もし司令官がウィッチだったら(仮)   作:old.type

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ストパンではミーナさんとおケイさん、シャーロット(陸戦ウィッチの方)やマイルズさん辺りがお気に入りです

今回は前半陸軍登場、中盤以降試験的茶番です。
正直自分で書いててあまり向いてないかもしれないと思ったので、この辺りについての感想や意見等も貰えると嬉しいです。


第四話

日本の陸地からそう離れていない海域の上空にて、3人のウィッチが空を飛んでいた。

彼女達は皆、巫女服のような陸軍ウィッチの制服を着ており、脚には陸軍の主力であるストライカーユニット、キ-43「隼」を装備している。

3人ともかなり若く、軍に入っていなければまだ高校生になっているかも怪しい見た目である。その中で、ショートカットにした黒髪に犬耳を生やした少女-名を犬川藍という-が退屈そうにぼやく。

 

「ねー桜、敵見つかったー?」

 

「ううん、全く・・・」

 

桜と呼ばれた、3人の中で一番背が高く、腰まで伸ばした茶色い髪にウサギの耳を生やし、顔にはメガネをかけている少女-桜美也子-がそれに答える。すると、そこに蚊の鳴くようなとても小さな声が話に加わる。

 

「でも、その・・・敵がいなかったら、誰も怪我しなくていいから・・・その、私は・・・」

 

彼女の名前は小倉楓。3人の中で最も背が低く、肩に掛かる程度の長さの黒髪に猫の耳を生やしている。

そんな彼女の声に、犬川が食って掛かった。

 

「そんな弱気でどーすんのよ!今日は私達の初陣なのよ!!見敵必殺ー!とか、深海棲艦は暗黒に帰れー!とか盛り上がるのが普通でしょうが!!」

 

「え、えっとその私はあまりその・・・!」

 

犬川の勢いに、元々弱気な小倉が怯えてぷるぷると震え始める。このままでは泣き出してしまうと、慌てて桜は犬川を宥めた。

 

「犬川さん少し落ち着いて、小倉さん怖がってるよ・・・」

 

「ぶー!私悪くないしー!」

 

そう言って犬川はふて腐れたように頬を膨らませると、両手を頭の後ろにやってからくるくるとロールを始めた。

桜には犬川の気持ちが分からないわけでもなかった。毎日の様に歴史に名を残す大エースになるのが夢だと語る犬川にとって、今回の初陣は特別なのだろう。いつも以上に気合が入るのも無理はないし、桜自身も大分緊張しているという自覚がある。

 

そんな彼女達の初めての任務は、鎮守府近海上空の哨戒任務であった。

つい先日、横須賀にある鎮守府が深海棲艦の航空機による襲撃を受けた。その際の被害は大きく、未だ襲撃を受けた鎮守府は混乱していると聞く。しかも航空機を退けた者は母艦の撃破に失敗しており、その後も3日連続で本土に攻撃を受けている。このまま黙っていることは出来ないと、陸軍は本土防衛という名目で哨戒任務へと乗り出したのである。

 

「ねー桜、ほんとに敵いないのー?」

 

飽きたのか、それとも目が回ったのか、ロールをやめた犬川は先程と同じように桜に聞く。声はまだふて腐れたままだった。

 

「もう、さっきいなかったんだからそんなにすぐには変わらな・・・え?」

 

「なになに!?なんかいたの!?」

 

桜のウサギの耳がピクリと動く。ウサギの使い魔の特徴である、普通よりも良く聞こえる耳が、先程とは違う音を捉えたのである。

その様子を見た犬川が、期待を込めた目で桜を見る。

 

「・・・多分、あっち。鳥じゃない何かの音がたくさん・・・!」

 

「ビンゴォ!」

 

「ま、待ってぇ!」

 

それを聞いた犬川が、桜の指差したほうに向けて我先にと飛んでいき、桜もすぐにその背中を追う。おどおどしていた小倉は少し遅れてから2人を必死に追いかけた。

 

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そしてすぐに異常は見つかった。事前に与えられた資料に載っていた深海棲艦の航空機が10機、彼女達目掛けて飛んできている。

写真では既に何度も見た敵の航空機だが、自身の目で見るのはこれが初めて。その姿に犬川は興奮を、桜は緊張を、小倉は恐怖を感じずには要られなかった。

 

「これが・・・敵・・・」

 

そう呟く桜の声は微かに震えており、額には汗を浮かべている。だが、直後にそんな彼女の声とは正反対な嬉しそうな声が響いた。

 

「初めての出撃で10機も・・・!いいじゃん!本に載ってるウィッチみたい!!」

 

そんな言葉を出した犬川を2人は信じられないという様な目で見る。彼女が前向きというか、多少幸せな考え方をするのはいつもの事だが、こんな時でもそれは発揮されるのかと内心驚愕していた。

だがそんな2人の視線も意に介さず、明らかに浮かれた様子で犬川は装備であるホ103-12.7mm機関銃2丁を構える。

 

「小倉!突っ込むわよ!私に着いてきなさい!!桜はいつも通り援護よろしく!」

 

そう2人に言うと、犬川は返事も聞かずに敵の航空機へ向かって突っ込んでいってしまった。あまりに一方的なので止めることも出来ず、小倉は縋る様な目で桜を見る。

 

「ど、どうしましょう・・・」

 

「どうするって・・・放っても置けないよ!私が援護するから、小倉さんは犬川さんを手伝ってあげて!」

 

「は、はいぃ!!」

 

桜からの指示を受けた小倉は、情けない声をあげながら犬川を追いかけ始める。それを見送りながら、桜も2人を援護するために背負っていたカスタム型のホ-5,20mm機関砲を構え、上昇を開始する。そしてある程度高度を取ると、20mmについているスコープを覗き込む。

