もし司令官がウィッチだったら(仮)   作:old.type

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データが吹っ飛んだりリアルがなんなりでモチベが消し飛び、あれ程失踪しないと言っておきながら結局失踪しちゃっていました。申し訳ありません。
とりあえず残っている所から少しだけ書き進めたのでアップします。


第五話-中編-

張り詰めた空気の中、夕張が水上を移動しながら爆雷をばら撒いていく。それはドポンという音を立てて海へと沈み、そして十数秒後、爆雷を落とした場所から爆発音と共に大きな水柱が上がった。

 

『・・・よし、こちら夕張。ソナーの反応消えました、敵潜水艦撃沈です』

 

「了解。艦隊は輪形陣へ移行、引き続き周囲の警戒をお願い」

 

『了解です!』

 

通信が切れた後、上空から夕張達がすぐに鳳翔を中心とした輪形陣を組み始めたのを確認してから地図とペンを取り出す。この地図は作戦の説明を受けた時にボードに貼られていたのと同じ物であり、その地図で言うと今私達はC地点にいる。ここまで来る間に発見・撃破した敵は潜水艦が7隻であり、多くの艦隊の中の1つでしかない私達の艦隊が現時点で7隻も発見している事を考えると、一体何隻の潜水艦が潜んでいるのか分かったものではない。

まぁその潜水艦を排除するのが今回の作戦なのだから、敵が沢山見つかる事は悪い事ではない。ただ、問題は現時点でのスコアだった。

私達の艦隊で潜水艦を攻撃するのは夕張、睦月、如月の3人である。扶桑や鳳翔も一応攻撃は出来るが、効率はあまり良くないので今回は索敵等が主だ。そして問題なのは対潜攻撃を行う前者の3人である。

 

現時点での敵潜水艦撃破数 夕張:7 睦月:0 如月:0

 

この通り、ここまで敵潜水艦を撃破して来たのは全て夕張である。睦月と如月に比べて装備が充実している夕張が2人より戦果を上げる事が出来るのは当然といえば当然だし、2人の撃破数が0なのも偶然トドメを毎回夕張が刺していると考えればありえなくはない。だが、ずっと上から様子を見ている私からすると、これは偶然だの何だの以前の問題だった。

はっきり言ってしまうと、睦月と如月の動きが明らかに悪い。具体的に言えば、夕張より近くに潜水艦の反応がありながら動けなかったり、爆雷をばら撒く場所が見当違いだったりと致命的な程である。夕張がいなかったら危険だった場面も幾らかあった。

 

「うーん・・・」

 

これはやはり、朝の件が響いているのだろう。気丈に振舞ってはいたが、睦月達はまだ子供である。あんな風に言われるのはさぞ辛かっただろうし、今も辛いだろう。

・・・彼女達を下げるべきだろうか。今の状態ではいつ大きな被害を受けてもおかしくない。最悪、被害だけでは済まない可能性もある。しかしそう考える一方で、ここで彼女達を下げてしまったら彼女達は二度と立ち直れないのではないかという考えも浮かんだ。大げさと言う人もいるかもしれないが、彼女達位の歳に起こった出来事はその後に強い影響を及ぼすのだ。

少しの間どうしたものかと考えていたが、中々答えは出ない。こういう時は・・・

 

「鳳翔、ちょっと良いかしら?」

 

『はい?なんでしょうか』

 

別の者の意見を聞くべきだろう。ここにいる者は私以外皆艦娘である為、睦月達と近い視点で考える事が出来る。

そしてこの中でなぜ鳳翔を選んだかといえば、空母という立場から私と通信を使わずに直接話をしていて最も違和感の無い存在だからだ。

 

「少し早いのだけど、一度補給をお願いできないかしら」

 

「・・・わかりました。少々お待ちください」

 

そう言うと鳳翔は、弓を持っていない右手を上に挙げて静かに目を閉じる。そのまま大きく1度深呼吸をすると、彼女の体、艤装から淡い光が発せられる。その光は鳳翔の体を伝うように海へと流れていく。そしてある程度の光が流れた瞬間、彼女を中心に大型の魔方陣が出来上がった。これは空母艦娘の能力のひとつである。

 

元々の空母艦娘は、ウィッチと共に行動をする事を前提に考えられていた。幾ら航続距離の長さが自慢の日本のストライカーとは言え、海の上をずっと飛び続ける事は燃料の面でも、ウィッチの体力・魔法力の面でも不可能であり、彼女達をサポートする存在が必要だったからだ。そしてその為にはいくつかの機能が必要だった。

第一は燃料・弾薬の補給だ。どれだけ優秀なウィッチでもストライカーの燃料や武器がなければ意味が無い。

そして2つ目は魔法力の補充である。第一の理由とは逆に、弾薬や燃料だけあったとしても魔法力がなければストライカーは動かない。こちらも何とかする必要があった。

最後に3つ目。これは元々はストライカー側に必要な機能と考えられていたのだが、ウィッチを海の上に立たせる事である。一時期は艦娘とウィッチが同じ速度で同じ方向に動き無理やり補給するというアイデアがあったが、実際にそれが出来る者はほとんどいなかった。結果、個人の技能になるべく頼らない補給を行うべく、ウィッチを海の上へと立たせる手段が必要となったのだ。

