流星のエンジンを響かせ、雅は加速する。向かう先には駆逐艦2、軽巡1の合計3隻の敵艦。雅は段々と近くなっていく彼女達の姿を睨み付けながら、20mmを持つ手に力を込める。
そして敵艦達の射程に雅が入ると同時に、彼女達から大量の弾幕が放たれる。それが届く前に、雅は降下を開始し、攻撃を回避する。降下している途中に、動きが直線的にならないように脚を振って体を左右に揺する事も忘れない。
弾幕は雅の動きに合わせてぴったりと追尾してくる、実に正確な射撃だ。だが、それ故に流れ弾を気にする必要がない。そのまま回避を兼ねて降下を続けると、あっという間に海面が近づいてくる。ある程度降下したところで、水平飛行に移るために体を左右に振るのをやめて勢いをつける。そしてその勢いによって体が浮き上がろうとするのを利用し、狙い通り海面ギリギリの高度で水平飛行に移る。
海面ギリギリという高度の為、相手の対空機銃では射角が足りなくなり、弾幕は雅の体の上を通り過ぎていく。回避動作を取る必要がなくなった雅は悠々と敵との距離を詰めて行く。
少しして対空機銃が役に立たないとわかったのか、1つ前に出ている軽巡が対空射撃をやめて手に持っている主砲をこちらに向けた。流石にそれを貰う訳にはいかない、海面にストライカーの翼が当たらない様に上昇しながら斜め左へと大きく曲がる。そのすぐ後に主砲から放たれた弾が先ほどまで雅がいた場所を通過した。
その事に冷や汗をかいていると、すぐに主砲を撃ってきた軽巡の斜め後方にいた駆逐艦から対空砲火が飛んでくる。曲がるために少し高度を上げた為、対空機銃の射角にはいってしまったようだ。
「いい連携ね・・・!」
体を上下に揺らしながら、敵艦を中心に大きく左に旋回を続ける。雅は今の連携には正直驚いた。だが対空射撃は相変わらず正確すぎるままで、当たる要素は少ない。そのまま左に旋回を続け、雅から見て左側にいる駆逐艦の斜め後方に来た辺りで旋回を中止、再び高度を下げて突撃を開始する。今度は主砲での迎撃を警戒し、ジグザグに動きながら揺さぶりをかける。
予想通り敵艦から主砲での迎撃が飛んでくるが、揺さぶりに対して過度に反応しすぎている。弾は私の左右に大きく逸れて水柱を上げるだけだった。遅れて残りの2隻が主砲を撃とうとするが、いきなり慌てた様子になり、雅が狙っていた駆逐艦に向かって何か口を開くのが見える。何と言っているかはわからないが、それを聞いた駆逐艦は釣られて慌てだし、雅への迎撃が疎かになる。
雅はその間に一気に接近。慌てている駆逐艦に対して20mmをばら撒きなが上昇し、頭上を通り過ぎて軽巡に向けて飛んでいく。軽巡と奥にいる駆逐艦が慌てて主砲を向けるが、それよりも早く雅のストライカーから1つの爆弾が落とされた。それはまっすぐ軽巡に向かって落ちていき、彼女の体をオレンジ色に染め上げた。
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「あぁぁああ負けたぁ!悔しい!!」
雅との防空演習を終えた夕張は、工廠に戻って黄色に染まった艤装をしまうやいなや、悔しそうな声を上げる。その顔や体も、艤装と同じように黄色に染まっていた。
夕張の声を聞き、同じく艤装を戻していた睦月と如月が申し訳なさそうに謝る。
「ごめんなさい夕張さん・・・睦月が射線をふさいでたから・・・情けないのです」
「如月も、ほとんどお役に立てなかったわね・・・」
「え、ああ、そんな事ないわよ!2人ともちゃんと私に合わせてくれてたし、2人がいなかったら勝負にすらならなかったと思うから」
雅が2度目の突撃を行い、それに対して3人が慌てた時、睦月のいた場所は夕張と如月にとってはかなり邪魔な場所だった。雅が右へ曲がれば如月の、左に曲がれば夕張の射線が塞がる位置だったのである。雅がそうなるように移動していたのだが、睦月はそれに気づくことが出来なかった。
だが、夕張は別にその事を責める気はなかった。自分も雅の動きに気づけなかった事に加え、言葉通り2人がいなければそもそも勝負にすらなっていなかったと思っているからである。
慌てて落ち込んでいる2人を励ますが、あまり納得していないのか、無理に作ったような笑みを浮かべるだけだった。
どうしたものかと頭を掻きながら考える。すると、ふと雅と最初にあった日の事を思い出す・・・少し試してみようか。
そう決めるや、夕張はあの日自分がしてもらったのと同じように、2人の頭に手を乗っけた。
「ふにゃん」「やんっ」
「そんな暗い顔しないの!連携はしっかりとやってくれたんだから、もっと堂々と胸を張ればいいの!攻撃は次やる時に当てられればいいでしょ、わかった?」
そのまま手を動かして2人の頭をわしゃわしゃと撫でる。あまりやった事がないので力が入りすぎていないか少し不安だったが、2人の表情を見るに大丈夫らしい。よかったよかった
「そうね、正直あの連携には驚かされたわ。あと少し詰めが出来ていれば私も危なかったわね」
「!? 大尉、お疲れ様です!!」
工廠の入り口から聞こえた声に、夕張は勢いよく振り向くと同時に敬礼をする。物凄い勢いで振り向いたはずだが、よろめきすらせず、背中に定規を入れたかのような綺麗な姿勢だ。睦月と如月はその勢いに少し驚いている。