この20mmは本来のモノに比べ、射程・貫通力が大きく向上している。代償に装弾数はたったの6発しかなく、連射性能も大きく低下しているという最早別物といってもいい武器である。そんな性能に加え、狙撃用のスコープをつけている事から仲間達にはホ-5,20mm狙撃銃と呼ばれていた。

 

「・・・っ」

 

桜が狙うのは先頭を飛んでいる敵航空機。一番槍を潰して出鼻を挫く作戦だ。

 

「(2人の射程まではもう少しある・・・落ち着いて、確実に・・・)」

 

桜は教官から教わったことを頭の中で思い返し、慎重に狙いを定める。犬川と敵航空機の距離は後2kmと言った所、引き金を引くにはまだ早い。自分が先頭の敵を打ち落とした直後に2人が攻撃を開始するのが理想である。その為には、2人と敵の距離が1km近くになるまで粘る必要があった。

 

「(2km・・・1.6km・・・1.2km、今!)」

 

弾速を踏まえて考えた、理想の距離になった瞬間に引き金にかけた指を引く。だがそれよりも早く、前方から2つの銃声が響いた。

 

「!?」

 

その2つの銃声に反応し、敵が大きく動いた。そのせいで桜の放った銃弾は誰にも当たること無く空へと消える。直後、敵航空機と犬川達は正面からぶつかり合い、敵味方が混ざり合った乱戦が始まった。

驚きのあまりスコープから目を離し、そしてそこまで来て彼女はようやく2つの銃声の正体を理解した。あの銃声は、犬川のものであると。

元より犬川は落ち着きがなかった。それは射撃にも表れており、教官からは敵をキチンと引き付けてから引き金を引くようにと何度も注意されていたが、一向に治る気配はなかった。訓練で出来ない事が本番でできるはずもない。桜は緊張していた為にその事を考慮できていなかった。自分が出来るのだから、他の者も出来て当然だと思い込んでしまったのである。

 

「くぅっ!!」

 

自分の迂闊さを呪いながら、どうにか2人を援護しようと再びスコープを覗く。

 

「駄目・・・撃てない・・・」

 

だがこの乱戦だと誤射の可能性が出てきてしまい、先程の失敗で自信を失った彼女は引き金を引くことが出来なかった。

 

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「それそれそれ!」

 

「当たってぇ!」

 

敵との乱戦になった犬川と小倉は、とにかく体を動かして旋回を続けていた。

相手は10、こちらは2、数では不利だが格闘戦へと持ち込んでしまえば相手は衝突と誤射を恐れて動きが鈍るだろうと犬川は考え、乱戦から逃れようとはせずにひたすら弾をばら撒く。

一方で小倉は、数で不利な以上格闘戦を続けるのはまずいのではないかと考えていた。同じ敵を狙って旋回を続けていれば、別の敵に後ろを取られる。そうでなくとも消耗戦になってしまえば数が少ないこちらが不利なのではないかと。だから彼女は離脱する道を作るために弾をばら撒く。

2人が考えていることは全くの真逆であり、口に出す言葉は敵を追い立てる声や弾の命中を祈る声ばかり。連携など取れるはずが無く、動きも自分勝手な滅茶苦茶なものである。だが、それが返って良かったのかもしれない。

彼女達の装備しているki-43は、海軍のストライカー程では無いものの、中々機動力に優れている。敵の航空機は格闘戦に付き合ってしまったが為に、誤射や衝突等を常に気をつけなくてはならず、動きが鈍くなっている。そんな状態で、素人が使っているとはいえki-43の機動力から繰り出される、お互いの事を全く考えていないが為の遠慮の無い弾幕を捌ききれるはずがない。

やがて犬川の放った弾が敵航空機の内の1機に命中。被弾した敵機は黒煙を噴き始め、堪らず乱戦から離脱していく。

 

「チャンス!」

 

「えっ!?ちょっ、待ってぇ!!」

 

犬川はこれを好機と見ると、敵機が1つ抜けた事によって出来た穴を潜って乱戦から抜け出し、逃げた敵を追いかける。小倉の静止する声は銃声等にかき消されて聞こえていなかった。

敵機は必死に犬川を振り切ろうとしていたが、先程の被弾のせいで速度が上がりきらない。犬川と敵機の距離がジリジリと詰まっていく。

 

「よし、貰った!」

 

犬川は撃墜を確信して12.7mmの引き金を引くが、敵機もタダでは落とされない。機体を上下左右ランダムに振って弾を避ける。

 

「ああもう!ちょこまかちょこまかと・・・さっさと落ちなさいよ!!」

 

中々攻撃が当たらないことに犬川はイラつくが、敵は只でさえ速度が落ちている状態でジンキングを行っている。少し時間は掛かったが、やがて必中の距離になった。12.7mmの弾が次々と敵機に突き刺さり、炎上。終には爆散する。

 

「やった!敵機撃墜!!ねぇ2人とも見てた!?」

 

初めての戦果に喜びながら2人がいる方へと振り返る。しかし

 

「え・・・?なんで?」

 

振り返った犬川の口から出た言葉は、敵と味方両者へ向けられた疑問の声だった。

なぜ付いてきていると思っていた小倉が先程と変わらない場所で、先程より少なくなった敵からの集中攻撃を受けているのか。なぜ敵の一部が桜の所に居て、彼女を襲っているのか。敵を追いかけることに夢中になっていた犬川には全く理解できず、頭の中が疑問で埋め尽くされる。

 

『きゃぁぁぁああああああああ!!』

 

『ぐぅっ・・・!』

 

「っ!?楓ぇぇええええええ!!」

 

そして2人を意識し、初めて聞こえた彼女達の苦しげな声。よく見れば小倉のシールドには既にヒビが入っており、いつ破られてもおかしくない状態である。

犬川はすぐに反転し、小倉の元へと飛んでいこうとするが、その間にも敵機の小倉への攻撃は続く。そして

 