これらの条件、というより主に3つ目の条件は非常に厄介で、幾らストライカー側に改造を施しても全くうまく行かなかった。出来たとしても性能は大きく劣化し、ウィッチ達からは苦情が出る始末で計画は難航した。

そこで発想を変え、このウィッチを海に立たせるという機能を艦娘側に持たせるのはどうだという意見が出た。ストライカーに比べると装備が大型化しても問題になりにくいという艦娘の艤装に焦点を当てたのである。難航していた技術者はすぐにその意見を取り入れて装備を作った。すると時間こそ掛かったが、ウィッチを海の上に立たせる事に成功したのである。しかし、これによって欠点も生まれた。それはウィッチを海に立たせる為の装備が魔法力を持つ者でないと扱えないという事である。簡単に説明すると、この装備は使用者の魔法力を艤装によって増幅させ、その魔法力を使って特殊な魔方陣を展開させる。この魔方陣がストライカーの魔導エンジンと反応する事によって擬似的な足場の役割を果たすという代物なのだ。

この性質故に、装備を扱える者はごく一部に限られた。ある程度の魔法力に加え、艦娘としての才を併せ持つ者などそうはいないのだから。

しかし今の海軍はウィッチの数を大きく減らしており、この機能が必要ないのではないかという声も出ている。事実この機能を無くせば空母艦娘の数は今よりも増やしやすくなるのでこの意見は間違ってはいないのだろうが、ウィッチの身からすると少し寂しい気もする。

 

「お待たせしました。どうぞ、大尉」

 

「っと・・・」

 

目を開け、上に挙げていた手をこちらに向けながら言う鳳翔の言葉を聞き、私は高度と速度を落とし始めた。鳳翔の頭より少し上程度の高さまで降りた辺りで一度鳳翔を追い抜かし、そこから一気に速度を落とす。すると私は飛行に必要な速度を下回り、その姿勢のままゆっくりと垂直に落ちていく。そして丁度鳳翔と私の体が並んだ所で私は彼女の手を掴み、同時に体を上に向け、足から魔方陣の上にストンと落ちるように着地した。

 

「お見事です、大尉」

 

「ありがとう。早速だけどお願いするわね」

 

「お任せください」

 

そう言って鳳翔は艤装に結び付けられたロープを引っ張る。このロープの先にはドラム缶がいくつか結び付けられている。中身は簡単な食料や私用の燃料・弾薬、薬等だ。

彼女はその中の燃料が入っているドラム缶を取ると、蓋を開けて中からホースの様な物を伸ばす。その間に私もストライカーにある給油口のカバーを外し、彼女からホースを受け取って給油口に繋いだ。しっかりとホースが繋がれたのを確認した鳳翔がドラム缶の中にある機械をいじると、機械はヴーンという音を立てながら給油を開始した。

 

「ふぅ・・・」

 

さて、これで一応給油が終わるまでは時間が出来たのだが、どう切り出したものだろうか。そう考えていると

 

「少し、よろしいでしょうか?」

 

「え?ええ、大丈夫よ」

 

「ありがとうございます。それでは・・・そうですね、大尉さんは私に何か相談があったりしませんか?」

 

彼女の言葉に驚き、思わず彼女の顔を見つめる。私の反応がおかしかったのか、彼女は手を口に当ててクスクスと笑った。

 

「すみません、失礼でしたね」

 

「いえ、それはいいのだけど・・・よく分かったわね」

 

「補給にしては少し早いですし、それに大尉さんはずっと難しい顔をしていましたから」

 

うーん、やっぱり彼女にはかなわないわね。

 

「そう・・・なら、少し聞かせてほしいのよ。睦月ちゃん達の事なのだけど・・・」

 

私は鳳翔に先程の自分の考えを話す。

 

「・・・なるほど。正直今の事を聞いて、少し安心しました」

 

「安心?」

 

「はい、ちゃんと私達を見てくれていた事がわかったので。信じていなかった訳ではありませんが、もう少ししたら私から大尉に言おうかと考えていましたから。

 それで、睦月ちゃん達の事ですが・・・大尉の考えている事はどちらも分かりますし、どちらも間違っていないと思います。彼女位の年頃の子は色んな事に大きく影響を受けますから」

 

「そうね、痛いほどよく分かるわ」

 

「正直どちらを選んだとしてもいい影響、悪い影響はあるでしょうし・・・それなら信じてみてはどうでしょうか?」

 

「信じる?」

 

「はい、多分睦月ちゃん達は自分に自信が持てていないのだと思います。周りから否定され、やがて自分自身ですら信じられなくなってしまった。ですから、まずは私達が信じてあげたい。私はそう思います」

 

「・・・そうね、その通りだわ」

 

頭の中が、霧が晴れるかのようにスッとする。そうだ、最初から答えなんて決まっていたじゃないか。

自信を持てなくなっている子を信じてあげるのは仲間として、そしてそれ以上に年上としての義務だ。それに、暁にあれだけの啖呵を切っておきながら私が睦月達を信じないのは筋が通らない。

 

「話を聞いてくれてありがとう、おかげでスッキリしたわ」

 

「お力になれて何よりです。私の方も、出来る限りのフォローをしますね」

 

