もし司令官がウィッチだったら(仮)   作:old.type

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考えを文章にするのって中々つらい・・・
うまくまとめられず、文字数ばかりが増えてしまったので更に分割しました。
今回の元は2-2です、場所は全然違いますが。
相変わらずの駄文ですがよかったら読んでやってください。


第二話-中編

同日早朝、1つの艦隊が海域を進んでいた。艦隊は金剛型2番艦比叡、妙高型2番艦那智、妙高型3番艦足柄、利根型1番艦利根、利根型2番艦筑摩、夕張型1番艦夕張の上記6隻で編成されており、彼女達は1隻の十四米特型運貨船、通称大発を中心に囲むような陣形を組んでいた。この大発には彼女達の司令官が乗っている。

通信機器などがあり、加えていざ戦闘が始まると司令官ができることはほとんどない為、司令官が艦隊についてくる必要はない。しかし、艦娘達だけに危険な目に合わせる事はできないという者や、自分の艦娘が深海棲艦を撃破するところを見たいという者がちょくちょくいる。そういう司令官は艦隊に混ざって出撃するのだ。

そして、この司令官は後者である。彼は金剛型戦艦2番艦の比叡を与えられた事により増長していた。自分は戦艦を与えられるほどに優秀なのだ、そんな自分の艦隊が負けるはずがないと妄信していた。それ故に彼は毎回のように艦隊についていく。それが艦娘にとって邪魔になるなどとは少しも思わずに。

はっきり言えばこの提督は艦娘から嫌われていた。比叡は最初こそ期待に答えるために努力をしていたが、次第に彼の異常なまでの期待に薄気味悪さを覚えるようになった。他の艦娘達も何をやっても評価せず、それどころか勝つことが当たり前だと言い放つ提督に愛想を尽かしていた。そんな人物が付いて来て、士気が上がるはずがない。

そして、艦娘達は同行している司令官を守らなくてはいけない。良識のある司令官は戦闘範囲から離れた位置で待機する為ある程度は何とかなるのだが、一部の良識がない者は戦闘範囲にも乗り込んでいく。そんな事をされれば艦娘達は満足に戦闘を行うこともできない。そして、この提督は言うまでもなく良識がない者である。この提督の存在は、艦娘達にとって完全な枷となっていた。

 

「司令、そろそろ敵水雷戦隊と遭遇してもおかしくない頃合ですが・・・どうしましょう?偵察機、出します?」

 

『いや、必要ないよ。僕らの任務は敵輸送艦の撃破だからね』

 

彼の言葉に比叡は眉をひそめる。彼の言うとおり、彼女達に与えられた任務は敵輸送艦の撃破である。だがそれは、すぐ近くに敵がいる可能性があるのに偵察機を出さないという理由にはならない。比叡は彼の考えている事が理解できなかった。

 

「・・・何か考えがあるんですか?」

 

『考え?おかしな事をいうな。任務にもない敵をいくら倒したって資材と時間の無駄だよ。さっさと目標だけ破壊して帰る、これが一番だ』

 

その言葉に比叡以外の艦娘は溜息を吐いた。

確かに任務は大事だ。戦闘や被害も最低限に抑えられるならそれに越したことはない。だが、

 

「で、ですが司令・・・敵を無視したとしても帰りが大変な事になります。輸送艦を撃破すれば無視した敵もこっちに気づくでしょうし、最悪挟み撃ちにされる事だって・・・せめて機動力の高い部隊だけでも叩きませんか?」

 

敵の輸送艦は、現在護衛部隊と共に深海側の海域を進んでいる。これを落とす為には、こちらから敵の海域に踏み込み、そこに留まって戦闘をする必要がある。そのような状況で敵を、それも機動力のある部隊を無視して進むのは常識では考えられない。比叡の言うとおり挟み撃ちにされる可能性が高いからだ。

 

『さっきも僕は言ったよ、その必要はないって。君は何のために僕が機動力と火力を両立できる艦隊を組んだと思っているんだい?