『あっ・・・』

 

終に小倉のシールドが限界を向かえた。シールドは砕け、何発もの弾が小倉を襲う。それは小倉自身には当たらなかったものの、小倉のストライカーの右片方に命中。ボフンと言う音と共にストライカーが小さな爆発を起こし、足から外れて海へと落ちる。同時に、片方のストライカーを失った小倉もまたバランスを取ることが出来ずに錐揉みしながら落ちていく。

そしてそんな小倉に止めを刺す為、敵機体が殺到し・・・

 

「やめてぇぇええええええええ!!!」

 

突如空から降り注いだ弾に胴体を撃ち抜かれ、爆散した。

 

「な、何!?」

 

犬川が驚き、上に視界を向けると、そこには1つの人影があった。

その人影はくるりと半回転し、背面飛行の状態になってから一気に急降下を開始。そのまま手に持っていた機関銃で小倉に襲い掛かろうとしていた敵機をあっさりと撃ち落すと、機関銃を背中に戻してから小倉の体を後ろから抱きかかえるようにキャッチする。その後すぐに体を引き起こして急上昇すると、そのままの勢いで犬川の元へと飛んでくる。

 

「貴方、この子をお願い」

 

「え、え?アンタは?」

 

目の前の女性から気絶している小倉を受け取った犬川は、この短い間に起こった事について行けず、呆けた声を出す。

仲間の危機かと思えば、いきなり空から新たなウィッチが降ってきて敵を一瞬で撃破。しかもそのウィッチが着ている服は海軍の制服であり、その事が更に犬川の頭を混乱させる。

 

「説明は後でするわ、とにかく頼んだわよ」

 

「あ、ちょっと!」

 

だが彼女は犬川の質問には答えず、尚も攻撃を受けている桜の方へと飛んでいく。

味方が落とされたことで気づいたのか、桜を狙っていた敵機は一度攻撃を中止し、新たに現れた敵へと向かっていく。それに対して彼女は避けることはせずに、シールドを展開して正面から迎え撃つ。敵機の放つ弾は全てシールドによって防がれ、彼女の放つ弾のみが一方的に敵機へと突き刺さる。銃弾をモロに浴びた敵機は一瞬で只の鉄屑と化すが、銃弾から逃れた敵機2機が彼女の横を通り過ぎる。

まずい、と犬川は思った。あのウィッチが装備しているストライカーは犬川達の物よりも一回りは大きく、機動力が高そうには見えなかったからである。あのままでは格闘戦になり、そうなれば彼女は落とされてしまうと、そう考えていた。だがその考えは杞憂に終わった。なぜなら敵機が彼女の横を通り過ぎた途端、彼女の装備しているストライカーの右片方についている銃のような物が火を噴き、敵機が粉々になったからである。

これで敵の航空機は全滅。彼女が乱入してからまだ10分も経っていない。自分達3人でもどうにも出来なかった相手をあっという間に片付けてしまった彼女。彼女の実力は、自分が目指しているものにより近い位置にある。そう感じた犬川は、桜に肩を貸しながらこちらへゆっくりと飛んでくる彼女に対して羨望の眼差しを向けていた。

 

 

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「こちら雨霧。横須賀鎮守府へ、着陸許可を」

 

『了解、少しお待ちを』

 

その通信の後、少し離れた所で何かを怒鳴るような声がインカムから聞こえた。それから数秒後。

 

『お待たせしました、いつでも大丈夫です』

 

「了解」

 

通信相手からの許可を得たので、少しずつ高度を下げていき、そのまま臨時で開けられた工廠の横のスペースへと着陸する。しかし着陸してすぐには止まらず、ゆっくりとコンクリートの上を滑っていく。そしてユニットケージの前でくるりと半回転し、ストライカーをケージに収めた。

ストライカーがキチンと固定されたのを確認すると、こちらへ駆け寄ってきた整備兵達に装備を渡す。全ての装備を渡し終えてから、ユニットケージについている手摺りを掴み、体を持ち上げながらストライカーから足を排出させる。そのままユニットケージの端に腰掛けると、すぐに兵の1人が靴を持ってきてくれた。その事に礼を言いながら靴を履き、その場を後にしようとする。すると近くの工廠のドアが開き、夕張が出てきた。

 

「大尉!お疲れ様です!」

 

「あら、ありがとう。でも夕張は何でここに?今は朝食の時間のはずだけど、他の皆は?」

 

私は腕時計を確認しながら聞く。私は今日は少しトラブルがあって遅れたが、今は朝食の時間。それも昨日の夕張なら丁度食べ終える辺りで、工廠の手伝いをするのは今から1時間位後からのはずである。

 

「皆は今丁度食事中ですよ。私は・・・」

 

夕張はそこで一度区切ると、いやーと少し照れくさそうに笑う。

 

「大尉を待ってたんですよ。その、一緒にご飯食べたいかなーって・・・」

 

その言葉に私は少し驚いたが、すぐに笑顔が浮かんでくる。今から1人で食べに行くというのも寂しいものがあったし、それ以上に夕張の言葉が嬉しかった。仲間と呼べる存在から食事に誘われたりするなんて随分と久しぶりな気がする。

 

「そうね、じゃあ一緒に食べましょうか。ただ汗を流したいからもう少し待ってもらうことになるけど、それでもいいかしら?」

 

「は、はい!全く問題ないです!幾らでも待ってますから!」

 

夕張はそういうと、私のストライカーを整備している兵達の方へと駆けていった。さて、それじゃあ手早く済ませますか。

 

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工廠の中にある簡易シャワーに移動した私は、脱衣所で服を脱ぎ、個室シャワーの1つに入って蛇口を捻る。シャワーから出るお湯は少し熱めで、汗を掻いた体に心地良い。

 

「ふぅ・・・」

 

