もし司令官がウィッチだったら(仮)   作:old.type

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ヴァー
リアルの都合で1ヶ月ほど遠出をしていてPCに触れない環境にありました。作品を待ってくれていた人がいたら申し訳ないです。これからも色々遅くなるとは思いますが失踪する気はまだないので気長にお付き合い頂ければ幸いです。

今回は1-5、ストパンでいう睦月・如月回の前半です。

また、今回の話には関係ありませんが前話の陸軍組のストライカーを飛燕から隼に変えました。理由はまぁその内


第五話-前編-

早朝、窓枠に腰をかけながらぼんやりと外を見遣る。外はまだ少し薄暗いが、確かに日が昇っていて朝だという事がわかる。起床ラッパが鳴るまでは後10分といった所だろう。時計を見ればもっと詳しく分かるが、自分の予想があっているという自信もあるし、何よりもう少し外を見ていたかったので時計を確認はしなかった。

いつもならば少し早く起きた時は軽く散歩をしたり、ストライカーの整備をしたりするのだが、今日は外を見ていたい気分だった。できる事ならこのままずっと静かな時間を過ごしていたいとも思う。こんな気分になるのは久しぶりかもしれない。

 

(やっぱり、怖いのかしらね・・・)

 

視線を窓から3つの2段ベットに移す。そこにはキチンとした姿勢で眠る扶桑と鳳翔と如月、暑かったのか布団を押しのけている睦月と夕張が眠っている。その顔は全て穏やかな物であり、普段から大人びている鳳翔ですらこの時ばかりは歳相応の寝顔だ。

そんな彼女達の姿に、記憶の中のとある人物の影が重なる。その人物は方やキチンとした姿勢で、方や布団を蹴散らした上にベットから落ちながら眠っていて---

 

「・・・」

 

そんな光景を、顔を軽く振って打ち消す。視線を戻すと、先程と変わらない扶桑達の寝顔が写り、もう先程の人物の影は重ならなかった。

 

「大丈夫、きっと大丈夫よ・・・」

 

胸に手を当てて、自分に言い聞かせるように呟く。その直後、起床ラッパの音が部屋の中に響き渡った。

 

・・・

 

着替えを済ませた私達は朝食を取る為に食堂へと向かう。普段なら私と夕張は一般用の食堂を使っていたが、今日は士官用の食堂を使うと決めていた。

 

「あら、今日は大尉もこちらの食堂を使うのですか?」

 

「ええ。大事な作戦前だから、皆の様子も見ておきたいし」

 

いつもなら皆と別れている場所で別れず、そのまま同じ道を歩く私に対して聞いてきた扶桑にそう返しながら廊下を軽く見る。廊下には私達と同じく食事を取ろうとしている艦娘達が歩いていた。その艦娘のほとんどは駆逐艦娘であり、同時に数日前まではこの鎮守府にいなかった者である。

この鎮守府が襲撃を受けてから早くも2週間と3日が経った。その間にも潜水艦狩り作戦の為の戦力は着々と集められており、ついに3日前、十分な戦力が集まったと判断された。そして今日はその潜水艦狩り作戦が決行される日である。私が今の鎮守府に着任してから初めてのまともな作戦なので、私の艦娘達の調子や気分がどうかを確認する為に一緒に行動をしているが---

視線を廊下を歩いている艦娘達から、先頭を歩いている睦月達に移す。彼女は如月や夕張と並んで歩いており、他愛の無いお喋りをしている。その顔には特に不安そうな様子は見られず、いたって普段通りだ。一歩後ろの位置で私と並んで歩いている扶桑や鳳翔の顔にも不安や緊張は見られない。

この分なら余計な心配だったかしら?そんな事を考えながら話している内に私達は士官用の食堂に着いた。

 

「大尉さん、早くまいりましょう!睦月もうお腹ペコペコなのです!」

 

「ああ、もう少し待って頂戴」

 

今にも走り出しそうな睦月を止めながら、ある事を確認する為に軽く食堂内を見渡す。私が確認する物、それは席がどの位空いているかだ。というのもこの士官用の食堂、スペースは一般用の食堂に比べると広いのだが、席の数は一般用よりも遥かに少ない。

