。】『先生?!』「状況は見てのとおりだ。思うぞんぶん遊んでくれ。
こっちは正面の敵だけに集中できればいいから。」【了解しました。あ、それと。】「わかってるって。戦勝記念宴会のため
ちゃんと出前は頼んでおいたから。」【何よりです。みんな、そういうことだ。】【おっし!これでやる気が出たぞ~!】
「大佐・・先生って?」「連中は俺の教え子さ。コロニー連合軍・軍事顧問時代のな。」「連合軍にいたんですか?!
全然知りませんでした・・」「短期間だったし、言ったおぼえないしね。」「・・そういや大佐の過去って知らないよね。」
「右翼はワルキューレにまかせ、俺たちは正面と左翼をたたく。戦闘開始!」『おお!』ドドドドド!「まず先手をとる!
戦術魔砲・クロムバスター!」ビィィィ・・ズゴオオオーッ!ドカドカドカーン!「敵11機消滅!」「さっすが隊長!
負けてらんないね。戦術魔射・スティンガーショット!」シュバババッ!ドカカカカッ!「ブレイク!」パチン♪
ズガガガガーン!「まとめて8機!」「キースもやるね~。ならあたしも!戦術魔拳・地動波よ!」グワッ!ドオオンッ!
ゴゴゴゴッ、ズドオオオオーン!「10機ゲットぉ!」「さすがマジック・ソルジャーのセンパイがたですー。わたしも
がんばろっと!マジックハンマー!」ムクムクッ、どおんっ!「戦術魔槌・巨人星ですー!」ぶんぶん!カキカキーン!
「えいえいえーい!」「うわっ!始まったはじまった!」「キース、アイリ、間合いをとれ!巻き込まれるぞ!」
「え?・・ゲゲッ!」ゴオッ!カキイイイーン!「・・あれれ?」『なんでいつも俺なんだああぁぁぁ~!・・』
ヒュルルル・・キラッ。「あーあ、またキースが飛んでっちゃった・・」「つくづくついてないヤツだな・・」
「さてと、こちらも突入だな。」「トール、全武装開放!」バシャシャッ!「ライデン砲、ていっ!」ズドォン!
バリバリバリ!「耐ショック!突っこむよーっ!」ズバババーン!「乱戦モード!各人、降車して各個撃破せよ!」
『おおっ!』ドカドカドカッ!「まずはそこのティーゲルから!はああああーっ!」ダーン!「月光断首斬!」スパーン!
ザザーッ!「いただき!水龍槍!」シャバアッ!バコオッ!「MSの装甲をも貫く激流。水でもかぶって反省しなさい!」
「そこ!爆裂焼球!」ボオッ!「それっ!」ビュオッ!・・ドカアアアーン!「そこらの手榴弾よか強烈でしょ。」
「トール、走り回ってMSの脚を切っちゃえ!」ギュラララーッ!ビン!ザキザキザキィッ!グラッ・・ドドーン!
「帯電・500万ボルト!」バリバリバリ!「ボルテッカ、いけえっ!」ドヒュヒュヒュッ!バリバリバリ!ドカドカーン!