 ・・・我々はこの機動力を活かして一気に相手の輸送艦を襲撃し、すぐに離脱する。輸送艦の護衛なんてどうせ駆逐艦程度だろうし、落とすのに5分もいらないだろう。たかが5分じゃ相手だって動けないさ。それに、いざとなったら君が全て倒してくれればいい。その為の主砲なんだからさ』

 

「ですが、司令!」

 

比叡の説得も効果はなく、彼は話は終わりだと言わんばかりに通信を切ってしまった。すぐに比叡は通信をかけなおすが、返事は返ってこない。重い溜息を吐きながら、彼女は通信を諦めた。

 

「はぁ・・・」

 

ぼんやりと見上げた空は、彼女を皮肉るかのように晴れ渡っていた。

 

 

その後も彼らの艦隊は敵を無視し続けた。敵艦隊の中にはこちらに気づき、砲撃してくるモノもあったが、それでも彼は交戦を許可しなかった。

幸いしつこく追いかけて来るような敵もいなかったため、艦隊は目立った被害も無く敵輸送艦が通ると予測される位置までたどり着いた。今は岩陰に隠れ、偵察機からの情報を待ちながら司令官の話を聞き流している。

 

(誰も聞いてないのに、よく喋るなぁ)

 

秘書艦を勤めている比叡は司令官の自慢話などとっくに聞き飽きている。こんな話を聞かされ続けるくらいなら敵艦と戦闘をしていたほうがマシかもしれない。

そんな事を考えながら装備の動作を確認していると、偵察機を飛ばしていた利根がぴくりと動く。

 

「偵察機より報告!敵輸送部隊を発見したぞ!」

 

利根の声を聞き、司令官を除いた全員の間に緊張した雰囲気が漂い始める。

 

『よしよし・・・では早速詳しい内容を報告したまえ、利根君?』

 

「・・・敵は前から、護衛と思われる軽巡ト級1、駆逐艦ニ級1、輸送艦ワ級2じゃな。予測より少し遅いが、まっすぐここへ向かってきておる」

 

司令官の態度にイラッとしたのか、利根の視線が冷たいものになるが、司令官は気にも留めない。

諦めたように首を軽く振って内容を説明すると、司令官の顔に浮かんでいた笑みが強くなる。

 

『やはり深海棲艦は間抜けだな。これは今日も楽な仕事になりそうだ』

 

「・・・」

 

そう言いながら司令官ははしゃいでいるが、比叡はこの報告の内容に疑問を感じていた。それは

 

「(護衛が少なすぎる・・・)」

 

そう、輸送船の護衛にしては数が少なすぎるのである。確かにここは深海棲艦が制圧している海域だが、人間達が制圧している海域に非常に近い、言わば最前線である。そんな場所をこんな少数の護衛で通らせるだろうか。

深海棲艦にはそんな事を考える知能も無いと楽観的に捉える事もできるが、もしそうだったとしたら人間達は今頃もっと海を取り返しているだろう。絶対に何かある。比叡には確信に近いものがあった。

 

「司令、もう一度偵察機を出しましょう。こんなの絶対におかしいですよ!」

 

「私も比叡さんに賛成です」

 

比叡が抗議をすると、夕張からの援護が飛んできた。彼女も不審に思っていたらしい。

 

『・・・はぁ、何がおかしいって言うんだい』

 

比叡達の抗議にうんざりしたような顔で司令官は返した。

 

「流石に護衛が少なすぎます!補給は全ての基本なんですよ、補給が無ければ人は戦っていけないんです!その補給の為の部隊を、幾ら自分達が制圧している海域だからってこんな適当に扱うはずがありません!」

 

『奴等は人じゃない』

 

「茶化さないでください!・・・お願いします、後1度でいいんです。後1度だけ偵察機を『黙れッ!!』っ!?」

 

突然司令官が出した怒声に比叡達は怯んでしまった。彼はされに捲くし立てる。

 

『こっちが大人しく聞いていれば文句ばかり言いやがって、誰が一番偉いと思っているんだ!俺は司令官でお前らは艦娘、わかるか!お前らより俺の方が上なんだよ!!お前らは黙って俺に従ってればいいんだ!』

 

「そんな・・・私はただ・・・」

 

『うるせぇって言ってんだよ!・・・チッ、全艦前進。とっとと目標を片付けるぞ』

 