「心強いわ、よろしくお願いするわね」

 

「はい、お任せください・・・と、そろそろ補給も完了しますね」

 

ホースを見ると、送られてくる燃料の勢いが弱くなっており、やがて完全に勢いが止まって機械が給油完了を知らせる音を出す。それを聞いた鳳翔はホースをストライカーから外し、ドラム缶の中に閉まって蓋を閉めると再び海に浮かべた。その間に私もストライカーの給油口を閉じる。

 

「大尉はすぐに空に上がりますか?それともこのまま待機で?」

 

「そうねぇ、私は---」 『--ザッザザッ--』 「ッ」

 

一連の動作を終えた鳳翔がそう尋ねてきたので、それに答えようとした時、インカムから雑音が流れた。

鳳翔に喋らないように手で合図すると、彼女は声を出さずに頷き自分のインカムに集中し始めた。私も聞き逃さないように意識を集中させる。

 

『こちら駆逐艦響。行動中の艦隊並びに司令部へ』

 

通信から聞こえるのは、つい朝聞いたばかりの白い髪の少女の声。水上をある程度以上の速度を出して移動しているのか、あるいは通信機の不調なのか、その通信には雑音が混ざっている。

 

『緊急事態だ、作戦海域のG地点に敵の---』

 

瞬間、インカムから何かが爆発するような音が響の声を掻き消す。おかげで彼女の言葉の後半が全く聞き取れない。

 

『すまないが余裕が無い。すばやい判断をお願いする』

 

しかし響は言葉を繰り返す事は無く、静かながら焦りを含んだ声でそう告げて通信を切ってしまった。

 

「・・・鳳翔!」

 

「はい!」

 

鳳翔は私の声に返事を返すと同時に魔方陣を広げる。私はエンジンの出力を上げ、更に固有魔法も用いて魔方陣の上で一気に加速。魔方陣の端ギリギリで体が空へと浮いた。そのまま高度を上げながらインカムを叩く。

 

「艦隊へ!今の響ちゃんの通信の[G地点にいる敵]についての言葉を聞き取れた人は?」

 

『夕張です!すいません、聞き取れませんでした!』

 

『扶桑です。申し訳ありません、私も・・・』

 

『鳳翔です。こちらも聞き取れませんでした』

 

『・・・』『・・・』

 

私の通信に夕張、扶桑、鳳翔はすぐに答えてくれた。しかし睦月と如月からの返事がない。2人に視線を向けるが、2人とも俯いていて表情は見えない。

 

「睦月ちゃん!如月ちゃん!!」

 

『っ!?ご、ごめんなさい!聞いてませんでした!!』

 

『如月も、ごめんなさい』

 

「・・・そう。今は作戦行動中よ、もう少しだけ集中して頂戴」

 

『了解(でし)』

 

・・・通信すら聞き逃す程に注意が散漫ならば本来ならもっと強く注意をするか、今すぐ鎮守府へと返すのが正しいのだろう。だが私はもう彼女達を信じると決めた。決めた以上はしつこくは言わない、そう結論付けて私は次の問題、響からの通信に思考を移す。

[緊急事態だ、作戦海域のG地点に敵の---]この言葉に、近くで何かが爆発したような音。G地点に何かがいて響と交戦しているのは確実だろう、問題は何がいるかだ。

まず考えられるのは敵の潜水艦・・・が、これは違うだろう。今のこの海域に潜水艦は珍しくもなんともない、今更緊急事態と言って伝える程のものでもないだろう。それに通信に混ざっていた爆発音、あんな音は潜水艦が相手では魚雷の直撃を受けない限りはでない筈だ。

次に考えられるのは敵の潜水空母。無くはないだろうが、正直微妙な所だ。潜水空母は今回の作戦の攻撃目標である為、響が報告してくるのは分かる。爆発音も敵の艦載機による爆撃と考えれば納得出来る。だが、こちらもやはり伝え方が引っかかるのだ。G地点は本来敵の潜水空母がいると思われていた場所から随分と離れている為、伝えようとするのは正しい。しかし相手も動いているのだから、遭遇するポイントが違う可能性がある事は響も承知している筈。それ故に彼女の[緊急事態]という言葉が微妙に引っかかるのだ。

最後に考えられる可能性は、敵の水上艦隊。これはこの3つの考えの中で最も最悪な物である。というのも今回の作戦の目的上、参加している艦娘の殆どは駆逐艦娘や軽巡洋艦娘なのである。加えて装備を普段の物から対潜装備へと替えており、砲の数や質は低下している。更には今この海域には敵の潜水艦がうようよしており、地の利も相手にある。この様な状態で戦うなど最悪という言葉がぴったりであり、正に[緊急事態]だ。いきなり水上艦隊がここまで来ることは不可能ではあるが、それもつい最近までこの海域に敵潜水艦がいた事に気づかなかった程の手抜き索敵を考えると、事前にどこか近くに潜んでいた可能性も浮かんでくる。・・・もし、この考えが正しかったら響達は・・・

 

「・・・考えてばかりいてもしょうがないわね」

 

最悪の事態を考え始めた思考を止める為に折り曲げた指で軽く頭を叩き、溜息を1つ。

ここで考えを続け、その考えた事が当たっていたとしても、外れていたとしても、それで響達をどうにかできる訳ではない。通信が通じない以上、彼女達を助けるには行動しなくては。