何故かといえば、士官用の食堂を利用できる者は精々艦娘と一部の兵、そして提督位であり、これらを全て足しても大した数にならないからである。席を増やした所で、使う者がいなければ何の意味もない。ならばその少ない席を使う者が快適に過ごせるようにしようと言うのが御身少将の考えだそうだ。最も、今回は完全にそれが裏目に出てしまい席に座れない艦娘が出るという事態が発生しているのだが。

 

(・・・ふむ)

 

ぱっと見で見える範囲では、今空いている席は全体の半分程度といった所か。半分というとそこそこ空いているように聞こえるかもしれないが、実際の数は精々10席後半から20席前半程度である。途中で見た艦娘達の事を考えると、食事を受け取っている最中に席が埋まる可能性は否定できない。となるとだ

 

「少し席の数が不安ね。私は先に席を取っておこうかしら」

 

「あ、それなら私がやりましょうか?」

 

「ありがとう。でも私の貰おうと思っている料理はそんなに時間が掛からないと思うから、後回しで大丈夫よ」

 

「そうですか、わかりました。ではお願い致しますね」

 

代わりにやってくれようとした鳳翔にお礼を言って私達は一旦別れ、彼女達は食事を取る為に、私は良い席を探すために動く。

それから少しして、丁度窓際の席が空いていたのでそこを確保する事にした。朝日が窓から差すおかげで暖かく快適、我ながらいい席を取ったものだと軽く自賛していると

 

「あれ?あなた・・・」

 

「うん?」

 

おっと、この声は。

すぐ近くで覚えのある声が聞こえたので、そちらへと顔を向ける。するとそこには、不思議そうな顔をしてこちらを見ている暁がいた。その後ろには彼女と同じセーラー服を着ている少女が3人立っている。同型艦の子かしら?

 

「あら、暁ちゃん。おはよう」

 

「え、あ、うん、おはよう・・・えっと、何で貴方がここにいるの?それにその服・・・」

 

「ふふっ。ここにいる理由?それは一応私が士官だから、かしら。服も同じ理由ね」

 

「・・・もしかして・・・司令官、とかだったりする?」

 

「ええ、あくまで代理ではあるけれど」

 

暁の質問に答えると、彼女の顔がさっと青くなる。

 

「ご、ごごごごごめんなさい!でも暁は全然そんなこと知らなくて、そのあのえっと・・・」

 

そしてわなわなと震え始めたかと思うと、物凄い勢いで謝り始めた。

これには流石に私も驚く、軽くからかうだけのつもりだったのに。ほら、後ろの子達なんか何事かって顔になってるし。

 

「まぁ落ち着いて頂戴。私は別にそういうのは気にしないわ。むしろ暁ちゃん位のほうがこちらも気が楽だわ」

 

「・・・ほんとぅ?」

 

「ええ」

 

「怒らない?」

 

「勿論よ」

 

「そっか・・・なら、よかった」

 

私の言葉を聞いて安心した様子で息を吐く彼女を見て、少し穏やかな気分になった私は彼女の頭にそっと手を伸ばして軽く撫でる。

 

「あっ・・・ちょっと、なでなでしないでよ・・・んぅ・・・」

 

暁は照れ臭そうに私の手を掴むが、無理に引き離そうとはしなかった。むしろ頭を押し付けてきてるような気さえする。・・・可愛い、少し撫でるだけのつもりだったのに手が止まらない。

私が彼女の頭の感触を堪能していると、彼女の後ろにいた3人の子がこちらに近づいてきた。

 

「へぇ・・・珍しいね、暁が頭を撫でられるのを嫌がらないなんて」

 

「あら、貴方達は?」

 

「暁型2番艦の響だよ、よろしく。こっちの2人は」

 

「雷よ!かみなりじゃないわ、よろしくね!」

 

「い、電です・・・よろしくお願いいたします」

 

「御丁寧にどうも。私は・・・」

 