横須賀が襲撃を受けて早4日、私達は未だに横須賀に留まっていた。

というのも、あの日鳳翔は敵の母艦を発見するも、撃破する事が出来なかったらしい。聞くと敵の母艦は通常の空母型ではなく、潜水空母型だったらしく、不意を突かれた鳳翔は対処することが出来なかったとの事。

正直母艦を撃破する事が出来なかったのは仕方の無いことだと思う。あの時、鳳翔は敵の航空機を追い払うために戦闘機を優先して飛ばしており、爆撃機や雷撃機は飛ばしていなかった。仮に敵の母艦が通常の空母型だったとしても撃破は出来なかったと思う。

しかし、敵の母艦が潜水空母となると非常に厄介である。通常の空母型による奇襲なら、一般兵の見張りや哨戒でも効果があるので、増員して相手が使ってきたルートを重点的に見張ればいいだけの話である。だが潜水空母だとその手が使えない。奴等は海の中を潜って移動し、こちらの手が薄い所を見つけてそこから攻撃を仕掛けてくるからである。こうなると、艦娘による哨戒か、襲撃された後から対処するかしかない。

ないのだが、襲撃によって大きな被害を受けた今、御身少将は艦娘達の出撃を非常に渋っていた。曰く『また艦娘達がいない間に襲撃を受けたらどうする!それに資材も無限にある訳ではないのだぞ!』との事。・・・前者はまだしも、後者に関してはそんな事を言っている場合なのだろうか。少なくとも私の所よりは遥かに備蓄があるだろうに、使えない所で使えなくては宝の持ち腐れである。

その事を可能な限りオブラートに包んで進言してみたが、当然受け入れられはしなかった。それどころかあの襲撃についての責任を私達に押し付けられ、現在計画されている潜水艦狩り作戦が実行されるまでの間、哨戒任務を命じられてしまった。

責任云々については納得いかないが、私自身本土を攻撃されるという危険を無視してまで自分の鎮守府へ戻ろうとは思っていなかったのでこの事に問題はない。だが、その後が問題だった。潜水艦狩り作戦、並びに緊急事態に備え、私の鎮守府で待機している艦娘達も全て横須賀へつれて来いと言われたのである。

当然、これに対しては反対した。潜水艦狩り作戦への参加は大いに結構、むしろ望む所である。だが、それまで何日掛かるかも分からないのに、全ての艦娘を連れて来い?冗談ではない。私の鎮守府では私+艦娘=鎮守府にいる人員全てである。鎮守府を無人にしろとでも言うのか。そう反論したところ、御身少将は

 

『そういえば、大尉は増員の要請をしていたな。丁度いい、送ってやろうではないか。これならば無人ではあるまい?』

 

と、このタイミングで前から要請していた増員の話を持ち出してきた。後はもう階級の差を持ってごり押され、反対しきれずに決まってしまった。これが私達がここに残っている理由である。

ちなみに、夕張を始め、扶桑、睦月、如月の4人は既に増員として送られた兵と入れ替わりでこちらへきている。

 

「っと・・・」

 

ひとまず汗は十分に流せただろう。あまり夕張を待たせたくはないし、そろそろ出るとしよう。

お湯を止め、個室のドアに掛けていたタオルで体を拭き、私はシャワー室を後にした。

 

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「夕張、待たせたわね」

 

「あ、大尉。もういいんですか?」

 

私がシャワーを浴びに行った時から変わらず、ストライカーの整備をしている兵の手の動きをすぐ近くで見ていた夕張に声を掛けると、彼女はすぐに反応して立ち上がった。

 

「ええ、行きましょう。」

 

「はい!」

 

そして私と夕張は横に並び、のんびりと食堂へ向けて歩き出した。

 

「そういえば今日はいつもと比べて随分遅かったですね。何かあったんですか?」

 

「少し敵の航空機と遭遇したのよ」

 

「それだけなら別に昨日や2日前と変わりませんよね?」

 

「それと、陸軍のウィッチにも会ったわ」

 

「陸軍の!?」

 

夕張は、私が敵に会ったという事よりも、陸軍に会った事に対して大きな反応を見せた。まぁ彼女の立場上しょうがないのかもしれないが。

陸軍と海軍はあまり仲がよろしくない。というより、海軍の上層部が一方的に陸軍の毛嫌いしているといったほうがいいだろうか。まぁどちらにせよ、その上層部の言葉を真に受けて陸軍が敵だというイメージを持つ者が多少なりともいるのだ。特に、階級が高い者に関わりやすい艦娘には。夕張もその一例なのだろう。

 

「別に驚く事でもないでしょう?陸軍だって人類の為に戦いたいっていう気持ちは変わらないはず。哨戒していたってなんらおかしくは無いわ。」

 

「それはそうですけど・・・何かされませんでした?というか、されましたよね。じゃなきゃこんなに遅くなるとも思えませんし」

 

そう言って夕張は、何故か少し不機嫌そうに頬を膨らませる。

たまに思うのだけど、夕張は私を少し過大評価しすぎている気がする。信頼して貰っていると考えれば悪い気はしないのだけども。

というか、一体前の上司からどんな話を聞かされてたのかしら?