夕張が敬礼した先には、雅が口元に手を当てて笑っている雅の姿があった。もう片方の腕には何かが入っている袋を持っている。彼女はそのまま小さく笑いながら夕張達に近づいていった。
「楽にしていいのよ。敬礼も必要な時以外には強要する気もないし、私自身あまり堅いのは好きではないから」
「はい!ありがとうございます!」
そう言っても夕張は直立不動のまま敬礼をやめない。
雅はやれやれと少し呆れたような笑みを浮かべると、袋の中からペットボトルを1つ取り出し、夕張の頬に押し付けた。
「えいっ」
「冷たっ!?な、何するんですか大尉!」
ペットボトルはキンキンに冷えており、その冷たさに思わず夕張は飛び跳ねながら大声を上げる。それを見た雅は再び小さく笑い出した。
「うふふ、他人行儀すぎる夕張へのお仕置きよ」
「お仕置きってなんですか・・・もうっ」
からかわれた夕張はふて腐れたように腕を組む。同時に先程まで張っていた気や力が抜けていくのが自分でもわかった。雅のクスクスと笑うような笑みが、子を見る母のような笑みに変わっているので、恐らく狙ってやったのだろう。
そんな事を考えていると、雅は夕張に押し当てたペットボトルを袋に戻し、袋ごと夕張達へと差し出した。
「はい。喉が渇いてると思ったから、3人に差し入れよ。」
彼女の言葉に睦月と如月から歓声が上がる。3人共朝食前の訓練を行った後だったので喉は渇ききっており、この差し入れはとてもありがたかった。
夕張も本気でふて腐れていた訳ではないので、腕組を解いて笑顔でそれを受け取る。
「ありがとうございます、もう喉がカラカラで」
「喜んでもらえて何よりだわ」
早速2人にペットボトルを渡すと、2人ともすぐに蓋を開けて口をつけた。余程喉が渇いていたのだろう。夕張も蓋を開け、中身を喉に流し込む。冷たい水が火照った体と乾いた喉を潤してくれて、とても心地よかった。
そのまま半分程飲んでから口を離して一息ついていると、雅が口を開いた。
「もうここには慣れた?」
夕張が雅によって助けられてから、既に10日が経過している。雅が出した書類によって、彼女は正式に雅達の鎮守府の所属となっていた。
九頭谷少佐から抗議や文句の1つでも飛んでくるかと雅は思っていたが、意外にも何も言ってこなかった。最も、何か文句を言ってくれば、夕張の証言を元に彼のやってきた事を上へ報告するつもりであった。艦娘達やウィッチの証言と、少佐という階級の提督1人の証言ではどちらが信じられるかなどわかりきっている。その意味をこめ、警告として[お互いの為]という部分を強調していたのだが、どうやらちゃんと読み取ってくれたらしい。平和的に終わって何よりである。
勿論勝手に艦娘を異動させたりすれば上が混乱する為、始末書だのお叱りだのを受ける事になる。それは階級が高いあちら側が主に受ける事になるだろうが、汚点を黙ってあげてるのだからその位は甘んじて受けてほしい。
「はい、皆良くしてくれましたから」
「そう・・・」
夕張の返事に、雅は満足したような笑みを浮かべた。
「それじゃあ、シャワーを浴びていらっしゃい。その後朝ごはんにしましょう」
「大尉は行かないんですか?」
「私は朝食の準備をしなくてはいけないから、3人でいってらっしゃい」
それじゃあ先に失礼するわね、と言って雅は工廠から出て行った。夕張達はそれを見送り、差し入れのペットボトルの中身を飲み干してから、工廠にある簡易シャワー室へ向かった。
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シャワーで汗とペイントを流した夕張達は、朝食の為に食堂へと向かう。
食堂の扉を開けると、中には鳳翔と扶桑がおり、丁度食器や料理を運んでいる所だった。
「手伝いましょうか?」
「ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。もうそんなに運ぶ物も残っていませんから」
夕張は何もせず座るのもどうかと思い、2人を手伝おうとしたが断られてしまった。もう少し粘ろうかと思ったが、無理を言って迷惑をかけては本末転倒なので大人しく席につく。
・・・どうやら今日は洋食らしい。ベーコンと共に焼かれた目玉焼きに、ポテトサラダ、コーンスープとどれもおいしそうだ。
鳴りそうになるお腹を摩りながら待機していると、鳳翔と扶桑が自分の席についた。同時に雅がキッチンの奥からパンの入った籠を持って出てくる。彼女はそれをテーブルの真ん中に置くと、自分も席に座った。
「皆揃ってるわね。じゃあ、いただきましょうか」
「「「「「いただきます!」」」」」
挨拶を済ませると、皆が食事に手をつけ始めた。
睦月がパンに噛り付きながら如月に話しかけ、如月はそれに相槌を打ちながらサラダを口に運ぶ。睦月の口についている食べカスを夕張が横からふき取り、その様子を見て柔らかな笑みを浮かべる鳳翔と雅。そして扶桑がスープで軽いやけどをして笑いを誘う。
このような感じで、朝食の時間は緩やかに過ぎていく。そしてある程度全員が食を進めた辺りで、雅が席を立った。