「ああ、貴方の事は知ってるよ。雨霧さん。最近は暁がよく貴方の事を話していたからね」

 

「ちょ、ちょっと響!?」

 

暁は慌てて響の口を塞ごうとするが、響は伸ばされる手を掴みそのまま暁の動きを止める。

 

「本当の事じゃないか、別に恥ずかしがる事でもないだろう?」

 

「そうよ、あんなに楽しそうに話してたんだから」

 

「あの時の暁ちゃん、可愛かったのです」

 

「み、みんなしてえぇぇええええ!」

 

3人の言葉に暁は顔を真っ赤にして響の手を振りほどこうとするが、響の体が揺れるだけで全く振りほどける気配は無かった。その間にも雷と電がからかうような事を言って、暁の顔が益々赤くなっていく。

 

「うがぁぁああああああああ!響!離しなさい!離しなさぁぁぁあああああああ!!」

 

「暁、少し落ち着こうか。いつもはここまで優しくして貰えないんだ、こういう時位は素直に甘えた方がいい」

 

「っ・・・」

 

響の言葉を聞いた暁達は一気に大人しくなる。いや、大人しくなったというよりは落ち込んだという方が近いだろうか?先程までからかっていた雷と電も同様に落ち込んでいる。

というよりも・・・

 

「そっちの鎮守府では、色々大変なの?」

 

ストレートに聞くのは流石に憚られたので、少しオブラートに包んで尋ねてみる。この質問には響が、暁の手をそっと離しながら答えてくれた。

 

「そうだね。私達の所はあまり艦娘も資材もないから、こういう機会が無かったら余り休ませて貰えない。それに、失敗を責められる事は多くても成功を褒められた記憶はあまり無いかな」

 

「・・・そう。ごめんなさい、無神経だったわね」

 

「別に構わないよ。事実失敗は私達の責任だ、責められるのは当然の事だよ」

 

「・・・」

 

そう何でも無いように淡々と話す響と、落ち込んでいる暁達を見て、私は自分の無神経さを呪うと同時に前に夕張から聞いた話を思い出す。夕張も、前に所属していた鎮守府ではまるで道具のような扱いを受けていたと言っていた。世間では、艦娘は人類の希望と言われているのだからもっと良い扱いを受けている物だと思っていたが、この分だとどこの鎮守府も酷いのかも知れない。

暗くなってしまった空気の中でそんな事を考えていると、暁がぎこちない笑みを浮かべる。

 

「ねぇ、あなたの所の艦娘ってどんな子なのかしら。ここには来てるんでしょ?」

 

その口から出たのは話題を変える言葉、彼女にとってもこの場の空気は辛かったらしい。もう少し早く気づけなかった事を反省しながら、彼女の意図を汲む。

 

「そうね、今は皆ご飯を取りに行っているわ。そろそろ来る頃だと思うのだけど」

 

「あ、大尉さん見つけた!」

 

おっと、噂をすればと言った所かしら。声がしたほうを向くと、少し離れた所から食事が乗ったお盆を持った睦月と如月がこちらに歩いてくるのが見える。軽く手を振ってあげると、睦月が満面の笑みを浮かべて歩く速度を上げ、如月は器用に片手でお盆を持ちながら手を振り替えしてくれた。それから間もなくして2人が私の所にたどり着く。

 

「お待たせしたのです!ちょっと遅くなっちゃいました」

 

「気にしなくていいわよ。他の2人は?」

 

「お二人はまだ時間が掛かるって言っていたわ。だから先に席に行って大尉と交代するようにって」

 

「あら、そうなの?それじゃあ・・・」

 

「ところで、そっちの子達は大尉の知り合いかにゃ?」

 

如月の言葉を聞いて席を立とうとすると、暁達を見た睦月がそう聞いてくる。恐らくこちらに声を掛ける前に、話をしていたのを見たのだろう。

 

「ええ、彼女達は・・・」

 

 

「---なんだ、睦月型じゃない」

 

 

「え・・・?」

 

睦月達に暁達を紹介しようとした時、恐ろしく冷たい声が響く。その声が非常に近くで聞こえた為、誰の声かはすぐ分かった。だが私は彼女がそんな事を言うとは信じられず、確かめる意味も含めて彼女の方を見る。

