でもごめんなさい。一発ネタなんであんまりその辺考えてないんです。
冬木市新都に破壊神が降臨した直後、冬木ハイアットホテルの最上階に宿泊していたケイネスは、異常な魔力の気配を探知して即座に魔術礼装を起動させた。ケイネスは、その魔力の気配がこの冬木の地に君臨したサーヴァントのものであり、そのサーヴァントが臨戦態勢に入っていることを理解したのだ。
「ソラウ!!ランサー!!」
ケイネスは別室で戯れている自身の婚約者とサーヴァントを呼びつける。彼は、サーヴァントが怯えるという理由で婚約者がサーヴァントとともに過ごしている部屋に勝手に入らないようにキツく注意されていたのだ。そのため、非常時にもありながらまず婚約者の機嫌をそこねないように声をかけるという一手間をかけなければならなかった。
ソラウに一声かけたケイネスは、ソラウが出てくるまでに身支度を整え、準備していた魔術礼装を持ち出す用意をする。魔力の気配からして敵サーヴァントはかなり近距離にいると思われ。最悪の場合このホテルもろともに攻撃されると考えたためである。
「ソラウ!!ここは危険だ!!」
いつまで経っても返事一つしない婚約者に流石に痺れをきらしたケイネスはソラウの部屋のドアを乱暴にノックするが、それでもソラウからの返事はない。だが、これ以上時間をかけていては自分たちの身も危険だ。
ケイネスは非常事態ということを免罪符に、鍵のかけられたドアを
「ソ……ソラウ!!」
そこにあったのは心臓のように拍動する何かのサナギ……そしてその中に取り込まれて眠る婚約者の姿だった。
「ランサー、貴様!!」
婚約者を包み込むサナギのような物体が、ランサーの変化した姿であることは、パスで繋がっているケイネスには即座に理解できた。そして、ランサーが今ソラウに危害を加えようとしていたことも。
現在の状況が、敵サーヴァントが近くにいるという非常事態であることはケイネスとて百も承知だ。だが、ケイネスにとって最も大切な人はソラウに他ならない。それ故に、これからの戦略を左右する貴重な令呪の使用をもケイネスは躊躇わなかった。
「令呪を以って我が傀儡に命じ」
だが、彼が婚約者の部屋に踏み込むのはいささか遅かった。既にランサーはソラウという人間の遺伝子を取り込み、さらに彼女との神経系統の融合を試みることによって染色体構造を大幅に変化させた後だったのである。確かに変異は未だ不完全ではあったが、それでも人間一人を屠ることは容易いことであった。
そして、生前の経験から、ランサーは自身が無防備となる変異中に自身のパートナーを奪還される危険性を知っていた。それ故に、もしもパートナーとの融合中にそれを妨げるものが顕れたときに、即座に排除できる用意を整えていた。
それが、一本だけ変異させずに残していた触手だ。ランサーは自身のマスターが融合を妨げようとする前に絶対命令権である令呪を封じるべく、あらかじめドアの傍まで伸ばしていた触手でケイネスの右腕を斬りつけたのである。
令呪の刻まれたケイネスの右手は触手によって斬り飛ばされ、ケイネスの令呪は不発に終わる。
「な……!!