「そろそろ、今日の予定について説明するわね」
雅が言うと、皆食事を続けながら雅のほうに顔を向けた。雅は毎回食事を続けたままでいいと皆に言っているので、今ではわざわざ言わなくても食事を中断することはなくなっている。
「今日は朝食以降の訓練等は一切キャンセル。鳳翔を除いた全員は鎮守府にて待機にします。」
雅の言葉に、鳳翔以外の全員が驚いたような顔をする。まぁいきなりその日の予定がキャンセルされれば当然の反応ではあるが。
「今日横須賀の鎮守府で協議を行うらしくて、私も参加を要請されているの。食後に少し休憩したら出て行かなくてはいけないわ。
帰りは何時ごろになるかわからないけど、多分大分遅くなるかしら。」
「あ、あの!」
「ん?なにかしら、夕張?」
「それってもしかして、私の事についてですか・・・?」
少し顔を青くした夕張の声を聞いて、ああ、と雅は納得した。恐らくこないだの夕張の件についてで雅が呼ばれたのだと思ったのだろう。
「多分違うと思うわ。
もしあの件についてならもっと早く呼び出されているでしょうし、呼び出される場所も鎮守府じゃなくて赤煉瓦だと思うから」
「そっか・・・よかった」
目に見えてほっとした夕張に対して軽く微笑んだ後、雅は話を続ける。
「本人には伝えてありますが、横須賀には鳳翔にもついて来てもらいます。
そこで、私と鳳翔がいない間の鎮守府は扶桑に任せようと思っているのだけれど、どうかしら、やってくれる?」
「はい、お任せください」
「ありがとう。というわけで、何かあったら扶桑と協力して対処して頂戴。
何か質問はあるかしら?」
特に手はあがらない。
「無いみたいね。なら話は終わりよ、食事の邪魔をしてごめんなさいね」
そう言って雅は席に座り、食事を再開する。その時、彼女が小さく溜息を吐いている事には誰も気づかなかった。
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朝食を終えた私と鳳翔は10分ほど休憩した後、トラックで横須賀へと向かった。
運転は鳳翔がやると言ってくれたが、なんとなく鳳翔が運転している姿が想像できなかったのでやんわりと断った。彼女にしては珍しく少し食い下がってきたが、途中で交代してもらうかもしれないと言って引き下がらせた。
横須賀につくまでは数時間掛かったが、鳳翔が適度に話に付き合ってくれたので、初めて来た時のように退屈になるような事は無かった。彼女の気遣いの上手さは見習いたい物がある。
そんな事を考えているうちに、横須賀鎮守府の目の前までやってきた。門の所にいる兵士がこちらを見て駆け寄ってくる。
「止まれ、名前と積み荷を」
「雨霧雅大尉です、今日の午後から行われる協議に呼び出されて来ました。荷物は私のストライカーユニットと、連れの艤装よ」
「失礼しました!少々お待ちください」
名前と目的を言うと、兵士は敬礼をしてから駆け足で門に戻っていく。それから少し奥にいる兵と話すと、また駆け足で戻ってきた。
「よろしければトラックは我々が工廠まで移動させておきますが、どうでしょうか?差し支えなければメンテナンスもやっておくように言っておきますが」
兵からの提案、それは今の私には大分魅力的な提案だった。休憩を挟んではいたが、それでも数時間運転を続けていた為に大分しんどい。
それに今の横須賀にはそこまで詳しくない。変にトラックを動かせば、普段通り働いている者達の邪魔になるだろう。ストライカーや艤装のメンテをやってくれるというのも嬉しい話である。私達のところでは簡単なメンテをするのにも手間がかかるのだ。となれば
「じゃあ、お願い出来るかしら?」
「はっ!お任せください!!」
鳳翔に声をかけ、トラックを降りる。降りた私達に代わって兵がトラックに乗りこむと、それと同時に門が開き、トラックはその奥へと走っていく。
それを見送ってから、私達も鎮守府の中へ向かった。
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通路で何度か部屋の場所を聞きながら歩き、協議が行われる部屋の前までたどり着く。その部屋の扉を軽くノックすると、すぐに中から「入りたまえ」という声が聞こえる。私は「失礼します」と言ってから扉を開いた。
中はそこまで広く無い。茶菓子とお茶が乗ったテーブルに椅子、ちょっとした飾り物と、会議室というよりは談話室といった感じだ。
「雨霧雅大尉、出頭致しました」
「うむ、ご苦労」
中にいたのは3人の男性と、3人の艦娘。男性は全員席についており、その制服についている階級章は少将が1人・大佐が1人・中佐が1人だ。
恐らく彼らについてきたであろう艦娘達は、壁を背に立っている。加賀・翔鶴・瑞鶴の3人だ。なんともまぁ豪華な事で
心の中で軽く愚痴りながら部屋を見ていると、椅子が彼らの座っているものを含めて3つしかない事に気づいた。すると
「おや少将殿、こんな兵を呼んでどうしたのですかな?後ろにいる給仕はまだ分かりますが」
「大佐殿、彼女は給仕ではなくて一応艦娘ですぞ。その前にいる兵については分かりませぬが」