「対MSライフルと・・そこ。」ジャキッ、ドキュゥゥーン!ビシッ!ズガァァーン!「さすが徹甲焼夷弾だね・・ん?」
グワアッ!はっ!「大佐、あぶない!」シュバアッ!・・サラサラ・・「何があぶないって?」「・・MSが消えた?!」
「なにあれ?MSが塵になっちゃったよ!」「いったい何がどうなってるんですかー?!」「・・あれが魔神将軍、いや、
アルカナ同盟『ハンマー・オブ・エンペラー』の分子破壊拳『カイザーナックル』だ。」「分子?!」「破壊拳?!」
「かつてはあの拳で数知れないMSが塵にされたものだ・・いまだ健在か。」「・・前から聞こうと思ったんだけど、
なんであのクワトロ大佐は『魔神将軍』ってあだ名なの?たいちょ。」「あだ名じゃないぞ。経歴の最高階級で呼ぶのは
軍隊の常識だろ。」「でもそんな階級名は聞いたことがないですー。」「こちらではな。」『・・こちら??』
夕刻。カァカァ・・『はあっ、はあっ・・』「あ~・・疲れた。」「やっと・・終わったわね・・」「生身でMSと戦うと・・
けっこーキツイわ、こりゃ・・」「ガンダムの・・ありがたみが・・よく・・わかったわ。」「さてと、家に帰ろうか。
レイ、トールを呼んでくれ。」「は~い。トール、カモ~ン・・」ゴゴゴゴ・・キキッ。ガチャ、ドサドサドサッ。
「もう・・運転する・・気力もないわ・・トール、基地までよろしく~。」ゴゴゴゴ・・【こちらヴィルヴェルヴィント。】
カチャ。「はい、ご苦労さん。うちの基地に向かってちょーだい。着き次第『補給』すっから。」【了解した。】
機甲部隊。「彼女たちとヴィルヴェルヴィントで倒しちゃいましたね。」「ああ・・どっちもバケモンだな、あの連中は・・
あとでビールでも差し入れてやるか。」「そうですね・・あの戦車、ウチで採用しますか?」「冗談ではない。あのような
非常識な戦車を扱えるのはレイだけだ。時速200キロで突撃しろと言って、貴様ならば従うか?」「辞表を出しますな。」
「レイをクワトロの所へ預けてよかったぞ。他の兵どもがマネしたら大惨事だ。」「独立愚連隊ならでは、ですね。」
その夜、基地の会議室。『カンパーイ!』カチンカチン!ぐーっ!「・・うんめぇ~!勝利のあとの生ビールはサイコー!」
「キースは何もしてないじゃん。」「しようと思ったらサリアにリングアウトにされたんだよっ!」ぐーりぐり!
「いたたたー!ごめんなさいー!」「まあまあキース、済んだことだ。今は勝利を楽しもうじゃないか。」ぱくぱく。
「あーっ!たいちょ、ずるい!あたしもスシ食う!」「おっといけね、食いそびれるとこだった。」「お皿で確保ですー!」
「お前たちは相変わらずニギヤカなのね。」「おかげで退屈しないのがいいですね。」「だな。」「ときにワルキューレは?」
「生身戦闘が堪えてバタンキュー。だから連中の分も食っちゃっていーよ。」『おっしゃー!』「ウニ2つもーらい!」
「大トロ3つ確保ですー!」「あまいね。通はヅケにこだわるべし!」どたばた!「よっぽど鮮魚に飢えてたんだな。」
「大佐、そういえば准将とはお知り合いのようですが。」「まあな。昔にいい仲だったこともあるし。」「・・何年前?」
「グレイ、トシの話はやめようや。んなこと言ってると、お前の本当のトシだってばらすぞ。」「それはご勘弁を。」
そのころ、戦乙女たちは各人の部屋で寝ていた・・ひとりを除いて。「す~・・」・・ピピッ♪(車内温度調整・・
マスターの体表温度、就寝理想値。脳波パターン、熟睡レベルに移行確認。内部照明、照度ダウン・・)スゥ・・
みなさんお待ちかね!ワルキューレ隊に忍び寄る暗殺部隊の魔手。
だが敵は知らなかった、『地獄からの帰還兵』マコの真の恐ろしさを。
フリーのテロ撃滅組織と共に、いま誰も知らない流血の戦いが始まる。
次回、機動武闘烈伝ダブルGガンダム第55話
「地獄のソルジャー!静かなる防衛戦」に、レディー、ゴーッ!