 

「別に何もされなかったし、それどころか私よりも早く敵を見つけて戦っていたわ。戻るのが遅れたのは、彼女達が受けた被害が大きくて、自力で帰らせるのが少し不安だったから基地の近くまで送っていったってだけよ。」

 

「へぇ~、そうだったんですね。陸軍も悪い人ばかりじゃないんだなぁ・・・」

 

そういって夕張は感心したような声をあげる。悪い人ばかりじゃない、というよりは、悪い人はそんなにいない、と言ったほうが正しい気もするけど、そこまで細かく訂正する必要もないか。

その後は、お互い他愛の無い話をしながら歩いている内に食堂についた。ピークから少しずれているとはいえ、中は多くの兵達で賑わっている。と、ここまできて1つ夕張に聞くことを忘れていた。

 

「今更だけど、士官用の食堂じゃなくて良かったかしら?」

 

ここ横須賀鎮守府では、食堂が士官用と一般兵用に分かれており、私はいつも一般用の食堂を利用していた。その癖でつい何も言わずにこっちへ来てしまったが、艦娘は特別な扱いで、士官用の食堂を使う事が許されている。これは私の所に所属している夕張達も例外ではなく、彼女達はここに来てから士官用の食堂を利用していたはずである。こっちに連れて来てしまって大丈夫だっただろうか?そう聞くと夕張は

 

「ああ、全然大丈夫ですよ。賑やかなのは嫌いじゃないですし、それにご飯の方も、こういったら何ですけど鳳翔さんの物と比べたらどこもあまり変わらないでしょうし」

 

との事。大丈夫そうで何よりである。だが、彼女が1つ勘違いしている事があったのでそこだけ訂正しておこう。

 

「それなら良かったわ。でも1つだけ、士官用の食堂も一般用の食堂も、出される食事自体に差はないのよ」

 

「え、そうなんですか?」

 

「ええ、違いは精々椅子の座り心地がいい事と、静かに食事が出来る事位かしら。最も、閣下のありがたいお話を聞かされるから、後者はここでは無いも同然なのだけど」

 

「あはは・・・そうですよねぇ・・・」

 

最初は私も士官用の食堂へ行ったが、あの小うるさい自慢話を食事中ずっと聞き続けるのは苦痛でしかなかった。その事に対する恨みを込めて夕張に説明すると、苦笑しながら同意してくれた。恐らく彼女も自慢話を聞かされる事にうんざりしていたのだろう。

とりあえず夕張からOKを貰ったので、今度からこっちで食べようかと真剣に悩み始めた彼女と共に食堂の中へ入る。そのまま他人の席にぶつからない様に気をつけながらカウンターへ向かい、係の兵に声をかけた。

 

「2人分、お願いできるかしら?」

 

「は、はい!すぐに!!」

 

彼は大きな声で返事をすると、すばやく2人分の食事をトレーに盛り、こちらに差し出してくる。既に何度か見てはいるが、改めてその速さに関心しながら私達はトレーを受け取ると、次に座る席を探す。ただ、多少時間が経っているとはいえまだまだ食事を取っている兵は多い。加えて、食事自体は終わっていても食後の休憩を楽しんでいる者も多く、中々空いている席は見つからなかった。

しかしこのままだと折角の食事が冷めてしまう。何とか席を見つけようと食堂内をうろうろとしていると

 

「あ、あの、もしかして席をお探しですか?」

 

と、窓際の席に座っている兵達から声をかけられた。彼らは4人でテーブルを囲んでおり、既に食事を終えたのか、テーブルの上にはトレーの代わりにトランプや裏返しの写真が散っている。

 

「ええ、色々あって少し遅れてしまってね、中々席が見つからないのよ」

 

肩をすくめながら答えると、席に座っている3人はいきなりトランプと写真を片付け始めた。後の1人は席を立つと同時に敬礼をすると

 

「でしたら、こちらの席を使ってください!自分達は既に食事を済ませていますので!」

 

と言ってくれた。だが

 

「そんな、悪いわ。折角休憩時間を楽しんでいたみたいだし」

 

「いえそんな!トランプは別の場所でも出来ますし、気になさらないでください!」

 

「うーん・・・」

 

彼の気持ちは嬉しいが、元々私達は自分の我侭でこっちの食堂に来ている。それで兵達の楽しみを邪魔するのは流石に勝手が過ぎるだろう。

だが、他の席は空いておらず、すぐに席を離れそうな兵もいない。また、彼らもここまで言っており、机の上も既に片付いてしまっている。これを無碍にするのもどうだろうか・・・それに、私1人ならまだしも、この場には夕張もいる。彼女をあまり待たせたくはないし、少し悪い気はするが、譲ってもらったほうがいいか。

 

「それじゃあ、お言葉に甘えようかしら」

 

「はい!どうぞこちらへ!」

 

席を譲ってもらう事を伝えると、彼ともう一人の兵がわざわざ椅子を引いてくれた。その事にお礼を言って、私と夕張は椅子に座る。

 

「本当にありがとう。貴方達に席を譲ってもらえなかったら、後どれ位待つことになってたか分からなかったわ」

 

「いえ、これ位は当然です!それでは、私達はこれで!」

 

そう言って席を譲ってくれた兵達はこの場を離れる。その時、兵の1人のポケットから1枚の写真が落ちた。私の足元に飛んできたそれを拾って、すぐに彼らを呼び止める。

 

「貴方、ちょっと待って。写真が落ちたわよ・・・あら?」

 

「あれ、その写真に写ってるのって・・・」

 

落とした写真が確認できるように写真を持った手を軽く挙げたのだが、偶々写真を表裏逆に持っていたらしく、写真に写っている物が見えた。私の向かいに座っている夕張にもそれが見えたらしく、驚いた様な声をあげる。

その写真に写っていた物は、ストライカーを装備した私だった。といっても最近の写真ではないらしく、ストライカーは流星ではなく零式戦闘脚であり、髪も今より少し短い。というかこれってもしかして・・・

思わず手を下げて写真をまじまじと見ていると、写真を落とした兵が物凄い速さで私の前まで戻り、慌てた様子で私の手から写真を取る。その顔は赤く染まっており、なんとなく気まずそうだ。

 

「あの・・・その、見てしまいましたか・・・?」

 

「ええ、申し訳ないけども」

 

「っ・・・す、すいません!気持ち悪いですよね、こんな・・・」

 

「謝らなくていいのよ、男性ならこの位は普通だと思うわ。というより、よくこんな前の写真持ってたわね?」

 