「いやいや、2人とも、彼女は立派な司令官殿ですぞ。司令官としてはなんの実績もありはしませんがな!」
3人は私達に対して好き勝手な事を言いながら大笑いし始める。
・・・これはやっぱり、そういう事か
私達はそれに対しては何も言わずに艦娘達の方に向かった。
「久しぶりね、加賀。2人は初めましてね」
「そうですね、お元気そうで何よりです」
「「ど、どうも」」
3人に軽く挨拶してから、彼女らと同じように壁を背にして立つ。
未だ彼らはこちらを見て馬鹿笑いをしていたが、やがて興味を失ったのか、視線を戻して3人で話し始めた。その内容は、自分のところの艦娘が優秀だの、過去にこんな敵艦を撃破しただの、演習では負けなしだのという自慢話ばかり。
協議という名目で階級の低い者を呼び出し、自分達の自慢話を聞かせる。そして最終的には難癖をつけて何らかの罰を与える。今高笑いをしている御身少将がよくやる事であった。
御身少将
彼は本来別の鎮守府所属なのだが、今は最前線で戦っている横須賀鎮守府の司令官から横須賀の管理を任されていた。
自分より階級の低い者を見下しており、先程の通り何かと横須賀まで呼び出しては自慢話を聞かせるということで、多くの兵や士官から嫌われている。
私も過去に何度か呼び出されており、今回の事も予想はできたが、だからといって無視することも出来ない。艦隊と共に出撃して言い訳を作ることも考えたが、資材の無駄は出来ないし、何より艤装の修理の目処が立っていない。小破程度ならいいが、中破・大破となると大問題である。そのようなリスクを私の我侭で背負うわけにはいかず、大人しく出向くことにしたのである。
まぁ結果はこの通りである。私はこの無駄な時間を何とか有効利用しようと、頭の中で残してきた書類について考え始めるのであった。
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・・・はっ まずい、意識が少し飛んでいた
記憶に残っている書類を全て頭の中で片付け、やる事がなくなった私は、何を血迷ったのか上官達の話を聞いてみようと思ったところまでは覚えている。だがそこから先の記憶が無い。
寝息は立てていなかっただろうかと不安になって鳳翔のほうを見る。すると彼女は顔を少しだけこちらにずらし、声は出さずに口を動かす。
「だ い じょ う ぶ で す よ」 どうやら問題なかったらしい。その事にほっとしながら未だに自慢話を続けている上司達を見る。
この様子だと、まだ話は続きそうだ。これは今日は鎮守府に帰れないかもしれない。いつの間にか窓から差し込んでいた夕日を眺めながら、そんな事を考えていると
基地が 揺れた
その揺れで、部屋にある置物が倒れ、私も転びそうになるのを壁に手をついて支える。それから少し遅れてけたたましい警報の音が鳴り響いた。
「な、なんだ!?」
上官達が飛び跳ねながら叫ぶ。加賀達も叫びこそしないが、何事かと目を見張っている。
すると、すぐに1人の兵士が扉に体当たりをする様にして開けて入ってきた。
「ほ、報告します!深海棲艦の航空機による攻撃です!」
「何だと!見張りは何をやっていた!!」
「それが、何も無いところからいきなり現れて・・・おかげで対空砲は破壊され、今は小銃で応戦していますがこのままでは持ちません!」
(何も無いところから航空機がいきなり・・・?そんなのあり得る筈が・・・)
「ふざけるな!中将から預けていただいたこの場所をこんな・・・うおっ!?」
再び建物を大きな揺れが襲う。兵の言うとおり、このままでは長くは持たないだろう。彼の言った「何も無いところからいきなり」という部分が気になるが、まずは迎撃をしなければ。
そう結論付け、進言する。
「閣下、今は迎撃を最優先にした方がいいかと。対空砲を持たない兵に航空機を抑えさせるのは厳しいです」
「分かっておるわ!!加賀、今鎮守府には誰が残っておる!?」
「・・・忘れたのですか?今朝全ての艦を演習・資源回収に向かわせた為、基地には私しか残っていませんが」
・・・待って、今彼女は何と言った?誰もいないと言っていなかったか。私の所みたいに最低限の人数しか用意されていないわけでも無いのに誰もいない?一体何を考えているの・・・?
思わず頭に手を当て、自慢話を聞いている間ずっと我慢していた溜息を吐く。すると、加賀達の冷たい目と私の態度が気に入らなかったのか、彼は真っ赤になって怒鳴り散らした。
「だったらお前が行って来い!正規空母なのだからそれくらい出来るだろう!!」
「言われなくてもそのつもりです
翔鶴、瑞鶴、貴方達も手伝いなさい。それと、出来れば鳳翔さんの手もお借りしたいのですが」
そう言って加賀は私の方を見る。瑞鶴が加賀に何かを言おうと口を開きかけたが、状況を考えたのかすぐに閉じた。
勿論この話を断る訳が無い。鳳翔と軽く頷き合い、加賀を見る。
「ええ、勿論許可するわ。それと、私も戦います」
「え?『私も』ってどういう・・・」
「助かります、それでは行きましょうか」
瑞鶴が何かを言おうとしたが、加賀がそれを遮る様に口を開き、部屋から駆け出していった。私達もすぐに後を追いかける。
