やめて!!冬木市の復興予算はもうゼロよ!!   作:後藤陸将

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お久しぶりです。
チョッといいことがあったので、テンションにまかせて書きました。


邪神降臨

「出雲駐屯地の第13偵察隊からの報告が届きました!!」

 第13偵察隊は、冬木市に航空偵察に出した航空機などからの連絡が一切ないという事態を受けて第13旅団が陸路から派遣した偵察部隊である。彼らによって初めてもたらされた冬木市の具体的な状況報告に司令部員たちの視線が集まる。

「冬木市の全域が現在、EMPの影響と思われる強力な通信障害が発生している模様!!無線通信が途絶え、電子機器も正常に作動しないとのことです。現在、第13通信隊が冬木市南西に有線通信を設置した観測所を設営中!!」

「……F-15の連絡が途絶えたのも、EMPで機内の電子機器がイカれたせいか。クソ!!だからF-15全機を対EMP装備に改装しろとあれだけ言ったのだ!!」

 三雲空将は、思わず机に拳を叩き付ける。

「第13通信隊の観測所には、いつごろ繋がる?」

 黒木の問いに、報告した通信士は即答した。

「後、20分ほどで繋がるとの報告を受けています!!」

「繋がったら、すぐにこちらに通信回線を回してくれ」

 黒木は思案する。この強力なEMPは十中八九怪獣が発しているとみていいだろう。しかし、正直言って怪獣がEMPを使うことなど完全に予想外だ。EMPの影響範囲次第では、近接航空支援も難しくなるし、地対地ミサイルなどにも影響がでかねない。

 使える兵力がさらに限られると、状況はかなり厳しいものになるかもしれない。

 考えに耽る黒木の隣で、山地が受話器を取る。首相官邸からの連絡は、全て防衛事務次官から彼に送られる手筈になっていた。

「うん……そうか。分かった」

 防衛事務次官からの連絡を受けた山地は困惑と落胆の入り混じった複雑な表情を浮かべながら黒木に向き直った。

「黒木君、防衛事務次官からの連絡だ。総理が倒れたらしい」

「は?」

 黒木も、彼の言葉が理解できずに顔を顰める。

「事務次官曰く、総理は怪獣が冬木に立て続けに出現したショックで卒倒してしまったらしい。たたき起こしても、わけのわからない現実逃避をし始める始末で、挙句の果てには「怪獣対策は全部自衛隊に任せる、被害が出たり失敗したりしても私は知らない」などと言い始めて、正式にそれを防衛大臣に命令した後に病院に向かったらしい」

 黒木も一瞬、呆れて声も出なかった。まさかの自衛隊への全権白紙委任だ。こんな無責任な首相を、烏合の衆である政党連合を支持した国民の失策のツケをこんな国家存亡の危機に払わされるとは。そもそも、文民統制(シビリアンコントロール)はどうなっているのだろうかと考えさせられてしまう。絶対にやるつもりはないが、あの無能は自衛隊が関東軍や戦前の陸軍のようになったとしても構わないと考えているのだろうか?

 だが、これは黒木にとっても悪いことばかりではない。これで現政権の無能政治家共の横槍は一切気にすることなく怪獣撃滅作戦を遂行することができるのだ。冬木市を犠牲にする作戦に反対することは必死の無能政治家への対応をしなくていいということは彼らの精神衛生上の慶事であった。

 責任は全て取らされることになるが、黒木はもとよりその点は気にしていない。彼の仕事は敵に勝つか負けるかであり、国を守る防人として敗北の責任を取ることは当然のことであるからだ。

「白紙委任というわけですか、都合がいいですね。下手な介入がないだけ、やりやすい」

 黒木は怪獣たちの位置がマーキングされた日本地図に視線を向ける。現在のところ、冬木市の未遠川を挟んで怪獣が一体ずつ、そして冬木市上空にレーダーで確認された怪獣が二体、冬木市から離れて東に向かった怪獣が一体。最後に、核燃料を食べつくして進路を西にとったゴジラが若狭湾沖。

 ゴジラが出現時のように海上自衛隊の哨戒網を掻い潜って移動することが最悪の事態であるが、既に岩国基地からP-3Cを一機ゴジラ哨戒に割いているし、舞鶴の第三護衛隊群からも護衛艦一隻を割いてゴジラの目視追跡を行わせている。

 欲を言えば哨戒ヘリも回したかったが、舞鶴に無い以上は仕方の無いことだ。いくらなんでも対潜哨戒機と護衛艦が付きっ切りで監視していれば逃げられることはないと通常は判断されるだろうが、黒木は万が一のことも考え、さらに哨戒機2機と潜水艦一隻をゴジラの追跡に当てるように海上自衛隊に指示していた。

 ――上手くゴジラを冬木に誘導できれば、冬木に陣取っている怪獣4体を駆逐することができる。しかし、問題は冬木から東に発った怪獣だ。この怪獣に暴れまわられれば、航空自衛隊だけでは対処しきれない可能性もある。となると、この飛翔した怪獣を如何にして冬木、又はゴジラに向かわせるか……。黒木は思案する。

 だが、彼の心配は杞憂だった。思案中の彼の耳に、レーダー観測員の報告が飛び込んできたからだ。

「冬木市を飛翔した巨大生物が針路を変えました!!このまま進みますと、数分でゴジラと接触します!!」

 人間がどのように怪獣同士をぶつけるかを考えるまでもなく、怪獣たちは自身の目的や本能のために互いに殺しあう運命にあることなど、黒木が知る由もないことであった。

 