彼の落とした物、あれは3年程前に撮影された私のブロマイド写真である。まだ艦娘という存在が無く、ウィッチが主力だった頃に、民間へのアピールだとか兵の士気向上だとかの目的で撮影された物の1つだ。当然私以外のウィッチの写真も存在する。

ただ、艦娘という存在が現れた事によってウィッチの需要が少なくなったのに加え、過去に行われたとある作戦が決め手となり、写真は全て販売中止となったはず。一体これをどこで手に入れたのだろうか。

少し疑問を含めて彼を見ると、彼は恥ずかしいのか小さな声で話し始めた。

 

「・・・実は自分、過去に大尉が飛んでいるのを実際に見たことがありまして、その時の姿が・・・その、とても素敵で忘れられず・・・写真は当時買った物です・・・」

 

彼の言葉に私は大分驚かされた。彼の言っていることが本当なら、3年前の写真をこれまでずっと持っていたことになる。それも先程見た限りでは色あせや汚れもほとんど無く、相当大事に保管されていた事が伺える。正直、とても嬉しい。

 

「ありがとう、そこまで言ってくれると私も嬉しいわ。

 ・・・そうだ。その写真、少し貸してくれるかしら?」

 

「へ?あ、はい。どうぞ・・・」

 

少しだけサービスしようかしら、喜んでくれるかはわからないけども。

彼から写真を受け取り、制服のポケットにしまってあるペンを取り出す。

 

「名前、聞いてもいい?」

 

「あ・・・但野弘志です・・・」

 

彼から名前を聞き、漢字を確かめると、写真の空いているスペースにペンを走らせる。

 

~但野弘志さんへ 雨霧雅~

 

・・・これでよし。

 

「ありがとう。写真、返すわね」

 

サインはブロマイドを売っていた当時は多少書いており、うぬぼれで無ければそこそこ喜んでもらえていたはず。席を譲ってもらった事と、写真を大事にしてくれていた事に対するせめてものお礼だ。

 

「こ、こんな・・・あ、あぁありがとうございます!一生大事にします!!」

 

「喜んでもらえて私も嬉しいわ。お仕事、頑張って頂戴ね」

 

「はい!!ありがとうございました!!」

 

そういって彼はとても上機嫌にこの場を去っていった。と思ったら食堂の出口の辺りで待っていた3人に体を締め上げられた。ここからでは何を言っているかわからないが、4人とも笑っているので恐らくいい事なのだろう。

さて、そろそろご飯が冷めてしまいそうなので、食べ始めるとしよう。そう思って顔を正面に戻すと、何故か夕張が凄く不機嫌そうな顔をしていた。

 

「大尉って」

 

「?」

 

「大尉って、ひょっとして結構タラシだったりします?」

 

「・・・?どういうこと?」

 

「・・・はぁ。いえ、なんでもないです」

 

彼女の質問の意味が良く分からず、首を傾げていると彼女はそのままご飯を食べ始めた。

質問の意味が気になるといえば気になるが、答えてくれる気は無さそうなので諦めて私もご飯を食べ始める。

結局、夕張は最後まで不機嫌だった。

 

---

 

食事の後、私は手伝いの為に工廠に居た。本来なら夕張も来る筈なのだが、彼女は

 

『私、今日は休みます。整備班の人には大尉から伝えておいてください』

 

と言ってどこかに行ってしまった。呼び止めようとはしたが、不機嫌なままだった彼女は聞く耳を持ってくれなかった。元々は作業の手順等を教えてもらうために自主的に参加していた為、休むと言っておけば参加しない事自体には問題はないのだが、なぜ彼女があそこまで不機嫌だったのかは結局分からず終いだ。

という訳で今は1人で整備兵の中に混ざっている。当然士官服のまま作業を手伝うわけにはいかないので、スクール水着は着たまま、その上を整備兵用のツナギに着替えている。元々女性用の物が無かったので、前の方のチャックが胸でつっかえて閉まりきらなかったが、まぁスクール水着なら汚れても問題ないだろう。

今回手伝わせてもらっている作業は、艦娘の装備を変えるにあたって必要な艤装の調整だ。只新しい装備を付けたい、外したいと言っても、何の調整も無くそれらを行ってしまえば全体のバランスが乱れ、本来の性能が発揮できなくなってしまう。そのような事態避ける為に、わざと重たいだけの部品を付けたり、逆に外したりという作業を行う必要があるのだ。

艤装の全体図と、新たに付ける装備の図を睨みながら、他の整備兵達と意見を交換しあう。しばらくして案がまとまったので、それにしたがってクレーン等を動かし、装備を付けていく。これでまず第一段階。次は・・・と考えていると

 

「整備班!来たわよ!!」

 

バァン!という音と共に工廠の扉が開き、少女の声が響き渡る。顔をそちらに向けると、セーラー服を着た黒髪の少女がドヤ顔で立っていた。歳は睦月や如月と同じくらいだろうか?

彼女はそのまま工廠の中に入ってくると、一番近くに居た私の方へ向かって歩いてくる。

 

「そこの人!・・・えーっと(こんな人居たっけ?)・・・まぁいいわ!暁の装備はどう?」

 

「暁・・・ああ、貴方が。丁度良かったわ、ちょっと待っててね。・・・班長!」

 

彼女が今私達が調整している艤装の持ち主である[暁]である事が分かり、すぐに班長を呼ぶ。班長は声がした辺りで既に待機していたのか、呼んでから1分も掛からずにこちらへ来た。

 

「こりゃまた、時間ぴったりですね。丁度準備できましたよ」

 

「ふふん、約束の時間を守るのはレディーとして当然よ!さ、早くやっちゃいましょう」

 

「へい、こちらで」

 