「あっ!?ちょっと、待ちなさいよ!!」
,,,
途中で起こった何度かの揺れに耐え、何とか外への扉までたどり着く。扉を開けると、そこには数時間前と同じ場所とは思えない光景が広がっていた。
所狭しと立てられていた何らかの建物には爆弾で吹き飛ばされたと思われるような跡があり、整えられていた道には銃痕とひび割れが広がっている。また、少し離れた所からは兵達の怒声と銃声が響いており、戦闘中なのだということを改めて思い知らされる。
「あいつら・・・!絶対に許さない!さっさと追い返してやる!!」
「待って!瑞鶴!!」
敵に対しての怒りを覚えながら走り出す瑞鶴とそれを追いかけようとする翔鶴。しかしその時、1つの影が彼女達の体を覆った。
「危ない!」
鳳翔が叫ぶ。それとほぼ同時に私と加賀が飛び出し、2人を地面に押し倒す。その直後、凄まじい音と共に銃弾の雨が私達に降り注いだ。その銃弾は地面を砕き、その砕けたコンクリートが私達を更に襲う。
実際の時間ではほんの数秒、しかし何十秒もあるかのように感じる時間が過ぎた後、銃弾の雨がやみ、影が私達の上を通り過ぎていく。それを確認してから愕然としている2人を抱え、鳳翔の下へ引きずっていく。空を見れば、私達を襲った深海棲艦の航空機が旋回している最中だった。
「2人とも、大丈夫?」
「は、はい・・・何とか」
「私も・・・って貴方!その傷!?」
瑞鶴が指差した所を見ると、少量ではあるが私の足から血が流れていた。あの時銃弾かコンクリート片で切ったのだろう。
「この位は平気よ。それより問題は、アレをどうするか・・・」
先程の航空機は私達が出てくるのを待っているのか、私達の頭上を旋回し続けている。あれを何とかしなければ私達は工廠へ向かうことが出来ない。だが今私の手元にあるのは護身用の拳銃程度であり、鳳翔達も装備を持っていない為アレを落とすというのは現実的ではない。他の場所から外に出るという手もあるが、1機とはいえ空から見張られている以上は恐らく見つかってしまうだろう。どうしたものか・・・
「くぅ・・・装備さえあればあんなのすぐに撃ち落せるのに・・・!」
「それを取りに行くために動いているのでしょう。馬鹿な事は言わないで」
「分かってるわよ!大体あんたはいっつも!!」
「瑞鶴、落ち着いて・・・」
ん・・・?ちょっと待って。今瑞鶴は何と言った?『装備さえあればあんなのすぐに撃ち落せる』・・・!?
すっかり失念していた。今ここにいるのは、日本海軍が誇る空母艦娘の加賀、瑞鶴、翔鶴、鳳翔の4人である。この中の1人だけでも相当な戦力になるだろう。それこそ、基地を襲っている航空戦力を排除しかねない程のだ。
私は敵の数がどれ程なのかは知らない。だが決して多いものでは無いと考えていた。理由は兵士の報告、そして警報の遅さの2つだ。
兵士は、何もない所から敵が現れたと言っていた。だがこの辺りには大規模な戦力を隠せるような場所はそう多くない。その戦力を隠せるであろう場所も、鎮守府に近いとも遠いともいえない微妙な距離であり、そこから飛ばしているとなると、見張りが気づかないという事も考えずらい。
また、攻撃を受けてから警報が鳴ったということは、本当にギリギリまで気づかなかったという事になる。海上の部隊を襲うならまだしも、キチンとした設備がある基地が一定以上の数の敵を見落とすというのも考えられない。人であろうと、動物であろうと、機械であろうとも、数が集まると非常に目立つのだ。
距離と数、この2つの条件を満たそうとすると、より近い場所から、気づかれない為に少数の数の航空機による奇襲になる。どの辺りまで接近されたのかということや、どうやって気づかれないように航空機を出撃させたのか等と穴はある考えだろうが、少なくとも数がそこまで多くないとは断言できる。
つまり、私が何をいいたいのかというと、全員が工廠までたどり着く必要はないのではないかと言う事だ。
先程も言ったとおり、鳳翔達4人は非常に強力な戦力である。対して、私の考えが正しいなら敵の数は少ない。わざわざ私を入れた5人が出撃しなくても、2人、いやもしかすると1人いれば防衛はできるかもしれない。
そうなると、工廠へ向かう者を決め、残った者が囮となって見張りを引き付けるという手が浮かんでくる。だが、装備が無い状態ではただの人である鳳翔達にこの囮役は危険が過ぎる。そうなると囮にふさわしいのは・・・
「・・・決めたわ」
「何か考えが?」
私の声に加賀が反応し、4人の視線が集まる。私は全員に頷いてから、拳銃を抜いた。
「私がアレの注意を引き付けます。その間に4人は工廠へ向かって頂戴」
「はぁ!?アンタ何言ってんの!?」
「そんな事、危険すぎます!」
私の言葉を聞いた瑞鶴と翔鶴が目を見開いて反対してくる。加賀と鳳翔も声をあげはしないが、顎に手を当てて悩むようにしている。
「危険なのは分かっているわ。でも、こうしている間にも敵の攻撃は続くのよ。それを止められるのは貴方達だけ、私には貴方達を工廠までたどり着かせる義務があるわ。」
「だからって艦娘でもないアンタが、拳銃一丁でどうするって言うのよ!まさか死ぬ気じゃないでしょうね!?」