******************
第55話「地獄のソルジャー!静かなる防衛戦」
ウラル山脈要塞。「・・というわけで、ことごとく我が軍は返り討ちにされました。」「むむう・・やはりあの連中を
除かないかぎり、勝利は見出せないようだな。」「御意。しかしタイタン大本営との連絡が途絶したいま、勝手に軍を
動かしては十傑集に怒られるのでは。」「いや、それは逆だ。指示待ちのままでは兵の士気が下がる。小刻みでも作戦を
進行させぬとな。」「は。・・(戦力の浪費ではないのか。)」「かといって、このまま物量作戦を続けては大侵攻のための
戦力が足りなくなるのも事実。そこでだ、からめ手でいこうと思う・・暗殺部隊『ゲシュタポ』を出せ。」「ジークハイル!」
ネオスウェーデン軍基地。カツカツ・・「応接室に呼び出しって何だろ?」コンコン。「マコ・トライデント少尉、入ります。」
『どーぞ。』ガチャ。「失礼しま・・?!」「おお、一年ぶりだな。」「『神選組』の日出方副長!」「まあ入れや。」
「は。・・クワトロ大佐、これは?」「見てのとおり、トシちゃんだ。」「いえだから、副長がここにいるということは?」
「私がいるということはカウンターテロの話に決まってるだろ。」「これは信頼できるスジの情報なんだが、ネオナチスは
ついに俺たちにターゲットを絞ったらしい。『ゲシュタポ』を出動させるそうだ。」「なっ!・・」「シーッ。・・そうだ、
悪名高い暗殺部隊だ。」「・・巻き添えをためらわない冷酷非情のテロ集団。必要なら自爆テロまでやる連中じゃないですか。」
「そこでだ、こちらもカウンターテロのプロを雇うことにした。毒には毒ってやつだ。うちの連中は正攻法は得意だが、
ことテロ対策はマコ以外はシロウト同然だしな。」「そうですが・・あ、ひょっとして。」「察しがいいな。他の連中には
知らせず、秘密裏に敵を見つけ処分する作戦だ。」「・・それには寄せ餌が必要。それで私だけ、なんですね。」
「そゆこと。テロリズムを熟知しているマコにしか頼めないわけ。」「わかりました。私だけなら何とでもなります。」
「いい度胸だ。さすがは『地獄からの帰還兵』。」ぴくっ。「・・なぜそれを?」「君の知ってる以上に君は有名だ。
ほぼ一年前、NATO混成特殊部隊・第三中隊はネオエトルリアでの武装テロリストとの戦いで奇襲に会い、全滅した・・
いや、君一人だけ生き残った。」「・・」「君はわずかな武装のみで数百もの敵に対し反撃に出た・・近くの森をまるまる
トラップ・ゾーンと化し、不寝番をナイフと小枝の槍で倒し、奪った弾薬で爆破し撃ちまくりながら敵を森へと誘導。
数々のトラップとナイフで敵は一人残らず殲滅された・・前線基地に生還した君を見た兵は、いまだカウンセリング中だ。」
「・・本題に入りましょう。」「よかろう。ムダ話が過ぎたな。・・だがその目は好きだぞ。地獄を見た者の目はな・・」
市街地。カツカツ・・(さて、食いついてくるかな・・?!)ぴくっ。(いるいる。基地から出てくるのを監視してたな。)
カツカツ・・ピピッ♪(ハンドバックレーダー解析・・サングラス投影・・向こうのビルに銃器、後ろに爆弾反応か。
狙撃にしくじったら自爆という万全の態勢ね。さすがゲシュタポ。データ転送よし・・神選組、あとはよろしく。)
後方。「・・」カツカツ・・ふらふら。(なんだ?・・少女?えらく青白いな。)「ごほごほ・・」よろよろよろっ、
(おっと。)ぽすっ。ドスッ!「?!・・」「あ、ごめんなさい・・」ぐりっ!「!・・」「すみませんけど、そこの
路地までいっしょに来てくれませんか・・」グッ、ぐいぐい・・「路上だと迷惑なので、そこで死んでください・・」
ビル屋上。「・・」すーっ・・ぴたっ。ググ・・ヒュィィィーン!「?!」びくうっ!ばばっ!ブン!バリバリバリッ!
「ぐおおおおっ!・・手が!」ガシャン!「触れれば骨まで砕ける『カシナート』よ。」「?!・・子供?」ぶちっ。
「カシナート!」ヒュイイイイーン!ブギャギャギャッ!「ぐぼおおおおっ!」「紗乃はハタチ過ぎよ、このヤロー!」
「紗乃ちゃん、まだ殺しちゃダメだよ。」すっ。「わかってるわよ、ゆーこさん。右腕ミンチにしただけだから。」
「にしても紗乃ちゃんはいっつもやりすぎるんだから。少しは人権を考えないと。」「人の人権まる無視のテロリストに
人権もジュネーブ条約もあるもんですか!拷問しようが虐殺しようがこっちの勝手でしょ!」「にしても加減というものが。」
ギャアギャア!(・・いまだ!)ダダッ!『・・あっ?!待てー!(ちょっとぼーよみ)』タタタタ・・「・・逃げたね。」
某所・・バタン!『なんだ?!』「はあっ、はあっ・・」ヨロ・・「おいどうした?!」ダダッ!「失敗だ・・気取られた。」
「自爆担当は?」「わからん・・たぶん俺だけだ・・」「ちょっと待て、すぐに手当てしてやる。」『その必要はねえぜ!』
ビュオオオッ、ボグシャアッ!『うわっ!・・脳が!』「ゲシュタポの団体さん、みーっけ!」ダダッ!わしっ、ベリッ!