そう言って彼の乗る大発は先に進んでいってしまった。比叡と夕張を除いた艦娘達は慌ててそれについて行き、その場には2人だけが残された。

 

「酷い・・・酷いですよ司令・・・私は・・・」

 

「・・・すいません、いつもつらい役割ばかりをやらせてしまって・・・」

 

「・・・ううん、気にしないで・・・慣れて、るから・・・」

 

比叡は暗い顔を見せまいと無理やり笑顔を作り、司令官達を追いかける。

夕張にはその顔が歪んでいて、今にも泣いてしまいそうに見えて、そんな比叡の顔を見るのは辛く、すぐに後を追いかけることができなかった。

 

 

 

 

「敵輸送部隊を補足、こちらにはまだ気づいていない様です!」

 

一番前を進んでいた筑摩からの報告。前進を再開した艦隊が、敵の輸送部隊を捉えるのにはそう時間はかからなかった。

艦隊は敵部隊から見て側面から現れた為か、敵はまだ艦隊に気づいた様子を見せない。

 

『よし、全艦砲撃用意。さっさと殲滅するぞ』

 

「「「「「「了解、砲撃用意!」」」」」」

 

司令官の指示に従い、艦娘達は砲を敵輸送部隊に向ける。敵は未だに予測されたルートをゆっくりと進んでいる。

この一撃で片が付くだろう。この場にいた者全員がそう考えていた。

 

「敵、速度・進路変わらず。二番艦・三番艦は先頭の軽巡。四番は前の輸送艦、五番は後ろの方の輸送艦を。六番は駆逐艦を狙って!私は全目標を同時に狙います!!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「しっかり狙って・・・撃てぇ!!!」

 

比叡の号令の元、艦娘達が構える全ての砲は火を噴いた。放たれた弾は敵部隊へ向かって綺麗に飛んでいく。そして見事敵艦へ命中・・・しなかった。艦娘達が放った弾が水面へ落ち、巨大な水柱ができる。

 

「へ・・・?」

 

誰かが漏らした間の抜けた声がやけに響く。

敵の未来位置は予測していた、狙うための時間も十分にあった、装備にも問題はない。外れる要素はなかったはずである。彼女達はなぜ砲撃が外れたか理解できなかった。

そして、皆が愕然としている中、比叡は見てしまった。嘲笑うかのように広げた口をこちらに向けた、駆逐艦ニ級と軽巡ト級の姿を。

 

「っ!?まさか!?」

 

この時になって、比叡は理解した。敵は既にこちらに気づいていたのである。

敵がこちらに気づいており、こちらは敵が気づいていないと勘違いしていれば、砲撃を避けるのは簡単だ。その場で止まるだけでいいのだから。結果、艦隊は予想を裏切られ、混乱している。完全に一杯食わされてしまった。

比叡達の混乱が抜けきらない内に、駆逐ニ級が艦隊へ突撃、輸送ワ級は進路を変えて後退を開始する。

 

『何で外したんだヘタクソ!さっさと奴等を沈めろ!絶対に逃がすな!!』

 

司令官の声にハッとなり、ニ級へ向けて一斉に発砲する。しかし動揺していた彼女達の砲撃は全てニ級の後ろへ落ち、新たな水柱を作るだけだった。その結果が更に焦りを産み、照準が甘くなる。そしてまた弾を外してと完全な悪循環が出来上がってしまっていた。

最初はジグザグに動きながら近づいていたニ級だが、照準が甘くなり始めた辺りから速度を上げ、真っ直ぐ艦隊へ突っ込み始める。それでも艦娘達は攻撃を命中させる事ができず、あっという間に目の前までの接近を許してしまった。

 

「しまっ・・・」

 

射程の問題から最前列にいた夕張への至近距離からの発砲。避ける間もなく弾は夕張に直撃し、小規模の爆発を起こす。

 

「きゃああああああああ!!」

 

夕張の悲鳴を背に、次は足柄の方に向けて跳ぶ。足柄は副砲で迎撃を試みるが命中せず、ニ級はそのまま足柄を跳び越え真後ろへ着水。その時の衝撃で大きな波が起こり、足柄を飲み込む。

 

「わぷっ、がぼっごぼごぼ・・・ぺっぺっ 

 ちっくしょう・・・こいつ、いい気になるなぁ!」

 