「まさか、そんなつもりは無いわ」
そう言って、私は使い魔を憑依させる。頭から生えた羽と、臀部から伸びた尻尾を見た瑞鶴達は再び目を見開いて驚いた。
「アンタ、ウィッチだったの!?」
「でも、ウィッチは海軍にはいないはずでは・・・」
「数が少ないだけで、別にいないわけではないわ」
そういいながら拳銃の弾を確認する。・・・よし、問題なし。
「私なら少なくとも今の貴方達よりは戦えるわ、シールドもある」
「でも!」「ですが!」
「・・・では、任せていいでしょうか」
「「加賀さん!?」」
2人が信じられないといった表情で加賀に食って掛かる。加賀はそれを手で制した。
「大尉の言っている事は正しいわ。この問答をしている間にも人が死んで、基地は破壊されていくのよ。何より、この航空機が市街地に狙いを変える可能性もあるわ」
「「!?」」
流石といったところか、加賀は私の言いたい事を綺麗に伝えてくれた。
「加賀が説明してくれた通りよ。時間が無いわ、納得してくれるわね?」
「「・・・」」
2人は答えない。理解は出来るが、納得は出来ないといった所だろうか。だがそれでいい。拳銃を握る手に力を込め、飛び出す機会をうかがっていると
「大尉」
「? 何かしら?」
「少し、じっとしていてください」
今まで聞きに徹していた鳳翔が口を開いた。彼女は自分の髪を縛っているリボンを解くと私の前でしゃがみこみ、足の傷を塞ぐようにそっと縛る。リボンは血を吸い、すぐに赤く変色した。
「怪我が酷くなるといけませんから」
「ん、ありがとう」
元々深い傷では無かったが、気持ち更に楽になった。昼も同じ事を考えたが、彼女のこういう気遣いの上手さは本当に見習いたいと思う。その為にはまず、この場を凌がなければね。
「それじゃあ行くわ。皆、気をつけてね」
「はい、大尉もお気をつけて」
そう言って敬礼する鳳翔の声を背に、私は建物から飛び出した。
敵の航空機はすぐにこちらの動きに気づき、大きく旋回して私を後ろから追いかけるようにして飛んでくる。当然、魔法力で強化されているとはいえ生身の人間と航空機とでは速さが違う為、あっという間に距離は詰まり、降下してきた航空機から私に向けて大量の弾が吐き出された。それに対して私は大きく横に跳び、射線から外れる事によって回避。すぐに起き上がりながら通り過ぎていく航空機に向けて拳銃の引き金を引くが、全く当たらない。航空機はそのまま旋回をする為に距離を取ったので、私は一度狙うのを諦めて再び走りだす。
そして少し走る間に航空機は旋回を終え、正面から再び弾をばら撒いてきた。今度はそれを回避しようとはせず、斜めにシールドを展開しながら拳銃の狙いを定めて迎え撃とうとする。ストライカーの補助がなく、いつもよりシールドが小さくて不安だったが、なんとか弾幕を受けきった。お返しに私も拳銃の引き金を引く。しっかりと狙いを定めていた弾の内、数発が航空機の胴体に命中した。だが威力が足りないのか、航空機は平然と私の頭上を通り過ぎる。
「せめてもう少し威力のある銃なら・・・」
愚痴をこぼしながらもマガジンを新しいものに交換し、再度走り出す。ただまっすぐ走るだけではジリ貧なので、時間稼ぎの意味も含めて建物と建物の間の道へと曲がった。速度がある航空機はすぐに私を追いかけることが出来ず、一度上昇していく。その間に出来た時間を利用して次の曲がる為の道を目指し、そして航空機が下りてきたタイミングでまた私が道を曲がる、というのをひたすらに繰り返し始めた。
そして道を曲がった回数が10を超える。距離はそこまで進んでいないが、多少の時間は経った。敵の注意を引くという目的と、時間稼ぎという目的は果たせただろう。
道を曲がる際に、チラリと航空機を見る。その速度は先程より速くなっているように感じた。それと同時に、動きが少し雑になっているようにも感じる。これはそろそろいい頃合かも知れない。
私は変わらずに、次の曲がる道を目指す。だが、あと少しで着くという所で航空機が先程よりも早く、しかし強引に旋回を終えて突っ込んできた。ギリギリまで加速する為か、地面スレスレまで降下してきている。
・・・今!!
私は足でブレーキをかけながら反転、シールドを展開しながら航空機に向かって突っ込む。反転した私と、限界まで加速した航空機との距離は一瞬で0まで詰まり、航空機がシールドに激突した。
「ぐぅ・・・!はぁぁああああああ!!」
航空機の勢いに体が押されるが、シールドと身体強化に使う魔法力を増やして無理やり対抗する。そして、力比べの末に先に限界が来たのは航空機のほうだった。
グシャリとひしゃげる様な音と共に機体が潰れ、辺りに黒い液体が飛び散る。やがて勢いを失った残骸が地面に落ちるのと同時に、私もその場にへたれこんだ。一度に大量の魔力を使ったせいで頭痛がする。
「まだまだ装備に頼りすぎって事かしらね・・・」
ストライカーを装備している状態ならあの位のシールドは簡単に展開できた、しかし装備が無ければこのザマである。一度初心に帰って魔法力制御の特訓をするべきかもしれない。頭の中のメモ帳に、特訓についてメモをする。