「あられ鉄棍!」ブン!ボゴオッ!「ぐはっ!」「敵か!」ちゃっ、「おそい!」ブン!グシャアッ!「ぐわあっ!」
「おらおらおら!」ブンブンブン!バコボコバゴオッ!「せまい所では不利だ!」ダダッ!「あー、待て!(ぼーよみ)」
さらに某ホテル。バタン!「隊長、一大事です!」「どうした。」「敵の奇襲で部隊は全滅です!」「なんだと!いったい
どうやってアジトを!」『こうやってだ。』ヒュルルルルッ、スパーン!・・どさっ!ゴロゴロ・・「・・首が!」
ヒュルルル・・パシッ。「道案内、ご苦労。」すっ。「・・キサマは神選組の!」「いかにも。神選組副長、日出方歳江。」
「しまった、『帰巣』か!」「そのとおり。手負いの獣は必ず巣へ戻る、それは人間でも同じことだ。わざと逃がして追跡し、
アジトから敵中枢まで芋づる式につきとめる、これ『帰巣』の技法なり。」「部下には教えていたが、まさか自分たちに
使われることになるとは・・」「おとなしくお縄になってもらえれば楽なのだが。」「・・そうはいかん。」ボオーン!
「煙幕?!」ガシャーン!・・「・・さすがはゲシュタポ隊長、逃げ方がうまいな。」ピッ♪「そちらへ行ったぞ、マコ。」
ホテル裏。タタタタ・・『ここまでだよ。』ザッ。「!」ザザーッ!・・「マコ・トライデントか。ターゲットから姿を
見せてくれるとは。」「せめて私だけでも首を取らないと、暗殺部隊の沽券にかかわるでしょ?」「そうだな・・!」
シュパパパッ!「おっと。」ひょい、カカカカッ!「この手裏剣はメッサーグランツ・・あんたゲルマン忍者の出だね。」
「ウワサに聞く『地獄からの帰還兵』、その強運もこれまでだ。」「・・強運だって?ふざけるんじゃないよ。その言葉
すぐに後悔させてやるよ・・」パリパリ・・「メッサーグランツ乱れ打ち!」シュババババッ!「プラズマウォール!」
バリッ!バリバリバリ!「電気の壁?!」「サンダーネット!」ズババババッ!バリバリバリ!「ぐおおおおおーっ!」
「まだまだ。この程度で電気風呂くらいよ。」シュゥゥゥ・・「ぐう・・ならば!」チャキッ。「銃か。お里が知れたね。」
ドキュドキューン!ゴォォォ・・「・・なにっ?!」「これが私が生還できた理由。」バリバリバリ!「弾丸が・・空中に
静止している!」「高電圧による磁場誘導障壁。そして!」ヴン!「リニアショット!」シュバババッ!「なんとおっ!」
ボコボコボコン!ドロ・・「・・弾丸を反撥するとは!」「あんたは殺さない。いろいろ聞きたいことがあるから。」
「・・あまいな!」ダダッ!すっ、「爆弾?」「死ね!」ピッ♪ドカアアアアーン!ガラガラガラ!ゴオオォォォ・・
タタタタ!「しまった!」「まきぞえ自爆されちゃったの?」「だからシロートにトリやらせちゃダメじゃんかよ!」
「望んだのは本人よ。だから死ぬのも自業自得、紗乃たちの責任じゃないわ。」「これじゃ原型とどめてませんね・・」
『そうでもないけど。』『・・なにっ?!』「こっちこっち。」「え?・・ああっ!」ふわふわ。「上空に・・浮遊してる!」
スゥゥ・・すとっ。「とっさに上に逃げたわけ。」「すげー!超能力かよ!」「マコがサイキッカーとは聞いてないわよ。」
「・・ああ、そういえば電気を操れるんでしたね。ということは・・地磁気。」「鈴音ちゃん正解。高圧電磁フィールドで
地磁気を反撥する秘技『フレミングレイズ』、ひさびさに使ったわ。」「なるほど・・これなら地獄からの生還もわかる。」
その夜、パブにて。『カンパーイ!』カチンカチン!「暗殺部隊殲滅ごくろうさん。ここはうちのおごりだから遠慮なく
飲み食いしてくれや。」「規定の報酬だけで充分だが。」「うちの接待費予算拡大のためと思ってくれればいーから。」
「大佐、そんなにもらってるんなら部下にも回してくれないと。」「身内で使うと横領になるからダメなんだこれが。」
「軍隊もいろいろむずかしいんですね。」「まあそれを逆手にとってうまくやるのも技術のうちさ、ゆーこさん。」
「ときにマコ少尉、ものは相談だが、堅苦しい軍など辞めて、うちに来ないか?」「えっ?!」「あ、それいいねえ!