激昂した足柄が振り向き、距離を取ろうとしているニ級へ向けて発砲しようとするが

 

「足柄、避けろ!魚雷だ!!」

 

「はぇ?」

 

那智の叫ぶ声。それとほぼ同時に起こる爆発音と水柱。突然受けたダメージと衝撃に、足柄は堪らず悲鳴を上げながら倒れた。

 

「足柄!!」

 

「迂闊じゃった、アイツもいたのを失念していた・・・!」

 

魚雷が飛んで来た方を見ると、そこには不気味な笑いを浮かべた軽巡ト級いた。ニ級が突撃し、艦隊の注意を引いている間に移動し、魚雷を撃ったのだろう。

戦艦を含めた6人+αの艦隊は、たった2隻の駆逐艦と軽巡に包囲され、やり込められてしまっていた。

 

『な、何をしているんだ・・・早く、早くこいつらを何とかしろ!たった2隻だぞ!!こっちは6隻なのに、何を手こずって・・・ひぃぃいいいいいいい!!!』

 

ただただ怒鳴り散らすだけの司令官が乗る大発の近くにニ級の放った弾が落ちる。この大発は艦娘と違い普通の船な為、遥かに大きく、外すほうが難しいのにも関わらず外すという事は恐らくワザとだろう。

比叡は、ここに来て本格的に邪魔者と化した司令官に対して心の中で罵声を浴びせながら指示を出す。

 

「各艦、司令を守ります。輪形陣へ移行!夕張と足柄は無事ですか!?被害を知らせてください!!」

 

「私は砲が一部やられただけですけど、足柄さんが・・・」

 

「っつぅ・・・被害甚大、浸水発生・・・砲も半分以上が使用不能・・・」

 

近距離からの砲撃を浴びたとはいえ、駆逐艦の主砲1発のみだったので夕張には大した被害は無かった。しかし魚雷をまともに受けた足柄のダメージは酷く、装甲の役割をしていた服は破れ、艤装も半分近くが焼け焦げ、両足が水中に沈みかけていた。誰が見ても戦闘の続行は不可能である。

 

「くっ・・・足柄は大発へ!夕張には筑摩が付いてください!

・・・ここから、どうすれば・・・」

 

足柄が大発に引き上げられるのを見て、視線を戻す。

ニ級とト級は一定の距離を保ちながら、威嚇するように比叡達を中心にゆっくりと回っている。艦隊が前進すれば同じだけ下がる。砲を向ければ動きを複雑にして照準を絞らせない。片方に火力を集めようとすればもう片方が妨害する。比叡達はたった2隻の艦が作る檻の中に閉じ込められてしまったのだ。

こちらが何か行動を起こすたびに、お返しと言わんばかりに飛んでくる弾は直撃こそしないものの、じわじわと比叡達の体力を削っていく。このままでは嬲り殺しにされてしまうだろう。

 

「(こうなったら多少の被害は覚悟で一転突破を・・・?)」

 

比叡が強行突破を考え始めた辺りで、急にト級とニ級が比叡達の包囲を解いて離れていく。ある程度離れると、再びこちらを向くが攻撃はしてこない。

敵の突拍子のない行動に比叡達は思わず眉を潜める。深海棲艦に慈悲のようなものがあるとは思えない、何かロクでもない事を考えていると思ったほうが自然だろう。

 

「どういう事でしょう・・・」

 

「分からん、分からんが・・・」

 

「ええ・・・総員、気を抜かないように」

 

全員が敵の行動に備え、砲を構えて敵を睨み付ける。

その視線を受け、ト級とニ級は一層醜い笑みを強める。そして

 

海が爆ぜた

 

「「「「「『うあぁぁああああああああああ!?!!?』」」」」」

 

突然の強い衝撃と、海水のシャワーに悲鳴が上がる。先ほど足柄が魚雷を受けた時のとは比べ物にならない程の衝撃に彼女達の理解が追いつかない。

 

「な、なんじゃ!何が起こったのだ!?」

 

「攻撃っ、でもどこから・・・!?」

 

「全員落ち着いてください!落ち着いて状況を・・・」

 