 

 核燃料を摂取し、マスターの雀の涙のような魔力に頼らなくても存分に戦えるようになったゴジラは、針路を西に取っていた。雁夜の指示などゴジラが聞く耳持つはずもないし、ゴジラは元々複雑な理性など持ち合わせてはいない。狂化しているといっても、生きていたころとそう変ってはいなかった。霊体化した方が魔力の節約になるのにも関わらずゴジラが霊体化しない理由も、ゴジラの方にあったのである。

 そもそも、西に向かったのは、細胞の共鳴する相手が、宿敵が、討つべき敵がいると本能が語りかけていたからだ。ゴジラの内で怨嗟の声をあげている数百万の怨霊たちは、ゴジラの針路を東京に向けようとするが、ゴジラはそれよりも破壊本能を優先しているようだ。怨霊たちの思考のベクトルも破壊に偏っている影響かもしれない。

 その様子は、ゴジラの後方10kmの地点にいる第三護衛隊群の護衛艦『みねゆき』と、上空を旋回しているP-3C対潜哨戒機が監視している。護衛艦の位置は海面にゴジラが上半身を出さない状態において護衛艦の艦橋から目視できるギリギリの距離だ。

 本来であれば、熱線による攻撃を避けるために艦載ヘリコプターによる哨戒を実施して護衛艦は水平線から離れるべきであるが、199X年時点で舞鶴には海上自衛隊の航空基地が存在していなかったため、第三護衛隊群の護衛艦搭載ヘリコプターは千葉の館山航空基地に常駐せざるを得ない状態にあった。

 そのため、危険を覚悟で護衛艦が夜間でも目視できる距離から追跡する危険を冒さざるをえなかったのである。しかし、海と空からの追跡態勢はゴジラの動きを逐一本部に報告することを可能としていた。

 

 不意に、ゴジラが上空を見上げる。夜の日本海を見下ろす空には雲海が浮かんでいるだけで、それ以外の存在は視認できない。しかし、ゴジラの本能は「そこに敵がいる」と警鐘を鳴らしていた。

 直後にゴジラの元に、雲海から4条の光線がシャワーのように降り注ぐ。光線というよりは、メスと表現した方がいいかもしれないその鋭利な光の刃の大半は海を裂くだけであったが、一条の刃が一瞬だけ命中し、ゴジラの頑強な表皮の一部を切り裂くことに成功する。

 さらに、見境なしに放たれた光の刃は上空を旋回していたP-3Cにもおそいかかり、その胴体部を斜めに切断した。胴体を二分されたP-3Cは錐揉みしながら海面へと落下し、大きな水柱を2本噴き上げた。幸いにも、『みねゆき』はゴジラから10km離れていたために光の刃をその艦体に受けることはなかった。自衛隊員の戦死、戦闘による装備品の喪失は、1966年の対ガイラ戦以来およそ四半世紀ぶりのことであった。

 一方、表皮を浅く切り裂かれたところで、ゴジラは動じない。この程度の傷は、ゴジラにとってはかすり傷にすぎないからだ。自分に手を出した存在を敵だと判断したゴジラは背びれを発光させ、口内に青白い光を溜める。そして、ゴジラは狙いを光の刃の発射点である雲海の中に定めて怨嗟咆哮・放射熱線(アトミック・ブレス)を放った。

 青白い光の筋が雲海の中に飛び込み、その熱量で雲海の中にぽっかりと穴をあけるも、雲海の穴の奥には夜空が広がっているだけでそこには敵の姿はなかった。しかし、その直後、ゴジラが眼を凝らしている穴の奥に数本の触手が踊りだす。そして、穴を通して放たれた光の刃がゴジラの顔面に直撃する。

 理性など存在せず、光の刃を受けてもかすり傷程度にしかならない防御力を有しているゴジラであっても、生物としての特性を持ち合わせている以上は眼を狙われて怯まずにはいられなかった。たまらず頭を下げて日本海に潜り始める。

 その影は虹色の膜を広げながら光の刃を4本の触手から放ち、超音速で急降下して僅か10秒ほどで海面に到達する。そして、そのまま海面に半身を沈めたゴジラに体当たりをきめた。突然の衝撃に怯むゴジラに対し、それは背後から触手を突きたてて細胞を摂取する。

 ゴジラに触手を突き立てながら、鳥を思わせる鋭利なフォルムが海面に姿を見せる。そのフォルムは10km先にいた『みねゆき』の艦橋からも見えた。よく見ると、人間によく似た体つき、夜の闇に映える身体の所々に存在する発光体に、鳥の頭を彷彿とさせる頭部、そしてどこか優美さをも感じさせる甲冑のような胴体――怪獣というよりは、神に近しいものに見える生物がそこにいた。

 その生物の名は、ランサーのクラスで召喚されたサーヴァント、柳星張(イリス)。かつて邪神とも呼ばれた超古代先史文明の作り上げた戦闘生物であり、人類に滅びをもたらす存在であった。




黒木さん、VSビオランテの時より胃に多方面からのダメージ受けてます。仕方ないね。

そして、ついにゴジラとイリスが相対します!!

ゴジラVSイリス
ウルトラセブンVSスペースゴジラ
モスラVSキングギドラ
ガイガンVSメガギラス
……最後の組み合わせが中ボス同士でなんか地味ですが、これからこの組み合わせで地獄絵図が展開されるんでしょうなぁ。きっと。

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