そう言って班長は先程まで装備の取り付けを行っていた艤装の前まで、彼女を連れて行く。さて、ここからは第二段階だ。

実際に装備が追加された艤装を身に付けてもらう。そして本人に感想や違和感が無いかを聞き、それを元にまた調整を行う。所謂微調整といった所だろうか。だが微調整といっても、実はこれが一番面倒な作業だったりする。というのも、ここで出てくる感想や違和感はその艦娘個人の感覚であり、それを体験出来ずに聞く事しか出来ない整備兵達にはうまく伝わらない事が多い。そのせいで再調整を行う回数だけで2ケタを超える事など当たり前であり、酷いときには1日が1人の艦娘の装備の調整だけで終わる事もあるのだという。

戦艦娘や空母艦娘程になればある程度は正確に情報を伝えてくれるが、そもそも戦艦娘はあまり大規模な装備の変更を行う事は無く、空母艦娘は他の艦種に比べて少し特殊なのであまり参考にはならない。

そして今試しに艤装を装備している暁は駆逐艦娘である。班長曰く、「巡洋艦娘程の細かいこだわりはないが、表現などがふわっとしていて面倒」との事。しかもこの暁という少女。他の駆逐艦娘に比べると装備に対してのこだわりが強く、駆逐艦娘の中ではかなり面倒な相手だという。

そこで、私に白羽の矢が立った。暁の言う感想や違和感を聞く係に私が選ばれたのである。理由は、艦娘とウィッチという違いはあれど、一部の女性にしか扱えないものを使っているという共通点から、他の男連中よりは暁の考えている事が分かりやすいのではないかと考えたからとの事。別に反対する理由も無く、班長の考えも理解できるので、私はそれを引き受ける事にした。

そうと決まると早速整備兵達は暁に艤装を装備させ、海の上へと立たせる。そのまま基本的な動きや、新しく付けた装備-今回は潜水艦狩り作戦のための爆雷-を実際に使って試して貰い、私達はそれを観察する。すると他の整備兵は気づいているか怪しい、というより距離的に見えているかも怪しいが、爆雷投射機を動かす際に暁が若干顔をしかめるのが見えた。すかさず私はこの事をメモに取り、再び暁の動きに注目する。その後も暁の表情を見て何度かメモを書いていく内に艤装のテストが終わった。微妙な表情をしながら戻ってきた暁を見て、何人かの整備兵から溜息が漏れる。

 

「うーん・・・なんか違うのよね、スマートじゃないわ」

 

「はぁ、スマートですかい?」

 

「そうよ!もっとこうね・・・」

 

「あー待ってくだせぇ、今日は彼女が話を聞きまさぁ」

 

艤装を外して貰いながらよく分からない感想を述べる暁に対して、若干うんざりした様な顔の班長が言葉を遮りながら私を前に押し出す。

 

「あれ、今日はこの人なの?」

 

「へぇ、彼女ならきっと自分らより艦娘様の要望に答えられると思いまさぁ」

 

「ふ~ん・・・」

 

あ、さらっとハードル上げてきたな。おのれ班長。今の言葉で暁の目が明らかにキラキラしているし、これは下手な事出来ないなぁ・・・

 

「とりあえず、椅子に座りながら話しましょうか」

 

そう言って彼女と2人で工廠の影に置かれているベンチへと移動する。さて、と

 

「それじゃあ早速、感想聞かせてもらえるかしら?」

 

「待ってたわ!えっとね・・・」

 

・・・そして始まった彼女の説明は、恐ろしく長く、抽象的であり、解読に時間が掛かったため、要点だけまとめる事にする・・・

 

1、爆雷が思った所に飛んでいかない

 

2、砲の数が大きく減らされているのが納得いかない

 

3、2からの派生。対空砲を減らして主砲を増やせ

 

4、そもそももっと強力な装備がほしい

 

5、なんとなく機動力の面で違和感がある

 

以上の5つが、彼女の言いたい事らしい。さて、困った。

5番に関しては、爆雷の数を増やした変わりに主砲を減らしたので速度がわずかに上がった事に対する違和感だろう。これは重量を増やして調節すれば解決できる。

そして1番に関して。これははっきり言ってしまえば暁の扱いが悪いとしかいえない。暁は爆雷をピンポイントで狙って落とそうとしていたようだが、本来爆雷は潜水艦がいると思われる位置に向けてばら撒く物である。ばら撒く為の物で精密に狙う事等は不可能だと、彼女にしっかりと教えておく必要があるだろう。ただ、今すぐに教えてどうにかなるものでも無いので、爆雷の装填時間を落とす代わりに精度をもう少し何とかしてもらうように班長に頼んでみるのもいいだろう。

この2つはこれでいい。だが、問題は2~4番である。

前にも書いたが、今回の装備は潜水艦狩り作戦の為に用意された物である。潜水艦狩り作戦は作戦海域が鎮守府近海ということで、敵水上艦との戦闘はほとんど無いと予想されており、作戦参加予定の艦娘の装備は主砲や魚雷等が最低限の物を残して全て爆雷等に積み替えられている。暁はそれが気に入らないのだという。しかもその理由が

 

『こんな砲も魚雷も無い装備なんてかっこ悪いじゃない!レディにあるまじき姿だわ!!』

 

との事。これには流石に頭が痛くなりそうだった。

次の3番について。これは鳳翔が発見したという潜水空母への対策として、主砲を外したスペースに対空砲を装備するという案だったのだが、暁はこれがお気に召さなかった様子。2番と同じ理由で嫌がられた。

そして一番どうしようもないのは4番についてだ。主砲にしろ、魚雷にしろ、対空砲にしろ、爆雷にしろ、暁に与えられている装備は駆逐艦を基準に考えれば十分な装備である。少なくとも睦月や如月と比べるとあらゆる装備が優れている。

 

(うーん・・・)

 

私はどのようにしてこれらの事を彼女に納得させるかを悩んでいた。感性の違い等ならまだ2人で相談していけば良かったが、ここまで見当違いの事を言われると最早相談というより説得になる。

だが、ここまで話を聞いてなんとなく掴んだ彼女の性格では、恐らく普通に話しても聞いてくれないだろう。となるとどうすればいいか・・・ん?