あまりの事に、再び艦隊は混乱に陥る。利根は何が起こったか理解すらできず、司令官はもはや意味を成さない狂ったような叫び声を出し、那智や筑摩は敵を探そうと顔を振り回し、比叡は混乱を収めようと声を張り上げる。

すると今度は夕張が何かに怯える様な声をあげた。

 

「っ!?あ、あぁぁ・・・」

 

「今度は何ですか!」

 

「あ、あそこ・・・アイツは・・・」

 

「あそこ・・・?ッッ!?!!?」

 

震える手で夕張が指差したほうを見て、比叡も言葉を失った。

そこにいたのは、両腕に何本もの砲が生えた盾を持った、青く光る目を持つ死神。戦艦ル級だった。

しかも、そこにいたのはル級だけではない。重巡リ級や、雷巡チ級、その他駆逐艦や軽巡等合計7隻がル級の後ろに控えるように並んでいる。

 

「そんな・・・なんでこんな所に・・・」

 

絶望感を含めた声で比叡が呟く。

事前に与えられた情報には、この海域に戦艦がいるという情報はなかったのである。だからこそ彼女達の司令官は気を抜いていたし、比叡も心のどこかで何とかなると思い込んでいた。

しかし、現実はこの有様である。駆逐艦と軽巡の2隻に時間を稼がれ、増援と思われる敵艦隊にはいないはずのル級。こんなふざけた話があるだろうか。

ル級の主砲が再び比叡達に向けられる。ああ、あれに当たったら痛いじゃ済まないんだろうなぁと、どこか他人事の様にぼんやりと考える。

そして主砲が発射されるよりも早く、限界を迎えた者がいた。

 

『船を動かせぇ!早くしろぉ!!』

 

その叫び声に比叡は正気に戻る。それと同時に大発が動き始めた。

 

「ちょ、提督何を・・・きゃあ!?」

 

大発は夕張が居た方から無理やり抜け、ル級達とは反対のほうに逃げていく。その時に起きた波が夕張を襲い、彼女を怯ませた。

当然、いきなり司令官がこんなことをすれば、艦隊は混乱する。

 

「おい、貴様!・・・チッ 比叡、どうする!」

 

「どうするって・・・ああ、もう!全艦反転、司令を追います!」

 

「そうは言っても、敵はどうするのじゃ!このままだと狙い撃ちにされるぞ!」

 

「司令を放ってはおけませんし、この被害状況で戦っても勝つのは少し厳しいです。砲撃が当たらないように気をつけてくださいとしか言えませんよ!」

 

「無茶苦茶じゃな!全く!!」

 

比叡達はは敵を無視し、慌てて後退を開始した。勿論敵艦がそのまま逃がしてくれるはずもなく、リ級やチ級を前衛にして追撃してくる。

先に逃げ出した司令官とはすぐ合流できたが、敵との距離は全く開かない。それどころか縮まってきている。

比叡達は背中を向け、ジグザグに回避運動を取りながらの撤退。反撃も後ろを攻撃できる一部の砲のみで、しかもほとんど狙えていないので掠りもしない。

それに対して相手はたまに飛んでくる弾に気をつけるだけで、ほとんど回避運動を取る必要もなく、ほぼ真っ直ぐに進んできている。お互いに速力の差があまりない以上、距離が縮まるのは当然の事だった。

 

『ブツブツ・・・ブツブツ・・・』

 

「提督、提督!!しっかりしてください!・・・もう!!」

 

「比叡、やはりこのまま逃げるのは不可能だ。戦うしかないぞ!」

 

「くぅ・・・」

 

筑摩が無線で司令官に呼びかけるが、何かをぶつぶつと呟くだけで返事は返ってこない。

そして敵からの砲弾は段々と落ちる場所が近づいてきている。那智の言葉で、ダメ元で戦うか、このまま逃げ続けるか、この2つの天秤が戦う方へと傾きかけた時、1発の弾が大発の近くへと落ちた。

その直後、無線から司令官の明るい声が響く。

 

『そうだ!!』

 

「っ!どうしました?」

 

筑摩は突然の大声と、場にあわないような明るい声に驚くが、叫ばれるよりはマシなのでなんとか落ち着いて声を返す。

しかし次の彼の言葉には、聞き流していた比叡や那智達も驚いた。

 