神選組の戦力アップはまちがいないぜ!」「・・少しは任務がラクになりますね、ごほっ。」「あんなすごい能力なら
即戦力になるよね。」「紗乃は反対よ!」『なんで。』「・・とにかく反対!」「・・あ、わかった。少尉は背が高いから。」
「あーなるほど!紗乃の小ささがよけいに目立つよな、たしかに!」「アラタうるさーい!」「まあまあ。そもそも私は
転職する気ないから。」「うちとしても、いまマコに抜けられるのはとっても困るわけで。」「ためしに言ってみただけだ。」
「そういや前々から気になってたんだけどな。」「なに?アラタ。」「ほら、基地に生還したときに見張兵をトラウマに
したほどの顔ってどんなんだ?」「それよそれ。マコけっこー美人なのに、悪夢に見るなんてどんな顔だったのよ。」
「あー・・あんまり思い出したくない。鏡みて自分で悲鳴あげたくらいだし。」「ああ、それなら写真ここにあるぞ。」
『えっ?!』「生還直後に撮影されたものをもらったんだ。今は魔除け代わりにサイフに入れてる。」ぴらぴら。
「ちょっ!大佐、それはダメです!」「もう一回見てみたいのかな?」「それがイヤだからです!」「ほう、伝説の顔を
ぜひ見てみたいな。」「どんな顔なんだろうね?」「見せろー!」「なんかヤな予感するけど、好奇心のほうが。」
「・・身体にさわりそうですが、見たいです。」「んじゃ、マコは目つぶってろな。ほれ。」ぱさっ。『・・・・』
「ご感想は?」『・・ぎゃああああーっ!』「うぶっ!・・お手洗い!」ダダッ!「あうあう・・(痙攣してる)」
「こ、こりゃあ!・・見るんじゃなかった!」「怖い、こわいよー!」ガタガタ!「・・ガハッ!(大量吐血)」ばたっ。
「いわんこっちゃない・・」「効果てきめんだな。」ぴらっ。「まあ無理ないか。オレでも最初はかなりビビッたし。
マコ、これ返そうか?」ぴらっ。「こっち向けないでー!やっと忘れかけてたのにー!」「そないに嫌わんでも。」
じーっ・・「しっかし・・泥と血と硝煙はともかく、これはなあ・・貞子さんとにらめっこしても勝てるぞ、こりゃ。」
みなさんお待ちかね!クワトロ大佐は今日は非番。
ヒマそうにしているかと思いきや、なかなかご多忙のよう。
ポンコツマイカーで、西に東に行ったり来たり。
フルハウスの明日のためには休日もないようです。
次回、機動武闘烈伝ダブルGガンダム第56話
「東奔西走!魔神将軍の憂鬱」に、レディー、ゴーッ!