 

「私達はこれより、友軍の救援及び状況の確認の為にG地点へと向かいます。緊急との事でしたが急ぎすぎず、確実に安全を確保出来る様に索敵を厳とするように」

 

『『了解』』

 

通信を終え、ストライカーの出力と高度を上げて先行する。それが索敵の為なのか、不安からくる物なのかは自分でも分からなかった。

 

---

 

「くっ・・・」

 

すぐ横に落ちた敵の砲撃とそれによって出来た波に体が倒されそうになるのを力を入れて踏ん張り、こちらも主砲を放つ。しかしこちらの砲はまだ射程外な為、弾は敵まで届かずに海へと落ちた。その事に情けなさや苛立ちを感じたが、敵の砲が再び火を噴いたのを見てすぐに回避に移る。そして数秒後、先程まで自分がいた場所に弾が殺到、大きな水柱を作った。

その音と水柱の高さから、当たったときの事を考えてしまい肝を冷やすがそれを表情に出さぬようにして再度砲を向ける。だが、先の砲撃でこちらがまだ射程外だと把握したのか敵は回避行動すら取らずに攻撃を続けてくる。その事に舌打ちをして回避に移ろうと動きだすが、その時小さな音が響の耳に入った。それは[足元]から聞こえており、非常に小さな音であったが、響はその音を聴いた瞬間強烈な寒気に襲われた。すぐに速度を落とし、足元を蹴り飛ばすようにして強引にブレーキを掛ける。するとその1秒後、何本もの白い線が響のすぐ傍を通り抜けていく。

 

魚雷だ

 

もし何もせずに真っ直ぐ進んでいたら駆逐艦である響はひとたまりも無かっただろう。自分のすぐ近くまで死が迫っていたことを響は自覚し、体を震わせ動きを止めてしまう。だがその間にも敵が放った砲弾は止まる事は無く、一切の容赦なく響に降り注ぐ。

 

「うぐ・・・くぁぁ!!」

 

砲弾が直撃した事による激しい爆発が響の艤装や防膜を吹き飛ばし、激しい衝撃は響の意識を刈り取らんとしてくる。それに対して響は反撃も回避も出来ず、ただただ打ちのめされるばかりだった。

そんな永遠とも思える一瞬が終わり、爆煙と水柱が収まる。響は立っていたが、その姿はとても無事とは言えなかった。

艤装の一部は破損し、炎によって服は燃え、彼女を守っていた防膜は今にも無くなってしまいそうだと感じるほどに弱ってしまっている。今一度同じ攻撃を受けてしまえばどうなるかは想像に難くない。

 

「流石にこれは、まず・・・いや、恥ずかしいな」

 

弱気になりそうな心を誤魔化し、敵を睨み付ける。それを嘲笑う様に敵から放たれた砲弾を見据え、どうやってこの場を切り抜けようかと思考を巡らせ、まずは回避してから考えると決めた時

 

「むっ」

 

響の視界の外から、2つの丸い玉のような物が飛んできた。

飛んできた玉のような物は敵が放った砲弾に当たって爆発を起こし、砲弾を飲み込んでしまう。

 

「これは...んっ」

 

言葉を続けようとした響に強めの風が吹きかかる。その風と共に1つの影が響の上を通り抜け、敵艦へと向かっていく。[彼女]はあっという間に前衛を勤めていた敵駆逐艦の近くまでたどり着くと体に付けていたベルトから丸い物体-恐らく爆弾だろう-を取り外し敵駆逐艦へと投げつけた。爆発音と共に悲鳴にも聞こえる叫び声をあげる敵駆逐艦を背に、[彼女]は背負っていた機関銃を手に持ち次の敵艦へと向かって弾をばら撒いていく。

 

「彼女は・・・」

 

「そこの子ー!大丈夫ー?」

 

突如現れた[女性]の動きに目を奪われていると、後ろから誰かに声を掛けられた。その声の主を確かめる為に振り返ると、1人の艦娘が手を振りながらこちらに向かってきていた。彼女は確か、軽巡洋艦娘の夕張だ、そして今敵艦の上空を飛び回っている女性の所の艦娘である。彼女達が来たということは通信を受けて助けに来てくれたのだろうか?よく見れば夕張から少し離れた位置には朝自分達の姉妹艦達と揉めていた駆逐艦娘が、更に離れた位置には戦艦娘と空母艦娘もいる。

 

「ちょっと!本当に大丈夫!?」

 

「ああ、問題ないよ。何発か貰ったけど大したダメージじゃない」

 

「本当?なら良かった!ちょっと待っててね」

 

そう言って彼女は無線機を操作し始めた。

 

---

 

『こちら夕張です、響ちゃんは無事でしたよ!』

 

「そう。分かったわ、一旦そっちに戻るわね」

 