そして私は見てしまった。彼女-暁-の、相手を見下すような冷たい目を。またその目が間違いなく睦月達に向けられているという事を。

 

「いいわねー、優しい司令官で、羨ましいわ。私達なんか幾ら頑張っても褒めてすら貰えないのに、あなた達は随分と楽しそうで」

 

「う・・・ぁ・・・ぇ・・・?」「・・・っ」

 

睦月と如月は、彼女から向けられる冷たさに困惑し、恐怖を覚えている。彼女が何を考えてこの様な事を言っているのかは完全には分からないが、流石にこれは止めなければまずい。

 

「暁ちゃん、良くは分からないけど少し落ち着いて・・・」

 

「大体おかしいのよ、大した性能も戦果も無いのに責められないなんて。頑張ってる私達が褒められないならあなた達なんて責められるのが当たり前でしょ?それで人とか物は使うんだから信じられないわ。いい加減睦月型なんていなくなっちゃえばいいのに」

 

「 」

 

私の声を遮るように続いた言葉を聞いて、頭の中が真っ白に染まる。そしてそのすぐ後、真っ白に染められた思考が黒く塗りつぶされ始める。

彼女が何でこんな事を言うのか、どうやってこの場を穏やかに治めるかと必死に考えていたが、その全てがどうでもよく感じられてくる。

 

「暁!いい加減にしないか!彼女達は何も・・・」

 

「響は黙っててよ」

 

流石に見かねたのか、響が止めようとするが暁はやめる気を見せない。

お願い、頑張って響ちゃん。私そろそろ

 

「・・・ごめんなさ・・・」「・・・」

 

あ、もう駄目だ。今にも泣きそうな睦月ちゃんと如月ちゃんを見て、私の中から何かが切れた音が聞こえた。

 

「そもそも貴方達は・・・」

 

「---口を慎みなさい、駆逐艦暁」

 

「「っ!?」」

 

私の声に体をビクリと震わせる暁。それだけでなく、この場にいた響や睦月達も体を震わせる。

 

「先からの貴方の言葉、とても無視できる物ではありません。駆逐艦睦月、駆逐艦如月両名は私にとってかけがえの無い大事な仲間です。彼女達を侮辱することは私が許しません。今すぐ先程の発言を撤回しなさい」

 

「な、何で・・・私はただ・・・」

 

「私は言い訳が聞きたいとは一言も言っていません。今すぐ先程の発言の撤回を」

 

「ぅ・・・ぅ・・・」

 

「発言の撤回を」

 

暁の目に涙が溜まっていくのが見えるが、知った事ではない。私はまだ撤回も謝罪を聞いていない。しかし

 

「暁は・・・暁は悪くないわよ!ばかぁ!!」

 

「暁!?・・・すまない、失礼する」

 

「ああもう!何なのよぉ!」

 

「はわわ、はわわわわ!?」

 

暁は叫ぶと、そのまま食堂の外へと出て行ってしまった。響と雷はすぐに彼女を追いかけて行き、電は響達と私達を交互に見つめた後、こちらに頭を1回下げてから追いかけていく。

 

「待ちなさい!話はまだ・・・」

 

「「大尉!!」」

 

「!?」

 

私も立ち上がり、暁を追いかけようとすると、睦月と如月の叫ぶ声と同時に後ろから体に軽い衝撃。見ると、睦月が私の腰の辺りを、如月が片腕を抱きかかえる様にして抑え、引っ張っている。

 

「離しなさい。駆逐艦睦月、駆逐艦如月。まだ彼女には・・・」

 

「もういいんです、大尉!やめてください!」

 

「元の大尉さんに戻ってよぉ!」

 

「元に?何を言ってるの?私は・・・」

 

「こわい大尉さんなんていやだよぉ!ぐすっ・・・おねがいだからぁ・・・」

 

「っ---」

 