***************************************************
第56話「東奔西走!魔神将軍の憂鬱」
大佐の住まいは基地の近くにあるアパートである。本来は洋間であったが、どっからか持ってきた畳を敷きつめて
六畳まがいとなっている。意外と室内は整然とし、本もサイズごとにきっちり分けられて本棚に収まっている。
「ん・・今日は非番だ。昼まで寝よ・・」大佐の一日はまだ始まらない・・と思ったら人生そんなに甘くはない。
ぴんぽーん♪「む~・・だれだ?」のそのそ・・「どちらさんで?」『アニキ、あたしよ。』「なに?お蝶か。」カチャ。
「あら、起こしちゃったかな?」「いいけどね。ここに来るのは珍しいな。」「ちょっと木星まで出かけた帰りがけで。」
「ほう、そりゃまた遠くまで。」「迎えの時間まで待たせてほしいんだけど。」「いーよ。コーヒーでも入れてやろう。」
ポコポコ・・「サイフォンか・・あいかわらずコダワリ屋ね。」「ここ数年ほど帰ってないけど、透くんは元気かな?」
「もう16になったわ。家臣のみんなもよく支えてくれてる・・人望も厚いし、あたしよりいい領主になるかもね。」
「お前さんだって優秀な領主さ。家督を譲って大正解だったな。」「・・あたしも身軽なほうがよかったんだけど。」
「一人ならそれでもいいがな。」はっ。「・・透。」「いい子に育ててくれたようだ・・それで俺も報われるってこと。」
「アニキ・・ありが」「おっ、コーヒーができたようだ。ほれ、俺自慢のブレンドだ。」コポコポ・・「・・いい香り。」
午前十時。妹さんを送り出し、大佐は愛車のポンコツローバーでお出かけ。ボボボボ・・♪パパー!「はい、お先どうぞ。」
チカチカ。ブロロロ!・・「水温はと・・ギリギリおっけー。・・ん?」ぴく。「・・後ろのベンツ、さっきからいるな。
このドン亀を追い越さないとゆーことは・・刺客か。ならば。」ぐっ、ギリリリッ!バコン!ヒュイイイイーン!
ブオオオオーッ!「よっとっと!」キキイイーッ!「・・200km!レイに改造してもらったはいいが、こりゃ速すぎだぞ。」
キキイッ!ブロロロロ!「フェラーリ?敵さんもバカじゃないってことか。」カキッ、グラタタタタッ!「うおっと!」
チュンチュンチュン!「フロントから機関銃とはな。本格的に攻めてきやがった。こうなりゃ反撃するっきゃないね。」
ピッ♪ガコン!ズドオンッ!ドガアアアーン!「・・おいおい、リアランプにバズーカなんて聞いてないぞ、レイ。」
キキイッ。「身分証を。」「この顔でいいかな?」ひょい。ぎょっ!「し、失礼いたしました、魔神将軍どの!」ザッ!
「任務ごくろーさん。」さっ。ボボボボ・・「・・しかし、すごい車に乗っておられるなあ・・あ。」ボスッ!・・
ガチャ。『おーい、ちょっとちょっと。』タタタタ・・「故障ですか?」「えとね、合図したらここ蹴ってくんない?」
「ここですか?」「そう、そこ。俺はこっち蹴るから。いっせーの。」げしっ!ボンッ!ボボボボ・・「ほら直った。」
「はあ・・お役に立ててよかったです。」ボスッ!『あ。』「・・またお願いだけど。」「押すんですね・・(TT)」
キュィーン!ガガガガ・・「よしよし、だいぶできたね。」「70%ってとこです。期日までには仕上がりますよ。」
「敵さんには気づかれてないだろうね。」「セキュリティは万全です。」「あっそ・・そこの君、ちょっと。」
カンカン・・「なんですか?」グイッ!「うわっ!」ぴらっ。「この腕時計はCCDを内蔵した改造デジカメだね。
ここはカメラ持ち込み禁止でしょ?」「スパイ?!保安要員!」「・・なぜわかった。」「こんな高級時計付けたまま
作業する工員いないっての。ジャマだわ傷つくわで、ロッカーに大事にしまっておくのが常識ってもんでしょーに。」
♪ピイッ!・・ザザッ!「まだいたのか!」「ザル警備だな。」「俺ごと撃て!」グラタタタタ!ビスビスビスッ!