余談だが、ストライカーを装備していない状態でのシールドで航空機を受け止めたという前例はこれまでほとんど無い。当たり前の様に受け止めた雅がおかしいのだが、彼女にそんな自覚はなかった。
閑話休題
呼吸を整え、頭痛に耐えていると、少し離れた所から兵達の怒声と銃声が聞こえてきた。その声と音で、未だにここが戦場なのだと再確認する。
「行かなきゃ・・・いたた」
頭痛を無理やり抑え、声がする方へと向かう。まだ戦いは終わっていないのだから。
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海に面している開けた場所にて
空から弾丸の雨が降り注ぐ。今のでまた数人の仲間が死んでいった。必死に上空を制圧している10機の航空機共へ反撃を行うが、弾はほとんど当たらず、偶然当たっても威力が足りないのか、それとも当てる場所が悪いのか落とすことが出来なかった。
「くっそぉぉおおおおお!当たらない!上のお気に入りの艦娘様は何をやってるんだ!?」
「弾が切れた!誰か、弾くれ!!」
「また撃ってくるぞ!逃げろ!!」
既に半数以上の仲間達が負傷しており、士気も下がってきている。このままでは壊滅してしまうだろう。兵の1人が叫んでいたが、艦娘は一体何をやっているのか。
湧き上がってくる不安を抑えながら、航空機からの機銃掃射を避けようとする。が
「あぁぁああああああ!?足が!足がぁぁぁああああ!!」
「っ!?」
悲痛な悲鳴が上がる。そちらのほうを見ると、一人の兵が倒れている。その右足は、膝から下が無くなり、ひび割れたコンクリートの上を赤く染めていた。
「こいつはやばい!おい、手伝ってくれ!!」
仲間に指示を出し、倒れた兵士を背中から抱えて建物の影に引きずろうとする。だがそれよりも早く、別の航空機が俺達の方へ向けて降下してきた。近くにいる仲間が航空機に向けて発砲するが、航空機は止まらない。
「ちぃっ・・・!」
なんとか避けようと、仲間を引きずる力を強くするが、それでも到底間に合わない。
そんな俺らを嘲笑うように、航空機からの機銃掃射が行われようとして
航空機のコクピットのような光る部分が弾けとんだ。
途端、航空機はバランスを崩し、横の地面に突っ込み爆散する。
「な、何が起きたんだ・・・?」
突然の事に状況が飲み込めずにいると、後ろから声が響く。兵達のものではなく、もっと若い女性のものだ。
「今の内よ!早く!!」
その言葉にはっと我に返り、再び仲間を物陰へと引っ張る。他の航空機もこっちを狙ってきたが、物陰からの援護射撃のおかげで撃たれることはなかった。
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なんとか間に合った・・・いえ、むしろ間に合わなかったのかしら。
兵の1人が引きずっている男を見る。彼は右足の膝から下を失っており、気を失っていた。もう少し早く来ていればこの様なことにはならなかったかもしれないのに。
「ごめんなさいね・・・」
右足を失った彼と、彼を救えた可能性の事を考えると、自然と謝罪の言葉が口から漏れる。
これ以上彼のような犠牲者を出すわけにはいかない。改めてそう決心すると、道中で事切れていた兵達から借りた2丁の小銃のマガジンを交換する。そして彼らがなんとかこちらまで逃げ切ったのを確認し、私は建物の影から飛び出した。それと同時に別の兵を狙っている航空機へ向けて引き金を引く。拳銃と比べて威力も連射力もある銃から放たれた、魔法力による強化を受けた弾は航空機の装甲を何度も貫く。航空機の胴体は一瞬でバラバラになり、小さな爆発を起こした。それを最後まで確認せず、可能な限り大きな声で指示を出す。
「全員!建物の影へ避難を!航空機の注意は私が引き付けます!!」
「りょ、了解!」
突然の事に兵達は驚いていたが、私の姿を見るとすぐに指示に従い、物陰へと避難を始めた。その間に私は、極力目立つように大型の、しかし密度が低く防御力をほとんど持たないシールドを展開して航空機の注意を引こうとする。
すると狙いがうまく行ったのか、全ての航空機が私に向かって突っ込んできた。それを見てからシールドのサイズを戻し、魔法力の密度を上げて攻撃を受けるための構えを取る。そして航空機からの機銃掃射が始まった。
1機目、2機目、3機目と、最初のほうは難なく耐えられたが、8機目の辺りで体が少しずつ押され始める。魔法力の効率が落ちている今、航空機の連携による長時間持続する攻撃は、水上艦からの砲撃よりも遥かに辛い。
やっとの思いで10機目からの攻撃が終わったかと思えば、他の機体の攻撃の間に旋回を終えた1機目から順にまた攻撃が行われた。絶え間の無い攻撃に魔法力は確実に削られ、反撃する事も許されない。兵達や建物に攻撃が行かないのはいい事だが、流石に攻撃が3往復目になると防ぐのも辛くなってきた。額に脂汗が浮かんでくるのが分かる。
「くっ・・・やると言ったのは私だけど、こうも攻撃が続くとシールドが・・・」
隙を見て攻撃を加えようにも、その隙が中々見つからない。ならば一度離脱するべきかとも考えたが、ここで引くとまた兵達が狙われてしまう。どうする?どうすれば・・・?