どうやら響は無事な様だ。嬉しそうな声色で報告してきた夕張との通信を切り、そのままインカムを抑えていた手でベルトの爆弾を2つほど掴み取り敵艦へと投げつける。一つは敵艦のすぐ近くに落ちるもダメージは無し、もう一つはそもそも敵艦から大きく逸れた位置に落ちて水柱を作るだけに止まったが、これは離脱をする為の隙を作るのが目的だったので特に問題はない。現に爆弾を警戒して回避運動を取った敵からの対空砲火は薄くなっている。この程度の弾幕ならもはや後ろを確認する必要すらない、私は固有魔法の加速も使い夕張達の元へと移動した。

 

「中々酷くやられたわね。夕張から聞いてはいるけど、本当に大丈夫?」

 

「ああ、おかげさまで。装備の一部はやられたけど航行に支障はないよ」

 

そういう響の姿は砲や艤装の一部が吹き飛び、服も派手に燃えていて煤に汚れた肌を存分に曝け出しており、ぱっと見て大破レベルの被害にも見えるのだが本人が大丈夫と言っているのなら大丈夫だろう。彼女が自分や他人の命が掛かっている戦場で強がるような性格にも見えない。

とりあえず通信を送ってきた響の無事は確認出来た。しかし代わりという訳ではないが、問題も出てきた。それは

 

「予想はしてたけど、随分と大きな戦力だこと」

 

ここに来るまでに考えていた悪い予感が的中してしまった事だ。それもよりによって敵水上艦隊という一番最悪な物がである。

まず近くには響を襲っていた駆逐ロ級が2隻に駆逐ハ級が1隻、そして雷巡チ級が2隻。ハ級とチ級はこちらを見てすぐに距離を取ったことから他よりも練度が高いと見える。またここから少し離れた所には駆逐ハ級、駆逐ニ級、軽巡ホ級がそれぞれ数隻確認できた。更に擬似魔眼でもぼやけてはっきりは見えない程の距離ではあるが、その他多くの艦船も見える。全体的に機動力がある艦が多いので、潜水艦へ対応しているこちらへの奇襲艦隊と言ったところだろうか?

これはすぐに鎮守府へと報告し、対策を練る必要があるだろう。そう考えた私は無線機を弄り鎮守府へと通信を飛ばす。

 

『こちら横須賀鎮守府だ。どうかしたのかね?作戦中に無駄な通信は感心せんよ』

 

通信を受けたのは御身少将らしい。私は少将の嫌みったらしい言い方と、やはり向こうは響の通信を聞けてはいなかった事が分かったという二重の意味で顔を顰めた。

 

「緊急事態です、作戦海域G地点において敵水上艦隊を発見。軽巡洋艦、駆逐艦が殆どですがとにかく数が多く、具体的な数は不明!このままでは数時間もしない内に港への進入を許すことになります」

 

『ああ、あの駆逐艦の小娘が言っていた緊急事態とはその事か、その程度の事など・・・なんだと!?』

 

こちらの話を聞き流す気でいたのか、1人ノリツッコミめいたものを披露する御身少将。というか駆逐艦の小娘って響の事よねこれ、あの通信が聞こえてたのなら他の艦娘に指示を出すなり響に通信の内容を聞き直すなりするのが普通でしょうに。

これ以上下がりようがないと思っていた少将への評価を更に下げつつ、話を進めるためにこちらから急かす。

 

「時間がありません、直ちに対応願います」

 

『うぅむ・・・』

 

ええい、何を悩んでいるのか。この状況での対応なんてそう難しいものでもない。

まず潜水艦狩りに出撃している艦娘達の呼び戻し。このままだと敵の数に押されて各個撃破されてしまうからだ。

そして呼び戻した艦娘達をB地点、H地点を中心に配置しラインを形成して敵水上艦並びに潜水艦の足止めをする。念を入れるという意味で少数をA地点付近まで下げれば尚良いだろう。

後は前衛が時間を稼いでる間に鎮守府から重巡洋艦娘や空母艦娘等の主力艦を増援に送ればいい。いかに相手が機動力のある艦隊といえど、前衛の駆逐艦娘、軽巡洋艦娘と交戦しながら空母艦娘等の攻撃をやり過ごす事はできない筈だ。あわよくば戦力差を見せ付ける事で敵が交戦せず下がってくれる可能性もある。

陸への被害出さない為には恐らくこれが最善だろう。結果本作戦の目標である敵潜水空母には逃げられてしまうかもしれないが、民間人や鎮守府への被害を抑えるほうが大事だ。

未だに唸っている少将に対してイラっとし、もう一度急かしてやろうかと口を開きかけるとインカムの向こうから聞こえていた唸り声が止んだ。

 

『仕方あるまい・・・』

 

呟く様な声の後に通信が切れた。かと思えばすぐにまた通信が繋がった。響と夕張がピクリと反応した事から、恐らく私個人への通信から作戦に参加している全ての艦娘への通信に切り替えたのだろう。

 

『えー、諸君、たった今作戦海域G地点にて敵の大規模水上艦隊を発見したとの報告があった。諸君らにはこれを迎撃すべく本作戦を一時中断し、[鎮守府正面]まで後退してもらう、その後の事はまたこちらから指示を出すので従うように』

 

「なっ・・・!?」

 

今なんと言ったかあの男は、鎮守府正面と言ったか?