私は、何をしているんだろうか。彼女達を馬鹿にした者が許せなくて、でもその為に彼女達を泣かせたら何の意味もない。

私のせいで泣きそうな睦月達を見て、頭が氷水をかけられたように冷えていくのを感じた。

 

「・・・子供ね、私も・・・」

 

「・・・たいいさん?」「大尉・・・?」

 

「手を離して、睦月ちゃん、如月ちゃん」

 

「でもぉ・・・」「でも・・・」

 

「大丈夫よ、もう暁ちゃんを追いかけて行ったりはしないわ」

 

「ほんとうに・・・?」「本当に?」

 

「ええ、本当よ」

 

「「・・・」」

 

一応信じてくれたのか、2人は恐る恐るといった感じで手を離した。私は2人の方に向き直り、かがんで目線を合わせる。

 

「ごめんなさいね。私、勝手に一人で暴走してたわ。彼女を反省させる事も出来なかったし、貴方達も怖がらせてしまったわ。本当にごめんなさい。」

 

「うぅん、大尉が睦月達の為に怒ってくれたのは分かってるから・・・」

 

「ええ、正直少し嬉しかったわ。今まで私達の為にそこまで怒ってくれた人はあまりいなかったから」

 

「ん・・・そう言ってくれると助かるわ。

 でも、本当にもういいの?今回の事は絶対あっちの方に非があるわよ?」

 

「はい、睦月達はもう慣れてるから。ね、如月ちゃん」

 

「ええ。だから、大丈夫ですわ」

 

「・・・そう」

 

「はー、すいません!かなり遅くなっちゃいました!・・・あれ、どうかしましたか?」

 

「なんでもないのです!早く食べましょう、睦月はもう限界なのです!」

 

「如月も、これ以上焦らされたら困っちゃう。うふふ」

 

「・・・」

 

そう言って、漸く来た夕張達に向けて笑顔を作る2人の顔は、私にはどうしても空元気にしか見えなかった。だが、本人がこう言っている以上私が何かをする訳にもいかず、私は何も出来ない事に対する無力感と、自分の未熟さを呪うのだった。

 

 

---

 

 

食事を終えた私達は少しの休憩を挟み、2階にある会議室へと移動を開始した。これは今回の作戦についての説明を受けるためである。と言っても、召集された提督は既に作戦についての説明を受けており、それは私も例外ではない。そして私はその時に受けた説明をそのまま睦月達に伝えてある。恐らくこれは他の提督達も同様だろう。つまりこの後会議室で行われる説明は、新しい情報が無い限りはほとんど意味のないものである。だからといって、不参加で良いと言う訳にもいかないのだが。

御身少将の性格を考えると、実りの無い話を鬱陶しい口上で聞かされるのだろう。そう考えると今から憂鬱だ。

と、そんな事を考えているうちに会議室の目の前まで来た。頭を軽く振って非生産的な思考を打ち切ってから、なるべく静かに扉を開ける。

 

「「・・・」」

 

「むっ・・・遅いぞ、雅大尉」

 

「申し訳ありません、閣下」

 

扉を開けきった途端、部屋の奥に1つだけ置いてある椅子と机に腰掛けた御身少将から不機嫌そうな声が飛んできた。それに対し謝罪を返しながらすばやく部屋の中を見る。

部屋の中には既に多くの艦娘や提督が集まって整列しており、皆一様に入ってきた私達を見ている。この中には暁達もおり、一瞬彼女を睨みそうになったが何とか堪える・・・あっ、向こうから目を逸らした。

とまぁそれはいいのだが、1つ腑に落ちない所がある。この状況、傍から見たら私達が時間に遅れてきた様に見えるだろうが、私達はこれでも集合時間の30分前にここに来たはず。早い、もしくは丁度良いと言われる事はあっても遅いといわれるのはおかしい。それに他の艦娘や提督がここまで揃っているのは不自然だ。そうなると考えられるのは私が集合時間を間違えたという事位なのだが、これも考えにくい。私は集合時間を伝えられた際にキチンとメモを取り、何度も確認したはず。伝えられた時間そのものが間違っていない限りは・・・

 

(・・・そう言う事ね)

 