『やったぞ、魔神将軍を倒した!』「喜ぶのまだ早いよ。」『・・なにっ?!』ゴォォォ・・「ハチの巣になったのは
お仲間だけさ。いい楯になってくれた。」ユラ・・『見えたら撃て!』ジャキッ!・・どさっ!『?!・・いない!』
ドドドドッ!『ぐっ!・・』どさどさっ。「はいおしまい。逮捕して。」「一瞬で四人を・・」「さすが魔神将軍・・」
お昼。大佐には行きつけの店がある。ガラガラ。「ちーす。」「いらっしゃい大佐。今日は?」「けんちん定食で。」
ガタン。シュボッ、スパ~・・「お茶です。」コトン。「ども。」コトッ、ズズ~・・(・・ほう、ウラル要塞に
大量の物資が運びこまれたか。さっきの連中も大作戦前の露払いということだな・・)湯呑みの底には細かい文字。
そう、この店はアレクサンドラグループ情報局の「草」の一つであり、ネオナチスの最新動向情報を教えてくれる。
大佐が敵情報をいち早く入手できるのは、この「草」たちのおかげであり、さまざまな形で情報を送ってくれている。
「はい、けんちん定食お待たせ。」パキッ、じゅるるる~っ。「・・ふう、寒い時期には熱いこれにかぎるね。」
午後。大佐は某所に。ギイッ。「あ、クワトロ大佐。」「よっ、エリカ。がんばってるか?」「みんな個性が強いので
連係に不安はありますけど、個々の能力の高さで補ってる状態ですね。」「チームで戦争経験があるのはエリカだけだ。
その経験を教え込んでやってくれ。」「はい。地獄の戦場から拾ってくださった大佐の期待を裏切りはしません。」
「実戦配備となってからじゃ後悔はきかないからな。今のうちにじっくり時間をかけて練り上げてくれな。」「はい。」
「・・その後、信仰は?」「・・罪に穢れし私には、もう主の姿が見えません。だがこのまま地獄に堕ちるも主の御心。
ならば私は戦うことで祈ります。この命あるかぎり悪を屠り、野望を打ち砕く・・背負えるだけ多くの罪を背負って
この世から持ち出す・・それこそ私の使命。」「きっとわかってくれるさ、天の上のお方もな・・」「エイメン・・」
「さて、定例講義の時間だな。今日はなんだっけ?」「『機動防衛戦技』の予定です。」「おっけい、やろうか。」
午後三時、休憩。ガヤガヤ・・「大佐、前からお聞きしたかったのですが。」「なにかな、グリシーヌ。」「なにゆえに
大佐は『魔神将軍』と呼ばれておられるのですか?」「あたしもその名をたびたび耳にした・・恐怖と戦慄と共に。」
「噂ではヨーロッパ軍事関係者および暗黒街でその名を知らぬものはモグリだとまで言われてるそうですが・・」
「カッコいいけど、なんか底知れないものを感じるね、それって・・」「そうだな~・・エリカ。」ぎくっ!「は、はい!」
「お前はよく知ってるだろ。話してやれば。」「・・いいんですか?」「いいんじゃない?」「・・では。」『・・・・』
数年前、NATO本部にその男は現れた。NATO総司令部はその男が示したある書類を見て驚愕した・・そして
その日のうちに軍事顧問として配属されることになった。「その書類には何が?」「わかりません・・ただ、匿名の
証言によれば、『大元帥』と呼ばれる人物からの紹介状だったそうです。」『・・大元帥?』「どっかの国軍にそんな
階級あったっけ?」「昔はともかく、今は存在しないはずですわ・・」「なんかすごく偉そうな人みたいだね。」
その男はたちまち頭角を現し、長年の懸案だった中東の軍事政権をいとも簡単に打倒、独裁者を闇から闇に葬った。
同様に鼻唄混じりで次々とテロ組織や重武装組織、邪宗教団などを潰滅させ、しかも一切の証拠を残さなかった。
NATO司令部はその実力を畏怖し、時のネオアメリカ統合参謀長が非公式につぶやいた「さすがは魔神将軍」という
失言が広まり、いつしかそれがその男の通り名となった・・「すげえ・・大佐がそこまでのスゴ腕だったとは。」
「なに、古代から伝わる孫子の兵法をそのまま使っただけさ。軍事顧問としちゃ基礎の基礎。」「読んだだけでなく、
それを実戦に応用できる大佐の才覚がすごいですね。」「・・どうして今の大佐の地位にあまんじているのですか?」
「それだけ戦功あげたら、もっと上の地位だって狙えるよね。」「世の中そんな甘くないって。ほい、続けて。」
男は幾多の困難な作戦を成功させたが、NATO上層部は逆にそれを恐れた。あまりにも切れすぎ、強すぎたゆえに。
上層部は男に上部ポストを与えず、一前線将校として飼い殺しにする方針とした。だがその空気を敏感に察した男は
静かにNATOを去った・・そして半年後、男の姿はNATO非加盟国のネオスウェーデン軍にあった・・
『・・・・』「さて、休憩も終わりだ。後半の講義といこうか。」ガタッ。「・・」ちらっ、こく。・・シュピッ!