ここでふと私は、暁のこれまでの言葉を思い出す。

 

『ふふん、約束の時間を守るのはレディーとして当然よ!さ、早くやっちゃいましょう』

 

『うーん・・・なんか違うのよね、スマートじゃないわ』

 

『こんな砲も魚雷も無い装備なんてかっこ悪いじゃない!レディにあるまじき姿だわ!!』

 

・・・ふむ。

これは予測なのだが、彼女はやたらレディという言葉や、格好良さにこだわっている気がする。省略してはいるが、話を聞いていたときだけでもレディという言葉は2ケタは出てきた。となると、恐らく彼女は背伸びをしている。もしくは大人への憧れを持っている可能性があると考えられる。

なら、少しこれを利用してみるとしよう。

 

「爆雷と違和感については分かったわ。でも、主砲や新しい装備についてはちょっと難しいかしら」

 

「えー!なんでよ!!」

 

「まず、今計画されている作戦について、貴方は知っているかしら?」

 

「それ位はわかるわ。潜水艦狩り作戦でしょ」

 

「分かってるなら話は早いわ。潜水艦を相手にするのに、対水上艦用の装備はあまり効果的ではないのよ。だから主砲や魚雷を外して対潜装備を増やしているの」

 

「でも!あんなのレディの装備じゃないわ!」

 

よし、レディという言葉が出てきたな。

 

「うーん、じゃあ貴方はどんな装備がレディにふさわしいと思うかしら?」

 

「勿論主砲や魚雷をいっぱい積んだ奴に決まっているじゃない!!」

 

「それは何で?」

 

「え?えっと・・・だって、その方が敵をいっぱいやっつけられるし・・・」

 

「爆雷だって、潜水艦をたくさん倒せるわよ?」

 

「せ、潜水艦なんてほとんど目立たないし!いっつも活躍出来るわけじゃないじゃない!」

 

「確かにそうかもしれないわ。でも、結局は誰かがそういう地味に思える事をやらなきゃいけないのよ?」

 

「そんなの他の子にやらせればいいじゃない!暁は嫌よ!!」

 

「そう・・・まぁどうしてもやりたくないと言うのなら、班長達を説得してあげてもいいわ」

 

「本当!?じゃあすぐに・・・」

 

「でもその前にひとつだけ、いい事を教えてあげるわ」

 

「いい事?」

 

「本当のレディというのはね、そういう地味な仕事を積極的に引き受ける物なのよ」

 

「なっ・・・!」

 

私の言葉に暁の目が大きく見開かれる。よし。この反応なら、もう少し押せばいける。

そう考えた私は更に言葉を続ける。

 

「貴方の周りにもいないかしら?そういう地味な事を自分から引き受けたり、他人の為に何かをしようとする人が。もしいるのなら、その人への周りの評価はどう?良い物が多いと思うのだけれど」

 

「た、確かに・・・」

 

どうやら思い当たる節があるようだ。顔を少し俯かせ、「でも・・・」とか「そんな・・・」と何かをぶつぶつと呟いている。ここまで来れば彼女がどのような反応をするかは予想できる。さぁ、最後の詰めだ。

 

「でも!それなら暁はレディじゃないって言うの!?」

 

よし来た。これなら・・・

 

「このままなら貴方はレディではないでしょうね。でも、チャンスはすぐそこにあるわ。今私達は敵の潜水艦にとても困らされているの。これがどういう事か、分かるわね?」

 

「!? 任せなさい!!そんな連中、暁が全部やっつけてあげるわ!!」

 

「うん、それでこそよ。偉いわね」

 

目を輝かせながら、お嬢様っぽいポーズで高々と暁は宣言する。その様子が微笑ましく、気が付いたら手が彼女の頭へと伸びていた。そのまま帽子を取り、ゆっくりと頭を撫でる。

 

「えへへ・・・って、頭をなでなでしないでよ!!」

 

「うふふ、ごめんなさいね」

 

両手で頭を押さえ、いやいやと頭を振るその様子がまた微笑ましい。もう少し頭を撫でていたかったが、本人も(表面上は)嫌がっているし、まだ作業も残っているのでこの辺りにしておこう。

 

「それじゃあ装備は今のままでいいという事で、爆雷の精度と機動力の違和感に関してはこちらで何とかするわ。それいい?」

 

「うん、しっかりお願いするわね。暁がレディだって事、証明するんだから!」

 

そんな彼女の言葉を背に、私は班長達の元へと戻っていった。

それから再び暁の艤装の再調整を始めたが、修正する箇所が少なかった為に作業に時間はそう掛からず、班長曰くいつもの半分以下の時間で今日の仕事は終了した。

 

,,,

 

「♪~~」

 

「あれ、暁ったら随分ご機嫌ね」

 

「本当だね、何かあったのかい?」

 

「ふふん、整備班の中にいい人がいてね・・・」

 

これ以降、艤装の感想や違和感を伝える際に、駆逐艦娘から雅を指名する者が激増したのだが、それはまた別の話。

 

 




オリキャラ紹介

犬川 藍(いぬかわ あい)
出身:日本
階級:軍曹
使用機材:ki-43隼
固有魔法:なし
使い魔:柴犬
年齢:14歳

桜美也子(さくら みやこ)
出身:日本
階級:曹長
使用機材:ki-43隼
固有魔法:なし
使い魔:ウサギ
年齢:15歳

小倉楓(おぐら かえで)
出身:日本
使用機材:ki-43隼
固有魔法:なし
使い魔:三毛猫
年齢:14歳


という訳で作戦開始までの中継ぎのお話でした。次は1-5の話を書・・・けるといいなぁ(
最近少し忙しいので中々モチベが保てないんでよね。頑張らなくては

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