鎮守府正面と言えば文字通り本当に港のすぐ目の前だ。軽巡洋艦の主砲どころか駆逐艦の主砲すら届く目と鼻の先。そんな位置での迎撃など正気の沙汰ではない。

ふざけた指示を出すだけ出して切ってしまった御身少将へすぐに通信をかけ直す。

 

『ええい何だね!指示は出したぞ』

 

「あのような指示は了承しかねます!鎮守府正面まで下がってしまえば陸が敵の主砲の射程に入ります。B地点やH地点等のもっと離れた位置を中心にラインを作り、待機させている主力艦をもって迎撃すべきです!!」

 

『潜水艦がうようよしているような所に大事な主力を送り込めるか!被害が出たらどうしてくれる!!』

 

「それを承知の上での主力艦でしょう!?少将は少量の資材と陸の安全とどちらが大事だと考えているのですか!!」

 

『う、うるさい!元はと言えば未だに潜水空母を撃破できていない貴様らの責任だろうが!どうしても援軍が欲しかったら潜水空母を撃破して見せるんだな!!』

 

御身少将は子供の癇癪の時の様に喚くと通信を一方的に切ってしまう。しかしこちらも引く訳にはいかないので、まだ話は終わっていないと通信をかけ直す。が、何度試しても通信は繋がらない。

 

「もう!!」

 

この場にいない無能への怒りを抑えきれず吐き捨てる様に叫ぶと、夕張と響がビクリと震える。申し訳ないとは思うが今は謝る余裕もない。

このままでは絶対にまずいのだ。そんな事は分かりきっているけど、私達だけではどうしようもない。大人しくあの指示に従うしかないというの・・・?

絶望に近い気持ちになり頭を抑えていると、後ろからいつの間にか追いついたのか睦月と如月が恐る恐ると言った様子で声をかけてきた。

 

「あの、大尉さん、その・・・」

 

「今の通信って・・・」

 

彼女達の声は震え気味だ。目に映る敵の数を見て、指示通りに動いた結果どの様な事態になるのか予想できてしまったのだろう。その考えを私に否定して欲しくて私に声をかけたのだろうが、残念ながらその考えは正しく、私は首を横に振る事しか出来ない。

 

「そんな・・・」

 

「大尉、何とか出来ないの・・・?」

 

如月の顔が一層暗くなり、睦月が縋る様な声で聞いてくるが、私にだってどうすればいいのか分からない。

せめて主力艦が前に出てきてくれればラインが多少後ろのほうであっても何とか被害を抑えられるかもしれないが、その為には潜水空母の撃破が必須。潜水空母を倒す為には対潜水艦用の装備を持った艦娘が潜水空母の元にたどり着かなくてはいけなくて

・・・

あった。もはや作戦と呼べる様な物ではなく、博打もいい所なやり方ではあるが、たった一つだけ方法が。

内容は単純だ。対潜装備を持った睦月、如月、夕張を敵潜水空母がいると思われるI地点へと向かわせ、敵水上艦隊が鎮守府正面に着くまでに撃破する。これだけ

勿論普通に向かわせただけでは撃破はまず間に合わないだろう、どうしたって敵水上艦隊を食い止める者が必要になる。それを、残った私、扶桑、鳳翔が担当する。無理無茶無謀、多勢に無勢、衆寡敵せず、普通に考えればただの自殺行為にしかならないだろう。

更にもし仮に私達が水上艦隊を食い止めたとしても、絶対にI地点に潜水空母が潜んでいる保証はない。あくまで潜水空母が潜んでいるエリアがI地点だと予測されているだけだからだ。

それに、そもそも睦月達がI地点にたどり着く事すら出来ない可能性も・・・いや、それはないか。睦月達なら絶対にたどり着けるだろう。そう信じられる。

ともかくこんな穴だらけの作戦、いわば作戦もどきだ。こんな物を提案するのは上に立つ者として失格なんだろうとは思う。でも、少しでも上手くいく可能性があるのなら私は---

 

「何とかなるかもしれない、って言ったらどうする?」

 

私の言葉に睦月と如月は勿論、夕張や響までもが弾かれた様にこちらの顔を見つめてくる。そんな彼女らの顔を見つめ返した後、軽く深呼吸をしてから言葉を続ける。

 

「正直作戦となんて呼べた物ではないのだけどね。

 簡単な事よ。敵水上艦を足止めして、その間に潜水空母を撃破する。後はその事を報告して鎮守府から主力艦を前に出して貰う。それだけの事よ」

 

「はぇ?」

 

「え、えぇ・・・ちょっと待ってくださいよ」

 

私の言葉を聞いて睦月が変な声を漏らし、夕張が微妙な顔で突っ込みを入れてくる。まぁ2人の反応は当然だし、私も同じ事を言われたら似た様な反応になるとは思う。

 

「確かにそれが出来れば一番いいに決まってますけど、その為の戦力なんて」

 

「戦力ならあるじゃない、此処に」

 

私の言葉に夕張達は辺りを見渡す。今此処にいるのは私、夕張、睦月、如月、響、それからまだ離れた位置にいる鳳翔と扶桑。それから先程から私達を警戒しているのか睨み合いになっている敵駆逐艦と軽巡洋艦だけ。それらを一通り見て私の言葉を理解したのか、夕張の顔が引きつったものに変わった。

 

「もしかして・・・」

 