『あっ!』カツーン!ビリビリ・・「どうかしたか?」くるっ。「花火、なんてことを!」「まあまあエリカ。
当たってないから。」「そういう問題じゃないよ!」「コクリコも頭を冷やせって。この程度は日常茶飯事だし。」
「あの・・なぜ矢をよけなかったんですか?」「当てないものよける必要あるの?」『!・・』「そゆこと。」
「・・外して射るのを読んでたんですね。」「だが、わかってても矢がかすめても微動だにしない・・すごいぜ。」
♪プルルル・・ピッ。「グーテンターク。」『おいっす、ふみこたん。起こしちゃったか?』「いや、そろそろ寝ようと
思ってたところだ。」『用件は雑談なんだけど。』「5分で。」『公会議はどうだった?』ぎくっ!「なんで・・あっ!」
『誘導尋問ドンピシャ。やっぱやってたんだな。』「・・なんでわかった。」『いつからの付き合いだと思ってんの。
お前さんと幽音の関係くらい知ってるさ。そして外惑星大領主とうちの妹もな。となると答えは単純な足し算だね。』
「さすが魔神将軍だな。で、どうする?」『どうもしないさ。ただな、今そちらに厄介になってるコンビをよろしく。』
「・・手を出すな、ということか。いいだろう、私は手を出さない。」『おっけい。あ、他のまで責任は問わないから。』
ぴくっ。「・・それは助かる。」『以上で用件終了だ。じゃ、三日後のタイタン到着を楽しみにしてるよ。』「!!」
プツッ・・「・・艦の位置まで正確に把握しているとは。あいかわらず恐ろしいヤツだ、クワトロ、あなたは・・」
夜、アパートにて。ピッ♪「あれだけ牽制しとけばじゅうぶんだろう。あとは世界と愚者しだいだな。さてと一杯。」
コトコト・・「熱燗よし、ニシンの煮付けよしと。」コトコトン。トクトク・・「いただきます。」ぱくっ、バリバリ・・
プルルル♪「おや。・・もしもし。・・おや、プリンセスじゃないか。・・美夕でいい?あっそ。で?・・おっけい。
エルメスとヴィトンね。入金を確認しだい送るから。詳細はいつものようにメールで。・・まかしとき。それじゃ。」
ピッ♪「マリーがネオジャパンへ引っ越してから、こっちに来るねえ・・ま、王女さまの頼みとあらば断れんしな。」
次の日。「みんな、ちょっと。」『はーい。』「えとね、悪いけどこれ買ってきてくんない?」さっ。「またですか。」
「いつもすまんな。俺じゃわからんし。これ代金と手間賃な。お釣りもとっといていいから。」「まあいいですけど。」
「またいま行っちゃっていいんですか?」「非番の貴重な時間をつぶさせるのはすまないからね。ほれ外出許可証。」
「公認でサボれるから悪くないけどね。」「じゃ、行ってきます。」「よろしく。・・これも職権濫用になるのかな。」
みなさんお待ちかね!いよいよタイタンに再度のりこむ世界と老師。
だがデビル軍団の侵食は進み、DG細胞の恐怖が首都アガルタに忍び寄る。
ネオナチス大本営で二人が見た衝撃の光景とは?
次回、機動武闘烈伝ダブルGガンダム第57話
「再上陸!地獄のタイタン」に、レディー、ゴーッ!