中々に無い状況で焦っていたのか、それともこの思考している時間が良くなかったのか。意識の幾らかを割いていた私は、敵の航空機の中の1機が超低空を飛んでいることに気づくのに遅れてしまう。
「しまった!?」
気づいたときにはもう遅い。超低空を飛んでいる航空機の胴体下につけられているフロートの様な部分が、私のシールドに接触する。ここに来る前の航空機との衝突は何とか押し勝てたが、あの時はまだ魔法力はほとんど消費していなかった。しかし今は激しい攻撃によって魔法力を大分消耗している。何とか耐えようにも、激しい頭痛と倦怠感が邪魔をして力が入らない。
そして、私のシールドに亀裂が入ったと思った瞬間、私の体は後方へと大きく弾き飛ばされた。
「きゃぁああああああああああ!?」
そのままの勢いで地面を2回跳ね、最後に何度も転がってからようやく体は止まった。
「あぐっ・・・くぁ・・・」
体中に激しい痛みを感じる。それに加えて酷い頭痛が意識を遠のかせ、体から生えた羽と尻尾が消える。激痛に加えて、魔法による身体強化が切れた私はもう手を動かすことすら出来ない。そんな私に止めを刺そうと、航空機が降下してくるのが霞んでいる視界に映る。
「大尉!!」
兵達からの悲痛な叫びが聞こえる。その声を聞いて、私はうっすらと笑った。何人かの兵が物陰から飛び出してくるのが見える。
(そんな必要はないのに)
敵の航空機が降下してくる音と、兵達の叫び声と、[もうひとつの新しい音]を聞きながら私は目を閉じる。
「少し、遅いわよ・・・全くもう」
何かが・・・いや、敵の航空機が爆発する音を聞きながら、私の意識は途切れた。
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「・・・間に合いましたか、よかった・・・」
自分の航空機とリンクした視界から、敵機が撃墜されていく様子と倒れた大尉や彼女に駆け寄っていく兵士達の姿を見て、鳳翔は安堵の息を吐いた。
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-少し時間は戻って-
大尉が敵の航空機を引き付けてくれた後、私達は必死に工廠へと走りました。崩れた建物や瓦礫を避けていた為に少し時間は掛かりましたが、幸い他の敵機と遭遇する事はなく無事にたどり着くことが出来ました。しかし、そこで問題が起きました。工廠が既に破壊されてしまっていたのです。
それは完全に機能を失うと言う程の酷い破壊のされ方ではありませんでした。しかし、運の悪いことに加賀さん達の艤装が瓦礫の下敷きになってしまっていたのです。何とか掘り起こそうとも考えましたが、私達の力だけではどうにもすることが出来ませんでした。どうしたものかと皆が途方に暮れていると、私はお昼の事を思い出しました。
-よろしければトラックは我々が工廠まで移動させておきますが、どうでしょうか?差し支えなければメンテナンスもやっておくように言っておきますが-
-じゃあお願い出来るかしら?-
-はっ!お任せください!!-
「もしかしたら・・・!」
お昼に大尉がメンテナンスを頼んだ時から既に大分時間が経っています、恐らくメンテナンスはもう終わっているでしょう。そうなると、艤装はトラックの中に戻されているかもしれない。その事をすぐに3人に話し、手分けして私と大尉が乗ってきたトラックを探し始めました。
そして、それはすぐに見つかりました。トラックは、他の車が破壊されたり、ひっくり返ってしまっている中、1つだけ離れた場所に置いてあり無傷だったのです。そして中を覗いてみると、そこには新品の様に綺麗になった私の艤装と大尉のストライカーがありました。
私は3人に手伝って貰いながら艤装を装備し、問題なく使えるかどうかを軽く試します。結果は問題なし、整備士がしっかりとやってくれたのでしょう。これならいけますね。
「風向き・・・よし。航空部隊、発艦!」
そう確信した私は、すぐに全航空部隊を発艦させました。
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そして、今に至る
彼女の航空部隊は数こそ少ない物の、錬度は十二分に高い。加えて敵の航空機の数はその鳳翔の航空機の数よりも少なく、更に対地攻撃に集中していたせいで完全に不意をつかれた形になる。
数、錬度、条件、全ての要素で負けている敵の航空機が鳳翔の航空部隊に勝てるはずなど無かった。あっという間に8割の航空機を失った敵は撤退を開始、地上にいる兵士達から歓声が上がる。
当然、むざむざ逃がす訳にもいかない。鳳翔はすぐに航空部隊に追撃の指示を出した。
...
敵の航空機はひたすら真っ直ぐに逃げ続ける。その先には母艦が隠れられそうな岩や島等も無い。この事に鳳翔は眉を顰めた。
(妙ですね・・・母艦の所まで逃げるものと思っていましたが、それらしい影は何も・・・)
敵の航空機の性能を考えれば、既に燃料は少ないはず。そのような状態で、しかも敵に追われているとなればすぐに母艦へと戻るだろうと考え、鳳翔は敵を全て落とさずに泳がせていた。しかしこうも何も見えないとなると、この航空機は囮で、別の戦力が本命でいるのかもしれないという考えが出てくる。だがすぐにそれは無いと首を横に振った。
別働隊の事は真っ先に考えたのである。その為、航空機を何機か索敵に回してあるのだが、未だ敵影は見えない。
こうなるとますます分からなくなってくる。母艦の位置を悟られないようにする為に適当な場所に墜落でもさせるつもりだろうか?そう考えていると、航空機が緩やかに降下していき、やがて着水した。その周りには、相変わらず何も見えない。
やはり切り捨てたのだろうか。イマイチ納得は出来ないが、他の敵もいない以上はこの敵を排除して今回の任務は完了である。鳳翔が航空部隊に指示を出そうとしたその時
「えっ・・・!?」
突如、海の中から白い手が伸びた。それと同時に深海棲艦独特の見た目をした装備の様なものと、どす黒い色をした髪の様なものが浮かび上がる。
その手は着水していた航空機を掴むと、髪のような物の上にある、口のような形をした装備の中へと放り込んでしまった。そして全ての航空機を装備の中へと放り込むと、ゆっくりと装備や手が海の中へと沈んでいく。
「はっ・・・!いけない!!」
突然の事で面食らっていた鳳翔は慌てて航空部隊に攻撃を指示するが、攻撃が届く頃には相手は完全に海の中へと沈んでしまい、その場には鳳翔の航空機のみが残される。
「・・・」
その後、しばらく辺りを警戒・索敵させたが、同じような物や敵は発見できなかった。
攻撃目標を失った鳳翔は、航空機に帰還命令を出す。結果的に敵の撃退には成功したが、その心中は明るいものとは言えなかった。
今回は一応1-5を意識して書いています。鎮守府前を潜水艦がうようよしてたらこうなるよねっていうヤボな突っ込みをかねて()
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