「ええ 私達の艦隊を2つに分け、敵水上艦隊の足止めと敵潜水空母の撃破を同時に行う。これが作戦よ」

 

これを聞き、響を除いた3人の顔が青くなった。無茶だと思ったのだろう。だが私はこれに更に無茶を重ねる。

 

「もしやるとすれば、敵水上艦の足止めを行う者をA班、潜水空母を撃破する者をB班として、A班には私、扶桑、鳳翔を B班には夕張、睦月、如月を割り当てるつもりよ」

 

「いやいやいや、何ですかその割り当て方!それじゃA班の人は死にに行く様なものじゃないですか!」

 

先程よりも強く夕張に突っ込みを入れられる。まぁそれもそのはず。

本来戦艦や空母は余程特別な事がない限りは駆逐艦等の護衛の下で運用するのが常識である。そうしなければ潜水艦や小回りの聞く駆逐艦等に迫られた際に対処しきれないからだ。

今回のような敵潜水艦が潜んでいる海域で、駆逐艦、軽巡洋艦等の足の速い敵を相手にするという状況で護衛の駆逐艦・軽巡洋艦を用いないのは夕張の言うとおり自殺行為そのものである。

 

「確かに貴方の言う通りよ。でも、潜水空母を撃破するという目標を達成する為にはこれが一番成功率が高い分け方だとも思ってる」

 

敵の水上艦を足止めするには火力のある扶桑と鳳翔は頼もしく、参加してくれると言うのならまずA班だろう。

私は一応爆撃が出来るが、補給が無ければたった1度や2度の使い捨てである。どちらかというと広い範囲にばら撒く事が大事な対潜攻撃には向いていないだろう。という訳で私もA班である。

となると残りの3人をどうA班とB班に割り振るかという話になるが、当然数が多ければ多いほど作戦の成功率は上がるだろう。ならば割り振れる全ての戦力をB班に割り振るべきだと私は考えた。結果A班は相当な無茶をしなければならなくなったが、この作戦自体が相当な無茶の塊なのだ。今更少しくらい無茶が増えたところで何も変わらない。

 

「・・・本気なんですか?」

 

「ええ、尤も強制する気はないわ。私自身馬鹿げた案だとは思っているから。でも同時に、私はこの馬鹿げた考えを本気で成功させようとも思ってる。」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

私も夕張も、お互いの目を見つめ合う。夕張は私の真意を確かめるように、私はそんな彼女の目に答える様に。

しばしそうしていると、不意に夕張が溜息を吐き、呆れた様な笑みを浮かべた。

 

「わかりました。大尉が本気でそう言うのなら信じますよ。是非やらせてください」

 

「・・・ありがとう」

 

夕張が賛成してくれた事でB班に1人は確保出来た。A班は最低でも私がやるので、これで最低限作戦の実行は可能になった。と言っても本当に最低限なので、もし実行するのであれば他の子達も参加してくれると有難いのだが・・・

そう考えながら睦月と如月に顔を向けると、2人は顔を逸らしてしまった。

 

「睦月ちゃん達はどうかs「「無理です!!」」・・・そう」

 

私が言い切る前に、2人の悲鳴の様な声に遮られてしまった。

拒否される事自体は予想していたが、思っていた以上に強い拒絶である。しかしこれだけで引く訳にはいかない。何故なら

 

「理由を、聞かせてもらえるかしら?」

 

まだ断る理由を聞いていないからだ。作戦が無謀だと考えて断ったのならそれでいい。そう考えるのは至って普通であり、極々当然の事だからだ。

だが、もし断る理由が他の事、鳳翔の言っていた[あの事]なら・・・

 

「だって、こんな作戦無謀よ・・・たった3人であの数を止めて、その間に潜水艦をやっちゃうなんて、出来る訳ないわ・・・」

 

「他の人達、皆下がっちゃうんですよね?なら、睦月達も下がりましょうよぉ、大尉さん達だけが危ない事なんてする必要ないって、思います・・・」

 

・・・どうやら考えすぎだったかもしれない。彼女達の言い分は至極真っ当な物だった。こちらの心配までしてくれている様であるし、そう言う事ならば仕方がないだろう。

睦月と如月が反対したため、B班は夕張のみとなった。一応作戦を実行するだけなら可能だが、彼女1人に潜水空母の元へ行かせるなどそれこそ自殺行為である。となれば悔しいが私達も鎮守府正面まで撤退するしかないだろう。

そうと決まれば動くのは早いほうがいい。私はまだ少し離れていて素の声では届かない扶桑と鳳翔を含め全員に後退の指示を出す為に無線機を動かし、口を開こうとして

 

「それに、その作戦って潜水空母をやっつけなきゃダメなんですよね・・・そんなの絶対に無理ですよ」

 

睦月の言葉を聞き口を噤んだ。

これも作戦の問題点を言っている、はずなのだがその言い方が妙に引っかかった。まるで何かを諦めている様な言い方なのである。

作戦に対する諦め?それとも陸へ被害が出る事への諦め?・・・どちらも違うだろう。彼女の言葉には諦めこそあれど悔しさという感情は感じられない。本当にただただ諦めている。そんな印象だ。

・・・もしかして

私にそう思わせるのに、その言葉は十分だった。そして睦月も、まるで私の考えに対して答え合わせをする様に言葉を続けた。

 