『思いついたんだよ!この状況を何とかする方法を!!』

 

「ほ、本当ですか!司令!!」

 

「驚いたな・・・てっきり気が触れて叫ぶだけだと思っていたが、しっかり打開策を考えていたのか」

 

この絶望的な状況を何とかできると聞いて、文句を言う者が居る筈もない。まだ何とかできた訳ではないが、艦隊に少しいい空気が流れ出す。

 

『当たり前だろ、僕はエリートなんだよ?この位の事は当たり前さ。

 さて比叡、この状況を何とかするためには君にとあるモノを砲撃してもらう必要がある。手伝ってもらえるかな?』

 

「は、はい!その為に私が居ますから!!」

 

だがそれも、次の彼の言葉で完全に消し飛んでしまう。

 

『それは良かった、じゃあ砲撃用意。目標、軽巡夕張だ』

 

「・・・は?」

 

彼が一体何を言っているのか、比叡には、いや、この場に居る者全員が理解できない。

こんな状況で、いやこんな状況でなくとも、味方を撃てと命じるなど正気ではない。

 

「司令、こんな時に冗談はやめてください!」

 

『冗談?僕は至って真面目だよ。軽巡夕張を沈まない程度に攻撃、その後連中が夕張に構っている間に全速力で撤退する。理に適っているだろ?』

 

「そんな・・・」

 

「貴様ァ!それが司令官の言う事かぁ!!」

 

那智は彼の言葉に激昂し、大発に砲を向ける。今回ばかりは比叡も、他の艦娘達も止めようとはしない。

 

「司令、その命令ばかりは聞けません。仲間に砲を向けるなんて事・・・!」

 

『ふぅ・・・まぁ、そうだろうねぇ』

 

「なら!」

 

『だからさ、僕がやるよ』

 

瞬間、大発の後方についていた機関銃から大量の弾が吐き出される。弾は全て夕張へと飛んでいき、艤装によって作られた防膜とぶつかって甲高い音を響かせる。

 

「ひっ!?ほ、本当に撃ってくるなんて・・・!?」

 

艤装によって防膜が展開されている艦娘にとって、特別な力が一切働いていない機関銃の弾など幾ら浴びようがどうという事はない。しかし、肉体的には大丈夫であっても、精神的な問題はまた別である。

夕張は、本当に味方が撃ってくるなどとは思っていなかった。確かに今は危機的状況ではあるが、自分たちは仲間だ、仲間を捨て駒の様に扱うなど有り得ない。そう信じていた。

だが、それは裏切られた。弾が飛んでくる事に対する本能的な恐怖と、味方が撃ってきたという事実に対する絶望感に、夕張の動きが止まる。

動きが止まった相手を見逃す者はいない。深海棲艦からの砲撃が夕張へ殺到する。

 

「きゃぁああああああああああああ!!!」

 

直撃こそはしていないが、敵艦10隻からの砲撃を一斉に浴びた衝撃は凄まじく、夕張の体は吹き飛ばされ、何度も海面に叩きつけられる。その際に殆どの砲が壊れ、魚雷は海に沈んでしまった。

痛む体を抑えながら起き上がるが、目に入るのは先程より近づいている敵の姿。特にル級は、その顔に満面の笑みを浮かべており、夕張に更なる恐怖を植えつける。そして、

 

「い、いや・・・嫌ぁあああああああああああああ!!!!!」

 

恐怖に耐えられなくなった夕張は、出鱈目な方へ向かって逃げ出した。

 




まぁ・・・突っ込みどころは色々あると思います。なんかもう色々とごめんなさい。
こんな話でも面白いと思ってくれる人がいたら嬉しいです。

コメントについて
・場所はリンガ?後パンツじゃないから恥ずかしくない?
A、場所はオリジナルです。話の都合上国内にしたかったので無理やり考えました。多分後編とかで設定が役に立つ、かもしれない。でも肝心の鎮守府の名前考えてないんですよね・・・() 後ズボンなので恥ずかしくないです、きっと


コメントや評価を頂けると次を書く気力になります。良ければ評価や指摘、~いうのが欲しいというのを書いていってくれると嬉しいです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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