くだらない。意図的にしろ、本当に間違えたにしろ、大事な作戦前にこんな子供染みた事をやってなんになるのか。私が心底呆れ返っていると

 

「まぁ、良い。さっさと並べ」

 

「はっ・・・いらっしゃい、貴方達」

 

つまらなそうな顔をした御身少将が私達に整列するように促す。表情を見るに、本当なら大きく遅刻してきた私達を晒し者にでもするつもりだったんだろう。本当にくだらない。

だが、ここで反発しても碌な事はない。大人しく睦月達を呼び、列に加わる。

 

「んんっ、では全員揃ったな。時間も・・・まぁ丁度だ。これより今作戦の説明を行う。心して聞くように」

 

やっぱり適当な時間を教えていたのか。呆れ過ぎて最早リアクションを取るのも面倒である。だが、思わず視線が冷たくなるのを誰が咎められるだろうか。

 

「んんっんんっ・・・あー、今回の作戦の目的だが、それはズバリ敵潜水艦の排除である。

 先日ここ横須賀鎮守府は敵の潜水空母の奇襲により甚大な被害を被った。何とかこれを一時退ける事には成功したものの、潜水空母の撃破そのものには失敗しており、いつまた襲撃を受けるかも分からない有様だ。また、最近の調べによりこの潜水空母の他にも多くの潜水艦がこの[鎮守府の正面海域]に潜んでいる事が判明した。彼奴らは我々の輸送船や民間の船等を手当たり次第に襲撃しており、その被害は最早無視出来る物ではない。よって今回、この潜水艦共を排除する事を決定した。この地点で何か質問はあるかね?」

 

質問の声は上がらない。まぁ現状で聞くようなものはそんなに無いだろう。突っ込みどころはあるが。

なぜ潜水艦が潜んでいる事に最近まで気づかなかったのか。キチンと哨戒をしたり、輸送船の護衛等をしていれば潜水艦がいること位はすぐに分かったと思うのだが。一体哨戒と護衛に使われるはずだった資材はどこへ行ったのかしらね?

最も、大事な作戦前にこんな事に一々突っ込んで士気を下げたりするのも馬鹿らしい。とっとと流して早めに切り上げて貰うのが一番だ。他の何人かも同じ様に考えているだろう。

 

「さて、ここでこの地図を見てもらいたい」

 

そう言って、指し棒で机の隣にあるボードに貼られている地図を指す。その地図は鎮守府の正面の海域を記した物だ。

 

「見ての通り、この地図はこの鎮守府の正面に位置する海域の物だ。そして今回の作戦海域の地図とも言える。

 この地図の所々にアルファベットが書かれているのは見えるかね?これは敵潜水艦が潜んでいると予測されるポイントを示している」

 

御身少将の言うとおり、地図の上にはA~Iのアルファベットが記されている。これはこの2週間と3日の間で敵の潜水艦を確認したポイントである。特にIと書かれている場所は襲撃を受けた日に潜水空母をロストした場所であり、A~Hに比べて大きな印が付けられていた。

 

「我々はこれらのポイントを重点的に探し、敵潜水艦を排除。そしてI地点付近にいると思われる潜水空母の撃破を目的とするものである、以上!何か質問はあるかね?」

 

「「・・・」」

 

「よろしい、それではこれから作戦を開始する。各員の健闘に期待する!準備にかかれぃ!!」

 

「「了解!!」」

 

皆が敬礼した後、我先にと駆け出していく。ついに、作戦が始まった。

 

 

---

 

 

作戦開始の令が出された以上、1分1秒でも時間が惜しい。全力で駆けた私達はあっという間に工廠に着いた。

 

「それじゃあ皆、多分私は先に出ているわ。万一の事が無い様に、皆で協力して装備を確認してから出るように!」

 

「「了解!!」」

 

皆が返事をしてから工廠の中へ入っていくのを見てから私も工廠の横にある簡易滑走路へと走る。そこでは整備兵達が忙しく動いていた。私は一番近くにいた兵に声を掛ける。

 

「そこの貴方、ストライカーとその他装備の調子は?」

 

「大尉!はっ、万全であります!」

 

「何よりね。準備が出来次第出撃するわ、装備を持ってきて頂戴」

 

「了解!