「だって、その潜水空母をやっつけなきゃいけないのって、睦月達なんでしょ?よりにもよって、私達・・・そんなの失敗するに決まってるじゃないですか!」

 

ああ・・・やっぱり

 

-『多分睦月ちゃん達は自分に自信が持てていないのだと思います。周りから否定され、やがて自分自身ですら信じられなくなってしまった』-

 

鳳翔の言葉が頭に浮かぶ。どうやら、先程までの考えは考えすぎでも何でもなかったようだ。

この睦月の言葉を聞いた以上、黙って後退の指示を出す訳にはいかない。

 

「それはどういう事?戦力不足という意味かしら?」

 

「不足も不足です!夕張さんはいいですよ!色んな装備を持ってますし、強いですし、頼りになります!

 でも・・・後の戦力が私達だけなんですよ?役立たずの、睦月型の私達!こんなのじゃどんな作戦だって上手くいく訳ありません!!」

 

「朝の事を言っているの?あれは彼女達の言いがかりよ、気にする事なんてないわ」

 

「朝だけじゃありません!これまで、いろんな人に、それこそ初めて会った人にだって、お前達は弱い、役立たずだって、ずっと・・・」

 

「・・・少なくとも、私は貴方達に対してそんな風に思ったことはないわ」

 

「嘘です嘘です嘘です!前信じていた人だって、同じ事を言っておいて影では悪口ばっかり・・・大尉だって本当はそうなんでしょ!!」

 

恐らく前信じていた人というのは私の所に来る前の提督の事だろう。どうやら、こちらの想像以上に彼女達の中の闇は深いようだ。如月も睦月の様に声を張り上げることこそしないが、その目には睦月と同じ諦めと疑いの色が見える。

これは言葉だけで解決するのは無理だろう。私が何を言った所で今の彼女達へは届かない、むしろ更に頑なになってこちらを拒絶するかもしれない。

・・・それなら

 

「・・・ふぅ」

 

私は一度目深呼吸をしてから目を閉じ、意識を集中させて頭の中で使い魔の絵を描く。

儀式によって私と使い魔との繋がりが強くなり、同時に魔法力も本来より更に大きいものとなった。いつもならばこの魔法力を使い身体を強化するのだが、今回はどこも強化せず、魔法力を体の内から外へと吐き出す様に放出する。

これは、まだ魔法力を制御しきれていない新米ウィッチがよくやる失敗を意図的にやったモノだ。魔法力は必要以上に消費されるのに肝心の魔法はほとんど発動していない状態。目に見える特徴として、体を包む魔法力の光が普通のそれに比べて倍どころでは無いほどに強くなるという点がある。

結果私の体は、私の魔法力と同じ明るい緑色の光を纏う事になった。

 

「------------!!!」

 

私の行動に反応したのか、これまで睨み合いをしていた敵艦達が叫び声の様なものを上げた。それと同時に主砲の発射音-比較的近い所から聞こえたので恐らくロ級とハ級の物だろう-も響く。

夕張と響が「危ない!」と言って回避動作を取ろうとするが、私はその場から動かず、振り返ることもせずただ片手を後ろへ向けてシールドを展開した。直後に爆発音と同時に衝撃が伝わるが、ただそれだけだ。

シールドを解除し、暗い目をした睦月と如月に近づく。そして手を伸ばし、2人の顔に手を添えるように触れた。2人は手が触れた瞬間に体を震わせ、後ろへ下がって逃げようとするが私も前に動く事によって離れることを許さない。少しの間そうしていると、私の身体から出ている魔法力の光が、2人に触れている手を伝って彼女達へと流れていく。

これでいい、私はより多くの光を2人へ流すために更に多くの魔法力を体から放出し続けた。

 

昔、それこそ私がウィッチになったばかりの頃に聞いた事がある。

ウィッチとは魔法力を持つ者を指し、魔法力とは少女が持つ力だという話だ。

その魔法力とは只の少女を特別な存在であるウィッチにする特別な力だ。それぞれ力の方向性や大きさ等にも個性が現れ、似たようなものはあれど同じものは決して存在しない。となれば、魔法力とはウィッチであるその少女自身を表すものである、と。

この話は研究などで実証された訳ではないが、実際に魔法力はウィッチの体調や感情等で大きくもなれば小さくもなり、優しくもなれば激しいものにもなる。なので私はこの話をある程度信じている。

だから、心を閉ざしかけている睦月と如月に私自身を表す魔法力を直接送り込む事で私の想いを伝える。これが私の考えだ。

正直うまくいくかどうかなんてわからない。彼女達はウィッチではないし、魔法力についてもあまり詳しく知らないだろうから。私の意図が分からず無駄に終わってしまうかもしれない。

だがやらずにはいられない。心を閉ざして絶望するのは彼女達にはまだ早すぎるから。そんなのは余りにも悲しすぎるから。まだ[彼女達には]信じてくれる人達がいるという事を私は伝えたい。そう想いながら私は魔法力を流し続けた。

 




いや本当に今更どの面下げてって感じですねすいません・・・
ここから先は正直厳しいと思いますが何とか5話は完結させたいです。まだ後編すらかけてないので暇を見て書かねば・・・
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