右手を失ったケイネスは、
「
ケイネスは
「くっ!?」
ケイネスはソラウを傷つけぬように間一髪のところで
ランサーはそれを理解していたわけではなかったが、本能としてなんらかの攻撃をした後には隙ができるということを理解していた。そのため、本能的に反撃に転じ、ケイネスに対して触手を突きたてた。
ケイネスは自身の胸に突き刺さった触手を呆然と見つめる。
「バカな……この、私が……?」
何故こうなったのかケイネスには分からなかった。己に足らぬ武勲をあげるべく聖杯戦争のシステムにすら手を加えて参戦したはずなのだ。なのに、どうして戦いもしない内に敗れるのか、どうしてこんな結末になってしまったのか、何が間違っていたのか、婚約者はこの後どうなるのか……全て、ケイネスには分からなかった。
だが、一つだけケイネスにもすぐに理解できたことがある。
――自分の末路である。
その10分後、周囲を結晶に覆われつつあった冬木ハイアットホテルの屋上は爆発四散し、そこから触手の間に膜を張った巨大生物が飛翔した。
ホテルの周囲は突如として乱立した結晶塔から逃げ惑う人々であふれており、パニックになった彼らの中で残されたホテル屋上の残骸から紺の装束に身を包んだ隻腕の金髪の木乃伊が落下したことに気づいたものは、誰一人としていなかった。
そして、飛翔した巨大生物はその進路を北東にとった。この場にいる結晶塔を作り出したこのサーヴァントには今の自分では逆立ちしても敵わないことをランサーは理解しており、その細胞を摂取することも不可能であると判断したからである。
だが、同時にランサーは北東には自身と共鳴する計り知れぬほどの憎悪を抱く何かがいることを、そしてそれが自身を更なる高みへと導く贄であることを察知していた。ランサーは自身の更なる進化のために、超音速の速さで飛んだのである。
上空を我が物顔で飛び回る金色の三頭龍を見たとき、綺礼はその力に絶句した。これは、真祖にも匹敵、いや真祖をも上回る強大な力だと瞬時に理解したからである。未遠川を挟んだ反対側に存在する巨大生物を見たときもその圧倒的な力に震えたが、こちらの三頭龍もそれに勝るとも劣らない。
「時臣師は、正面からあの怪獣を打破るつもりなのか……」
綺礼は今がチャンスだと判断した。自身が聖杯戦争に参加した真の目的、衛宮切嗣との接触を果たせるのは、父と師の注意が綺礼から逸れている今しかないと考えたのだ。幸いにも、既に上空に20匹ほど放っていた自身のサーヴァントの宝具が衛宮切嗣の姿を捕捉している。
彼のサーヴァントは太古の昔に生息していた巨大蜻蛉であり、蜻蛉は総じて動体視力はいいものの視力そのものは低いために衛宮切嗣を見つけ出すには非常に苦労したのだが。
「アサシン。貴様の部下のメガヌロンを5体ほど先回りさせて衛宮切嗣の周りを包囲しろ。ヤツとの対話に邪魔者は入れたくない」
綺礼の背後の電柱に止まっていたアサシンが了承したことをパスを通じて理解した綺礼は、宿敵の潜む深山町にビジネスホテルへと足を向けた。同時に、その地下でいくつかの異形の影が蠢いた。
《サーヴァントのステータスが更新されました》
クラス:アサシン
マスター:言峰綺礼
真名:メガヌロン/メガニューラ
性別:雌
体長:5m/体重:1t
属性:中立・悪
パラメーター
筋力:D
耐久:C~E
敏捷:E~B
魔力:D
幸運:E
宝具:A
クラス別能力
気配遮断:A+
サーヴァントとしての気配を遮断する。完全に気配を絶てば発見することは不可能になる
ただし、自ら攻撃を仕掛けると気配遮断のランクが低下する
保有スキル
千里眼:C
視力の良さ
遠方の標的の捕捉、動体視力の向上
変化:A
文字通り変態する
メガヌロンからメガニューラへと羽化することができる
宝具
ランク:E
種別:対人(自身)宝具
レンジ:―
メガヌロンからメガニューラに羽化したときに使用可能となる宝具
産み落とした一つの卵が一万個まで分裂し、そこから新たに一万体のメガヌロンが孵化する
その内、1000:1の確率で次代のメガヌロンを産み落とす雌が生まれる
残りのメガヌロンはメガニューラになると、エネルギーを尾部の針で吸収して
ランク:A
種別:対軍宝具
レンジ:2~150
最大捕捉:100人
メガニューラの雄からエネルギーの供給を受けて成長、巨大化して誕生する
自分たちの種族の繁栄の邪魔となる存在を片っ端から排除する本能のみに従って行動する
武器は巨大なはさみと衝撃波、超高周波、尾部の針
尾部の針は突き刺した相手からエネルギーを吸い取る能力を持つ
《捕捉》
ゴジラVSメガギラスに登場するメガヌロン
空の大怪獣ラドンからのグロメーカーとしても有名
下水道に潜んで敵を狙うため、アサシンの適正があると判断した
他にも、水族館でこっそりと魚を食べたデストロイアや、水中生息時に暗躍したヘドラ、ゴジラアイランドでは殺し屋をしていたガイガンなどの選択肢があったが、ガイガンはセイバーで使ってしまったし、師である時臣よりも弱いサーヴァントにしなければならなかったのでコイツとなった。
まさかの、宝具に使役される本体という本末転倒なオチだが、仕方がない。
ケイネス先生はあの貧乳美人マジシャンと同じ運命を辿りました。