 おい!手伝ってくれ!!雨霧大尉の装備だ!!」

 

整備兵に指示を出し、彼らは工廠の中へ、私は流星の下へ駆ける。キチンと手入れをしてくれたのか外見は新品の様に綺麗になっている。また、私が出撃する際に付けていたのを見ていたのか、流星には工具箱と救急箱が既に括り付けられていた。位置はちゃんと爆弾倉に引っかからないようになっており、固定の具合も手で押したり引っ張ったりしてもビクともしない位しっかりとしている・・・よしっ

私は軽く頬を叩くと、インカムを耳にはめる。そして軽くジャンプしてユニットケージの柵を掴み、そのまま柵を飛び越えてケージの上に着地する。

 

「流星のエンジンを動かすわ。作業を行っていない人は滑走路から離れて!耳栓も忘れないように!!」

 

全ての整備兵に聞こえるよう、なるべく大きな声で指示を出す。すると整備兵達は特に慌てた様子もなく、だが素早くそれぞれの使っていた道具等を持って滑走路の上から退避する。それを見てから私はケージの上から流星へと跳んだ。

足がストライカーに納まると同時に、いつものくすぐったい感覚と共に使い魔の羽と尻尾が現れ、私を中心に魔方陣が展開される。エンジンを動かす前に改めて周りを一度を見て、滑走路上に整備兵がいないことを確認してから私はストライカーに魔法力を注いだ。

 

ドンッ!!

 

魔導エンジン始動による爆発的な音を聞いた私は驚かされた、自分で整備した時よりも調子がいいのだ。

やっぱり本職の整備は違うのね・・・

感心していると、先程の整備兵達が私の装備を持って工廠から出てきた。彼らはそのまま必死な顔で私の元へ走ってくる。

 

「持って・・・ぜぇ・・・きまし、た・・・!」

 

「ご苦労様」

 

息を切らしている整備兵から装備を受け取り、爆弾のベルト、予備弾倉、20mm機関砲と順番に身に着けていく。これで準備は完了だ。

 

「装備を持ってきてくれてありがとう、貴方達も退避しなさい」

 

「はい、あの・・・ご武運をお祈りします!」

 

「ええ」

 

そういって離れていく整備兵を見送り、魔導エンジンの出力を上げる。それに応じてエンジンの音が大きくなっていき、ストライカーを支えているユニットケージがカタカタと震え始める。

 

「ユニットケージのロックを開放!雨霧雅、流星 発進!!」

 

ケージによる支えが無くなった私は、弾かれたような勢いで前へ前へと滑走路の上を進んでいく。その間にも速度は上がり、滑走路の半ば辺りで十二分な速度になった私の体は空へと上がった。しかし睦月達を待つ必要があるので速度はこれ以上あげず、滑走路から少し離れた位置でUターン。工廠の上へ移動し、待機する。

そうして少しの間工廠を見ていると、不意に工廠の壁が左右に分かれて開き、更にその付近の床が海へと沈む。それから数秒後、艤装を付けた艦娘が工廠の奥から勢い良く飛び出してきた。

 

「・・・なんか、何度見てもこの光景は凄いわね」

 

アレを見るのは初めてではないのだが、何度見ても慣れる気はしない。航空機で言うところのカタパルトの様な物なのだろうが、それを艦でやるのはどうなんだろうか。それ以前にあの工廠はどういう仕組みで・・・

 

「っと・・・」

 

そんなくだらない事を考えていると、工廠から睦月達が飛び出してくるのが見えた。私は意識を切り替えると、彼女達と合流する為に高度を落とした。

 




ちょっとキャラ崩壊激しくなってるかもしれない上に展開が急というか雑ですね、いやはや
一応艦娘が工廠から出たのはアニメのアレを意識しています。うまく表現できなかった為オリジナル化していますが・・・(
いつもの如く意見・要望?・指摘・感想等を貰えると投稿者が喜びます、よかったら書いてやってください。
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